説明

非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物、及びその成形体

【課題】 本発明の課題は、難燃剤の添加量を抑えることで、基材樹脂が本来もつ物性が十分に発揮され、コスト増大を抑えられた、優れた非ハロゲン難燃性を有するポリエステル系樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 本発明の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部、及び常温で固体の有機リン系難燃剤5〜20重量部を含む非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、前記有機リン系難燃剤100重量%が、ホスファゼン系難燃剤1〜99重量%、及びリン酸エステル系難燃剤1〜99重量%を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物、及びその樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、その優れた特性から、電気および電子部品、自動車部品などに広く使用されている。近年、特に家電、電気およびOA関連部品では、火災に対する安全性を確保するため、高度な難燃性が要求される例が多く、このため、種々の難燃剤の配合が検討されている。
【0003】
熱可塑性ポリエステル樹脂に難燃性を付与する場合、一般的に、難燃剤としてハロゲン系難燃剤を使用し、必要に応じて三酸化アンチモン等の難燃助剤を併用することにより、高度な難燃効果と優れた機械的強度、耐熱性等を有する樹脂組成物が得られていた。しかしながら、今般、海外向け製品を中心として、ハロゲン系難燃剤に対する法規制が発令されつつあり、難燃剤の非ハロゲン化が検討されている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤の代替としてリン系難燃剤が多く使用されているが、リン酸エステル系難燃剤は樹脂本来の物性を低下させやすい。そのため、難燃効果と物性の両立は非常に困難であった。
【0005】
例えば、特許文献1には、難燃性と、成形加工性に優れ、また、高温多湿雰囲気下においてもブリードアウトが発生し難くい機械機構部品、電気・電子部品および自動車部品として有用な成形品となる樹脂組成物として、熱可塑性ポリエステル樹脂に対し、特定の縮合リン酸エステルである芳香族リン酸エステル化合物と分子量100〜500のリン酸エステル化合物からなるリン系難燃剤を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。本文中に「窒素化合物系難燃剤」として「ホスファゼン化合物」が記載されている。
【0006】
しかし、縮合リン酸エステルや分子量100〜500のリン酸エステル化合物を含む組成物を成形体とした時には、ブリードアウトの問題が完全には解決できず、また、十分な難燃性を付与するためには、基材樹脂100重量部に対して、30重量部以上添加する必要があり、基材樹脂が本来もつ物性が阻害されたり、コストが高くなったりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−006965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、難燃剤の添加量を抑えることで、基材樹脂が本来もつ物性が十分に発揮され、コスト増大を抑えられた、優れた非ハロゲン難燃性を有するポリエステル系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の有機リン系難燃剤、即ち、特定の有機リン系難燃剤が併用された有機リン系難燃剤を使用することで、難燃剤の添加量を抑えつつ、優れた非ハロゲン難燃性をポリエステル系樹脂組成物に付与できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部、及び常温で固体の有機リン系難燃剤5〜20重量部を含む非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、前記有機リン系難燃剤100重量%が、ホスファゼン系難燃剤1〜99重量%、及びリン酸エステル系難燃剤1〜99重量%を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物に関する。
【0011】
好ましい実施態様は、さらに、メラミン・シアヌル酸付加物、トリアジン系化合物、メラム、及びメレムからなる群から選ばれる1種以上の窒素化合物1〜80重量部を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物とすることである。
【0012】
好ましい実施態様は、さらに、非導電性無機フィラー10〜120重量部を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物とすることである。
【0013】
また、本発明は、本発明の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物の成形体に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、127mm×12.7mm×厚み1/4インチの成形体において、ASTM D790における曲げ強度が200MPa以上、かつ、63.5mm×12.7mm×厚み1/4インチの成形体において、ASTM D256におけるIZOD衝撃強度が60MPa以上である成形体とすることである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、難燃剤の添加量を抑えることで、基材樹脂が本来もつ物性が十分に発揮され、コスト増大を抑えられた、優れた非ハロゲン難燃性を有するポリエステル系樹脂組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物)
本発明の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤を含まない非ハロゲンの難燃性ポリエステル系樹脂組成物であり、特定の有機リン系難燃剤が熱可塑性ポリエステル系樹脂に添加されてなるので、少ない難燃剤の添加量としても、基材樹脂が本来もつ物性が十分に発揮され、コスト増大を抑えられた、優れた非ハロゲン難燃性を有するポリエステル系樹脂組成物となる。
【0017】
即ち、本発明の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部、及び常温で固体の有機リン系難燃剤5〜20重量部を含む非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、前記有機リン系難燃剤100重量%が、ホスファゼン系難燃剤1〜99重量%、及びリン酸エステル系難燃剤1〜99重量%を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物である。
【0018】
(熱可塑性ポリエステル系樹脂)
本発明に係る熱可塑性ポリエステル系樹脂は、後述する熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分、即ち、熱可塑性ポリエステル系樹脂全体を100重量%としたときに、熱可塑性ポリエステル樹脂を50重量%以上含む樹脂であり、ポリエステル樹脂が本来有する高結晶性と、それに基づく強度、剛性、及び耐薬品性といった樹脂が本来有する特性と、を十分に発揮せしめる観点から、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%とすることである。
【0019】
このような本発明に係る熱可塑性ポリエステル系樹脂の熱可塑性ポリエステル樹脂以外の十成分としては、脂肪族ポリアミド系樹脂、半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0020】
(熱可塑性ポリエステル樹脂)
本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリコハク酸エチレン、ポリコハク酸ブチレン、ポリアジピン酸ブチレン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ(α−オキシ酸)、及びこれらの共重合体、並びにこれらのブレンド物が例示される。加工性・コスト面の観点から、好ましくはポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる1種以上であり、コストの面からポリエチレンテレフタレートがより好ましい。ポリエチレンテレフタレートの中でも、熱安定性の観点から、ゲルマニウム化合物の触媒により重合されてなるものであること好ましい。
【0021】
(有機リン系難燃剤)
本発明に係る有機リン系難燃剤100重量%は、上述したように、ホスファゼン系難燃剤1〜99重量%、及びリン酸エステル系難燃剤1〜99重量%を含み、これらの難燃剤を併用することで、特異的に本発明に係る難燃性の相乗効果が奏され、結果として難燃性が向上する。この有機リン系難燃剤100重量%は、効果的に本発明に係る前記相乗効果を発揮せしめる観点から、ホスファゼン系難燃剤30〜70重量%、及びリン酸エステル系難燃剤30〜70重量%を含むことが好まし。
【0022】
このような本発明に係る有機リン系難燃剤は、本発明の樹脂組成物の各組成を、乾燥状態でブレンド(ドライブレンド)した後、2軸押出機においいて溶融混練することで、容易に本発明の樹脂組成物とするために、常温で固体であることを要する。即ち、本発明の一つの特徴は、難燃成分を基材樹脂と反応させて樹脂の一部として取り込まなくても、単にドライブレンドして本発明の樹脂組成物を作製するだけで、その成形体はブリードアウトし難い成形体となる点にある。
【0023】
前記ホスファゼン系難燃剤としては、環状ホスファゼン化合物(シクロホスファゼン化合物)や鎖状ホスファゼン化合物、架橋フェノキシホスファゼン化合物が挙げられるが耐加水分解性の観点から、架橋フェノキシホスファゼン化合物が好ましく、より好ましくは、下記一般式1で表される環状フェノキシホスファゼン化合物においてフェニル基が脱離した酸素原子間に、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、又は下記一般式2で表されるビスフェニレン基のいずれか一つを含む架橋基を介在することにより架橋された構造を有する架橋フェノキシホスファゼン化合物を含有することを特徴とする。また、前記架橋フェノキシホスファゼン化合物におけるフェニル基の含有割合が、環状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基の総数を基準とした場合に50〜99.9%であることが好ましい。なお、フェニル基の含有割合は、元素分析値から求めることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、aは3〜30までの整数を示す)
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、Rは、−C(CH32−、−SO2−、−S−若しくは−O−を示す。bは、0若しくは1を示す。)
【0028】
前記リン酸エステル系難燃剤としては、分子量500以上の芳香族縮合リン酸エステルや下記一般式3で表されるものが好ましく、その場合において、本発明の樹脂組成物の基材樹脂であるポリエステル樹脂の結晶化を阻害したり、基材樹脂そのものの機械的強度を低下させたりすることを防止しながら、かつ、本発明の樹脂組成物、又は成形体中で、このリン酸エステル系難燃剤の分散性を良好なものとして、全体に一定の難燃性を付与する観点から、nの繰り返し単位の下限値はn=2であり、好ましくは、n=3、より好ましくはn=5であり、nの繰り返し単位の上限値は、n=40であり、好ましくは、n=35、より好ましくはn=30であり、対応して、分子量は4000〜12000であり、リン含有量が約8%程度である有機リン系難燃剤が好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、nは2〜40の整数である)
(窒素化合物)
【0031】
本発明に係る窒素化合物は、上述したように、メラミン・シアヌル酸付加物、トリアジン系化合物、メラム、及びメレムからなる群から選ばれる1種以上の窒素化合物であるが、本発明に係る機械的強度維持の観点から、メラミン・シアヌル酸付加物が好ましい。
【0032】
前記メラミン・シアヌル酸付加物は、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)、及びとシアヌル酸(2,4,6-トリヒドロキシ-1,3,5-トリアジン)とから合成される化合物であり、具体的には、メラミンの溶液とシアヌル酸の溶液とを混合して塩を形成させる方法等によって得ることができる。メラミンとシアヌル酸の混合比としては、本発明の樹脂組成物の成形体の熱安定性を維持する観点から、等モルに近い方がよく、特に等モルであることが好ましく、その平均粒子径は、得られる組成物の成形加工性や、その成形体の強度特性の観点から、0.01〜250μmが好ましく、より好ましくは0.5〜200μmである。
【0033】
前記トリアジン化合物は、前記メラミンや前記シアヌル酸を含む、炭素3個、及び窒素を3個からなる不飽和の6員環構造のトリアジン環を有する化合物である。
【0034】
前記メラムは前記メラミンの2量体、前記メレムは前記メラミンの3量体である。
【0035】
このような本発明に係る窒素化合物の本発明の樹脂組成物への添加量は、本発明に係る熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して、1〜80重量部とすることが好ましく、本発明の成形体を高剛性かつ高靱性を有する電器製品用軸や電器製品用回転軸として用いる観点から、より好ましくは、6〜20重量部とすることである。
【0036】
(非導電性無機フィラー)
前記非導電性無機フィラーは、本発明の樹脂組成物の成形体の線膨張性を小さくするための成分であり、シリカやアルミナをその材料の主成分とする非導電性の無機物であり、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレーク、ガラスファイバー、板状アルミナ、及び合成ハイドロタルサイトからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、強度を維持させる観点から、ガラスファイバー(GF)がより好ましい。
【0037】
このような本発明に係る非導電性無機フィラーの本発明の樹脂組成物への添加量は、本発明に係る熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して、10〜120重量部とすることが好ましく、本発明の成形体を曲げ強度に優れ、かつ、電器製品に求められる高度な非ハロゲン難燃性を有し、かつ、IZOT強度に代表される耐衝撃性に優れた電器製品用軸、より好ましくは電器製品用回転軸として用いる観点から、より好ましくは、100〜120重量部とすることである。
【0038】
このような本発明に係る非導電性無機フィラーとしては、上述のようにガラスファイバー(GF)が好ましいが、GFとしては、通常に用いられる繊維長1mm〜5mm、アスペクト比3〜4のものが好ましいく、それをエポキシやウレタンで集束したもの等も挙げられるが、それに限られず、繊維長2〜10mm、アスペクト比10〜50の所謂長繊維、特にその作製過程で、GFに撚りを施しながらストランドに成型した長繊維GFも好ましく用いられ、その場合には、長繊維GFが断裂しないように特別の工夫が凝らされた成型装置を使用することが好ましい。
【0039】
(添加剤)
本発明の樹脂組成物には、耐衝撃性改良材、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料・染料等を配合しうる。
【0040】
前記耐衝撃改良剤としては、コア/シェル型グラフト重合体やポリオレフィン系重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、熱可塑性ポリエステル系エラストマー等を挙げることができる。
【0041】
前記安定材としては、フェノール系安定材やリン系安定材、硫黄系安定材等を挙げることができる。
【0042】
(混練)
本発明の樹脂組成物の製造は任意の方法で行なうことができる。たとえば、ブレンダー、スーパーミキサーなどを用いての混合、単軸または多軸のスクリュー押出機などでの混練により製造される。
【0043】
(成形体・用途)
このようにして得られた本発明の樹脂組成物は、既知の種々の方法、たとえば射出成形法、押出し成形法等により、自動車部品、電気・電子部品、雑貨等に成形される。このようにして本発明の樹脂組成物を成型して得られる本発明の成形体は、その127mm×12.7mm×厚み1/4インチの試験片において、ASTM D790における曲げ強度が200MPa以上、かつ、127mm×12.7mm×厚み1/4インチの試験片において、ASTM D256におけるIZOD衝撃強度が60MPa以上の特性を有するものが容易に得られるので、そのような好ましい特性を持つ本発明の成形品は、樹脂の機械的特性を維持しつつ、テレビや複写機等の電器・電子部材、及び摺動部を有する機械的機構部材として好適に用いられ、特に好適な用途は、電器製品用軸、より好ましくは電器製品用回転軸として用いることである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の樹脂組成物を実施例に基づき具体的に説明する。
【0045】
まず、使用した材料、及び評価方法につき以下説明する。
【0046】
(熱可塑性ポリエステル樹脂)
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、アンチモン系触媒で重合されたポリエチレンテレフタレートである、Sb−PETを用いた。
【0047】
(ホスファゼン系難燃剤)
ホスファゼン系難燃剤としては、架橋フェノキシホスファゼン化合物であり、一般式1で表される環状フェノキシホスファゼン(一般式1のaが3〜20の混合物)をp−フェニレン基で架橋させた、大塚化学社製のSPB−100を用いた。
【0048】
(リン酸エステル系難燃剤)
リン酸エステル系難燃剤としては、分子量690の大八化学株式会社のPX−200を用いた。
【0049】
(窒素化合物)
窒素化合物としては、メラミン・シアヌル酸付加物であり、平均粒子径がD50=10〜16μmであり、メラミン及びシアヌル酸を等モルで反応させた生成物である、日産化学工業株式会社製のMC−4000を用いた。
【0050】
(非導電性無機フィラー)
非導電性無機フィラーとしては、平均繊維長3mm、繊維径10μmのガラスファイバー(オーエンスコーニング株式会社製のFT−592)を用いた。
【0051】
(曲げ強度)
127mm×12.7mm×厚み1/4インチの試験用バーを作成しASTM D−790に準拠し、23℃で測定した。
【0052】
(アイゾット衝撃値)
127mm×12.7mm×厚み1/4インチの試験用バーを作成し、それを63.5mm×12.7mm×厚み1/4インチに切削し、ノッチを付けてASTM D−256に準拠し、23℃で測定した。
【0053】
(難燃性)
UL94基準V試験に準拠し、具体的には、下記実施例・比較例で得られた厚さ1/16インチのバー形状試験片を用いて燃焼性を評価した。表1において、t1(max)は第一接炎後の各試験片(n=5本)の燃焼時間(秒)の最大値、t2(max)は第二接炎後の各試験片(n=5本)の燃焼時間(秒)の最大値であり、Σ(t1+t2)は試験片(5本)の合計燃焼時間である。この値が小さい程難燃性に優れることとなる。
【0054】
(実施例1〜3、及び比較例1〜2)
表1に示す原料、及び配合組成(単位:重量部)で各原料をドライブレンドすることで各混合物を得た。前記混合物を、ベント式44mmφ同方向2軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX44)を用いて、そのホッパー孔から供給し、シリンダー設定温度250〜280℃にて溶融混練することでペレット化した。得られたペレットを120℃で3時間乾燥後、射出成形機(JS36SS型締め圧:35トン)を用い、シリンダー設定温度250℃〜280℃および金型温度60℃の条件にて射出成形を行い、127mm×12.7mm×厚み1/16インチの試験片を得て、前記記載の評価方法にて評価した。
【0055】
各実施例、及び各比較例における評価結果を表1に併せて示す。
【0056】
本発明に係る実施例1〜3の各試験片は、比較例1、及び2の試験片に比べて、優れた難燃性を有することが判る。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部、及び常温で固体の有機リン系難燃剤5〜20重量部を含む非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、
該有機リン系難燃剤100重量%が、ホスファゼン系難燃剤1〜99重量%、及びリン酸エステル系難燃剤1〜99重量%を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、さらに、メラミン・シアヌル酸付加物、トリアジン系化合物、メラム、及びメレムからなる群から選ばれる1種以上の窒素化合物1〜80重量部を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1、又は2に記載の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物であって、さらに、非導電性無機フィラー10〜120重量部を含む、非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の非ハロゲン難燃性ポリエステル系樹脂組成物の成形体。
【請求項5】
請求項4に記載の成形体であって、127mm×12.7mm×厚み1/4インチの成形体において、ASTM D790における曲げ強度が200MPa以上、かつ、63.5mm×12.7mm×厚み1/4インチの成形体において、ASTM D256におけるIZOD衝撃強度が60MPa以上である成形体。

【公開番号】特開2011−231150(P2011−231150A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100060(P2010−100060)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】