説明

非ハロゲン性難燃性熱可塑性ポリウレタン

【課題】機械的強度および加工性を損なわないながらも、難燃性特徴を熱可塑性ポリウレタン組成物に与える有効な非ハロゲン化された難燃剤の組合せの提供。
【解決手段】有機ホスフィネート成分、有機ホスフェート成分および多価アルコールを含む難燃性パッケージを有する難燃性熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物が開示される。難燃性成分は、TPU組成物の総重量を基準として、約5重量%〜約40重量%のホスフィネート化合物;約5重量%〜約20重量%のホスフェート化合物;および約0.1重量%〜約15重量%の多価アルコールの量で存在し得る。TPU組成物を製造するプロセス、ならびにワイヤおよびケーブルの構成のジャケットとしてTPU組成物を使用してワイヤおよびケーブルの構成を製造するプロセスが開示される。このTPU組成物は、限界酸素指数試験および/またはUL 94垂直燃焼試験によって測定した場合、優れた難燃性能を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2005年4月13日に出願した米国出願第60/671,009号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、難燃性熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物に関し、そしてより詳細には、複数の非ハロゲン性難燃剤を含む難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物に関する。このTPU組成物は、ワイヤおよびケーブルでの応用、インフレートフィルム、成形応用などのような、高い燃焼性能が所望される適用に役立つ。本発明はまた、TPU組成物を製造するためのプロセス、ならびにワイヤおよびケーブルジャケットを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ハロゲン添加物(例えば、フッ素、塩素および臭素に基づくもの)は、TPU組成物に難燃性を与えるために用いられている。近年、特定の最終用途応用は、TPU組成物がハロゲンを含まないことを指定している。これは、TPU配合者が、以前に使用されたハロゲン添加物を置き換えるための他の難燃剤を探すことを必要とした。
【0004】
特許文献1は、難燃剤としてホスフィン酸塩またはジホスフィン酸塩を含む、弾性の床カバー材料を開示する。
【0005】
Ecksteinらに対して発行された特許文献2は、TPU組成物における唯一の有機難燃性添加物としてのメラミンシアヌレートの使用を開示する。
【0006】
Schlosserらに対して発行された特許文献3は、特定のホスフィネート成分および/またはジホスフィネート成分ならびに合成無機化合物および/または鉱物製品を含む、難燃剤の組合せを開示する。さらに、この開示された難燃剤の組合せは、窒素含有成分を含み得る。
【0007】
Jeneweinらに対して発行された特許文献4は、特定のホスフィネート成分および/またはジホスフィネート成分、ならびに特定の窒素含有成分を含む、熱可塑性ポリマーのための難燃剤の組合せを開示する。
【0008】
Jeneweinらに対して発行された特許文献5は、熱可塑性ポリマーのための、特定のリン含有成分および特定の窒素含有成分を含む、難燃剤の組合せを開示する。
【0009】
Schlosserらに対して発行された特許文献6は、メラミンから誘導した特定の成分と組み合わせた特定のホスフィネート成分および/またはジホスフィネート成分を含む、難燃剤の組合せを開示する。
【0010】
Nassらに対して発行された特許文献7は、特定のホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩ならびに特定の窒素含有ホスフェート成分を含む、難燃剤の組合せを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0011401号明細書
【特許文献2】米国特許第6,777,466号明細書
【特許文献3】米国特許第6,547,992号明細書
【特許文献4】米国特許第6,365,071号明細書
【特許文献5】米国特許第6,509,401号明細書
【特許文献6】米国特許第6,255,371号明細書
【特許文献7】米国特許第6,207,736号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、機械的強度および加工性を損なわないながらも、難燃性特徴を熱可塑性ポリウレタン組成物に与える有効な非ハロゲン化された難燃剤の組合せが当該分野において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
例示的な実施形態の1つの目的は、受け入れられる加工特性および機械的特性を呈するとともに所望の難燃性能を提供する非ハロゲン性難燃性TPU組成物を提供することである。
【0014】
例示的実施形態の1つの目的は、ワイヤおよびケーブルの構成においてジャケットとして使用され得るTPU組成物を提供することである。
【0015】
例示的実施形態の1つの目的は、ワイヤおよびケーブルの構成における難燃性ジャケットに適しているTPU組成物を作製するためのプロセスを提供することである。
【0016】
例示的実施形態の1つの目的は、熱可塑性ポリウレタンについて使用される難燃性パッケージを提供することである。
【0017】
例示的実施形態の1つの目的は、熱可塑性ポリウレタン組成物を難燃性にするための方法を提供することである。
【0018】
例示的実施形態の1つの目的は、難燃性TPU組成物を利用した、ワイヤおよびケーブルジャケットの構成を提供することである。
【0019】
本発明の一態様において、熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物が提供される。この組成物は、少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマーおよび難燃性パッケージを含む。
【0020】
一つの態様では、この組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、および約5重量%〜約40重量%の専売ホスフィネート化合物Exolit(登録商標)OP1311;約5重量%〜約20重量%の専売非ハロゲン含有ホスフェート難燃剤NcendX(登録商標)P−30;および約0.1重量%〜約15重量%のジペンタエリトリトールを含み、ここで、この重量%は、熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準とする。この組成物は、約0重量%〜約10重量%の五ホウ酸アンモニウムまたはホウ酸亜鉛をさらに含み得る。
【0021】
別の態様においては、熱可塑性ポリウレタンポリマーは、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタンおよびそれらのブレンドから選択される。
【0022】
別の態様においては、この組成物は、約0重量%〜約5重量%の無機難燃性成分(例えば、タルク、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、酸化アンチモン、クレー、モンモリロナイトクレーおよびそれらの混合物)を含む。
【0023】
別の態様においては、この組成物は、有機難燃性成分として、ホスフィネート化合物、ホスフェート化合物ベースの難燃剤および多価アルコールを含む。
【0024】
別の態様においては、難燃性パッケージは、3種の非ハロゲン化難燃性成分を含み、ここで、この難燃性パッケージは、熱可塑性ポリウレタン組成物に少なくとも一つの所定の難燃性特徴を与えるのに十分な量で存在する。
【0025】
別の態様においては、この所定の難燃性特徴は、ASTM D−2863に従って測定した場合の少なくとも約35の制限酸素指数である。
【0026】
別の態様においては、所定の難燃性特徴は、Underwriters Laboratory 94垂直燃焼試験(UL 94)に従って測定した場合の、約75ミル(1.90mm)の厚さのV−0燃焼評価等級である。別の態様においては、この所定の難燃性特徴は、適用可能な標準(例えば、UL 1581、UL 1666、CSA FT−1、FT−4、UL 1685、IEEE 1202、IEC 332−3など)に従って、ワイヤおよびケーブルジャケットにおいて役立つ組成物のための、少なくとも35の制限酸素指数(Limited Oxygen Index;LOI)である。
【0027】
別の態様においては、難燃性パッケージは、ホスフィネートベースの難燃剤および多価アルコールを含む。この難燃性パッケージは、無機難燃性成分をさらに含み得る。
【0028】
別の態様においては、熱可塑性ポリウレタン組成物を難燃性にする方法において、難燃性パッケージが、熱可塑性ポリウレタン組成物に少なくとも一つの所定の難燃性特徴を与えるのに十分な量において用いられる。
【0029】
別の態様においては、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびそれらの混合物から選択されるポリマー中間体を含む熱可塑性ポリウレタン成分;ポリイソシアネート;ならびに鎖伸長剤は、熱可塑性ポリウレタンを剪断混合し得る混合デバイスにおいて混合される。難燃性パッケージは混合デバイスに加えられ、ここで、この難燃性パッケージは、Exolit(登録商標)OP 1311(専売のホスフィネートベースの添加物)およびジペンタエリトリトールを含む。
【0030】
別の態様においては、ワイヤおよびケーブルの構成が、少なくとも一つの金属導体上へ非導電性ポリマー材料の絶縁層を押し出しし成形する工程;および難燃性ジャケットを押し出し成形してこの絶縁された金属導体を覆う工程によって製造される。このジャケットは、熱可塑性ポリウレタン組成物であり、この熱可塑性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準として、少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;ホスフィネート化合物を含む、約5重量%〜約40重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;ホスフェートベースの難燃剤を含む、約5重量%〜約20重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;ならびにペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールから選択される、約0.1重量%〜約15重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分を含む。この組成物は、約0重量%〜約10重量%の五ホウ酸アンモニウムまたはホウ酸亜鉛をさらに含み得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
良好な溶融加工特徴を有する難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物であって、該組成物は、以下:
(a)少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;
(b)約5重量%〜約40重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分であって、ホスフィネート化合物を含む、第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(c)約5重量%〜約20重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分であって、ホスフェート化合物を含む、第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;および
(d)約0.1重量%〜約15重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分であって、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールから選択される、第3の非ハロゲン化有機難燃性成分
を含み、該重量%は、該熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準とし、該難燃性熱可塑性ポリウレタンは、UL94垂直燃焼試験に従って測定した場合に1.90mmの厚さでVO評価等級を有し、そしてASTM D2863に従って測定した場合に少なくとも約35の制限酸素指数を有する、難燃性熱可塑性ポリウレタン。
(項目2)
(b)において、前記ホスフィネート化合物が、約15重量%〜約25重量%のレベルで存在する、項目1に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目3)
(c)において、前記ホスフェート化合物が、約5重量%〜約10重量%のレベルで存在する、項目1に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目4)
(d)において、前記選択されたペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールが、約2.5重量%〜約10重量%のレベルで存在する、項目1に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目5)
(a)において、前記熱可塑性ポリウレタンポリマーが、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタンおよびそれらのブレンドから選択される、項目1に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目6)
(a)において、前記熱可塑性ポリウレタンポリマーが、ポリエーテルポリウレタンである、項目5に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目7)
さらに、
(e)前記熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準にして約0重量%〜約5重量%の無機難燃性成分
を含む、項目1に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目8)
(e)において、存在する場合、前記無機難燃性成分が、タルク、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化アンチモン、クレー、モンモリロナイトクレーおよびそれらの混合物から選択される、項目7に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目9)
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物であって、以下:
(a)少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;および
(b)難燃性パッケージであって、
(i)ホスフィネート化合物を含む第1の非ハロゲン化難燃性成分;
(ii)有機ホスフェート化合物を含む第2の非ハロゲン化難燃性成分;および
(iii)ホスフェートを含まない第3の非ハロゲン化難燃性成分
を含む、難燃性パッケージ
を含み、ここで、該難燃性パッケージは、該熱可塑性ポリウレタン組成物に少なくとも一つの所定の難燃性特徴を与えるのに十分な量で存在する、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目10)
前記少なくとも一つの所定の難燃性特徴が、ASTM D−2863に従って測定した場合の少なくとも約35の制限酸素指数である、項目9に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目11)
前記少なくとも一つの所定の難燃性特徴が、UL 94に従って測定した場合の75ミル(1.90mm)の厚さでのV−0燃焼評価等級である、項目9に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目12)
前記難燃性パッケージが、無機難燃性成分をさらに含む、項目9に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目13)
(a)において、前記熱可塑性ポリウレタンポリマーが、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタンおよびそれらのブレンドから選択される、項目9に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目14)
(a)において、前記熱可塑性ポリウレタンポリマーが、ポリエーテルポリウレタンである、項目13に記載の難燃性熱可塑性組成物。
(項目15)
(b)(iii)において、前記第3の非ハロゲン化難燃性化合物が、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールから選択される、項目9に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目16)
(b)において、前記難燃性パッケージが、さらに
(iv)無機難燃性成分
を含む、項目9に記載の難燃性ポリウレタン組成物。
(項目17)
難燃性パッケージであって、以下:
(a)ホスフィネート化合物を含む、第1の非ハロゲン化難燃性成分;
(b)有機ホスフェート化合物を含む、第2の非ハロゲン化難燃性成分;および
(c)多価アルコールを含む、第3の非ハロゲン化難燃性成分
を含む、難燃性パッケージ。
(項目18)
さらに以下:
(d)無機難燃性成分
を含む、項目17に記載の難燃性パッケージ。
(項目19)
前記無機難燃性成分が、タルク、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、酸化アンチモン、クレー、モンモリロナイトクレーおよびそれらの混合物から選択される、項目18に記載の難燃性パッケージ。
(項目20)
(c)において、前記多価アルコールが、ジペンタエリトリトールおよびペンタエリトリトールから選択される、項目17に記載の難燃性パッケージ。
(項目21)
熱可塑性ポリウレタン組成物を難燃性にする方法であって、以下:
(a)ホスフィネート化合物を含む第1の非ハロゲン化難燃性化合物、(b)有機ホスフェート化合物を含む第2の非ハロゲン化難燃性化合物、および(c)多価アルコールを含む第3の非ハロゲン化難燃性化合物、を含む難燃性パッケージを熱可塑性ポリウレタンポリマーと混合する工程を包含し、ここで、該難燃性パッケージは、該熱可塑性ポリウレタン組成物に少なくとも一つの所定の難燃性特徴を与えるのに十分な量で存在する、方法。
(項目22)
前記少なくとも一つの所定の難燃性特徴が、ASTM D−2863に従って測定した場合の少なくとも約35の制限酸素指数を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記少なくとも一つの所定の難燃性特徴が、UL 94に従って測定した場合の75ミル(1.90mm)の厚さでのV−0燃焼評価等級である、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記ホスフィネート化合物が約5重量%〜約40重量%のレベルで存在し;
前記有機ホスフェート化合物が約5重量%〜約20重量%のレベルで存在し;そして
前記多価アルコールが約0.1重量%〜約15重量%のレベルで存在し;
ここで、該重量%は、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準にする、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記難燃性パッケージが、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準として約0重量%〜約5重量%のレベルで存在する無機難燃性成分をさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記混合が、二軸スクリューエクストルーダーにおいて行われる、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、混合後にペレット化される、項目26に記載の方法。
(項目28)
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
a)熱可塑性ポリウレタン成分を剪断混合し得る混合デバイスにおいて、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびそれらの混合物から選択されるポリマー中間体、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤を含む熱可塑性ポリウレタン成分を混合する工程;
b)(a)に続いて、難燃性パッケージを該混合デバイスに添加する工程であって、該難燃性パッケージは、約5重量%〜約40重量%のレベルで存在する、ホスフィネート化合物を含む第1の非ハロゲン化難燃性成分;約5重量%〜約20重量%のレベルで存在する、ホスフェート化合物を含む第2の非ハロゲン化難燃性成分;および約0.1重量%〜約15重量%のレベルで存在する、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールから選択される第3の非ハロゲン化難燃性成分、を含む、工程
を包含し、ここで、該重量%は、該難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準とする、プロセス。
(項目29)
ワイヤおよびケーブルの構成を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)少なくとも一つの金属導体上へ非導電性ポリマー材料の絶縁層を押し出し成形する工程;および
(b)難燃性ジャケットを押し出し成形して少なくとも一つの絶縁された金属導体を覆う工程であって、該ジャケットは、熱可塑性ポリウレタン組成物であり、該熱可塑性ポリウレタン組成物は、以下:
(i)少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;
(ii)ホスフィネート化合物を含む、約5重量%〜約40重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(iii)ホスフェート化合物を含む、約5重量%〜約20重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;および
(iv)ジペンタエリトリトールを含む、約0.1〜約15重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分
を含み、ここで、該重量%は、該熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準とする、プロセス。
(項目30)
ワイヤおよびケーブルの構成であって、該構成は、以下:
(a)少なくとも一つの金属導体であって、該導体が、非導電性ポリマー材料により絶縁されている、導体;および
(b)該絶縁された少なくとも一つの金属導体を覆う難燃性ジャケット
を含み、ここで、該ジャケットは、熱可塑性ポリウレタン組成物であり、該熱可塑性ポリウレタン組成物は、以下:
(i)少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;
(ii)ホスフィネート化合物を含む、約5重量%〜約40重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(iii)ホスフェート化合物を含む、約5重量%〜約20重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;および
(iv)ジペンタエリトリトールを含む、約0.1重量%〜約15重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分
を含み、ここで、該重量%は、該熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準にする、構成。
(項目31)
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物を含む成形品であって、該組成物は、以下:
(a)少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー;
(b)ホスフィネート化合物を含む、約5重量%〜約40重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(c)ホスフェート化合物を含む、約5重量%〜約20重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;および
(d)ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールから選択される、約0.1重量%〜約15重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分
を含み、ここで、該重量%は、該熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準にする、成形品。
(項目32)
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物であって、該組成物は、以下:
(a)少なくとも一つのポリエーテルベースの熱可塑性ポリウレタンポリマー;
(b)ホスフィネート化合物を含む、約15重量%〜約25重量%の第1の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(c)ホスフェート化合物を含む、約5重量%〜約10重量%の第2の非ハロゲン化有機難燃性成分;
(d)ジペンタエリトリトールを含む、約2.5重量%〜約10重量%の第3の非ハロゲン化有機難燃性成分;および
(e)タルクを含む、約0重量%〜約5重量%の無機難燃性成分、
から本質的になり、ここで、該重量%は、該熱可塑性ポリウレタン組成物の総重量を基準とする、組成物。
(項目33)
約0.05重量%〜約2.0重量%の抗酸化剤をさらに含む、項目1に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
(項目34)
前記抗酸化剤が、ヒンダードフェノールおよびジアルキル化ジフェニルアミン、ならびにそれらの混合物から選択される、項目33に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明の熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物は、難燃性添加物とともに少なくとも一つのTPUポリマーを含む。
【0032】
本発明において使用されるTPUポリマータイプは、TPUポリマーが所望の機械的特性および物理的特性を最終的な難燃性組成物に付与し得る限り、当該分野および文献において公知である任意の従来のTPUポリマーであり得る。
【0033】
本発明の実施形態は、TPU組成物の所望の難燃性特性を達成するために特定の難燃性成分をTPUポリマーに加えることを包含する。特に興味深いのは、有機ホスフィン酸塩に基づくホスフィネート化合物を含む有機難燃性成分である。有機ホスフィネートは、熱可塑性樹脂を操作する際に使用される範囲の難燃剤への最近の添加物である。1つの好適なホスフィネートは、Clariant GmbH、Germanyから入手可能な専売の化合物Exolit(登録商標)OP 1311として市販される。有機ホスフィネートは、難燃性パッケージの例示的な実施形態において他の有機難燃剤と関連して使用される。このホスフィネート化合物は、難燃性TPU組成物の例示的実施形態において、TPU組成物の総重量を基準として、約5重量%〜約40重量%、好ましくは約15重量%〜約25重量%の量で存在し得る。
【0034】
他の有機難燃性成分としては、有機ホスフェート(例えば、リン酸トリアリール、好ましくはリン酸トリフェニル、より好ましくは専売のリンベースの難燃剤(すなわち、Albermarle CorporationからのNcend X(登録商標)P−30))が挙げられる。有機ホスフェートは、例示的な実施形態において、TPU組成物の総重量を基準として、約5重量%〜約20重量%、より好ましくは約5重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0035】
他の有機難燃性成分としては、多価アルコール(例えば、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトール)が挙げられる。多価アルコールは、例示的実施形態において、TPU組成物の総重量を基準として、約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは約2.5重量%〜約10重量%の量で存在し得る。この組成物は、約0重量%〜約10重量%の五ホウ酸アンモニウムまたはホウ酸亜鉛をさらに含み得る。
【0036】
さらに、様々な従来の無機難燃性成分が、難燃性TPU組成物において使用され得る。好適な無機難燃剤としては、当業者に公知の任意のもの(例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、酸化アンチモンおよびクレー(ナノクレーとしばしば呼ばれるモンモリロナイトクレーを含む)が挙げられる。無機難燃剤は、TPU組成物の0重量%〜約5重量%のレベルで用いられ得る。好ましくは、無機難燃剤は存在せず、そしてこの組成物は、TPUおよび有機難燃性成分のみを含む。
【0037】
従って、ある例示的な実施形態においては、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物は、少なくとも一つの熱可塑性ポリウレタンポリマー、ならびに有機ホスフィネート化合物、有機ホスフェート化合物および多価アルコールを含む難燃性パッケージを含む。他の例示的な実施形態において、無機難燃性充填材は、難燃性パッケージに組み込まれ得る。
【0038】
用途によっては、(それ自体は難燃剤ではない)補助添加物が、本発明のTPU組成物において用いられ得る。着色剤、抗酸化剤、オゾン酸化防止剤(antiozonate)、光安定剤、不活性充填剤などのような添加物は、TPU組成物の0重量%〜5重量%の量において使用され得る。好ましくは、補助添加物は、TPU組成物中に存在しない。
【0039】
一つの実施形態において、TPUポリマーは、一つ以上のグリコール鎖伸長剤を用いて、ポリイソシアネートを中間体(例えば、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネートまたはそれらの混合物)と反応させることにより調製され得る。これらの全ては当業者に周知である。Ecksteinらに対する米国特許第6,777,466号は、本発明の実施形態において利用され得る特定のTPUポリマーを提供するためのプロセスの詳細な開示を提供し、その全体は本明細書中に参考として援用される。
【0040】
本発明において使用されるTPUポリマータイプは、TPUポリマーが適切な分子量を有する限り、当該分野および文献において公知である任意の従来のTPUポリマーであり得る。TPUポリマーは通常、一つ以上の鎖伸長剤を用いて、ポリイソシアネートを中間体(例えば、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネートまたはそれらの混合物)と反応させることにより調製される。これらの全ては当業者に周知である。
【0041】
ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、通常約500〜約10,000(望ましくは約700〜約5,000、そして好ましくは約700〜約4,000)の数平均分子量(Mn)、通常1.3未満(好ましくは0.8未満)の酸価を有する直鎖状ポリエステルである。分子量は、末端官能基のアッセイによって測定され、そして数平均分子量に関する。このポリマーは、(1)一つ以上のグリコールと一つ以上のジカルボン酸もしくは無水物とのエステル化反応、または(2)エステル転移反応(すなわち、一つ以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応)によって製造される。末端ヒドロキシル基が優勢な直鎖状の鎖を得るためには、一般に、酸に対して1モルよりも多く過剰なグリコールのモル比が好ましい。適切なポリエステル中間体としてはまた、代表的にε−カプロラクトンおよび二官能性開始剤(例えば、ジエチレングリコール)から作製されるポリカプロラクトンのような様々なラクトンが挙げられる。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族のもの、脂環式のもの、芳香族化合物のものまたはそれらの組み合わせであり得る。単独で、または混合して使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に、合計4〜15個の炭素原子を有し、これとしては、以下が挙げられる:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸など。フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などのような上記のジカルボン酸の無水物もまた使用され得る。アジピン酸が好適な酸である。反応して所望のポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族のもの、芳香族のもまたはそれらの組み合わせであり得、そして合計2〜12個の炭素原子を有し得、そしてこれとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどが挙げられ得、1,4−ブタンジオールが好適なグリコールである。
【0042】
ヒドロキシル末端ポリエーテル中間体は、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、代表的にはエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはそれらの混合物を含むエーテルと反応される、合計2〜15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオール(アルキルジオールまたはグリコール)から誘導されるポリエーテルポリオールである。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、まずプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、続いてエチレンオキシドと反応させることにより生成され得る。エチレンオキシドから得られる一級ヒドロキシル基は、二級ヒドロキシル基よりも反応性が高く、それゆえ好ましい。有用な商業的ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコールと反応したエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応したプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフラン(PTMG)と反応した水を含むポリ(テトラメチルグリコール)が挙げられる。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)は、好適なポリエーテル中間体である。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドのポリアミド付加物をさらに含み、例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加物、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加物および類似のポリアミド型ポリエーテルポリオールを含み得る。コポリエーテルもまた、本発明において利用され得る。典型的なコポリエーテルとしては、THFとエチレンオキシドとの反応生成物またはTHFとプロピレンオキシドとの反応生成物が挙げられる。これらは、Poly THF B(ブロックコポリマー)およびポリTHF R(ランダムコポリマー)としてBASFから入手可能である。様々なポリエーテル中間体は、一般に、平均分子量である末端官能基のアッセイによって決定した場合に、約500〜約10,000、望ましくは約500〜約5,000、そして好ましくは約700〜約3,000の数平均分子量(Mn)を有する。
【0043】
本発明のポリカーボネートベースのポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートをヒドロキシル末端ポリカーボネートおよび鎖伸長剤のブレンドと反応させることにより調製される。ヒドロキシル末端ポリカーボネートは、グリコールをカーボネートと反応させることにより調製され得る。
【0044】
米国特許第4,131,731号は、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびそれらの調製を開示する。このようなポリカーボネートは、直鎖状であり、他の末端基を本質的に除いて、末端ヒドロキシル基を有する。必須の反応物はグリコールおよびカーボネートである。適切なグリコールは、4〜40個、好ましくは4〜12個の炭素原子を含んでいる脂環式ジオールおよび脂肪族ジオール、ならびに各アルコキシ基が2〜4個の炭素原子を含んでいる、1分子あたり2〜20個のアルコキシ基を含んでいるポリオキシアルキレングリコールから選択される。本発明の使用に適しているジオールとしては、以下が挙げられる:4〜12個の炭素原子を含む脂肪族ジオール(例えば、ブタンジオール−1,4、ペンタンジオール−1,4、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2,2,4−トリメチルヘキサンジオール−1,6、デカンジオール−1,10、水素添加ジリノレイルグリコール、水素添加されたジオレイルグリコール);ならびに脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール−1,3、ジメチロールシクロヘキサン−1,4、シクロヘキサンジオール−1,4、ジメチロールシクロヘキサン−1,3、1,4−エンドメチレン−2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルシクロヘキサンおよびポリアルキレングリコール)。反応において使用されるジオールは、完成した製品において所望される特性に依存して、単一のジオールまたはジオールの混合物であり得る。
【0045】
末端がヒドロキシルであるポリカーボネート中間体は、通常、当該分野および文献において公知のものである。適切なカーボネートは、以下の一般式を有する5員環〜7員環からなるアルキレンカーボネートから選択される:
【0046】
【化1】

ここで、Rは、2〜6個の直鎖状炭素原子を含んでいる飽和の二価の基である。本明細書において使用するために好適なカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−エチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートおよび2,4−ペンチレンカーボネートが含まれる。
【0047】
また、本明細書において適切であるのは、ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネートおよびジアリールカーボネートである。ジアルキルカーボネートは、各アルキル基に2〜5個の炭素原子を含み得、そしてその具体例は、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートである。脂環式カーボネート(特に、二脂環式カーボネート)は、各環式構造中に4〜7個の炭素原子を含み得、そしてこのような構造のうちの一つまたは二つが存在し得る。1つの基が脂環式の場合、他のものはアルキルまたはアリールのいずれかであり得る。一方では、1つの基がアリールである場合、他のものはアルキルまたは脂環式のものであり得る。各アリール基に6〜20個の炭素原子を含み得るジアリールカーボネートの好適な例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートおよびジナフチルカーボネートである。
【0048】
この反応は、低沸点グリコールを蒸留によって取り除きながら、エステル交換触媒の存在下または非存在下で、100℃〜300℃の温度において、かつ0.1〜300mm水銀の範囲の圧力において、10:1〜1:10(好ましくは3:1〜1:3)のモル範囲でグリコールをカーボネート(好ましくはアルキレンカーボネート)と反応させることにより実施される。
【0049】
より詳細には、ヒドロキシル末端ポリカーボネートは、2段階で調製される。第一段階において、グリコールは、アルキレンカーボネートと反応されて、低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートが形成される。より低い沸点のグリコールは、10〜30mm Hg(好ましくは50〜200mm Hg)の減圧下での100℃〜300℃(好ましくは150℃〜250℃)における蒸留によって取り除かれる。分画カラムは、副産物であるグリコールを反応混合物から分離するために用いられる。副産物であるグリコールは、カラムの頂部から採取され、そして未反応のアルキレンカーボネートおよびグリコール反応物が還流として反応容器に戻される。不活性ガスまたは不活性溶媒の流れを用いて、形成されるごとに、副産物であるグリコールの除去を促進し得る。得られた副産物であるグリコールの量によりヒドロキシル末端ポリカーボネートの重合度が2〜10の範囲にあることが示される場合、圧力は0.1mm Hgから10mm Hgへと徐々に低減され、そして未反応のグリコールおよびアルキレンカーボネートが除去される。これにより、反応の第二段階の始まりがマークされ、第二段階の間に、ヒドロキシル末端ポリカーボネートの所望の分子量が得られるまで、100℃〜300℃(好ましくは150℃〜250℃)においてかつ0.1〜10mm Hgの圧力において、形成されるごとにグリコールを留去することにより低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートが縮合される。ヒドロキシル末端ポリカーボネートの分子量(Mn)は、約500〜約10,000で変化し得るが、好ましい実施形態では、分子量は500〜2500の範囲内にある。
【0050】
適切な伸長剤であるグリコール(すなわち、鎖伸長剤)は、約2〜約10個の炭素原子を有する、低級脂肪族グリコールまたは短鎖グリコールであり、そして例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールヒドロキノンジ(ヒドロキシエチル)エーテル、ネオペンチルグリコール(neopentyglycol)などが挙げられ、1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0051】
本発明のTPU組成物において使用される所望のTPUポリマーは通常、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテルまたはヒドロキシル末端ポリカーボネート(好ましくはポリエーテル)のような上記の中間体から作製され、そしてこれらは、望ましくは、ポリエステル、ポリカーボネートもしくはポリエーテル中間体、ジイソシアネートおよび伸長剤グリコールの、いわゆるワンショットプロセスまたは同時共反応において、伸長剤グリコールとともにポリイソシアネート(好ましくはジイソシアネート)とさらに反応して、高分子量の直鎖状TPUポリマーを生成する。マクログリコールの調製は一般に、当該分野および文献において周知であり、そして、任意の適切な方法が用いられ得る。TPUポリマーの重量平均分子量(Mw)は一般に、約80,000〜約800,000であり、そして好ましくは約90,000〜約450,000ダルトンである。ジイソシアネートの、ヒドロキシル含有成分(すなわち、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテルまたはヒドロキシル末端ポリカーボネート)および鎖伸長剤グリコールの合計当重量に対する当重量は、約0.95〜約1.10、望ましくは約0.96〜約1.02、そして好ましくは約0.97〜約1.005である。好適なジイソシアネートとしては、以下が挙げられる:芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI);m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネート(TDI));ならびに脂肪族ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート)。最も好適なジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(すなわち、MDI)である。
【0052】
TPU組成物において利用される所望のTPUポリマーは一般に、高分子量の直鎖状TPUポリマーを生成する、ポリエステル、ポリカーボネートもしくはポリエーテル中間体;ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の、いわゆるワンショットプロセスまたは同時共反応において、上記の中間体から作製される。
【0053】
その場で一般に起こるワンショット重合プロセスにおいて、3つの成分(すなわち、一つ以上の中間体、一つ以上のポリイソシアネートおよび一つ以上の鎖伸長剤)間での同時反応が起こり、この反応は一般に、約100℃〜約120℃の温度で開始される。この反応は発熱性であるので、反応温度は一般に約220℃〜約250℃へと上昇する。1つの例示的な実施形態において、TPUポリマーは、反応後にペレットにされ得る。難燃性成分は、TPUポリマーペレットに組み込まれて、次のプロセスにおいて、難燃性組成物を形成し得る。
【0054】
TPUポリマーおよび有機難燃性成分は、当業者に公知の任意の手段によって一緒に配合され得る。ペレット化されたTPUポリマーが用いられる場合、このポリマーは、約150℃〜約215℃(好ましくは約160℃〜約190℃、より好ましくは約170℃〜約180℃)の温度において、溶融され得る。当業者によって十分理解されるように、使用される特定の温度は、使用される特定のTPUポリマーに依存する。TPUポリマーおよび難燃性成分はブレンドされて、緊密な物理的混合物が形成される。ブレンドは、剪断混合を提供し得る任意の一般的に用いられる混合デバイスにおいて行われ得るが、複数の供給ポートを有する複数の熱ゾーンを有する二軸スクリューエクストルーダーが、ブレンドおよび溶融プロセス(配合)のために好ましくは用いられる。
【0055】
TPUポリマーおよび難燃性成分は、配合エクストルーダーに添加する前に予めブレンドされてもよく、またはこれらは、エクストルーダーの異なる流れおよび異なるゾーンにおいて配合エクストルーダーに添加または計量されてもよい。
【0056】
代替の実施形態では、TPUポリマーは、難燃性成分の添加前にはペレット化されない。むしろ、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物を形成するためのプロセスは、連続インサイチュプロセスである。熱可塑性ポリウレタンポリマーを形成する成分は、反応容器(例えば、前述のとおりの二軸スクリューエクストルーダー)に添加される。熱可塑性ポリウレタンポリマーの形成後、難燃性成分は、熱可塑性ポリウレタン組成物を形成するためにエクストルーダーの異なる流れおよび/または異なるゾーンにおいて、エクストルーダーに添加または計量され得る。難燃性成分は、下記においてさらに詳細に説明するような少なくとも一つの所定の難燃性特徴をこの組成物に与えるのに十分な量において添加される。
【0057】
得られるTPU組成物は、エクストルーダーのダイを溶融状態で出てペレットにされ得、そして完成品を作製する際のさらなる使用のために保存され得る。完成品は、(特にポリエステルポリウレタンに基づくTPU組成物を使用した)射出成形部品を含み得る。他の完成品は、押し出し成形された輪郭を含み得る。TPU組成物は、下記においてさらに詳細に記載されるケーブルジャケットとして利用され得る。
【0058】
熱可塑性ポリウレタンは一般に、それらの耐摩性および耐摩耗性、低温可撓性、靱性および耐久性、加工の容易さ、および他の属性のために、最終使用用途において評価される。添加物(例えば、難燃剤)がTPU組成物中に存在する場合、これらは、所望の材料特性をいくぶん低下させ得る。難燃性パッケージは、それゆえ、他の材料特性を犠牲にすることなく、所望の難燃性を付与するはずである。
【0059】
考慮される1つの特性は、ASTM D412に従って測定した場合のTPU組成物の所望の極限引張強度である。1つの実施形態において、極限引張強度は、少なくとも1500psiおよび150%の伸長である。本開示において言及される極限引張強度が、完成した部品へと加工された後の難燃性TPU組成物について測定される引張強度であることに注意することもまた重要である。
【0060】
開示されたTPU組成物は、それらの難燃性特性、耐磨性および良好な引張強度のため、ワイヤおよびケーブルの構成の応用における導電体のためのジャケットとしての用途に特に適している。一つ以上の絶縁された導体は、絶縁材料(例えば、ガラス繊維または他の難燃性の布帛)によって包まれ得る。次いで、一つ以上の導体は、導電体を保護するためにジャケット材料(すなわち、TPU組成物)内に入れられる。火事が発生する場合に備えて、このジャケット材料は、耐燃性である必要である。
【0061】
TPU組成物から製造されるジャケットを使用することに最も適しているタイプのワイヤおよびケーブルの構成は、UL−1581標準に詳述される。UL−1581標準は、導体の具体的詳細、絶縁の具体的詳細、ジャケットおよび他のカバーの具体的詳細、ならびに試料調製の具体的詳細、標本選択および条件付けの具体的詳細、ならびに測定および算出の具体的詳細を含む。
【0062】
ワイヤおよびケーブルの構成の燃焼性能は、多くの要因によって影響され得、ジャケットは、1つの要因である。絶縁材料の燃焼性もまた、ワイヤおよびケーブルの構成の燃焼性能に影響を及ぼし得、ならびに他の内側の構成要素(例えば、紙製の包装、充填材など)も同様である。
【0063】
ワイヤおよびケーブルの構成の例示的実施形態は、絶縁した導体の束へとTPU組成物を押し出し成形して、絶縁した導体の周囲にジャケットを形成することによって作製される。ジャケットの厚さは、所望の最終使用用途の必要条件に依存する。ジャケットの代表的厚さは約0.010インチ〜約0.200インチであり、より代表的には約0.020インチ〜約0.060インチである。最も薄いジャケットは代表的に、約20ミル〜約30ミル(0.508mm〜0.762mm)であり、それゆえ、ジャケットをトレイケーブル燃焼適用での使用に適しているようにするためには、その厚さでは35という最小LOIが望ましい。
【0064】
TPU組成物は、予め作製されたTPU組成物からジャケットへと押し出し成形され得る。通常、TPU組成物は、エクストルーダーに容易に供給するために、ペレットの形態にある。TPU組成物はワイヤおよびケーブルの構成を作製するのと同じ者によって通常作製されるわけではないので、この方法は最も一般的である。しかしながら、本発明の例示的な実施形態によれば、ワイヤおよびケーブルジャケットは、難燃性TPU組成物をペレット化する別の工程を行うことなく、配合エクストルーダーから直接押し出し成形され得る。
【0065】
難燃性成分の添加によって変更され得る純粋なTPUの別の特性は、加工性である。従って、加工性を損なうとしても最小限にしか損なわない難燃性パッケージを使用することが有利である。本開示の目的のために、「加工性」とは、二つの語句をいう:TPU組成物の最初の配合(およびペレット化)および二次的な加工(例えば、ワイヤおよびケーブルジャケットへの押し出し成形)。最初の配合段階において、所望の品質は、ストランドの完全性、型だれがないこと、ペレット化における均一性などに関した。二次的な加工において、さらなる品質(例えば、シートを押し出し成形する能力、美的外観、脆性がないこと、平滑な表面(でこぼこも砂のようでもない)などが所望され得る。表面は、平滑であるべきである。すなわち、0.1mmを超える隆起した領域も陥没した領域も有さない。押し出し成形されたTPUは、裂けた縁部もギザギザの縁部も有すべきではなく、その溶融強度を保持し得るべきであり、そしてガス抜けにより発泡するべきでない。TPUはまた、広い加工温度ウインドウを有すべきであり、望ましくは、温度ウインドウは少なくとも10°Fであるべきであり、好ましくは少なくとも20°Fであるべきである。すなわち、押し出し成形温度は、10°Fまたは20°F変化し得、そしてTPU組成物は、良好な押し出し品質を保持する。大規模製造環境において、正確な設定された押し出し温度を維持することは困難であるので、これは非常に重要である。これらの上記の特徴は、良好な加工性と呼ばれるものを規定する。
【0066】
TPU組成物に付与される1つの難燃性特徴は、改良された限界酸素指数(LOI)であり得る。多くの用途において、難燃性TPUは、特定のLOI標準を満たさなければならない。LOI試験は、ASTM D2863として正式に承認されている。LOIは、ロウソクのような様式で指定された条件下でサンプルが燃焼し続けるのを可能にする最小限の酸素百分率であり、従って、サンプルの消化の容易さの尺度であると考えられ得る。本発明の例示的な実施形態は、少なくとも約35のLOIを有する難燃性TPU組成物を提供する。通常、難燃性TPU組成物についてのLOIは30未満であり、より代表的には約25であるので、少なくとも35というLOIの結果は、TPU組成物については非常に予想外である。多くの顧客は、建物のトレイに置かれるケーブルについて35のLOIを必要とし、そして35のLOIというこの必要条件は、この用途におけるTPUの使用を排除してきた。
【0067】
別の難燃性特性は、Underwriters Laboratories Vertical Burn Standard −− UL 94(UL−94)によって測定される。本発明の例示的な実施形態は、約75ミル(1.90mm)の厚さで、UL−94試験においてV0という評価等級を得ることが可能な難燃性TPU組成物を提供する。UL評価等級は常に厚さを伴って報告されなければならないので、例示的な実施形態は、約75ミル(0.075インチ、1.90mm)の厚さでV0評価等級を達成する。
【0068】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解される。
【0069】
本発明のTPU組成物のための別の有用な成分は、抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノールおよびジアルキル化ジフェニルアミン)である。使用される場合、抗酸化剤は、TPU組成物の総重量を基準として、0.05〜2.0重量%のレベルで、好ましくは0.1〜1.0、最も好ましくは0.1重量%〜0.5重量%のレベルで使用される。
【実施例】
【0070】
実施例1および2は、ポリエーテルTPU配合物における好適な非ハロゲン難燃剤を示すために提示される。実施例1および2は、95 Shore A硬度の、ペレット形態で市販されるTPU(Estane(登録商標)58212)を使用する。これは、PTMEGエーテル中間体、ブタンジオール(BDO)鎖伸長剤およびMDIジイソシアネートから作製された。実施例2において、3つの必要な非ハロゲン化難燃剤(ホスフィネート、ホスフェートおよび多価アルコール)を、エクストルーダー中で成分を剪断混合することによってTPUに添加した。実施例1および実施例3において、液体であるホスフェート難燃剤によって最初にTPUペレットを膨潤させ、そして他の成分をエクストルーダー中で剪断混合によって添加した。
【0071】
実施例3は、ポリエステルTPU配合物中の好適な非ハロゲン難燃剤を示すために提示される。ポリエーテルTPUは、50DのShore D硬度を有する市販のTPU(Estane(登録商標)X−4809)である。
【0072】
下記の表1は、実施例1〜実施例3において使用した重量%の配合を示す。
【0073】
下記の表2は、実施例1〜実施例3の配合によって示された試験結果を示す。
【0074】
【表1】

上記組成物の試験結果を、下記の表2に示す。
【0075】
【表2】

3つ全ての化合物は、TPUポリマーの製造およびシート形状へのこの化合物の押し出し成形の両方において良好な加工性を示した。
【0076】
特許の状態に従うとはいえ、最良の形態および好ましい実施形態が記載されており、本発明の範囲は、それらに限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−72416(P2012−72416A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−4438(P2012−4438)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2008−506547(P2008−506547)の分割
【原出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】