説明

非ステロイド抗炎症薬に付随する副作用をビフィドバクテリウム属の微生物を用いて治療する方法

本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の使用に関する。本発明は、さらに、NSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)に付随する副作用を治療する医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用にも関する。本発明は、さらに、NSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)と細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む薬剤にも関する。本発明は、さらに、ベタイン又は薬剤として許容されるその塩と細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む薬剤にも関する。この微生物は適切には細菌とすることができ、好ましくはビフィドバクテリウム由来とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の使用に関する。
【0002】
本発明は、なかでもNSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)に付随する副作用を治療する薬剤の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用に関する。
【0003】
本発明は、さらに、NSAIDと、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む医薬品にも関する。
【0004】
本発明は、さらに、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる薬剤の製造におけるi)微生物及び/又はその代謝産物とii)ベタイン及び/又は薬剤として許容されるその塩との併用にも関する。
【0005】
本発明は、さらに、とりわけNSAIDに付随する副作用を治療する薬剤の製造におけるi)微生物及び/又はその代謝産物とii)ベタイン及び/又は薬剤として許容されるその塩との併用にも関する。
【0006】
本発明は、さらに、i)NSAID、並びに/或いはii)ベタイン及び/又は薬剤として許容されるその塩、並びにiii)細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物を一緒に含む医薬品にも関する。
【背景技術】
【0007】
COX(cyclooxygenase)は、PTGS(prostaglandin-endoperoxide synthase)、脂肪酸COX、PGHシンターゼ及びEC 1.14.99.1としても知られ、エイコサノイド(すなわち、PG(prostaglandin))産生の合成経路において鍵となる調節酵素である。エイコサノイドは、さまざまな組織及び器官系における複数の炎症性、分裂促進的、血管形成活動の原因である。したがって、COXは、熱、炎症及び疼痛の生成に関係する。
【0008】
COXが欠乏すると、病因にかかわらず、エイコサノイド、特にPG(prostaglandins)の不均衡に関連した有益な生理学的状態と有害な生理学的状態の両方がもたらされる。プロスタグランジンは、シクロペンタン環を有する炭素20個の多価不飽和脂肪酸を含む関連化合物ファミリーである。
【0009】
それぞれCOX−1(PTGS−1)及びCOX−2(PTGS−2)の2個のCOXアイソフォームがある。
【0010】
文献では、COX−1は、腸及び結腸を含めて多数の組織において発現される構成酵素とみなされ、COX−2は、炎症においてマクロファージ、線維芽細胞及び他の細胞タイプ中で発現される誘導酵素とみなされている。COX−2の発現は、例えば、ホルボールエステル並びにIL(interleukin)−1β及びTNF(tumour necrosis factor)−αを含めた炎症誘発性サイトカインによって誘導される。サルモネラ(Salmonella)などの侵襲性細菌による腸上皮細胞の感染もCOX−2の発現を誘導する。COX−1は、胃腸の統合性の維持に関連するPGの産生原因と考えられるのに対して、COX−2は、炎症の媒介に関連するPGの産生原因と考えられる。Singer et al Gastroenterology 1998: 115 p297-306は、正常な回腸、正常な結腸、潰瘍性大腸炎、クローン結腸炎及びクローン回腸炎におけるCOX−1及びCOX−2の発現及び細胞分布を検討した。
【0011】
COX酵素を阻害し、ある形態の癌を遅延又は予防することが判明した多数の薬物が同定されている。これらの薬剤は、NSAIDとして知られ、臨床実務において重要な特定市場分野を占めている。NSAIDは、炎症を抑制し、疼痛及び発熱を軽減し、血栓の形成を予防するために使用される。ほとんどのNSAIDは処方箋によって調剤されるが、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン及びナプロキセンを含めて一部のNSAIDは大衆薬として容易に入手可能である。NSAIDの使用は結腸癌に関して報告されており、NSAIDは結腸の発癌(carcinogenesis)を初期において防止することが示唆されている(Prescott & Fitzpatrick Biochemica et Biophysica Acta; 1470 (2000) M69-M78)。NSAIDの研究によれば、原因としてCOX−2イソ酵素が挙げられる。COX−2及びそのアイソフォームCOX−1は、NSAIDの確立された薬理的標的である。
【0012】
上述したように、COX−1は、潰瘍からの胃の保護、腎血流の調節などの機能調整における高等な目的に役立つPGを合成すると考えられている。一方、COX−2は、疼痛及び発熱に伴って過剰な量のPGを合成する。経口摂取される従来のNSAIDは、消化管における濃度でCOX−1とCOX−2の両方を非選択的に阻害する。したがって、発癌又は他の病理学的プロセスに対する有益な効果のいずれも、消化管における有害作用のリスクから切り離せない。
【非特許文献1】Singer et al Gastroenterology 1998: 115 p297-306
【非特許文献2】Prescott & Fitzpatrick Biochemica et Biophysica Acta; 1470 (2000) M69-M78
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の独創的な知見は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を使用して、対象の細胞中のCOX−1遺伝子発現を増強できることである。特に、本発明の独創的な知見は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を使用して、対象の細胞中のCOX−1 mRNA量を増加できることである。
【0014】
本発明者らは、今回、細胞における低いCOX−1活性が、その細胞の健全性に直接的及び/又は間接的な影響を及ぼすことを発見した。特に、罹患した細胞及び/又は不健康な細胞(したがって組織)は、従来技術の教示に反して、実際に、比較的健康な細胞(したがって組織)よりもその細胞中で一般にCOX−1遺伝子発現が低く、且つ/又はCOX−1 mRNAが少ないことが発見された。
【0015】
したがって、本発明は、前記対象の細胞中のCOX−1遺伝子発現及び/又はCOX−1 mRNA量を増大させることによって対象の健康を増進することができるという知見に基づく。特に、対象の腸の健康は、例えば腸上皮細胞中のCOX−1遺伝子発現を増大させることによって改善することができる。
【0016】
また、本発明は、ある微生物及び/又はその代謝産物を使用して1個又は複数のシクロオキシゲナーゼの発現パターンを変更することができるという驚くべき発見に基づく。特に、ある微生物を使用して1つを超えるCOX mRNAの量を変更できることが見出された。特に、ある微生物を使用して細胞中のCOX−1遺伝子の発現を高めることができ、したがってある微生物を使用して細胞中のCOX−1 mRNA量を増加できることが見出された。
【0017】
本発明は、ある微生物及び/又はその代謝産物を使用してNSAIDの投与に付随する副作用を克服することができるという驚くべき発見にも基づく。
【0018】
また、本発明は、ある微生物及び/又はその代謝産物がベタイン又は薬剤として許容されるその塩と併用されたときに、健康上の相乗的な利点が得られるという驚くべき発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させるのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0020】
別の態様においては、本発明は、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更するのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0021】
さらに別の態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させるのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0022】
別の態様においては、本発明は、対象の健康を増進するのに使用され、特に対象の腸の健康を増進するのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0023】
別の態様においては、本発明は、皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患、呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数の予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0024】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬に対する対象のトレランス(耐薬性)を上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させるのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0025】
一態様においては、本発明は、日焼けの予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0026】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下の予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0027】
さらに別の態様においては、本発明は、NSAIDに付随する副作用の予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0028】
さらに別の態様においては、本発明は、NSAIDと細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む医薬品を提供する。
【0029】
別の態様においては、本発明は、NSAIDと細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む、医薬品として使用される医薬品を提供する。
【0030】
別の態様においては、本発明は、NSAID又は薬剤として許容されるその塩と細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含み、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合された医薬品を提供する。
【0031】
さらに別の態様においては、本発明は、i)ベタイン及び/又は薬剤として許容されるその塩と、ii)細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む医薬品を提供する。
【0032】
一態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0033】
一態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させる微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0034】
別の態様においては、本発明は、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0035】
さらに別の態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0036】
本発明は、さらに、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を含む医薬品にも関する。
【0037】
一態様においては、本発明は、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる本発明による微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0038】
別の態様においては、本発明は、皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数の障害、疾患又は症状の治療用医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0039】
別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0040】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬に対する対象のトレランスを上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させる医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0041】
一態様においては、本発明は、対象の健康、好ましくは腸の健康を増進する方法であって、前記対象の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させるステップを含む方法を提供する。
【0042】
さらに別の態様においては、本発明は、治療を必要とする対象における障害、疾患又は症状を治療する方法であって、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0043】
適切には、障害、疾患又は症状は、皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数とすることができる。
【0044】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0045】
別の態様においては、本発明は、対象の健康、特に対象の腸の健康を増進する方法であって、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0046】
別の態様においては、本発明は、対象の健康、特に対象の腸の健康を増進する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0047】
さらに別の態様においては、本発明は、対象の健康、特に対象の腸の健康を増進する方法であって、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0048】
別の態様においては、本発明は、対象の健康、特に対象の腸の健康を増進する方法であって、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0049】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属由来の細菌、例えばビフィドバクテリウム種420及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0050】
別の態様においては、本発明は、対象における皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数を予防及び/又は治療する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0051】
さらに別の態様においては、本発明は、対象における皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数を予防及び/又は治療する方法であって、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0052】
別の態様においては、本発明は、対象における皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数を予防及び/又は治療する方法であって、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0053】
別の態様においては、本発明は、対象における皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数を予防及び/又は治療する方法であって、ビフィドバクテリウム属由来の細菌、例えばビフィドバクテリウムsp.420及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0054】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬(特にNSAID)に対する対象のトレランスを上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させる方法であって、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0055】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬(特にNSAID)に対する対象のトレランスを上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させる方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0056】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬(特にNSAID)に対する対象のトレランスを上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させる方法であって、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0057】
別の態様においては、本発明は、免疫調節剤及び/又は抗炎症薬(特にNSAID)に対する対象のトレランスを上昇させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを上昇させる方法であって、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0058】
さらに別の態様においては、本発明は、NSAIDの投与に付随する副作用を治療及び/又は予防する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0059】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、前記家畜の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記家畜に投与するステップを含む方法を提供する。
【0060】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、前記家畜の細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記家畜に投与するステップを含む方法を提供する。
【0061】
さらに別の態様においては、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に前記家畜の細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記家畜に投与するステップを含む方法を提供する。
【0062】
別の態様においては、本発明は、1種又は複数の本発明による微生物及び/或いは1個又は複数のその代謝産物を、薬剤として許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合するステップを含む、薬剤組成物の調製方法に関する。
【0063】
さらに別の態様においては、本発明は、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合された本発明による微生物及び/又はその代謝産物を含む薬剤組成物を提供する。
【0064】
別の態様においては、本発明は、医薬品として使用される本発明による微生物及び/又はその代謝産物を提供する。
【0065】
別の態様においては、本発明は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を含む医薬品を提供する。
【0066】
さらに別の態様においては、本発明は、1個又は複数の区画を含む薬剤パックであって、前記区画の少なくとも1個が本発明による微生物及び/又はその代謝産物を含む、薬剤パックを提供する。
【0067】
別の態様においては、本発明は、1個又は複数の区画を含む薬剤パックであって、少なくとも1個の区画が、対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる1種又は複数の微生物及び/又はその代謝産物を含み、同じ区画又はさらに別の区画が1種又は複数のNSAIDを含む、薬剤パックを提供する。
【0068】
薬剤組成物の調製方法であって、対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる1種又は複数の微生物及び/又はその代謝産物を、1種又は複数のNSAID及び薬剤として許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合するステップを含む、方法。
【0069】
さらに別の態様においては、本発明は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を含む食品及び/又は飼料を提供する。
【0070】
本発明は、さらに、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させるのに使用される医薬品の製造におけるプレバイオティックと組み合わせた微生物及び/又はその代謝産物の使用も提供する。
【0071】
本発明は、さらに、標的細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物を選択する方法であって、標的細胞を微生物及び/又はその代謝産物に曝露するステップと、前記標的細胞中のCOX−1 mRNA量を測定するステップと、前記標的細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物を同定するステップとを含む方法も提供する。
【0072】
さらに別の態様においては、本発明は、微生物及び/又はその代謝産物をスクリーニングして、細胞中のCox−1 mRNAを増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物を同定する方法であって、細胞系(好ましくは、ヒト結腸直腸癌細胞系−Caco−2)の1個又は複数の細胞に微生物懸濁液を添加するステップと、前記1個又は複数の細胞中のCox−1発現パターンを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0073】
本発明は、さらに、微生物及び/又はその代謝産物をスクリーニングして、細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更することができる(好ましくは、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に細胞中のCox−2 mRNAの量を減少させることができる)微生物及び/又はその代謝産物を同定する方法であって、細胞系(好ましくは、ヒト結腸直腸癌細胞系−Caco−2)の1個又は複数の細胞に微生物懸濁液を添加するステップと、前記1個又は複数の細胞中のCox−1発現パターンを決定するステップとを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
本明細書では「変更する」という用語は増加又は減少を意味する。本明細書では「変更すること」という用語は、それに応じて解釈すべきである。
【0075】
一部の実施形態においては、細胞は上皮細胞とすることができる。一部の態様では、細胞は胃腸上皮細胞とすることができる。これは、胃腸の健康の改善に特に有利である。
【0076】
本明細書では「細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させる」という用語は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物で治療されていない細胞中のCOX−1 mRNA量との比較を意味する。
【0077】
細胞は「標的細胞」と称されることもある。その場合、細胞は、癌細胞及び/又は炎症性細胞などの不健康な細胞又は罹患した細胞とすることができる。
【0078】
一部の実施形態においては、細胞は、真核細胞、適切には動物細胞、適切には哺乳動物細胞、例えばヒト細胞とすることができる。
【0079】
一部の実施形態においては、微生物及び/又はその代謝産物は、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物と併用することができる。ベタインは、トリメチルグリシン、すなわちTMGとしても知られ、テンサイ(サトウダイコン)の液分中に最初に発見された第4級アンモニウム化合物である。ベタインとベタイン塩酸塩のどちらも栄養補助食品として利用可能である。ベタインは、非水和物と一水和物のどちらの形でも利用可能であり、どちらも本発明による使用に適切である。また、ベタインは、動物、植物及び微生物に広範に分布し、豊富な食用源としては、海産食物、特に海の脊椎動物、コムギ胚芽又はふすま、ホウレンソウなどが挙げられる。
【0080】
ベタインは双性イオン化合物タイプであり、これらは、正と負に帯電した別個の基を有する化合物である。理論に拘泥するつもりはないが、ベタインは、メチル(CH)基を供与することによって作用する。
【0081】
本願においては、ベタインをベタイン置換化合物で置換し得ることも予見される。
【0082】
一実施形態においては、ベタイン置換化合物は任意のメチル供与体である。
【0083】
別の実施形態においては、ベタイン置換化合物は、水素原子を置換基として持たないオニウム原子と、オニウム原子が陰イオン性原子に隣接していない陰イオン性原子とを含む電荷分離型の全体として中性電荷を有することができる。オニウム原子はカルボニウム原子であることが好ましい。
【0084】
適切には、ベタイン置換化合物はアミノ酸から誘導することができる。アミノ酸のアミン基は、式R−NRの第4級アンモニウム基を含むように置換されている。ここで、Rはアミノ酸残基であり、R、R及びRはヒドロカルビル基から独立に選択される。
【0085】
、R及びRはアルキル基から独立に選択されることがより好ましい。R、R及びRは、CからCアルキル基から独立に選択されることが好ましい。R、R及びRの1個又は複数はメチル基であることが好ましい。R、R及びRはメチル基であることが好ましい。
【0086】
ベタイン置換化合物は、一般式X:O−C(O)−CH−NRの化合物であることが好ましい。ここで、R、R及びRは上記のとおりである。
【0087】
単なる例として、ベタイン置換化合物はコリンとすることができる。
【0088】
驚くべきことに、本発明による微生物及び/又はその代謝産物がベタイン又はベタイン置換化合物と併用されると相乗効果が得られることが見出された。特に、この併用によって、細胞中のCOX−1 mRNA量の相乗的増加;細胞中の1つを超えるシクロオキシゲナーゼmRNAの量を相乗的に変更すること;細胞中のCOX−1 mRNA量を相乗的に増加させ、同時に細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させること;対象の健康、特に対象の腸の健康を相乗的に増進すること;免疫調節剤及び/又は抗炎症薬に対する対象のトレランスを相乗的に増加させ、且つ/或いは抗生物質に対する対象のトレランスを相乗的に増加させることの1つ又は複数がもたらされる。
【0089】
一実施形態においては、本発明は、皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害及び内毒素ショックの1つ又は複数の治療用医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物とベタイン(又はベタイン置換化合物)との併用を提供する。
【0090】
適切には、本発明は、日焼けの予防及び/又は治療用医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物とベタイン(又はベタイン置換化合物)との併用に関係し得る。
【0091】
適切には、本発明は、家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下の予防用医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物とベタイン(又はベタイン置換化合物)との併用に関係し得る。
【0092】
適切には、本発明は、NSAIDに付随する副作用の予防及び/又は治療用医薬品の製造における本発明による微生物及び/又はその代謝産物とベタイン(又はベタイン置換化合物)との併用に関係し得る。
【0093】
相乗作用は、微生物及び/又はその代謝産物とベタイン(又はベタイン置換化合物)を別個に、また、併用して被験者又は細胞を治療し、各効果を比較することによって求めることができる。相乗作用は、併用によって別個の各治療よりも優れた効果が得られるときに示される。
【0094】
適切には、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の投与後の細胞中のCOX−1 mRNA量は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物に曝露されていない細胞中のCOX−1 mRNA量よりも10%、好ましくは20%、好ましくは30%、好ましくは40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%多い。
【0095】
適切には、本発明による微生物及び/又はその代謝産物の投与後の細胞中のCOX−1 mRNA量は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物に曝露されていない細胞中のCOX−1 mRNA量の2倍を超え、適切には3倍を超え、適切には5倍を超え、適切には10倍を超え、適切には100倍を超え、適切には1000倍を超える。
【0096】
適切には、本明細書に記載される消化管癌は、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌及び食道癌の1つ又は複数とすることができる。
【0097】
適切には、本明細書に記載される腸の炎症性異常及び疾患は、IBD(inflammatory bowel disease)、IBS(irritable bowel syndrome)、胃腸障害に付随する体重減少、潰瘍性大腸炎、クローン病、嚢炎、アレルギー性大腸炎、好酸球性大腸炎、光線性(放射)大腸炎(actinic (radiation) colitis)、憩室炎、憩室症、肝性脳症、門脈圧亢進症、細菌性腹膜炎、胃腸でのベーチェット病及び他の自己免疫障害の発現、脂肪性肝炎及び他の慢性肝疾患の1つ又は複数とすることができる。
【0098】
適切には、本明細書に記載される腸疾患はアレルギー及び感染症の1つ又は複数とすることができる。
【0099】
適切には、本明細書に記載される皮膚障害又は疾患は、ざそう、乾せん、日焼け、結節性紅斑、クリオグロブリン血症、スイート症候群、全身的肥満細胞症、じんま疹様血管炎、皮斑様血管炎、結節性血管炎、皮膚癌及び皮膚炎の1つ又は複数とすることができる。
【0100】
適切には、本明細書に記載される歯周病は、歯肉炎、歯根膜炎、口臭及び歯垢の1つ又は複数とすることができる。
【0101】
一部の態様においては、本発明による微生物は、細菌、真菌、酵母の1種又は複数とすることができる。
【0102】
適切には、本発明による微生物は細菌とすることができる。
【0103】
適切には、本発明による微生物は、ラクトコッカス(Lactococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、カルノバクテリウム(Carnobacterium)属、プロピオニバクテリウム(propionibacterium)属、ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス(Lactobacillus)属の1種又は複数に由来する細菌とすることができる。
【0104】
適切には、本発明による微生物は、ビフィドバクテリウム属由来の微生物とすることができる。
【0105】
適切には、本発明による微生物は、以下の微生物、すなわち、ビフィドバクテリウム ラクチス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)の1種又は複数とすることができる。
【0106】
適切には、本発明による微生物はビフィドバクテリウムsp.420微生物とすることができる。
【0107】
不確かさを避けるために、ビフィドバクテリウムsp.420の分類学的名称はビフィドバクテリウム ラクチス420である。これらの用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0108】
分類学的にビフィドバクテリウム ラクチスとして分類される種は、現在、再考されていることに留意されたい。特に、以前にB.ラクチスとして分類された一部の種は、実際にはB.アニマリスであると考えられている。本発明においては、一部の態様では、分類学的にB.アニマリスとしてその後改名される可能性のあるB.ラクチス種とその逆の場合の両方を網羅するものとする。特に、ビフィドバクテリウムsp.420は、以前にはB.ラクチス420として分類された。しかし、仮にこの生物がB.アニマリス420として再分類された(或いは、さらに言えば、ビフィドバクテリウム属の任意の他の種として再分類された)場合には、この生物は本発明に包含されるものとする。
【0109】
一実施形態においては、本発明による微生物はビフィドバクテリウムsp.420とすることができる。ビフィドバクテリウムsp.420はDanisco A/S社(Denmark)から市販されている。
【0110】
本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、COX−1/COX−2遺伝子発現の歪みのために生じるあらゆる疾患及び/又は障害の治療に使用できることを当業者は理解されたい。
【0111】
理論に拘泥するつもりはないが、本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、対象の上皮細胞などの細胞の増殖を促進し得ることが見出された。例えば、本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、家畜、例えばニワトリなどの例えば家禽などの対象の胃腸上皮細胞の増殖を促進し得ることが見出された。その場合には、これは、家畜の腸による栄養素の取り込みを促進することができ、したがって家畜の成長を促進し、且つ/又は家畜の体重増加の低下を予防する。
【0112】
適切には、本発明による微生物は、微生物の少なくとも1種及び/又は微生物の少なくとも1種、適切には少なくとも2種、適切には少なくとも3種からの代謝産物を含む調製物中に存在することができる。
【0113】
適切には、本発明による微生物の代謝産物を利用するときには、少なくとも1個の代謝産物を利用することができ、適切には少なくとも2個の代謝産物を利用することができ、適切には少なくとも3個の代謝産物を利用することができ、適切には少なくとも4個の代謝産物を利用することができる。
【0114】
一部の実施形態では、本発明による微生物は生きているものとすることができる。
【0115】
一部の実施形態では、本発明による微生物は死んでいる、又は生育不能なものとすることができる。
【0116】
理論に拘泥するつもりはないが、微生物に付随する、例えば微生物によって産生される可溶性代謝産物は、微生物の有利な効果をもたらし得ると考えられる。したがって、一部の態様では、微生物細胞が標的細胞と直接接触している必要はない。
【0117】
一部の態様では、微生物に付随する、例えば微生物によって産生される1個又は複数の代謝産物は、本明細書に教示される有益な効果を得るのに適切になり得ると考えられる。かかる場合においては、微生物自体を含めることは不必要なことがある。
【0118】
本明細書では「その代謝産物」という用語は、本発明による微生物から抽出される、或いは本発明による微生物が培養されている培地又は培養された培地から得られる1個又は複数の化合物を意味する。一部の態様においては、代謝産物は、培地及び/又は微生物の粗製抽出物とすることができる。適切には、一部の態様では、代謝産物は、培地及び/又は微生物から単離及び/又は精製された1個又は複数の化合物とすることができる。
【0119】
適切には、本発明による微生物は、1個又は複数の標的細胞と同時培養することができ、したがって可溶性画分を移すことができる。適切には、本微生物は、標的細胞と細胞同士が接触していなくてもよい。
【0120】
適切には、本発明による微生物又はその代謝産物は凍結乾燥することができる。
【0121】
適切には、本発明によるNSAIDは、以下のNSAID、すなわち、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム及びスリンダクの1個又は複数とすることができる。このリストは例であり、決して限定的なものではない。本発明は、あらゆるNSAIDとの使用に有利と考えられることを当業者は理解されたい。
【0122】
NSAIDによって引き起こされ、本発明による微生物及び/又はその代謝産物を用いて有効に治療及び/又は予防することができる副作用は、NSAIDの使用に起因するあらゆる副作用とすることができる。かかる薬物は、例えば経口又は局所的に投与することができる。あらゆるNSAID投与形式によって引き起こされる副作用が本発明に包含される。単なる例として、NSAIDを摂取することによって引き起こされる副作用としては、特異的又は非特異的な結腸炎(特にフェナマート(fenemate))、潰瘍、出血、炎症性腸疾患、小腸の穿孔及び狭窄などの大腸及び小腸への損傷、並びに大腸又は小腸の炎症の1つ又は複数などが挙げられる。NSAIDの局所投与によって引き起こされる副作用としては、例えば、発疹、光毒性又は光アレルギー性皮膚炎の1つ又は複数が挙げられる。NSAIDの投与によって引き起こされる副作用としては、胃痛又はけいれん、悪心、嘔吐、消化不良、下痢、胸やけ、頭痛、傾眠、めまい、錯乱、ふらつき、かすみ目、発疹、皮膚の発赤、かゆみ、ほう疹、皮膚の変色、重度の日焼けを起こし得る太陽光への敏感性などが挙げられる。本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、NSAIDに起因する副作用の1つ又は複数を有効に治療及び/又は予防するために使用することができる。
【0123】
医薬品
本明細書では「医薬品」という用語は、ヒト及び獣医学におけるヒトと動物用の両方の医薬品を包含する。また、本明細書では「医薬品」という用語は、治療効果及び/又は有益な効果をもたらすあらゆる物質を意味する。本明細書では「医薬品」という用語は、販売許可(Marketing Approval)を必要とする物質に必ずしも限定されず、化粧品、食品薬、(例えば、飼料及び飲料を含めた)食品、プロバイオティック培養物、自然療法に使用することができる物質も含むことができる。また、本明細書では「医薬品」という用語は、家畜(動物)の飼料、特に家禽の飼料に混合するように設計された生成物も包含する。
【0124】
治療
本明細書における治療という表記は、治療処置、緩和療法及び予防的治療を含むことを理解されたい。
【0125】
実質的に純粋な形態及び/又は単離された形態
一部の態様では、本発明による微生物及び/又は代謝産物は、実質的に純粋な形態とすることができ、又は単離された形態である。
【0126】
「実質的に純粋な形態」という用語は、本発明による微生物及び/又は代謝産物が高いレベルで存在することを示すのに使用される。微生物及び/又は代謝産物が実質的に純粋な形態であるときには、微生物及び/又は代謝産物は、組成物中に存在する主成分であることが望ましい。微生物及び/又は代謝産物は、30%を超えるレベル、50%を超えるレベル、75%を超えるレベル、90%を超えるレベル、さらには95%を超えるレベルで存在することが好ましい。前記レベルは、当該全組成物に対する乾燥重量/乾燥重量基準である。
【0127】
きわめて高いレベル(例えば、90%を超えるレベル、95%を超えるレベル又は99%を超えるレベル)では、成分は「単離された」ものとみなすことができる。(ポリペプチド、核酸分子、スクリーニングによって特定された/特定可能な成分などを含めて)本発明の生物学的に活性な物質は、その物質に通常付随し得る1種又は複数の汚染物質が実質的にない形で提供することができる。したがって、例えば、本発明の生物学的に活性な物質は、1種又は複数の潜在的汚染ポリペプチド及び/又は核酸分子が実質的にないものとすることができる。本発明の生物学的に活性な物質は、他の細胞成分(例えば、細胞膜、細胞質など)が実質的にない形で提供することができる。組成物が所与の汚染物質を実質的に含まないときには、その汚染物質は低レベル(例えば、上記乾燥重量/乾燥重量基準で10%未満のレベル、5%未満のレベル又は1%未満のレベル)である。
【0128】
微生物
本発明に使用される適切な生きた微生物としては、細菌、糸状菌及び/又は酵母などが挙げられる。
【0129】
本発明に使用される生きた微生物は生きた細菌であることが好ましい。
【0130】
「生きた微生物」という用語は、代謝的に活性な微生物を意味する。
【0131】
微生物は天然の微生物でも形質転換された微生物でもよい。微生物は適切な微生物の組み合わせとすることもできる。
【0132】
適切には、本発明による微生物は、ラクトコッカス属、クロストリジウム属、ストレプトコッカス属、ペジオコッカス属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、カルノバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属の1種又は複数に由来する細菌とすることができる。
【0133】
適切には、本発明による微生物は、ビフィドバクテリウム属由来の微生物とすることができる。
【0134】
適切には、本発明による微生物は、以下の微生物、すなわち、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数とすることができる。
【0135】
適切には、本発明による微生物はビフィドバクテリウムsp.420微生物とすることができる。
【0136】
不確かさを避けるために、ビフィドバクテリウムsp.420の分類学的名称はビフィドバクテリウム ラクチス420である。これらの用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0137】
分類学的にビフィドバクテリウム ラクチスとして分類される種は、現在、検討されていることに留意されたい。特に、以前にB.ラクチスとして分類された一部の種は、実際にはB.アニマリスであると考えられている。本発明においては、一部の態様では、分類学的にB.アニマリスとしてその後改名される可能性のあるB.ラクチス種とその逆の場合の両方を網羅するものとする。特に、ビフィドバクテリウムsp.420は、以前にはB.ラクチス420として分類された。しかし、仮にこの生物がB.アニマリス420として再分類された(或いは、さらに言えば、ビフィドバクテリウム属の任意の他の種として再分類された)場合には、この生物は本発明に包含されるものとする。
【0138】
一実施形態においては、本発明による微生物はビフィドバクテリウムsp.420とすることができる。ビフィドバクテリウムsp.420はDanisco A/S社(Denmark)から市販されている。
【0139】
有利には、生成物が食料品である場合には、生きた微生物及び/又は前記微生物によって産生される可溶性代謝産物は、食品が小売業者によって販売される通常の「賞味期限」又は「使用期限」を通して有効であるべきである。有効期間は、かかる日付けを過ぎて食品の腐敗が明らかになる新鮮な期間の最後まで及ぶべきであることが好ましい。所望の期間及び通常の品質保持期間は食料品ごとに変わり、品質保持期間は、食料品のタイプ、食料品のサイズ、貯蔵温度、加工条件、包装材料及び包装装置に応じて変わることを当業者は承知している。
【0140】
CACO−2細胞に基づく曝露アッセイ
ヒトの結腸直腸癌細胞系Caco−2は、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco社製)及び1×非必須アミノ酸(Gibco社製)が補充された無血清DMEM(Dulbeccos'MEM)(Gibco社製)中で37℃及び5%COで増殖される。微生物が添加されずに増殖されるときには、20Uml−1ペニシリン(Gibco社製)、20μgml−1ストレプトマイシン(Gibco社製)及び0.5μgml−1アンホテリシン(Gibco社製)が培地に添加される。
【0141】
Cox−1/Cox−2発現パターンに対するさまざまな微生物及び/又はその代謝産物の効果を明らかにするために、約500000個のCaco−2細胞/ウェルを24ウェル細胞培養プレートに蒔く。細胞を24時間付着させ、その後、上記成分以外の添加成分を含まない新しい培地(総体積1mL/ウェル)(対照処理、抗生物質添加及び無添加)或いは5mM酪酸ナトリウム;5mMプロピオン酸ナトリウム;5mM酢酸ナトリウム又は5mM乳酸ナトリウムを含む抗生物質補充培地を含む新しい培地(総体積1mL/ウェル)で培地を交換する。また、抗生物質を含まないが、微生物の懸濁液100μLがその中に添加される0.2μm anopore膜組織培養インサート(Nunc社製、Denmark)を含むウェルが調製される。
【0142】
24時間曝露後、培地及び培養インサートを廃棄し、細胞を溶解し、Qiagen社(Germany)製RNEasy Mini Kitを用いてRNAを抽出する。同じ製造者のRNase free DNaseを用いてDNAを消化する。逆転写は、High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems社製、USA)を製造者の指示に従って用いて実施される。Cox−1/Cox−2発現パターンは、ABIPrism 7000 Sequence Detection装置(Applied Biosystems社製)のデフォルト設定を用いて実時間定量TaqMan PCR(Holland et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA Aug 15; 88(16): 7276-80;及びLivak and Scmittgen, 2001 Methods Dec; 25(4): 402-8)によって求められた。
【0143】
上記アッセイに使用される微生物懸濁液は、適切な培地上で微生物を培養することによって調製することができる。培養物は、遠心分離して細胞ペレットを形成し、続いて適切な培地、例えば、DMEM中にそれを懸濁させることができる。
【0144】
未処理対照よりもCox−1発現レベルを増加させる微生物及び/又はCox−1/Cox−2比を増加させる微生物は、本発明による微生物及び/又は本発明に従って使用することができる微生物とすることができる。
【0145】
当業者は、本明細書に具体的に教示される微生物に加えて、「Caco−2細胞に基づく曝露アッセイ」によってプロバイオティック微生物と非プロバイオティック微生物をスクリーニングして、特許請求の効果をもたらし得る特異的な微生物を容易に特定することができる。
【0146】
他の成分との組み合わせ
本発明の組成物は、他の成分と併用することができる。したがって、本発明は、組み合わせにも関する。微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「本発明の組成物」と称することもある。
【0147】
本発明の組み合わせは、本発明の組成物と、動物又はヒトの消費に適切であり医学的又は生理学的利点を消費者にもたらすことができる他の成分とを含む。
【0148】
本発明の組み合わせの他の成分としては、Litesse(登録商標)及び/又はマルトデキストリンなどのポリデキストロースなどが挙げられる。これらの他の成分を本組成物に場合によっては添加して、乾燥プロセスを支援し微生物の生存を助けることができる。
【0149】
他の適切な成分のさらなる例としては、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、結合剤、結晶改質剤、(人工甘味料)を含めた甘味料、レオロジー改質剤、安定剤、抗酸化剤、色素、酵素、担体、ビヒクル、賦形剤、希釈剤、潤滑剤、香味料、着色剤、懸濁剤、崩壊剤、顆粒化結合剤などの1種又は複数が挙げられる。これらの他の成分は天然物とすることができる。これらの他の成分は、化学及び/又は酵素技術を使用して調製することができる。
【0150】
本明細書では「増粘剤又はゲル化剤」という用語は、粒子、すなわち、非混和性液体の液滴、空気又は不溶性固体の動きを遅くする、又は防止することによって分離を防止する生成物を指す。増粘は、個々の水和物分子が粘度を上昇させ、分離が遅くなるときに生じる。ゲル化は、水和物分子が連結して、粒子を捕捉する3次元ネットワークを形成し、それによって粒子が固定化されるときに生じる。
【0151】
本明細書では「安定剤」という用語は、生成物(例えば、食品)を経時変化から保護する成分又は成分の組み合わせと定義される。
【0152】
本明細書では「乳化剤」という用語は、乳濁液の分離を防止する成分(例えば、食品成分)を指す。乳濁液は、一方が他方に含まれる液滴の形で存在する2種類の非混和性物質である。乳濁液は、液滴又は分散相が油であり連続相が水である水中油、或いは水が分散相になり連続相が油である油中水からなることができる。液体中の気体である泡及び液体中の固体である懸濁液も、乳化剤を使用することによって安定化することができる。曝気は、空気が液状オイルに閉じ込められ、次いで乳化剤で安定化された凝集脂肪結晶によって安定化された3相系において起こり得る。乳化剤は、水に対する親和性(親水性)を有する極性基と、油に引き寄せられる(親油性)非極性基とを有する。乳化剤は、2種類の物質の界面で吸収され、乳濁液を安定化する働きをする界面膜を生成する。乳化剤の親水性/親油性は分子構造の影響を受ける。これらの諸特性は、親水性/親油性バランス(HLB)値によって示される。低HLB値は、油中水型乳濁液を安定化するのに使用される親油性傾向が高いことを示す。高HLB値は、一般に水中油型乳濁液に使用される親水性乳化剤に割り当てられる。これらの値は簡単な系から誘導される。食品は、乳化特性に影響を及ぼす他の成分を含むことが多いので、HLB値は、乳化剤選択の信頼できる指針では必ずしもない。
【0153】
本明細書では「結合剤」という用語は、物理反応又は化学反応によって生成物を結合する成分(例えば、食品成分)を指す。例えば「イレーション(elation)」中に、水が吸収され、結合効果がもたらされる。しかし、結合剤は、油などの他の液体を吸収し、それを生成物中に保持することができる。本発明では、結合剤は、一般に、固体又は低水分生成物、例えば焼成物、すなわち、ペストリー、ドーナツ、パンなどに使用される。
【0154】
本明細書では「結晶改質剤」という用語は、脂肪又は水の結晶化に影響を及ぼす成分(例えば、食品成分)を指す。氷晶の安定化は2つの理由のために重要である。第1の理由は、分離の観点から生成物の安定性に直接関係する。生成物が遭遇する凍結/解凍サイクルが多いほど氷晶は大きくなる。これらの大きい結晶は、細胞壁のように天然の生成物構造又は「イレーション」によって構築される生成物構造を破壊し得る。水は適所にもはや保持されないので、生成物は解凍後に離液又は浸出を起こし得る。第二に、凍結消費される生成物の場合には、これらの大きい結晶は望ましくないざらついた口当たりを生じる。
【0155】
「担体」又は「ビヒクル」は、化合物投与に適切な材料を意味し、例えば、任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤など当分野で公知の材料などが挙げられ、無毒であり、本組成物の成分と有害な相互作用をしない。
【0156】
栄養学的に許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ろう、ペトロラタム、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘ちゅう性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエスラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0157】
賦形剤の例としては、微結晶セルロース及び他のセルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリシン、デンプン、乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールの1個又は複数が挙げられる。
【0158】
崩壊剤の例としては、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複合シリケートの1個又は複数が挙げられる。
【0159】
顆粒化結合剤としては、ポリビニルピロリドン、HPMC(hydroxypropylmethylcellulose)、HPC(hydroxypropylcellulose)、スクロース、マルトース、ゼラチン及びアラビアゴムの1個又は複数が挙げられる。
【0160】
潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリン及びタルクの1個又は複数が挙げられる。
【0161】
希釈剤の例としては、水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンの1個又は複数、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0162】
他の成分は、同時に(例えば、それらが混合物であるとき、さらにはそれらが異なる経路で送達されるとき)又は逐次的に(例えば、それらを異なる経路で送達することができる)使用することができる。
【0163】
本発明の組成物が任意の他の成分と混合されるときには、微生物は生きたままであることが好ましい。
【0164】
本明細書では「動物又はヒトの消費に適切な成分」という用語は、栄養上の利点があり、繊維代替物であり、又は消費者に一般に有益な効果を有することができるサプリメントとして、本発明の組成物に添加される化合物又は添加することができる化合物を意味する。これらの成分は、ゲル化、質感付与(texturising)、安定化、懸濁、膜形成及び構造化、多汁質の保持が、不必要な粘性を加えることなく必要とされる多種多様な生成物に使用することができる。これらの成分は、生きた培養物の品質保持期間及び安定性を改善できることが好ましい。
【0165】
これらの成分は、アルギナート、キサンタンガム、ペクチン、LBG(locust bean gum)、イヌリン、ガーゴム、GOS(galacto-oligosaccharide)、FOS(fructo-oligosaccharide)、ポリデキストロース(すなわち、Litesse(登録商標))、ラクトスクロース、ダイズオリゴ糖、パラチノース、イソマルト−オリゴ糖、グルコ−オリゴ糖及びキシロ−オリゴ糖などのプレバイオティクスとすることができる。
【0166】
本発明の組み合わせに使用される組成物の最適量は、処理される生成物及び/又は生成物と組成物の接触方法及び/又は組成物の意図した用途に応じて決まる。組成物中で使用される生きた微生物の量は、前記組成物を含む食品の芳香、風味、まろやかさ、粘ちゅう性、食感、こく(body)、口当たり、粘度、構造及び/又は官能特性、栄養及び/又は健康上の利点を改善するのに有効であり、十分に有効なままであるのに十分な量とすべきである。この有効期間は、少なくとも生成物の利用期間にまで及ぶべきである。
【0167】
薬剤の組み合わせ
本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、1種又は複数の薬物、特にCOX−1遺伝子発現を阻害することによって有害作用を引き起こす1種又は複数の薬物と併用することができる。特に、この薬物は、1種又は複数の例えばNSAIDとすることができる。
【0168】
この薬物は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物と同時に(例えば、それらが混合物であるとき、さらにはそれらが異なる経路で送達されるとき)又は逐次的に(例えば、同じ又は異なる経路で送達されるとき)投与することができる。
【0169】
さらに、又はそれとは別に、本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、例えば、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物と併用することができる。
【0170】
ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物は、本発明による微生物及び/又はその代謝産物と同時に(例えば、それらが混合物であるとき、さらにはそれらが異なる経路で送達されるとき)又は逐次的に(例えば、同じ又は異なる経路で送達されるとき)投与することができる。
【0171】
濃縮物
本発明に使用される組成物は濃縮物の形とすることができる。一般にこれらの濃縮物は、実質的に高濃度の生きた微生物及び/又はその代謝産物を含む。微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「本発明の組成物」又は「組成物」と称することもある。
【0172】
濃縮物の形の粉体、顆粒及び液体組成物は、水で希釈して、或いは水又は他の適切な希釈剤、例えば、乳、鉱油、植物油などの適切な増殖培地に再懸濁させて、すぐに使用できる組成物を得ることができる。
【0173】
濃縮物の形の本発明の組み合わせは、当分野で公知の方法によって調製することができる。
【0174】
本発明の一態様においては、濃縮された形の組成物と本生成物を接触させる。本生成物は、噴霧乾燥及び/又は再懸濁された組成物と接触させることが好ましい。
【0175】
本発明の組成物は、当分野で公知の方法によって噴霧乾燥又は凍結乾燥することができる。
【0176】
噴霧乾燥プロセスを用いて粒子を製造する典型的な方法は、適切な溶媒に溶解された固体材料(例えば、発酵培地中の微生物の培養物)を必要とする。或いは、この材料を非溶媒に懸濁又は乳化して懸濁液又は乳濁液を形成することができる。抗菌剤、安定剤、色素、乾燥プロセスを支援する薬剤などの(上述した)他の成分又は成分をこの段階で場合によっては添加してもよい。
【0177】
次いで、その溶液を霧化して微細な液滴のミストを形成する。液滴はすぐに乾燥チャンバに入り、そこで乾燥ガスと接触する。溶媒は液滴から乾燥ガス中に蒸発して液滴が固化し、それによって粒子が形成される。次いで、粒子は乾燥ガスから分離され、収集される。
【0178】
生成物
本組成物の利点を得ることができるあらゆる生成物を本発明に使用することができる。これらには、果物の砂糖漬け、乳製品、乳製品由来の生成物、化粧品、薬剤生成物などが含まれるが、これらだけに限定されない。微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「本発明の組成物」又は「組成物」と称することもある。
【0179】
例として、本発明の組成物は、清涼飲料、フルーツジュース又は乳清タンパク質を含む飲料、健康茶(health tea)、ココア、乳飲料及び乳酸菌飲料、ヨーグルト及びヨーグルト飲料、チーズ、アイスクリーム、水氷及びデザート、菓子、ビスケット及びケーキミックス、スナック食品、調整食品(balanced food)及び飲料、果実の詰め物、ケアグレーズ(care glaze)、チョコレート菓子の詰め物、チーズケーキ風味の詰め物、果実風味のケーキの詰め物、ケーキ及びドーナツアイシング、即席菓子充填クリーム、クッキーの詰め物、すぐに使用できる菓子の詰め物、低カロリーの詰め物、成人用栄養飲料、酸性ダイズ/ジュース飲料、無菌/滅菌チョコレート飲料、バーミックス(bar mix)、飲料粉末、カルシウム強化ダイズ/プレイム(plaim)及びチョコレートミルク、カルシウム強化コーヒー飲料の成分として使用することができる。
【0180】
本組成物は、さらに、アメリカンチーズソース、粉及び細切りチーズの固化防止剤、チップディップ、クリームチーズ、ドライブレンドホイップトッピング無脂肪サワークリーム、凍結/解凍乳製品ホイッピングクリーム、凍結/解凍安定ホイップチッピング(tipping)、低脂肪及びライトナチュラルチェダーチーズ、低脂肪スイススタイルヨーグルト、発泡冷菓、ハードパックアイスクリーム、表示のわかりやすいハードパックアイスクリームの経済性及び耽溺の改善、低脂肪アイスクリーム:ソフトクリーム、バーベキューソース、チーズディップソース、カテージチーズドレッシング、ドライミックスアルフレッドソース、ミックスチーズソース、ドライミックストマトソースなどの食品の成分として使用することができる。
【0181】
ある態様では、本発明は、発酵ヨーグルト飲料、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、チーズ、発酵クリーム、ミルクを主成分とするデザートなどのヨーグルト製品と関連して使用することができることが好ましい。
【0182】
適切には、本組成物は、さらに、チーズ応用例、肉応用例又は保護培養物(protective culture)を含む応用例の1つ又は複数における成分として使用することもできる。
【0183】
本発明は、食品又は食品成分を調製する方法であって、本発明の組成物と他の食品成分とを混合するステップを含む方法も提供する。
【0184】
有利には、本発明は、本発明の組成物(及び場合によっては他の成分/成分)と接触した生成物に関し、前記組成物が前記生成物の栄養及び/又は健康上の利点を改善することができる量で使用される、生成物に関する。
【0185】
本明細書では「接触」という用語は、本発明の組成物を生成物に間接的又は直接的に適用することを指す。使用することができる適用方法の例としては、本組成物を含む材料中で生成物を処理すること、本組成物を生成物と混合することによる直接的適用、本組成物を生成物表面に噴霧すること、又は生成物を本組成物の調製物に浸漬することが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0186】
本発明の生成物が食料品である場合には、本発明の組成物は、好ましくは、生成物と混合される。或いは、本組成物を食料品の乳濁液又は成分に含めることができる。さらなる選択肢においては、本組成物は、調味料、グレーズ、着色剤混合物などとして適用することができる。
【0187】
一部の応用例では、本組成物は、作用を受ける/処理される生成物の表面上で又は表面に利用できることが重要である。これによって、本組成物は、栄養及び/又は健康上の利点の1つ又は複数の有利な特性を付与することができる。
【0188】
本発明の組成物は、制御された量の生きた微生物を生成物に散在させる、塗布する、且つ/又は含浸するように適用することができる。
【0189】
食品
本発明の組成物は、食品として使用することができ、又は食品の調製に使用することができる。ここで、「食品」という用語は、広い意味で使用され、ヒト用食品並びに動物用食品(すなわち、飼料)を網羅する。好ましい態様においては、食品はヒトの消費用である。
【0190】
食品は、用途及び/又は適用形式及び/又は投与形式に応じて液状又は固体とすることができる。
【0191】
本発明の組成物は、機能食品などの食品として又は食品の調製に使用されるときには、栄養学的に許容される担体、栄養学的に許容される希釈剤、栄養学的に許容される賦形剤、栄養学的に許容されるアジュバント、栄養学的に活性な成分の1個又は複数と組み合わせて使用することができる。
【0192】
本組成物は、乳、スクロース強化乳或いはスクロース及び/又はマルトースを含む乳酸培養液を発酵させるために使用されることが好ましい。本組成物、すなわち、本発明による前記微生物の全成分を含む生成培養液は、成分としてヨーグルト乳に適切な濃度、例えば10から1010cfuの1日量を与える最終生成物濃度などで添加することができる。本発明による微生物は、ヨーグルトの発酵前後に使用することができる。
【0193】
一部の態様では、本発明による微生物は、家畜の飼料、特に(ニワトリなどの)家禽の飼料として、又はその調製に使用される。
【0194】
食品成分
本発明の組成物は、食品成分及び/又は飼料成分として使用することができる。
【0195】
本明細書では「食品成分」又は「飼料成分」という用語は、機能食品又は食料品に栄養補給剤として添加される、又は添加することができる配合物を含む。
【0196】
食品成分は、用途及び/又は適用形式及び/又は投与形式に応じて液状又は固体とすることができる。
【0197】
栄養補助食品
本発明の組成物は、栄養補助食品とすることができ、又は栄養補助食品に添加することができる。
【0198】
機能食品
本発明の組成物は、機能食品とすることができ、又は機能食品に添加することができる。
【0199】
本明細書では、「機能食品」という用語は、消費者に栄養上の効果だけでなく、さらに有益な効果をもたらすことができる食品を意味する。
【0200】
したがって、機能食品は、それらに混合されて純粋に栄養上の効果以外の特定の機能的、例えば、医学的又は生理学的利点を食品に付与する(本明細書に記載されたものなどの)成分又は成分を含む通常の食品である。
【0201】
機能食品の法的定義はないが、この分野に関係がある団体のほとんどは、それらが健康上特定の効果を有するとして市販されている食品であることで一致している。
【0202】
一部の機能食品は食品薬である。ここで、「食品薬」という用語は、消費者に栄養上の効果及び/又は食味の満足だけでなく、治療上の(又は他の有利な)効果をもたらすことができる食品を意味する。食品薬は、食品と医薬品の在来の境界線をまたぐものである。
【0203】
調査によれば、消費者は、心臓疾患に関する機能食品の効能に最も重点を置く。癌予防は、消費者の大きな関心を集める栄養の別の側面であるが、興味深いことにこれは消費者が最も抑制することができないと感じる領域である。実際、世界保健機構によれば、癌の症例の少なくとも35%は食事と関係がある。また、骨粗しょう症、腸の健康及び肥満効果に関する効能も、機能食品の購入を駆り立て、市場開発を進める可能性がある鍵となる要因である。
【0204】
プロバイオティック
一部の適用例では、本発明の組成物中の生きた乳酸微生物は、プロバイオティック培養物効果を発揮することができると考えられる。本発明の組成物にさらなるプロバイオティック及び/又はプレバイオティクスを添加することも本発明の範囲内にある。
【0205】
ここで、プレバイオティックは、
「1種類又は限定された数の有益な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有利に作用する非消化性食品成分」
である。
【0206】
本明細書では「プロバイオティック培養物」という用語は、例えば、十分な数で摂取又は局所適用されたときに、すなわち、1個又は複数の実証可能な健康上の利点を宿主生物に与えることによって宿主生物に有利に作用する(例えば細菌又は酵母を含めて)生きた微生物と定義される。プロバイオティックは、1つ又は複数の粘膜表面における微生物バランスを改善することができる。例えば、粘膜表面は、腸、尿路(urinary tract)、気道又は皮膚とすることができる。本明細書では「プロバイオティック」という用語は、免疫系の有益な支流を刺激し、同時に粘膜表面、例えば腸における炎症反応を減少させることができる生きた微生物も包含する。この点で、抗癌治療並びにアレルギー及び潰瘍性結腸炎の予防用の前記プロバイオティック成分を含む本発明の組成物の使用も企図される。
【0207】
プロバイオティックの摂取量には下限も上限もないが、ヒトなどの宿主生物における1日量として少なくとも10から1010、好ましくは10から10cfuが、健康上の有益な効果を得るのに有効であることが示唆されている。
【0208】
本発明による微生物が有し得るプロバイオティック効果に加えて、本組成物と一緒に含めることができる他の化合物としてプレバイオティクスを提供することも本発明の範囲内である。本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「組成物」と称することができる。本発明の組成物を含む組み合わせのプレバイオティック成分は、大腸における発酵が遅い特徴を有する。かかるプレバイオティクスは、特に結腸の左側における腸管内菌叢に対してプラスの効果を発揮することができる。この腸領域は、障害、特に腸癌及び潰瘍性結腸炎を特に起こしやすい。
【0209】
プレバイオティクスは、一般に、上部消化管において分解又は吸収されない非消化性炭水化物(オリゴ又は多糖)又は糖アルコールである。市販品に使用され、本発明に有用な公知のプレバイオティクスとしては、イヌリン(FOS(fructo-oligosaccharide))、GOS又はTOS(transgalacto-oligosaccharides)などが挙げられる。他の適切なプレバイオティクスとしては、パラチノースオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴマー、非分解性デンプン、ラクトスクロース、ラクツロース、ラクチトール、マルチトール、ポリデキストロース(すなわち、Litesse(登録商標))などが挙げられる。
【0210】
プレバイオティックは、本発明による微生物及び/又はその代謝産物と同時に(例えば、一緒の混合物として、或いは同じ又は異なる経路によって同時に送達される)又は逐次的に(例えば、同じ又は異なる経路によって)投与することができる。
【0211】
本発明は、細胞中のCOX−1 mRNAの量を少なくとも増加させるのに使用される医薬品の製造におけるプレバイオティックと組み合わせた微生物及び/又はその代謝産物の使用も企図する。
【0212】
シンバイオティクス
本発明は、組み合わせたときにシンバイオティクスとなるプレバイオティクスとプロバイオティクスの両方を、本発明の組成物と一緒の組み合わせにおける成分として使用することも企図する。本発明による微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「組成物」と称することができる。この目的は、新しい有益な細菌の効果と、体が持つ有益な細菌の刺激とを組み合わせることである。これらの一部は強力で相乗的な栄養及び/又は健康上の効果をおそらく示し得るので、かかる混合物の開発及び消費には大きな可能性がある。
【0213】
したがって、本発明の組成物は、消費者にシンバイオティック効果をもたらすことができるさまざまな成分を含むように特異的に設計することができる。
【0214】
薬剤
本発明の組成物は、薬剤として使用することができ、又は薬剤の調製に使用することができる。ここで、「薬剤」という用語は、広い意味で使用され、ヒト用薬剤並びに動物用薬剤(すなわち、獣医学用途)を網羅する。好ましい態様においては、本薬剤はヒト用及び/又は畜産用である。
【0215】
本薬剤は、本質的に治療でも対症でも予防でもよい健康維持目的用とすることができる。本薬剤は、診断目的とすることさえできる。
【0216】
本発明の組成物は、薬剤として又は薬剤の調製に使用されるときには、薬剤として許容される担体、薬剤として許容される希釈剤、薬剤として許容される賦形剤、薬剤として許容されるアジュバント、薬剤として活性な成分の1個又は複数と組み合わせて使用することができる。
【0217】
本薬剤は、用途及び/又は適用形式及び/又は投与形式に応じて液状又は固体とすることができる。
【0218】
薬剤成分
本発明の微生物は薬剤成分として使用することができる。ここで、本組成物は、唯一の活性成分とすることができ、又はいくつか(すなわち、2個以上)の活性成分の少なくとも1個とすることができる。
【0219】
薬剤成分は、用途及び/又は適用形式及び/又は投与形式に応じて液状又は固体とすることができる。
【0220】
形態
本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、単体でも或いは他の成分又は成分との組み合わせで存在しても任意の適切な形態で使用することができる。本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書では「組成物」と称することもある。同様に、本発明の組成物と他の成分及び/又は成分(すなわち、食品成分、機能食品成分、薬剤成分などの成分)との組み合わせも、任意の適切な形態で使用することができる。
【0221】
本発明の微生物は、固体又は液体調製物或いはその代替物の形態で使用することができる。固体調製物の例としては、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤及び湿らせることができ、噴霧乾燥することができ、又は凍結乾燥することができる散剤が挙げられるが、これらだけに限定されない。液体調製物の例としては、水溶液、有機又は水系有機溶液、懸濁液及び乳濁液が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0222】
形態の適切な例としては、即時型、遅延型、改変型、持続型、パルス型又は制御型放出用途用の、香味料又は着色剤を含むことができる錠剤、丸剤、カプセル剤、オビュール(ovule)、液剤又は懸濁液剤の1個又は複数が挙げられる。
【0223】
例として、本発明の組成物が、機能性成分として使用される場合など錠剤で使用される場合には、錠剤は、微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリシンなどの賦形剤;デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウム、ある種の複合シリケートなどの崩壊剤;ポリビニルピロリドン、HPMC(hydroxypropylmethylcellulose)、HPC(hydroxypropylcellulose)、スクロース、ゼラチン、アラビアゴムなどの顆粒化結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリン、タルクなどの潤滑剤の1個又は複数も含むことができる。
【0224】
これらの形態を調製するのに使用される栄養学的に許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ろう、ペトロラタム、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘ちゅう性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエスラル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0225】
これらの形態に好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、高分子量ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0226】
水性懸濁液及び/又はエリキシル剤の場合には、本発明の組成物は、さまざまな甘味料又は香味料、着色剤又は色素、乳化剤及び/又は懸濁剤、水、プロピレングリコール、グリセリンなどの希釈剤並びにそれらの組み合わせと混合することができる。
【0227】
これらの形態としては、ゼラチンカプセル剤;繊維カプセル剤、繊維錠剤など;さらには繊維飲料も挙げることができる。
【0228】
形態のさらに別の例は、例えばクリームの形態である。一部の態様では、微生物及び/又はその代謝産物は、例えば、日焼けクリーム及び/又は日焼け手入れ用クリームなどの薬剤及び/又は化粧品クリームに含めることができる。
【0229】
一態様においては、本発明の組成物は、例えば気道投与用の例えば点鼻薬の形のエアゾール剤として投与することができる。
【0230】
以下の実施例及び図を参照して、単たる例として本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0231】
実験1:Cox−1/Cox−2発現パターンに対する選択された微生物の代謝産物及びビフィドバクテリウムsp−420の効果
材料及び方法
ヒトの結腸直腸癌細胞系Caco−2を、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco社製)及び1×非必須アミノ酸(Gibco社製)を補充した無血清DMEM(Dulbeccos'MEM)(Gibco社製)中で37℃及び5%COで増殖させた。細菌を添加せずに増殖させるときには、20Uml−1ペニシリン(Gibco社製)、20μgml−1ストレプトマイシン(Gibco社製)及び0.5μgml−1アンホテリシン(Gibco社製)を培地に添加した。ビフィドバクテリウムsp−420は、カゼインペプトンのトリプシン消化産物10gl−1、肉抽出物5gl−1、酵母エキス5gl−1、グルコース10gl−1、KHPO 3gl−1、0.1%(体積/体積)Tween 80、1%アスコルビン酸及び0.05%システイン−HClからなるBIF培地pH6.8中で嫌気的に37℃で48時間増殖させた。対数期培養物2mLを4000rpmで3分間遠心分離した。細胞ペレットをDMEM 1.6mLに懸濁させた。新しいビフィドバクテリウム培地及び馴化ビフィドバクテリウム培地からの細菌によって短鎖有機酸が産生されるかどうかをガスクロマトグラフィーを用いて試験した。
【0232】
Cox−1/Cox−2発現パターンに対するさまざまな治療の効果を明らかにするために、約500000個のCaco−2細胞/ウェルを24ウェル細胞培養プレートに蒔いた。細胞を24時間付着させ、その後、上記成分以外の添加成分を含まない新しい培地(総体積1mL/ウェル)(対照処理、抗生物質添加及び無添加)或いは5mM酪酸ナトリウム、5mMプロピオン酸ナトリウム、5mM酢酸ナトリウム又は5mM乳酸ナトリウムを含む抗生物質補充培地を含む新しい培地(総体積1mL/ウェル)で培地を交換した。また、抗生物質を含まないが、上記細菌懸濁液100μLがその中に添加された0.2μm anopore膜組織培養インサート(Nunc社製、Denmark)を含むウェルが調製された。
【0233】
24時間曝露後、培地及び培養インサートを廃棄し、細胞を溶解し、Qiagen社(Germany)製RNEasy Mini Kitを用いてRNAを抽出した。同じ製造者のRNase free DNaseを用いてDNAを消化した。逆転写は、High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems社製、USA)を製造者の指示に従って用いて実施された。Cox−1/Cox−2発現パターンは、ABIPrism 7000 Sequence Detection装置(Applied Biosystems社製)のデフォルト設定を用いて実時間定量TaqMan PCR(Holland et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA Aug 15; 88(16): 7276-80;及びLivak and Scmittgen, 2001 Methods Dec; 25(4): 402-8)によって求められた。
【0234】
結果と考察
表1及び図1に、さまざまな治療におけるCox−1及びCox−2の相対発現レベルを示す。従来技術によれば、酪酸塩及びプロピオン酸塩はCox−2発現に対して低下効果を有することが知られている。したがって、これらの化合物は対照として入れられた。
【0235】
【表1】

【0236】
図1からわかるように、酪酸塩、プロピオン酸塩及びビフィドバクテリウムsp.420は、Cox−1/Cox−2比を増加させる。特に、これらはCox−1発現レベルを増加させる。Cox−1酵素活性の産物は本質的に保護的であるのに対して、Cox−2産物は炎症及び発癌と関連するので(Vane, 2000 J Physiol Pharmacol Dec; 51(4 Pt 1): 573-86及びPrescott and Fitzpatrick, 2000 Biochim Biophys Acta. Mar 27; 1470(2): M69-78)、Cox−1/Cox−2発現パターンにおけるこの種の効果は有利と考えられる。
【0237】
Cox−1酵素活性の阻害は有害となり得る。すなわち、これは非ステロイド抗炎症薬の周知の副作用の主因である。in vivoでは、Cox−1転写レベルが減少するさまざまな状況において同様に有害な症状が現れる可能性がある。これらの状況、すなわちCox−1酵素活性の阻害とCox−1転写の減少の両方において、宿主のシクロオキシゲナーゼ発現を調節可能な微生物(又はその代謝産物)などの薬剤を使用して、十分なCox−1酵素活性が得られるようにCox−1発現レベルを増加させることによってCox−1発現レベルを正常化することができる。
【0238】
表2に濾過した新しい馴化ビフィドバクテリウム増殖培地の揮発性脂肪酸含有量を示す。
【0239】
【表2】

【0240】
表からわかるように、ビフィドバクテリウムsp.420は酢酸塩及び乳酸塩を産生するが、酪酸塩は極少量であり、プロピオン酸塩は産生されない。従来技術によれば、酪酸塩及びプロピオン酸塩はCox−2発現に対して低下効果を有することが知られている。本研究では、
1)ビフィドバクテリウムsp.420はCox−1/Cox−2発現パターンに対して有益な効果を有し、
2)酪酸塩又はプロピオン酸塩の産生以外の要因は、Cox−1/Cox−2発現パターンに対してビフィドバクテリウムsp.420が有する効果に関連がある
ということが明らかになる。
【0241】
本発明者らは、発現パターンに影響を及ぼすことができる微生物及び/又は(例えば、微生物の少なくとも1個の代謝産物を含む)微生物懸濁液を用いて、腸の障害を含めて多数の障害において見られる歪んだCox−1/Cox−2発現パターンをあらゆる既知の副作用なしに修正することができると結論する。微生物又は(例えば、微生物の少なくとも1個の代謝産物を含む)その微生物懸濁液を用いて発現パターンを改変することによって、細胞、組織、器官又は生物の状態を腫瘍原性(tumourigenic)/発癌性状態から抗腫瘍原性/抗発癌性状態に移行することができる。
【0242】
実験2:腸上皮Cox−1/Cox−2発現パターンに対する選択された微生物種の効果
材料及び方法
2種類のビフィドバクテリウム(ビフィドバクテリウムsp.420及びビフィドバクテリウム ロンガム913)を実験1に記載されたように培養した。ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)770、エシェリキア コリ(Escherichia coli)(ATCC 1175)及びサルモネラ エンテリティディス(Salmonella enteritidis)をMRSブロス(Becton Dickinson社製、USA;ラクトバチルス)又はTSB(tryptic soy broth、LAB M社製、England;大腸菌及びS.エンテリティディス)中で好気的に37℃で増殖させた。コンフルエントな培養物を氷上で冷却することによって細菌増殖を停止させ、その後フローサイトメトリー(FACSCalibur、Becton Dickinson社製)によって細胞密度を測定した。培養上清を0.22μm無菌フィルターユニット(Millipore社製、USA)によって濾過した。上清及び新しいBIF、MRS及びTSB培地の各短鎖有機酸含有量をガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0243】
濾過した細菌培養上清を、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco社製)及び1×非必須アミノ酸(Gibco社製)を補充した無血清ダルベッコMEM(Gibco社製)で1/10希釈した。次いで、Cox−1/Cox−2発現パターンに対する可溶性微生物代謝産物の効果を、実験1に記載されたCaco−2細胞に基づく曝露試験によって明らかにした。2種類の対照、すなわち、Caco−2細胞にDMEMのみが供給された基準レベル対照(以後、対照と称する)と、DMEMで希釈した10%未使用BIF、MRS又はTSB培地がcaco−2細胞に供給された3個の細菌増殖培地対照とを実験に含めた。後者の対照は、Cox−1/Cox−2発現パターンに見られる潜在的変化が、細菌増殖培地のある成分によって引き起こされないことを確認するために実験に含めた。
【0244】
結果と考察
表3及び図2に、6種類の異なる菌種によって産生された代謝産物又は新しい細菌培養培地に曝露されたCaco−2細胞におけるCox−1及びCox−2の発現レベルを対照処理とともに示す。
【0245】
【表3】

【0246】
新しい細菌培養培地はCox発現プロファイルに対してほとんど効果を示さなかったが、TSB培地は対照処理の約2倍のCox−2を誘導した。ビフィドバクテリウムによって産生された代謝産物によって、22時間以内にCox−1発現が2.5倍(ビフィドバクテリウムsp.420)及び3.2倍(B.ロンガム)になり、同時にCox−2発現が減少した(B.sp.420及びB.ロンガムそれぞれ0.5及び0.6倍)。L.アシドフィルスは異なる効果を示した。すなわち、Cox−1及びCox−2発現レベルは未処理対照の1.7及び1.3であった。これらの変化は、新しいMRS培地によって引き起こされた変化(Cox−1及びCox−2それぞれ1.6及び1.0)と識別することが困難であった。そのため、L.アシドフィルスが何らかの効果を持つかどうかは疑わしい。大腸菌及びS.エンテリティディスはCox−1発現にほとんど変化をもたらさなかったがCox−2をわずかに上方制御した(それぞれ1.6及び1.5)。しかし、この誘導は、新しいTSB培地によるものよりも小さい。したがって、これら2種類の細菌種によって産生される代謝産物は、おそらく、Cox発現パターンに有意な効果を持たない。
【0247】
これらの結果に基づいて、宿主シクロオキシゲナーゼ発現プロファイルを調整する能力は、すべてのプロバイオティック及び非プロバイオティック微生物に共通しているわけではないと結論することができる。特定の微生物のみがかかる効果をもたらすことができる。この実験においては、試験されたビフィドバクテリウムが、酪酸塩又はプロピオン酸塩(実験1)を用いて得られるのと類似した抗腫瘍及び抗炎症効果を示したことが明白である。ともにプロバイオティクスとして使用されるL.アシドフィルス及び大腸菌はかかる効果を持たなかった。病原体であるS.エンテリティディスもかかる効果を持たなかった。
【0248】
本願の教示に従う当業者が、プロバイオティック及び非プロバイオティック微生物をスクリーニングして、本明細書に具体的に教示される微生物に加えて、特許請求の効果を生じることができる特定の微生物を特定できることは言うまでもない。特に、当業者は、上で教示された「Caco−2細胞に基づく曝露アッセイ」によって微生物をスクリーニングすることができる。未処理対照よりもCox−1発現レベルを増加させる微生物及び/又はCox−1/Cox−2比を増加させる微生物は、本発明に従って使用することができる微生物とすることができる。
【0249】
COX1及び2は、胃腸の健康に重要な役割を果たす。すなわち、Cox−2の慢性的過剰発現は炎症性及び癌性疾患と関連があるのに対して、Cox−1は構成的に発現され、その阻害は胃腸の機能不全をもたらす。本発明者らは、腸上皮遺伝子発現プロファイルに対する食品成分の効果を検討するために、細胞培養に基づく標準スクリーニングアッセイを設定した。このモデルにおいて、本発明者らは、腸細胞様Caco−2細胞におけるCox遺伝子の発現レベルに対する2種類のプロバイオティック菌種(ビフィドバクテリウムsp.420及びラクトバチルス アシドフィルス)の効果を検討した。ビフィドバクテリウム代謝産物は、Cox−1転写量を2.5倍に増加させ同時にCox−2 mRNA量を1/2に減少させることによってCox−1/Cox−2比を変化させた。L.アシドフィルスは、Cox−1又はCox−2量に対して効果を示さなかった。これら2種類の細菌は酪酸塩を生成しなかったので、シクロオキシゲナーゼ発現に対するビフィドバクテリウムsp−420の有益な効果は酪酸塩によって媒介されなかった。これは、プロバイオティック微生物と宿主シクロオキシゲナーゼ発現プロファイルの直接的な関係を示す最初の証拠である。食品薬がかかる健康増進性の転写変化をもたらすかどうかは、新規の抗炎症性及び抗癌性機能食品成分の選択における重要な判定基準となり得る。
【0250】
実験3:ラットにおける非ステロイド抗炎症薬に起因する腸の炎症に対する生きたビフィドバクテリウム及びベタインの効果
材料及び方法
以前に記述されたラットモデルを使用して、インドメタシンによって誘発される胃腸損傷を検討した(Meddings and Gibbons, Gastroenterology 1998; 114: 83-92参照)。手短に述べると、オスのウィスターラットを使用し、10匹のラットが各投与群に含まれた。5通りの異なる治療、すなわち、インドメタシン処理のない対照群、介入治療のないインドメタシン対照群、10ビフィドバクテリウム/ラットを含むインドメタシン、1010ビフィドバクテリウム/ラットを含むインドメタシン及びベタイン(200mg/ラット)を含むインドメタシンが含まれた。ビフィドバクテリウム又はベタインを用いた又は用いない7日間の介入後、インドメタシン(10mg/kg)が経口で単回投与された。また、スクロース、ラクツロース、マンニトール及びスクラロースの混合物を経口投与して、GI(gastrointestinal)透過性を測定した。インドメタシン投与から16時間後、ラットを屠殺する前に尿試料を得た。胃及び腸の粘膜を病理医が調べ、健康そうに見える粘膜の組織試料を胃、近位及び遠位小腸、盲嚢並びに近位及び遠位結腸からRNA単離用に収集した。RNAを単離し、COX−1及びCOX−2(それぞれcyclooxygenase-1及び-2)の発現をQPCRによって測定した。
【0251】
結果と考察
実験中、死亡も体重増加の差も認められなかった。インドメタシン投与による明白な効果がラットの腸組織において認められた。インドメタシンは、主に胃底部に潰瘍を形成したが、幽門胃にも潰瘍を形成した。腸において他の著しい病理学的変化は認められなかった(図3)。病理学的傷害の観察と一致して、腸内壁は透過性になった。インドメタシン投与後、マーカー糖の尿濃度のかなりの増加が認められた。ビフィドバクテリウムを供給すると、病理学的損傷域が減少し、特にインドメタシン投与によって罹患したラットの数が減少した。ベタインも、投与に起因する損傷域を減少させる傾向を示した。生きたビフィドバクテリウムで治療された群において、透過性のかなりの減少が損傷域の減少と同時に認められた。これに対して、ベタインを用いた介入によって尿糖濃度は減少しなかった(図4)。健康そうに見える粘膜から腸全長にわたって得られた組織試料においてcox−1又はcox−2の発現に差は認められなかった。
【0252】
これらの結果に基づいて、Caco−2細胞モデルから得られる炎症性応答がビフィドバクテリウムによって低減されるというin vitroでの知見がラットモデルにおいて確認されたと結論することができる。シクロオキシゲナーゼ発現に対する効果を有する化合物のすべてが、非ステロイド抗炎症薬の胃腸への副作用を軽減できるわけではない。ベタインは、インドメタシン投与に起因する透過性に対して効果がなかった。しかし、損傷域はいくらか減少した。ベタインに起因する保護効果は、ビフィドバクテリウムによって媒介される保護効果とは異なる機序によって媒介されるのかも知れない。明瞭な損傷を示さない腸組織中のcox−1又はcox−2の発現プロファイルにおいてビフィドバクテリウムによる介入効果がないことは、この効果が、粘膜中の易感染域に限定されることを示している。この特徴によって、例えば非ステロイド薬物による明白な並行投与のない健康な個体においても、試験されたビフィドバクテリウムが安全に使用される。
【0253】
実験4:ラットにおける非ステロイド抗炎症薬に起因する腸の炎症に対する生きたビフィドバクテリウムとベタインの組み合わせ効果
材料及び方法
上記実験3に記載されたオスのウィスターラットを以下の投与群、すなわち、対照、対照としてのインドメタシン投与群、並びに生きたビフィドバクテリウム(1日量1010/動物)及びベタイン(1日量200mg/動物)の別個の又は組み合わせによる介入治療を受けた投与群3から5に分ける。損傷は屠殺したラットのみから求める。
【0254】
結果と考察
予備的調査によれば、異なる投与群における死亡又は体重増加の差は認められない。ビフィドバクテリウムによる明白な保護効果は、消化管中の損傷域の減少によって繰り返し示される。また、ベタイン治療は、以前に観察された損傷域を減少させる傾向がある。ベタインとビフィドバクテリウムの組み合わせは相乗効果を示し、損傷域はベースラインの対照群と大きく異ならない。2種類の成分の相乗作用は、実験2において粘膜の透過性に対する異なる効果によって示されたように、おそらく、保護効果を媒介する異なる機序に帰着する。ベタインとある種の生きたビフィドバクテリウムの併用は、生きたビフィドバクテリウムのみの使用、すなわち、ベタインなしの使用と比較して、腸の炎症チャレンジに対してさらなる保護作用が与えられ得ると結論される。
【0255】
上記明細書に述べられたすべての刊行物を参照により本明細書に援用する。本発明に記載の方法及びシステムの様々な改変形態及び変更形態が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明がかかる具体的実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】Cox−1/Cox−2遺伝子発現パターンに対する酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩及び同時培養ビフィドバクテリウムsp.420の効果を示すグラフである。
【図2A】Cox−1発現に対するビフィドバクテリウム系統420及びL.アシドフィルス(acidophilus)の効果を示すグラフである。ビフィドバクテリウムはかなりの(2.7倍)増加を示すが、L アシドフィルスはほとんど効果がない。
【図2B】Cox−2発現に対するビフィドバクテリウム系統420及びL.アシドフィルスの効果を示すグラフである。ビフィドバクテリウムはかなりの(40%)増加を示す。L アシドフィルスはかなりの(30%)増加を示す。
【図2C】Cox−1/Cox−2比に対するビフィドバクテリウム系統420及びL.アシドフィルスによって産生される代謝産物の効果を示すグラフである。ビフィドバクテリウムはかなりの(2.7倍)増加を示すが、L アシドフィルスはほとんど効果がない。
【図2D】腸上皮のCox−1/Cox−2発現パターンに対する5種類の菌種によって産生される可溶性代謝産物の効果を示すグラフである。微生物代謝産物は、DMEMで希釈された10%濾過細菌増殖培地として与えられた。対照処理においてはCaco−2細胞はDMEM中に維持され、他の対照処理(新しいBIF、MRS又はTSB培地)においてはCaco−2細胞は、DMEMで希釈された10%未馴化細菌増殖培地として与えられた。ビフィドバクテリウムは、Cox−1/Cox−2比の明確な増加を示すのに対して、L.アシドフィルス、大腸菌及びS.エンテリティディスはほとんど効果がない。
【図3】5つの異なる投与群、すなわち、基準対照群、インドメタシン曝露群、ビフィドバクテリウム(生きた細菌の1日量10/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群、ビフィドバクテリウム(生きた細菌の1日量1010/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群、及びベタイン(1日量200mg/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群のラットにおいて観察された全損傷域(mm)を示すグラフである。各投与群は10匹のラットを含んだ。
【図4】5つの異なる投与群、すなわち、基準対照群、インドメタシン曝露群、ビフィドバクテリウム(生きた細菌の1日量10/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群、ビフィドバクテリウム(生きた細菌の1日量1010/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群、及びベタイン(1日量200mg/動物)の介入を含むインドメタシン曝露群に分類されるラットにおけるスクロース、マンニトール、ラクツロース及びスクラロースの尿濃度を示すグラフである。各投与群は10匹のラットを含んだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させるのに使用される医薬品の製造における微生物及び/又はその代謝産物の使用。
【請求項2】
微生物及び/又はその代謝産物が、さらに細胞中のシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
微生物及び/又はその代謝産物が、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に前記細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる、請求項1又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害並びに内毒素ショックの1つ又は複数の予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における、細胞中の少なくともCOX−1 mRNAの量を増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物の使用。
【請求項5】
免疫調節剤及び/若しくは抗炎症薬に対する対象のトレランスを上昇させるのに使用され、且つ/又は抗生物質に対する対象のを上昇させるのに使用される医薬品の製造における、細胞中の少なくともCOX−1 mRNAの量を増加させることができる微生物及び/若しくはその代謝産物の使用。
【請求項6】
非ステロイド抗炎症薬に付随する副作用の予防及び/又は治療に使用される医薬品の製造における、細胞中の少なくともCOX−1 mRNAの量を増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物の使用。
【請求項7】
細胞中のCOX−1 mRNA量が未処理細胞と比べて2倍に増加する、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
微生物が細菌である、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
微生物がビフィドバクテリウム属である、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
微生物が、ビフィドバクテリウムsp.420、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
微生物及び/又はその代謝産物が、i)ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物、及び/又はii)非ステロイド抗炎症薬と併用される、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
非ステロイド抗炎症薬と、細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物とを一緒に含む医薬品。
【請求項13】
微生物が細菌である、請求項12に記載の医薬品。
【請求項14】
微生物がビフィドバクテリウム属である、請求項12又は請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
微生物が、ビフィドバクテリウムsp.420、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数である、請求項14に記載の医薬品。
【請求項16】
医薬品が、さらに、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物を含む、請求項12から15のいずれかに記載の医薬品。
【請求項17】
治療を必要とする対象におけるCOX−1遺伝子低発現を治療する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
治療を必要とする対象における疾患、障害又は症状を治療する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項19】
障害、疾患又は症状が、皮膚障害又は疾患;消化管癌;腸の炎症性異常及び疾患;腸粘膜の外傷;腸疾患;手術及び皮膚創傷からの回復;下痢;腎症;動脈硬化症;高血圧;肝障害;自己免疫疾患;加齢;疲労;糸球体腎炎;病原微生物による感染症;円形脱毛症;結膜炎;角膜炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;壊死性腸炎;腸の病変;セリアック病;直腸炎;貧血;サルコイドーシス;肺線維症;特発性間質性肺炎;慢性関節リウマチ;多発性硬化症;アルツハイマー病;食欲不振症;片頭痛、変形性関節炎;喘息;枯草熱;歯周病;泌尿生殖器疾患;呼吸器障害並びに内毒素ショックの1つ又は複数とすることができる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
家畜、好ましくは家禽、好ましくはニワトリにおける体重増加の低下を予防及び/又は治療する方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項21】
対象の健康を改善させる方法であって、前記対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項22】
非ステロイド抗炎症薬の投与に付随する副作用を治療及び/又は予防する方法であって、対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させる微生物及び/又はその代謝産物の有効量を前記患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
前記微生物及び/又はその代謝産物が、さらに細胞中のシクロオキシゲナーゼmRNAの量を変更する、請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
微生物及び/又はその代謝産物が、細胞中のCOX−1 mRNA量を増加させ、同時に前記細胞中のCOX−2 mRNAの量を減少させる、請求項17から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
微生物が細菌である、請求項17から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記微生物がビフィドバクテリウム属である、請求項17から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
微生物が、ビフィドバクテリウムsp.420、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数である、請求項17から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
対象が、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物の有効量をさらに投与される、請求項15から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
1個又は複数の区画を含む薬剤パックであって、少なくとも1個の区画が、対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる1種又は複数の微生物及び/又はその代謝産物を含み、同じ区画又はさらに別の区画が1個又は複数の非ステロイド抗炎症薬を含む、薬剤パック。
【請求項30】
微生物が細菌である、請求項29に記載のパック。
【請求項31】
微生物がビフィドバクテリウム属である、請求項29又は請求項30に記載のパック。
【請求項32】
微生物が、ビフィドバクテリウムsp.420、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数である、請求項29から31のいずれかに記載のパック。
【請求項33】
少なくとも1個の区画が、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物を含む、請求項29から32のいずれかに記載のパック。
【請求項34】
薬剤組成物の調製方法であって、対象の少なくとも1個の細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる1種又は複数の微生物及び/又はその代謝産物を、1個又は複数の非ステロイド抗炎症薬及び薬剤として許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合するステップを含む、方法。
【請求項35】
ベタイン若しくは薬剤として活性なその塩又はベタイン置換化合物と混合するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細胞中のCOX−1 mRNA量を少なくとも増加させることができる微生物及び/又はその代謝産物と、ベタイン若しくは薬剤として許容されるその塩又はベタイン置換化合物とを一緒に含む薬剤。
【請求項37】
微生物が細菌である、請求項36に記載の薬剤。
【請求項38】
微生物がビフィドバクテリウム属である、請求項36又は請求項37に記載の薬剤。
【請求項39】
微生物が、ビフィドバクテリウムsp.420、ビフィドバクテリウム ラクチス、ビフィドバクテリウム ロンガム、ビフィドバクテリウム ブレーベ、ビフィドバクテリウム アニマリスの1種又は複数である、請求項38に記載の薬剤。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−507485(P2007−507485A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530750(P2006−530750)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003273
【国際公開番号】WO2005/032567
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】