説明

非ハロゲン系難燃性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ及び積層板

本発明は非ハロゲン系難燃性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ及び銅箔積層板に関するものであって、樹脂組成物の中にリン系難燃剤としてポリリン酸塩化合物を含む非ハロゲン系難燃性樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ及び銅箔積層板を提供する。本発明の樹脂組成物はハロゲン系難燃剤を使用しなくても、難燃性が優秀であるだけでなく、優秀な耐熱性及び高いガラス転移温度(Tg)、銅箔剥離強度と吸湿後鉛の耐熱特性を現し、印刷回路基板などの銅箔積層板の製造に用いられることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷回路基板(PCB)に使用される非ハロゲン系難燃性樹脂組成物とこれを用いたプリプレグ及び積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近来、世界的に環境問題に対する関心が高まっており、電気電子製品の廃棄処理時における有毒物質の発生に対する規制が強化されている趨勢である。従来のプリプレグ及び積層板用樹脂組成物には主材料の二官能性臭化エポキシ樹脂と多官能性エポキシ樹脂以外にアミン系硬化剤と硬化促進剤が一般に使用されており、難燃規格であるUL(Underwriters Laboratory)の94V−0を満足させるために既存のエポキシ組成物は15乃至20重量%の臭素を含む。
【0003】
しかし、上記臭素を含んだハロゲン化合物は優秀な難燃性を有するが、燃焼時に有毒ガスを発生し、発ガン物質であるダイオキシンを生成する可能性があるためハロゲン含有物質の使用規制が強く要求されており、発ガン性物質であるアンチモンの使用規制も強く要求されている。また、プリント配線板の製造時に使用する鉛に対しても毒性及び環境汚染の問題があるため、鉛の使用を規制することによって、従来のはんだ工程に比べて融点が高くなる傾向が発生してより厳格な耐熱性が要求されている実情である。このような理由で最近臭素含有エポキシ樹脂組成物の代わりに樹脂自体の難燃性を増大させようと分子中に窒素原子を多量含有したジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物が導入され、縮合リン酸エステルや 反応性リン酸エステル、リン含有エポキシ樹脂、リンまたは窒素含有フェノール樹脂、難燃性無機充填剤を導入する方法などが検討されている。
【0004】
上記分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を導入した方法は日本特許公開番号第2003−213077号、2003−206390号、 2002−249639号、2001−302879号などと、米国特許第5、946、222号に開示されている。日本特許公開番号第2003−206390号と米国特許第5、946、222号には分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物とノボラックフェノール樹脂を反応させた方法が記載されている。しかし、この場合高いガラス転移温度と耐熱性を現わすが、この樹脂組成物のみで難燃性がULの94V−0を達成するのは難しいことであると明らかになった。日本特許公開番号第2003−213077号と第2001−302879号においては、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物とエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を反応させた化合物に非ハロゲン縮合リン酸エステルまたは反応性リン酸エステルと無機系難燃剤を導入した方法が紹介されており、日本特許公開番号第2002−249639号においては、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物に非ハロゲン難燃剤でメラミン変性フェノール樹脂、非ハロゲン縮合リン酸エステル、及び無機系難燃剤を導入した方法などが記載されている。しかし、先に紹介された文献において使用した非ハロゲン縮合リン酸エステルや 反応性リン酸エステルは大部分有機溶媒によく溶けるため、ワニス(varnish)またはプリプレグの製造が容易であり、エポキシ樹脂との相溶性がよいため、均一な状をなしてプリプレグの外観が良いが、耐熱性が脆弱で水分の吸収率が高いため、樹脂組成物の耐熱性と吸湿後鉛の耐熱性を大きく低下させる問題が発生し、100℃以下の温度で溶けるためプレス時に流れ性が増加し厚さの調節が難しかった。特に、反応性リン酸エステルは硬化反応に共に参与するため単一相をなしてはいるが、ガラス転移温度を大きく下げる短所がある。また、日本特許公開番号第2001−302870号においては、難燃性を向上させようとエポキシ樹脂やフェノール樹脂にリンまたは窒素を含めたが、この場合もやはり、難燃性には役に立ち、単一相をなしてはいるが、ガラス転移温度が下げ、耐熱性が低下するという問題が発生した。
【0005】
一方、リン系難燃剤は化学骨格内にリンを含んでいるため、燃焼時分解してリン酸を生成し、分解によりHPO、POなどのラジカルを形成し、このラジカルは活性のH ラジカルやOHラジカルをトラップし、分解されたリン酸またはポリリン酸は高粘性の溶融グラス質や細かいチャー(Char)を形成し熱と酸素を遮断させる役割をする。
【0006】
上述したように、従来使用したリン系難燃剤は非ハロゲンリン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンなどが挙げられる。その中で非ハロゲンリン酸エステルとしてはトリフェニルフォスフェート(TPP: Triphenyl Phosphate)、トリクレジルフォスフェート(TCP: TriCredyl Phosphate)、クレジルジフェニルフォスフェート(CDP: Credyl Diphenyl Phophate)、2−エチルヘキシルフォスフェート(ODP: 2-Ethylhexyl Phosphate)、イソデシルジフェニルフォスフェート(IDDP: Iso-Decyl Diphenyl Phosphate)、ラウリルジフェニルフォスフェート(LPD: Lauryl Diphenyl Phosphate) などが挙げられる。上記非ハロゲン縮合リン酸エステルとしては縮合型レゾシノールビスフェニルフォスフェート(RDP: Resorcinol Bisphenyl Phosphate)がある。この中で末端にOH基が残っていって反応性を有する反応性レゾシノールビスフェニルフォスフェート(RDP: Resorcinol Bisphenyl Phosphate)とHCA-HQなども縮合リン酸エステルに属する。
【0007】
しかし、非ハロゲンリン酸エステルや非ハロゲン縮合リン酸エステルは難燃性が優秀であり、値段も比較的廉価であるためエンジニアリングプラスチックなどに難燃剤として広く使用されており、大部分有機溶媒によく溶けるためハニシまたはプリプレグの制作が容易であるが、100℃以下の低い温度で溶ける性質があるため、プレス時に溶け出して流れ性が増加し、これによって銅箔積層板の厚さを調節し難くなる。また、分子量が低いため揮発性が強くて処理(treating)時に配管がよく詰まるという問題が発生し、マイグレーション (migration)がよく行われ表面に抜け出し接着力を低下させ、化合物自体が耐熱性や耐湿性が脆弱することが短所である。特に、反応性を有する RDPやHCA-HQなどのような反応性縮合リン酸エステルは反応に参与するため単一相をなすが、ガラス転移温度を大きく下げるという短所がある。ハロゲン化リン酸エステルやハロゲンか縮合リン酸エステルはリンとハロゲンの上昇効果があって難燃性に優れるが、ハロゲン系難燃剤と同様に環境汚染の問題があって使用が適合でなく、赤リンの場合も難燃性が優秀であるとは言えるが、発火しやすいため危険性が高く、これもやはり環境汚染に問題があってハロゲン系難燃剤と同様に規制となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の問題点を解決しようと、本発明の目的は燃焼時にダイオキシンのような有毒性の発ガン物質を発生させず、難燃性を向上させ、耐熱性が優秀でガラス転移温度が高く、吸湿後鉛の耐熱特性が優秀な銅箔積層板用非ハロゲン系 難燃性樹脂組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は上記した非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いた難燃性プリプレグ及び銅箔積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、
(A)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物、
(B)エポキシ樹脂、
(C)ノボラックまたはレゾールフェノール樹脂、
(D)ポリリン酸塩化合物、及び
(E)無機系フィラー
を含む銅箔積層板用非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を提供する。
【0011】
上記ポリリン酸塩化合物は熱重量分析法(TGA)による熱分解温度が少なくとも300℃以上であり、水分吸収率が0.5%以下であることが好ましく、窒素を含有しても良い。
【0012】
また、本発明は上記樹脂組成物40乃至70重量%とガラス繊維30乃至60重量%とを含むプリプレグを提供する。
【0013】
更に、本発明は上記プリプレグを1つ以上積層し、プリプレグ積層物の外部に銅箔層を位置させた後、加熱及び加圧して一体化した銅箔積層板を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明の非ハロゲン系難燃性樹脂組成物は従来のハロゲン系難燃剤を使用する代わりにリン系難燃剤であるポリリン酸塩化合物を使用することを特徴とする。
【0016】
本発明はハロゲン系難燃剤を使用しないため燃焼時にダイオキシンのような有毒性の発ガン物質を発生させず、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を含有した化合物を導入することによって既存エポキシ樹脂を単独に使用する場合より樹脂自体の難燃性を向上させ、耐熱性とガラス転移温度を高めることができる。
【0017】
本発明の非ハロゲン系難燃性樹脂組成物は(A)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)ノボラックまたはレゾールフェノール樹脂、(D)ポリリン酸塩化合物、及び(E)無機系フィラーを含む。
【0018】
上記(A)の 分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物はジヒドロベンゾオキサジン環を有していながら、ジヒドロベンゾオキサジンの開環反応により硬化する樹脂であれば特に限定されたものではなく、フェノール性水酸基を有する化合物と1級アミン、及びホルムアルデヒドから合成されたものである。
【0019】
ここで、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は下記化学式1の構造を含む。
(化学式1)
【化1】

上記式中、R1は アルキル基, シクロヘキシル基またはフェニル基であり、または、アルキル基もしくはアルコキシ基に置換されたフェニル基である。
【0020】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、多官能フェノール (Polyfunctional Phenols)、バイフェノール化合物(Biphenol Compounds)、 ビスフェノール化合物(Bisphenol Compounds)、トリスフェノール化合物(Trisphenol Compounds)、テトラフェノール化合物(Tetraphenol Compounds)、フェノール樹脂(Phenolic Resins)などが挙げられる。 多官能フェノールとしては、カテコール (Catechol)、ハイドロキノン(Hydroquinone)、レゾシノール(Resorcinol) などが使用され、 ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA(Bisphenol A)、ビスフェノールF(Bisphenol F)及びその位置異性体、ビスフェノールS(Bisphenol S)などが使用され、フェノール樹脂としてはフェノールノボラック樹脂、レゾールフェノール樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエン樹脂などが挙げられる。上記1級アミンとしては、メチルアミン(methyl amine)、シクロヘキシルアミン(cyclo hexylamine)、アニリン(Aniline)、置換アニリンなどが挙げられる。1級アミンの中で脂肪族アミンを使用する場合硬化物の硬化速度が早くなるが耐熱性が低下するという短所があり、アニリンのような芳香族アミンを使用する場合耐熱性は向上するが、硬化速度が遅くなるという短所がある。
【0021】
本発明においては、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(A)の生成のために、フェノール性水酸基を有する化合物1モルに対し1級アミンを0.5乃至1.5モル、好ましくは0.6乃至1.0モルを添加し、混合物を50乃至60℃で加熱した後、ホルムアルデヒドを1級アミン1モルに対し 1.5モル乃至2.5モル、好ましくは1.9モル乃至2.1モルを加え、60乃至120℃、好ましくは90乃至110℃で加熱した後、60乃至120分間反応された後に100℃以上の温度で減圧乾燥により生成物が得られる。
【0022】
上記ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(A)は、上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物と(B)のエポキシ樹脂との合計100重量部[(A)+(B)=100]中20乃至95重量部で使用され、好ましくは50乃至90重量部が使用される。この時、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(A)の含量が上記の範囲を外れて小さい過ぎる場合、樹脂自体の難燃特性が低下しULの94−V0を達成することが難しく、ガラス転移温度が低くなり、耐熱性と吸湿性が下がる。また、分子中にジヒドロベンゾオキサジンを有する化合物(A)の含量が上記の範囲を超えて多い過ぎる場合、プレス時硬化反応時間が長くなり、硬化物の化学骨格が固くなってドリル加工時にクラックが発生しやすく、プリプレグの製造時高い温度が要求され、これによってプリプレグの外観が悪くなるという問題が発生する。
【0023】
上記(B)のエポキシ樹脂の例を挙げると、下記の通りであり、これに必ず限定されるものではない。
<ビスフェノールA型エポキシ樹脂>
【化2】

【0024】
<フェノールノボラックエポキシ樹脂>
【化3】

【0025】
<テトラフェニルエタンエポキシ樹脂>
【化4】

【0026】
<ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂>
【化5】

【0027】
<ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂>
【化6】

【0028】
本発明において使用したエポキシ樹脂(B)は、上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物と(B)のエポキシ樹脂との合計[(A)+(B)=100]100重量部の中で5乃至80重量部で使用され、好ましくは10乃至50重量部で使用される。エポキシ樹脂(B)の含量が上記の範囲を外れて小さい過ぎる場合、硬化反応の時間が長くなり、硬化物の化学骨格が固くなってドリル加工時にクラック(Crack)が容易に発生し、プリプレグの製造時高い温度が要求され、これによってプリプレグの外観が悪くなるという問題が発生する。また、エポキシ樹脂(B)の含量が上記の範囲を超えて多い過ぎる場合、樹脂自体の難燃特性が低下しULの94−V0を達成することが難しく、ガラス転移温度が低くなり、耐熱性と吸湿性が大きく低下する。
【0029】
本発明において使用された(C)のフェノール樹脂としては、ノボラックまたはレゾールフェノール樹脂が使用される。上記ノボラックフェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミン変性樹脂などがある。上記レゾールフェノール樹脂としては、フェノール型、クレゾール型、アルキル型、ビスフェノールA型またはこれらの共重合体からなるものがある。フェノール樹脂(C)の含量は分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(A)とエポキシ樹脂(B)との合計100重量部[(A)+(B)=100]に対し5乃至80重量部、好ましくは10乃至50重量部が使用される。フェノール樹脂の含量が5重量部未満で使用される場合、硬化時間が長くなり、架橋密度が低下し耐熱性と機械的特性が低下するという短所があり、フェノール樹脂が80重量部を超えて使用される場合、やはり架橋密度が下がって耐熱性とガラス転移温度、機械的物性が低下し、水分吸収率が高くなるという短所がある。
【0030】
本発明の樹脂組成物は硬化促進剤を更に含めてもよく、硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。その例として、1−メチルイミダゾール (1-Methyl Imidazole)、2−メチルイミダゾール(2-Methyl Imidazole)、2−エチル4−メチルイミダゾール(2-Ethyl Methyl Imidazole)、2−フェニルイミダゾール(2-Phenyl Imidazole)、2−シクロヘキシル4−メチルイミダゾール(2-Cyclohexyl 4-Methyl Imidazole)、4−ブチル5-エチルイミダゾール(4-Butyl 5-Ethyl Imidazole)、2−メチル5−エチルイミダゾール(2-Methyl 5-Ethyl Imidazole)、2−オクチル4−ヘキシルイミダゾール(2-Octhyl 4-Hexyl Imidazole)、2、5−クロロ−4−エチルイミダゾール(2,5-Chloro-4-Ethyl Imidazole)、2−ブトキシ4−アルリルイミダゾール(2-Butoxy 4-Allyl Imidazole)とのようなイミダゾール、及び イミダゾール誘導体などがあり、優秀な反応安定性及び廉価により2−メチルイミダゾールや2−フェニルイミダゾールが特に好ましい。この時、イミダゾール系硬化促進剤はフィラーを除いた全体樹脂成分100重量部に対し0.01乃至0.1重量部が使用され、より好ましくは0.03乃至0.06重量部が使用される。上記イミダゾール系硬化促進剤の含量が0. 01重量部より小さく使用される場合、長い硬化時間が所与され、十分にガラス転移温度にならないいという問題が発生し、0.1重量部を超えて使用される場合ワニス(varnish)の貯蔵安定性が低下する。
【0031】
本発明において使用されるリン系難燃剤である(D)ポリリン酸塩化合物はリン化合物に金属置換剤を置換させたりウレア、メラミン、シアヌレートまたはメラミン−シアヌレートにリンと金属置換剤を置換させた化合物であって、末端にOHと同じ反応基が残っていないため反応性が全然なく、従来のリン酸エステルや縮合リン酸エステルとは違いに有機溶媒に溶ける性質がなく、反応をしないため無機系フィラーと同様にフィラーで使用されることが特徴である。このポリリン酸塩化合物は有機物であるが、無機物特性を有した化合物で、分子内に窒素を含有する場合、燃焼時窒素ガスが発生し酸素を遮断させる役目を共に果たすため難燃性がより良くなる効果を現すことができる。また、非ハロゲンリン酸エステルや非ハロゲン縮合リン酸エステルと違いに耐熱性が高く、水分吸収率が低いことが特徴である。なお、分子量が大きいため揮発の恐れがないため、処理(treating)時に配管が詰まるという問題が生じなく、溶ける性質がないため非ハロゲンリン酸エステルや非ハロゲン縮合リン酸エステルを使用した場合発生するプレス時厚さ調節の難しいさも発生せず、反応性リン酸エステルと違いに反応に参与しないため、ガラス転移温度を下げない。
【0032】
本発明によると上記リン系難燃剤である(D)ポリリン酸塩化合物を使用しなく、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのように無機系難燃剤のみを使用する場合、難燃効果が顕著に低下するため難燃性のULの94V−0を達成するためには過量が添加されなければならないが、過量の無機系難燃剤が使用される場合は接着力と耐熱性が急激に下がるようになる。また、水酸化アルミニウムは約230℃で分解されるため、耐熱性をより脆弱にし、水酸化マグネシウムは水酸化アルミニウムに比べて100℃程度の分解温度が上がるが、難燃効果が低下するため、より過量を使用しなければならないという難関がある。
【0033】
上記(D)のポリリン酸塩化合物は従来の無機系難燃剤に比べて難燃効果が優秀であるため無機系難燃剤のように過量を添加しなくても難燃性がULの94V−0が出るため接着力の低下やフィラー分散が難しくなく、熱重量法 (TGA: Thermal gravimetric analysis)による熱分解温度が少なくとも300℃以上であり、水分吸収率が0.5%以下、好ましくは0.2%以下に耐熱性が高く、吸湿性が低いことが特徴である。
【0034】
上記(D)のポリリン酸塩化合物は粒子大きさが0.1乃至15μmが好ましく、より好ましくは1乃至5μmが適当である。粒子大きさが0.1μm未満の場合、フィラー分散には容易であるが、比重が低いため扱いが容易でなく、製造時の収率が低くなって費用が高くなるという短所があり、15μmを超える場合、分散が難しく、接着力が劣るという問題が発生する。
【0035】
上記(D)のポリリン酸塩化合物は分子骨格内にリンを5乃至60重量%含有しており、好ましくは9乃至30重量%を含有していることがよい。分子骨格内にリンを5重量%未満に含有している場合十分な難燃性を出すためには過量のフィラーが添加されるため、プリプレグの外観が悪くなり、接着力が下がるという問題が発生し、リン含量が60重量%を超える場合耐熱性と耐湿性が低下する。
【0036】
上記(D)のポリリン酸塩化合物の含量はフィラーを除いた全体樹脂成分内にリン含量が2乃至10重量%になるようにすることが好ましく、より好ましくは3乃至5重量%になるようにすることが好ましい。
【0037】
また、本発明においては上記リン系難燃剤である(D)のポリリン酸塩化合物の分散を均一にし、沈降することを防止するため適切な分散剤と分散方法を適用する。
【0038】
本発明において使用された無機系フィラー(E)は水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、 水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、酸化アチモン、水酸化錫、酸化錫、酸化モリブデン、ジルコニウム化合物、硼酸塩、カルシウム塩、アンモニウムオクタモリブデート、滑石(talc)、シリカ(Silica)、アルミナ(Alumina)などがあり、その中で水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化錫、酸化錫、酸化モリブデン、ジルコニウム化合物、硼酸塩、カルシウム塩、アンモニウムオクタモリブデートなどはリン系難燃剤と併用する場合難塩性がより良くなる効果を発揮することができる。また、滑石、シリカ、アルミナなどは耐熱性が高く水分吸収率が低いため樹脂組成物の耐熱性と吸湿後鉛の耐熱性をより向上させる効果を有する。上記(E)の無機系フィラーの含量はフィラーを除いた全体樹脂成分100重量部に対し3乃至50重量部であることが好ましく、より好ましくは5乃至30重量部である。上記無機系フィラーの含量が3重量部未満である場合その効果を発揮しにくいし、50重量部を超過する場合フィラー分散が難しく、耐熱性と接着力が低下する。
【0039】
本発明においては、上記(E)の無機系ウィラーの分散を均一にし、沈降を防止するため適切な分散剤と分散方法を用いる。
【0040】
また、本発明はガラス繊維内に上記非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を含有するプリプレグを提供する。上記プリプレグはガラス繊維30乃至60重量%内に上記非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を40乃至70重量%で含有することが好ましい。
【0041】
なお、本発明は上記プリプレグを1つ以上積層し、上記プリプレグの積層物の外部に銅箔層を位置させ加熱及び加圧し一体化した銅箔積層板を提供する。本発明は上記プリプレグを1枚乃至8枚で使用し両面に伝導材シート(例:銅箔)を 加熱加圧して一体化し銅箔積層板を提供することができる。
【0042】
以上のように、本発明の樹脂組成物においては分子内にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を導入し、既存のハロゲン系難燃剤と非ハロゲン縮合リン酸エステルの代わりに耐熱性が優秀で吸湿性が低い非ハロゲンポリリン酸塩の 1種であるリン系難燃剤を使用することによって、燃焼時ダイオキシンのような 発ガン物質を発生しないため人体に無害であり、ガラス転移温度が高くて難燃性、耐熱性及び吸湿後鉛の耐熱特性に優れた効果を発揮することができる。
【実施例】
【0043】
以下の実施例及び比較例を通して本発明をより詳しく説明する。但し、実施例は本発明を例示するためのことで、これらのみに限定することではない。
【0044】
実施例1
【0045】
(分子中にジヒドロベンゾオキサジンを有する化合物の製造)
先ず、フェノールノボラック樹脂(商品名 KPH−F−2001、韓国コオロング油化社製造)1.7kgをアニリン1.5kgと共に混合し60℃温度で1時間ミキシングした後、還流装置か取り付けられた5Lフラスコにホルムアルデヒド1.6kgを加えて温度を100℃に保持させた後ノボラック樹脂とアニリン混合溶液を30分間徐々に加えた。以後、反応混合物を1時間の間保持してから得られた 化合物を120℃の温度で減圧乾燥し分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物が得られた。以下、得られた樹脂を(BE)と表記する。
【0046】
(リン系難燃剤であるポリリン酸塩化合物と無機系フィラー分散)
先ず、500mlビーカーに分散剤(商品名 BYK W903、BYK Chemie社製造)2.4重量部をメチルエチルケトン100重量部を加えて完全に溶解させた後、 ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP930、ドイツクラリアント社製造)80重量部とシリカ(商品名SFP−30M、日本デンカ社製造)120重量部を入れ、フィラー分散用高速ミキサを用いて11000rpmの速度で20分間攪拌しフィラー分散を均一にした。上記商品名 Exolit OP930のポリリン酸塩化合物はジエチルホスフィン酸(Diethyl phosphinic acid)にアルミニウムを置換させ製造した化合物であって、TGA熱分解温度が400℃以上であり、水分吸収率が0.2%以下であり、粒子大きさが3乃至7μmであることを特徴とする。
【0047】
(非ハロゲン系樹脂組成物の製造)
下記表1に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。その具体的な方法は次の通りである。
【0048】
先ず1000mlビーカーに上記において製造された分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(BE)240重量部を入れ、メチルエチルケトン100重量部を加えて完全に溶解させた後、フェノールノボラックエポキシ樹脂(商品名 LER N-690、ベイクライトKorea社 製造)160重量部とフェノールノボラック樹脂(商品名KPH F-2000、韓国コオロング油化社製造)120重量部、2-メチルイミダゾール0.2重量部を加えて完全に溶解させた。以後、ポリリン酸塩化合物と無機系フィラーを分散させたスラリ(slurry)を混合溶液に入れ、固形粉が65%となるようにメチルエチルケトンを追加した後、スラリが完全に混じるまでに攪拌し非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0049】
実施例2
【0050】
下記表1に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0051】
フェノールノボラックエポキシ樹脂160重量部の代わりにビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(商品名 LER N865、ベイクライトKorea社製造)120重量部を使用し、フェノールノボラック樹脂120重量部の代わりにビスフェノールAノボラック樹脂(商品名 VH4170、江南化成製造)160重量部を使用したことを除いては、上記実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0052】
実施例3
【0053】
下記表1に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0054】
分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(BE)240重量部を使用する代わりに320重量部を使用し、フェノールノボラックエポキシ樹脂160重量部を使用する代わりに80重量部を使用し、フェノールノボラック樹脂120重量部を使用する代わりにビスフェノールA型レゾール樹脂(商品名 CKA908、韓国コオロング油化社製造)120重量部を使用しポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP 930、ドイツ クラリアント社製造)80重量部を使用する代わりに120重量部を使用し、シリカ(商品名 SFP-30M、日本デンカ社製造)120重量部を使用する代わりにシリカ(Min U sil−5、米国US社)80重量部を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0055】
実施例4
【0056】
下記表2に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0057】
ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)を80重量部を使用する代わりに窒素含有ポリリン酸塩化合物(リン含量14%、商品名 Arafil 72 台湾バンティコ社製造)を160重量部使用し、シリカ(商品名SFP−30M、日本デンカ社製造)120重量部の代わりに水酸化アルミニウム(商品名 TS−601、ドイツ マティンスベルク社)40重量部を使用することを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。上記商品名 Arafil 72の窒素含有ポリリン酸塩化合物は、窒素系化合物にリンとアルミニウムを置換させ合成した化合物でTGA熱分解温度が300℃以上であり、水分吸収率が0.2%以下であり粒子大きさが約2μm以下であることを特徴とする。
【0058】
実施例5
【0059】
下記表2に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0060】
分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(BE)を240重量部の代わりに320重量部を使用し、フェノールノボラックエポキシ樹脂(商品名 LER N-690、ベイクライトKorea社製造) 160重量部の代わりに80重量部を使用し、ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)80重量部の代わりに窒素含有ポリリン酸塩化合物(リン含量 14%、商品名 Arafil 72 台湾 バンティコ社製造)160重量部を使用し、シリカ(商品名 SFP−30M、日本 デンカ社製造)120重量部の代わりにシリカ(Min U sil−5、米国US社)80重量部を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0061】
実施例6
【0062】
下記表2に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0063】
ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)を80重量部使用する代わりに窒素含有ポリリン酸塩化合物(リン含量11%、商品名 Nonfla601、韓国デュボン社製造)を160重量部使用し、シリカ(商品名 SFP−30M、日本 デンカ社製造)の代わりにシリカ(Min U sil−5、米国US社)80重量部を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。上記商品名 Nonfla 601の窒素含有ポリリン酸塩化合物はメラミン−シアヌレートにリンとアルミニウムを置換させ合成した化合物でTGA熱分解温度が350℃以上であり、水分吸収率が0.3以下であり粒子大きさが約2μm以下であることを特徴とする。
【0064】
比較例1
【0065】
下記表3に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0066】
分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物(BE)240重量部と、フェノールノボラックエポキシ樹脂160重量部を使用する代わりにビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(商品名LER N865、ベイクライトKorea社製造)400重量部を使用し、フェノールノボラック樹脂を120重量部使用する代わりにビスフェノールAノボラックフェノール樹脂(商品名VH 4170、江南化成製造)216.6重量部を使用し、2−メチルイミダゾールを0.2重量部の代わりに0.6重量部で使用し、ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名 Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)80重量部を使用する代わりに100重量部を使用し、シリカ(商品名 SFP−30M、日本デンカ社製造)120重量部を使用する代わりに150重量部を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0067】
比較例2
【0068】
下記表3に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0069】
ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)80重量部を使用する代わりに縮合リン酸エステル(リン含量9%、商品名 Nonfla 500、韓国デュボン社製造)を180重量部使用し、シリカ(商品名SFP−30M、日本デンカ社製造)の代わりに水酸化アルミニウム(商品名TS−601、ドイツマティンスベルク社)120重量部を使用することを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0070】
比較例3
【0071】
下記表3に示した組成で非ハロゲン系樹脂組成物を製造した。
【0072】
フェノールノボラック樹脂(商品名 KPH F−2000、韓国コオロング油化社製造)120重量部を使用する代わりにメラミン変性ノボラック樹脂(商品名 YLH 828、日本エポキシレシン社製造)120重量部を使用し、ポリリン酸塩化合物(リン含量23%、商品名Exolit OP 930、ドイツクラリアント社製造)を80重量部使用する代わりに反応性リン化合物(リン含量9%、商品名 HCA-HQ、日本サンコ社製造)180重量部を使用し、シリカ(商品名 SFP−30M、日本デンカ社製造)の代わりに水酸化アルミニウム(商品名 TS−601、ドイツマティンスベルク社)120重量部を使用することを除いては、実施例1と同一の方法で樹脂組成物を製造した。
【0073】
試験例
【0074】
(銅箔積層板の製造)
上記実施例及び比較例において製造された樹脂組成物をガラス繊維(日東紡社製造 7628)に含浸させた後、熱風乾燥し樹脂含量が43重量%であるガラス繊維プリプレグ(prepreg)を製造した。
【0075】
製造されたガラス繊維プリプレグ8枚を積層した後、両面に35μmの銅箔を位置させ共に積層した後、プレスを用いて195℃の温度、40kg/cmの圧力で 90分間加熱、加圧し厚さ1.6mmの銅箔積層板を製造した。
【0076】
(銅箔積層板の評価)
上記銅箔積層板に対して次の方法で物性を評価し、その結果は次の表1乃至3に示した。
【0077】
1)ワニスゲル化時間は直径2cm、高さ0.5cmの溝が掘られているホットプレート(hot plate)の温度を170℃に保持させ、ワニス0.5mlを溝に詰め込んで木箸でかき回して、樹脂が完全に硬くなるまでの所与時間を測定した。
【0078】
2)上記銅箔積層板の銅箔層をエッチングで除去しDSC(differential scanning calorimeter)でガラス転移温度を測定した。
【0079】
3)銅箔剥離強度は銅箔積層板の表面で幅1cmの銅箔を剥がした後、引張強度測定器(texture analyzer)により銅箔の剥離強度を測定した。
【0080】
4)鉛の耐熱性は288℃の鉛槽に5cm×5cmの大きさで切断した1.6mmの厚さのサンプルを載せた後、耐える時間を測定した。
【0081】
5)吸湿後の鉛の耐熱性は5cm×5cmの大きさで切断した1.6mmの厚さの試片3つを120℃、2気圧、湿度100%の条件のPCT(pressure cooker test)内で2時間処理した後に288℃の鉛槽に10秒間沈積した後、膨張の有無を 観察し以下の基準で評価した。
◎: 全然膨張しない、 ○: 一部膨張、 △: 大部分膨張、 ×: 全面膨張
【0082】
6)難燃性は銅箔が除去されたラミネートを有して棒状の試片を製作し垂直燃焼試験法によりV-0、V-1及びV-2の等級に分ける難燃性評価標準方法であるUL94実験法を遂行し測定した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
上記表1及び2から見ると、本発明の実施例1乃至3においてリン系難燃剤としてポリリン酸塩化合物であるExolit OP 930を使用する場合良好な難燃性と高いガラス転移温度を現わし、優秀な耐熱性と吸湿後鉛耐熱特性を現わした。そして、ポリリン酸塩化合物であるArafil 72を使用した実施例4及び5とNonfla 601を使用した実施例6の場合もやはり良好な難燃性と高い銅箔剥離強度、ガラス転移温度を現わした。
【0086】
【表3】

【0087】
上記表3を通して、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を使用する代わりに、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂を使用した比較例1の場合、 耐熱性と吸湿後鉛の耐熱特性は優秀であるが、難燃がUL94V−0を達成することができず、銅箔剥離強度が大きく低下した。また、縮合リン酸エステルであるNonfla 500を使用した比較例2と反応性リン酸エステルであるHCA-HQを使用した比較例3の場合難燃性は良好であるが、耐熱性と吸湿後鉛の耐熱特性が低下し、特に反応性リン酸エステルであるHCA-HQを使用した比較例3の場合HCA-HQのOH基が反応に参与しガラス転移温度を大きく下げた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の非ハロゲン系樹脂組成物は燃焼時ダイオキシンのような有毒性発ガン物質を発生せず、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を導入することによって、樹脂自体の難燃特性と耐熱特性を向上させ、末端のOHが 全部置換されたポリリン酸塩系化合物をリン系難燃剤として使用しこれを無機系フィラーと適切に混用し使用することによって、ガラス転移温度を下げずに、良好な難燃性、優秀な耐熱性、吸湿後鉛の耐熱特性を有する効果がある。
【0089】
上記本発明は記載された具体例を中心に詳しく説明されたが、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変型及び修正が可能であることは当業者にとって明らかなことであり、かかる変型及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然なことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物、
(B)エポキシ樹脂、
(C)ノボラックまたはレゾールフェノール樹脂、
(D)ポリリン酸塩化合物、及び
(E)無機系フィラー
を含む銅箔積層板用の非ハロゲン系難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は、
フェノール性水酸基を有する化合物1モルに対し第1級アミンを0.5乃至1.5モル反応させ、
前記1級アミン1モルに対しホルムアルデヒドを1.5乃至2.5モルの比率で添加し、
ジヒドロベンゾオキサジンの開環反応により得られたものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は下記化学式1
(化学式1)
【化1】

(上記式中、
R1はアルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基であり、または、アルキル基もしくはアルコキシ基に置換されたフェニル基である。)
で表示される化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物と上記(B)のエポキシ樹脂との合計100重量部に対し20乃至95重量部の量で含まれる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
上記(B)のエポキシ樹脂は上記(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物と上記(B)のエポキシ樹脂との合計100重量部に対し5乃至80重量部の量で含まれる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
上記(C)のノボラックまたはレゾールフェノール樹脂は(A)の分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物と上記(B)のエポキシ樹脂との合計100重量部に対し5乃至80重量部の量で含まれる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
上記(D)のポリリン酸塩化合物は熱重量分析法(TGA)による熱分解温度が少なくとも300℃以上であり、水分吸収率が0.5%以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
上記(D)のポリリン酸塩化合物はリン化合物に金属置換剤を置換させ、またはウレア、メラミン、シアヌレートまたはメラミン−シアヌレートにリンと金属置換剤を置換させて、得られたものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
上記(D)のポリリン酸塩化合物は分子内にリンを5乃至60%含有し、粒子大きさが0.1乃至15μmである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
上記(D)のポリリン酸塩化合物はフィラーを除く樹脂組成物100重量部に対しリン含量が2乃至10%となるように含まれる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
上記(E)の無機系フィラーは全体樹脂組成物100重量部に対し3乃至50重量部の量で含まれる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1つの項に記載の樹脂組成物を40乃至70重量%、ガラス繊維を30乃至60重量%含むプリプレグ。
【請求項13】
請求項12に記載のプリプレグを1つ以上積層し、上記プリプレグ積層物の外部に銅箔層を位置させた後、加熱及び加圧し一体化した銅箔積層板。

【公表番号】特表2006−526066(P2006−526066A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516968(P2006−516968)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000117
【国際公開番号】WO2005/068546
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド  (1,221)
【Fターム(参考)】