説明

非動物由来のソフトカプセル外皮並びにこれを有したソフトカプセル

【課題】 ゲル化することのないλカラギーナンに一定量の金属塩を加えて弱酸性の状態にしたときに、λカラギーナンに適度な粘性と弾性力が得られ、かつ透明感を増強させるという新たな技術開発によって、生産性、コスト面、熱エネルギー効率、品質性に優れた非動物由来のカプセル外皮並びにこれを有したソフトカプセルを提供する。
【解決手段】本発明のソフトカプセル1は、内容物Nをソフトな外皮部2で被覆して成るものであり、外皮部2の組成が、澱粉、λカラギーナン、金属塩、デキストリン、可塑剤、及び水を配合することで形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「医薬品」、「特定保健用食品」、「いわゆる健康食品」及び食品に広く汎用されているソフトカプセルに関するものであり、特にソフトカプセルの外皮部を動物性原料であるゼラチンを使用せずに、主に植物性原料である澱粉を用いて形成した新規なソフトカプセル外皮並びにこれを用いたソフトカプセルに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりソフトカプセルは、牛、豚などの骨や皮などより製されているゼラチンを主成分として、可塑剤としてグリセリンや糖アルコール、甘味料として砂糖などを用いることで「医薬品」や「いわゆる健康食品」分野で広く使用されている。これには、適当な防腐剤も少量含まれている場合もある。
【0003】
しかしながら、近年、BSE(Bovine Spondiform Encepralopany ;牛海綿状脳症)の発生が報告されて以来、陸上動物(四足動物)由来であるゼラチンの使用に対してある種のアレルギーとも嫌悪感とも思えるような過剰反応を示す傾向が散見し、魚由来のゼラチンや非動物由来の素材を用いたソフトカプセル外皮の開発が待たれている。このような背景によって海外はもとより日本国内においても植物性原料である澱粉や海藻由来の多糖類などを用いたソフトカプセル外皮の開発が行なわれ、一部においては、既に商品化され流通されているが生産性、品質安定性、内容物に対する選択性など多少問題が残っており、動物由来のゼラチンと比較して品質面で多少問題があると考えられる。
【0004】
これらの背景を踏まえて、特許文献1、2では、ゲル化剤であるカラゲナンガムとマンナンガムの組み合わせでゼラチンを使用することなくカプセル化する技術を公開している。また、特許文献3においてはゼラチン状の性質を有する植物性デンプンを一定の閉鎖内部室を限定した製造によってゼラチンを使うことなくカプセルを製造する技術について公開されている。さらに、アメリカ特許6214376においてはカラギーナンを用いたカプセルについての特許も公開されている。その他、ポリマーフィルムを使用することでゼラチンを使用することなくカプセル化できる技術についても特許文献4、5で公開されている。
更に、水溶性エーテル化デンプン誘導体やヒドロキシプロピルデンプン、水溶性デンプンを用いた軟カプセルシェルについての特許申請も公開されている(特許文献6、7)。
【0005】
このような状況下、本発明者らは、独自に鋭意努力して澱粉素材を利用するカプセル皮膜か生成技術を日澱化学社との共同で素材の改良及び機械的な改良によって成し遂げた(特開2005−170863)。また、他社(特表2003−504326)ではカプセル化皮膜として使用できないとされていたλカラギーナンと澱粉・澱粉誘導体を用いてカプセル化皮膜を形成することを可能としてソフトカプセルを製造することをも可能とした(特開2006−96695)。
ιカラギーナン及びκカラギーナンの性質として、非特許文献1には、「κ−またはι―カラギーナンを水に分散し、約60℃以上に加熱すると、カラギーナンの分子はランダムコイル状に溶解する。この溶液を冷却していくとダブルへリックスが形成され、これがジャンクションゾーンとなってゲル化が始まる。」と記載されている。このような物性をもつため、ιカラギーナン及びκカラギーナンを用いてカプセル化皮膜を形成する際には、カプセル化皮膜としてゼラチンを用いる際よりも、カプセル化皮膜シートを少なくとも20〜30℃分高い温度で加熱しなければならない。しかし、ιカラギーナン及びκカラギーナンとは異なりゲル化しないλカラギーナンを用いてカプセル化皮膜を形成することにより、カプセル化皮膜シートの加熱を従来のゼラチンシートと同レベル(約30℃〜40℃)でカプセル化でき、熱エネルギー効率が良いなどの利点がある(非特許文献1〜2参照)。
【特許文献1】米国特許第5342626号
【特許文献2】特開平6−329833号
【特許文献3】特開2000−355534
【特許文献4】特開2001−329029
【特許文献5】特表2001−506692
【特許文献6】特開2003−199809
【特許文献7】特開2003−55198
【非特許文献1】宮本武明ら編集「天然・生体高分子材料の新展開」シーエムシー出版 2003年11月28日 普及版 第一刷発行 64〜65頁
【非特許文献2】中央フーズマテリアル株式会社、“中央フーズマテリアル株式会社HP”、[onlion]、平成14年「事業内容」→「カラギーナン」→「カラギーナンの特性」の「ゲル化性」の項目、[平成19年1月30日検索]、インターネット <URL http://www.chuofoods.co.jp/jgc03.html >
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、これまでに開示されているιカラギーナン及びκカラギーナンとは異なりゲル化することのないλカラギーナンに一定量の金属塩を加えて弱酸性の状態にしたときにλカラギーナンに適度な粘性と弾性力が得られ、かつ透明感を増強させるという新たな技術開発によって、生産性、コスト面、熱エネルギー効率、品質性に優れた非動物由来のカプセル外皮並びにこれを有したソフトカプセルの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず請求項1記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、内容物をソフトな皮膜で被覆して成るカプセルの外皮部において、前記外皮部は、構成成分組成として澱粉、λカラギーナン、金属塩、デキストリン、可塑剤、及び水を配合して形成されることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1記載の要件に加え、前記外皮部の構成成分組成には、λカラギーナンと金属塩を含有させることで製される澱粉を、主構成物質の一つとして用いることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記金属塩は、コハク酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウムなどの有機酸金属塩と、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの無機金属塩からなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉100重量部に対し、前記金属塩の配合量が0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部に設定されるものであり、これにより外皮の透明感を増強させるとともに、2枚のシートの接着性を向上させるようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3または4の要件に加え、前記澱粉は、生澱粉、HP化澱粉、酸処理澱粉、α化澱粉及び澱粉分解物からなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4または5の要件に加え、前記可塑剤は、グリセリン、糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などからなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4、5または6の要件に加え、前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉100重量部に対して、前記可塑剤の配合量が20〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部に設定されることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項8の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4、5、6または7の要件に加え、前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉・澱粉誘導体の比率が3:7〜7:3であり、その構成成分100重量部に対して、λカラギーナン5〜25重量部、金属塩0.5〜10重量部、デキストリン3〜30重量部、可塑剤20〜80重量部、及び水30〜150重量部を含有することを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項9の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4、5、6、7または8の要件に加え、前記λカラギーナンに対する比率が、λカラギーナン:κカラギーナン:ιカラギーナン=1:0.1:0.1〜1:0.8:0.2のκカラギーナンとιカラギーナンを更に含有することを特徴として成るものである。
すなわち、請求項9の発明はκカラギーナンやιカラギーナンが含まれていても、λカラギーナンへの金属塩添加の作用効果を阻害するものではないことを特徴とする。
【0016】
また請求項10の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の要件に加え、前記外皮部の組成成分は、0.05〜0.3MPaの圧力下で加熱溶解されることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項11の、非動物由来のソフトカプセル外皮は、前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の要件に加え、前記外皮部の組成成分は、エクストルーダーによって連続供給されることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項12のソフトカプセルは、ソフトな外皮部と、この外皮部によって内包される内容物とを具えて成るカプセルにおいて、このカプセルは、前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の外皮部を有して成ることを特徴として成るものである。
【0019】
本発明者らは、ゲル化することのないλカラギーナンに一定量の金属塩を加えて弱酸性の状態にしたときに、λカラギーナンに適度な粘性と弾性力が得られ、ソフトカプセル形成に好適な組成物が得られることを見出した。そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として、より簡便でより安定な品質を維持し、しかも透明性に優れ、従来にない植物性素材を用いた非動物由来のカプセル外皮並びにこれを有したソフトカプセルを得ることができる。
【0020】
本発明に使用する金属塩は、コハク酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウムなどの有機酸金属塩と、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの無機金属塩からなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせである。その中でも、リン酸二水素ナトリウムと塩化カリウムの組み合わせが好適に用いられる。
金属塩の配合比率は、乾燥前の外皮液段階で(外皮部を乾燥させる前の溶液段階で)、澱粉100重量部に対して、リン酸二水素ナトリウムが、1〜3重量部及び塩化カリウムが、0.05〜0.2重量部で好適に用いられる。さらに好ましくはリン酸二水素ナトリウムが、1.5〜2.5重量部及び塩化カリウムが、0.08〜0.12重量部である。リン酸二水素ナトリウムが、1重量部以下だと、λカラギーナンに適度な粘性と弾性力が得られず、好適なソフトカプセルを形成することができない。一方、リン酸二水素ナトリウムが3重量部以上だと、λカラギーナンが加水分解する可能性があるため好ましくない。
【0021】
〔金属塩添加の作用効果〕
本発明者らは、ゲル化することのないλカラギーナンに一定量の金属塩を加えることによってλカラギーナンに適度な粘性と弾力性を持つことを見出すことにより全く新しいソフトカプセル皮膜を形成するに至り、本発明を完成するに至った。その金属塩添加の作用効果は必ずしも明らかではないが、リン酸二水素ナトリウムと塩化カリウムを加えた時の例を示す。なお、本願発明は、本事例に限定されるものではなく、κカラギーナンやιカラギーナンが含まれていても、λカラギーナンへの金属塩添加の作用効果を阻害するものではない。
(1) リン酸二水素ナトリウムなどの弱酸性金属塩の機能
λカラギーナンは陰イオン性高分子であるので、陽イオン(H+ 、Na+ )存在下で可溶化し透明になるという性質を持っている。この陰イオン性高分子であるλカラギーナンにリン酸二水素ナトリウムなどの弱酸性金属塩を加え、加水分解が起きずに適度な粘性(接着性)が得られるようにする。
(2) 塩化カリウム、クエン酸カリウムなどの金属塩の機能
弱酸性下にある陰イオン高分子であるλカラギーナンに、塩化カリウムなどでK+ (カリウムイオン)を供給することにより、K+ を中心として、陰イオン性高分子であるλカラギーナンが、錯体のようなものを形成して弾性力を増強する。
(3) 澱粉の機能
シートが適度な粘性(接着性)と弾性力を有する溶融状態で、糊化された澱粉が、澱粉糊作用によるシール性を有するために、(i) 金型(後述するダイロール)による圧着、(ii)澱粉糊による溶着によりソフトカプセルが形成される。
【0022】
本発明に使用できる澱粉は、生澱粉、HP化澱粉、酸処理澱粉、α化澱粉及び澱粉分解物からなる群から選ばれる1種類以上である。より好適には、澱粉とHP化澱粉の混合物で高粘度なもの、澱粉とHP化澱粉の混合物で中粘度なもの、HP化澱粉と酸処理澱粉の混合物で低粘度なものからなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせである。
ここで、澱粉誘導体であるHP化澱粉とは、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉であり、市場に販売されているHP化澱粉であればいずれのものでも使用することが出来る。例えば東海澱粉株式会社製の商品名TR−3、松谷化学工業株式会社製の商品名松谷ゆり、松谷やよい、が適用できる。また同じく澱粉誘導体であるα化澱粉とは、常温で糊化(溶解)する冷水可溶性澱粉であり、例えば三和澱粉工業株式会社製の商品名タピオカアルファーTP−2が適用できる。更に澱粉分解物としては、HP化澱粉同様に市場で販売されている澱粉分解物であればいずれのものでも使用できる。例えば松谷化学工業株式会社製の商品名TK−16やフードテックスが適用できる。
また、生澱粉とHP化澱粉の混合物で高粘度なものとは、澱粉を製造販売している会社から購入できる。例えば東海澱粉株式会社製の商品名TR−3が適用できる。また生澱粉とHP化澱粉の混合物で中粘度なものとは前述した生澱粉とHP化澱粉の混合物として提供することが出来る澱粉を製造販売している会社であればいずれの会社からでも購入できる。例えば、松谷化学工業株式会社製の商品名松谷ゆりが適用できる。また、HP化澱粉と酸処理澱粉で低粘度なものとは、前述した酸処理澱粉とHP化澱粉の混合物として提供することが出来る澱粉を製造販売している会社であればいずれの会社からでも購入できる。例えば、松谷化学工業株式会社製の商品名松谷やよいが適用できる。
【0023】
本発明に使用できる可塑剤は、グリセリン、糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などである。また可塑剤の配合比率は、乾燥前の外皮液段階で、澱粉100重量部に対して、20〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部である。
【発明の効果】
【0024】
本発明者らは、ゲル化することのないλカラギーナンに一定量の金属塩を加えて弱酸性の状態にしたときに、λカラギーナンに適度な粘性と弾性力が得られ、ソフトカプセル形成に好適な組成物が得られることを見出した。そして、前記各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。すなわち本発明によれば、従来にない植物性素材と金属塩を用いたことにより、透明感を増強させ、生産性、コスト面、熱エネルギー効率、品質性に優れた非動物由来のカプセル外皮並びにこれを有したソフトカプセルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べるとおりである。なお、説明にあたっては、まず本発明のソフトカプセル1の基本構造について説明した後、このようなソフトカプセル1を製造する装置の一例について説明し、次いでカプセル外皮の成分組成を実際に示しながらソフトカプセル1の製造方法について説明する。
【0026】
ソフトカプセル1の基本構造は、例えば図2に示すように、薬液等の内容物Nを外皮部2で皮膜して成るものである。
ここで内容物Nとしては、医薬品の他、食品、調味料(調味油)、化粧品、入浴剤、雑貨(玩具・接着剤等)など適宜の目的の材料を用いることができる。また、その内包状態(充填状態)としては、液体状の他、ゲル状、粉粒体、あるいは適宜これらを混入した状態、例えば液体中に粉体を混合させた粉体含有懸濁液等とすることが可能である。なお以下の説明においては、主に液体状の内容物Nを充填する場合について説明する。
【0027】
一方、外皮部2は、従来、動物由来のゼラチンを基材として形成されることが多かったが、本発明では植物由来の澱粉を主成分とするものであり、具体的には澱粉、λカラギーナン、金属塩、デキストリン、可塑剤、及び水から成るものである。なお、これらの更に詳細な成分組成については後述する。
【0028】
次に、このようなソフトカプセル1を製造する装置について概略的に説明する。ソフトカプセル1は、一般にロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機、シームレス式自動カプセル製造機、平板式カプセル製造機等により製造されるものであり、ここでは、このうちのロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機を用いる。また手法そのものは、通常のソフトカプセル製造方法を踏襲する。
【0029】
ロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機10(以下、単に充填機10とする)は、一例として図1に示すように、溶融状態の外皮溶液(外皮部2を形成する原料素材であることに因み、2Aと付す)を冷却しながら適宜の厚さのシート状に形成するシート成形部11と、成形した外皮シートSによって内容物Nをカプセル状に内包するカプセル成形部12と、外皮シートSがカプセル状に成形される以前の段階で外皮シートSに対して内容物Nを送り込む内容物供給部13と、形成されたソフトカプセル1を充填機10から取り出すカプセル取出部14とを具えて成るものである。以下、各構成部について説明する。
【0030】
まずシート成形部11について説明する。このものは、外皮溶液2Aをシート状に固化形成する部位であり、成形された二枚の外皮シートSを前記カプセル成形部12に対して拝み合わせ状態に供給するため、一例としてカプセル成形部12を挟んで左右に一対設けられる。
そして、シート成形部11は、原料調整部110を具えて成り、外皮溶液2Aは、ここからスプレダーボックス21に供給される。その後、外皮溶液2Aは、スプレダーボックス21の下方に設けられた冷却ドラム22に送り込まれ、ここで適宜の温度に冷やされながら適宜の厚さのシート状に成形され、カプセル成形部12に送り込まれる。
【0031】
ここで上記原料調整部110について説明する。図1に示すものはエクストルーダー111を原料調整のために適用したものである。これは一例として2軸スクリュータイプのものであって、SUS等で形成されたバレル112内に2本のスクリュー113が並設されている。なお、バレル112は、上面と下面とにヒータ装置114を有するものであって、例えばシーズヒータと冷却水路とが併用できる。具体的には後述する実施例1に適用する「α−20」(スエヒロEPM社製)の二軸エクストルーダーが選択し得る。
なお、原料調整部110としては、このようなエクストルーダータイプの他、バケットタイプの溶解釜を用いることができる。因みにエクストルーダータイプは、事前に外皮溶液2Aを仕込む(溶融する)必要がなく、カプセル製造時(充填時)に溶解でき、連続生産に適している(請求項11)。一方、バケットタイプは、バッチ生産に適しており、熱量と時間のコントロール幅が大きい点で優れている(請求項10)。
【0032】
以上述べた部位がシート成形部11となるものであり、この後、外皮シートSが供給されて行く側にカプセル成形部12が設けられるものであって、両成形部を中継するようにフィードロール23が設けられる。すなわち冷却ドラム22を巡って冷却されてきた外皮シートSは、複数のフィードロール23の間をジグザグ状に通過しながらカプセル成形部12に送られる。
【0033】
次にカプセル成形部12について説明する。このものは、一例として図2に示すように左右一対のダイロール26を主要部材として成り、このうち一方のダイロール26が固定され、他方がこの固定されたダイロール26に対し接近離反自在に構成される。
また各ダイロール26には、その表面に適宜の形状の成形凹部27と、その周縁部に成形突起28が形成されるものであって、例えば、ほぼ紡錘状ないしは略回転楕円形状を呈するソフトカプセル1を成形する場合、この成形凹部27は中央部が凹陥した長円状に形成される。そして一対のダイロール26は、互いの成形突起28をほぼ合致させる状態で回転し合うことにより、外皮シートSを引き込みながら、タイミング良く突き合わせ、カプセル周囲の縫合(接合)を行うものである。
【0034】
次に内容物供給部13について説明する。このものは、カプセル周囲の縫合が完了する前までに、外皮シートSに対して、液体状等の内容物Nを供給(噴射)するものであり、先端がダイロール26の間に充分に入り込むように形成された突出状のセグメント31を主要部材として成る。
内容物供給部13は、一例として図1に示すように、上部に原液ホッパ32を設け、この内部に原液(内容物N)を貯留する。そして原液ホッパ32の下方には、ポンプユニット33を設けるものであって、これは適宜、プランジャ等が多数組み合わされて成り、複数の経路から所定のタイミング、圧力等で内容物Nを噴射させ、デリバリーパイプ34を経由して、セグメント31から外皮シートSに吐き出される。
【0035】
次にダイロール26の下方において、成形後のソフトカプセル1を取り出すカプセル取出部14について説明する。成形後のソフトカプセル1は、例えば図2に示すように、ダイロール26の成形凹部27に嵌まり込むことが多いため、このようなソフトカプセル1を、ダイロール26に接触するように設けた掻取ブラシ37で掻き落とすとともに、掻き落としたソフトカプセル1をダイロール26の回転軸方向に沿うように設けた一対の前送コンベヤ38によって、充填機10の前面に搬送して取り出すものである(図1参照)。また一対の前送コンベヤ38の間には、一例として図1に示すように、ソフトカプセル1が打ち抜かれた後のブランクシートS′を、両側から挟み込み、そのまま下方に送り込む、フリーローラ39(挟み込み幅、調節自在)を設けるものである。なおこのフリーローラ39は、ソフトカプセル1がブランクシートS′にも残留し得ることを考慮して、ブランクシートS′上にとどまったソフトカプセル1を、どちらかの前送コンベヤ38上に排出し得る構成であることが好ましい。またソフトカプセル1は、前送コンベヤ38によって充填機10の前面まで搬送された後、更に他のコンベヤ40に移載等され、次の乾燥工程に搬送される。
【0036】
なおカプセル成形部12では、二枚の外皮シートSが、一例として図2に示すように、一対のダイロール26間に拝み合わせ状態に送り込まれるとともに、その上方に位置するセグメント31から所定のタイミングで内容物Nが供給される。すなわちダイロール26に供給された二枚の外皮シートSは、その周面に設けられた多数の成形突起28の突き合わせ作用によって、一つずつ個別にカプセル周囲(成形凹部27の周囲)が縫合されて行く。この際、外皮シートSは、成形突起28によって例えば150〜200kg程度の圧力を受けるため、縫合部分が効果的に糊化し縫合がなされる。
【0037】
そして周囲の縫合が完了したソフトカプセル1は、成形凹部27やブランクシートS′等から取り出された後、乾燥される。なお、この乾燥においては、ソフトカプセル1の形状やその性状に因み、タンブラー乾燥機(回転ドラム式乾燥機)が一般に使用される。
【0038】
以下、より詳細な実施例を示しながら、本発明を詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、植物油、動物油、植物油と動物油の組み合わせ、さらには各油脂類に動植物エキス類及びエキス類粉末を含有する懸濁油などありとあらゆる油脂との混合物でカプセル化が可能なもの全てに適用できるものである。
【実施例1】
【0039】
表1に示した外皮成分を2軸エクストルーダー(α−20、スエヒロEPM社製)に下記表1の配合処方で粉末・グリセリン・RO水(ROは [Reverse Osmosis]の略)を別々に投入し、押し出すことにより外皮溶液2Aを得た。
<押し出し条件>
・スクリュー回転数:30rpm
・バレル温度 :180℃
【表1】

【実施例2】
【0040】
表2に示した外皮成分を0.05〜0.3MPaの圧力下で加熱溶解することによってソフトカプセル1の外皮溶液2Aを得た。
<加熱溶解条件>
・加熱溶解温度:113℃
・加溶解熱時間:30分間
・圧力 :0.22MPa
【表2】

〔カプセル化〕
【0041】
実施例1又は実施例2により得られた外皮溶液2Aを、充填機10の両側にある冷却ドラム22に展延することによりシート状(外皮シートS)にした。その外皮シートSを充填機10に誘導して、通常のソフトカプセル同様にMCT又はレシチンを充填した直後に、金型(ダイロール26)により圧着してソフトカプセル1を得た。
<充填条件>
・シート化装置温度:17℃
・セグメント部温度:37℃
・ダイロール回転数:2.0rpm
〔評価項目と評価基準〕
【0042】
上記手法によって得たカプセルの評価を、次の6項目で行った。
(1)接着性評価
(2)製造安定性評価
(3)黄変(透明度)評価
(4)崩壊性評価
(5)付着性評価
(6)硬度評価

その評価基準を以下に示す。
【0043】
(1)接着性評価
顕微鏡による目視での評価を行い、以下のように判定した。
◎:非常に良好な接着
○:接着が良い
△:接着悪い
×:接着しない

(2)製造安定性評価
充填機10でのソフトカプセル1の製造工程の安定性を、以下のように評価した。
◎:非常に安定
○:製造可能
△:製造困難
×:充填不可

(3)黄変(透明度)評価
目視による評価を行い、以下のように判定した。
◎:透明
○:僅かに黄変
△:黄変
×:強く黄変

(4)崩壊性評価
日本薬局方14局崩壊試験法に準拠して試験した。
崩壊性開口時間は、1〜20分の範囲であればカプセル化に適していると評価できる。
崩壊性崩壊時間は、20分以内であればカプセル化に適していると評価できる。

(5)付着性評価
付着性評価は、本出願人が既に特許出願に及んでいる特開2004−351007号の段落番号〔0044〕に記載している方法にて行った。すなわち、各検体をまず20カプセルずつ用意する。そして、これらを6号ガラスサンプル瓶に入れ、開栓状態で40℃、75%RHの恒温・高湿器内にて48時間保存し、室温に戻した後、このサンプル瓶を表3に示す状態にした場合、サンプル瓶から脱離、落下したカプセルの数によって、各検体の付着性を判定した。この場合、少ない衝撃で落下したカプセルの数が多いほど付着性が低い(付着防止効果が高い)ことを示している。
【表3】

(6)破壊加重(加圧に対する強度)
木屋式硬度計(株式会社藤原製作所製、最大加重50kg)を用いて試験した。数値が高いほど加圧に対する強度が強いことを示している。

〔評価結果〕
【0044】
上記手法で得たカプセルを、下記の評価で行った結果を表4、5に示す。
〈1〉接着性評価
〈2〉製造安定性評価
〈3〉黄変(透明度)評価
〈4〉崩壊性評価
〈5〉付着性評価
〈6〉硬度評価
なお、表4は、2軸エクストルーダーを用いた実施例1により得られた外皮溶液2Aを充填機10でソフトカプセル1にした場合の評価結果であり、表5は、溶解釜を用いて一定の圧力下で加熱溶解を行う実施例2により得られた外皮溶液2Aを充填機10でソフトカプセル1にした場合の評価結果である。
【0045】
【表4】

上記表中の○もしくは◎の評価であるものは、カプセル化に適していると評価した。
崩壊性 開口時間及び崩壊性 崩壊時間の単位は、(分)である。
【0046】
【表5】

上記表中の○もしくは◎の評価であるものは、カプセル化に適していると評価した。
崩壊性 開口時間及び崩壊性 崩壊時間の単位は、(分)である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、「医薬品」、「特定保健用食品」、「いわゆる健康食品」及び食品の分野のほか、内容物の選択により、例えば工業用調剤を内包したものなど工業の分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のソフトカプセルを製造するロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機(充填機)を示す斜視図である。
【図2】ダイロールによって外皮シートがカプセル状に成形される様子を拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ソフトカプセル
2 外皮部
2A 外皮溶液
10 ロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機(充填機)
11 シート成形部
12 カプセル成形部
13 内容物供給部
14 カプセル取出部
21 スプレダーボックス
22 冷却ドラム
23 フィードロール
26 ダイロール
27 成形凹部
28 成形突起
31 セグメント
32 原液ホッパ
33 ポンプユニット
34 デリバリーパイプ
37 掻取ブラシ
38 前送コンベヤ
39 フリーローラ
40 コンベヤ
110 原料調整部
111 エクストルーダー
112 バレル
113 スクリュー
114 ヒータ装置
N 内容物
S 外皮シート
S′ ブランクシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物をソフトな皮膜で被覆して成るカプセルの外皮部において、
前記外皮部は、構成成分組成として澱粉、λカラギーナン、金属塩、デキストリン、可塑剤、及び水を配合して形成されることを特徴とする、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項2】
前記外皮部の構成成分組成には、λカラギーナンと金属塩を含有させることで製される澱粉を、主構成物質の一つとして用いることを特徴とする請求項1記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項3】
前記金属塩は、コハク酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウムなどの有機酸金属塩と、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの無機金属塩からなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項4】
前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉100重量部に対し、前記金属塩の配合量が0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部に設定されるものであり、これにより外皮の透明感を増強させるとともに、2枚のシートの接着性を向上させるようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項5】
前記澱粉は、生澱粉、HP化澱粉、酸処理澱粉、α化澱粉及び澱粉分解物からなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項6】
前記可塑剤は、グリセリン、糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などからなる群から選ばれる1種類以上又は1種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項7】
前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉100重量部に対して、前記可塑剤の配合量が20〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部に設定されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項8】
前記外皮部は、乾燥前の液段階で、澱粉・澱粉誘導体の比率が3:7〜7:3であり、その構成成分100重量部に対して、λカラギーナン5〜25重量部、金属塩0.5〜10重量部、デキストリン3〜30重量部、可塑剤20〜80重量部、及び水30〜150重量部を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項9】
前記λカラギーナンに対する比率が、λカラギーナン:κカラギーナン:ιカラギーナン=1:0.1:0.1〜1:0.8:0.2のκカラギーナンとιカラギーナンを更に含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項10】
前記外皮部の組成成分は、0.05〜0.3MPaの圧力下で加熱溶解されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項11】
前記外皮部の組成成分は、エクストルーダーによって連続供給されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の、非動物由来のソフトカプセル外皮。
【請求項12】
ソフトな外皮部と、この外皮部によって内包される内容物とを具えて成るカプセルにおいて、
このカプセルは、前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の外皮部を有して成ることを特徴とするソフトカプセル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−237572(P2008−237572A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82542(P2007−82542)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(594069580)株式会社三協 (13)
【Fターム(参考)】