説明

非付着性表面を有する包装材料およびその製造方法

【課題】主として液体を含む食品、化粧料等の包装用の成形容器や袋等の包装材料において、内容物が容器内面に付着残存するのを防止しうる優れた非付着性表面を有し、しかもその性能の安定維持をはかり得る包装材料を提供する。
【解決手段】包装材料基材1の表面に熱接着剤層5を介して付着防止用の粒子被覆層6を形成する。かつ該粒子被覆層6は、疎水性湿式シリカ粒子Aと疎水性または親水性乾式シリカ粒子Bとの所定の配合比率による混合組成物で構成すると共に、加熱処理により上記粒子被覆層6の一部に熱封緘層成分が入り込んだ含浸密着強化層6aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体または液体を含む物品、主として食品、飲料、化粧料類の包装に用いられる紙製あるいは合成樹脂製等の包装用成形容器、包装用袋、包装用シートないしフィルム等の非付着性表面を有する包装材料及びその製造方法に関する。更に具体的には、例えばヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム、ミルクポーション、コーヒー飲料、味噌、レトルトカレー、液体調味料等の包装用のカップ状容器や袋等に用いられる内容物付着防止性を備えた包装用材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に半凝固成分を含む液体物品や粘性物等の包装用に用いられるこの種の包装用材料は、成形容器や袋の内面に内容物である液体物質あるいはその凝固物が付着することのない、良好な非付着性表面を有することが望まれる。それらが付着すると、内容物の取り出しに当って、内容物の残留棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取るのに手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
【0003】
このような要請に対し、従来、内容物付着防止性能の付与ないし向上手段として下記特許文献1(特許第4348401号公報)に示されるような提案がなされている。
【0004】
この先行提案に係る公知技術は、基材層の外面に、熱接着剤層を介して極めて微細な疎水性シリカ等の疎水性酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものであり、内容物付着防止効果の点では優れた効果を奏し得るものの、付着防止効果を担う上記多孔質層の熱接着剤層に対する密着性の点でなおいささか問題点を有するものであった。即ち、上記付着防止層は、熱接着剤層上に、疎水性酸化物微粒子をアルコール等の分散媒を用いた分散液として塗布したのち、乾燥させることによって疎水性酸化物微粒子による多孔質層に形成したものであるから、それ自体が組織的に脆弱である上に、概して隣接する熱接着剤層に対する結合力ないし密着力が弱く、付着防止層の部分剥離や脱落を生じ易く、包装内容物への異物混入のおそれを生じ衛生上好ましくないのみならず、付着防止効果が安定しない恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−189059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、内容物に接する面に極めて良好な安定した付着防止性能を保有しながら、当該付着防止性能すなわち非付着性を発現する付着防止層の基材層に対する密着性ないし固着性を向上して、その剥離、脱落を防ぎ、包装内容物への異物混入のおそれのない衛生面でも安心度の高い非付着性表面を有する包装用材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するべく発明者らにおいて種々実験と研究を重ねたところ、疎水性湿式シリカ粒子と乾式シリカ粒子とを併用し、それらを所定比率の混合組成物として使用することで、それぞれのシリカ粒子のもつ固有の欠点を他方のシリカ粒子のもつ利点で補い、結果的に相互補完作用により、更には相乗効果により前記従来技術の問題点を一挙に解決しうることを見出すに至り、このような独自の知見に基づいて完成し得たものである。
【0008】
そこで、本発明は、上記の目的達成のための具体的な技術手段として、下記[1]〜[14]に記載の非付着性表面を有する包装材料とその製造方法を提示する。
【0009】
[1]包装材料基材の表面に熱接着剤層を介して付着防止用の粒子被覆層が形成されると共に、
該粒子被覆層が、疎水性湿式シリカ粒子と、乾式シリカ粒子との混合組成物からなることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料。
【0010】
[2]包装材料基材の表面に熱接着剤層を介して付着防止用の粒子被覆層が形成されると共に、
該粒子被覆層が、疎水性湿式シリカ粒子と、乾式シリカ粒子との混合組成物からなり、
かつ、該粒子被覆層の前記熱接着層側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子の相互間の間隙に前記熱接着剤層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料。
【0011】
[3]前記乾式シリカ粒子は、疎水性乾式シリカ粒子または親水性乾式シリカ粒子からなる前項[1]または[2]に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0012】
[4]前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50〜99重量%未満含み、残りが乾式シリカ粒子からなる前項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0013】
[5]前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0014】
[6]前記熱接着剤層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−不飽和エステル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂のうちの1種または2種以上からなる接着樹脂成分と、ワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方を必須成分として含む樹脂組成物からなる前項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0015】
[7]前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方または合計の配合量が1〜50重量%である前項[6]に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0016】
[8]前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の融点または軟化点が80℃以上である前項[6]または[7]に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【0017】
[9]前記包装材料基材が容器本体の基材であり、その内側表面に付着防止用の前記粒子被覆層が形成されてなる前項[1]〜[8]のいずれか1項に記載の容器。
【0018】
[10]包装基材の表面に、熱接着剤層を塗布形成したのち、該熱接着剤層上に、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子との混合組成物を有機分散媒に分散させて調製した分散液を塗布し、乾燥させて内容物付着防止用の粒子被覆層を形成することを特徴とする非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【0019】
[11]包装材料基材の表面に、熱接着剤層を塗布形成したのち、該熱接着剤層上に、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子との混合組成物を有機分散媒に分散させて調製した分散液を塗布し乾燥させて前記混合組成物からなる内容物付着防止用の粒子被覆層を形成し、
次いで、前記熱接着剤層形成成分の溶融開始温度(軟化点)より高い温度で加熱処理を施すことにより、前記粒子被覆層の前記熱接着剤層側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子の粒子相互間の間隙に前記熱接着剤層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層を形成すると共に、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層を残存形成せしめることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【0020】
[12]前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50〜99重量%未満含み、残りが乾式シリカ粒子からなる前項[10]または[11]に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【0021】
[13]前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである前項[10]〜[12]のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【0022】
[14]前記加熱処理は、温度85〜220℃、時間3〜120secの熱処理条件で行う前項[10]〜[13]のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
前記[1]項に記載の発明においては、内容物付着防止のための粒子被覆層が、湿式シリカ粒子に疎水性を付与した疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子との混合組成物によって構成されたものとなされている。従って、互いの粒子のもつ固有の長所を生かしつつ他方の粒子で短所を補って、結果的に優れた付着防止性能の確保はもとより、熱安定性を向上し、粒子層の基材層に対する密着性ないし付着安定性に優れた包装材料を得ることができる。
【0024】
即ち、疎水性湿式シリカ粒子は後述するように、疎水性乾式シリカ粒子に較べて相対的に優れた内容物付着防止性能を有すると共に、熱安定性にも優れる一面、粒子径が大きいことに起因して下地の熱接着剤層に対する密着性の点では相対的に劣る。これに対し、乾式シリカ粒子は、その一次粒子が数ナノ〜数10ナノレベルの超微細なものであることから、それ自体の凝集力が大きく、塗工工程で分散媒を除去すると多孔質の凝集層を形成するという特徴を有しており、かつ熱接着剤層との接点も多くなるため、該熱接着剤層に対する密着力ないし結合力に優れる反面、熱影響を受けた際の付着防止性能の安定維持性つまり熱安定性ないし耐熱性に劣る。
【0025】
ここに、本発明においては、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性乾式シリカ粒子を併用することで、主として前者の疎水性湿式シリカ粒子によって所要の付着防止性能と熱安定性を良好に確保しながら、乾式シリカ粒子で上記湿式シリカ粒子を拘束し、かつ熱接着剤層に対する密着力を補うことができ、ひいては前述のように付着防止性能、熱安定性、密着力のいずれにもより一層優れた付着防止用粒子被覆層を備えた包装用材料を得ることができる。
【0026】
また、前記[2]項のように、例えば適宜の加熱処理を施すことによって前記粒子被覆層の一部に含浸密着強化層を形成することにより、各粒子間の間隙に入り込んで固化した熱接着剤層の構成成分、殊に低粘度、低分子量成分によって愈々強固に湿式シリカ粒子を拘束固定しながら、粒子被覆層のそれ自体をアンカー効果によって熱接着剤層に固着することができる。しかも外表面側に少なくとも疎水性湿式シリカ粒子が露出した付着防止層が残存形成されることで、疎水性湿式シリカ粒子のもつ固有の良好な撥水性に加えて、粒子被覆層の外表面に形成される当該湿式シリカ粒子の配列によるやや粗い凹凸構造及び多孔質の当該湿式シリカ粒子自体がもつ表面の微細な凹凸構造とも相俟って、愈々優れた付着防止性能を発現する。この付着防止性能は、乾式シリカ粒子に疎水性のものを選択使用する場合には、それによっても更に向上することが期待されるが、親水性の乾式シリカ粒子を用いる場合にあっても、実験結果によれば付着防止効果はほとんど低下することなく良好に維持できる。従って、この[2]項の発明においても前記[1]項の発明と同様に、乾式シリカ粒子は、疎水性または親水性のいずれを用いても良いし、併用しても良い。
【0027】
ここに、前記[3]項に記載のように、乾式シリカ粒子として疎水性のものを用いる場合には、付着防止効果を阻害する懸念が少ない。一方、親水性のものを用いる場合には、熱接着剤層との密着性の一層の向上を期待できる。従って、容器に収容される内容物の種類により、包装材料に求められる両性能の優先程度を考慮して、乾式シリカ粒子に疎水性のものを用いるかまたは親水性のものを用いるかを任意に選択すれば良い。
【0028】
前記[4]項に記載の配合比率に示すように、疎水性湿式シリカ粒子を主体とする混合組成物を用いて粒子被覆層を形成することにより、良好な付着防止性能を確実に確保することができる。乾式シリカ粒子の配合量は、その量に見合った密着性の改善効果をあらわすものであるから、求められる密着力を考慮して少なくとも1重量%以上〜50重量%未満の範囲で適宜に決定しうる。
【0029】
また、前記[5]項に記載のような平均粒径を有する湿式および乾式シリカ粒子を用いることにより、市場から入手しやすい比較的安価な材料をもって前記の諸効果を確実に達成することができる。
【0030】
また、前記[6]項に記載のように、熱接着剤層を特定種類の接着樹脂成分と、ワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方を必須成分として含む樹脂組成物からなるものとすることにより、前記諸効果を良好かつ確実に奏するものとすることができる。
【0031】
また、前記[7]項および[8]項に記載のように、前記樹脂組成物にワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方を所定量含有するものとし、好ましくは更にそれらの軟化点または融点が80℃以上のものを選定することにより、前記[6]項の効果に加えて、更に、付着防止用の粒子被覆層の熱安定性ないし耐熱性を良好なものとなしうると共に、前記[2]項のように含浸密着強化層を形成する場合に、その効果を一層確実に達成しうるものとなすことができる。
【0032】
また、前記[9]項に記載の製造方法によれば、前記[1]項の効果を有する包装材料を得ることができるのはもとより、特に、粒子被覆層の形成を、疎水性湿式シリカ粒子と乾式シリカ粒子との混合組成物を有機分散媒に分散させて調製した分散液の塗布、乾燥によって行うので、均一な粒子被覆層を比較的安易に形成しうると共に、乾燥工程時に分散媒が揮散されるにしたがって粒径の小さい乾式シリカ粒子が粒子被覆層の下部の熱接着剤層側に集まり、沈み込んでその分布密度を高めつつ多孔質の凝集層を形成する傾向を示す。その結果該乾式シリカ粒子の層が相対的に粒径の大きな湿式シリカ粒子の一部をとり囲んで拘束し固定化する。つまり湿式シリカ粒子が乾式シリカ粒子の凝集層に部分的に埋まった構造を形成し、ひいては粒子被覆層の密着性を一層向上する効果を発現する。
【0033】
また、前記[10]項に記載のように、含浸密着強化層を形成する場合には、前記[2]項および前項[9]の効果を併有する一段と卓越した諸特性を備えた包装材料を比較的安易に製造しうる。
【0034】
殊に、乾式シリカ粒子からなる多孔質の凝集層は、加熱処理によって熱接着剤層が溶融すると、その低粘度、低分子量成分が粒子相互間の空隙に入り込み易い。一方、粒径の大きな疎水性シリカ粒子は、熱接着剤層と点で接触するため、元来熱接着剤層成分が入り込む接点が少ないが、乾式シリカ粒子との混合組成物として層形成が行われることにより、湿式シリカ粒子が乾式シリカ粒子の多孔質層を介して熱接着剤層との間接的な接点が増え、該湿式シリカ粒子にも熱接着剤層成分が比較的浸入しやすい構造となる。その結果、湿式シリカ粒子を含む粒子被覆層の全体に十分に強固な密着力を確保することができる。
【0035】
また、疎水性湿式シリカ粒子の場合、上記の直接あるいは間接接点から熱接着剤層の樹脂成分が入り込むと、粒子内部の空隙が均一であることによって、全体に比較的入り込みやすいのに対し、隣り合う湿式シリカ粒子相互間の間隙には樹脂成分が入り込みにくい。これは粒子間の間隙が大きく、毛細管現象が起こりにくいためと考えられる。その結果、粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも疎水性湿式シリカ粒子の表面が樹脂成分で覆われることなく露出した付着防止層の確実な残存形成を簡単に行うことができる。
【0036】
また、前記[11]項及び[12]項に記載の配合比率及び平均粒径のシリカ粒子の選択により、前記[4]項及び[5]項の効果を奏する包装材料を得ることができる。
【0037】
更にまた前記[13]項に記載の条件下での加熱処理を施すことにより、ヒートシール層として利用されることもある熱接着剤層の各種材料の選択使用のもとにおいて、いずれの場合にも付着防止層を確実に残存形成せしめながら含浸密着強化層の形成を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明による非付着性表面を有する包装材料の用途の一例としてのカップ状成形容器の断面図である。
【図2】図2は上記包装材料の積層構成の一例を示す断面図である。
【図3】図3は本発明による包装材料の内面側の付着防止用粒子被覆層の構成を模式的に示す模式断面図であり、図2に対し上下を反転して示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、ヨーグルト等の包装用に広く用いられているカップ型成形容器(P)を示しており、その構成材料として用いられる包装材料基材(1)の積層構成の一例として、図2では紙(2)の両面にたとえばポリエチレンフィルム(3)(4)をラミネートした紙/ポリエチレン積層材を示している。包装材料基材(1)としては、このような積層材料のほかに成形容器用としてのポリスチレン成形体、あるいは包装袋用としてのPETフィルム等のポリエステル系フィルム、ナイロン、アルミ箔、OPPフィルム等の基材フィルムないしシートと、CPPフィルムやポリエチレンフィルム等のシーラントフィルムないしシーラント層との種々の組合せからなる積層材など、多種多様な材料を挙げることができる。
【0040】
本発明に係る包装材料は、上記基材(1)の少なくとも一面、即ち被包装内容物と接することになる面に、熱接着剤層(5)を介して内容物付着防止用の粒子被覆層(6)が形成される。
【0041】
熱接着剤層(5)の材料は、特に限定されない。例えば、ラッカータイプのヒートシール剤、ホットメルト剤あるいは公知のシーラントフィルムを用いることができる。好適には、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−不飽和エステル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂のうちの1種または2種以上からなる接着樹脂成分と、ワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方を必須成分として含む樹脂組成物からなるものを用いることができる。また、この場合、当該樹脂組成物中のワックスおよび粘着付与剤は、それらのうちの少なくとも一方または合計の配合量を1〜50重量%に設定すると共に、それらの融点または軟化点が80℃以上であるものを採用することが望ましい。配合量が1重量%未満では、それらの添加効果を十分に享受することができず、50重量%を超えて過多に含有すると、加熱処理により、あるいはヒートシール時等に受ける熱影響によって粒子被覆層(6)の付着防止性能が損なわれるおそれが生じる。また、それらの融点または軟化点が80℃未満であると、やはり粒子被覆層(6)の撥水性、ひいては付着防止効果の熱安定性が損なわれるおそれがある。好ましくは、上記配合量において10〜40重量%の範囲に設定し、融点または軟化点において90〜120℃のものを選択使用することが望ましい。
【0042】
さて、本発明の主たる特徴事項とする前記の付着防止用の粒子被覆層(6)は、疎水性湿式シリカ粒子(A)と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子(B)との混合組成物から構成されるものである。
【0043】
上記混合組成物における疎水性湿式シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の配合割合は、粒子被覆層(6)表面に良好な撥水性、非付着性を確保するためには、湿式シリカ粒子の方を相対的に多く含むものとなされる。即ち、湿式シリカ粒子(A)の配合量を50〜99重量%未満とし、乾式シリカ粒子の配合量を残りの1〜50重量%未満に設定される。特に好ましくは、前者の疎水性湿式シリカ粒子の配合割合を60〜80重量%とし、残りの20〜40重量%程度を後者の乾式シリカ粒子によるものとすることが望ましい。疎水性湿式シリカ粒子(A)の配合量が50重量%未満では、良好な付着防止性能およびその熱安定性を得ることができない。一方、99重量%を超えると、相対的に乾式シリカ粒子の配合量が過少なものとなるため、それによる粒子被覆層(6)の密着性の向上効果を得ることができない。好ましい配合割合は、湿式シリカ粒子(A):乾式シリカ粒子(B)において、60〜80:40〜20の配合比率の範囲である。
【0044】
上記の疎水性湿式シリカ微粒子(A)は、湿式法によって製造される合成非晶質シリカである湿式シリカ粒子の表面の水酸基に有機ケイ素化合物を化学的に反応させて疎水性を付与した粒子である。
【0045】
湿式シリカは、乾式シリカと比較して、表面シラノール基が多く、ひいては表面をシラン類やシリコーン類で疎水化処理した後の疎水性粒子においても、乾式シリカに較べて優れた撥水性、疎水性を示す。また、細孔のない微細な一次粒子の凝集体である一次凝集粒子を最小単位とする乾式シリカ粒子に較べ、湿式シリカ粒子は、粒子径が大きいだけでなく、粒子径に対しての比表面積が大きく、細孔容積、吸油量も大きい。これらのこともまた、付着防止層の性能の向上に大きく寄与するものと考えられる。
【0046】
疎水性湿式シリカ粒子の粒径は、製造段階で種々の大きさのものを製造することが可能であるが、本発明の適用においては、平均粒径が0.5〜7.0μmの範囲のものを用いるべきである。平均粒径が0.5μm未満の微粒子を用いるときは、概して、ヒートシール性に悪影響を及ぼさないような少ない塗布量、付着量の範囲において良好な内容物付着防止効果を得ることができない。逆に7.0μmを超えるような粗大な粒子を用いるときは、熱接着剤層(5)との密着性が悪いものとなるのみならず、ヒートシール性を阻害する。好ましくは、平均粒径が1.0〜5.0μm、更に好ましくは2.0〜5.0μmの範囲のものを用いるのが良い。
【0047】
一方、乾式シリカ粒子(B)は、火炎法等により極微細な一次粒子の凝集体として製造されるものであり、その一次粒子の平均粒径が3〜50nmのものを好適に使用しうる。平均粒径が3nm未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコスト面からも不利である。他方、一次粒子の平均粒径が50nmを超える粗い乾式シリカでは、粒子被覆層(6)の密着性の向上効果に乏しい。特に好ましくは一次粒子の平均粒径が5〜40nm、更に好ましくは6〜30nmの乾式シリカ粒子である。
【0048】
また、乾式シリカ粒子(B)は、前述のように疎水性のもののほか、要すれば親水性のものでも使用可能であり、更にはそれらを併用することもできる。疎水性のものを用いるときは、その表面撥水性によって付着防止性能の向上を期待できるが、親水性乾式シリカ粒子を用いても、特にその量が少ない場合、あるいは後述するように加熱処理によって粒子被覆層(6)に含浸密着強化層(6a)を形成する場合には、付着防止性能を格別阻害しないので、支障なく使用可能である。後者の場合には、むしろ含浸密着強化層(6a)の形成に役立ち、密着力の向上に寄与しうる。
【0049】
粒子被覆層(6)の形成は、液体分散媒中に疎水性湿式シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の混合組成物の所定量を均一に分散させて分散液を調製し、これを蓋材本体の熱接着剤層(5)の外面に塗布し、乾燥させることによって好適に行うことができる。
【0050】
分散液の調製は、上記シリカ粒子の混合組成物を水または有機液体分散媒を用いて分散させて所定濃度のコロイド溶液とするものであるが、分散媒には特に極性基を有する有機分散媒を用いるのが好ましい。なかでもアルコール類の使用が好適であり、特にコスト、安全性、撥水性の発現効果等の面からメタノール又はエタノールの使用が好適である。
【0051】
分散液の塗工は、公知の任意の方法を採用しうる。例えば、グラビアコート法、吹き付け、バーコート法、あるいは浸漬法等を任意に採用しうる。
【0052】
分散液の塗布量は、粒子付着層の所望の厚みに応じて設定すればよいが、乾燥後重量で0.3〜3.0g/m程度が好ましく、0.5〜1.2g/mがより好ましい。
【0053】
塗布後の乾燥はもとより自然乾燥させても良いが、生産性、熱接着剤層との密着性を高めるためには加熱乾燥することが望ましい。その場合の乾燥条件としては、温度80〜140℃、時間5〜30秒の範囲に設定することが望ましい。
【0054】
上記のような塗工、即ち塗布および乾燥工程によって形成された粒子被覆層(6)は、それ自体で既に優れた表面撥水性を有し、所期される付着防止性能を有することはもちろん、熱安定性および密着性にも優れたものとなる。
【0055】
即ち、主成分として疎水性の湿式シリカ粒子(A)を多く含むことにより、該疎水性湿式シリカ粒子のもつ固有の良好な撥水性に加えて、図3に見られるように、粒径の大きな該湿式シリカ粒子(A)が粒子被覆層(6)の表面に突出して形成される粗い凹凸構造と、多孔質の湿式シリカ自体のもつその表面の微細な凹凸構造によって優れた非付着性、付着防止効果が確保される。
【0056】
そしてまた、この内容物付着防止性能は、熱安定性に優れ、高温にさらされることがあっても高い付着防止性能を良好に維持しうる。この理由は、次のように考えられる。即ち、湿式シリカ粒子は、粒径がミクロンサイズで大きく、なかでも本発明では平均粒径が0.5〜7.0μmのものが用いられることにより、熱接着剤層が溶融しても、疎水性シリカ粒子が接着剤層内に沈み込みにくい。加えて、湿式法シリカ粒子は乾式シリカの場合と違って元来それ自体が多孔質であり、比表面積が高く、細孔容積や吸油量が大きい。このため、熱接着剤層が溶融したときにそれに含まれるワックスやロジンのような低融点、低分子量成分を湿式シリカ粒子自体が急速に吸着し、粒子間の隙間が溶融接着剤成分で埋まってしまうのを防止する。従って、上記粒子間の隙間が維持され、ひいては該粒子の疎水性表面の露出面積の極端な減少を防いで良好な内容物付着防止効果を維持することによるものと考えられる。
【0057】
一方、上記粒子被覆層(6)には、所定量の乾式シリカ粒子(B)が含まれる。乾式シリカ粒子(B)は、製造段階で一次粒子がランダムに融着結合した一次凝集体粒子においてもその粒径はせいぜい300nm程度以下の微小な粒子である。従って、粒子の分散液を塗布したのち、乾燥する工程で分散媒が揮散除去されるにしたがって、粒径の小さい乾式シリカ粒子(B)はそれ自体のもつ強い凝集力とも相俟って熱接着剤層(5)の表面上に多孔質の凝集層を形成する。その結果、該凝集層は、熱接着剤層(5)に対して多くの接点で結合し、良好な密着力を示す一方、粒径の比較的大きな疎水性湿式シリカ粒子(A)の特に熱接着剤層(5)側に近い部分が上記凝集層中に一部埋まり込んだ状態となる。このため、湿式シリカ粒子(A)はその一部をとり囲まれる乾式シリカ粒子(B)によって拘束固定され、結果的に湿式および乾式シリカ粒子(A)(B)の混合組成物からなる粒子付着層(6)のそれ自体、熱接着剤層(5)に対して良好な密着力をもつものとなる。
【0058】
本発明の最良の実施形態においては、上記による粒子被覆層(6)の形成後、更に所定の加熱処理を施すことにより、図3に模式図として示すように、該粒子被覆層(6)の前記熱接着剤層(5)側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子(A)(B)の粒子相互間の間隙に前記熱接着剤層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層(6a)が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層(6a)が残存形成されたものとなされる。
【0059】
粒子被覆層(6)の塗工形成後、熱接着剤層(5)の溶融開始温度以上の温度で積層体を加熱すると、熱接着剤層(5)中の特に低融点成分、低粘度成分、低分子量成分が流動化し、微細な多孔質構造をなす乾式シリカ粒子(B)の凝集層の空隙内および湿式粒子(A)との間の空隙内に入り込む一方、これに伴って多孔質の湿式シリカ粒子(A)のそれ自体の内部にも入り込んで固化し、含浸密着強化層(6a)を形成する。従って、粒子被覆層(6)は、上記含浸密着強化層(6a)によって熱接着剤層(5)と一体的に結合され、その密着力を強固なものにする。
【0060】
ただ、上記の加熱処理による密着強化層(6a)の形成は、粒子被覆層(6)の最外表面部に、少なくとも疎水性湿式シリカ粒子(A)の表面が上記溶融成分によって覆われることなく露出した付着防止層(6b)の部分を残存形成せしめうる条件下で行われなければならない。
【0061】
しかも、この付着防止層(6b)を形成する残存粒子量は、0.1〜1.2g/mの範囲となるように、熱封緘層(5)の成分組成や粒子被覆層(6)の塗布量等との相関を考慮して熱処理条件が決められるべきである。付着防止層(6b)の残存粒子量が0.1g/m未満では、所期する良好な付着防止性能を発現させることができない。逆に1.2g/mを超えると、粒子被覆層(6)の密着性が悪くなり、シリカ粒子の脱落、剥離のおそれが増大する。好ましい残存粒子量の範囲は、概ね0.3〜1.0g/mである。
【0062】
ここに、付着防止層(6b)を形成する上記の残存粒子量の測定は、所定面積に切り出した試料片の粒子被覆層(6)側の表面を、アルコールをしみ込ませた脱脂綿などで拭取り、拭取り前後の試料片の重量差から求めることができる。
【0063】
上記加熱処理は、熱接着剤層(5)に用いられている材料との関係を考慮して、少なくとも該熱接着剤層(5)の溶融開始温度より高い温度で行うことが必要であり、好ましくはそれより更に50℃以上高い温度で行うことが望ましい。この加熱温度は、加熱時間とも相関するが、一般的に好ましい加熱処理条件は、温度85〜220℃、×時間3〜120secであり、特に好ましくは温度100〜180℃、×時間10〜60secである。もっとも、粒子被覆層(6)の最外表面部分は、粒径の大きい隣接する湿式粒子(A)(A)間の間隔が大きいため、毛細管現象に似た浸透現象が生じにくく、ひいては付着防止層(6b)が形成され易い。このことは、加熱処理時の熱処理条件の緩和を可能にするので、当該加熱処理の工程管理を簡易化する。ひいてはまた、疎水性シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の混合組成比率の変化によって、密着強化層(6a)と付着防止層(6b)のそれぞれの形成領域の範囲を容易に制御調整することができる。
【0064】
疎水性湿式シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の併用による粒子被覆層(6)に更に上記の通り熱接着剤層成分が含浸した密着強化層(6a)部分を形成した蓋材にあっては、該層(6a)を形成しないものに較べて更に一段と優れた密着性の向上効果を享受しうる。
【0065】
なお、含浸密着強化層(6a)の形成のために行う上記の加熱処理は、シリカ粒子の分散液の塗布、乾燥後に、独立した別工程として行うことにより、最も好ましい条件での工程管理を行い易いが、作業工程の簡素化をはかるために塗布後の乾燥工程と加熱処理工程を同時に、あるいはまた連続して行うものとしても良い。
【0066】
また、本発明の熱接着剤層は、包装材料基材自体がその非付着性表面処理側の面に熱接着性の熱可塑性樹脂組成物層を有しているものである場合には、この樹脂層をもって粒子被覆層担持用の上記熱接着剤層にそのまま利用するものとしても良い。従って、この場合の本発明における包装材料基材の用語は、上記の熱可塑性樹脂層を含まない材料部分を指称するものとする。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例との対比において示す。
【0068】
包装材料基材として、レトルトパウチ包装袋用のシート状積層材料(試料No.1〜15、18〜21)と、カップ状成形容器用の積層材料(試料No.16,17,22)との2種類を用意し、それぞれについて下記a,bのとおり加工して各種の試料を作製した。
【0069】
a.パウチ
(熱接着剤層の形成)
PET(ポリエチレンテレフタレート)/Ny(ナイロン)/CPP(ポリプロピレン)の積層体からなる包装袋用の基材を用意し、これのCCP側の面に表1のNo.1〜15、18〜21に示す各種組成のヒートシール剤を塗布し、いずれも塗布量5g/m2の熱接着剤層を形成した。
【0070】
(粒子被覆層の形成)
次いで、この熱接着剤層上に、表1に示す各種配合組成のシリカ粒子による粒子被覆層を形成した。この粒子被覆層の形成は、疎水性湿式シリカ粒子A(I)またはA(II)と、疎水性乾式シリカ粒子B(I)または親水性乾式シリカ粒子(II)とを、表1に示す各種の配合比率のもとに混合し、これらの混合組成物をエタノール中に均一に分散させて調製した各種の分散液を、前記熱接着剤層の外面にグラビアコート法により塗布し、かつ強制乾燥して表1に示す各種の塗布量(乾燥後重量)に形成したものである。強制乾燥は、いずれも温度100℃×時間15秒の乾燥条件で行った。
【0071】
(熱処理)
上記により得られた試料のうちNo.18の試料を除く他の試料について、表1に示す熱処理条件で熱処理を施した。
【0072】
そして、この熱処理後において、電子顕微鏡(SEM)観察により各試料について粒子被覆層の熱接着剤層側に、該熱接着剤成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成されていることを確認したのち、その上に残存している付着防止層部分の粒子量、即ち、シリカ粒子の表面が上記熱接着剤層成分で覆われることなく疎水性表面をそのまま露出しているものと認められる残存粒子群による付着防止層の粒子量を調べ、表1に「残存付着防止層」の粒子量として併記した。
【0073】
ここに、この残存付着防止層の粒子量の測定は、前述の方法で行ったものである。
【0074】
(パウチの作製)
そして、上記により得た試料No.1〜15、18〜21の各種のシート状包装材料を用い、粒子被覆層側の面を内側にした食品包装用の三方袋(内寸:横10cm×縦12cm)を作製した。
【0075】
b.カップ状成形容器
(容器本体の作製)
表1の試料No.16,17,22については、厚紙の一方の面に密度0.922g/cmのポリエチレンによる厚さ20μmの外面コート層を形成すると共に、容器の内側になる他方の面にエチレン−酢酸ビニル共重合体とワックスと粘着付与剤との混合組成物からなる厚さ40μmの熱接着剤層兼内面コート層を形成したPE/紙/EVA積層体からなるカップ状容器成形用材料をつくり、これを胴部材及び底部材に用いて口径88mmの紙製カップ状容器本体を作製した。
【0076】
(粒子被覆層の形成)
次いで、上記カップ状容器本体の内面側に、表1に示す配合組成によるシリカ粒子分散液をスプレーで噴きかけ、かつ100℃×15秒の加熱条件で強制乾燥を行って、表1に示す各種の塗布量による粒子被覆層を形成した。
【0077】
(熱処理)
最後に、表1に示すように180℃×15秒の熱処理を施した。
【0078】
そして、この熱処理後において、前記同様に含浸密着強化層の形成を確認すると共に、付着防止層を形成している残存シリカ粒子量を測定し、表1に併記した。
【0079】
なお、上記a,bの熱接着剤層および粒子被覆層の構成材料としては、それぞれ下記の材料を用いた。
【0080】
(熱接着剤層構成材料)
酸変性ポリオレフィン樹脂
酸変性PO:酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マイレン酸グラフト変性
変性率1.0%)
エチレン−不飽和エステル共重合体
EVA :エチレン−酢酸ビニル共重合体(190℃のMFR20g/10分、
酢酸ビニル含有量20%)
ワックス(WX)
WX(I):融点125℃のポリエチレンワックス
WX(II):融点75℃のポリエチレンワックス
粘着付与剤(TF)
TF(I):石油系水添樹脂 融点115℃
【0081】
(粒子被覆層構成材料)
疎水性湿式シリカ粒子(A)
A(I) :疎水性湿式シリカ 平均粒径 2.7μm
A(II) :疎水性湿式シリカ 平均粒径 3.9μm
乾式シリカ粒子(B)
B(I) :疎水性乾式シリカ 一次粒子平均粒径 7nm
BET法による比表面積 220m2/g
B(II) :親水性乾式シリカ 一次粒子平均径 7nm
BET法による比表面積 300m2/g
【0082】
[評価試験]
(1)付着防止性能
上記のa,bの各試料No.1〜22によって得られたパウチおよびカップ状容器に、それぞれアロエヨーグルト(商標:森永乳業株式会社製)約85gを入れ、10分間冷蔵庫内で静置保管したのち、パウチ及び容器をゆっくりと傾け、最終的には逆さにして内容物ヨーグルトを他の容器に移し替えた。
【0083】
そして、この移し替え後のパウチ内面及び容器内面に付着残存しているヨーグルトの量を調べ次の基準で判定評価した。
【0084】
◎・・・2g以下
○・・・2.1g以上4g以下
×・・・4.1g以上
【0085】
(2)密着性
No.1〜22の各試料の平面材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布の表面に付着したシリカ粒子の有無を目視で検査した。
【0086】
そして、黒い布上におけるシリカ粒子の転移付着量(剥離量)により下記の評価基準で評価した。
【0087】
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる僅かな付着あり
×・・・明らかに多くの付着あり
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表2の「付着防止性能」の試験結果に示すように、本発明による包装材料においては、ヨーグルトを代表的な例として、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物に対し、該内容物の付着防止効果に優れたものであることを確認し得た。しかも「密着性」試験の結果に見られるように、付着防止用粒子被覆層の密着性が良好で、不本意な分離脱落、部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って非付着性、特に内容物付着防止性能を安定に維持しうると共に、容器内への異物混入のおそれもないものであることを確認し得た。
【符号の説明】
【0091】
1・・・基材
2・・・紙
3・・・ポリエチレンフィルム
4・・・ポリエチレンフィルム
5・・・熱接着剤層
6・・・付着防止用粒子被覆層
6a・・密着強化層
6b・・付着防止層
A・・・疎水性湿式シリカ粒子
B・・・乾式シリカ粒子
P・・・成形容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材料基材の表面に熱接着剤層を介して付着防止用の粒子被覆層が形成されると共に、
該粒子被覆層が、疎水性湿式シリカ粒子と、乾式シリカ粒子との混合組成物からなることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料。
【請求項2】
包装材料基材の表面に熱接着剤層を介して付着防止用の粒子被覆層が形成されると共に、
該粒子被覆層が、疎水性湿式シリカ粒子と、乾式シリカ粒子との混合組成物からなり、
かつ、該粒子被覆層の前記熱接着層側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子の相互間の間隙に前記熱接着剤層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料。
【請求項3】
前記乾式シリカ粒子は、疎水性乾式シリカ粒子または親水性乾式シリカ粒子からなる請求項1または2に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項4】
前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50〜99重量%未満含み、残りが乾式シリカ粒子からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項5】
前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項6】
前記熱接着剤層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−不飽和エステル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂のうちの1種または2種以上からなる接着樹脂成分と、ワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方を必須成分として含む樹脂組成物からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項7】
前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の少なくともいずれか一方または合計の配合量が1〜50重量%である請求項6に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項8】
前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の融点または軟化点が80℃以上である請求項6または7に記載の非付着性表面を有する包装材料。
【請求項9】
前記包装材料基材が容器本体の基材であり、その内側表面に付着防止用の前記粒子被覆層が形成されてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
包装基材の表面に、熱接着剤層を塗布形成したのち、該熱接着剤層上に、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子との混合組成物を有機分散媒に分散させて調製した分散液を塗布し、乾燥させて内容物付着防止用の粒子被覆層を形成することを特徴とする非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【請求項11】
包装材料基材の表面に、熱接着剤層を塗布形成したのち、該熱接着剤層上に、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性または親水性の乾式シリカ粒子との混合組成物を有機分散媒に分散させて調製した分散液を塗布し乾燥させて前記混合組成物からなる内容物付着防止用の粒子被覆層を形成し、
次いで、前記熱接着剤層形成成分の溶融開始温度(軟化点)より高い温度で加熱処理を施すことにより、前記粒子被覆層の前記熱接着剤層側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子の粒子相互間の間隙に前記熱接着剤層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層を形成すると共に、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層を残存形成せしめることを特徴とする非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【請求項12】
前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50〜99重量%未満含み、残りが乾式シリカ粒子からなる請求項10または11に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【請求項13】
前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである請求項10〜12のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。
【請求項14】
前記加熱処理は、温度85〜220℃、時間3〜120secの熱処理条件で行う請求項10〜13のいずれか1項に記載の非付着性表面を有する包装材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103751(P2013−103751A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249601(P2011−249601)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】