説明

非受容体型チロシンキナーゼのTECファミリーの阻害剤として有用な3,5−二置換ピリド−2−オン

本発明は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)プロテインキナーゼの阻害剤として有用な、式(I)のピリド−2−オン化合物に関する。これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、自己免疫疾患、炎症疾患、増殖性疾患、過剰増殖性疾患または免疫学的に媒介される疾患を処置または予防するために有用である。該式において、R2’は環であり、Qは、1〜4個の窒素原子を有する5員へテロアリールであり、この窒素原子のうちの一つは、NHであり、各Qは、0〜3個のJQによって必要に応じて置換され、必要に応じて環Q1へ縮合し、各R3およびR4は、本明細書に記載される通りである(式1)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関するものである。本発明は、本発明の化合物を含む製薬的に許容される組成物および各種の障害の処置に組成物を使用する方法も提供する。本発明は、本発明の化合物を調製するプロセスも提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
非受容体型チロシンキナーゼのTecファミリーは、抗原−受容体、たとえばTCR、BCRおよびFcε受容体を通じたシグナル伝達で中心的役割を果たしている(非特許文献1で概説されている)。Tecファミリーキナーゼは、T細胞活性化に必須である。Tecファミリーの3つのメンバー、Itk、RlkおよびTecは、T細胞における抗体受容体結合の下流で活性化され、PLC−γを含むエフェクタの下流にシグナルを伝達する。マウスでのItkの欠失は、サイトカインIL−2、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−γの低下したT細胞受容体(TCR)誘発増殖および分泌を引き起こす(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。アレルギー性喘息の免疫症状はItk−/−マウスにおいて減弱される。肺炎症、好酸球浸潤および粘液産生は、アレルゲンOVAを用いた攻撃に応答して、Itk−/−マウスで劇的に低下する(非特許文献5)。Itkは、アトピー性皮膚炎にも関与している。本遺伝子は、対照または軽いアトピー性皮膚炎を持つ患者においてよりも、中程度および/または重症のアトピー性皮膚炎を持つ患者からの末梢血T細胞中でより高度に発現されることが報告されている(非特許文献6)。
【0003】
Tecファミリーキナーゼも、B細胞発生および活性化に必須である。Btkに変異を持つ患者は、B細胞発生に顕著な障害を有し、Bリンパ球および血漿細胞のほぼ完全な欠如、大幅に低下したIgレベルおよびリコール抗原への体液性応答の顕著な阻害を引き起こす(非特許文献7で概説)。
【0004】
Tecキナーゼは、高親和性IgE受容体(FcεRI)を通じてマスト細胞活性化にも重要な役割を果たす。ItkおよびBtkはマスト細胞で発現され、FcεRI架橋によって活性化される(非特許文献8)。Btk欠損マウスマスト細胞はFcεRI架橋の後に、脱顆粒低下および炎症誘発性サイトカインの産生低下を有する(非特許文献9)。Btk欠損は、マクロファージエフェクタ機能の低下ももたらす(非特許文献10)。
【0005】
したがってプロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物を開発する必要が大いにある。特に、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)プロテインキナーゼの阻害剤として有用である化合物を開発することが望ましい。
【非特許文献1】Miller Aら、Current Opinion in Immunology(2002)14;331−340
【非特許文献2】Schaefferら、Science(1999)284;638−641
【非特許文献3】Fowellら、Immunity(1999)11;399−409
【非特許文献4】Schaefferら、Nature Immunology(2001)2,12;1183−1188
【非特許文献5】Muellerら、Journal of Immunology(2003)170:5056−5063
【非特許文献6】Matsumotoら、International archives of Allergy and Immunology(2002)129;327−340
【非特許文献7】Vihinenら、Frontiers in Bioscience 5:d917−928
【非特許文献8】Kawakamiら、Journal of Immunology(1995);3556−3562
【非特許文献9】Kawakamiら、Journal of leukocyte biology 65:286−290
【非特許文献10】Mukhopadhyayら、Journal of Immunology(2002)168,2914−2921
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物および組成物に関するものである。本発明の化合物、およびその製薬的に許容される組成物は、プロテインキナーゼの阻害剤として有効である。ある実施形態において、これらの化合物は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)プロテインキナーゼの阻害剤として有効である。これらの化合物は、本明細書で定義するような式I、またはその製薬的に許容される塩を有する。
【0007】
これらの化合物およびその製薬的に許容される組成物は、これに限定されるわけではないが、自己免疫性、炎症性、増殖性、または過剰増殖性疾患あるいは免疫媒介疾患を含む各種の疾患、障害または状態を治療または予防するのに有用である。化合物および組成物は、トロンビン誘発血小板凝集を予防する方法においても有用である。本発明によって提供される化合物は、生物学的および病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼによって媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;および新しいキナーゼ阻害剤の比較評価にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
1.本発明の化合物の概要
本発明は、式I:
【0009】
【化14】

の化合物またはその製薬的に許容される塩を提供し、式中
Qは、O、N、およびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含むC6−10アリールまたは5〜10員ヘテロアリールであり;Qは、場合により0〜5個のJで置換され;
Rは、場合によりC1−3アルキル、C1−2ハロアルキル、ハロ、CN、NO、OH、O(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)またはC1−2ハロアルキルで置換されるHまたはC1−6アルキルであり;
は、独立して窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環式環;あるいは独立して窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員飽和、部分不飽和、または完全不飽和二環式環であり;ここで、Rは、場合により0〜5個のJR2で置換され;
各RおよびRは、独立してH、ハロゲン、または場合によりハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CHの0〜5回の出現で置換されるC1−4脂肪族、あるいは場合により0〜5回Fで置換されるC1−2脂肪族であり;このRおよびRの定義は過フッ化メチルおよびエチルを含み;
各JおよびJR2は、独立してハロゲン、−NO、−CN、U、−(U)−(C6−10アリール)、−(U)−(5〜12員ヘテロアリール)、−(U)−(3〜12員ヘテロシクリル)、−(U)−(C3−10脂環式)、−OR°、−SR°、−N(R°)、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−NR°C(O)R°、−NR°C(S)R°、−NR°C(O)N(R°)、−NR°C(S)N(R°)、−NR°COR°、−NR°NR°C(O)R°、−NR°NR°C(O)N(R°)、−NR°NR°COR°、−C(O)C(O)R°、−C(O)CHC(O)R°、−COR°、−C(O)R°、−C(S)R°、−C(O)N(R°)、−C(S)N(R°)、−OC(O)N(R°)、−OC(O)R°、−C(O)N(OR°)R°、−C(NOR°)R°、−S(O)R°、−S(O)R°、−SON(R°)、−S(O)R°、−NR°SON(R°)、−NR°SOR°、−N(OR°)R°、−C(=NH)−N(R°)、−P(O)R°、−PO(R°)2、−OPO(R°)、=O、=S、=NNHR°、=NN(R°)、=NNHC(O)R°、=NNHCO(C1−6アルキル)、=NNHSO(C1−6アルキル)、=NOH、または=NR°;ここで、各JおよびJR2は、独立して、場合により0〜5個のRで置換され;
各Rは独立して、ハロゲン、NO、CN、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、O(C1−4ハロ脂肪族)、CO(C1−4脂肪族)、COH、CO(C1−4脂肪族)、C1−6脂肪族、C1−4ハロ脂肪族、フェニル、−O(Ph)、5〜6員ヘテロアリール、C3−8脂環式、5〜8員ヘテロシクリル、−C1−6脂肪族−(Ph)、−C1−6アルキル−(5〜6員ヘテロアリール)、−C1−6アルキル−(C3−8脂環式)、−C1−6アルキル−(5〜8員ヘテロシクリル)、またはC1−10アルキリデン鎖であり、2個までのメチレン単位がO、N、またはSによって場合により置換され;各Rは、0〜5個のJによって独立して場合により置換され;
各Rは独立して、H、C1−6脂肪族、C1−4ハロ脂肪族、CO(C1−4脂肪族)、CO(C1−4脂肪族)、−SO(C1−4脂肪族)、−SO(フェニル)、フェニル、5〜6員ヘテロアリール、5〜8員ヘテロシクリル、C3−8脂環式、−C1−6脂肪族−(Ph)、−C1−6アルキル−(5〜6員ヘテロアリール)、−C1−6アルキル−(5〜8員ヘテロシクリル)、−C1−6アルキル−(C3−8脂環式);またはC1−10アルキリデン鎖であり、鎖の2個までのメチレン単位がO、N、またはSによって場合により置換され;該Rは、0〜6個のJによって場合により置換され;
あるいは同じ置換基または別の置換基上の2個のRは、各R基が結合される原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する3〜8員飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環式または2環式環を形成し;該環は、ハロゲン、NO、CN、C1−4脂肪族、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族の0〜4回の出現によって場合により独立して置換され、R1−4脂肪族基のそれぞれは非置換であり;
各Jは独立して、ハロゲン、NO、CN、C1−4脂肪族、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−COH、−CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、およびハロ(C1−4脂肪族)であり、J1−4脂肪族基のそれぞれは非置換である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、2−ピリジルであり、そしてRおよびRは、Hであり、さらに、Qは、非置換フェニル、2−CN−フェニル、2−ピリジル、または2−キノリニルではない。
【0011】
本発明の化合物は、一般に上述した化合物を含み、さらに本明細書に開示するクラス、サブクラス、および種によって例証される。本明細書で使用するように、別途指摘しない限り、次の定義が適用されるものとする。本発明の目的では、化学元素は元素周期律表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って同定される。加えて、有機化学の一般原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999,および“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、そのすべての内容は参照により本明細書に組み入れられている。
【0012】
本明細書に記載するように、規定された数範囲の原子はそのなかにいずれかの整数を含む。たとえば1〜4個の原子を有する基は、1、2、3、または4個の原子を有しうる。
【0013】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、たとえば一般に上で例証されるような、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるような、1個以上の置換基によって場合により置換されうる。「場合により置換される」という句は、「置換または非置換」という句と互換的に使用されることが認識されるであろう。一般に、「置換」という用語は、「場合により」という用語が先行してもしなくても、所与の構造内の水素ラジカルの、規定された置換基のラジカルによる交換を指す。別途指摘しない限り、場合により置換された基は、基の各置換可能な位置を有することができ、いずれかの構造において1個を超える位置が、規定された基から選択された1個を超える置換基によって置換されうるとき、置換基は各位置において同じまたは異なるかのどちらかである。本発明により考えられる置換基の組合せは好ましくは、安定な、または化学的に実現可能な化合物の生成をもたらす組合せである。
【0014】
「安定な」という用語は、本明細書で使用するように、その生成、検出、および好ましくはその回収、精製、ならびに本明細書で開示される目的の1つ以上のための使用を可能にする条件を受けさせたときに、実質的に変化を受けない化合物を指す。ある実施形態において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学反応性条件の非存在下で40℃以下の温度にて、少なくとも1週間保管されたときに実質的に変化を受けない化合物である。
【0015】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用するように、完全に飽和された、または分子の残りへの単一の結合点を有する1個以上の不飽和単位を含有する、直鎖(すなわち非分岐)または分岐、置換または非置換炭化水素鎖を意味する。別途規定しない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。ある実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。なお他の実施形態において、脂肪族基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含有し、なお他の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。適切な脂肪族基は、これに限定されるわけではないが、直鎖または分岐、置換または非置換アルキル、アルケニル、またはアルキニル基を含む。具体的な例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、sec−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニル、およびtert−ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。「脂環式」(または「炭素環」または「カルボシクリル」または「シクロアルキル」)という用語は、完全に飽和された、または1個以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではなく、分子の残りへの単一の結合点を有する、単環C−C炭化水素または2環C−C12炭化水素を指し、前記2環式環系のいずれの個々の環も3〜7員を有する。適切な脂環式基としては、これに限定されるわけではないが、シクロアルキルおよびシクロアルケニル基が挙げられる。具体的な例としては、シクロヘキシル、シクロプロペニル、およびシクロブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」、または「複素環式」という用語は、本明細書で使用するように、1個以上の環員が、独立して選択されたヘテロ原子である、非芳香族、単環式、2環式、または3環式環系を意味する。一部の実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」、または「複素環式」基は、1個以上の環員が酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されるヘテロ原子である3〜14個の環員を有し、環系内の各環は3〜7個の環員を含有する。
【0017】
適切な複素環としては、これに限定されるわけではないが、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、および1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが挙げられる。
【0018】
環式基(たとえば脂環式および複素環)は線形的に縮合されうる、架橋されうる、またはスピロ環でありうる。
【0019】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素(窒素、硫黄、リン、またはケイ素のいずれの酸化形;いずれの塩基性窒素の4級化形または;複素環式環の置換可能な窒素、たとえばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおいてなどの)、NH(ピロリジニルにおいてなどの)またはNR(N−置換ピロリジニルにおいてなどの)を含む)の1つ以上を意味する。
【0020】
「不飽和」という用語は、本明細書で使用するように、部分が1個以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0021】
「完全不飽和」という用語は、環を指すときには、芳香環を意味する。
【0022】
「アルコキシ」、または「チオアルキル」という用語は、本明細書で使用するように、上で定義したような、酸素(「アルコキシ」)または硫黄(「チオアルキル」)原子を通じて主炭素鎖に結合されたアルキル基を指す。
【0023】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」、および「ハロアルコキシ」という用語は、場合によっては1個以上のハロゲン原子によって置換されたアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。「ハロゲン」、「ハロ」、および「ハル」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0024】
単独であるいは「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」におけるようにより大きい部分の一部として使用される、「アリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環式、2環式、および3環式環系を指し、系内の少なくとも1個の環は芳香族であり、系内の各環は3〜7環員を含有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用されうる。「アリール」という用語は、下で定義するようにヘテロアリール環系も指す。
【0025】
単独であるいは「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」におけるようにより大きい部分の一部として使用される、「ヘテロアリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環式、2環式、および3環式環系を指し、系内の少なくとも1個の環は芳香族であり、環内の少なくとも1個の環は1個以上のヘテロ原子を含有し、系内の各環は3〜7環員を含有する。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」または「複素芳香族」という用語と互換的に使用されうる。適切なヘテロアリール環としては、これに限定されるわけではないが、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(たとえば3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(たとえば5−テトラゾリル)、トリアゾリル(たとえば2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(たとえば2−インドリル)、ピラゾリル(たとえば2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(たとえば2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、)、およびイソキノリニル(たとえば1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、または4−イソキノリニル)が挙げられる。
【0026】
「アルキリデン鎖」という用語は、完全に飽和されうる、または1個以上の不飽和単位を有し、分子の残りへの2個の結合点を有する、直鎖または分岐炭素鎖を指す。
【0027】
「保護基」という用語は本明細書で使用するように、多官能性化合物の1個以上の所望の反応性部位を一時的に遮断するために使用される薬剤を指す。ある実施形態において、保護基は次の特徴の1つ以上、好ましくはすべてを有する:a)他の反応性部位の1個以上にて発生する反応に対して安定である保護基質を与えるために良好な収率で選択的に反応する;およびb)再生された官能基を攻撃しない試薬によって良好な収率で選択的に除去可能である。例示的な保護基は、Greene,T.W.,Wuts,P.G in“Protective Groups in Organic Synthesis”,Third Edition,John Wiley & Sons,New York:1999に詳説されており、その内容全体は参照により本明細書に組み入れられている。「窒素保護基」という用語は本明細書で使用するように、多官能性化合物の1個以上の所望の窒素反応性部位を一時的に遮断するために使用される薬剤を指す。好ましい窒素保護基も上に例示した特徴を有し、ある例示的な窒素保護基もGreene,T.W.,Wuts,P.G in“Protective Groups in Organic Synthesis”,Third Edition,John Wiley & Sons,New York:1999の第7章に詳説されており、その内容全体は参照により本明細書に組み入れられている。
【0028】
ある実施形態において、アルキルまたは脂肪族鎖は場合により別の原子または基によって割り込まれうる。このことは、アルキルまたは脂肪族鎖のメチレン単位が前記他の原子または基によって場合により置換されることを意味する。このような原子または基の例としては、これに限定されるわけではないが、−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRSONR−、−SO−、または−SO−が挙げられ、Rは本明細書で定義される。別途規定しない限り、任意の置換は化学的に安定な化合物を生成する。任意の割り込みは、鎖内および鎖の両端で;すなわち結合点および/または末端においての両方で発生しうる。2つの任意の置換は、化学的に安定な化合物を生じる限り、鎖内で相互に隣接していてもよい。
【0029】
別途規定しない限り、置換または割り込みが末端で発生する場合、置換原子は末端のHに結合される。たとえば−CHCHCHが−O−によって場合により割り込まれる場合、得られた化合物は−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHでありうる。
【0030】
別途指摘しない限り、本明細書で示す構造は、構造のすべての異性体(たとえばエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または立体配座))形;たとえば各不斉中心のRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)配座異性体も含むものである。したがって本化合物の単一の立体化学異性体はもちろんのこと、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または立体配座)混合物も本発明の範囲内である。
【0031】
別途指摘しない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形は、本発明の範囲内である。
【0032】
加えて別途指摘しない限り、本明細書で示す構造は、1個以上の同位体標識原子の存在においてのみ異なる化合物も含むものとする。たとえば二重水素または三重水素による水素の置換、あるいは13C−または14C−濃縮炭素による炭素の置換を除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物はたとえば、生物アッセイでの分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0033】
次の省略形が使用される:
PG 保護基
DMF ジメチルホルムアミド
DCM ジクロロメタン
Ac アセチル
Bu ブチル
Et エチル
THF テトラヒドロフラン
DMF ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
DMSO ジメチルスルホキシド
MeCN アセトニトリル
PE 石油エーテル
TFA トリフルオロ酢酸
TCA トリクロロ酢酸
ATP アデノシン3リン酸
EtOH エタノール
Ph フェニル
Me メチル
Et エチル
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
BSA ウシ血清アルブミン
DTT ジチオスレイトール
NMR 核磁気共鳴
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
TLC 薄層クロマトグラフィー
Rt 保持時間。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、Qは、0〜2個のヘテロ原子を含むC6−10アリールまたは5〜10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Qは、場合により、置換フェニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、またはベンゾイソチアゾリルである。
【0035】
いくつかの実施形態において、Qは、0〜5個のJ基で置換される;いくつかの実施形態において、0〜3個のJ基で置換される;いくつかの実施形態において、0〜1個のJ基で置換される。
【0036】
ある実施形態において、各Jは、CN、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−(U)−(C6−10アリール)、−(U)−(5〜12員ヘテロアリール)、−(U)−(3〜12員ヘテロシクリル)、−(U)−(C3−10脂環式)、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、および−SON(Rから成る群より独立して選択され;
Uは、C1−10アルキルであり、0〜1個のメチレン単位は、−NR−、−O−、または−S−によって独立して置換され;
mは、0または1である。
【0037】
一部の実施形態において、Jは、CN、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−NH−(C1−6アルキル)−(3〜8員ヘテロシクリル)、−O−(C1−6アルキル)−(3〜8員ヘテロシクリル)、3〜8員ヘテロシクリル、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、またはSON(Rであり、ここで、各Jは、場合により独立して0〜5個のRによって置換される。ある実施形態において、Jは、−N(R、OR、または場合により置換された5〜8員ヘテロシクリルである。特定の実施形態において、Jは、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニルから選択される場合により置換された基である。
【0038】
ある実施形態において、各Jは、0〜5個のR、他の実施形態において、0〜3個のR、なお他の実施形態において、0〜1個のRによって場合により独立して置換される。
【0039】
本発明のある実施形態において、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、ハロゲン、NO、CN、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、COH、OCF、CF、COCH、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)0−1−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−N(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−NH、および−(C1−4アルキル)0−1−(3〜7員ヘテロシクリル)から選択される。
【0040】
ある実施形態において、各Rは、0〜5個のJ、ある実施形態において、0〜3個のJ;ある実施形態において、0〜1個のJによって場合により独立して置換される。
【0041】
他の実施形態において、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、COCH、−(C1−4アルキル)−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−N(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−NH、および−(C1−4アルキル)0−1−(3〜7員ヘテロシクリル)から選択される。
【0042】
ある実施形態において、各Rは、0〜5個のJ;ある実施形態において、0〜3個のJ;ある実施形態において、0〜1個のJによって場合により独立して置換される。
【0043】
ある好ましい実施形態において、各RおよびRは独立してHである。ある実施形態において、RおよびRはどちらもHである。
【0044】
本発明のある実施形態において、Rは、5−8員モノシクリルである。一部の実施形態において、Rは、C3−8脂環式である。他の実施形態において、Rは、5〜6員のアリール環またはヘテロアリール環である。なお他の実施形態において、Rは、必要に応じて置換された6員アリールまたは0〜2個の窒素原子を有する6員へテロアリール環である。特定の実施形態において、Rは、フェニル、ピリジル、ピラジニル、またはピリミジル環である。一部の実施形態において、Rは、フェニル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2,4−ピリミジル、または3,5−ピリミジル環である。
【0045】
ある実施形態において、Rは、0〜5個のJR2;ある実施形態において、0〜3個のJR2;ある実施形態において、0〜1個のJR2によって場合により置換される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態において、JR2は、ハロ、オキソ、C1−6アルキル、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、5〜10員ヘテロアリール、−C1−6アルキル−(5〜10員ヘテロアリール)、3〜10員ヘテロシクリル、−C1−6アルキル−(3〜10員ヘテロシクリル)、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、NO、CN、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、またはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここで、該鎖の3個までのメチレン単位は、独立して、化学的に安定な配置で、−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、または−CO−によって場合により置換され;各JR2は、独立して、場合により0個の5Rで置換される。いくつかの実施形態において、JR2は、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、または−(C1−6アルキル)−SRから選択され;ここで、各JR2は、独立して、場合により0〜5個のRで置換される。
【0047】
ある実施形態において、各JR2は、0〜5個のRによって場合により独立して置換される;ある実施形態において、0〜3個のR。ある実施形態において、0〜1個のR
【0048】
ある実施形態において、変数は表1の化合物で示されている通りである。
【0049】
1つの実施形態において、本発明は、表1に示される化合物からなる。
【0050】
(表1)
【0051】
【化15】

一般合成方法
本発明の化合物は、以下の一般スキームおよび後の調製実施例に示されるような方法によって一般的に調製され得る。
【0052】
(スキーム1)
【0053】
【化16】

(試薬および条件):(a)R−Hal、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、PtBu、NaCO、DMF、80℃;(b)EtSiH、EtN、PdCl、DCM、室温;(c)Q−Hal、Pd(OAc)、Josiphos、tBuONa、DME、90℃;(d)ピリジニウム塩酸塩、150℃。
【0054】
上記のスキーム1は、本発明の化合物Iを調製するために使用される一般合成経路を示し、ここで、QおよびRは、本明細書中に記載の通りである。式Iの化合物は、中間体1(実施例の段落で記載される)から調製され得る。誘導体2の形成は、当該分野で周知のSuzukiカップリング法を使用することにより、触媒としてパラジウムの存在下で、ホウ酸エステル誘導体1をハロゲン化物で処理することによって達成される。この反応は、種々の置換ハロゲン化物R−Halで行われ得る。トリエチルシランによる2の脱保護は、3の形成をもたらし、3は、当該分野で周知のBuchwaldカップリング法を用いてアリールハロゲン化物と反応して、化合物4を生じ得る。この反応は、種々のアリールハロゲン化物Q−Halで行われ得る。酸性条件下での4の脱保護は、Iの形成をもたらす。
【0055】
したがって、本発明はまた、本発明の化合物を調製するプロセスも提供する。
【0056】
本発明の1つの実施形態は、式Iの化合物:
【0057】
【化17】

(ここで、QおよびRは、本明細書中で規定される通りである)を調製するプロセスを提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
a)式1の化合物:
【0058】
【化18】

(ここで、PGは、適切な窒素保護基である)と、R−hal(ここで、Rは、本明細書中で規定される通りであり、そしてhalは、ハロゲンである)とを反応させて、式2の化合物:
【0059】
【化19】

(ここで、RおよびPGは、本明細書中で規定される通りである)を形成する工程;
b)適切な窒素脱保護条件下で式2の化合物を脱保護し、式3の化合物:
【0060】
【化20】

(ここで、Rは、本明細書中で規定される通りである)を形成する工程;
c)適切な窒素−アリールカップリング条件下で式3の化合物をQ−halにカップリングして、式4の化合物:
【0061】
【化21】

(ここで、RおよびQは、本明細書中で規定される通りである)を形成する工程;
d)ピリジニウム塩酸塩の存在下で(または当業者に公知の他の酸化条件で)式4の化合物を加熱し、式Iの化合物を形成する工程。
【0062】
適切な窒素保護基、窒素保護条件、および窒素脱保護条件は、当業者に公知である。例としては、Greene,T.W.,Wuts,P.Gin“ProtectiveGroupsinOrganicSynthesis”,第3版,JohnWiley&Sons,NewYork:1999に詳説されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物:
【0064】
【化22】

(ここで、QおよびRは、本明細書中で規定される通りである)を調製するプロセスを提供し、この方法は、式1の化合物:
【0065】
【化23】

(ここで、PGは、適切な窒素保護基である)と、R−hal(ここで、Rは、本明細書中で規定される通りであり、halは、ハロゲンである)とを、適切なカップリング条件下で反応させて、式2の化合物:
【0066】
【化24】

(ここで、RおよびPGは、本明細書中で規定される通りである)を形成する工程を、包含する。
【0067】
本発明のなお別の実施形態は、式Iの化合物:
【0068】
【化25】

(ここで、QおよびRは、本明細書中で規定される通りである)を調製するプロセスを提供し、この方法は、式3の化合物:
【0069】
【化26】

を、適切な窒素−アリールカップリング条件下でQ−halにカップリングさせて、式4の化合物:
【0070】
【化27】

(ここで、RおよびQは、本明細書中で規定される通りである)を形成する工程を、包含する。
【0071】
適切な窒素−アリールカップリング条件は、当業者に公知である。これらの条件は、通常、パラジウム触媒、塩基、および溶媒を含む。例としては、Buchwald−Hartwig反応およびその変法、(Pd触媒および塩基)、ならびにUllman反応(CuI、触媒、および塩基)が挙げられるが、これらに限定されない。適切なカップリング条件もまた、当業者に周知であり、そして代表的には、パラジウム触媒、塩基、および溶媒を含む。例としては、Suzukiカップリングが挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
製薬組成物
上述のように、本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤である化合物を提供し、それゆえ本化合物は、これに限定されるわけではないが、自己免疫性、炎症性、増殖性、または過剰増殖性疾患あるいは免疫媒介疾患を含む疾患、障害または状態の治療に有用である。したがって本発明の別の態様において、製薬的に許容される組成物が提供され、これらの組成物は、本明細書で記載する化合物のいずれかを含み、場合により製薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む。ある実施形態において、これらの組成物は場合により、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。
【0073】
本発明の化合物のいくつかが、処置のための遊離形で、または適切な場合にはその製薬的に許容される誘導体として存在しうることも認識されるであろう。本発明により、製薬的に許容される誘導体としては、これに限定されるわけではないが、製薬的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、または必要とする患者への投与時に本明細書に別途記載されるような化合物を直接または間接的に提供できる、他のいずれかのその付加体または誘導体または塩、あるいはその代謝産物または残留物が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用するように、「製薬的に許容される塩」は、健全な医療上の判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適切であり、合理的な利益/リスク比と釣り合っている、それらの塩を指す。「製薬的に許容される塩」は、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物あるいはその阻害活性代謝産物または残留物を直接または間接的にどちらかで提供することができる、本発明の化合物のいずれかのエステルの非毒性塩または塩を意味する。本明細書で使用するように、「その阻害活性代謝産物または残留物」という用語は、代謝産物またはその残留物もTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)プロテインキナーゼの阻害剤であることを意味する。
【0075】
製薬的に許容される塩は、当分野で公知である。たとえばS.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み入れられている、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に製薬的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の製薬的に許容される塩は、適切な無機および有機酸および塩基に由来する塩を含む。製薬的に許容される非毒性酸添加塩の例は、無機塩、たとえば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸を用いて、または有機酸、たとえば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸を用いて、あるいはイオン交換などの当分野で使用される他の方法を使用することによって、形成されたアミノ基の塩である。他の製薬的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明は、本明細書で開示された化合物のいずれかの塩基性窒素含有基の4級化も考える。水または油溶性あるいは分散性生成物は、そのような4級化によって得られうる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる製薬的に許容される塩としては、適切な場合、非毒性アンモニウム、4級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成されたアミンカチオンが挙げられる。
【0076】
上述のように、本発明の製薬的に許容される組成物はさらに、本明細書で使用されるように、所望の特定の投薬形態に適するような、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤または分散助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存料、固体バインダ、潤滑剤などを含む、製薬的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、製薬的に許容される組成物を調合するのに使用される各種の担体およびその調製のための既知の技法を開示している。いずれかの望ましくない生物効果を生成することによって、またはそうでなければ製薬的に許容される組成物の他のいずれかの成分と有害な方法で相互作用することによって、いずれかの在来の担体媒体が本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であると考えられる。製薬的に許容される担体として作用しうる物質のある例としては、これに限定されるわけではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白質、たとえばヒト血清アルブミン、緩衝物質、たとえばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、たとえば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖、たとえばラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、たとえばコーンスターチおよびジャガイモデンプン、セルロースおよびその誘導体、たとえばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤、たとえばココアバターおよび坐剤ワックス、油、たとえばラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油、グリコール、たとえばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、エステル、たとえばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、寒天、緩衝剤、たとえば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液はもちろんのこと、他の非毒性適合性潤滑剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが挙げられ、同様に着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、着香料および香料、保存料、および抗酸化剤も、調合者の判断に従って組成物中に存在しうる。
【0077】
本発明の製薬的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に経口的に、経直腸的に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏、または滴剤によってなど)、頬側に、経口または経鼻スプレーなどとして、処置される感染の重症度に応じて投与されうる。ある実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日につき対象の体重の、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgの投薬レベルで、1日1回以上、経口または非経口的に投与されうる。
【0078】
経口投与用の液体投薬形態としては、これに限定されるわけではないが、製薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体投薬形態は、たとえば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などの、当分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有しうる。不活性希釈剤以外に、経口組成物は湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、着香料、および香料などのアジュバントも含みうる。
【0079】
注射用調製物、たとえば滅菌注射用水性または油性懸濁剤は、分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して既知の技術に従って調合されうる。滅菌注射用調製物は、たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液などの、非毒性非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤、懸濁剤またはエマルジョンでもありうる。利用されうる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.(米国薬局方)、および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として慣習的に利用される。この目的で、合成モノまたはジグリセリドを含むいずれの無刺激性固定油も利用されうる。加えてオレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製に使用される。
【0080】
注射用調合物はたとえば、細菌保持フィルタを通じた濾過によって、または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を包含させることによって、滅菌されうる。
【0081】
本発明の化合物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を低速化させることがしばしば望ましい。このことは、不十分な水溶性を持つ結晶性またはアモルファス物質の液体懸濁剤の使用によって実現されうる。そして化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、次いで溶解速度は結晶サイズおよび結晶形に依存しうる。あるいは非経口投与化合物形の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成されうる。注射用デポー形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーへの化合物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製されうる。化合物のポリマーに対する比および利用された特定のポリマーの性質によって、化合物放出速度が制御されうる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用調合物は、化合物を体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン内に捕捉することによっても調製される。
【0082】
経直腸および経膣投与用組成物は好ましくは、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔内で溶融して活性化合物を放出する適切な非刺激性賦形剤または担体、たとえばココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスと混合することによって調製されうる坐剤である。
【0083】
経口投与用の固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体投薬形態において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な製薬的に許容される賦形剤、または担体、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸ジカルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤、たとえばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)バインダ、たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴム、c)保湿剤、たとえばグリセロール、d)崩壊剤、たとえば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、たとえばパラフィン、f)吸収促進剤、たとえば4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、たとえばカオリンおよびベントナイト粘土、およびi)潤滑剤、たとえばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形態は緩衝剤も含みうる。
【0084】
同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤はもちろんのこと、高分子量ポリエチレングリコールなども使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルのフィラーとしても利用されうる。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体投薬形態は、コーティングおよびシェル、たとえば腸溶コーティングおよび当分野で公知の他のコーティングを用いて調製されうる。それらは乳白剤を場合により含有し、活性成分のみを、または腸間のある部分において優先的に、場合により遅延方式で放出する組成物の固体投薬形態でもありうる。使用されうる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤はもちろんのこと、高分子量ポリエチレングリコールなども使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルのフィラーとしても利用されうる。
【0085】
活性化合物は、上記のような1つ以上の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形でもありうる。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体投薬形態は、コーティングおよびシェル、たとえば腸溶コーティング、制御放出コーティングおよび製薬調合分野で公知の他のコーティングによって調製されうる。そのような固体投薬形態において、活性化合物は少なくとも1つの不活性希釈剤、たとえばスクロース、ラクトース、またはデンプンと混合されうる。そのような投薬形態は、通常の慣行どおりに、不活性希釈剤以外の追加の物質、たとえば錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤、たとえばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースも含みうる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形態は緩衝剤も含みうる。それらは場合により乳白剤を含有し、活性成分のみを、または腸間のある部分において優先的に、場合により遅延方式で放出する組成物の固体投薬形態でもありうる。使用されうる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0086】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の投薬形態としては、軟膏、ペースト剤、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、液剤、スプレー剤、吸入剤、またはパッチ剤が挙げられる。活性成分は滅菌条件下で製薬的に許容される担体および必要とされうるようないずれかの必要な保存料または緩衝剤と混合されうる。眼用調合物、点耳剤および点眼剤も本発明の範囲内であると考えられる。加えて本発明は、化合物の体への制御放出を提供する追加の利点を有する経皮パッチ剤の使用を考慮する。そのような投薬形態は、化合物を適切な媒体に溶解または懸濁させることによって作製されうる。皮膚での化合物の流量を増加させるために、吸収促進剤も使用されうる。速度は、速度制御膜を提供することによるか、または化合物をポリマーマトリクスまたはゲルに分散させることによってのどちらかで制御されうる。
【0087】
治療方法
一般に上に記載したように、本発明の化合物はプロテインキナーゼの阻害剤として有用である。一実施形態において、本発明の化合物および組成物は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの1つ以上の阻害剤であり、それゆえ、いかなる理論にも拘束されることも望まないが、化合物および組成物は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの1つ以上の活性化が疾患、状態、または障害に関与する疾患、状態、または障害の重症度を治療または軽減するのに特に有用である。Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の活性化が特定の疾患、状態、または障害に関与するとき、疾患、状態、または障害は「Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)媒介疾患」または疾患症状とも呼ばれうる。
【0088】
したがって別の態様において、本発明は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の1つ以上の活性化が疾患状態に関与する疾患、状態、または障害の処置のための、またはその重症度を軽減するための方法を提供する。
【0089】
なお別の態様において、化合物、または化合物を含む製薬的に許容される組成物の有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)媒介疾患の治療のための、またはその重症度を軽減するための方法が提供される。ある実施形態において、前記Tecファミリー媒介疾患は、Itk媒介疾患である。本発明のある実施形態において、化合物または製薬的に許容される「有効量」は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)媒介疾患に対して有効な量である。本発明の方法による化合物および組成物は、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)媒介疾患を治療するまたはその重症度を軽減するのに有効ないずれかの量およびいずれかの投与経路を使用して投与されうる。
【0090】
必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などによって、対象間で変化するであろう。本発明の化合物は好ましくは、投薬の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬単位形で調合される。「投薬単位形」という表現は、本明細書で使用するように、処置される患者に適切な薬剤の物理的に分離された単位を指す。しかしながら本発明の化合物および組成物の1日総使用量は、健全な医療上の判断の範囲内で、担当医によって決定されることが理解されるであろう。いずれかの特定の患者または生物の具体的な有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;利用される具体的な化合物の活性;利用された具体的な組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食餌;利用された具体的な化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;処置の期間;利用された具体的な化合物と組合せて、または同時に使用された薬物;および医療分野で公知の同様の因子を含む各種の因子によって変化するであろう。「患者」という用語は、本明細書で使用するように、動物、好ましくは哺乳類、および最も好ましくはヒトを意味する。
【0091】
「Tecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態」という用語は、本明細書で使用するように、Tecファミリーキナーゼが役割を果たすいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。このような状態としては、制限なく、自己免疫性、炎症性、増殖性、および過剰増殖性疾患ならびに移植器官または組織の拒絶および後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む免疫媒介疾患が挙げられる。
【0092】
たとえばTecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態としては、制限なく、喘息、たとえば気管支、アレルギー性、内因性、外因性および塵埃喘息を含む可逆性閉塞性気道疾患を含む気道の疾患、特に慢性または難治性喘息(たとえば遅発型喘息気道反応亢進)および気管支炎が挙げられる。加えて、Tecファミリーチロシンキナーゼ疾患としては、制限なく、急性鼻炎、アレルギー性、萎縮性鼻炎を含む鼻粘膜の炎症ならびに乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾燥性鼻炎および薬物性鼻炎を含む慢性鼻炎;クループ性、線維素性および偽膜性鼻炎ならびに腺病性鼻炎を含む膜性鼻炎、神経性鼻炎(花粉症)および血管神経性鼻炎を含む季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺および関連疾患、肺線維症および特発性間質性肺炎によって特徴付けられる状態が挙げられる。
【0093】
Tecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態としてはまた、制限なく、関節リウマチ(におけるパンヌス形成)、血清反応陰性脊椎関節症(直性脊椎炎、乾癬性関節炎およびライター症候群を含む)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、および全身性強皮症を含む、骨および関節の疾患が挙げられる。
【0094】
Tecファミリーキナーゼ媒介状態としては、制限なく、乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎および他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、皮膚脈管炎(angiodermas)、脈管炎(vasculitides)、紅斑、皮膚好酸球増加症、ブドウ膜炎、円形脱毛症、および春季カタルを含む皮膚の疾患および障害も挙げられる。
【0095】
Tecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態としては、制限なく、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、消化管から離れた影響を有する食物関連アレルギー、たとえば偏頭痛、鼻炎および湿疹を含む消化管の疾患および障害も挙げられる。
【0096】
Tecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態としては、制限なく、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、らい腫らい、セザリー症候群および特発性血小板減少性紫斑病、血管形成後再狭窄、腫瘍(たとえば白血病、リンパ腫)、アテローム性動脈硬化、および全身性エリテマトーデスを含む他の組織の疾患および障害ならびに全身性疾患も含む。
【0097】
Tecファミリーチロシンキナーゼ媒介状態としては、制限なく、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚および角膜の移植後の急性および慢性同種移植拒絶を含む同種移植拒絶;および慢性移植片対宿主病も含む。
【0098】
併用療法
本発明の化合物および製薬的に許容される組成物が併用療法で使用されうる、すなわち化合物および製薬的に許容される組成物が1つ以上の他の所望の治療薬または医療処置と共に、その前にまたはその後に投与されうることも認識されるであろう。併用計画で利用するための治療法(治療薬または処置)の特定の組合せは、所望の治療薬および/または処置ならびに達成される所望の治療効果の適合性を考慮に入れるであろう。利用された治療法が同じ障害に対して所望の効果を達成しうること(たとえば本発明の化合物が、同じ障害を処置するために使用された別の薬剤と同時に投与されうる)、またはそれらが異なる効果を達成しうる(たとえばいずれかの副作用の制御)ことも認識されるであろう。本明細書で使用するように、特定の疾患、または状態を処置または予防するために通常投与される追加の治療剤は、「処置される疾患または状態に適切である」として既知である。
【0099】
たとえば化学療法剤または他の抗増殖剤は、増殖性疾患および癌を治療するために本発明の化合物と併用されうる。既知の化学療法剤の例としては、これに限定されるわけではないが、たとえば外科手術、放射線療法(ほんの数例として、2、3例を挙げるとガンマ線放射、中性子ビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、陽子線療法、近接照射療法、および全身放射性同位体)、内分泌療法、生物応答修飾物質(2、3例を挙げると、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法および寒冷療法を含む、本発明の抗癌剤と併用されうる他の療法および抗癌剤、いずれの副作用も減弱する薬剤(たとえば制吐剤)、ならびにこれに限定されるわけではないが、アルキル化薬(メクロレタミン、クロランブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)、グリーベック(商標)、アドリアマイシン、デキサメサゾン、およびシクロホスファミドを含む他の承認された化学療法薬が挙げられる。最新の癌療法のより包括的な議論については、http://www.nci.nih.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmのFDA認可抗癌剤、およびThe Merck Manual,Seventeenth Ed. 1999を参照のこと、その全体の内容は参照により本明細書に組み入れられている。
【0100】
本発明の阻害剤とまた併用されうる薬剤の他の例としては、制限なく:アルツハイマー病の治療、たとえばアリセプト(登録商標)およびエクセロン(登録商標);パーキンソン病の治療、たとえばL−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピニロール、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、およびアマンタジン;多発性硬化症(MS)を治療する薬剤、たとえばベータインターフェロン(たとえばアボネックス(登録商標)およびレビフ(登録商標))、コパクソン(登録商標)、およびミトキサントロン;喘息の治療、たとえばアルブテロールおよびシングレア(登録商標);統合失調症を治療する薬剤、たとえばジプレキサ、リスパダール、セロクエル、およびハロペリドール;抗炎症剤、たとえばコルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン;免疫調節および免疫抑制剤、たとえばシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン;神経栄養因子、たとえばアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネル遮断薬、リルゾール、および抗パーキンソン病薬;心臓血管疾患を治療するための薬剤、たとえばベータ遮断薬、ACE阻害剤、利尿剤、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、およびスタチン;肝臓病を治療する薬剤、たとえばコルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウィルス剤;血液障害を治療する薬剤、たとえばコルチコステロイド、抗白血病剤、および成長因子;ならびに免疫不全障害を治療する薬剤、たとえばガンマグロブリンが挙げられる。
【0101】
本発明の組成物中に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を唯一の活性剤として含む組成物中で通常投与される量を超えないであろう。好ましくは、現在開示される組成物中の追加の治療剤の量は、その薬剤を唯一の治療的活性剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲で変化するであろう。
【0102】
医療機器
本発明の化合物またはその製薬的に許容される組成物は、埋め込み型医療機器、たとえばプロテーゼ、人工弁、血管グラフト、ステント、およびカテーテルをコーティングするための組成物中にも包含されうる。したがって本発明は別の態様において、埋め込み型機器をコーティングするための組成物であって、一般に上述したような本発明の、ならびに本明細書のクラスおよびサブクラスの化合物と、前記埋め込み型機器をコーティングするのに適した担体とを含む組成物を含む。なお別の態様において、本発明は、埋め込み型機器であって、一般に上述したような本発明の、ならびに本明細書のクラスおよびサブクラスの化合物と、前記埋め込み型機器をコーティングするのに適した担体とを含む組成物によってコーティングされた埋め込み型機器を含む。
【0103】
たとえば血管ステントは、再狭窄(損傷後の血管壁の再狭小化)を克服するために使用されている。しかしながらステントまたは他の埋め込み型機器を使用する患者は、血栓形成または血小板活性化のリスクがある。これらの望ましくない効果は、キナーゼ阻害剤を含む製薬的に許容される組成物によって機器を事前にコーティングすることによって防止または緩和されうる。適切なコーティングおよびコートされた埋め込み型機器の一般的な作製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは通例、生体適合性ポリマー材料、たとえばハイドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、およびその混合物である。コーティングは、組成物中に制御放出特徴を付与するために、フルオロシリコーン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組合せの適切なトップコートによって場合によりさらに被覆されうる。
【0104】
試験管内使用
本発明でTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの阻害剤として利用される化合物の活性は、試験管内、生体内または細胞系においてアッセイされうる。試験管内アッセイは、活性化Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼのホスホリル化活性またはATPase活性のどちらかの阻害を判定するアッセイを含む。代わりの試験管内アッセイは、阻害剤のTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼに結合する能力を定量化する。阻害剤結合は、結合前に阻害剤を放射性標識することと、阻害剤/Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)複合体を単離することと、放射性標識結合の量を決定することによって測定されうる。あるいは阻害剤結合は、新しい阻害剤が既知の放射性リガンドに結合したTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼを用いてインキュベートされる競合実験を行うことによって決定されうる。
【0105】
「測定可能に阻害する」という用語は、本明細書で使用するように、前記組成物およびTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼを含むサンプルと、前記組成物の非存在下でTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼを含む同等のサンプルとの間での、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼ活性の測定可能な変化を意味する。
【0106】
本発明の別の態様は、式Iの化合物にプロテインキナーゼを接触することによって、酵素活性を調節する方法を提供する。ある実施形態において、前記プロテインキナーゼは、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼである。
【0107】
生物学的サンプル
本発明の別の態様は、生物学的サンプルまたは患者におけるプロテインキナーゼ活性を阻害することに関し、この方法は、式Iの化合物または前記化合物を含む組成物を、患者に投与すること、または前記生物学的サンプルに接触させることを含む。本明細書で使用するように、「生物学的サンプル」という用語は、インビトロサンプルまたは生体外サンプルを意味し、制限なく、細胞培養物またはその抽出物;哺乳類から得た生検物質またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、または他の体液あるいはその抽出物を含む。ある実施形態において、前記プロテインキナーゼは、Tecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼである。
【0108】
生物学的サンプルにおけるTecファミリー(たとえばTec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼ活性の阻害は、当業者に既知である各種の目的のために有用である。そのような目的の例としては、これに限定されるわけではないが、輸血、臓器移植、生体試料貯蔵、および生物学的アッセイが挙げられる。
【0109】
本発明の化合物は、類似の化合物の当業者に既知の方法によって、または下の実施例で示す方法によって一般に調製されうる。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
【0111】
【化28】

3−(イソキノリン−1−イルアミノ)−5−(6−(メチルアミノ)ピラジン−2−イル)ピリジン−2(1H)−オン I.1
(方法1)
【0112】
【化29】

(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル
2−ヒドロキシ−3−ニトロピリドン(2バッチの336g、2.4mol、1.0当量)を、フラスコに入れ、次いでMeOH(6L)を入れた。このフラスコを、窒素でパージし、そして黄色混合物を、30℃まで加熱した。MeOH(600mL)中10% Pd/C(34.5g、10重量%)を、このフラスコに入れ、そしてさらなるMeOH(200mL)で洗浄した。このフラスコを、水素でパージし、そしてこの反応物を、2時間撹拌させた。段階的な発熱を、30分間にわたって観察し、そして温度が50℃に達した後、冷却を適用した。温度は、この後の2時間、40℃に留まった。この時間の後、tlcは、この反応が完了したことを示したので、この反応物を、セライト(400g)でろ過し、暗緑色の溶液を得た。この時点で、両バッチを合わせ、そしてこの溶液を、真空下で濃縮して、粗アミンを茶色固体として得た(538.6g、102%、MeOH残渣を含む)。
【0113】
アミン(64.5g、586mmol、1.0当量)を、THF(1.6L)中に溶解し、そしてNaCO(68.3g、644mmol、1.1当量)の水(800mL)中溶液を加えた。この反応物を、0℃まで氷浴で冷却し、そしてベンジルクロロホルメート(92mL、644mmol、1.1当量)を30分間にわたって激しく撹拌しながら滴下した。添加が完了した後、この反応物を、周囲温度まで一晩加温した。この混合物を、水(5L)で希釈し、そして30分間撹拌した。生じた沈殿物を、ろ過によって除いた。この固体を、穏やかに加温してDCM(5L)中に溶解し、そして生じた溶液を、水(2x1L)およびブライン(1x1L)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、そして真空下で濃縮して、所望の生成物を桃色固体として得た(120.4g、423mmol、84%)。
【0114】
(方法2)
【0115】
【化30】

(5−ヨード−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル
(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(410g、1.68mol、1.0当量)を、フラスコに入れ、次いで、DCM(6.6L)およびNIS(378g、1.68mol、1.0当量)を入れた。次いで、この反応物を、周囲温度で一晩撹拌した。tlc分析は、出発物質がまだ存在していることを示したので、さらなる量のNIS(25g、0.11mmol、0.07当量)を加え、そしてこの反応物を、さらに3時間撹拌した。この反応物のNMR分析は、87%の変換を示したので、この反応混合物をろ過し、そして赤色固体をDCM(2L)およびEtO(2L)で洗浄した。次いで、この固体を、希チオ硫酸ナトリウム水溶液(2L中2g)中でスラリー化し、ろ過し、次いで2度水中でスラリー化した(2×1.5L)。この薄桃色固体を、フィルター上で乾燥させ、次いで、真空下50℃で一晩乾燥させ、所望の生成物を薄桃色固体として得た(287g、775mmol、46%)。
【0116】
この反応物からのろ過液を、希チオ硫酸ナトリウム水溶液(4L中4g)およびNaCl水溶液(4L中640g)で洗浄した。暗赤色/紫色の有機層を、MgSO(225g)で乾燥させ、そして真空下で濃縮した。暗赤色/紫色の残渣を、DCM(1L)中で10分間スラリー化し、ろ過しそして再びDCM(150mL)中でスラリー化した。ろ過およびEtO(100mL)中でのスラリー化の後、固体をろ過し、そしてフィルターパッド上で乾燥させて、さらに所望の生成物を桃色固体として得た(31.7g、86mmol、5%)。全収量;318.7g、861mmol、51%。
【0117】
(方法3)
【0118】
【化31】

(5−ヨード−2−メトキシ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル
(5−ヨード−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル3(551g、1.49mol、1.0当量)をフラスコに入れ、次いで、CHCl(7.4L)を入れた。暗所で、炭酸銀(528.9g、1.92mol、1.3当量)およびヨウ化メチル(940mL、15.1mol、10.1当量)をフラスコに入れ、そしてこの反応物を、周囲温度で一晩撹拌した。LC分析が、生成物への約68%の変換を示したので、さらなる量の炭酸銀(35g、127mmol、0.09当量)を加え、そしてこの反応物を、周囲温度で66時間撹拌した。この反応混合物を、セライト(300g)を通してろ過し、そしてこのフィルターパッドを、CHClで洗浄した(5×500mL)。合わせた有機抽出物を、真空下で濃縮して、橙色油状物(588.5g)を得、これを2つのバッチに分けて、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(2×2Kg)によって精製し、1:1 EtOAc/ヘキサンで溶出して、所望の生成物を橙色油状物として得、立てたまま薄桃色固体に固化した(495.7g、1.29mol、87%)。
【0119】
(方法4)
【0120】
【化32】

[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル
(5−ヨード−2−メトキシ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(100g、260.5mmol、1.0当量)、ビス(ピナコレート)ジボロン(69.4g、273.3mmol、1.05当量)および酢酸カリウム(76.64g、780.8mmol、3.0当量)の無水ジオキサン(900mL)中混合物を、脱気し、そして窒素でフラッシュした。PdCl(PPH(5.48g、7.8mmol、3mol%)を加え、そしてこの反応物を、還流まで一晩過熱した。周囲温度まで冷ました後、真空下で溶媒を除去し、そして残渣を、酢酸エチル中に溶解し、ブライン水溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、そして真空下で溶媒を除去した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(1.2L SiO、最小限のDCM中でロード)によって精製し、20% EtOAc/石油エーテルで溶出して、濃縮の後に、100gの橙色油状物を得、これを、立てたまま固化した。これを、n−ヘプタン(500mL)で処理し、そして還流まで過熱した。生じたものを冷却して、沈殿物をろ過により収集し、そしてヘキサンで洗浄して、所望の生成物を、金色固体として得た(65.25g、169.8mmol、65%)。
【0121】
(方法5)
【0122】
【化33】

tert−ブチル 6−クロロピラジン−2−イルメチルカルバメート
tert−ブチルメチルカルバメート(JACS,2003,125,7307−7312に記載の方法と実質的に同様である以下の方法によって調製した)(10.52g、80.21mmol、1.05当量)を、乾THF(120mL)中に溶解し、そして氷浴中で冷却した。NaH(3.51g、87.84mmol、60%、1.15当量)を少しずつ加え、そして得られた懸濁疫を、室温で1時間撹拌した。この懸濁液を、氷浴中で冷却し、そして2,6−ジクロロピラジン(11.38g、76.39mmol、1当量)を少しずつ加えた。この反応混合物を、室温で一晩撹拌した。
【0123】
溶媒を減圧下で除去し、そして得られた物質を、酢酸エチルと飽和NaCOとで分配した。水層を、酢酸エチルで抽出し(4×100mL)、そして合わせた有機物を、ブライン(1×200mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮して、暗黄色油状物を得た。この油状物を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中7%EtOAc、ヘキサン中でロード、600mLシリカ)によって精製し、黄色油状物を得た(11.48g、収率62%)。
H(CDCl):1.5−1.6(9H,s),3.4(3H,s),8.2(1H,s),9.2(1H,s);ES+244.2(90%),246.3(40%)。
【0124】
(方法6)
【0125】
【化34】

tert−ブチル6−(5−(N−ベンジルカルバメート)−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート
tert−ブチル6−クロロピラジン−2−イルメチルカルバメート(11.48g、47.11mmol、1.5当量)、ベンジル2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン−3−イルカルバメート(12.07g、31.41mmol、1当量)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(1.81g、3.14mmol、0.1当量)およびNaCO(47.1mL、94.2mmol、2M、3当量)を、乾DMF(240mL)中に溶解/懸濁した。この懸濁液を、真空/Nサイクル(×5)で脱気し、そしてトリ−tert−ブチルホスフィン(9.3mL、3.14mmol、10重量%、0.1当量)のヘキサン溶液を加えた。この反応混合物を、80℃で一晩撹拌した。
【0126】
室温まで冷却した後、溶媒を、減圧下で除去し、そして残渣を、EtOAc/水混合物中に懸濁した。これを、セライトを通してろ過し、EtOAc/水で十分に洗浄した。飽和NaCOをろ液に加え、有機層を、分離し、そして水層をEtOAc(3×200mL)でさらに抽出した。合わせた有機物を、ブラインで洗浄し(3×100mL)、NaSOで乾燥させ、ろ過し、そして減圧下で濃縮して、茶色ゴム状物(23.06g)を得た。このゴム状物を、カラムクロマトグラフィー(40%ヘキサン中EtOAc、シリカ上に乾燥ロード、1Lシリカ)によって精製し、淡黄色固体を得た。得られた固体を、直ちにEtOAc/ヘキサンから再結晶させて、淡黄色の、光沢のある粉末を得た(8.22g、収率56%)。
H(CDCl):1.6(9H,s),3.5(3H,s),4.1(3H,s),5.2−5.3(2H,s),7.3−7.5(5H,m),8.5(1H,s),8.6(1H,s),8.9−9.1(2H,brm);ES+466.4(100%),467.4(30%)。
【0127】
(方法7)
【0128】
【化35】

tert−ブチル6−(5−アミノ−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート
tert−ブチル6−(5−(N−ベンジルカルバメート)−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート(8.20g、17.62mmol、1当量)を、乾DCM(100mL)中に溶解し、そしてPdCl(0.94g、5.28mmol、0.3当量)、トリエチルアミン(1.25g、1.7mL、12.33mmol、0.7当量)およびトリエチルシラン(8.19g、11.3mL、70.46mmol、4当量)を順次加えた。この反応物を、室温で1.25時間撹拌し、シリカ(50mL)を加え、得られた懸濁液を、減圧下で濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィー(50%ヘキサン中EtOAc、シリカ上に乾燥ロード、500mLシリカ)によって精製して、黄色ゴム状物を得た(3.94g、収率67%)。このゴム状物を、直ちにEtOAc/ヘキサンから再結晶化させ、クリーム色の粉末を得た(3.38g、収率58%)。
H(CDCl):1.6(9H,s),3.5(3H,s),4.1(3H,s),7.5−7.6(1H,m),8.2−8.3(1H,m),8.6(1H,s),9.0(1H,s);ES+332.3(100%),333.3(20%)。
【0129】
(方法8)
【0130】
【化36】

tert−ブチル6−(5−(イソキノリン−1−イルアミノ)−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート
tert−ブチル6−(5−アミノ−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート(100mg、0.30mmol、1当量)、1−クロロイソキノリン(59mg、0.36mmol、1.2当量)、Pd(OAc)(6.8mg、30.2μmol、0.1当量)、Josiphos(16.7mg、30.2μmol、0.1当量)およびtert−ブトキシドナトリウム(41mg、0.42mmol、1.4当量)を、2.5mL V字底Wheatonバイアル中に置き、そして乾DME(0.5mL)を加えた。得られた混合物を、90℃で一晩撹拌した。得られた混合物を、室温まで冷まし、DCMで希釈し、シリカ(10mL)を加え、減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィー(50%ヘキサン中EtOAc、シリカ上に乾燥ロード、100mLシリカ)によって精製して、黄褐色泡状物を得た(76.6mg、収率56%)。
H(CDCl):1.5−1.6(9H,s),3.5−3.6(3H,s),4.2(3H,s),7.2(1H,m),7.6(1H,m),7.7(1H,m),7.8(1H,m),7.9−8.1(2H,m),8.1(1H,m),8.5(1H,s),8.7(1H,s),9.0−9.1(1H,s),9.7−9.9(1H,brs);ES+459.5(100%),460.5(40%)。
【0131】
(方法9)
【0132】
【化37】

3−(イソキノリン−1−イルアミノ)−5−(6−(メチルアミノ)ピラジン−2−イル)ピリジン−2(1H)−オン I.1
tert−ブチル6−(5−(イソキノリン−1−イルアミノ)−6−メトキシピリジン−3−イル)ピラジン−2−イルメチルカルバメート(75mg、0.16mmol、1当量)およびピリジニウム塩酸塩(378mg、3.27mmol、20当量)を、150℃で10分間撹拌し、室温まで冷まし、そして飽和NaCO(10mL)で希釈した。得られた懸濁液を、超音波処理し、そしてろ過した。収集した固体を、水(3×10mL)、イソプロパノール(1×5mL)、ジエチルエーテル(3×10mL)およびペンタン(3×10mL)で洗浄し、淡茶色粉末を得た(14.9mg、収率27%)。
H(DMSO):2.8−3.0(3H,s),7.0−7.1(1H,m),7.2−7.3(1H,m),7.6−7.9(5H,m),8.0−8.2(3H,m),8.9−9.0(1H,s),9.4−9.5(1H,s),12.0−12.8(1H,brs);ES+345.3(100%),346.3(20%)、
【0133】
式Iの種々の他の化合物を、本明細書中に記載の方法と実質的に同様の方法によって調製した。これらの化合物の性質決定データ(HPLC、LC/MS(実測値)およびH NMRデータを含む)を、下記の表2にまとめる。
【0134】
H NMRデータを、表2にまとめ、そして構造と一致していることを見出した。H−NMRスペクトルを、そうでないことが示されない限り、Bruker DPX 400装置を用いて、重水素化DMSO中で400MHzで記録した。
【0135】
LCMSサンプルを、MicroMass Quattro Micro質量分析機で、エレクトロスプレーイオン化を用いて単一MSモードで操作して、分析した。サンプルを、クロマトグラフィーを用いてこの質量分析機に導入した。全ての質量分析物についての移動相は、10mM pH7の酢酸アンモニウムおよび1:1アセトニトリル−メタノール混合物からなり、カラム勾配条件は、5%〜100%アセトニトリル−メタノール、4.5分間にわたる勾配時間、ACE C83.0×75mmカラム上での6.2分間の実行時間である。流量は、1.0ml/分である。
【0136】
本明細書中で使用される場合、用語「Rt(分)」は、化合物に関連するHPLC保持時間を分単位でいう。そうでないことが示されない限り、報告される保持時間を得るために使用されるHPLC法は、以下である:
カラム:ACE C8カラム、4.6×150mm
勾配:0〜100%アセトニトリル+メタノール 60:40(20mMTrisホスフェート)
流量:1.5mL/分
検出:225nm。
【0137】
化合物番号は、表1に列挙した化合物番号と対応する。
【0138】
【化38】

(実施例2 Itk阻害アッセイ)
本発明の化合物は、放射能ベースまたは分光光度アッセイのどちらかを使用してヒトItkキナーゼの阻害剤として評価した。一般に、表1の化合物を含む本発明の化合物は、Itkの阻害に有効である。
【0139】
Itk阻害アッセイ:放射能ベースアッセイ
アッセイは、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.01% BSAおよび1mM DTTの混合物中で実施した。最終基質濃度は、15μM[γ−33P]ATP(400μCi33P ATP/μmol ATP、Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals)および2μMペプチド(SAM68 protein Δ332−443)であった。アッセイは、30nM Itkの存在下で25℃にて実施した。ATPおよび目的の試験化合物を除いて、上記の試薬すべてを含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。ストック溶液50μLを96ウェルプレートに入れ、試験化合物の連続希釈(通例、2倍の連続希釈によって、15μMの最終濃度から開始)を含有するDMSOストック1.5μLの添加を2通り続けた(最終DMSO濃度1.5%)。プレートを25℃にて10分間予備インキュベートして、反応を[γ−33P]ATP 50μLの添加(最終濃度15μM)によって開始した。
【0140】
反応を10分後に、TCA/ATP混合物(20% TCA、0.4mM ATP)50μLの添加によって停止した。反応混合物全体(150μL)の添加の前に、Unifilter GF/C 96ウェルプレート(Perkin Elmer Life Sciences,Cat no.6005174)をMilli Q水50μLによって予備処理した。プレートをMilli Q水200μLによって、続いてTCA/ATP混合物(5% TCA、1mM ATP)200μLによって洗浄した。この洗浄サイクルをさらに2回反復した。乾燥後、シンチレーションカウンティング(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)の前に、Optiphase ‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)30μLをウェルに添加した。
【0141】
IC50データは、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、初期速度データの非線形回帰分析から計算した。アッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSAおよび1mM DTTの混合物中で実施した。最終基質濃度は、7.5μM[γ−33P]ATP(400μCi33P ATP/μmol ATP、Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals)および3μMペプチド(SAM68 protein Δ332−443)であった。アッセイは、50nM Itkの存在下で25℃にて実施した。ATPおよび目的の試験化合物を除いて、上記の試薬すべてを含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。ストック溶液50μLを96ウェルプレートに入れ、試験化合物の連続希釈(通例、2倍の連続希釈によって、50μMの最終濃度から開始)を含有するDMSOストック2μLの添加を2通り続けた(最終DMSO濃度2%)。プレートを25℃にて10分間予備インキュベートして、反応を[γ−33P]ATP 50μLの添加(最終濃度7.5μM)によって開始した。
【0142】
反応は10分後に、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN20 100μLの添加によって停止した。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96ウェルプレート(Millipore,Cat no.MAPHN0B50)は、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN20 100μLの添加前に、停止したアッセイ混合物170μLの添加によって予備処理した。プレートは、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN20 4x200μLによって洗浄した。乾燥後、シンチレーションカウンティング(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)の前に、Optiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)30μLをウェルに添加した。
【0143】
Ki(app)データは、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、初期速度データの非線形回帰分析から計算した。
【0144】
Itk阻害アッセイ:分光光度アッセイ
化合物は、標準共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.,(1998)7,2249)を使用して、Itkを阻害するその能力についてスクリーニングする。
【0145】
アッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA、1mM DTT、2.5mMホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼの混合物中で実施する。アッセイでの最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)および3μMペプチド(ビオチン化SAM68 Δ332−443)である。アッセイは、100nM Itkの存在下で25℃にて実施する。
【0146】
ATPおよび目的の試験化合物を除いて、上記の試薬すべてを含有するアッセイストック緩衝溶液を調製する。ストック溶液60μlを96ウェルプレートに入れ、試験化合物の連続希釈(通例、15μMの最終濃度から開始)を含有するDMSOストック2μlの添加を続ける。プレートを25℃にて10分間予備インキュベートして、ATP 5μlの添加によって反応を開始させる。初期反応速度は、10分間の時間経過にわたってMolecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダを用いて決定する。IC50およびKiデータは、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、非線形回帰分析から計算する。
【0147】
(実施例3 Btk阻害アッセイ)
本発明の化合物は、放射能ベースアッセイを使用してヒトBtkキナーゼの阻害剤として評価されうる。
【0148】
Btk阻害アッセイ:放射能ベースアッセイ
アッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSAおよび1mM DTTの混合物中で実施する。アッセイでの最終基質濃度は、50μM[γ−33P]ATP(200μCi33P ATP/μmol ATP、Amersham Pharmacia Biotech,Amersham,UK/Sigma Chemicals)および2μMペプチド(SAM68 Δ332−443)である。アッセイは25℃にて25nM Btkの存在下で実施する。ペプチドおよび目的の試験化合物を除いて、上記の試薬すべてを含有するアッセイストック緩衝溶液を調製する。ストック溶液75μLを96ウェルプレートに入れ、試験化合物の連続希釈(通例、15μMの最終濃度から開始)を含有するDMSOストック2μLの添加を2通り続ける(最終DMSO濃度2%)。プレートを25℃にて15分間予備インキュベートして、ペプチド25μL(最終濃度2μM)の添加によって反応を開始させる。バックグラウンドカウントは、ペプチドによる開始前にアッセイストック緩衝液およびDMSOを含有するウェルを管理するために、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 100μLの添加によって決定する。
【0149】
反応は10分後に、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 100μLの添加によって停止させた。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96ウェルプレート(Millipore,Cat no.MAPHN0B50)は、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN20 100μLの添加前に、停止されたアッセイ混合物170μLの添加によって予備処理する。プレートは、0.2Mリン酸+0.01% TWEEN20 4x200μLによって洗浄する。乾燥後、シンチレーションカウンティング(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)の前に、Optiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)30μLをウェルに添加する。
【0150】
データ点すべての平均バックグラウンド値を除去した後に、Ki(app)データを、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、非線形回帰分析から計算する。
【0151】
(実施例4 RLK阻害アッセイ)
化合物は、標準共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.,(1998)7,2249)を使用して、Rlkを阻害するその能力についてスクリーニングした。アッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSAおよび1mM DTTの混合物中で実施した。アッセイでの最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)および10μMペプチド(Poly Glu:Tyr 4:1)であった。アッセイは、40nM Rlkの存在下で30℃にて実施した。共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0152】
ATPおよび目的の試験化合物を除いて、上記の試薬すべてを含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。ストック溶液60μlを96ウェルプレートに入れ、試験化合物の連続希釈(通例、7.5μMの最終濃度から開始)を含有するDMSOストック2μlの添加を続けた。プレートを30℃にて10分間予備インキュベートして、ATP 5μlの添加によって反応を開始した。初期反応速度は、10分間の時間経過にわたってMolecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダを用いて決定した。IC50およびKiデータは、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、非線形回帰分析から計算した。
【0153】
概して、本発明の化合物(表1における化合物を含む)は、RLKの阻害に有効である。
【0154】
本発明者らは本発明の多くの実施形態を記載してきたが、本発明の化合物、方法、およびプロセスを利用する他の実施形態を提供するために本発明者らの基本的な実施例が変更されうることが明らかである。したがって本発明の範囲は、本明細書で例示のために示された特定の実施形態によってよりもむしろ、添付の請求項によって定義されることが認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
Qは、C6−10アリール、または、O、NおよびSから選択される1〜4個のへテロ原子を含む5〜10員へテロアリールであって、Qは、0〜5個のJによって場合により置換され;
Rは、H、または、C1−3アルキル、C1−2ハロアルキル、ハロ、CN、NO、OH、O(C1−4アルキル)、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)もしくはC1−2ハロアルキルで必要に応じて置換されたC1−6アルキルであり、
は、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、3〜8員飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環式環;あるいは窒素、酸素または硫黄から独立して選択される0〜5個のへテロ原子を有する、8〜12員飽和、部分不飽和、または完全不飽和2環式環であり;Rは、0から5個のJR2によって場合により置換され;
各RおよびRは独立して、H、ハロゲン、またはハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CHの0〜5回の出現によって場合により置換されたC1−4脂肪族、またはFによって0〜5回場合により置換されたC1−2脂肪族であり;
各JおよびJR2は、独立して、ハロゲン、−NO、−CN、U、−(U)−(C6−10アリール)、−(U)−(5−12員ヘテロアリール)、−(U)−(3−12員ヘテロシクリル)、−(U)−(C3−10脂環式)、−OR、−SR、−N(R、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)N(R、−NRC(S)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)N(R、−C(S)N(R、−OC(O)N(R、−OC(O)R、−C(O)N(OR)R、−C(NOR)R、−S(O)、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−N(OR)R、−C(=NH)−N(R、−P(O)、−PO(R、−OPO(R、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(C1−6アルキル)、=NNHSO(C1−6アルキル)、=NOH、または=NRであり、各JおよびJR2が独立して、かつ必要に応じて0−5個のRで置換され、
各Rは独立して、ハロゲン、NO、CN、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、O(C1−4ハロ脂肪族)、CO(C1−4脂肪族)、COH、CO(C1−4脂肪族)、C1−6脂肪族、C1−4ハロ脂肪族、フェニル、−O(Ph)、5〜6員ヘテロアリール、C3−8脂環式、5〜8員ヘテロシクリル、−C1−6脂肪族−(Ph)、−C1−6アルキル−(5〜6員ヘテロアリール)、−C1−6アルキル−(C3−8脂環式)、−C1−6アルキル−(5〜8員ヘテロシクリル)、またはC1−10アルキリデン鎖であり、該鎖の2個までのメチレン単位がO、N、またはSによって場合により置換され;各Rは、0〜5個のJによって独立して場合により置換され;
各Rは独立して、H、C1−6脂肪族、C1−4ハロ脂肪族、CO(C1−4脂肪族)、CO(C1−4脂肪族)、−SO(C1−4脂肪族)、−SO(フェニル)、フェニル、5〜6員ヘテロアリール、5〜8員ヘテロシクリル、C3−8脂環式、−C1−6脂肪族−(Ph)、−C1−6アルキル−(5〜6員ヘテロアリール)、−C1−6アルキル−(5〜8員ヘテロシクリル)、−C1−6アルキル−(C3−8脂環式);またはC1−10アルキリデン鎖であり、該鎖の2個までのメチレン単位がO、N、またはSによって場合により置換され;該Rは、0〜6個のJによって場合により置換され;
あるいは同じ置換基または別の置換基上の2個のRは、各R基が結合される原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する3〜8員飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環式または2環式環を形成し;該環は、ハロゲン、NO、CN、C1−4脂肪族、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族の0〜4回の出現によって場合により独立して置換され、該R1−4脂肪族基のそれぞれは非置換であり;
各Jは独立して、ハロゲン、NO、CN、C1−4脂肪族、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−COH、−CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、およびハロ(C1−4脂肪族)であり、該J1−4脂肪族基のそれぞれは非置換である)
の化合物またはその製薬的に許容される塩。
【請求項2】
が2−ピリジルであり、かつRおよびRがHである場合、Qは、非置換フェニルでも、2−CN−フェニルでも、2−ピリジルでも、2−キノリニルでもない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが、C6−10アリール、または0〜2個のへテロ原子を含む5〜10員へテロアリールであり、Qが、0〜3個のJで必要に応じて置換されている、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、フェニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、またはベンゾイソチアゾリルから選択される基であり、該基が、0〜5個のJで場合により置換されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Qが最大3個のJ基で置換され、各Jが、CN、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、 U, −(U)−(C6−10アリール)、−(U)−(5〜12員ヘテロアリール)、−(U)−(3〜12員ヘテロシクリル)、−(U)−(C3−10脂環式)、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、および−SON(Rから独立して選択され;
UがC1−10アルキルであり、0〜1個のメチレン単位が、−NR−、−O−、または−S−によって独立して置換され;
mが、0または1である;
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
各Jが、CN、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−NH−(C1−6アルキル)−(3〜8員ヘテロシクリル)、−O−(C1−6アルキル)−(3〜8員ヘテロシクリル)、3〜8員ヘテロシクリル、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、またはSON(Rであり;各Jが、0〜5個のRによって場合により独立して置換される;
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、−N(R、−OR、または0〜5個のRによって場合により置換される5〜8員ヘテロシクリルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がピペリジニル、ピペラジニル、またはピロリジニルから選択される基であり、該基が0〜5個のRによって場合により置換される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、ハロゲン、NO、CN、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、OH、O(C1−4脂肪族)、COH、OCF、CF、COCH、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)0−1−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−N(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−NH、および−(C1−4アルキル)0−1−(3〜7員ヘテロシクリル)から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、COCH、−(C1−4アルキル)−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−N(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)−NH、および−(C1−4アルキル)0−1−(3〜7員ヘテロシクリル)から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
各RおよびRが独立してHである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
およびRがどちらもHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、5個までのJR2によって場合により置換される5〜8員モノシクリルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
が、5個までのJR2によって場合により置換されるC3−8脂環式である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が5〜6員アリールまたはヘテロアリール環であり、該環が5個までのJR2によって場合により置換される、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
が0〜2個の窒素原子を有する、必要に応じて置換された6員アリールまたは6員ヘテロアリール環であり、該環が5個までのJR2によって場合により置換される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
がフェニル、ピリジル、ピラジニル、またはピリミジル環であり、該環が5個までのJR2によって場合により置換される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、フェニル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2,4−ピリミジル、または3,5−ピリミジル環であり、該環が5個までのJによって場合により置換される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
各JR2が、ハロ、オキソ、C1−6アルキル、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、5−10員ヘテロアリール、−C1−6アルキル−(5−10員ヘテロアリール)、3〜10員のヘテロシクリル、−C1−6アルキル−(3−10員ヘテロシクリル)、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、NO、CN、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、またはC1−6アルキリデン鎖から選択され、該鎖の3個までのメチレン単位が、化学的に安定な配置で−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、または−CO−によって独立して置換され;各JR2が0〜5個のRによって独立して場合により置換される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
各JR2が−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、または−(C1−6アルキル)−SRから選択され;各JR2が0〜5個のRによって独立して場合により置換される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
以下:
【化2】

から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物と、製薬的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルとを含む組成物。
【請求項23】
患者においてプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該患者に請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項24】
生物学的サンプルにおいてプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該生物学的サンプルに請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を接触させる工程を含む、方法。
【請求項25】
患者においてTecファミリー(Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼ活性を阻害する方法であって、該患者に請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項26】
生物学的サンプルにおいてTecファミリー(Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼ活性を阻害する方法であって、該生物学的サンプルに請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を接触させる工程を含む方法。
【請求項27】
患者においてItkキナーゼ活性を阻害する方法であって、該患者に請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項28】
生物学的サンプルにおいてItkキナーゼ活性を阻害する方法であって、該生物学的サンプルに請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を接触させる工程を含む方法。
【請求項29】
自己免疫性疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、過剰増殖性疾患または免疫媒介疾患を治療する方法であって、治療を必要とする患者に請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項30】
自己免疫性疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、過剰増殖性疾患または免疫媒介疾患、移植器官または組織の拒絶および後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療のための薬剤から選択される追加の治療剤を前記患者に投与するさらなる工程を含み:
該追加の治療剤が治療されている前記疾患に適切であり;
該追加の治療剤が前記組成物と共に単一の投薬形態として、または該組成物から独立して複数の投薬形態の一部として投与される;
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
喘息、急性鼻炎、アレルギー性、萎縮性鼻炎、慢性鼻炎、膜性鼻炎、季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺、肺線維症、特発性間質性肺炎、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、ベーチェット病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、乾癬、全身性強皮症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎および他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、皮膚脈管炎、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、ブドウ膜炎、円形脱毛症、春季カタル、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、食物関連アレルギー、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、らい腫らい、セザリー症候群および特発性血小板減少性紫斑病、血管形成後再狭窄、腫瘍、アテローム性動脈硬化、全身性エリテマトーデス、同種移植拒絶、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚および角膜の移植後の急性および慢性同種移植拒絶;または慢性移植片対宿主病を治療する方法であって、治療を必要とする患者に請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項32】
式I:
【化3】

の化合物(ここで、QおよびRが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を調製するためのプロセスであって:
a)適切なカップリング条件下で、PGが適切な窒素保護基である式1:
【化4】

の化合物とR−hal(ここで、Rが請求項1〜21のいずれか一項で定義され、halがハロゲンである)とを反応させ、式2:
【化5】

の化合物(ここで、RおよびPGが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を形成する工程、
b)適切な窒素脱保護条件下で、式2の化合物を脱保護して、式3:
【化6】

の化合物(ここで、Rが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を形成する工程、
c)適切な窒素−アリールカップリング条件下で、式3の化合物をQ−halにカップリングさせて、式4:
【化7】

の化合物(ここで、RおよびQが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を形成する工程、ならびに
d)適切な酸化条件下で、式4の化合物を加熱して、式Iの化合物を形成する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項33】
式I:
【化8】

の化合物(ここで、QおよびRが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を調製するためのプロセスであって:
適切なカップリング条件下で、PGが適切な窒素保護基である式1:
【化9】

の化合物とR−hal(ここで、Rが請求項1〜21のいずれか一項で定義され、halがハロゲンである)と反応させ、式2:
【化10】

の化合物(ここで、RおよびPGが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を形成する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項34】
式I:
【化11】

の化合物(ここで、QおよびRが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を調製するためのプロセスであって:
適切な窒素−アリールカップリング条件下で、式3:
【化12】

の化合物(ここで、Rが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)をQ−halにカップリングさせて、式4:
【化13】

の化合物(ここで、RおよびQが請求項1〜21のいずれか一項で定義される)を形成する工程、
を包含する、プロセス。

【公表番号】特表2009−506123(P2009−506123A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529213(P2008−529213)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/033791
【国際公開番号】WO2007/027729
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】