説明

非ファウリングで抗菌の抗血栓形成性グラフト−フロム組成物

本願は、適宜下塗り層でコーティングされた基質であって、そこで1つ以上の非ファウリング物質がグラフト−フロムされる基質について記載する。非ファウリング性のポリマー物質は、様々な基質材、とりわけポリマー基質および/またはポリマー下塗り層でグラフト−フロムされ得る。本明細書に記載のグラフト−フロム技法は、グラフト-トゥ形成と比べて、より高い表面密度の非ファウリング物質をもたらすことができる。グラフト−フロム法を用いて、共有結合で連結されたポリマーを製造することができる。本明細書に記載の組成物は、とりわけ複合培地において、タンパク質吸収に高い抵抗性であり、長期間にわたって高い非ファウリング活性を保持する。本明細書に記載の組成物はまた、抗菌および/または抗血栓形成活性を示しうる。該非ファウリング物質は、好ましくは該基質材の機械的および/または物理的特性に顕著に影響を及ぼすことなく、基質でグラフト−フロムされ得るか、あるいは適宜、基質上の下塗り層でグラフト−フロムされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定された非ファウリング(non-fouling)コーティングの分野、とりわけ、生物学的物質の接着に抵抗し、グラフト−フロム(graft from)法によって基質表面へ付加されるコーティングに関するものである。
【関連出願】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、Zheng Zhang、William Shannan O'Shaughnessy、Michael Hencke、Trevor Squier、およびChristopher Looseによる、2008年12月5日出願の米国特許出願第61/120,285号、表題“Synthetic Anticoagulant and Antithromo genie Polymers”;William Shannan O'Shaughnessy、Victoria E. Wagner Sinha、Zheng Zhang、Michael Hencke、Trevor Squier、およびChristopher Looseによる、2008年12月5日出願の米国特許出願第61/120,292号、表題“Presentation of Immobilized Molecules”;Trevor Squier、Zheng Zhang、William Shannan O'Shaughnessy、Michael Hencke、Michael Bouchard、およびChristopher Looseによる、2008年12月5日出願の米国特許出願第61/120,312号、表題“Non-Fouling, Antithrombotic Graft Coatings”;ならびに、Trevor Squier、Zheng Zhang、William Shannan O'Shaughnessy、Michael Hencke、Michael Bouchard、およびChristopher Looseによる、2009年8月5日出願の米国特許出願第61/231,346号、表題“Non-Fouling, Antithrombotic Graft Coatings”の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
非特異的タンパク質吸着に抵抗するため、多くの異なる物質が研究されてきた。この目的のために用いられる化学物質(chemistry)としては、限定はされないが:ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、多糖(例えばデキストラン)、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドンもしくはヒドロキシエチル-メタクリレート)、へパリン、分子内双性イオンもしくは混合電荷物質(mixed charge material)、および水素結合受容基(例えば特許文献1に記載のもの)が挙げられる。タンパク質の吸着防止におけるこれらの物質の能力は、該化学物質間で大きく異なっている。これらの物質のうちのごく一部は、短期のin vivo適用に必要とされる程度までファウリングに抵抗を示す。しかしながら、短期の適用に適した数種の物質は、複合培地もしくはin vivoで長期間用いた場合、顕著な抵抗性もしくは物質分解を示し、それらを長期の適用に適さなくさせる。さらに、in vivo分解に抵抗を示す物質でコーティングした表面は、多くの場合、ファウリング抵抗性が時間とともに顕著に減少しやすい。
【0004】
原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いて、金基質上の自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)か、またはガラス基質上のシリル基で、スルホンベタインおよびカルボキシベタインをグラフト−フロムすることが、特許文献2に記載されている。金およびガラスは、in vivoで用いられる多くの医療デバイスのための適切な基質ではない。自己組織化単分子膜(例えばチオール-ベースの単分子膜)は、チオール基が基質に安定に結合していないので、不安定でありうる。
【0005】
Wangらの特許文献3は、基質表面のグラフト重合(しかし、高い非ファウリング性のポリマー物質は高密度でない)について記載している。熱イニシエーターを、通常は85℃より高い温度で用いて、重合を開始させる。該温度は、一般的に、多くの医療デバイス(例えば薄壁ポリウレタンカテーテル(thin-walled polyurethane catheter)に適さない。さらに、記載されている「塩析」法は、一般的に、ポリマー(例えば双性イオンポリマー)のグラフトに適さない。
【0006】
非特許文献1は、硫酸アンモニウム(sulf ammonium)双性イオンモノマーをグラフトすることによるセグメント化ポリ(エーテルウレタン)の表面修飾(しかし、非ファウリング物質は高密度でない)について記載している。得られた物質は、医療デバイス適用に用いることができるほどには、非ファウリング性が十分でない。
【0007】
従って、本発明の目的は様々な基質(例えばポリマーおよび金属酸化物)のための非ファウリングポリマーコーティングを提供することであり、改良された分子構造によって血液タンパク質の存在下および/またはin vivoにおけるそれらの活性が保持され、また、固定された剤とタンパク質抵抗性化学物質を協同作用させて非特異的タンパク質吸着に対する抵抗を可能にする。
【0008】
本発明のさらなる目的は高密度の非ファウリングポリマー物質を含有する非ファウリング組成物を提供することであり、さらに/あるいは、ここで、非ファウリングポリマー物質のポリマー鎖間距離は非ファウリングコーティング中へのファウリング分子の侵入を減少させる。
【0009】
本発明のさらなる実施態様は、バイオマテリアルで形成されたコーティング表面のグラフト−フロム法を提供し、ここで、該グラフトは該バイオマテリアル内から開始されて、高密度で安定な非ファウリングポリマーを供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,276,286号
【特許文献2】WO2007/02493
【特許文献3】米国特許第6,358,557号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jian et al., Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 28, 1-9 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
下塗り層で適宜コーティングされていてもよい基質であって、そこで1つ以上の非ファウリング物質がグラフト−フロムされる基質を、本明細書において記載する。さまざまなテザー化学物質(tether chemistry)もしくはポリマー骨格化学物質を有する非ファウリングコーティングにより、高い効果の、生体適合性の、および生体応答性の非ファウリングコーティングの開発への別のアプローチが提供される。一実施態様において、該コーティングは非浸出性(non-leaching)である。従来のファウリング抵抗性もしくは非ファウリング性の物質および表面コーティングは、複合培地および/またはin vivo環境への長期曝露によってファウリングしやすい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に記載の化学物質を用いた、非ファウリング性のポリマー物質は、様々な基質材、とりわけ金属もしくはポリマー基質、および/またはポリマー下塗り層でグラフト−フロムされ得る。得られたポリマーコーティングは、一般的に自己組織化単分子膜-ベースのコーティングよりも薄く、従って市販のバイオマテリアル(ポリマーおよび金属を含む)の欠点および不規則性をよりよくカバーするので、非ファウリングコーティングは複合培地および/またはin vivoにおいて有効である。
【0014】
グラフト−フロム技法は、グラフト-トゥ(graft-to)形成に比べて、高い表面密度の非ファウリング物質をもたらし得る。高濃度の重合イニシエーターは、例えば、イニシエーターの存在下で基質もしくは下塗り層を膨張させることにより、基質もしくは下塗り層に導入され得る。基質および/または下塗り層の中および/または上の高濃度のイニシエーターは、表面上に高密度のポリマー鎖をもたらし得る。一実施態様において、表面上のポリマー鎖の密度は、約0.5 μg/cm2〜約5 mg/cm2、約1 μg/cm2〜100 μg/cm2、または約2 μg/cm2〜50 μg/cm2である。別の実施態様において、該ポリマー鎖間距離は、コーティング物質へのファウリング物質の侵入を減少させる。
【0015】
グラフト−フロム法を用いて共有結合で連結されたポリマーを製造することができ、それは、最高の非ファウリング基の均一性を示し、最高の非ファウリング活性度を示すであろう。該コーティングは、管状構造および多孔質構造を含む様々な形状の基質でグラフト−フロムされ得る。
【0016】
本明細書に記載の組成物は、1日間、7日間、14、21、30、45、60、90、120、180、365、もしくは1000日間、溶液(例えばタンパク質を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS))、培地、血清もしくはin vivoからのタンパク質の吸着に対して、未コーティングの対照と比較して、好ましくは、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくは99.9%以上の耐久性を有する。
【0017】
本明細書に記載の組成物は長期間にわたって安定であり、タンパク質を含むPBS、培地、血清もしくはin vivoにおいて、それらの非ファウリング性、抗血栓性、および/または抗菌性特性の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%を、長期間、例えば、少なくとも、1、7、14、21、30、45、60、90、120、180、365、もしくは1000日間、保持する。
【0018】
該非ファウリング物質は、基質材の機械的および/または物理的特性に著しい影響を及ぼすことなく、基質からか、または適宜、基質上の下塗り層でグラフト−フロムされ得る。一実施態様において、コーティング基質の引張強度、引張係数、デバイス寸法、もしくはそれらの組み合わせは、未コーティング基質の引張強度、引張係数、デバイス寸法、もしくはそれらの組み合わせの、20%内、好ましくは10%内、より好ましくは5%内、最も好ましくは1%内である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、UV カルボキシベタイン-コーティングTecoflexロッドおよび未コーティングTecoflexロッドの総表面血栓量(mg)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な記載)
I. 定義
「双性イオン」または「双性イオン物質」とは、カチオン基およびアニオン基の両方を有する巨大分子、物質、もしくは部分を言う。ほとんどの場合において、これら荷電基は平衡化されており、ゼロ正味荷電の物質をもたらす。双性イオンポリマーには、高分子両性電解質(例えば、異なるモノマー単位上に荷電基を有するポリマー)およびポリベタイン(同一のモノマー単位上にアニオンおよびカチオン基を有するポリマー)の両方が含まれうる。
【0021】
本明細書で用いる「ポリマー」には、ホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。コポリマーの例としては、限定はされないが、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーが挙げられる。
【0022】
本明細書で用いる「抗菌剤」とは、バクテリア、酵母、真菌、マイコプラズマ、ウイルスもしくはウイルス感染細胞、ガン細胞、および/または原虫を含む微生物を、殺す(すなわち殺菌)、その増殖を抑制する(すなわち静菌(bacteristatic))、および/または、それによるファウリングを防止する、分子および/または組成物を言う。
【0023】
バクテリアに対する抗菌活性は、コロニー形成アッセイ(37℃にて120 RPMで18-20時間、50%ウシ胎仔血清とともにプレインキュベーション)を用いて定量化してもよく、それが好ましい。プレインキュベーションの後、終夜培養物から1%トリプトンソイブロス(tryptone soy broth)(TSB)中に1-3x105 CFU/mLのプランクトン濃度まで希釈した黄色ブドウ球菌(S. aureus, ATCC 25923)中に、サンプルを播種する。サンプルをバクテリアとともに、37℃にて撹拌(120 rpm)しながら、24-26時間インキュベートする。TSBの濃度は、用いられる生命体によって変えることができる。インキュベーションの後、該サンプルを3 mlのPBS中に37℃にて240 RPMで5分間入れ、しっかり結合していないバクテリアを除去する。次いで、物質上に蓄積したバクテリアを、新しいPBSの溶液中において超音波処理により除去し、バクテリア細胞の総数を希釈平板(dilution plating)によって定量化する。バクテリア数において、対照でのコロニー形成と比較して、好ましくは少なくとも1、2、3もしくは4対数減少(log reduction)が生じる。血小板、細胞、もしくは他の物質の表面への接着を評価するための、同様の接着アッセイ(adherence assay)が当分野において知られている。基準ポリマー上のバクテリア数よりも低いバクテリア数を有する表面は、微生物コロニー形成を減少させると言える。
【0024】
本明細書で用いる「抗血栓性」とは、血栓形成に対して抵抗する組成物の能力を言う。抗血栓活性は、血栓症のex-vivoフローループモデル(flow loop model)を用いて評価することができる。手短に言うと、最大10リットルの新鮮血を単一の動物から採取する。この血液を、へパリン処理して凝固を防ぎ、濾過して粒子を除去し、放射標識された自己血小板を加える。血液採取後8時間以内に、コーティング基質および未コーティング基質をフローループ回路に設置し、血液を槽から基質上にポンピングした後、槽に戻す。管腔を有する基質のための第2内部フローループ回路を、第2蠕動ポンプにより基質の2つのポートをつなげることによって、構築することができる。約2.5 L/分の速度で外部回路中に血液をポンピングし、一方、内部回路中の血液を約〜200-400 ml/分の速度でポンピングする。2時間後、基質を外し、血栓形成について視覚的に調べ、接着した血小板をガンマカウンターによって定量化する。管腔を有しないサンプルについては、外部回路のみを用いて、装置の外部の血栓を測定してもよい。
【0025】
本明細書で用いる「接着」とは、タンパク質、細胞、または他の基質の、表面への非共有もしくは共有結合を言う。接着した物質の量は、非ファウリング活性についてのアッセイを用いてタンパク質について定量化されうるか、あるいは、抗菌活性についてのアッセイもしくは他の関連アッセイを用いてバクテリアについて定量化されうる。
【0026】
本明細書において同義的に用いる「生物活性剤」、「活性剤」もしくは「生体分子」とは、能動的もしくは受動的に生物システムに影響を与える、いずれの有機的もしくは無機的な治療用、予防用もしくは診断用の薬剤を言う。例えば、生物活性剤は、アミノ酸、抗菌ペプチド、イムノグロブリン、活性化分子、シグナル伝達分子またはシグナル増幅分子であり得て、限定はされないが、プロテインキナーゼ、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、増殖因子、増殖因子阻害剤、ホルモン、酵素、受容体標的リガンド(receptor-targeting ligand)、遺伝子サイレンシング剤、アンビセンス(ambisense)、アンチセンス、RNA、生細胞、コヒーシン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、オステオカルシン、オステオポンチン、またはオステオプロテジェリンが含まれる。生物活性剤は、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド(oligliopeptide)、ポリペプチド、無機化合物、有機金属化合物、有機化合物、または、いずれの合成もしくは天然の、化学もしくは生体化合物であり得る。
【0027】
本明細書で用いる「非ファウリング」とは、組成物が、タンパク質(血液タンパク質を含む)、血漿、細胞、組織および/または微生物の基質への接着量を、基準ポリマー(例えばポリウレタン)への接着量と比較して、減少または抑えることを意味する。好ましくは、デバイス表面は、ヒト血液の存在下において非ファウリングでありうる。好ましくは、該接着量は、基準ポリマーと比較して、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%、もしくは99.9%減少されうる。
【0028】
「タンパク質抵抗性」とも称されるタンパク質に対する非ファウリング活性は、ELISAアッセイを用いて測定されうる。例えば、血液タンパク質の接着を防止する組成物の能力は、ELISAによりフィブリノーゲン吸収を測定することによって評価することができる。血小板と他の細胞の結合の仲介における重要な役割を有するフィブリノーゲンは、非ファウリング表面の吸着に抵抗する能力を評価するのに通常用いられる血液タンパク質である。簡単に述べると、サンプルを、1 mg/mLのヒト血漿由来のフィブリノーゲン中において37℃で90分間インキュベートし、次いで1 X PBSで3回すすぎ、きれいなウェルに移し入れる。該サンプルを、10%(v/v)ウシ胎仔血清中において37℃でさらに90分間インキュベートし、フィブリノーゲンによって占められていない領域をブロッキングする。該サンプルをすすぎ、きれいなウェルに移し入れ、10%(v/v)ウシ胎仔血清中において、5.5 μg/mL 西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗フィブリノーゲンとともに、1時間インキュベートする。再び、サンプルをすすぎ、1 mg/mLの色素原であるo-フェニレンジアミンおよび0.02%(v/v)の過酸化水素を含有する0.1 M リン酸-クエン酸緩衝液とともに、きれいなウェルに移し入れる。37℃で20分間インキュベートすることで酵素-誘導呈色反応を生じさせ、2.0 N 硫酸を添加することによって終了させる。その後、光強度の吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定し、対照に対するタンパク質吸着を決定することができる。好ましくは、接着量は、基準ポリマーと比較して、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%、もしくは99.9%減少されうる。混合タンパク質溶液(例えば全血漿)については、溶液中に存在する各タンパク質に対する個々の抗原を使用する必要なく、表面プラズモン共鳴(SPR)もしくは光導波路光式スペクトロスコピー(optical waveguide lightmode spectroscopy)(OWLS)を用いて、表面タンパク質吸着を測定することができる。また、1つのタンパク質か複合混合物のいずれかからの吸着後の表面上において、放射標識されたタンパク質を定量化してもよい。
【0029】
「生体適合性」は、物質の、特定の状況において適切な宿主反応で機能する能力である。これは、国際規格ISO 10993を用いて評価することができる。本明細書に記載の生体適合性組成物は、好ましくは、実質的に無毒である。本明細書で用いる「実質的に無毒」とは、実質的に血液適合性であり、実質的に無細胞毒性である表面を意味する。
【0030】
本明細書で用いる「実質的に無細胞毒性」とは、組成物の表面に接触する哺乳動物細胞の代謝、増殖、もしくは生存能を変化させる組成物を言う。これらは、抽出物試験、直接接触試験および間接接触試験を含む、物質の細胞毒性を評価するための3つの主要な試験を定義する国際規格ISO 10993-5によって、定量化されうる。
【0031】
本明細書で用いる「実質的に血液適合性」とは、ISO 10993-4に記載されるように、血栓形成、凝固、および補体活性化についての適切に選択されたアッセイにより試験して、組成物が、非血栓形成性および非免疫原性であることに加えて、実質的に非溶血性であることを意味する。
【0032】
本明細書で用いる「実質的に非溶血性表面」とは、以下のアッセイが適用される場合、組成物が、ヒト赤血球の50%、好ましくは20%、より好ましくは10%、さらに好ましくは5%、最も好ましくは1%を溶解しないことを意味する:10% 洗浄プール赤血球細胞(washed pooled red blood cells)(Rockland Immunochemicals Inc, Gilbertsville, PA)のストックを、150 mM NaClおよび10 mM Tris(pH 7.0)の溶血緩衝液を用いて0.25%まで希釈する。0.5 cm2の抗菌サンプルを、0.75 mlの0.25% 赤血球懸濁液とともに37℃で1時間インキュベートする。固体のサンプルを除去し、6000 gにて遠心分離して沈降させ、上清を除去し、分光光度計でOD414を測定した。10%の洗浄プール赤血球細胞を無菌の脱イオン(DI)水中に0.25%まで希釈して37℃で1時間インキュベートすることによって全溶血を決定し、固体のサンプルを有しない0.25% 赤血球/溶血緩衝液の懸濁液を用いて0%溶血を決定する。
【0033】
本明細書で用いる「複合培地」とは、タンパク質もしくは生物学的物質の消化物を含む生物学的流体(biological fluid)もしくは生物学的溶液(biological solution)を言う。例としては、限定はされないが、カチオン調整ミューラーヒントンブロス、トリプティックソイブロス、ブレインハートインヒュージョン、またはあらゆる複合培地、ならびにいずれの生物学的流体が挙げられる。
【0034】
「生物学的流体」は、タンパク質および/または細胞を含む生命体により作られる流体、ならびに微生物からの流体および排出物である。これには、限定はされないが、血液、唾液、尿、脳脊髄液、涙液、精液、およびリンパ液、あるいはいずれのそれらの派生物(例えば、血清、血漿)が含まれる。
【0035】
「ブラシ」もしくは「ポリマーブラシ」は、本明細書において同義的に用いられ、通常は単一の結合点を介して表面に結合しているポリマー鎖を言う。該ポリマーは、末端グラフト(end-grafted)(末端基を介して結合される)であり得るか、あるいは側鎖もしくは末端ポジション以外のポリマー鎖のポジションを介して結合され得る。該ポリマーは線状または分枝状であり得る。例えば、本明細書に記載のポリマー鎖は双性イオン基を有する複数の側鎖を含むことができる。該側鎖は、単一の非ファウリング部分もしくはモノマー、および/または非ファウリングオリゴマー(例えば、2-10モノマー)もしくはポリマー(例えば、>10モノマー)から成り得る。
【0036】
「分枝」および「分枝テザー(Branched tether)」は、互換的に用いられ、単一のポリマー鎖から生じるが2以上のポリマー鎖で終結するポリマー構造を言う。該ポリマーは、ホモポリマーあってもコポリマーであってもよい。分枝テザーポリマー構造は、規則的であっても無秩序であってもよく、非ファウリング物質の全体もしくは一部の中に構成されていてよく、1つ以上の生物活性剤を固定するのに用いられうる。一実施態様において、該分枝テザーはデンドリマーである。分枝テザーは、基質もしくは基質を覆う下塗り層に直接固定されていてよい。
【0037】
「分解生成物」は、加水分解プロセス、酸化プロセス、酵素プロセス、または他の化学的プロセスの結果として形成される、原子、ラジカル、カチオン、アニオン、または分子である。
【0038】
本明細書で用いる「密度」とは、基質の表面積あたりの固定されている物質(限定はしないが、非ファウリング物質および生物活性剤を含む)の質量を言う。
【0039】
本明細書で用いる「ポリマー鎖間距離」とは、基質もしくは下塗り層の表面上の非ファウリングポリマー鎖間の距離を言う。好ましくは、この距離は、非ファウリング鎖がコーティング物質へのファウリング物質の侵入を減少させるようなものである。
【0040】
本明細書で用いる「有効表面密度」とは、目的の表面効果(限定はされないが、本明細書に記載の抗菌もしくは非ファウリング活性を含む)を達成するのに適した範囲の密度を意味する。
【0041】
「親水性」は、水に対する親和性を有するポリマー、物質、もしくは官能基について言及する。そのような物質としては、通常、1つ以上の親水性官能基、例えばヒドロキシル基、双性イオン基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、リン酸基、水素形成基、および/またはエーテル基が挙げられる。
【0042】
本明細書で用いる「固定化」または「固定された」とは、直接もしくは間接的に、基質に共有もしくは非共有結合している物質もしくは生物活性剤について言及する。「共-固定化(co-immobilization)」とは、2以上の剤の固定化を言う。
【0043】
本明細書で用いる「非分解性」とは、加水分解的か、還元的か、酵素的かもしくは酸化的に、生物学的環境内で著しく反応して、より小さいかもしくはより単純な成分に切断しない物質組成物を言う。
【0044】
本明細書で用いる「安定な」とは、タンパク質を含むPBS、培地、血清、もしくはin vivoにおいて、1、7、14、30、90、365、もしくは1000日間、それらのもともとの物質特性(例えば表面接触角(surface contact angle)、非ファウリング性、抗血栓形成性、および/または抗菌活性)の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%を保持する物質について言及する。
【0045】
本明細書で用いる「基質」とは、その上に下塗り層および/または非ファウリングコーティングが塗布されている物質か、非ファウリング物質の全てもしくは一部が形成される物質か、あるいはその上に非ファウリングおよび/または抗菌剤が固定された物質を言う。
【0046】
本明細書で用いる「コーティング」とは、いずれの、一時的、半永久的、もしくは永久的に、表面を処理もしくは覆う一層もしくは複数の層を言う。該コーティングは下層の基質の化学的修飾であってよいか、あるいは基質の表面への新しい物質の添加を含んでよい。それには、いずれの基質への厚みの増大または基質の表面化学組成の変化が含まれる。コーティングは、気体、蒸気、液体、ペースト、半固体または固体であることができる。加えて、コーティングは、液体として塗布して、固体コーティングへと凝固させることができる。
【0047】
「下塗り層」とは、さらなるコーティングの下の、いずれのコーティング、コーティングの組み合わせ、または基質表面全体もしくはその一部を覆う官能性層(functionalized layer)を言う。
【0048】
「非浸出」または「実質的に非浸出」は、本明細書において同義的に用いられ、組成物が、タンパク質を含むPBS、培地、もしくはin vivoにおいて、7、14、30、90、365、もしくは1000日間にわたって、固定されたコーティングもしくは生物活性剤の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%超を保持することを意味する。これは、放射標識された活性剤を用いて評価することができる。
【0049】
「テザー」もしくは「連結剤(tethering agent)」もしくは「リンカー」は、本明細書において同義的に用いられ、1つ以上の非ファウリング物質、1つ以上の生物活性剤、もしくはそれらの組み合わせを物質上に共有結合的に固定するために用いられる、いずれの分子、もしくは分子のセット、またはポリマーであって、該分子が最終的な化学組成の一部として残存するものを言う。該テザーは、生物活性剤を固定するための1つ以上の部位を有する、線状または分枝状であることができる。該テザーはいずれの長さであることもできる。しかしながら、一実施態様において、該テザーは、3オングストローム以上の長さである。該テザーは、非ファウリング性、例えばモノマー、オリゴマー、もしくはポリマー、または非ファウリング性の非双性イオン物質であってよい。該テザーは、基質もしくはポリマー(そのどちらも非ファウリング性でありうる)上に直接固定されていてよい。
【0050】
本明細書で用いる「非天然アミノ酸」とは、天然では見られない、いずれのアミノ酸を言う。非天然アミノ酸には、いずれの、D-アミノ酸、天然では見られない側鎖を有するアミノ酸、およびペプチド模倣体が含まれる。ペプチド模倣体の例としては、限定はされないが、b-ペプチド、g-ペプチド、およびd-ペプチド;らせん状もしくはシート状構造をとることができる骨格を有するオリゴマー、例えば、ビピリジンセグメントを用いる骨格を有する化合物、疎溶媒性相互作用を用いる骨格を有する化合物、側鎖相互作用を用いる骨格を有する化合物、水素結合相互作用を用いる骨格を有する化合物、および金属配位を用いる骨格を有する化合物が挙げられる。グリシンを除いて、人体中の全てのアミノ酸は、DおよびL型として存在する。天然のアミノ酸のほとんど全てはL-型である。D-型のアミノ酸は高等生物のタンパク質中に認められるが、いくつかの下等生物中(例えばバクテリアの細胞壁中)にも存在する。それらはまた、いくつかの抗生物質、中でも、ストレプトマイシン、アクチノマイシン、バシトラシン、およびテトラサイクリン中にも認められる。これらの抗生物質は、バクテリア細胞を、生存能および増殖に必要なタンパク質の形成を妨げることによって死滅させることができる。非天然アミノ酸にはまた、残渣(非特異的タンパク質吸着に抵抗性のある側鎖を有し、生物学的流体中において抗菌ペプチドの提示を増強するように設計されうる)、および/または重合可能な側鎖(モノマー単位としてペプチド内の非天然アミノ酸残渣を用いてポリマーブラシの合成を可能にする)が含まれる。
【0051】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「オリゴペプチド」は、天然か、合成か、またはその混合物かにかかわらず、ペプチド結合によって化学的に結合しているアミノ酸から成る有機化合物を包含する。ペプチドは、通常、3個以上のアミノ酸、好ましくは9個以上150個未満、より好ましくは100個未満、そして最も好ましくは9〜51個のアミノ酸を含む。該ポリペプチドは、「外因性」または「異種性」、すなわち、生命体もしくは細胞内での該生命体もしくは細胞に天然に存在しないペプチドの生成物(例えば、バクテリア細胞により産生されたヒトポリペプチド)であり得る。外因性とは、細胞により産生される内因性物質に対して、細胞には天然に存在しない、細胞に加えられる物質についても言及する。該ペプチド結合は、ある1つのアミノ酸のカルボキシル基(酸素担持炭素(oxygen-bearing carbon))と第2のアミノ酸のアミノ態窒素との間の単一の共有結合を含む。10未満の構成アミノ酸を有する小ペプチドは、一般的に、オリゴペプチドと称され、10以上のアミノ酸を有するペプチドはポリペプチドと称される。10,000ダルトン(50-100アミノ酸)以上の分子量の化合物は、通常、タンパク質と称される。
【0052】
本明細書で用いる「抗菌ペプチド」(「AmP」)とは、微生物(バクテリア、酵母、真菌、マイコプラズマ、ウイルスもしくはウイルス感染細胞、および/または原虫を含む)を死滅させる(すなわち、殺菌性である)か、またはその増殖を阻害する(すなわち、静菌性(bacteristatic)である)、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはペプチド模倣体を言う。
【0053】
本明細書で用いる「カップリング剤」とは、例えば生物活性剤上かまたは結合されうる物質上で化学的部分(chemical moiety)を活性化させて、該生物活性剤間の共有もしくは非共有結合の形成を可能にする、いずれの分子または化学物質(該物質は結合後の最終的な組成中に残存していない)を言う。
【0054】
本明細書で用いる「システイン」とは、アミノ酸システインもしくはその合成アナログ(該アナログは遊離スルフヒドリル基を含む)を言う。
【0055】
本明細書で用いる「膜-標的抗菌剤」とは、基質上に固定された場合にその殺菌活性もしくは静菌活性を保持し、従って、それを用いて固定された抗菌表面を作り出すことができる、いずれの抗菌剤を言う。一実施態様において、膜-標的抗菌剤は抗菌ペプチドであり、別の実施態様において、それは第四級アンモニウム化合物またはポリマーである。
【0056】
本明細書で用いる「固定された殺菌活性」とは、表面に接触する生存微生物(バクテリア、酵母、真菌、マイコプラズマ、ウイルスもしくはウイルス感染細胞、および/または原虫を含む)の減少を言う。バクテリア標的に関して、殺菌活性は、固定された抗菌剤についてのASTM 2149アッセイ(小さなサンプルのために、以下の通りスケールダウンしてもよい:増殖培地(例えばカチオン調整ミューラーヒントンブロス)における標的バクテリアの終夜培養物を、予め決定したOD600と細胞密度間のキャリブレーションを用いて、pH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水中に約1x105 cfu/mlまで希釈する)に基づいて、生存バクテリアの減少として定量化されうる。固定された抗菌表面のサンプル 0.5 cm2を、0.75 mlのバクテリア懸濁液に加える。該サンプルを液体で覆い、該固形表面が液体全体を回転すると考えられる程度に十分に混合しながら、37℃にて、インキュベートする。1時間インキュベートした後、バクテリア懸濁液の連続希釈を寒天プレート上に蒔き、生存細胞濃度を定量化するために終夜増殖させる。バクテリア数において、対照である固形サンプルを有しないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のバクテリアと比べて、好ましくは少なくとも1、2、3もしくは4対数減少が生じる。
【0057】
該用語「アルキル」とは、飽和または不飽和の脂肪族基のラジカルを言い、それには、直鎖アルキル、アルケンおよびアルキン基、分枝アルキル、アルケンもしくはアルキン基、シクロアルキル(脂環式)、シクロアルケンおよびシクロアルキン基、アルキル、アルケンもしくはアルキン置換シクロアルキル、シクロアルケンもしくはシクロアルキン基、ならびにシクロアルキル置換アルキル、アルケンもしくはアルキン基が含まれる。好ましい実施態様において、直鎖もしくは分枝鎖アルキルは、その骨格の中に、30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC1-C30、分枝鎖についてはC3-C30)、好ましくは20個以下の炭素、より好ましくは10個未満の炭素原子、最も好ましくは7個未満の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造中に3〜10個の炭素原子を有し、より好ましくはその環構造中に5、6もしくは7個の炭素を有する。
【0058】
「置換」または「置換された」には、そのような置換が置換された原子および置換基の許容原子価に一致しており、該置換によって安定な化合物がもたらされる(例えば、それにより、転位、環化、脱離などによる変化が自然発生的に起こらない)条件が暗に含まれると理解されうる。
【0059】
本明細書で用いる該用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むと考えられる。広い態様において、該許容される置換基としては、有機化合物の、非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。置換基の具体例としては、限定はされないが、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、ニトロ、スルフヒドリル、スルホニル、アミノ(置換および無置換)、アシルアミノ、アミド、アルキルチオ、カルボニル基(例えばエステル、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸);チオールカルボニル基、スルホネート、スルフェート、スルフィニルアミノ、スルファモイル、ならびにスルホキシド(sulfoxido)が挙げられる。
【0060】
該許容される置換基は1個以上であることができ、適当な有機化合物に対して同一であっても異なっていてもよい。本発明の目的として、ヘテロ原子(例えば窒素)は、該ヘテロ原子の原子価を満たす、水素置換基および/または本明細書に記載の有機化合物のいずれの許容される置換基を有していてよい。本明細書に記載の該ポリマーは、有機化合物の許容される置換基によるいかなる様式によっても制限されることを意図しない。
【0061】
II.組成物
A. 基質
該非ファウリング物質は、様々な異なる基質または基質上に固定された下塗り層でグラフト−フロムされうる。適切な物質の例としては、限定はされないが、金属物質、セラミック、ポリマー、織物および不織布繊維、不活性物質(例えばシリコン)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。一実施態様において、該基質は金またはガラス以外の物質である。
【0062】
適切な金属物質としては、限定はされないが、チタンを基にした金属および合金、例えば純チタン(ASTM F67)およびチタン合金(例えば、ASTM Fl 108、Ti-6A1-4V ELI(ASTM F 136))、ニチノール(ASTM F2063)、ニッケルチタン合金、および熱記憶合金(thermo-memory alloy)物質;ステンレススチール(ASTM F 138およびF 139)、タンタル(ASTM F560)、パラジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ニッケルクロム、あるいはいくつかのコバルト合金(ステライト、コバルト-クロム(バイタリウム、ASTM F75および鍛造コバルト-クロム(Wrought cobalt-chromium)(ASTM F90))、およびコバルト-クロム-ニッケル合金(例えばELGILOY(登録商標)およびPHYNOX(登録商標))を含む)が挙げられる。
【0063】
適切なセラミック物質としては、限定はされないが、遷移元素の酸化物、炭化物、または窒化物(例えば酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウム)が挙げられる。また、シリコンベースの物質、例えばシリカを用いてもよい。
【0064】
適切なポリマー物質としては、限定はされないが、ポリスチレンおよび置換ポリスチレン、ポリアルキレン(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリ(ウレタン)、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミド、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリフルオロカーボン、PEEK、テフロン、シリコン、エポキシ樹脂、KEVLAR(登録商標)、NOMEX(登録商標)、DACRON(登録商標)、ナイロン、ポリアルケン、フェノール樹脂、PTFE、天然および合成エラストマー、接着剤(adhesive)および密封剤(sealant)、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、バイオポリマー(例えば、多糖および天然ラテックス)、それらのコポリマー、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。一実施態様において、該基質は、適切な押出剤(extrusion agent)および可塑剤(できる限りFDAもしくは他の適切な規制当局により既にin vivoでの使用について認可されたもの)と混合された、医療グレードのポリウレタンまたはCARBOTHANE(登録商標)(Lubrizol Corporationから市販されている脂肪族ポリカーボネート-ベースのポリウレタン)である。
【0065】
該基質は、放射線画像(radiographic imaging)に有用な放射線不透過性の添加物(例えば硫酸バリウムもしくはビスマス)を、適宜含みうる。
【0066】
基質は、フィルム、粒子(ナノ粒子、微小粒子、もしくはミリメートル直径ビーズ)、繊維(創傷被覆、絆創膏、ガーゼ、テープ、パッド、織物および不織布スポンジを含むスポンジ、ならびにとりわけ口腔手術もしくは眼科手術用に考案されたもの)、手術器具、医療器具もしくは歯科器具、血液酸素供給器、人工呼吸器、ポンプ、ドラッグデリバリーデバイス、チューブ(tubing)、ワイヤー(wiring)、電極、避妊具、婦人用衛生用品、内視鏡、グラフト(小径<6mmを含む)、ステント(冠動脈、尿管、腎臓、胆管、結腸直腸、食道、肺、尿道、および血管を含む)、ステントグラフト(腹部、胸部、および末梢血管を含む)、ペースメーカー、植え込み型除細動器、心臓再同期装置、心血管装置リード、補助循環装置およびドライブライン、心臓弁、大静脈フィルター、血管内コイル、カテーテル(中心静脈、末梢-中心(peripheral central)、ミッドライン、末梢、トンネル型(tunneled)、透析アクセス、尿路、神経(neurological)、腹膜(peritoneal)、大動脈内バルーンパンピング、血管形成術用バルーン、診断用、インターベンション用(interventional)、ドラッグデリバリーなどを含む)、カテーテルコネクタおよびバルブ(無針コネクタを含む)、静脈内送達ラインおよびマニフォールド、シャント、創部ドレイン(wound drain)(脳室(ventricular)、脳室腹腔、および腰椎くも膜下腔腹腔用を含む、内部もしくは外部用)、透析膜、注入ポート、蝸牛インプラント、気管内チューブ、気管切開チューブ、人工呼吸器呼吸管および回路、ガイドワイヤー、液貯留バッグ(fluid collection bag)、ドラッグデリバリーバッグおよびチューブ、埋め込み型センサー(例えば、血管内、経皮、頭蓋内)、眼科デバイス(コンタクトレンズを含む)、整形外科デバイス(股関節(hip)インプラント、膝関節(knee)インプラント、肩関節(shoulder)インプラント、脊椎(spinal)インプラント(頸椎プレートシステム(cervical plates system)、椎弓根スクリューシステム、椎体間固定器具(interbody fusion device)、人工椎間板、および他の可動性維持器具(motion preservation device))、スクリュー、プレート、リベット、ロッド、髄内釘、骨セメント、人工腱、および他の人工装具(prosthetic)もしくは骨折修復デバイスを含む)、歯科インプラント、歯周インプラント、乳房インプラント、陰茎インプラント、顎顔面インプラント、美容インプラント、バルブ、アプライアンス、足場、縫合材、針、ヘルニア修復メッシュ(repair mesh)、テンションフリー(tension-free)膣テープ(vaginal tape)および膣スリング(vaginal sling)、人工神経デバイス(prosthetic neurological device)、組織再生もしくは細胞培養デバイス、あるいは体内もしくは体と接触して用いられる他の医療デバイスまたはそのいずれかのあらゆる部分の形態でありうるかもしくはその一部を形成しうる。
【0067】
一実施態様において、該基質は、血管内挿入カテーテル(例えば、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)、もしくは血液透析カテーテル、静脈弁、涙点(punctual)プラグ、ならびに眼内(intra-ocular)デバイスおよびインプラントである。別の実施態様において、該基質は、医療グレードのポリウレタンもしくはCARBOTHANE(登録商標)から形成されるか、あるいは医療グレードのポリウレタンもしくはCARBOTHANE(登録商標)でコーティングされた物質から形成された血管内挿入カテーテルである。
【0068】
該非ファウリング物質はまた、白カビ(mildew)、バクテリアの混入を防ぐために、塗装、他のコーティングおよびフィルターに加えることもでき、また、ファウリングを防ぐことが望ましい他の用途、例えば、海洋用途(船殻コーティング)、燃料タンク、油送管、工業用パイプ、製薬装置、ドラッグデリバリーデバイス(例えばインへラー)、コンタクトレンズ、歯科インプラント、in vivoセンサーへのコーティング、織物(例えば、病院のドレープ、室内着、もしくは寝具類)、換気管(ventilation conduit)、ドアノブ、分離用のデバイス(例えば、微生物懸濁液(microbial suspension)、生体分子の分離、タンパク質分画、細胞分離、排水処理、水の浄化のための膜)、バイオリアクター、および食品加工プロセスに加えることもできる。
【0069】
また、織物、添加物、電気的/光学的アプライアンス、包材および着色剤/インクの用途のために、これらの物質を用いて、繊維、粒子状物質およびフィルムの表面を処理することもできる。
【0070】
該基質は、表面からの重合を開始するためのイニシエーターを含みうる。例えば、そのような基質は、まず初めに、該表面か基質内に吸収されたラジカルを有してもよく、そして、例えば、ポリマー鎖の重合を開始させうる。例えば、基質(例えばポリウレタン)を、基質内および/または基質上にラジカルを形成するように処理することができる。
【0071】
いくつかの実施態様において、該基質は実質的にチオール基を有しない;すなわち、該基質はチオール部分(例えばチオールリンカー)を含まない。別の実施態様において、該基質は、該基質の表面上に処理された下塗り層をさらに有しうる。本明細書においては、光源に同時に曝露され得ない2つ以上の表面を有する基質も考慮される。
【0072】
1. 有効表面積
基質の化学組成に加えて、基質表面の微細構造およびナノ構造は、非ファウリング物質および/または抗菌剤の結合が可能な表面積を最大化するのに有用でありうる。金属およびセラミック基質において、例えば、ランダムなプロセス(例えばプラズマエッチング)によって、表面を粗面化することによって表面積を増大させることができる。別法として、フォトリソグラフィーを用いた制御ナノパターニングにより、該表面を修飾することができる。ポリマー基質もまた、金属およびセラミック基質と同様に粗面化することができる。別の用途においては、研磨された表面かもしくは平滑な表面を作り出すことによって、物質の非ファウリング特性が高められうる。該表面を修飾して、下塗りコーティングの結合および安定性を高めることができる。別法として、該表面を研磨もしくは平滑化して表面積を減らすことにより、ファウリング物質を捕捉しうる物理的特徴が弱められうる。さらに、具体的なサイズおよび分布といった物理的特徴とともに規定の粗度を有することにより、バクテリア、タンパク質、もしくは他のファウリング物質と該表面との相互作用が制御されうる。これら粗度変数の各々は、非ファウリングコーティングを付加することにより高められうる。
【0073】
2. 表面微細構造
より高い密度の非ファウリング物質が望ましい場合、基質表面上の微細構造を作り出すことにより、該基質の見かけの表面積を増大させることなく、該表面で非ファウリング物質をグラフト−フロムするためのより広いエリアを作り出すことができる。ポリマー基質(ハイドロゲルネットワークを含む)において、この表面形態は、適切なポリマー構造設計によって作り出すことができる。この方法論の一例が、表面連結樹状ポリマー(dedrimeric polymer)の形成である。各々形成されたデンドリマーは、双性イオン部位提示数を効果的に倍にする。他のポリマー構造としては、ブラシ状ポリマー(例えばブラシ状コポリマー)、櫛形ポリマー(例えば櫛形コポリマー)、線状および分枝状コポリマー、架橋ポリマー、ハイドロゲル、ポリマーブレンド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
B. 非ファウリング物質
非特異的タンパク質の吸着に対して抵抗性を有する表面は、医用材料(例えば医療デバイスおよびインプラント)の開発において重要である。そのようなコーティングは、インプラントと生理液の間の相互作用を制限する。流体が高濃度の生体タンパク質を含む環境(例えば血液接触アプリケーション(blood contacting application))において、タンパク質吸着の防止により、該デバイス表面のファウリングおよび/または血栓形成が防止されうる。
【0075】
1. 双性イオン物質
双性イオンは、同じ分子内の非隣接原子上に形式正電荷および形式負電荷を持つ分子である。双性イオン官能基(zwitterion functionality)を有する、天然および合成ポリマーの両方とも、タンパク質接着に抵抗性を示す。一実施態様において、該双性イオンモノマーは、ホスホリルコリン部分、スルホンベタイン部分、カルボキシベタイン部分、それらの誘導体もしくはそれらの組み合わせを含む。天然の双性イオン分子であるホスホリルコリン(PC)で処理した基質表面は、未処理の基質表面と比較した場合、タンパク質吸着を減少させるだけでなく、血液適合性を増大させる。ホスホリルコリンから作り出されるポリマーはまた、上述の特性を示すのに加えて、生物模倣であると考えられる。
【0076】
スルホベタインは、動物で見られる最も豊富で低分子量の有機化合物のうちの1つである、2-アミノエタンスルホン酸によく似ている。スルホベタインモノマーは通常、ホスホリルコリンよりも取り扱いが容易であり、得られたポリマーは通常、対応するホスホリルコリンアナログよりも合成が容易である。
【0077】
ポリカルボキシベタインはまた、天然の双性イオンであるグリシンベタインのポリマーアナログである。ポリホスホリルコリンおよびポリスルホベタインと同様、ポリカルボキシべタインは、バイオファウリングに対する並はずれた抵抗性を有する、別の類の双性イオンの生物模倣型ポリマーである。これらのポリマーは、カルボキシべタインに特有の抗血栓形成特性および抗凝固特性のおかげで、血液接触アプリケーションに特によく適している。これらの特性に加えて、得られるポリマーが生物活性分子の固定化に対する反応性官能基を有するように、カルボキシベタインモノマーを設計することが可能である。該表面上にカルボキシべタインブラシを作り出すことによって、タンパク質もしくは血小板の接着に抵抗性を有すること、および活性な(actively)抗凝固性基(anticoagulant group)を有するという二重の機能が、いずれかのストラテジーを単独で用いるよりもさらに、表面上の血栓形成を減少させうる。
【0078】
ポリスルホ-およびポリカルボキシべタインは、生物模倣であって、さらにバクテリア接着、バイオフィルム形成、および血清と血漿からの非特異的タンパク質の吸着に高い抵抗性を持つだけでなく、それらは無毒で、生体適合性でもあり、通常、複合培地もしくはin vivoにおいて、分解されうるポリホスホリルコリンおよびポリ(エチレングリコール)の両者に比べて高い安定性も示す。これらの物質およびコーティングの適用により、生物学的活性物質(例えば抗菌ペプチド)の使用をさらに拡大することができる。
【0079】
他の天然および合成双性イオン化学物質を用いて、本明細書に記載の生物医学的適用のための非ファウリング物質を設計することができる。非ファウリング物質に用いることができる天然の双性イオン化学物質のいくつかの例として、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、天然の小分子が挙げられ、それには、限定はされないが、N,N,N-トリメチルグリシン(グリシンベタイン)、酸化トリメチルアミン(TMAO)、ジメチルスルホニオピロピオネートサルコシン、リゼルグ酸およびシロシビンが含まれる。非ファウリング物質を作り出すのに用いることができるさらなる合成双性イオンとしては、限定はされないが、アミノ-カルボン酸(カルボキシベタイン)、アミノ-スルホン酸(スルホベタイン)、コカミドプロピルベタイン、キノノイドベースの双性イオン、デカフェニルフェロセン、および非天然アミノ酸が挙げられる。また、天然および合成ポリマーには、主鎖中かもしくは末端基にて、ペンダント基上に、正荷電および負荷電部分の両方を有する混合荷電構造(mixed charged structure)が含まれる。
【0080】
これらの天然もしくは合成双性イオンを含むかまたはそれらから成る物質を、生体適合性を向上させ、血栓形成(例えば、ステントもしくは静脈弁の表面上)を減少させ、そして溶液中に存在するタンパク質もしくはバクテリアによるファウリングを減少させるために、表面、とりわけ医療デバイスの表面に施すことができる。これはとりわけ、溶液中におけるタンパク質の非特異的結合が、デバイスの所望とされるかもしくは必要とされるシステム(mechanics)に負の影響を与え得る表面に適用できる。
【0081】
一実施態様において、該非ファウリング物質は、基質でグラフト−フロムされた双性イオンポリマーである。例えば、該ポリマーは式I:
【化1】

[式中、Bは:
【化2】

(式中、Rは、水素、置換アルキル、または無置換アルキルからなる群から選択され;
Eは、置換アルキル、無置換アルキル、-(CH2)yC(O)O-、および-(CH2)yC(O)NR2からなる群から選択され;
Yは、0〜12の整数である)
からなる群から選択され、
Lは、存在しないか、または1個以上の酸素原子を適宜含んでよい直線状もしくは分枝状アルキル基であり;
ZIは双性イオン基であり;そして、
Xは、3〜1000の整数である]
1つ以上のモノマーを含み得る。
【0082】
特定の実施態様において、ZIは:
【化3】

(式中、R3およびR4は独立して、水素および置換もしくは無置換アルキルからなる群から選択され;
R5は、置換もしくは無置換アルキル、フェニル、およびポリエーテル基からなる群から選択され;そして、
Mは、1〜7の整数である)
からなる群から選択される。
【0083】
別の実施態様において、該ポリマーは、式II:
【化4】

[式中、B1およびB2は、独立して、式:
【化5】

(式中、Rは、水素または置換もしくは無置換アルキルから選択され;
Eは、置換もしくは無置換アルキレン、-(CH2)PC(O)O-、または-(CH2)pC(O)NR2-から選択され、ここで、pは0〜12の整数であり、
R2は、水素および置換もしくは無置換アルキルから選択される)
から選択され、
Lは、1個以上の酸素(oxgen)原子を適宜含んでよい直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;
P1は、正荷電基であり;
P2は、負荷電基、例えばカルボキシレート基またはSO3-基であり;
mは、3〜1000の整数であり;そして、
nは、3〜1000の整数である]
の1つ以上のモノマーを含む。
【0084】
一実施態様において、該正荷電基は四級窒素またはカチオン性リン酸基(phosphorous group)を含有する部分であり、該負荷電基はカルボン酸基、SO3-、もしくはPO3-基を含有する部分である。
【0085】
さらに別の実施態様において、該ポリマーは、式III、IV、もしくはV:
【化6】

(式中、Rは、置換もしくは無置換アルキルから選択され;
L1、L2、およびL3は、独立して、1個以上の酸素原子を適宜含んでよい直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;
nは、3〜1000の整数であり;そして、
N1は、負荷電基、例えばカルボキシレート基、SO3-基、もしくはPO3-基である)
のうちの1つ以上のモノマーを含む。
【0086】
一実施態様において、該非ファウリング物質はスルホンベタインもしくはカルボキシベタイン由来のモノマーを含むポリマーである。モノマーの例としては、スルホンベタインメタクリレート(SBMA)またはカルボキシベタインメタクリレート(CBMA)が挙げられる。そのようなポリマーの例としては、限定はされないが、ポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(ポリCBMA)およびポリ(スルホンベタインメタクリレート)(ポリSBMA)が挙げられる。別の実施態様において、該非ファウリング物質ポリマーは、CBMAもしくはSBMAおよび1つ以上のさらなるモノマーを含むポリマーである。さらなるモノマーは、双性イオンもしくは非双性イオンモノマーであり得る。
【0087】
ある特定の実施態様において、複数のポリマー鎖に共有結合した基質(例えば、ポリウレタン)を含む、抗菌および/または抗血栓性組成物を提供する。例えば、そのようなポリマー鎖は、式I、II、III、IV、またはVで表されうる。ある特定の実施態様において、該非ファウリング物質は、式I、II、III、IV、もしくはVのうちの1つ以上のモノマーを含むブラシ構造である。さらに他の実施態様において、該非ファウリング物質は、式I、II、III、IV、もしくはVにより表される1つ以上のモノマーを含むコポリマーである。
【0088】
いくつかの実施態様において、該組成物は、ポリマー基質およびポリマー基質に共有結合した双性イオンポリマーを含む、抗菌組成物である。該双性イオンポリマーは、1つ以上のモノマー(例えば、スルホンベタインメタクリレートもしくはカルボキシベタインメタクリレートモノマー)の存在下において、ポリマー基質中に存在するラジカルを用いた重合を開始させることによって形成されうる。
【0089】
ポリマー基質に共有結合した双性イオンポリマーを含む組成物であって、該ポリマー組成物が、双性イオンおよび非双性イオンモノマーの混合物から形成されたポリマーに比べて向上した非ファウリング、抗菌、および/または抗血栓活性を有する組成物もまた、本明細書において提供される。別の実施態様において、ポリマー基質に共有結合した双性イオンポリマーを含むポリマー組成物を提供し、ここで該組成物は、チオール部分を介して基質上に固定された自己組織化単分子膜に結合した双性イオンポリマーを有する組成物と比べて向上した非ファウリング、抗菌、および/または抗血栓活性を示す。
【0090】
2. 非-双性イオン物質
該非ファウリングコーティングはまた、非-双性イオンの非ファウリング物質を、単独もしくは双性イオン物質と組み合わせて含み得る。これらの非ファウリング基は、様々な環境において様々な程度の非ファウリング能を有しうる。適切な非-双性イオン物質としては、限定はされないが、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド)(PEO-PPO)ブロックコポリマー、多糖(例えばデキストラン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシエチル-メタクリレート(HEMA))、アクリロニトリル(acrylanitrile)-アクリルアミドコポリマー、へパリン、混合電荷物質、ならびに水素結合受容基を有する物質(例えば米国特許第7,276,286号に記載のもの)が挙げられる。適切なポリマー構造としては、限定はされないが、ZIが非-双性イオンの非ファウリングヘッド基により置き換えられた式Iのモノマーを有するポリマーもしくはコポリマーが挙げられる。
【0091】
3. コモノマー
基質の表面でグラフト−フロムされた非ファウリングポリマーは、コポリマー(例えばランダムもしくはブロックコポリマー)であり得る。適切なコモノマーとしては、限定はされないが、アクリレート、アクリルアミド(acryamide)、ビニル化合物、多官能(multifunctional)分子(例えば、ジ-、トリ-、およびテトライソシアネート、ジ-、トリ-、およびテトラオール、ジ-、トリ-、およびテトラアミン、ならびにジ-、トリ-、およびテトラチオシアネート);環式モノマー(例えば、ラクトンおよびラクタム)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。モノマーの例を以下に記載する:
(1)荷電メタクリレートまたは一級、二級もしくは三級アミン基を有するメタクリレート、例えば、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)メチルクロリド四級塩、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチル-アンモニウムクロリド、メタクリロイルクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]-トリメチルアンモニウムクロリド)、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、および2-(tert-ブチルアミノ-エチルメタクリレート。
(2)アルキルメタクリレートもしくは他の疎水性メタクリレート、例えばエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、デシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、2-ナフチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルメタクリレート、および3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート。
(3)反応性もしくは架橋性メタクリレート、例えば、2-(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、アリルメタクリレート、ビニルメタクリレート、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-(ジエトキシメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジメチルクロロシリル)プロピルメタクリレート 2-イソシアネートエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、グリコールメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、および2-ヒドロキシプロピル2-(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート。
(4)他のメタクリレート、例えば、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、およびエチレングリコールジクロロペンテニルエーテルメタクリレート。
【0092】
縮合型モノマーもまた用いられうる。
【0093】
上記のモノマーのアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド誘導体、ならびに不飽和結合を有する他のモノマーを用いることもできる。
【0094】
多官能(multinfunctional)モノマー、例えば、ジ、トリ、もしくはテトラアクリレートを用いて、該表面に高濃度の非ファウリング基を提供することができる高度な分枝構造を形成することができる。
【0095】
4. 非ファウリング物質の密度
非ファウリング鎖の密度を増大させることによって、非ファウリング能が向上されうる。より高い濃度のイニシエーターを有することによって、鎖間距離が減少され、それにより能力が向上されうる。基質に、イニシエーターを浸漬させるか、あるいは高密度のイニシエーターとしての機能を果たすかもしくは高密度のイニシエーターを組み込む下塗りを持たせることにより、これを達成してもよい。より長いポリマー鎖および/または分枝状非ファウリング鎖は、能力をさらに向上させうる。
【0096】
一実施態様において、該表面は表面上に高密度のポリマー鎖を有する。一実施態様において、表面上のポリマー鎖の密度は、約0.5 μg/cm2〜約5 mg/cm2、約1 ug/cm2〜100 ug/cm2、または約2 ug/cm2〜50 ug/cm2である。別の実施態様において、該ポリマー鎖間距離はファウリング物質のコーティング物質への侵入を減少させるものである(例えば、<5 nm、<10 nm、<50 nm、もしくは<100 nm)。
【0097】
C. 蛍光および比色分析(colormetric)ラベル
一実施態様において、該表面は、1つ以上の、比色分析ラベル、蛍光ラベル、もしくはそれらの組み合わせで染色されているかまたは標識されている。これらのラベルを用いて、肉眼、分光法、顕微鏡、もしくはそれらの組み合わせにより、該表面を可視化する。適切な顕微鏡技法としては、限定はされないが、光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
該表面は、化学反応を介してか、または物理吸着(例えば、電荷-電荷相互作用、疎水性相互作用、もしくは親水性相互作用)により、染色することができる。ラベリング化合物としては、限定はされないが、ローダミン、フルオレセイン、クマリン、オレンジB、クリスタルバイオレット、トルイジンブルー、メチルバイオレット、ヌクレアファストレッド、メチレンブルー、マラカイトグリーン、マゼンタ、アクリフラビン、および他のアゾ化合物の化合物もしくは誘導体が挙げられる。
【0099】
別の実施態様において、表面修飾(例えば双性イオンポリマー)は、重合の間に、1つ以上の反応性ラベリングモノマーをポリマー骨格に組み込むことによって標識される。これらのラベリングモノマーとしては、限定はされないが、FITC-メタクリレート、FITC-アクリレート、ローダミン-メタクリレート、ローダミン-アクリレート、それらの誘導体もしくはいずれの他の蛍光性アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニル化合物、ジオールまたはジアミンが挙げられる。これらの基を組み込むことによって、共形性(conformality)および/またはコーティングの厚さの簡便な測定を可能にすることができる。これは、下部デバイス上のコーティングの製造における、共形性の検証のための品質管理測定基準(quality control metric)として、特に有用でありうる。
【0100】
別の実施態様において、該表面修飾を1つ以上の化合物で染色し、それにより電子顕微鏡(SEMもしくはTEM)下において容易に可視化することができる。これらの化合物としては、限定はされないが、四酸化オスミウムおよび四酸化ルテニウムが挙げられる。
【0101】
D. 生物活性剤
治療薬、診断薬、および/または予防薬を基質上に固定することができる。これらの薬剤(agent)は、周囲のin vivo環境と、受動的もしくは能動的に相互作用することができる。また、該薬剤を用いて、周囲のin vivoケミストリーもしくは環境を変化させることができる。2つ以上の薬剤を基質表面に固定することができ、ここで、該2つの薬剤の活性は単独のいずれの薬剤よりも高い。活性剤が物質(substance)、材料(material)もしくは薬剤上に固定されている場合、活性でないと思われる物質、材料もしくは薬剤を活性化することができる。活性剤には、限定はされないが、無機化合物、有機金属化合物、有機化合物、またはいずれの、合成もしくは天然の、公知もしくは未知の治療効果の化学もしくは生体化合物が含まれる。
【0102】
細胞接着剤を、本明細書に記載の組成物に固定することができる。複合環境(complex environment)において細胞を結合する細胞接着剤の効力は、細胞の結合が他のタンパク質吸着との競合的なプロセスでありうることを考慮すると、表面(そこから細胞接着剤がもたらされる)での非特異的タンパク質の吸着を減少させることによって高められうる。さらに、細胞接着剤によって特異的に標的とされた細胞以外のいずれの細胞の結合に対しても抵抗し、表面の競合的ブロックを防ぐのに有利でありうる。
【0103】
望ましい細胞結合剤の例としては、限定はされないが、インテグリン結合剤が挙げられる。インテグリン結合剤の例としては、限定はされないが、RGDペプチド、ならびにRGDモチーフを含むいくつかの変異体が挙げられる。このペプチドの長い変異体(longer variant)は、より特異的な標的細胞結合を有しうる。さらに、局所的に高密濃度の細胞結合剤をもたらす能力は、多量体の相互作用を生み出すことによって細胞結合の実効性を増大しうる。他の細胞接着剤としては、限定はされないが、REDVペプチドが挙げられる。適したインテグリン結合剤は、骨結合を含む様々な適用に用いることができる。
【0104】
特定の免疫細胞を結合する細胞接着剤にとって、双性イオンへの結合が有効でもありうる。生体物質表面への免疫細胞の接着は、これらの細胞を活性化し、それらの表現型応答(phenotypic response)、例えば、場合によっては望ましくない異物巨細胞への融合をもたらす、単球からマクロファージへの移行のきっかけとなる。双性イオンが有するランダムなタンパク質ファウリングに対する固有の抵抗力により、免疫細胞(好中球および単球を含む)に対する特異的なリガンドとして機能を果たす生体分子を結合する特有のプラットホームがもたらされる。適切なリガンドを選択することにより、有害な機能ではなく有益な機能についてこれらの細胞を刺激する。これらのリガンドには、免疫細胞受容体(例えばインテグリン、セレクチン、補体、またはFcγ)を特異的に結合するペプチドまたはタンパク質が含まれる。これらの細胞-結合タンパク質に結合した場合、そのようなリガンドは、細胞骨格再構成、分子(ケモカイン、サイトカインおよび他の化学誘引物質を含む)の産生および分泌、ならびにアポトーシスの誘導を含む反応を引き起こす、細胞内シグナル経路を刺激しうる。双性イオンテザーを介した生体分子の存在により適合しうる望ましい作用としては、炎症性サイトカインの分泌の阻止/減少、食作用の亢進、および組織-デバイス統合(tissue-device integration)に影響を与える可溶性因子の放出の調節が含まれうる。
【0105】
骨結合はまた、非ファウリング特性および非ファウリング物質(例えば双性イオン)の安定な提示が有効である因子によって、促進または誘導されうる。骨結合促進剤としては、限定はされないが、骨形態形成タンパク質、例えばBMP2、およびそれらの短縮型アナログが挙げられる。非ファウリング表面、例えば双性イオン表面は、表面上での望ましい細胞の再増殖を促進するように設計された剤の活性を増強しうる。好中球およびマクロファージの結合を減少させることによって、異物反応が阻害され、目的の細胞の結合および増殖プロセスを支持することが可能となりうる。
【0106】
抗血栓剤の提示はまた、非ファウリング物質(例えば双性イオン物質)に結合した場合、他のテザーに比べて、より効率的でありうる。血栓症のプロセスには、表面(surface)および内部(bulk)経路の両方が含まれる。双性イオンは、血小板の結合および活性化を低下させる能力を示し、1つの経路を弱める。血小板活性化の減衰を補助するか、または血栓症についてのさらなる経路を直接標的とする有効な抗血栓剤(antithrombotic)を双性イオンテザーと組み合わせることにより、単独の非-血小板接着性表面もしくは抗血栓剤のいずれかと比べて、抗血栓効果を高めることができる。適切な抗血栓剤としては、限定はされないが、トロンボモジュリン、へパリン、可逆性アルブミン結合剤(reversible albumin binder)、組織プラスミノーゲン活性化因子結合剤、トランスグルタミナーゼ(transglutimase)、可逆性NO結合剤、ポリリジン、スルホン化(sulphonated)ポリマー、トロンビン阻害剤(ヒルジンを含む)、ウロキナーゼ、およびストレプトキナーゼが挙げられる。
【0107】
デバイス中心の(device-centered)感染は依然として大きな問題のままである。非ファウリング物質(例えば双性イオン物質)は、それらのみで、微生物の接着を減少させ、バイオフィルムの形成を遅らせることができる。微生物の接着およびバイオフィルムの防止は、非ファウリング表面(例えば、双性イオン表面)上における抗菌剤(限定はされないが、膜標的化(membrane-targeting)抗菌剤、抗菌ペプチドおよび小分子抗菌剤が含まれる)の提示によりさらに高められ得る。一般的に、抗菌ペプチドは、空間的に分離された疎水性領域および荷電領域を有するカチオン性分子である。抗菌ペプチドの例としては、膜中でα-へリックス構造を形成する線状ペプチドか、または膜中でジスルフィド架橋により適宜安定化しているβ-シート構造を形成するペプチドが挙げられる。代表的な抗菌ペプチドとしては、限定はされないが、カテリシジン、デフェンシン、ダームシジン、ならびにより特異的なマガイニン2、プロテグリン、プロテグリン-1、メリチン、11-37、デルマセプチン01、セクロピン、カエリン、オビスピリン、セクロピンA メリチンハイブリッド、およびアラメチシン、あるいは他のAmPのハイブリッドもしくはアナログが挙げられる。天然の抗菌ペプチドには、植物、ヒト、真菌、微生物、および昆虫を含む、脊椎動物および非脊椎動物からのペプチドが含まれる。
【0108】
抗菌ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸(例えば、合成もしくは半合成のアミノ酸およびペプチド模倣体)、またはそれらの組み合わせから製造することができる。表面上に固定された場合に活性を保持する抗菌ペプチドは、一般的に、膜標的化抗菌剤と称される。抗菌ペプチドは、ペプチド上の官能基と、非ファウリングコーティング、基質、および/または下塗り上の官能基を反応させることによって、非ファウリングコーティング、基質、下塗り、またはそれらの組み合わせ上に固定することができる。例えば、システイン残基を有するように該ペプチドを設計することができ、それを用いて該システイン残基のチオール基と該表面上のチオール-反応基を反応させることによって、該ペプチドを表面上に固定することができる。
【0109】
非ファウリング物質(例えば双性イオン)を介してこれらの剤を結合することによって、安定な、長期活性がもたらされるであろう。さらに、バクテリアの接着およびバイオフィルムタンパク質を低下させる酵素(例えば、グリコシラーゼ、リアーゼ、およびセリンプロテアーゼ)、または微生物間コミュニケーションシグナル分子(microbial communication signal molecule)を低下させる酵素(例えばN-アシル-ホモセリンラクトンアシラーゼ)を固定することによって、初期の微生物の接着イベントとその後のバイオフィルム形成の防止における効力を向上させ得る。
【0110】
非ファウリング表面(例えば双性イオン表面)はまた、バイオセンサーとしての使用において、生体分子(例えば抗体)の固定化のためのとりわけ魅力的な表面を提示しうる。非ファウリング表面(例えば双性イオン表面)上に固定された抗体は、全血中において、抗体の活性および抗原特異性の両方を保持することが示されている。おそらく分泌された微生物の毒素を検出することによって、特異的な免疫経路(例えば炎症性サイトカイン)の望ましくない活性化または考えられる感染性病原体の存在を検出する「Smart」埋め込み医療デバイスは、例えば、これらの驚異をモニターするために調製された特異的な抗体もしくは生体分子を用いることによって、作られ得る。その結果、望ましくない結果(例えば感染症)が生じる前に、適切な治療方針を採用することができる。in vivoでの双性イオン分子の安定性は、その長い寿命によって、このようなシナリオにおける特有の利点をもたらす。
【0111】
III. コーティングされた基質の製造方法
グラフト−フロム法を用いて作られた非ファウリングコーティングは、タンパク質、バクテリア、もしくは他の物質によるファウリングに高い抵抗性を示しうる。このようなコーティングされた基質の製造方法を以下に記載する。
【0112】
A. 下塗りもしくはプレコーティング
医療デバイスの基質は、多くの場合、それぞれ特有の表面特性を有する複数の異なる物質から成る。主に単一のポリマーから成るデバイスでも、物質の混合物から作られていてよく、可塑剤、放射線不透過剤(radio-opacity agent)、および他の添加剤(その全ては基質の表面特性に影響を及ぼしうる)を含むことができる。コーティングの接着および効果を最大にするための均一な表面組成を確実なものとするために、単一のポリマーもしくはポリマー混合物のプレコーティングを基質上に施してもよい。特定の実施態様において、該下塗りコーティングは単一のポリマーを含む。当分野で公知の様々な技法、例えば溶媒キャストもしくは浸漬を用いて、基質上に該ポリマーを沈着させることができ、該ポリマーはいったん基質に塗布されると、下塗りコーティングに、適宜、共有架橋結合することができる。単一ポリマー下塗り層を用いることにより、例えば、官能基の一様な同一性および濃度を有するコーティング表面を形成することができる。
【0113】
該下塗り層は、基質の放射線イメージングにおいて助力となる放射線不透過剤(例えばBaSO4もしくはビスマス)を含みうる。一実施態様において、該ポリマーは、0〜40重量%のBaSO4を適宜含有する、Tecoflex-93AもしくはCarbothane 85Aである。
【0114】
該下塗り層にはまた、限定はされないが、ポリマー、例えばポリスチレンおよび置換ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ウレタン)、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミド、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリフルオロカーボン、PEEK、テフロン、シリコン、エポキシ樹脂、KEVLAR(登録商標)、NOMEX(登録商標)、DACRON(登録商標)、ナイロン、ポリアルケン、フェノール樹脂、PTFE、天然および合成エラストマー、接着剤および密封剤、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、バイオポリマー、例えば多糖およびそれらの天然ラテックスコポリマー、ならびにそれらの組み合わせも含まれ得る。別の実施態様において、該下塗り層は小分子もしくは官能基(限定はされないが、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アジド基、アゾ基、アルキル基、アルケン基、アルキン基、およびシロキサン基を含む)を含む。これらの官能基は、アンカリング点(そこで非ファウリング物質をグラフト−フロムする、および/またはそこから治療薬、診断薬もしくは予防薬を結合する)として用いられ得る。
【0115】
高密度の非ファウリングコーティンを用いたチタン基質のコーティングには、チタン表面上に官能基を導入して該コーティングを共有結合する表面修飾が含まれうる。例えば、酸化的ピラニア(piranha)溶液を用いて、ヒドロキシル基を基質表面上にもたらすことができる。次いで、これらの基を用いて、有機官能部分を提示するアンカリング分子を共有結合することができる。別法として、チタンの表面上で、空気中にて非常に高温(例えば、773-1073゜K)で加熱した後、ピラニア溶液で処理することにより、酸化チタン層を形成することができる。
【0116】
チタンに下塗りをアンカリングする官能基としては、限定はされないが、シラン、ホスホン酸、およびカテコール基が挙げられる。例えば、該基質を該シランの溶液に曝露することにより、トリメトキシシランおよびトリクロロシランをチタン基質の表面に導入することができる。該官能基は、小分子、オリゴマー、および/またはポリマー(コポリマーを含む)の形態であることができる。
【0117】
該プレコーティングされた基質を、以下に記載のコーティング方法を用いてさらに官能化することができる。
【0118】
B. グラフト−フロムコーティング法
本明細書に記載の組成物は、通常、グラフト−フロム法を用いて製造される。該非ファウリング物質は、基質表面上の反応性官能基からポリマーを成長させることにより、該基質表面で直接グラフト−フロムされ得る。別法として、該基質を下塗り層でコーティングすることができ、そこからポリマーを成長させる。
【0119】
グラフト−フロムコーティング法により、基質表面上に直接成長した、強くて密な非ファウリングコーティングがもたらされうる。この方法を用いると、小さなイニシエーター分子を、基質上ならびに/あるいは基質および/または下塗り表面中に、溶液中で合成されたより大きなポリマー分子よりも密に一緒にパックすることができ、そこで重合が開始されて成長するので、グラフト-トゥコーティングと比べて高いコーティング密度を得ることができる。好ましくは、医療デバイスの製造において、用いる化学物質は頑強であり、小さな表面の異常を克服できなければいけない。自己組織化単分子膜(SAM)もしくは他の単分子イニシエーター層の形成を必要とする化学物質は、製造可能なコーティングをもたらしにくい。いくつかの用途においては、反応条件(無酸素状態、無水溶媒、など)の厳しい制御を必要としないプロセスが好ましい。
【0120】
モノマーは、それらの反応性比によって、交互コポリマー、所定の(pre-specified)比率の各モノマーを有する周期コポリマー、ランダムコポリマー、あるいはホモポリマーがもたらされるように、設計され得る。各モノマー単位上に1個以上の反応性基を含むことにより、星形ポリマー、デンドリマー、規則的な分枝状ポリマー、ランダムな分枝状ポリマー、およびブラシ状ポリマーの形成が可能となる。
【0121】
ポリマーブラシ、櫛形コポリマー、線状コポリマー、分枝状コポリマー、デンドリマー、テザー、およびハイドロゲルは、限定はされないが、フリーラジカル重合、イオン重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシドを介した重合(NMP)、可逆的付加-開裂重合(RAFT)、開環メタセシス重合(ROMP)、テルル化合物を介した重合(TERP)または非環式ジエンメタセシス重合(ADMET)、ならびにUV、熱、もしくはレドックスフリーラジカル重合を含む、公知の合成手段により形成することができる。好ましい実施態様において、該ポリマーは、レドックス重合プロセスを用いて形成される。
【0122】
1. 非-ラジカルプロセス
グラフト−フロム重合は、基質表面がカチオンもしくはアニオン性イニシエーターとして作用するか、またはカチオンもしくはアニオン性イニシエーターが該基質上に固定されており、モノマーが反応性オレフィンを含む、カチオンもしくはアニオン性反応を介して成長することができる。アニオン重合の例は、ポリカプロラクトンもしくはポリカプロラクタムを合成する場合のようなアニオン開環であり、そこではペンダント双性イオン基を含有する環構造中のラクトンもしくはラクタム部分を介して重合が進行する。別法として、不飽和のユニットの1つ以上およびペンダント双性イオン基を含む有機環(organic ring)が重合される。一実施態様において、ペンダントオレフィンがモノマー単位に含まれ、架橋、例えば開環メタセシス重合(ROMP)において用いられる。
【0123】
官能基(それを介してグラフト−フロム重合が進行し得る)を、様々な方法で導入することができる。例えば、シリコンポリマーをトリフリン酸で処理してSiH基を導入することもでき、続いて、それを用いて適切な官能基を含むシリコン鎖を該表面に結合させることができる。CO2、O2、およびアンモニアを用いたプラズマ処理を用いて、ポリウレタン基質を処理することができる。得られたヒドロキシル基および/またはアミン基をアシル化して表面上にビニル部分を形成した後、ポリマーブラシを結合することができる。別法として、アミノリシスを介して、ジ-アミノ分子(例えばヘキサメチルジアミン(hexamethyldiamine))を用いて処理することにより、ポリウレタン基質の表面上に、アミン官能基(amine functionality)を導入することができる。半および完全相互貫入高分子網目を用いて、アミノ基を有するポリマーをポリウレタン基質に導入することができる。
【0124】
別の実施態様において、小分子(例えば、アジドもしくは末端アルキン)を用いて基質の表面を官能化し、各々2個以上の単一型(single type)の反応部位を含む1個以上の異なるモノマー間の交互反応に基質を曝露させることによって、重合が開始される。例えば、2個のアジド官能基を含有するモノマーを、基質表面と反応させた後、2個の末端アルキンを含有するモノマーと反応させる。
【0125】
2. ラジカルプロセス
一実施態様において、該非ファウリングポリマー物質は、ラジカル重合プロセスを用いて基質でグラフト−フロムされる。本明細書に記載の重合条件は、通常、他の重合方法に比べて穏やかであり、従って、下層基質の機械的特性、屈曲性(flexibility)、または寸法特性を大きく変化させない。
【0126】
ラジカル重合プロセスの例としては、限定はされないが、UV、熱、およびレドックスにより開始されるプロセスが挙げられる。特定の実施態様において、コーティングは、最初に、1つ以上のイニシエーター(例えば、紫外線(UV)、熱、またはレドックスイニシエーター)を、基質の中もしくは表面上に、吸収または吸着し、該表面から1つ以上のモノマーの重合を開始させることによって、該基質表面から直接成長する。重合は通常、モノマーの溶液もしくは懸濁液かまたはモノマーを用いてイニシエーター-浸漬基質を曝露することによって開始され、重合される。
【0127】
連鎖移動剤をモノマー溶液に加えて、グラフト−フロムラジカル重合反応動態を媒介させることができる。連鎖移動剤としては、限定はされないが、ハロカーボン、チオール、ジチオカルバメート、トリチオカーボネート、ジチエステル、キサンテートを含む分子が挙げられる。連鎖移動剤の例は、ブロモトリクロロメタンおよび4-メチルベンゼンチオールである。一実施態様において、該ラジカル重合グラフトは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(tetramethylpiperidinie)-l-オキシル(TEMPO)を用いて媒介される。一実施態様において、該ラジカル重合グラフトは、可逆的付加開裂移動(reversible addition fragmentation transfer)(RAFT)剤を用いて媒介される。
【0128】
イニシエーターを必要とするそのようなグラフト−フロム法において、様々な方法を用いて該イニシエーターを基質表面に導入することができる。一実施態様において、溶媒もしくは溶媒の組み合わせ中に溶解されているイニシエーターは、生理学的吸着により基質の表面中および/または基質の表面上に導入される。該基質は、イニシエーターを含む溶媒もしくは溶媒の組み合わせの中に、所定の時間浸される。該基質および/または下塗り層は、最終的に、基質表面上もしくは付近にて基質内部(bulk)中にイニシエーターを吸収して膨張し得る。基質に導入されるイニシエーターの量は、溶媒溶液中のイニシエーターの濃度を変化させることによって、および/または基質がイニシエーター溶液中に浸され得る時間を変化させることによって、制御することができる。
【0129】
別の実施態様において、該イニシエーターは、化学吸着によって基質表面もしくは下塗り層に導入される。この実施態様において、該イニシエーターは、基質とイニシエーター間の化学結合を形成する基質表面と化学的に反応しうる反応基を含む。
【0130】
さらに別の実施態様において、該イニシエーターはイニシエーター分子と別の物質との共沈着(co-deposition)により、基質表面に導入される。例えば、該イニシエーターを、ポリマー溶液中に溶解させることができる。基質をこの溶液に浸すことにより、ポリマーの薄膜およびイニシエーターは基質上に沈着される。該イニシエーターは、直接的もしくは間接的に、基質の表面上で重合を開始するか、あるいは共沈着物質上で重合を開始することができる。共沈着物質の例としては、限定はされないが、Tecoflex、CARBOTHANE(登録商標)、PELLATHANE(登録商標)、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステルまたはゾルゲルが挙げられる。
【0131】
さらに別の実施態様において、該イニシエーターはコーティング物質(例えばブロム化ポリウレタン)の骨格中に直接組み込まれる。この実施態様において、該コーティングは基質表面に直接塗布され、重合反応は塗布されたコーティングから直接開始される。
【0132】
非ファウリング表面において、浸漬もしくは下塗りを介してイニシエーター濃度を増大させることによって、鎖グラフト(chain graft)密度を増大させることができる。高い鎖グラフト密度を有することによって、非ファウリングポリマーは、非ファウリング基の数の増大および/またはポリマー鎖間距離の低下数を増大させてコーティング中へのファウリング分子の侵入を減少させることにより、コーティング中へのファウリング物質(agent)の侵入をより良く防止することができる。一実施態様において、該イニシエーターは、基質の表面中および表面上に浸漬される(吸収される)。例えば、該基質を、有機溶媒中のイニシエーターの溶液に曝露することができる。該溶媒は基質を膨張させ、基質中にイニシエーターを吸収させことができる。基質中への吸収度は、基質を膨張させる量と時間の関数である。
【0133】
上記の通り、酸素は、イニシエーターにより産生されたフリーラジカルと迅速に反応して、安定なラジカル種を形成することができ、そして他のラジカル種と反応して重合を終了させる非反応性種を産生することができるので、フリーラジカル重合における阻害剤として作用し得る。それ故に、通常は、窒素もしくはアルゴンを用いて脱気するかまたは減圧により無酸素環境を作ることによって、重合の前および重合の間、酸素を除去する。しかしながら、商業生産においてそのような脱気工程を要するのは望ましいことではない。
【0134】
別法として、反応混合物で反応器を満たすことによって反応器中の酸素を物理的に置き換えることにより、システム中の酸素を最小にすることができる。別の実施態様において、酸素を除去する試薬を反応混合物に加えることができる。適切な酸素-除去試薬としては、限定はされないが、(メタ)過ヨウ素酸ナトリウム、リボフラビン、およびアスコルビン酸が挙げられる。不活性でない条件下において重合がなされる場合、これらの剤は得られたポリマーの効力を向上させうる。
【0135】
i. UVイニシエーター
一実施態様において、該イニシエーターは紫外線(UV)イニシエーターである。該基質およびイニシエーターは、通常、双性イオンモノマーを含有する脱気された水溶液中に入れられ、UV光に曝露され、基質表面でのグラフト−フロムラジカル重合が開始される。
【0136】
UVラジカルイニシエーターの例としては、限定はされないが、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルホリノブチロフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、3'-ヒドロキシアセトフェノン、4'-エトキシアセトフェノン、4'-ヒドロキシアセトフェノン、4'-フェノキシアセトフェノン、4'-tert-ブチル-2',6'-ジメチルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾイン、4,4'-ジメチルベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン、2-メチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ビス[2-(1-プロペニル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチル、ミヒラー(Michier's)ケトン、スルホニウム、ヨードニウム(iodium)、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウム p-トルエンスルホネート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、N-ヒドロキシフタルイミドトリフレート、2-tert-ブチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム塩一水和物(sodium salt monohydrate)、カンファーキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、10-メチルフェノチアジン、チオキサントン、およびイルガキュア(IRGRCURE)2959が挙げられる。
【0137】
ii. 熱イニシエーター
別の実施態様において、上記のUVイニシエーターの代わりに加熱活性化(熱)イニシエーターを用いて、モノマー水溶液温度を望ましい温度まで加熱することによりグラフト−フロム重合を開始させ、重合が完了するまで該温度を一定に保持する。
【0138】
適切な熱イニシエーターとしては、限定はされないが、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,3,-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチル ヒドロペルオキシド、tert-ブチル ペルアセテート、tert-ブチル ペルオキシド、tert-ブチル ペルオキシベンゾエート、tert-ブチル ペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、過硫酸カリウムが挙げられる。
【0139】
該溶液を加熱して到達させる温度は、モノマーおよび/またはイニシエーターに依存する。熱ラジカルイニシエーターの例としては、限定はされないが、アゾ-化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)が挙げられる。該グラフト−フロムラジカル重合反応は、反応溶液を液体窒素中で急速に冷却することによってクエンチされる。
【0140】
iii. レドックスイニシエーター
別の実施態様において、レドックスイニシエーターシステムを用いて、基質の表面からの重合を開始させる。該レドックスイニシエーターシステムには、通常、イニシエーターのペアー:オキシダントおよび還元剤が含まれる。本明細書に記載のレドックス化学を修飾して、非ファウリングポリマー材料を、例えば、ブラシの形態(例えば双性イオンポリマーブラシ)で、製造することができる。レドックスイニシエーションは最も効率的な一電子移動反応であると考えられており、穏やかな条件下においてフリーラジカルを効率的に産生する。
【0141】
適切なオキシダントとしては、限定はされないが、ペルオキシド、ペルスルフェート、ペルオキシジスルフェート、ペルオキシジホスフェート、ペルマンガネート、金属の塩(例えば、Mn(III)、Ce(IV)、V(V)、Co(III)、Cr(VI)およびFe(III))が挙げられる。
【0142】
適切な還元剤としては、限定はされないが、金属塩(例えば、Fe(II)、Cr(II)、V(II)、Ti(III)、Cu(II)、Ag(I))、および硫黄の酸素酸、ヒドロキシ酸、アルコール、チオール、ケトン、アルデヒド、アミン、ならびにアミドが挙げられる。
【0143】
重合は、レドックス反応から直接形成されるラジカルか、および/またはレドックス反応の間に形成される一過性ラジカルによって基質から水素原子が除去されることにより形成されるマクロラジカルにより、開始され得る。
【0144】
一実施態様において、該基質は下塗りコーティングでコーティングされ、該非ファウリング物質はレドックス重合により下塗り層でグラフト−フロムされる。該下塗りコーティングは、オキシダントもしくは還元剤を含む。好ましい実施態様において、該下塗り層は、1つ以上の還元剤、例えば、酸、アルコール、チオール、ケトン、アルデヒド、アミンおよびアミドを含む。オキシダントを用いて下塗り層の1個以上の官能基と反応させて、グラフト−フロム重合を開始させるラジカルを形成させる。
【0145】
特定の実施態様において、該下塗り層は、シラノールおよび/またはヒドロキシル基を含む脂肪族鎖のペンダント基を有するコポリマーである。そのような物質を用いて、ポリマー基質(例えばポリウレタン(PU))上に下塗り層を形成することができる。オキシダント(例えばCe(IV)のオキシデート)を、穏やかな条件下においてヒドロキシル基と反応させて、下塗り層中にヒドロキシルラジカルを形成させ、双性イオンポリマーブラシを成長させる。
【0146】
さらに別の実施態様において、ペルオキシドおよび金属塩(例えばフェントン反応で用いるFe(II))のペアーをレドックス重合において用いて、ポリマー(例えばポリウレタン)上に双性イオンポリマーブラシを形成させる。ポリマーを有機溶媒中のペルオキシド溶液に所定の時間浸すことによって、ペルオキシド(例えばベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、過酸化水素、もしくはジクミルペルオキシド)を該ポリマー(例えばポリウレタン)に浸漬させ、乾燥させる。ポリマーを含む該ペルオキシドを、モノマー溶液中に入れる。該レドックス重合は、金属イオン、例えばFe(II)の金属イオン(例えば塩化Fe(II)、硫酸Fe(II)、硫酸アンモニウムFe(II)、もしくはグルコン酸Fe(II))を、室温もしくは高温にてモノマー溶液に加えることにより、開始される。
【0147】
物質(article)の表面および/または表面グラフト重合を修飾するために、疎水性-親水性レドックスペアーを用いることが特に有用であることが分かっている。例えば、疎水性物質は、レドックス開始システムの疎水性部分とともに浸漬され得る。「浸漬」には、イニシエーターを表面上に物理的に吸収すること、および/またはイニシエーターを疎水性表面に部分的に浸透させることが含まれうる。溶媒を用いることによって浸漬が促進され得る。
【0148】
次に、浸漬された表面を、該レドックスペアーの親水性メンバーの存在下において、親水性モノマーを用いて処理することにより修飾する。該グラフトは、疎水性-親水性界面にて、レドックスプロセスにより開始されうる。この方法は、複雑な幾何学的形態を有するポリマー表面をコーティングするのに有用でありうる。
【0149】
疎水性-親水性ペアーの使用は、多くの利点(イニシエーターの疎水性および親水性性質による、グラフト水(grafting aqueous)中および基質中へのレドックスイニシエーターの拡散の制限を含む)を有する。レドックスパートナーの無制御の拡散は、溶液重合および表面の官能化の減少をもたらし得る。例えば、両方のパートナーが親水性である場合、重合は、モノマー溶液中において、より生じやすく、基質でグラフト−フロムされたポリマーの量を減少させる。レドックスパートナーの無制御の拡散はまた、基質中においてラジカルからの望ましくない反応を引き起こし得る。
【0150】
適切なイニシエーターパートナーとしては、限定はされないが、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、l,l-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、l,l-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチル ヒドロペルオキシド、tert-ブチル ペルアセテート、tert-ブチル ペルオキシド、tert-ブチル ペルオキシベンゾエート、tert-ブチル ペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド 125、過酢酸、および過硫酸カリウムが挙げられる。
【0151】
他の適切なレドックスシステムとしては、限定はされないが、(1)還元剤(例えば過酸化水素)と組み合わせたペルオキシド、またはFe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、Cu+、もしくはアミンと組み合わせたアルキル、アリール、もしくはアシルペルオキシド;遷移金属イオン錯体、例えば、アセチルアセトン銅(II)(copper (II) acetylacetonate)およびペルオキシド;塩化亜鉛およびAIBN;(2)無機還元剤および無機オキシダント、例えば、無機オキシダント(例えば、Fe2+、Ag+、Cu2+、Fe3+、ClO3-、H2O2)と組み合わせた、-O3SOOSO3、HSO3-、SO32-、S2O32-、S2O52-;(3)有機-無機レドックスペアー、例えば、Ce4+、V5+、Cr6+、Mn3+によるアルコールの酸化;(4)レドックスペアーの成分として機能を果たすことができるモノマー(例えばチオスルフェートとアクリルアミド、チオスルフェートとメタクリル酸、およびN,N-ジメチルアニリンとメチルメタクリレート)、ならびに(5)ボロンアルキル(boronalkyl)-酸素システムが挙げられる。
【0152】
内部表面および外部表面の両面上をコーティングすることが必要とされる基質においては、重合の開始についてのさらなる考察が必要である。熱イニシエーターを用いることができるが;しかし、通常必要とされる高温は、基質材に悪影響を与え得る。UVベースのアプローチは、それらが該物質を透過することができるか、あるいは、例えば管腔内に通したファイバー光源から、腔内(intralumenally)にアプライすることができるように、設計されなくてはならない。このことは、基質ポリマーによって吸収されないUV波長にて不安定である光活性イニシエーターを選択することにより、達成されうる。一般的に、より低い波長のUV照射は吸収されにくく、より高い波長のUVよりも容易に透過する。
【0153】
対照的に、レドックス化学は、通常、重合が光分解で開始されるのではないので、重合を開始するために光源への直接的な照準線(line of sight)を必要とせず、従って、UV源に曝露することが困難な1つ以上の表面を有する基質(例えば、カテーテルの管腔)をコーティングするのに有利でありうる。さらに、レドックス重合は通常、低温、例えば6O℃未満、55℃未満、5O℃未満、45℃未満、4O℃未満、35℃未満、または3O℃未満にて行うことができる。
【0154】
非ファウリングポリマー物質は、実施例に記載の一般的な方法を用いて、表面でグラフト−フロムすることができる。一実施態様において、1%〜5%(wt/wt)のウレタンを含有する溶液は、適当な重量のウレタンペレットを適切な有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中に溶解させて、該溶液を第2溶媒(例えばメタノール)で希釈することによって、製造することができる。最終的なメタノール濃度は、好ましくは10%〜90%、より好ましくは15%〜85%、最も好ましくは60%である。1つ以上の適切なイニシエーター分子(例えばベンゾイルペルオキシドもしくはジクミルペルオキシド)を、通常、約0.25%〜約10%の濃度でポリマー溶液に加える。しかしながら、0.25%以下および10%以上の濃度も用いることができる。
【0155】
目的の基質のいずれも、望ましいコーティングの厚みおよび/またはイニシエーター表面濃度が達成されるまで、一回もしくは複数回、ポリマー/イニシエーター溶液に曝露させることができる。通常、基質を複数回曝露させる場合、該溶液への各々の曝露の間に、例えばエバポレートによって、コーティングされた基質から溶媒を除去する。最終曝露の後、該基質を少なくとも10分間静置し、いずれの残留溶媒をエバポレートした後、重合反応混合物に入れることができる。
【0156】
上記のプロセスを用いて、高濃度のイニシエーターを、基質もしくは下塗り層の中および/または上に浸漬させることができる。高いイニシエーター濃度は高密度にコーティングされた表面をもたらし、それによって該組成物の非ファウリング活性が向上される。例えば、高密度でコーティングされた表面は、コーティングへファウリング分子が侵入することにより基質表面がファウリングされるのを防止するのに十分に小さいポリマー鎖間距離を有するポリマー鎖を含む。
【0157】
上記の一般的な方法は、異なる基質材、イニシエーターシステム、および/またはモノマー組成物に適応させるために、必要に応じて改変することができる。
【0158】
C. 基質上への生物活性剤の固定化
グラフト−フロム法において、該活性剤は通常、該表面から非ファウリング物質が形成された後で、該非ファウリング物質上に固定されうる。
【0159】
該活性剤を、非ファウリング物質と、隣り合った構造で共に固定することができる。グラフト−フロム法において、該表面からテザーを形成させ、該活性剤を該テザー上に固定することができる。別法として、テザーを用いることなく直接、該活性剤を該表面に固定することができる。
【0160】
基質上、下塗り層上、非ファウリング物質上、またはそれらの組み合わせに、該活性剤を共有結合もしくは非共有結合的に直接固定することができる。一実施態様において、該活性剤は、活性剤上の1個以上の官能基と、基質、下塗り層、および/または非ファウリング物質上の1個以上の官能基とを反応させることによって、共有結合的に固定される。共有結合は、様々な反応メカニズム(限定はされないが、置換、付加、および縮合反応を含む)により形成され得る。
【0161】
IV. 使用方法
上記の物質は、非ファウリング物質がコーティングとして施されている医療デバイスの形態であってよい。適切なデバイスとしては、限定はされないが、組織、とりわけヒト組織に接触する、手術、医療もしくは歯科用器具、眼科デバイス、創傷治療剤(絆創膏、縫合材(suture)、細胞足場、骨セメント、パーティクル(particle))、アプライアンス、インプラント、足場、縫合材、弁、ペースメーカー、ステント、カテーテル、ロッド、インプラント、骨折固定デバイス、ポンプ、チューブ、ワイヤー、電極、避妊具、婦人用衛生用品、内視鏡、創傷被覆材、および他のデバイスが挙げられる。
【0162】
A. 繊維状および粒子状物質
一実施態様において、該非ファウリング物質は、繊維状物質上に直接コーティングされているか、繊維状物質に組み込まれているか、あるいは繊維状物質上に間接的にコーティングされている(例えば、異なる表面コーティング上にコーティングされている)。これらには、創傷被覆材、絆創膏、ガーゼ、テープ;パッド、スポンジ(織物および不織布スポンジ、および歯科もしくは眼科手術用に特別に設計されたもの(例えば、米国特許第4,098,728; 4,211,227; 4,636,208; 5,180,375;および6,711,879号参照)を含む)、外科用ドレープとして用いられる紙もしくはポリマー物質、使い捨ておむつ、テープ、絆創膏、女性用用品(feminine product)、縫合材、ならびに他の繊維状物質が含まれる。
【0163】
繊維状物質はまた、細胞培養およびティッシュエンジニアリングデバイスにおいても有用である。バクテリアおよび真菌のコンタミネーションは真核細胞培養における主要な問題であるが、これによって、培養のコンタミネーションを最小化もしくは排除する、安全で効率的な方法が提供され、ならびに、該物質へ直接接着タンパク質を組み込むことによって、目的の細胞の選択的結合が可能となる。
【0164】
該非ファウリング物質(agent)はまた、容易に、粒子(ナノ粒子、微小粒子、ミリメートル直径ビーズを含む)に結合されるか、あるいはミセルへと形成され、様々な用途(上記のような細胞培養、およびドラッグデリバリーを含む)に用いられる。非ファウリング性で生体適合性のポリマーミセルは、タンパク質の変性を防ぎ、免疫反応の活性化を防ぎ、目的の治療薬のよりステルスなデリバリーを可能にするであろう。
【0165】
B. インプラント物質および挿入物質
該非ファウリング物質は、ポリマー、金属もしくはセラミック基質に、直接塗布することができるか、あるいは組み込むことができる。適切なデバイスとしては、限定はされないが、手術、医療もしくは歯科用器具、血液酸素供給器、ポンプ、チューブ、ワイヤー、電極、避妊具、婦人用衛生用品、内視鏡、グラフト、ステント、ペースメーカー、植え込み型除細動器、心臓再同期装置、補助循環装置、心臓弁、カテーテル(血管、尿路、神経、腹膜、インターベンション用などを含む)、シャント、創部ドレイン、透析膜、注入ポート、蝸牛インプラント、気管内チューブ、ガイドワイヤー、液貯留バッグ、センサー、創傷治療剤(包帯材、絆創膏、縫合材、細胞足場、骨セメント、パーティクル)、眼科デバイス、整形外科デバイス(股関節インプラント、膝関節インプラント、脊椎(spinal)インプラント、スクリュー、プレート、リベット、ロッド、髄内釘、骨セメント、人工腱、および他の人工装具もしくは骨折修復デバイス)、歯科インプラント、乳房インプラント、陰茎インプラント、顎顔面インプラント、美容インプラント、バルブ、アプライアンス、足場、縫合材、針、ヘルニア修復メッシュ、テンションフリー膣テープおよび膣スリング、組織再生もしくは細胞培養デバイス、あるいは体内もしくは体と接触して用いられる他の医療デバイスまたはそのいずれかのあらゆる部分が挙げられる。好ましくは、本明細書の該非ファウリングコーティングは、デバイスの望ましい物理的性質(限定はされないが、屈曲性、耐久性、ねじれ耐性、耐摩擦性、熱および電気伝導率、引張強度、硬度、バースト圧力、などを含む)に、著しい悪影響を与えない。
【0166】
一実施態様において、該基質は、血管内挿入カテーテル(例えば末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)または血液透析カテーテル)、静脈弁、涙点プラグ、ならびに眼内デバイスおよびインプラントである。
【0167】
別の実施態様において、該基質は、医療グレードのポリウレタンもしくはCARBOTHANE(登録商標)から形成されたか、または医療グレードのポリウレタンもしくはポリカーボタン(polycarbothane)でコーティングされた物質から形成された血管内挿入カテーテルである。
【0168】
C. コーティング、ペイント、浸漬(Dip)、スプレー
該非ファウリング物質を、白カビ、バクテリア混入を防ぐためにペイントおよび他のコーティングならびにフィルターに加えることができ、また、ファウリングを防ぐことが望ましい他の用途、例えば、海洋用途(船殻コーティング)、コンタクトレンズ、歯科インプラント、in vivoセンサーへのコーティング、分離用のデバイス(例えば、微生物懸濁液、生体分子の分離、タンパク質分画、細胞分離、排水処理のための膜)、バイオリアクター、および食品加工プロセスに加えることもできる。
【0169】
他の用途には、織物、添加剤、電気的/光学的アプライアンス、包材および着色剤/インクにおける用途のために、繊維、粒子状物質およびフィルムを処理することが含まれる。
【実施例】
【0170】
実施例1. ベンゾフェノンUVイニシエーターを用いたポリウレタン上への双性イオンポリマーのグラフト
工程1. ベンゾフェノン浸漬
ポリウレタン試料を1LのVWRもしくはパイレックスボトルに入れた。このボトルに、160 mLのベンゾフェノン/アセトンの10%(w/v)溶液を加えた。撹拌子を入れた後、該ボトルに蓋をし、アルミホイルで覆って光から保護し、終夜撹拌した。ポリウレタン部分からベンゾフェノン溶液をデカントし;150 mL アセトンを加え、該ポリウレタン試料とともに30分間撹拌し、アルミホイルで覆った。該試料を、大きなブフナー漏斗を用いて濾過し、アセトンですすいだ。該試料を、ガラスのペトリ皿に入れ、窒素ガス気流で乾燥させ、遮光にて(in the dark)終夜、アルミホイル上に置いた。
【0171】
工程2. UVグラフト
石英ガラス管の底をゴムセプタムで栓をし、パラフィルムで固定した。テフロンテープを該管の上部全体に巻き付けて、先端の栓による密閉の強化を確実にした。該ベンゾフェノン-浸漬ポリウレタン試料を該管に入れ、該管の先端をゴムセプタムで栓をし、パラフィルムで固定した。10%(w/v) SBMA水溶液(solution in water)および全ての石英反応管を、アルゴンで35分間パージした後、モノマー溶液を各反応管に移し入れ、該先端をパラフィルムで固定した。軽くたたいて、いずれの気泡も溶液上に浮上させた。該管をUV反応装置の中で直立させて設置し、回転させながら6時間照射した。該反応装置から該管を取り出した後、各ポリウレタン試料を、各々、温水(hot water)ですすぎ、1xPBS中で終夜振盪させ、プラスチックの培養管において、1xPBS中で4℃にて、保存した。同様の方法を用いて、モノマー、例えばSBMAの代わりにCBMA、を用いたカルボキシベタインコーティングを製造してもよい。
【0172】
10フレンチのポリウレタンロッド上に製造したSBMA試料の各々を、放射標識された血小板とともに、フローループ中において2時間、新鮮なウシ血液に曝露することにより、抗血栓能について評価した。このUV法を用いて製造したSBMAおよびCBMA試料の両者とも、吸着した血小板の約80%の減少、および目視によるかなりの血栓の減少を示した。
【0173】
実施例2:下塗りを有するポリウレタン上への双性イオンポリマーのグラフトおよびCe(IV)レドックス重合
コポリマーの合成
5O mLの無水メタノールを、25O mLの乾燥フラスコ中に、4mLのラウリルメタクリレートおよび4 mLの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと一緒に加える。窒素で5分間パージした後、0.3 mLの3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを加え、脱気を続ける。重合を、6O℃にて不活性雰囲気下において、0.2 gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加えることによって開始させ、18時間撹拌する。該反応混合液を、無水メタノール(分子量 カットオフ 2,000)に対する 時間の(for h)透析により精製して、コポリマー溶液(下塗り溶液)を得る。
【0174】
下塗りコーティング
ポリウレタン基質、例えば10フレンチのポリウレタンロッドを、0.5%の下塗り/メタノール溶液に、周囲条件で3分間浸し、取り出し、6O℃で1時間乾燥させる。上記の浸漬および乾燥手順を4回繰り返した後、該試料を6O℃で18時間乾燥させる。次いで、それらを1xPBSで18時間洗浄した後、DI水で洗浄し、風乾させる。
【0175】
Ce(IV)媒介グラフト重合
下塗りコーティングされた試料を、1 mg/mLの硫酸アンモニウムセリウム(IV)を有する10%のSBMA水溶液とともにフラスコに加え、窒素で15分間パージする。次いで、該反応を、45℃で2時間、撹拌下において進行させる。該試料を取り出し、PBSで洗浄して、吸着ホモポリマーを除去する。ELISAによると、処理された試料は83%のフィブリノーゲン吸着の減少を示す。
【0176】
実施例3:ジクミルペルオキシド-グルコン酸Fe(II)レドックス重合を用いた、双性イオンポリマーのポリウレタン上へのグラフト
ジクミルペルオキシド浸漬
10フレンチのポリウレタンロッドを、アセトンもしくはメタノール中のジクミルペルオキシドの10%溶液中に2時間浸し、気流を用いて乾燥させ、空気中で18時間維持する。
【0177】
レドックス重合
10.5%のSBMA水溶液およびジクミルペルオキシド処理ポリウレタンロッドを、磁気撹拌しながら、フラスコに入れ、アルゴンで10分間パージした後、100mMのグルコン酸Fe(II)溶液を加える。SBMAとグルコン酸Fe(II)の最終溶液は、各々、10%(wt/wt)および5mMである。さらに20分、アルゴンでパージし続ける。次いで、該反応を60℃で5時間進行させる。その後、該試料を取り出し、1xPBSで終夜洗浄する。ELISAによると、処理された試料は90%ものフィブリノーゲン吸着の減少を示す。
【0178】
管腔を有する基質の非ファウリング活性を評価するために、14フレンチのポリウレタンダブルルーメンチューブを実施例3に従ってコーティングした。上記のアッセイを用いると、処理された試料は90%ものフィブリノーゲン吸着の減少を示す。
【0179】
実施例4. レドックスおよびUV SBMA-コーティングポリウレタンロッドのタンパク質吸着およびバイオフィルム形成
24時間コロニー形成アッセイ
実施例3で製造したレドックスSBMA、実施例1で製造したUV SBMA、および対照のCarbothaneロッドを、50%ウシ胎仔血清とともに18時間インキュベートした。次いで、試料を、黄色ブドウ球菌 ATCC 25923とともに、1%TSB中に1-3x105 CFU/mLの出発プランクトン濃度で、37℃にて撹拌しながら、24時間インキュベートした。24時間後、物質上に蓄積したバイオフィルムを超音波処理により除去し、バクテリア細胞の総数を希釈平板によって定量化した。さらに、アッセイの終わりにおけるプランクトン濃度をモニタリングして、アッセイアーチファクトを生み出しうる毒性浸出性(toxic leachable)化合物が確実に存在しないようにした。該プレートを37℃にて24時間インキュベートした後、コロニーをカウントし、各試料上に存在する生存細胞の数を決定した。各実験は、各物質の4つの試料を用いて、3回重複で実施した。
【0180】
対照と比較して、コロニー形成において、レドックスSBMA試料は平均1.96対数(SD 0.57 log, p<0.001)減少を示し(n=44)、UV SBMAは平均2.34対数(SD 0.22 log, p<0.001)減少を示した(n=24)。
【0181】
実施例5. カルボキシベタインコーティングロッドの抗血栓活性
In Vivo 血栓形成モデル
実施例1に記載のとおり製造したUVベースのカルボキシベタイン修飾のin vivoにおける長期的な能力が、ヒツジでのコーティングされたTecoflexロッドの7-日間の橈側皮静脈移植において示された。簡潔に言うと、CB修飾で処理されているかもしくは未修飾の4 Fr. X 15 cm Tecoflex(登録商標)ロッドから成る被験物を2歳の雄のサフォークヒツジの橈側皮静脈に挿入した。7日後、該ヒツジを麻酔し、末梢血液サンプルを採取し、橈側皮静脈を結紮して切除し、除去プロセスの間、該静脈中のインプラント物はそのままにしていた。次いで、インプラントロッド上の血栓を乱すことなく、該静脈を軸方向に切り、慎重に開いた。コーティング物および未コーティング物上の総血栓量を評価した。1つのコーティングデバイスおよび未コーティングデバイスを各動物に施し、個体間のばらつき(animal to animal variability)をコントロールした。同一の動物の反対側の静脈中に施したTecoflex対照と比べて、血栓重量において72%の減少が見られ(図1参照)、この減少は視覚的にはっきりと見えた。これらのデータにより、非接着性コーティングの血栓形成防止能および該コーティングの長期間の活性維持能が示される。
【0182】
実施例6. ジクミルペルオキシドレドックス重合を用いたポリウレタン上の双性イオンホモポリマー
Tecoflex SG-93A(2.5g)を、還流中のテトラヒドロフランに、激しく撹拌しながら溶解させた。該溶液を室温まで冷却しメタノールで希釈した。最終的な溶液濃度は、1% Tecoflex SG-93A、40%テトラヒドロフラン、および60%メタノールであった。ジクミルペルオキシド(2.5g)をこのポリマー溶液のアリコート(25g)に加え、該混合液を、全てのジクミルペルオキシドが溶解するまで撹拌した。
【0183】
Carbothane押出物(extrusion)(14フレンチ, 1lcm長, ダブルD)を、イニシエーター-ポリマー溶液に浸した。試料を、1、2、4、もしくは8回浸漬した。各々の浸漬の合間に、該基質の溶媒を、1分間、エバポレートして除いた。最後の浸漬の後、全ての試料を室温で3時間静置して、いずれの残留溶媒も除去した。溶媒をエバポレートした後、該試料のそれぞれの端から0.5 cmを切り取り、次いで該試料を半分に切断した。該5.0 cmの試料を40 mLの琥珀色のガラス容器に入れ、セプタムで封をした。
【0184】
SBMA(91.2 g/432 mLの脱イオン水)およびグルコン酸Fe(II)(1.02 g/12 mLの脱イオン水)の別々の溶液を、各溶液を撹拌しながら30分間アルゴンをバブリングすることによって脱酸素化した。これらの溶液を脱酸素化している間、5cmの押出物を含む該琥珀色のガラス容器をアルゴンで30分間フラッシュした。
【0185】
SBMA溶液(36mL)を各フラスコにシリンジによって加え、続いてグルコン酸Fe(II)溶液(1 ml)をシリンジによって加えた。該容器をAnthill反応シェーカー上で37℃まで加熱し、680 RPMで振盪させながら24時間、反応させ続けた。
【0186】
該反応の後、全ての試料を該反応容器から取り出し、1X リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回すすいだ。すすいだ試料を1X PBS中に2日間浸した後、放射標識フィブリノーゲンアッセイを用いて評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質を含有し、該基質上に固定された下塗り層を適宜含有してもよい組成物であって、該基質もしくは下塗り層に非ファウリングポリマー物質を共有結合させ、ここで、該ポリマー物質は該基質もしくは該下塗り層内でグラフト−フロムされる、組成物。
【請求項2】
基質を含有し、該基質上に固定された下塗り層を適宜含有してもよい組成物であって、該基質もしくは下塗り層に非ファウリングポリマー物質を共有結合させ、ここで、該非ファウリングポリマー物質の濃度は約0.50 μg/cm2〜約5 mg/cm2であるか、またはポリマー鎖間距離は非ファウリングポリマー物質中へのファウリング分子の侵入を減少させる、組成物。
【請求項3】
該基質が、金属物質、セラミック、ポリマー、織物材料、不織布材料、シリコン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該金属物質が、チタンおよびその合金、ステンレススチール、タンタル、パラジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ニッケル-クロム、コバルトまたはその合金、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該セラミックが、遷移金属元素もしくはメタロイド元素の、オキシド、カーバイド、またはニトリドからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
該ポリマーが、ポリスチレンおよび置換ポリスチレン、ポリ(ウレタン)、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミド、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリフルオロカーボン、PEEK、テフロン、シリコン、エポキシ樹脂、ポリアミドおよびそのコポリマー、ナイロン、ポリアルケン、フェノール樹脂、PTFE、天然および合成エラストマー、接着剤および密封剤、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、多糖、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
該ポリマーがポリウレタンまたはポリカーボネート-ベースのポリウレタンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該基質が金またはガラスでない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
該基質の表面が、均一の化学組成を有する表面を形成するために下塗り層を含有する、請求項1から8のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
該下塗り層がポリウレタンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
該基質がペルオキシドで処理された基質である、請求項1から10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
該基質が実質的にチオールフリーである、請求項1から11のいずれか1つに記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項13】
該非ファウリングポリマー物質が双性イオンポリマーである、請求項1から12のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項14】
該双性イオンポリマーが、以下の式:
【化1】

[式中、Bは式:
【化2】

(式中、
Rは、水素、置換アルキル、もしくは無置換アルキルからなる群から選択され;
Eは、置換アルキル、無置換アルキル、-(CH2)yC(O)O-、および-(CH2)yC(O)NR2からなる群から選択され;
Yは、0〜12の整数である)
からなる群から選択され、
Lは、存在しないか、または1個以上の酸素原子を適宜含んでよい直線状もしくは分枝状アルキル基であり;
ZIは、双性イオン基であり;そして、
xは、3〜1000の整数である]
を有する1つ以上のモノマーを含有するホモポリマーまたはコポリマーである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該ZIが、式:
【化3】

(式中、
R3およびR4は、独立して、水素および置換もしくは無置換アルキルからなる群から選択され;
R5は、置換もしくは無置換アルキル、フェニル、およびポリエーテル基からなる群から選択され;そして、
Mは、1〜7の整数である)
からなる群から選択される、請求黄14に記載の組成物。
【請求項16】
xが、約10〜約500、約20〜約250、または約30〜約100である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
該双性イオンポリマーが、スルホンベタインメタクリレート(SBMA)もしくはスルホンベタインアクリルアミドのホモポリマーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
該双性イオンポリマーが、スルホンベタインメタクリレート(SBMA)もしくはスルホンベタインアクリルアミドを含有するコポリマーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
該双性イオンポリマーが、以下の式:
【化4】

[式中、
B1およびB2は、独立して、式:
【化5】

(式中、
Rは、水素または置換もしくは無置換アルキルから選択され;
Eは、置換もしくは無置換アルキレン、(CH2)PC(O)O-、または-(CH2)PC(O)NR2-から選択され、ここでpは整数0〜12の整数である)
から選択され、
R2は、水素または置換もしくは無置換アルキルから選択され;
Lは、1個以上の酸素原子を適宜含有してよい直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;
P1は、正荷電基であり;
P2は、負荷電基であり;
mは、3〜1000の整数であり;そして、
nは、3〜1000の整数である]
を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
該ポリマーが、式:
【化6】

(式中、
Rは、置換もしくは無置換アルキルから選択され;
L1、L2、およびL3は、独立して、1個以上の酸素原子を適宜含んでよい線状もしくは分枝状アルキレン基であり;
nは、3〜1000の整数であり;そして、
Nlは、負荷電基である)
からなる群から選択される1つ以上のモノマーを含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
該負荷電基が、カルボキシレート基、-SO3-、-OSO3-、-PO3-、および-OPO3-からなる群から選択される、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
該正荷電基が、四級化窒素またはカチオン性リン含有基である、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
x、m、およびnが、約10〜約500、約20〜約250、または約30〜約100である、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項24】
該非ファウリング物質が、ポリエーテル、多糖、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチル-メタクリレート、アクリロニトリル-アクリルアミドコポリマー、へパリン、混合電荷ポリマー、および水素結合受容基を有するポリマーからなる群から選択される非-双性イオンポリマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項25】
該ポリマー物質がUV-開始フリーラジカル重合により形成される、請求項1〜24のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項26】
該ポリマー物質がレドックス-開始フリーラジカル重合により形成される、請求項1〜24のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項27】
該非ファウリング物質が基質および/または下塗り層中に存在するラジカルにより重合される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
該ラジカルがペルオキシドおよび金属塩を含有するレドックスペアーから形成される、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
該ペルオキシドが基質中に吸収されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
該ペルオキシドがジクミルペルオキシドであって、該金属塩がグルコン酸Fe(II)である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
該非ファウリングポリマー物質が、該基質の末端に結合し、ブラシ構造を形成する、請求項1〜30のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項32】
該非ファウリングポリマー物質がテザーを介して基質もしくは下塗り層でグラフト−フロムされる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項33】
該非ファウリングポリマー物質、該基質、該下塗り層、もしくはそれらの組み合わせが、それらの上に固定された1つ以上の生物活性剤を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項34】
該1つ以上の生物活性剤が、非ファウリング物質、基質、下塗り層、もしくはそれらの組み合わせ上に、共有結合かもしくは非共有結合で固定されている、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
該1つ以上の生物活性剤が、該非ファウリング物質、該基質、下塗り層、もしくはそれらの組み合わせに、テザーを介して固定されている、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項36】
該組成物が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地、血清、もしくはin vivo中において37℃で、少なくとも1、7、14、30、90、365、もしくは1000日間保存された後、未コーティングの基質と比べて、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%以上、ファウリングを減少させる、請求項1〜35のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項37】
該組成物が生体適合性である、請求項1〜36のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項38】
該組成物が実質的に非溶血性であって実質的に細胞毒性がない、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
該組成物が抗菌性である、請求項1〜38のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項40】
該組成物が抗血栓形成性である、請求項1〜39のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項41】
該組成物が、PBS、培地、血清、もしくはin vivoにおいて、1、7、14、30、90、365、もしくは1000日間、表面接触角、非ファウリング、抗血栓形成性、および/または抗菌活性といったそのもともとの物質特性の、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%を保持する、請求項1〜40のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項42】
該組成物が医療デバイスの形態である、請求項1〜41のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項43】
該医療デバイスが、繊維;手術、医療、もしくは歯科器具;血液酸素供給器、人工呼吸器、ポンプ、ドラッグデリバリーデバイス、チューブ、ワイヤー、電極、避妊具、婦人用衛生用品、内視鏡、グラフト、ステント、ステントグラフト、ペースメーカー、植え込み型除細動器、心臓再同期装置、心血管装置リード、補助循環装置およびドライブライン、心臓弁、大静脈フィルター、血管内コイル、カテーテル、カテーテルコネクタおよびバルブ、静脈内送達ラインおよびマニフォールド、シャント、創部ドレイン、透析膜、注入ポート、蝸牛インプラント、気管内チューブ、気管切開チューブ、人工呼吸器呼吸管および回路、ガイドワイヤー、液貯留バッグ、ドラッグデリバリーバッグおよびチューブ、埋め込み型センサー、眼科デバイス、整形外科デバイス、歯科インプラント、歯周インプラント、乳房インプラント、陰茎インプラント、顎顔面インプラント、美容インプラント、バルブ、アプライアンス、足場、縫合材、針、ヘルニア修復メッシュ、テンションフリー膣テープおよび膣スリング、人工神経デバイス、組織再生もしくは細胞培養デバイス、あるいは体内もしくは体と接触して用いられる他の医療デバイスからなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
該デバイスが、管腔、空洞、多孔質構造、またはそれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
該デバイスが、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)、および血液透析カテーテルからなる群から選択される血管内挿入カテーテルである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
引張強度、引張係数、デバイス寸法、もしくはそれらの組み合わせが、未コーティング基質の引張強度、引張係数、デバイス寸法、もしくはそれらの組み合わせの、20%、10%、5%、もしくは1%内である、請求項1〜45のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項47】
該基質、下塗り層もしくはその両方の中で、および/または該基質、下塗り層もしくはその両方の表面で、非ファウリングポリマー物質をグラフト−フロムすることを含む、請求項1〜46のいずれか1つに記載の組成物の製造方法。
【請求項48】
該非ファウリングポリマー物質が、基質、下塗り層、もしくはその両方の中で、および/または基質、下塗り層、もしくはその両方の表面で、1つ以上のフリーラジカルイニシエーターを用いてグラフト−フロムされる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
該1つ以上のイニシエーターが紫外線(UV)イニシエーターである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該1つ以上のイニシエーターがレドックスイニシエーターペアーである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
該1つ以上のフリーラジカルイニシエーターが、該基質、該下塗り層、もしくはそれらの組み合わせ中に吸収される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
該レドックスイニシエーターが、疎水性-親水性レドックスイニシエーターペアーを含有する、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
該レドックスイニシエーターシステムがペルオキシドおよび金属塩を含有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該ペルオキシドがジクミルペルオキシドであって、該金属塩がグルコン酸Fe(II)である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
該グラフト−フロム重合が照準線を必要としない、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
該基質、下塗り層、もしくはそれらの組み合わせが、重合を開始させるためのフリーラジカルをもたらすために、プラズマもしくはオゾンで処理されていない、請求項47〜55のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
該グラフト−フロム重合が1つ以上の酸素スカベンジャーの存在下において生じる、請求項47〜55のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510880(P2012−510880A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539776(P2011−539776)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067013
【国際公開番号】WO2010/065960
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.パイレックス
【出願人】(511137253)センプラス・バイオサイエンシーズ・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】SEMPRUS BIOSCIENCES CORP.
【Fターム(参考)】