説明

非塩素系フロン冷媒用冷凍機油

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非塩素系フロン冷媒用冷凍機油に関し、詳しくは、特定の構造を有するペンタエリスリトールエステルを主成分とする、各種性能に優れた非塩素系フロン冷媒用冷凍機油に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来から、冷凍機油としては、40℃における動粘度が10〜 200 cSt のナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、アルキルベンゼン、ポリグリコール系油、エステル油およびこれらの混合物またはこれらの各種基油に添加剤を配合したものが一般的に使用されている。
【0003】一方、冷凍機に用いられるフロン系冷媒としては、CFC−11、CFC−12、CFC− 113、HCFC−22等が使用されている。
【0004】これらのフロン系冷媒のうち、CFC−11、CFC−12、CFC−113 等の炭化水素の全ての水素を塩素を含むハロゲンで置換した形のフロンは、オゾン層破壊につながるとして規制の対象となっている。従って、HFC−134aやHFC−152a等の非塩素系フロンがCFCの代替として使用されつつあるが、特に、HFC−134aは、従来から家庭用冷蔵庫、エアコン等の多くの冷凍機に使用されているCFC−12と熱力学的物性が類似しており、代替冷媒として有力である。
【0005】冷凍機油には種々の要求性能があるが、冷媒との相溶性は、冷凍機の潤滑性およびシステム効率の面から極めて重要である。しかしながら、ナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、アルキルベンゼンおよび従来から知られているエステル油等を基油とした冷凍機油はHFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性がほとんどないため、HFC−134aとの組み合せで使用すると、常温において二層分離を起こし、冷凍システム内で最も重要な油戻り性が悪くなって冷凍効率の低下あるいは潤滑性が不良となって圧縮機の焼付き発生等の実用上様々な不都合が発生し使用に耐えない。またポリグリコール類も高粘度指数を有する冷凍機油として知られており、例えば特公昭57-42119号公報、特公昭61-52880号公報、特開昭57-51795号公報等に記載されている。しかるにこれら先行技術に具体的に開示されているポリグリコール油ではやはりHFC−134aとの相溶性が十分でないため上記と同じ問題が生じて実用上使用できない。
【0006】また、米国特許 4,755,316号には、HFC−134aと相溶性のあるポリグリコール系冷凍機油が開示されている。また、本発明者等は、HFC−134aとの相溶性が従来公知の冷凍機油と比較して大幅に優れているポリグリコール系冷凍機油を先に開発し、既に出願している(特開平 1−256594号公報、同 1−271491号公報等)。しかしながら、ポリグリコール系油は、水の溶解性が高く、また電気絶縁性が劣るという問題を有することが判明した。
【0007】一方、家庭用冷蔵庫等の圧縮機に用いられる冷凍機油は、高い電気絶縁性が要求される。公知の冷凍機油のうち、最も高い絶縁性を有するものはアルキルベンゼンや鉱油であるが、前述のようにアルキルベンゼンや鉱油はHFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性がほとんどない。従って、HFC−134a等の非塩素系フロンとの高い相溶性と、高い絶縁性とを兼ね備えた冷凍機油は未だ出現していない。
【0008】本発明者等は、上記要求に応え得る冷凍機油を開発すべく研究を重ねた結果、特定構造を有するエステルがHFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性に優れ、かつ高い電気絶縁性を有するものであり、さらに優れた潤滑特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】本発明は、特定構造を有するエステルを主成分とするHFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性に優れ、かつ高い電気絶縁性を有する非塩素系フロン冷媒用潤滑油を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ペンタエリスリトールと 2−エチルヘキサン酸および 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるエステルを主成分とすることを特徴とする非塩素系フロン冷媒用冷凍機油(但し、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有する場合を除く)。
【0011】以下、本発明の内容をより詳細に説明する。本発明に用いられるペンタエリスリトールエステルは、ペンタエリスリトールとモノカルボン酸とのエステルであって、通常、ペンタエリスリトールと、 2−エチルヘキサン酸および 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物とを反応させることにより得られる。得られた生成物を精製して副生成物や未反応物を除去してもよいが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の冷凍機油の優れた性能に悪影響を及ぼさない限り、存在していても支障はない。
【0012】本発明に用いられるペンタエリスリトールと 2−エチルヘキサン酸および 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるペンタエリスリトールエステルは、動粘度は 100℃において 2〜 150 cSt 、好ましくは 5〜 100 cSt であるのが望ましい。
【0013】本発明の冷凍機油は、上記ペンタエリスリトールエステルを単独で用いてもよいが、必要に応じて他の冷凍機油基油を混合して使用することもできる。この基油として好ましいものとしては、以下のものが例示できる。
一般式
【0014】
【化1】


[式中、RおよびRは水素または炭素数1〜18のアルキル基を示し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、aは5〜70の整数を示す]で表されるポリオキシアルキレングリコールまたはそのエーテル。
一般式
【0015】
【化2】


[式中、R〜R10は水素または炭素数1〜18のアルキル基を示し、R〜R13は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、b〜dは5〜7の整数を示す]で表されるポリオキシアルキレングリコールグリセロールエーテル。
一般式
【0016】
【化3】


示し、またR14およびR20は炭素数1〜8のアルキレン基、R15およびR17は炭素数 2〜16のアルキレン基、R16およびR21は炭素数1〜15のアルキル基、R18およびR19は炭素数1〜14のアルキル基をそれぞれ示し、さらにeおよびfは0または1の数を、gは0〜30の整数をそれぞれ示す]で表されるエステル。
一般式
【0017】
【化4】


[式中、R22〜R27は炭素数3〜15のアルキル基を、R28は炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示し、またhは1〜5の整数を示す]で表されるペンタエリスリトールジカルボン酸エステル。
【0018】これらの油は単独でも数種類組み合わせて用いてもよい。なお、パラフィン系およびナフテン系の鉱油、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン等の油も混合してよいが、この場合は非塩素系フロン溶媒との相溶性が落ちる。
【0019】これら他の冷凍機油基油の配合量は、本発明の冷凍機油の優れた性能を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるエステルの割合が、冷凍機油全量に対し、通常50重量%超、好ましくは70重量%以上になるように配合される。
【0020】また、本発明の冷凍機油において、その安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を配合することができる。ここでいうフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものであり、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばブチルフェニルグリシジルエーテル、ベンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルが好ましい。グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステル等が挙げられ、好ましいものとしては、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が例示できる。
【0021】またエポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。またエポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物が例示できる。
【0022】本発明の冷凍機油組成物において、その耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはこの誘導体である。具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等が挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート等が挙げられる。酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩が挙げられる。塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート等が挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、トリブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイェート、トリス・クロロエチルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート等が挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、トリブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリクレジルホスファイト等が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。これらのリン化合物を配合する場合、冷凍機油全量に対し0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2.0重量%の割合で含有せしめることが望ましい。
【0023】これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルおよびこれらの混合物が特に好ましい。これらのエポキシ化合物を配合する場合、冷凍機油全量に対し0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2.0重量%の割合で含有せしめることが望ましい。また、上記エポキシ化合物とリン化合物を併用してもよいことは勿論である。
【0024】さらに本発明における冷凍機油に対して、その性能をさらに向上させるため、必要に応じて従来より公知の冷凍機油添加剤、例えば、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等の添加剤を単独で、または数種組み合わせて配合することも可能である。これらの添加剤の合計配合量は、通常、冷凍機油全量に対し、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0025】本発明のペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるエステルを主成分とする冷凍機油は、通常、冷凍機油として使用されている程度の動粘度および流動点を有していればよいが、低温時の冷凍機油の固化を防ぐためには流動点が−10℃以下、好ましくは−20℃〜−80℃であることが望ましい。また、圧縮機との密封性を保つためには100℃における動粘度が 2 cSt 以上、好ましくは 3 cSt 以上が望ましく、低温における流動性および気化器における熱交換の効率を考慮すると、 100℃における動粘度が 150 cSt 以下、好ましくは 100 cSt 以下であるのが望ましい。
【0026】本発明の冷凍機油は、従来公知の冷凍機油に比べて非塩素系フロンとの相溶性が大幅に優れている。非塩素系フロンとしては、具体的には1,1,2,2 −テトラフルオロエタン(HFC− 134)、1,1,1,2 −テトラフルオロエタン(HFC−134a)、 1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、トリフルオロメタン(HFC−23)等が例示されるが、好ましいものはHFC−134aである。また、本発明の冷凍機油は、非塩素系フロンとの高い相溶性、高い電気絶縁性を有するだけでなく、潤滑性が高く、吸湿性が低い優れた冷凍機油である。
【0027】本発明の冷凍機油は、往復動式や回転式の圧縮機を有するエアコン、除湿機、冷蔵庫、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に特に好ましく使用できるが、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく使用できる。
【0028】
【実施例】以下、実施例および比較例によって、本発明の内容を更に具体的に説明する。実施例、参考例1〜6および比較例1〜6本実施例、参考例および比較例に用いた冷凍機油を以下に示す。実施例:ペンタエリスリトール(1mol)と2−エチルヘキサン酸(2mol)および3,5,5−トリメチルヘキサン酸(2mol)のテトラエステル。
【0029】参考例1:ペンタエリスリトール(1mol)と 2−エチルヘキサン酸(4mol)のテトラエステル。
【0030】
【化5】


【0031】参考例2:ペンタエリスリトール( 1mol )と 3,5,5−トリメチルヘキサン酸(4mol)のテトラエステル。
【0032】
【化6】


【0033】参考例3:ジペンタエリスリトール( 1mol )とn−ヘキサン酸( 3mol )および 2,4−ジメチルペンタン酸( 3mol )のヘキサエステル。
【0034】
【化7】


【0035】参考例4:ジペンタエリスリトール(1mol)、 3,5,5−トリメチルヘキサン酸(6mol)のヘキサエステル。
【0036】
【化8】


【0037】参考例5:実施例1のエステルを50重量部、実施例5のエステルを50重量部混合したもの。
参考例6:実施例2のエステルを30重量部、実施例5のエステルを40重量部および下記のトリペンタエリスリトール(1mol)、 3−メチルブタン酸(4mol)および 3−メチルペンタン酸(4 mol )のオクタエステルを30重量部混合したもの。
【0038】
【化9】


【0039】比較例1:ナフテン系鉱油( 100℃の動粘度; 5.2 cSt )。
比較例2:分岐鎖型アルキルベンゼン( 100℃の動粘度; 5.0 cSt )。
比較例3:ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル( 100℃の動粘度; 5.4 cSt )。
比較例4:ポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル( 100℃の動粘度; 9.5 cSt )。
比較例5:ペンタエリスリトール( 1mol )とn−ノナン酸( 4mol )のテトラエステル。
比較例6:ペンタエリスリトール( 1mol )とヤシ油のテトラエステル。
【0040】本発明に関わる実施例および参考例1〜6の冷凍機油の基油の性能評価のためにHFC−134aとの溶解性、絶縁特性およびファレックス摩耗試験を評価した。また、比較のために、従来から冷凍機油に使用されている鉱油、アルキルベンゼン、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルおよびポリプロピレングリコールジアルキルエーテルの試験結果を表1に併記する。
【0041】(HFC−134aとの溶解性)内径 6mm長さ 220mmのガラス管に、実施例、参考例および比較例の試料油を 0.2g採取し、さらに冷媒(HFC−134a) 1.8gを採取してガラス管を封入する。このガラス管を所定の温度の低温槽または高温槽に入れ、冷媒と試料油が相互に溶解しあっているか、分離または白濁しているかを観察する。
(絶縁特性)JIS C 2101 に準拠して25℃の試料油の体積抵抗率を測定した。
(FALEX摩耗試験)ASTM D 2670 に準拠して、試料油の温度 100℃、 150lb荷重で、慣らし運転を 1分行なった後に、250lb の荷重の下に 2時間運転し、テストジャーナルの摩耗量を測定した。
(吸湿性)試料油30gを 300mlビーカーに採り、60℃、30%湿度に保たれた恒温恒湿槽に7日間静置した後、カールフィッシャー法により水分を測定した。
【0042】
【表1】


表1の実施例が示すとおり、本発明による冷凍機油は、比較例1〜2および5〜6に比べHFC−134aに対する冷媒溶解性が非常に優れている。
【0043】比較例5のように酸側のアルキル基がすべて直鎖であると溶解性は悪い。また、比較例6のような従来から潤滑油、冷凍機油等に使用されているペンタエリスリトールと天然油脂とのテトラエステルも冷媒の溶解性が悪い。
【0044】比較例3〜4に示すようにポリアルキレングリコールは冷媒溶解性は優れているものの絶縁特性が悪く密閉型のコンプレッサーには使用できない。また、比較例3〜4に示すアルキレングリコール類は、実施例の 5〜10倍の水分吸湿量があり、電気絶縁性、アイスチョーク、耐摩耗性、安定性等の点で実施例よりも劣る。
【0045】また、ファレックスによる摩耗試験においても実施例は、比較例3〜4に比べて同等ないしはそれ以上であることがわかる。
【0046】
【発明の効果】以上の説明と実施例によって明らかなように、この発明の冷凍機油は、水素含有フロン用冷凍機における使用に適当するものであり、密閉型コンプレッサーに不可欠な電気絶縁性に優れていると共に耐摩耗性、非吸湿性も優れた冷凍機油である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ペンタエリスリトールと 2−エチルヘキサン酸および 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるエステルを主成分とすることを特徴とする非塩素系フロン冷媒用冷凍機油(但し、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有する場合を除く)。
【請求項2】 前記ペンタエリスリトールと 2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物からなるエステルを基油とする請求項1に記載の非塩素系フロン冷媒用冷凍機油。
【請求項3】 冷凍機油全量に対し、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも 1種のリン化合物 0.1〜 5.0重量%を必須成分として含有する請求項1または2に記載の非塩素系フロン冷媒用冷凍機油。

【請求項4】 前記エステルの 100℃における動粘度が
2〜 150 cSt であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非塩素系フロン冷媒用冷凍機油

【請求項5】 前記エステルの25℃における体積抵抗
率が4x1014Ωcm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非塩素系フロン冷媒用冷凍機油

【特許番号】特許第3145360号(P3145360)
【登録日】平成13年1月5日(2001.1.5)
【発行日】平成13年3月12日(2001.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−65193
【分割の表示】特願平1−341244の分割
【出願日】平成1年12月28日(1989.12.28)
【公開番号】特開平11−286695
【公開日】平成11年10月19日(1999.10.19)
【審査請求日】平成11年3月11日(1999.3.11)
【出願人】(000004444)日石三菱株式会社 (1,898)
【参考文献】
【文献】特開 平3−200895(JP,A)
【文献】特開 平11−315293(JP,A)
【文献】特開 平3−227397(JP,A)
【文献】特開 平3−88892(JP,A)
【文献】特開 平3−128992(JP,A)
【文献】特開 昭54−64264(JP,A)
【文献】特開 昭56−131548(JP,A)
【文献】特表 平3−505602(JP,A)