説明

非乳化剤油を製造する方法。

【課題】油と水を混合した非乳化剤燃料油として乳化剤を使用しないで長期安定した非乳化剤燃料油の、簡単に安価で且つ環境負荷の少ない製造方法を提供する。
【解決手段】有機物と反応し水に溶けるオゾンと空気の混合ガスを送り続けることで乳化剤を利用した水と油の乳化油より強固な結びつけである油と水を混合した非乳化剤燃料油を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油と水を混合した非乳化剤油を製造する手段とそれに関する。
【背景技術】
【0002】
自然界にも存在するオゾンはきわめて酸化力が強く、有機物に対して殺菌・消臭・脱色する作用があり、分子上のオゾンが水に溶解すると、オゾン分子はOとして残留するか各種の機構によって分解し、分子上のオゾンよりも強力な酸化剤であるヒドロキシラジカル(OH)が生成されることがわかっているので、有機物である油にも反応する。油にオゾンガス(オゾンと空気)を爆気しても油の変化は見られないが、ある条件で油と水とオゾンガス(オゾンと空気)で爆気すると油と水が乳化状になる。ある種の油脂は高分子の二重結合部にオゾンが作用して低分子化することは知られている。
【0003】
水と油では比重差があり、油は水に浮き混ぜても混ざらないことは良く知られていて、混ぜるために、乳化剤の添加と攪拌運動、超音波振動などの運動エネルギーを与えて乳化しようとしている。燃料油に乳化剤を添加混合し、燃料油 7 に水類 3 の割合で配合して超音波震動により乳化燃料油を作成する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。つまり、水(親水基)と油(親油基)の親和性を高めて乳化させるには乳化剤の添加が必要条件である。言い換えれば、乳化剤なしに乳化油を容易に作れないので、油本来の性質と異なる添加乳化剤の性質に影響されて、本来求める乳化油だけの性質にならず、添加された乳化剤の性質や添加量によって乳化油作成に制限が加わることがある。
【0004】
乳化剤による乳化燃料油は静止状態で時間の経過とともに分離することがありそれをなくす為に水と油の乳化を結びつける乳化剤の量が多くなることが考えられる。さらなる時間の経過と共に水と油は元に戻ろうとする。乳化燃料油(通常にはエマルジョン燃料と言う)をディーゼルエンジントラックに使用してNOx・PMの低減を図ろうとするDPS型ディーゼルエンジン排気ガス減少装置(国土交通省認定番号MLIT−NPR−1)が良く知られている。軽油と水を混ぜた乳化油が排出ガス低減に効果のある事実の1つであるが乳化状態が時間の経過と共に分離するので、トラックに軽油と水及び乳化剤のタンクとそれらの液を混合さす装置を取り付け使用燃料分だけ乳化油を作成しながら走行している。この場合には通常の燃料タンク1個に比べて4個の付属品が必要でイニシャルコストとランニングコストが増加している。容易に分離しない乳化燃料油が経済的・環境負荷低減に効果を発揮することが容易に理解できるが現在の技術ではまだ実現していない。文献2参照。)と低質油改質法(例えば、特許文3参照。)がある。前者は重油と水を乳化剤で乳化させた乳化液にオゾン(0)を添加し完全燃焼を促進させようとしているが、乳化剤ですでに乳化しているので、オゾンによる効果が不明であり、乳化剤も含有している。後者は酸素含有量の多いオゾン「H=オゾンでなく過酸化水素」をオゾン発生器によって水槽内の水に注入拡散させて水とオゾンの混合又は溶解液を作るとしているが、オゾン発生器はオゾン「O」でない過酸化水素「H」を水と攪拌し混合液を造っている。さらに超微粒化用超音波クラッシャーの作用により重油とオゾン溶解液で乳化油を作るとしているが、超微粒化用超音波クラッシャーの作用の理論的根拠に乏しいし、具体的な実施例もない。
【特許文献1】特許公開2001−139964号
【特許文献2】公開特許公報 昭60−82706号
【特許文献3】公開特許公報 昭60−231794号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有限な地球において近年のエネルギー消費は地球温暖化と大気汚染の進行を加速化させている、エネルギーの代表であるディーゼルエンジン燃料に使用する軽油・重油の削減は必用であるが今後も増加する人口と経済発展による一人当たりエネルギー消費の増加は地球生命体全体に影響を与え地球環境の悪化に大きな課題となってきている。軽油・重油等の燃料に10%から30%の水を混合して代替燃料油として使用できれば、単純に計算しても水の増加分の燃料が低減する。ボイラー・発電機・車輌・船舶等に使用されるディーゼルエンジンの乳化燃料油は乳化しないで直接燃料油として使用するよりも燃料油の消費削減になり、排気ガスによる有害物質も低減できる。解決しようとする課題は燃焼時に発生する排ガスによる有害物質を低減し燃料油使用量を削減してCOの発生量も低減できる油と水を混合した非乳化剤油を製造し利用することにある。
【0007】
乳化剤は水と油の界面に保護膜を作り水と油の間に介在して結合させるので、環境の変化による乳化状態の変質や、時間的な経過と共に分離がおこるので、より長時間安定的な乳化油の製造が課題となる。製造後長時間の安定貯蔵ができると現在の流通システムを大きく変えないで使用できるので、大きな新たな経済的な負担がなく環境負荷も少ない優れた方法と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
水と油を乳化するためには水と油をつなぐ界面活性剤的な働きが必要であることは当然理解されているが、有機物と反応し水に溶けるオゾンと空気の混合ガスを送り続けることで乳化剤を利用した水と油の乳化油より強固な結びつけである油と水を混合した非乳化剤油を製造する。分子上のオゾンが水に溶解すると、オゾン分子はOとして残留するか各種の機構によって分解し、分子上のオゾンよりも強力な酸化剤であるヒドロキシラジカル(OH)が生成される。油に水及びオゾンと空気の混合ガスを送り適当な条件で反応さすと油と水を混合した非乳化剤油となり短期で分離することが無い。オゾンによって酸化される有機物としては、a)不飽和結合を持つオレフィン系やアセチレン系化合物、b)芳香族単環・宿合環化合物、c)炭素・炭素2重結合を持つ化合物、d)アミン、硫化物などの求核類、e)アルコール、アルデヒド、エーテルなどの酸素を含む化合物、f)さまざまな型の炭素・金属結合等が知られていて、それらの有機物成分の一部が軽油や重油にも含有しているので乳化剤で製造した乳化液よりも強化な結合ができると思われる。
【発明の効果】
【0009】
有限な地球において近年のエネルギー消費は地球温暖化と大気汚染の進行を加速化させているが、軽油・重油等の燃料に10%から30%の水を混合して代替燃料油として使用できれば、単純に計算しても水の増加分の燃料低減になるし、排ガスから出る有害物質の低減にもなる。乳化剤を使用しないで長期安定した油と水を混合した非乳化剤油を、簡単に安価で且つ環境負荷の少ない製造方法ができると、産業界で製造されている乳化状商品に利用できる可能性ができる。乳化剤の使用分野は広範囲であり、エネルギーの消費削減とあわせて非常に大きな効果がある。つまり、京都議定書で採決されたCO削減に有効な効果をもたらすと言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0011】
1は貯留槽であって油と水とオゾン及び空気を酸化反応させる槽で、2で発生したオゾン混合空気を6の空気配管を通じて1の底に這わした空気配管の穴の空いた部分から送りだす。このときオゾン空気が4の軽油(油)内に拡散散気して、軽油(油)を流動させながら均一に分布して上昇する。3のノズルから噴射する水と空気との混合水は7の微細なミストになり4の軽油(油)の上面から一定時間内に適量が4の軽油(油)に噴射される。4の軽油内にはオゾン空気で曝気されたオゾンが拡散散気しているので、3のノズルから微細なミストを噴射して、軽油と水を混合した非乳化剤軽油を製造する。
【実施例1】
【0012】
燃料油の代表である軽油での実施例を示す。
軽油 8.5に水 1.5の割合でオゾン空気と共に適正条件下で製造した軽油と水を混合した非乳化剤軽油の成分分析結果と走行結果を示す。軽油に関しては通常販売されているものを使用し、オゾン空気は自社製造発生装置を使い、水は水に溶けている不純物の影響をなくすために蒸留水を購入し使用した。
【0013】
製造した非乳化剤軽油の分析を実施した。
試験機関 ;大阪理化学分析センター
資料名 ;水15%(重量比)の割合で製造した非乳化剤軽油
証明書番号; No.Y6144/04

水15%も含む油と水を混合した非乳化剤軽油は8番の分析によると、質量%で18ppmの水分の含有しかない、7番の硫黄分も2007年基準値を10ppmに適合している。1から9番の結果から軽油と判断される。
【0014】
製造した非乳化剤軽油の走行テストをした。
ディーゼル自動車排出ガス試験(10・15モード)を走行試験として、
非乳化剤軽油をディーゼルエンジンの貨物車に給油し試験を行なった。
試験場所 ; 財団法人 日本車輌検査協会 堺検査所
自動車車名・形式 ; いすゞ ・KC−KR66EAV
10.15モード排出ガス試験結果

試験は13モードでの試験と異なるが燃料消費率8.1/Kmの燃費で走行できたことを証明した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
有限な地球において近年のエネルギー消費は地球温暖化と大気汚染の進行を加速化させているが、軽油・重油等の燃料に10%から30%の水を混合して代替燃料油として使用できれば、燃料の低減になるし、排ガスから出る有害物質の低減にもなる。乳化剤を使用しないで長期安定した油と水を混合した非乳化剤油を、簡単に安価で且つ環境負荷の少ない製造方法ができると省エネ効果があるので京都議定書で採決されたCO削減に有効な効果をもたらすと言える。だから産業上の利用可能性は現実的で大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す構成図
【符号の説明】
【0017】
1 油と水を混合した非乳化剤油を製造する槽
2 オゾン空気発生装置
3 水を噴射するノズル
4 非乳化剤油(反応前は軽油)
5 水タンク
6 空気配管
7 水の微細ミスト噴射
8 オゾン空気の気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油と水を混合した非乳化剤油をオゾン(O,水に溶けてOH)の酸化反応することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
酸化反応は反応槽に注入した油にオゾンを含む空気が均一に拡散するように爆気すると共に、油にミスト状水分を噴射することで油と水がオゾンの酸化反応で混合され、乳化剤を含有しない非乳化剤油を製造することを特徴とする請求項1記載の非乳化剤油を製造する方法
【請求項3】
油である各種燃料油に酸化反応の高いオゾン(O,水に溶けてOH)空気にて爆気拡散させると共に油の表面にミスト状水分を噴射作成した油と水を混合した非乳化剤燃料油をディーゼルエンジンに使用することでエンジン燃焼時の温度が下がり、NOxの発生が抑制されるので、NOxの有害排出ガスの低減と同時に燃料消費低減によるCO低減効果があることを特徴とする請求項1記載の非乳化剤油を製造する方法。
【請求項4】
各種燃料油に10%〜30%の水分を含有した非乳化剤油で各種燃料油のJIS成分規格値を満足することを特徴とする請求項1〜3記載の非乳化剤油を製造する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−282975(P2006−282975A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133052(P2005−133052)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(505160588)株式会社SKC (1)
【Fターム(参考)】