説明

非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトン類、その製造方法、およびその合成中間体

【課題】本発明は、香質に優れ、特徴のあるムスク様香気を有する新規大環状化合物およびその製造方法を提供すること、ならびに新規大環状化合物を用いて新規香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品を提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物。
[式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。ただしmが0〜4または6〜10の整数のときnは1〜11の整数を表す。また、mが5のときnは1または3〜11の整数を表す。]
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な天然型非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトン化合物、その製造方法、およびその製造中間体に関する。詳細には、ムスク様香気を有する大環状トリエンラクトン化合物、その製造方法、およびその製造中間体に関する。さらには、大環状トリエンラクトン化合物を含有する香料組成物、ならびに該化合物または該香料組成物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用製品などの製品に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ムスク香料は古くから高価な香料として珍重されている。しかしながら、動物起源のムスク香料は動物保護の観点から入手困難であり、植物起源のムスク香料は天候などに左右されやすく安定な供給が難しい。そこでムスク香を有する合成化合物が重要とされている。現在知られているムスク香を有する天然由来の大環状ラクトンとしては、アンゲリカ根油より見出されているExaltolide、アンブレット種子油より見出されているAmbrettolideがある。また、合成品の大環状ラクトンとしてはCyclohexadecanolide及びCyclopentadecenolide(Habanolide)等がある。
Ambrettolideをはじめとする大環状モノエンラクトンの合成法としては、分子内Wittig反応を用いた合成法(非特許文献1)、threo−Aleuritic acidから出発する合成法(非特許文献2)、オレフィンメタセシス反応を用いた合成法(非特許文献3)、そして9E−Isoambrettolideの合成法(特許文献1)などが知られている。また、大環状ジエンラクトンの合成法としては分子内Wittig反応を用いた2E,8E−11−Methylcycloundecadien−11−olideの合成法(非特許文献1)、オレフィンメタセシス反応を用いた合成法が知られている(特許文献2)。大環状トリエンラクトンとしては2E,10E,12E−Cycloheptadecatrien−17−olideが報告されている(非特許文献4)。
【0003】
また、特許文献3には、ω―ヒドロキシトリインエステル類として、13−ヒドロキシ−5,8,11−トリデカトリイン酸メチルエステル(下記式M6)が記載されている。
【0004】
【化1】

【0005】
特許文献4には、ω―ヒドロキシトリインエステル類として、14−ヒドロキシ−5,8,11−テトラデカトリイン酸メチルエステル(下記式5)が記載されている。また、ω―ヒドロキシトリエンエステル類として、14−ヒドロキシ−5,8,11−テトラデカトリエン酸メチルエステル(下記式6)が記載されている。
【0006】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3681395号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/039675号
【特許文献3】特表2008−515978号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/122089号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Synthesis(1989),p.419−423
【非特許文献2】Synthesis(1987),p.154−155
【非特許文献3】第51回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 講演要旨集p.199−201
【非特許文献4】Asian Journal of chemistry(2005),p.859−870
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように種々の大環状ラクトンやその合成が報告されている。しかしながら、非共役トリエン構造を有する大環状ラクトン類及びその合成法については知られていない。
また、特許文献3及び特許文献4に記載される化合物が香料化合物製造の中間体として有用であることについては記載されていない。
【0010】
従って本発明の目的は、このような要求を満足する、香質に優れ、特徴のあるムスク様香気を有する新規大環状化合物およびその製造方法を提供することである。本発明の他の目的は上記特性を有する大環状化合物を含有する香料組成物を提供することである。さらには、該化合物または該香料組成物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一般式(1)で表される天然型非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトンが特徴のあるムスク香気を有することを見出した。
すなわち、本発明は、下記に関する。
〔1〕 一般式(1)で表される化合物。
【0012】
【化3】

【0013】
[式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。ただしmが0〜4または6〜10の整数のときnは1〜11の整数を表す。また、mが5のときnは1または3〜11の整数を表す。]
〔2〕 全てのC=C二重結合がZ配置であることを特徴とする上記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕 ムスク香を有することを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の化合物。
〔4〕 一般式(2)で表されるω−ヒドロキシトリインエステル類
【0014】
【化4】

【0015】
[式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す]を水素化する工程、及び
該水素化により得られる一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類
【0016】
【化5】

【0017】
[式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。]をラクトン化する工程を含む、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【0018】
【化6】

【0019】
[式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。]
〔5〕 一般式(1)で表される化合物の全てのC=C二重結合がZ配置であることを特徴とする上記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕 得られる一般式(1)で表される化合物のうち、全てのC=C二重結合がZ配置である化合物が95%以上であることを特徴とする上記〔4〕または〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕 前記一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類を、チタン酸エステルを使用してラクトン化することを特徴とする上記〔4〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔8〕 下記一般式(2)で表されるω―ヒドロキシトリインエステル類。
【0020】
【化7】

【0021】
[式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし、m=3かつn=1かつR=メチル基である化合物、及びm=3かつn=2かつR=メチル基である化合物は除く。]
〔9〕 下記一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類
【0022】
【化8】

【0023】
[式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし、m=3かつn=2かつR=メチル基である化合物は除く。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。]
〔10〕 全てのC=C二重結合がZ配置である上記〔9〕に記載のω―ヒドロキシトリエンエステル類。
〔11〕 上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の化合物を含有する香料組成物。
〔12〕 上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の化合物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品。
〔13〕 上記〔11〕に記載の香料組成物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一般式(1)で表される化合物、すなわち非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトンは、ムスク様香気を有し、特にフルーツ様、フローラル様、クリーミー様、アニマル様などの特徴のあるムスク様香気を有する。そのため、該化合物は、そのまま単独で又は香料組成物の形態にして、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品などの各種製品に有効に使用することができ、さらには、各種製品に所望の香気・香味を付与することができる。
【0025】
また、本発明の製造方法は、一般式(1)で表される化合物のうち、香気的に特に優れた全てのC=C二重結合がZ配置である一般式(1)の化合物を選択的に、かつ高純度で、工業的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願において「重量%」及び「重量部」は、それぞれ「質量%」及び「質量部」と同義である。
以下、本発明の非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトンについて具体的に説明する。
【0027】
<一般式(1)の化合物>
本発明の非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトンは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0028】
【化9】

【0029】
式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。mが0〜4または6〜10の整数のときnは1〜11の整数を表す。また、mが5のときnは1または3〜11の整数を表す。
【0030】
一般式(1)の化合物としては、15員環、16員環、および17員環の化合物が好ましい。
15員環の化合物としては、特に、一般式(1)において、(m=0、n=5)、(m=1、n=4)、(m=2、n=3)、(m=3、n=2)、および(m=4、n=1)の化合物が好ましい。
16員環の化合物としては、特に、一般式(1)において、(m=0、n=6)、(m=1、n=5)、(m=2、n=4)、(m=3、n=3)、(m=4、n=2)、および(m=5、n=1)の化合物が好ましい。
17員環の化合物としては、特に、一般式(1)において、(m=0、n=7)、(m=1、n=6)、(m=2、n=5)、(m=3、n=4)、(m=4、n=3)、および(m=6、n=1)の化合物が好ましい。
【0031】
上記一般式(1)の化合物としては、具体的には、
m=4かつn=1である6,9,12−tetradecatrien−14−olide、
m=4かつn=2である6,9,12−pentadecatrien−15−olide、
m=5かつn=1である7,10,13−pentadecatrien−15−olide、
m=3かつn=4である5,8,11−hexadecatrien−16−olide、および
m=4かつn=3である6,9,12−hexadecatrien−16−olide、
が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、一般式(1)の化合物は、3つの全てのC=C二重結合がZ配置である化合物(以下、全てのC=C二重結合がZ配置である化合物を「Z体」という)が香質および拡散性の観点から好ましい。
具体的には、
m=4かつn=1である(6Z,9Z,12Z)−tetradecatrien−14−olide、
m=4かつn=2である(6Z,9Z,12Z)−pentadecatrien−15−olide、
m=5かつn=1である(7Z,10Z,13Z)−pentadecatrien−15−olide、
m=3かつn=4である(5Z,8Z,11Z)−hexadecatrien−16−olide、および
m=4かつn=3である(6Z,9Z,12Z)−hexadecatrien−16−olide、
が挙げられる。
【0033】
一般式(1)の化合物のZ体は、3つのC=C二重結合がZ配置の化合物(Z体)の他に、一般的には、3つのC=C二重結合がE配置の化合物(E体)、1つのC=C二重結合がE配置であり2つのC=C二重結合がZ配置の化合物、及び1つのC=C二重結合がZ配置であり2つのC=C二重結合がE配置の化合物の混合物で構成され得るが、香質および拡散性の観点から、Z体が95%以上であることが好ましい。
【0034】
これらの化合物群はそれぞれ特徴的で魅力的なムスク様香気を有する。特徴的で魅力的なムスク様香気とは、例えばフルーツ様、フローラル様、クリーミー様、アニマル様などのムスク香気を指す。
【0035】
(製造方法)
次に、下記一般式(1)で表される本発明の非共役トリエン構造を有する大環状トリエンラクトンの製造方法について説明する。
【0036】
本発明では、一般式(2)で表されるω−ヒドロキシトリインエステル類を水素化する工程、及び該水素化により得られる一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類をラクトン化する工程を含む製造方法により、上記一般式(1)で表される化合物を製造する。
【0037】
【化10】

【0038】
式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。
【0039】
【化11】

【0040】
式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。
【0041】
【化12】

【0042】
式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。
【0043】
一般式(1)で表される化合物の製造方法の具体的な説明を、以下のスキーム1にそって行う。
以下の説明では、一般式(2)および一般式(3)のRをメチル基として説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0044】
<スキーム1>
以下、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を表す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。
【0045】
【化13】

【0046】
まず、クロロヒドリン(I)とアルキンカルボン酸エステル(II)のカップリング反応によりω−ヒドロキシジインエステル(III)を得る。この際に使用する溶媒としては、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載することがある)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられる。反応温度としては好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃である。反応時間としては0.5〜100時間が挙げられるが、好ましくは3〜60時間である。
【0047】
反応助剤として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの塩基とヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウムなどのヨウ化物が用いられる。また、反応触媒としてヨウ化銅がクロロヒドリン(I)に対して0.01〜2当量、好ましくは0.2〜1当量用いられる。
【0048】
得られたω−ヒドロキシジインエステル(III)を臭素化してブロモジインエステル(IV)とした後、アルキンアルコール(V)とのカップリング反応によりω−ヒドロキシトリインエステル類(2)を得る。ω−ヒドロキシジインエステル(III)の臭素化はジクロロメタン溶媒中、四臭化炭素及びトリフェニルホスフィンを用いて行うことができるがこれに限定されるものではない。
【0049】
得られたブロモジインエステル(IV)とアルキンアルコール(V)のカップリング反応は上記記載のクロロヒドリン(I)とアルキンカルボン酸エステル(II)のカップリング反応と同様の条件にて行うことができる。またブロモジインエステル(IV)の代わりに塩素化物、ヨウ素化物、メシレート及びトシレートが使用できることは言うまでもない。
【0050】
次に、一般式(2)で表されるω−ヒドロキシトリインエステル類を水素化して、一般式(3)で表されるω−ヒドロキシトリエンエステル類を得る。
水素化は、アミンの存在下ホウ化ニッケルを触媒として行うことが好ましい。これにより、選択的にZ体が得られる。また、リンドラー触媒等用いてもZ体を選択的に得ることができる。
水素化触媒として用いられるホウ化ニッケルの量はω−ヒドロキシトリインエステル類(2)に対して好ましくは0.1〜5当量、より好ましくは0.5〜2当量である。
【0051】
水素化に使用するアミンとしてはキノリン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミンなどが挙げられ、Z体の選択性を上げるためにエチレンジアミンを使用することが特に好ましい。使用するアミンの量としてはω−ヒドロキシトリインエステル類(2)に対して好ましくは0.1〜10当量、より好ましくは1〜6当量である。
【0052】
水素化に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。使用する溶媒の量は基質であるω−ヒドロキシトリインエステル類(2)の重量(g)に対して好ましくは3〜100倍容量(ml)(以下、[溶媒ml/基質g]との単位を「倍容量」とも記載する。)、より好ましくは20〜70倍容量である。
【0053】
水素化反応温度は好ましくは0〜50℃、より好ましくは10〜40℃である。反応時間は好ましくは0.5〜10時間である。反応圧力としては好ましくは大気圧〜10気圧であり、より好ましくは大気圧である。
【0054】
次に、得られた一般式(3)で表されるω−ヒドロキシトリエンエステル類をラクトン化することにより、Z体である一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
ラクトン化は、例えば、チタン酸エステル触媒を用いて、溶媒中、還流することにより行うことができる。
【0055】
チタン酸エステルとしては、例えば、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)オクタデシロキシドなどが挙げられる。使用するチタン酸エステルの量は、基質であるω−ヒドロキシトリエンエステル類(3)に対して好ましくは0.01〜10当量、より好ましくは0.1〜1当量である。
【0056】
ラクトン化に用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。使用する溶媒量としては、基質であるω−ヒドロキシトリエンエステル類(3)に対して好ましくは1〜2000倍容量であり、より好ましくは200〜1000倍容量である。
ラクトン化の反応温度としては好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは80〜150℃である。反応時間としては好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは3〜10時間である。
【0057】
また、上記したラクトン化以外に、一般式(3)で表されるω−ヒドロキシトリエンエステル類を加熱してオリゴマーとした後、減圧下、加熱して解重合することによるいわゆる重合・解重合することによっても、一般式(1)のZ体化合物を得ることができる。
【0058】
上記の製造方法では、一般式(1)で表わされる化合物においてZ体が選択的に高純度で得られる。とくに、95%以上のZ体を得ることができる。
【0059】
上記説明した製造方法により得られる一般式(1)の化合物としては、具体的には、
m=5かつn=2である(7Z,10Z,13Z)−hexadecatrien−16−olide、
m=4かつn=1である(6Z,9Z,12Z)−tetradecatrien−14−olide、
m=4かつn=2である(6Z,9Z,12Z)−pentadecatrien−15−olide、
m=5かつn=1である(7Z,10Z,13Z)−pentadecatrien−15−olide、
m=3かつn=4である(5Z,8Z,11Z)−hexadecatrien−16−olide、および
m=4かつn=3である(6Z,9Z,12Z)−hexadecatrien−16−olide、
が挙げられる。
【0060】
上記製造方法によって製造されたZ体の一般式(1)で表される化合物はムスク香気を有する。特に、フルーツ様、フローラル様、クリーミー様、アニマル様といった特徴的なムスク香気を有する。
【0061】
<一般式(2)および一般式(3)で表される化合物>
次に、上記説明した一般式(1)で表される化合物の製造方法における中間体である、本発明に係る一般式(2)および一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0062】
一般式(2)で表されるω−ヒドロキシトリインエステル類は下記に示される。
【0063】
【化14】

【0064】
式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい1価炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0065】
一般式(3)で表されるω−ヒドロキシトリエンエステル類は下記に示される。
【0066】
【化15】

【0067】
式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。
【0068】
一般式(3)で表される化合物としては、3つ全てのC=C二重結合がZ配置であるものが好ましく、とくに3つのC=C二重結合がZ配置である化合物が95%以上であることが好ましい。
【0069】
一般式(2)および一般式(3)のRである炭素数6〜20の1価芳香環基、及び置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基について説明する。
【0070】
炭素数6〜20の1価芳香環基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基、およびナフチル基等が挙げられる。また、好ましい炭素数は6〜10である。
置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基としては、直鎖または分岐の炭化水素基、環状の炭化水素基があげられ、炭素―炭素不飽和結合を含んでいてもよい。また、好ましい炭素数は1〜12である。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基、2−ブテニル基等を挙げることができる。
アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等を挙げることができる。
シクロアルキル基の例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオキチル基等を挙げることができる。
シクロアルケニル基の例としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等を挙げることができる。
炭素数1〜20の1価炭化水素基に置換できる置換基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基及びナフチル基などが挙げられる。
【0071】
一般式(2)および一般式(3)において、Rはメチル基、エチル基などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
一般式(2)および一般式(3)において、mは0〜10、nは1〜11である。
一般式(2)および一般式(3)において、(m=0、n=5)、(m=1、n=4)、(m=2、n=3)、(m=3、n=2)、(m=4、n=1)である化合物は、一般式(1)の15員環の化合物の中間体として好ましい。
一般式(2)および一般式(3)において、(m=0、n=6)、(m=1、n=5)、(m=2、n=4)、(m=3、n=3)、(m=4、n=2)、(m=5、n=1)である化合物は、一般式(1)の16員環の化合物の中間体として好ましい。
一般式(2)および一般式(3)において、(m=0、n=7)、(m=1、n=6)、(m=2、n=5)、(m=3、n=4)、(m=4、n=3)、(m=5、n=2)、(m=6、n=1)である化合物は、一般式(1)の17員環の化合物の中間体として好ましい。
【0073】
一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、
m=5かつn=2かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−7,10,13−triynoate、
m=4かつn=1かつR=メチルであるMethyl 14−hydroxytetradeca−6,9,12−triynoate、
m=4かつn=2かつR=メチルであるMethyl 15−hydroxypentadeca−6,9,12−triynoate、
m=5かつn=1かつR=メチルであるMethyl 15−hydroxypentadeca−7,10,13−triynoate、
m=3かつn=4かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−5,8,11−triynoate、
m=4かつn=3かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−6,9,12−triynoate、
が挙げられる。
【0074】
一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、
m=5かつn=2かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoate、
m=4かつn=1かつR=メチルであるMethyl 14−hydroxytetradeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate、
m=4かつn=2かつR=メチルであるMethyl 15−hydroxypentadeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate、
m=5かつn=1かつR=メチルであるMethyl 15−hydroxypentadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoate、
m=3かつn=4かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−(5Z,8Z,11Z)−trienoate、
m=4かつn=3かつR=メチルであるMethyl 16−hydroxyhexadeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate、
が挙げられる。
【0075】
一般式(2)および一般式(3)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物を製造する際の中間体として有用である。
また、一般式(2)においてm=3かつn=1かつR=メチル基である化合物、および一般式(2)及び(3)においてm=3かつn=2かつR=メチル基である化合物以外は新規化合物である。
【0076】
<飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用製品>
本発明の一般式(1)で表される化合物は、香料化合物として、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品などの各種製品の香気・香味付けに用いることができる。
【0077】
本発明の一般式(1)で表される化合物によって香気・香味付けすることのできる飲食品としては、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;饅頭、羊羹、ウイロウなどの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;パン類;緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、クマザサ茶、桑茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶、コーヒー、ココアなどの茶飲料または嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープなどのスープ類;風味調味料;各種インスタント飲料または食品類;各種スナック食品類などを挙げることができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物によって香気付けすることのできる香粧品としては、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品などを挙げることができる。
より具体的には、
フレグランス製品としては、例えば、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなど;
基礎化粧品としては、例えば、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど;
仕上げ化粧品としては、例えば、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムーバーなど;
頭髪化粧品としては、例えば、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など;
日焼け化粧品としては、例えば、サンタン製品、サンスクリーン製品など;
薬用化粧品としては、例えば、制汗剤、アフターシェービングローション、ジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料など;が挙げられる。
【0078】
本発明の一般式(1)で表される化合物によって香気・香味付けすることのできる日用・雑貨品としては、例えば、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨、シェービング製品、スキンケア製品、忌避剤、煙草製品などを挙げることができる。
より具体的には、
ヘアケア製品としては、例えば、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックなど;
石鹸としては、例えば、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など;
身体洗浄剤としては、例えば、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど;
浴用剤としては、例えば、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなど;
洗剤としては、例えば、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸など;
柔軟仕上げ剤としては、例えば、ソフナー、ファーニチャーケアなど;
洗浄剤としては、例えば、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤など;
台所用洗剤としては、例えば、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤など;
漂白剤としては、例えば、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤など;
エアゾール剤としては、例えば、スプレータイプ、パウダースプレなど;
消臭・芳香剤としては、例えば、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど;
雑貨としては、例えば、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど;
シェービング製品としては、例えば、シェービングフォームなど;
スキンケア製品としては、ハンドクリーム、ボディクリーム、ボディーローションなど;
を挙げることができる。
【0079】
本発明の一般式(1)で表される化合物によって香気・香味付けすることのできる口腔用製品としては、例えば、歯磨き剤、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類などを挙げることができる。
【0080】
本発明の一般式(1)で表される化合物の飲食品における含有量は、飲食品の全重量に対して、好ましくは1×10−10〜0.01重量%、より好ましくは1×10−7〜0.001重量%とすることができる。
【0081】
本発明の一般式(1)で表される化合物の香粧品における含有量は、香粧品の全重量に対して、好ましくは0.00001〜0.3重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%とすることができる。
【0082】
本発明の一般式(1)で表される化合物の日用・雑貨品における含有量は、日用・雑貨品の全重量に対して、好ましくは0.00001〜0.3重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%とすることができる。
【0083】
本発明の一般式(1)で表される化合物の口腔用製品における含有量は、口腔用製品の全重量に対して、好ましくは1×10−7〜0.001重量%、より好ましくは1×10−5〜0.0001重量%とすることができる。
【0084】
<香料組成物>
本発明の一般式(1)で表される化合物は、他の香料成分と共に香料組成物とすることができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物と共に含有し得る他の香料成分としては、合成香料;精油、オレオレジン、エキストラクト、動物性香料等の天然香料などをあげることができる。
【0085】
本発明の香料組成物に用いられる合成香料としては、従来から香気・香味を付与する目的で使用されているものであれば特に制限されなく、例えば、「合成香料 化学と商品知識」(1996年3月6日発行 印藤元一著、化学工業日報社)、「Perfume and Flavor Chemicals(Aroma Chemicals)1,2」(Steffen Arctender(1969))等に記載の香料成分をあげることができる。
合成香料としては、例えば、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素化合物、含硫化合物類および酸類からなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0086】
エステル類としては、例えば、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、ギ酸オクチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸ジメチルウンデカジエニル、酢酸スチラリル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸テトラヒドロムゴール、酢酸ラバンジュリル、酢酸ネロリドール、酢酸ジヒドロクミニル、酢酸テルピニル、酢酸シトリル、酢酸ノピル、酢酸ジヒドロテルピニル、酢酸2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルメチル、酢酸ミラルディル、酢酸ベチコール、プロピオン酸デセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸アニシル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸オクチル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ネリル、イソ吉草酸リナリル、イソ吉草酸テルピニル、イソ吉草酸フェニルエチル、2−メチル吉草酸2−メチルペンチル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチル、3−ヒドロキシヘキサン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸リナリル、ノナン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、安息香酸リナリル、ケイヒ酸メチル、アンゲリカ酸イソプレニル、ゲラン酸メチル、クエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、2−ヘキシルアセト酢酸エチル、ベンジルアセト酢酸エチル、2−エチル酪酸アリル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、2,4−デカジエン酸エチル、2,4−デカジエン酸プロピル、アントラニル酸メチル及びリナリル、N−メチルアントラニル酸エチル等を挙げることができる。
【0087】
アルコール類としては、例えば、3−ヘプタノール、1−ノナノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、10−ウンデセン−1−オール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、ホートリエノール、3−ツヤノール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、3−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、2,6−ジメチルヘプタノール、1−デカノール、トランス−2−ヘキセノール、シス−4−ヘキセノール、メチルトリメチルシクロペンテニルブテノール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、ロジノール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、テトラヒドロリナロール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、イソプレゴール、メントール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、カルベオール、ジヒドロカルベオール、ペリラアルコール、4−ツヤノール、ミルテノール、α−フェンキルアルコール、ファルネソール、ネロリドール、セドレノール、アニスアルコール、ヒドロトロパアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、アミルシンナミックアルコール等を挙げることができる。
【0088】
アルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、シトラール、ジメチルオクタナール、α−メチレンシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ネラール、α−あるいはβ−シネンサール、マイラックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブタナール、2−ペンテナール、トランス−2−ヘプテナール、トランス−2−ノネナール、2,6−ジメチル−5−ペプテナール、2,4−ウンデカジエナール、トリメチルデカジエナール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、サフラナール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−イソプロピルフェニルアセトアルデヒド、p−メチルヒドロトロパアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド、2−メチル−3−(4−メチルフェニル)プロパナール、シクラメンアルデヒド、シンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、p−メチルフェノキシアセトアルデヒド、アセトアルデヒドジエチルアセタール、シトロネリルメチルアセタール、アセトアルデヒド 2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、2−ヘキセナールジエチルアセタール、シス−3−ヘキセナールジエチルアセタール、ヘプタナールジエチルアセタール、2−ヘキシル−5−メチル−1,3−ジオキソラン、シトロネラールシクロモノグリコールアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等を挙げることができる。
【0089】
ケトン類としては、例えば、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、ファルネシルアセトン、2,3,5−トリメチル−4−シクロヘキセニル−1−メチルケトン、ネロン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、アセトフェノン、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピン、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2,3−ヘキサジオン、3−ノナノン、エチルイソアミルケトン、ジアセチル、アミルシクロペンテノン、2−シクロペンチルシクロペンタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、シス−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、トリメチルペンチルシクロペンタノン、2−(2−(4−メチル)−3−シクロヘキセン−1−イル)プロピルシクロペンタノン、ダマスコン、α−ダイナスコン、トリメチルシクロヘキセニルブテノン、ヨノン、メチルヨノン、アリルヨノン、プリカトン、カシュメラン、l−カルボン、メントン、カンファー、p−メチルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、ベンジリデンアセトン、ラズベリーケトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、フルフラールアセトン、ホモフロノール、マルトール、エチルマルトール、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタール等を挙げることができる。
【0090】
フェノール類としては、例えば、チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテル、アネトール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、クレオゾール、ベラトロール、ヒドロキノンジメチルエーテル、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルグアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、エチルイソオイゲノール、tert−ブチルヒドロキノンジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0091】
エーテル類としては、例えば、デシルビニルエーテル、α−テルピニルメチルエーテル、イソプロキセン、2,2−ジメチル−5−(1−メチル−1−プロペニル)−テトラヒドロフラン、ローズフラン、1,4−シネオール、ネロールオキサイド、2,2,6−トリメチル−6−ビニルテトラヒドロピラン、メチルヘキシルエーテル、オシメンエポキシド、リモネンオキサイド、ルボフィクス、カリオフィレンオキサイド、リナロールオキサイド、5−イソプロペニル−2−メチル−2−ビニルテトラヒドロフラン、ネロールオキサイド、ローズオキサイド等を挙げることができる。
【0092】
ラクトン類としては、例えば、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ジャスンミラクトン、メチルγ−デカラクトン、7−デセノラクトン、ジャスモラクトン、プロピリデンフタリド、δ−ヘキサラクトン、δ−2−デセノラクトン、ε−ドデカラクトン、ジヒドロクマリン、クマリン等を挙げることができる。
【0093】
炭化水素類としては、例えば、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセン、アロオシメン、ミルセン、ファルネセン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、テルピノーレン、p−サイメン、セドレン、β−カリオフィレン、カジネン等を挙げることができる。
【0094】
含窒素化合物又は含硫化合物類としては、例えば、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、N−2’−メチルペンチリデンアントラニル酸メチル、リガントラール、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、3,7−ジメチル−2,6−ノナジエノニトリル、インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1−p−メンテン−8−チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス−3−ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8−メルカプトメントン等を挙げることができる。
【0095】
酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸、2−メチル酪酸、2−エチル酪酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3−メチル吉草酸、2−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−メチルヘプタン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、乳酸、ピルビン酸、シクロヘキサンカルボン酸等を挙げることができる。
【0096】
上記合成香料は、市場で容易に入手可能であり、必要により容易に合成することもできる。上記天然香料に関しても、市販品を用いることもできるし、通常用いられる方法で容易に抽出精製することができる。
【0097】
香料組成物中の本発明の一般式(1)で表される化合物の含有量は、香料組成物の種類や目的に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、通常香料組成物全体の好ましくは1×10−8〜50重量%、より好ましくは5×10−6〜5重量%とするとよい。
【0098】
本発明の香料組成物は、香料担体をさらに含むことができる。本発明に用いられる香料担体としては、液体担体でもよいし、固体担体であってもよい。
【0099】
液体担体としては、例えば、水;エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどの低級アルコール;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチンなどが挙げられる。
【0100】
固体担体としては、例えば、アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)、賦形剤(ゼラチン、デキストリンなど)、包接剤(シクロデキストリンなど)が挙げられる。
【0101】
本発明の香料組成物はまた、天然ガム質類、界面活性剤などの固体担体に可溶化または乳化分散させて可溶化状または分散状にしてもよい。あるいは、アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて、本発明の香料組成物を被膜形成した粉末状にしてもよいし、カプセル化剤で処理してマイクロカプセルにしてもよい。さらに、シクロデキストリンなどの包接剤に包接して、本発明の香料組成物を安定化すると共に徐放性にしてもよい。
なお、これらの香料担体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明の香料組成物は、香料保留剤をさらに含むことができる。
本発明に用いられる香料保留剤としては、グリセリン、グリセリド、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、ジエチルフタレートなどの通常香料組成物の香料保留剤として公知の材料が挙げられる。
これらの香料保留剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
本発明の香料組成物は、さらにα−トコフェロール、BHT等の酸化防止剤を含むことができる。
【0104】
本発明の香料組成物を用いて、前記した各種製品を香気・香味付けする場合は、香気・香味付けする製品の種類や製品の最終形態(例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などの製品形態)に応じて適宜選択すればよい。
本発明の香料組成物を用いて各種製品に香気・香味付けを行う場合の本発明の香料組成物の使用量は、各種製品の種類または形態、製品に求められる香気・香味付け効果または作用などに応じて調整することができる。
【0105】
飲食品に使用する場合には、一般的には、本発明の香料組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量を、飲食品の全重量に対して、好ましくは1×10−10〜0.01重量%、より好ましくは1×10−7〜0.001重量%となるように調整する。
【0106】
香粧品に使用する場合には、一般的には、本発明の香料組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量を、香粧品の全重量に対して、好ましくは0.00001〜0.3重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%となるように調整する。
【0107】
日用・雑貨品に使用する場合には、一般的には、本発明の香料組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量を、日用・雑貨品の全重量に対して、好ましくは0.00001〜0.3重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%となるように調整する。
【0108】
口腔用製品に使用する場合には、一般的には、本発明の香料組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量を、口腔用製品の全重量に対して、1×10−7〜0.001重量%、より好ましくは1×10−5〜0.0001重量%となるように調整する。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において物性等の測定に用いた装置は次のとおりである。
【0110】
NMR測定装置: DRX 500(Bruker社)
ガスクロマトグラフ: GC 353B(GL サイエンス)
キャピラリーカラム : TC−1(15m×0.53mm)
カラム温度 : 100→250℃(10℃/分 昇温)
インジェクション温度 : 250℃
ディテクター温度 : 250℃
【0111】
実施例1〜6の合成フロー
【化16】

【0112】
(実施例1)
(7Z,10Z,13Z)−Hexadecatrien−16−olide[式(1); m=5,n=2]の合成
【0113】
(A)Methyl 12−Hydroxydodeca−7,10−diynoate[(III); m=5]の合成
4−Chloro−2−butyn−1−ol(I) 23.00g(0.22mol)、Methyl 7−Octynoate(II) 33.93g(0.22mol)、KCO 30.41g(0.22mol)、NaI 32.98g(0.22mol)、およびCuI 20.95g(0.11mol)をDMF 440mlに添加し、30℃にて48時間攪拌した。反応液を飽和NHCl水溶液(以下、sat.NHClaq.と記す)(200ml)中へ加えてクエンチ後、酢酸エチル抽出し、水洗した。濃縮後シリカゲルカラム精製し(Hexane/酢酸エチル=8/2〜4/6(容量比))、GC純度93.3%のMethyl 12−Hydroxydodeca−7,10−diynoateを30.97g(収率59.1%th)得た。構造はNMRで確認した。
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
4.26(2H,s),3.68(3H,s),3.18(2H,t,J=2.3Hz), 2.33(2H,t,J=7.5Hz),2.15−2.19(2H,m),1.80(1H,bs),1.40−1.67(6H,m).
【0114】
(B)Methyl 12−Bromododeca−7,10−diynoate[(IV); m=5]の合成
上記(A)で得られたMethyl 12−Hydroxydodeca−7,10−diynoate 30.97g(0.139mol)及び四臭化炭素69.31g(0.209mol)をジクロロメタン500mlに添加した。この溶液を氷冷下攪拌し、トリフェニルホスフィン 54.82g(0.209mol)を1時間で添加した。添加後、室温で1時間攪拌して反応を終了した。反応液を減圧濃縮後、セライト濾過し、ケーキをエーテル洗浄した。エーテル溶液を濃縮後シリカゲルカラム精製し(Hexane/酢酸エチル=9/1〜6/4(容量比))、GC純度94.2%のMethyl 12−Bromododeca−7,10−diynoateを30.08g(収率76.5%th)得た。構造はNMRで確認した。
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
3.92(2H,s),3.67(3H s),3.20−3.23(2H,m),2.32(2H,t,J=7.5Hz),2.15−2.19(2H,m),1.36−1.67(6H,m).
【0115】
(C)Methyl 16−Hydroxyhexadeca−7,10,13−triynoate[式(2); m=5,n=2,R=メチル]の合成
上記(B)で得られたMethyl 12−Bromododeca−7,10−diynoate 30.08g(純度94.2%,0.105mol)、3−Butyn−1−ol(V)8.83g(0.126mol)、KCO 14.51g(0.105mol)、NaI 15.74g(0.105mol)、及びCuI 10.00g(0.0525mol)をDMF(200ml)に添加し、30℃にて28時間攪拌した。反応液をsat.NHClaq.(80ml)中へ加えてクエンチ後、酢酸エチル抽出し、水洗した。濃縮後シリカゲルカラム精製し(Hexane/酢酸エチル=7/3〜4/6(容量比))、GC純度95.3%のMethyl 16−Hydroxyhexadeca−7,10,13−triynoateを21.70g(収率75.9%th)得た。構造はNMRで確認した。
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
3.71(2H,t,J=6.3Hz),3.67(3H,s),3.15−3.17(2H,m),3.12−3.14(2H,m),2.43−2.46(2H,m),2.32(2H,t,J=7.6Hz),2.14−2.18(2H,m),1.85(1H,bs),1.38−1.67(6H,m).
【0116】
(D)Methyl 16−Hydroxyhexadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoate[式(3); m=5,n=2,R=メチル]の合成
(CHCOO)Ni・4HO 19.66g(0.079mol)を95%エタノール1000mlに添加し、さらに 1M NaBH エタノール溶液79mlを添加し、NiBのエタノール溶液を調製した。上記(C)で得られたMethyl 16−Hydroxyhexadeca−7,10,13−triynoate 21.70g(0.079mol)及びEthylenediamine 19.00g(0.316mol)をエタノール50mlに添加し、この溶液を先程調製したNiBのエタノール溶液に加えて1時間水素化した。
触媒を濾別し、濾液をイソプロピルエーテル抽出、飽和食塩水洗浄した。濃縮後カラム精製し(Hexane/酢酸エチル=7/3〜4/6(容量比))、GC純度96.1%のMethyl 16−Hydroxyhexadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoateを14.73g(収率67.0%th)得た。構造はNMRで確認した。
H NMR(500MHz,CDCl) δppm :
5.33−5.44(6H,m),3.67(3H,s),3.63−3.65(2H,m),2.79−2.86(2H,m),2.29−2.39(4H,m),2.02−2.09(2H,m),1.66(1H,bs),1.58−1.65(2H,m),1.29−1.40(6H,m).
【0117】
(E)(7Z,10Z,13Z)−Hexadecatrien−16−oide[式(1);m=5,n=2]の合成
上記(D)で得られたMethyl 16−Hydroxyhexadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoate 14.72g(52.5mmol)及びチタン(IV)イソプロポキシド(Ti(i−PrO))7.44g(26.2mmol)をトルエン9000mlに添加し、8時間還流した。冷却後、水を加えてクエンチし、飽和食塩水洗浄した。濃縮後カラム精製し(Hexane/酢酸エチル=95/5(容量比))、GC純度96.8%の(7Z,10Z,13Z)−Hexadecatrien−16−oideを8.29g(収率64.0%th)得た。構造はNMRで確認した。
H NMR(500MHz,CDCl) δ ppm :
5.55−5.35(6H,m),4.16(2H,t,J=5.9Hz),2.85(2H,t,J=6.7Hz),2.81(2H,t,J=6.3Hz),2.38−2.41(2H,m),2.29(2H,t,J=7.1Hz),2.04−2.08(2H,m),1.62−1.67(2H,m),1.32−1.37(4H,m).
【0118】
(実施例2)
(6Z,9Z,12Z)−Tetratadecatrien−14−olide[式(1); m=4,n=1]の合成
(II)の化合物としてMethyl 6−Heptynoate、(V)の化合物として2−Propyn−1−olを用いる以外は、実施例1と同様にして、(6Z,9Z,12Z)−Tetradecatrien−14−olideを合成した。各工程の生成物の純度とNMRの結果を下記に示す。
【0119】
Methyl 14−Hydroxytetradeca−6,9,12−triynoate[式(2);m=4,n=1,R=メチル]
GC純度96.7%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
4.26(2H,s),2.08(3H,s),3.20−3.21(2H,m),3.12−3.14(2H,m),2.10−2.35(1H,bs),2.34(2H,t,J=7.6Hz),2.17−2.21(2H,m),1.70−1.74(2H,m), 1.51−1.54(2H,m).
【0120】
Methyl 14−Hydroxytetradeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate[式(3);m=4,n=1,R=メチル]
GC純度96.2%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.33−5.66(6H,m),4.19(2H,m),3.68(3H,s),2.77−2.88(4H,m),2.31(2H,t,J=7.5Hz),2.06−2.10(2H,m),2.02−2.05(1H,bs),1.36−1.43(4H,m).
【0121】
(6Z,9Z,12Z)−Tetradecatrien−14−olide[式(1) ; m=4 ,n=1]
GC純度97.7%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
5.34−5.69(6H,m),4.61−4.63(2H,m),2.93−2.95(2H,m),2.80−2.82(2H,m),2.38−2.41(2H,m), 1.99−2.04(2H,m),1.72−1.77(2H,m),1.36−1.42(2H,m).
【0122】
(実施例3)
(6Z,9Z,12Z)−Pentadecatrien−15−olide[式(1); m=4,n=2]の合成
(II)の化合物としてMethyl 6−Heptynoateを用いる以外は、実施例1と同様にして、(6Z,9Z,12Z)−Pentadecatrien−15−olideを合成した。各工程の生成物の純度とNMRの結果を下記に示す。
【0123】
Methyl 15−Hydroxypentadeca−6,9,12−triynoate[式(2);m=4,n=2,R=メチル]
GC純度97.8%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
3.71(2H,t,J=6.2Hz),3.68(3H,s),3.12−3.19(4H,m),2.43−2.46(2H,m),2.33(2H,t,J=7.5Hz),2.17−2.21(2H,m),1.90−2.15(1H,bs),1.69−1.75(2H,m),1.51−1.36(2H,m).
【0124】
Methyl 15−Hydroxypentadeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate[式(3);m=4,n=2,R=メチル]
GC純度98.1%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.35−5.67(6H,m),3.67(3H,s),3.64−3.68(2H,m),2.80−2.87(4H,m),2.30−2.39(4H,m),2.04−2.11(2H,m),2.04−2.11(1H,bs),1.36−1.43(4H,m).
【0125】
(6Z,9Z,12Z)−Pentadecatrien−15−olide[式(1);m=4,n=2]
GC純度98.0%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.33−5.55(6H,m),4.16−4.19(2H,m),2.80−2.85(2H,m),2.37−2.42(2H,m),2.27−2.34(2H,m),2.04−2.10(2H,m),1.65−1.70(2H,m),1.32−1.44(4H,m).
【0126】
(実施例4)
(7Z,10Z,13Z)−Pentadecatrien−15−olide[式(1);m=5,n=1]の合成
(V)の化合物として2−Propyn−1−olを用いる以外は、実施例1と同様にして、(7Z,10Z,13Z)−Pentadecatrien−15−olideを合成した。各工程の生成物の純度とNMRの結果を下記に示す。
【0127】
Methyl 15−Hydroxypentadeca−7,10,13−triynoate[式(2);m=5,n=1,R=メチル]
GC純度96.5%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
4.26(2H,s),3.67(3H,s),3.12−3.21(4H,m),2.33(2H,t,J=7.6Hz),2.31−2.34(1H,bs),2.15−2.19(2H,m),1.39−1.67(6H,m).
【0128】
Methyl 15−Hydroxypentadeca−(7Z,10Z,13Z)−trienoate[式(3);m=5,n=1,R=メチル]
GC純度95.3%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.33−5.55(6H,m),4.23−4.24(2H,m),2.07(3H,s),2.79−2.88(4H,m),2.31(2H,t,J=7.5Hz),2.04−2.09(2H,m),1.48−1.61(1H,bs),1.32−1.67(6H,m).
【0129】
(7Z,10Z,13Z)−Pentadecatrien−15−olide[式(1);m=5,n=1]
GC純度96.2%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.31−5.73(6H,m),4.54−4.59(2H,m),2.79−2.94(2H,m),2.30−2.38(2H,m),1.99−2.07(2H,m),1.61−1.70(2H,m),1.29−1.47(6H,m).
【0130】
(実施例5)
(5Z,8Z,11Z)−Hexadecatrien−16−olide[式(1);m=3,n=4]の合成
(II)の化合物としてMethyl 5−Hexynoate、(V)の化合物として5−Hexyn−1−olを用いる以外は、実施例1と同様にして、(5Z,8Z,11Z)−Hexadecatrien−16−olideを合成した。各工程の生成物の純度とNMRの結果を下記に示す。
【0131】
Methyl 16−Hydroxyhexadeca−5,8,11−triynoate[式(2);m=3,n=4,R=メチル]
GC純度91.9%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
3.66−3.70(2H,m),3.68(3H,s),3.12−3.14(4H,m),2.44(2H,t,J=7.5Hz),2.19−2.25(4H,m),1.78−1.85(2H,m),1.78−1.85(1H,bs),1.55−1.70(4H,m).
【0132】
Methyl 16−Hydroxyhexadeca−(5Z,8Z,11Z)−trienoate[式(3);m=3,n=4,R=メチル]
GC純度91.1%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
5.34−5.43(6H,m),3.67(3H,s),3.65(2H,t,J=6.6Hz),2.79−2.82(4H,m),2.33(2H,t,J=7.5Hz),2.06−2.14(4H,m),2.06−2.14(1H,bs),1.67−1.74(2H,m),1.41−1.57(4H,m).
【0133】
(5Z,8Z,11Z)−Hexadecatrien−16−olide[式(1);m=3,n=4]
GC純度96.9%
H NMR(500MHz,CDCl) δppm:
4.12−4.17(6H,m),4.16(2H,t,J=6.1Hz),2.79−2.82(4H,m),2.33−2.36(2H,m),2.07−2.11(4H,m),1.68−1.73(4H,m),1.43−1.49(4H,m).
【0134】
(実施例6)
(6Z,9Z,12Z)−Hexadecatrien−16−olide[式(1);m=4,n=3]の合成
(II)の化合物としてMethyl 6−Heptynoate、(V)の化合物として4−Pentyn−1−olを用いる以外は、実施例1と同様にして、(6Z,9Z,12Z)−Hexadecatrien−16−olideを合成した。各工程の生成物の純度とNMRの結果を下記に示す。
【0135】
Methyl 16−Hydroxyhexadeca−6,9,12−triynoate[式(2);m=4,n=3,R=メチル]
GC純度95.4%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
3.75(2H,t,J=6.2Hz),3.67(3H,s),3.13−3.14(4H,m),2.33(2H,t,J=7.4Hz),2.28−2.31(2H,m),2.17−2.21(2H,m),1.65−1.90(1H,bs),1.69−1.78(4H,m),1.51−1.56(2H,m).
【0136】
Methyl 16−Hydroxyhexadeca−(6Z,9Z,12Z)−trienoate[式(3);m=4,n=3,R=メチル]
GC純度95.4%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
5.35−5.65(6H,m),3.67(3H,s),3.64−3.66(2H,m),2.80−2.83(4H,m),2.31−2.34(2H,m),2.07−2.19(4H,m),2.07−2.19(1H,bs),1.62−1.68(4H,m),1.35−1.42(2H,m).
【0137】
(6Z,9Z,12Z)−Hexadecatrien−16−olide[式(1);m=4,n=3]
GC純度96.1%
H NMR(500MHz,CDCl)δppm:
5.32−5.47(6H,m),4.09−4.11(2H,m),2.81−2.84(4H,m),2.36(2H,t,J=7.2Hz),2.04−2.21(4H,m),1.34−1.74(6H,m).
【0138】
(実施例7)官能評価
実施例1〜6で製造した一般式(1)のZ体化合物について、専門パネラーにより香りの官能評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
本発明の一般式(1)で表される化合物は特有のムスク香を有していた。
【0141】
(実施例8)香料組成物の調製
表2の処方に従い、フルーティー・フローラルタイプの香料組成物を調製した。
【0142】
【表2】

【0143】
(実施例9)シャンプーの調製
実施例8にて調製したフルーティー・フローラルタイプの香料組成物を賦香率0.3%にて添加したシャンプーを常法により調製した。処方内容を表3に示す。得られたシャンプーは好適にムスク香を有していた。
【0144】
【表3】

【0145】
(実施例10) コンディショナーの調製
実施例8にて調製したフルーティー・フローラルタイプの香料組成物を賦香率0.3%にて添加したコンディショナーを常法により製造した。処方内容を表4に示す。得られたコンディショナーは好適にムスク香を有していた。
【0146】
【表4】

【0147】
(実施例11) 香料組成物の調製
下表5の処方に従い、香料組成物を調製した。
【0148】
【表5】

【0149】
(実施例12)炭酸飲料の調製
実施例11で調製した香料組成物を使用し、以下の表6に示す処方により炭酸飲料(Brix9.3、酸度0.13%(クエン酸換算)、pH3.4、ガスボリューム3.0)を調製した。また、比較として、実施例2で得られた(6Z,9Z,12Z)−Tetradecatrien−14−olideを添加しなかった以外は実施例11と同様に調製した香料組成物を使用して、炭酸飲料を同様にして調製した。
得られた炭酸飲料は、比較の炭酸飲料に比べ、明らかにフレッシュ感及びナチュラル感に富むフルーツ様香気を有していた。
【0150】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の一般式(1)の化合物はフルーツ様、フローラル様、クリーミー様、アニマル様など、それぞれ特徴的なムスク香を有し、これを用いることにより、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品などの各種製品に所望の香気・香味を付与することができ、有用である。
また、本発明の一般式(1)の化合物は、各種製品に少量を添加することにより、製品にナチュラル感、フレッシュ感、フルーティー感等といった香気・香味を与えることができる。
本発明の製造方法は、一般式(1)で表される化合物のZ体を選択的且つ高純度で製造することができ、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。ただしmが0〜4または6〜10の整数のときnは1〜11の整数を表す。また、mが5のときnは1または3〜11の整数を表す。]
【請求項2】
全てのC=C二重結合がZ配置であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ムスク香を有することを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(2)で表されるω−ヒドロキシトリインエステル類。
【化2】

[式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す]を水素化する工程、及び
該水素化により得られる一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類。
【化3】

[式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。]をラクトン化する工程を含む、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化4】

[式(1)中、波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。mは0〜10の整数、nは1〜11の整数を表す。]
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物の全てのC=C二重結合がZ配置であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
得られる一般式(1)で表される化合物のうち、全てのC=C二重結合がZ配置である化合物が95%以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類を、チタン酸エステルを使用してラクトン化することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(2)で表されるω―ヒドロキシトリインエステル類。
【化5】

[式(2)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし、m=3かつn=1かつR=メチル基である化合物、及びm=3かつn=2かつR=メチル基である化合物は除く。]
【請求項9】
下記一般式(3)で表されるω―ヒドロキシトリエンエステル類。
【化6】

[式(3)中、mは0〜10の整数、nは1〜11の整数、Rは炭素数6〜20の1価芳香環基または置換基を有してもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし、m=3かつn=2かつR=メチル基である化合物は除く。波線は、C=C二重結合のE配置およびZ配置のうち少なくとも1つを示す。]
【請求項10】
全てのC=C二重結合がZ配置である請求項9に記載のω―ヒドロキシトリエンエステル類。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含有する香料組成物。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品。
【請求項13】
請求項11に記載の香料組成物を含有する飲食品、香粧品、日用・雑貨品、及び口腔用製品。

【公開番号】特開2012−176908(P2012−176908A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40574(P2011−40574)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】