説明

非天然アミノ酸を含有するタンパク質の無細胞合成の方法

ポリペプチドの一つまたは複数の特定の残基で非天然アミノ酸を含有するポリペプチドの合成において細菌性無細胞抽出物を利用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
タンパク質合成は、ポリペプチド治療薬、ワクチン、診断薬、および工業用酵素の開発の基礎となる根本的な生物学的プロセスである。組み換えDNA(rDNA)技術の出現により、細胞の触媒機構を利用して所望のタンパク質を産生することが可能となった。これは、細胞環境内で、または細胞に由来する抽出物を用いてインビトロで達成することができる。
【0002】
無細胞タンパク質合成は、インビボタンパク質発現法に対していくつかの長所を提供する。無細胞系は、細胞の代謝資源の全てではないがほとんどを、一つのタンパク質の独占的産生に向けることができる。その上、細胞壁は合成環境を制御させることから、インビトロで細胞壁が存在しないことは有利である。たとえば、発現される遺伝子のコドン使用を反映するようにtRNAレベルを変化させることができる。本発明者らは、細胞の生育または生存率を心配する必要はないので、酸化還元電位、pH、またはイオン強度もまた、インビボより大きい柔軟性で変更させることができる。さらに、精製された適切に折り畳まれたタンパク質産物の直接回収を容易に達成することができる。
【0003】
インビトロ翻訳はまた、非天然および同位元素標識アミノ酸を組み込む能力と共に、インビボで不安定、不溶性、または細胞障害性であるタンパク質の産生能に関して認知される。さらに、無細胞タンパク質合成は、タンパク質操作およびプロテオームスクリーニング技術の変革において役割を果たす可能性がある。無細胞法は、インビボで新規遺伝子産物を発現させるための細胞のクローニングおよび形質転換にとって必要となる面倒なプロセスを迂回して、この分野における基盤技術となりつつある。
【0004】
関連文献
参照により本明細書に具体的に組み入れられる、2006年5月16日に公表された米国特許 7,045,337号。
【0005】
米国特許 6,337,191 B1号(特許文献1);Swartz et al. 米国特許出願第20040209321号(特許文献2);Swartz et al. 国際特許出願公開WO 2004/016778(特許文献3);Swartz et al. 米国特許出願第2005-0054032-A1号(特許文献4);Swartz et al. 米国特許出願第2005-0054044-A1号(特許文献5);Swartz et al.国際特許出願WO 2005/052117(特許文献6)。Calhoun and Swartz (2005) Biotechnol Bioeng 90(5):606-13(非特許文献1);Jewett and Swartz (2004) Biotechnol Bioeng 86(1): 19-26(非特許文献2);Jewett et al. (2002) Prokaryotic Systems for In Vitro Expression. In: Weiner M, Lu Q, editors. Gene cloning and expression technologies. Westborough, MA: Eaton Publishing. p 391-411(非特許文献3);Lin et al. (2005) Biotechnol Bioeng 89(2): 148-56(非特許文献4). (Wang et al. (2001) Science 292(5516):498-500(非特許文献5);Wang et al. (2003) Proc Natl Acad Sci U S A 100(1):56-61(非特許文献6);Chin et al. (2002) J Am Chem Soc 124(31):9026-7(非特許文献7);Farrell et al. (2005) Nat Methods, 2005. 2(5):377-84(非特許文献8);Liu et al. (2003) J Am Chem Soc 125(7): 1702-3(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許6,337,191 B1号
【特許文献2】米国特許出願第20040209321号
【特許文献3】国際特許出願公開WO 2004/016778
【特許文献4】米国特許出願第2005-0054032-A1号
【特許文献5】米国特許出願第2005-0054044-A1号
【特許文献6】国際特許出願WO 2005/052117
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biotechnol Bioeng 90(5):606-13
【非特許文献2】Biotechnol Bioeng 86(1): 19-26
【非特許文献3】Prokaryotic Systems for In Vitro Expression. In: Weiner M, Lu Q, editors. Gene cloning and expression technologies. Westborough, MA: Eaton Publishing, p 391-411
【非特許文献4】Biotechnol Bioeng 89(2): 148-56
【非特許文献5】Science 292(5516):498-500
【非特許文献6】Proc Natl Acad Sci U S A 100(1):56-61
【非特許文献7】J Am Chem Soc 124(31):9026-7
【非特許文献8】Nat Methods, 2005. 2(5):377-84
【非特許文献9】J Am Chem Soc 125(7): 1702-3
【発明の概要】
【0008】
合成されたタンパク質が、一つまたは複数の部位特異的に組み込まれた非天然アミノ酸を含むように改変される、細菌性細胞抽出物を用いたポリヌクレオチド鋳型からの高収率の無細胞タンパク質合成のための方法を提供する。タンパク質は、非天然アミノ酸によってアミノアシル化された少なくとも一つの直交性tRNAを含む無細胞反応混合物において合成され、直交性tRNAは通常、アミノ酸に対応しないコドン、たとえば終止コドン;4 bpコドン等と塩基対を形成する。反応混合物はまた、非天然アミノ酸によって直交性tRNAをアミノアシル化することができるtRNAシンテターゼを含む。通常、細菌性細胞抽出物に存在するプロテアーゼによる分解を受けやすい直交性tRNAシンテターゼは、反応混合物の外で合成されて、ポリペプチド合成の開始前に反応ミックスに加えられる。直交性tRNAは、そこから細胞抽出物が得られる細菌細胞において合成されてもよく、ポリペプチド合成反応の際にデノボで合成されてもよく、または反応ミックスに外因的に加えられてもよい。
【0009】
本発明の方法は、高収率の活性な改変タンパク質を提供する。ジスルフィド結合含有タンパク質、分泌タンパク質、膜結合タンパク質、多量体タンパク質等を含む、このように産生されたタンパク質は、生物活性である。いくつかの態様において、合成は、共役した転写および翻訳反応として行われる。
【0010】
一つの態様において、合成反応条件は、酸化的リン酸化のインビトロ活性化を提供する。酸化的リン酸化の活性化は、電子伝達鎖阻害剤に対する合成の感受性によって証明してもよい。そのような反応は、実質的にポリエチレングリコールを含まない。
【0011】
無細胞タンパク質合成系は、非天然アミノ酸を含有するタンパク質を発現するための柔軟なプラットフォームを提供する。様々な態様において、系は、特異的結果を達成するように改変される。非天然アミノ酸の数および性質は、所望の改変に従って変化する。細菌、古細菌、または哺乳動物種が含まれる様々な供給源が、直交性tRNAおよびtRNAシンテターゼのために用いられる。
【0012】
非天然アミノ酸の挿入およびタンパク質挿入またはフォールディングに影響を及ぼす成分は、任意で反応混合物に加えられる。そのような成分には、終結因子1および2の効果を最小限にするため、ならびに直交成分濃度をさらに最適化するために、高濃度の翻訳因子が含まれる。タンパク質シャペロン(酸化還元酵素およびイソメラーゼのDsbシステム、GroES、GroEL、DNAJ、DNAK、Skpなど)を、反応混合物に外因的に加えてもよく、または細胞抽出物を調製するために用いられる供給源の細胞において過剰発現させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非天然アミノ酸組み込み戦略Iを用いるo-メチル-チロシン(OMe-Tyr)のmGM-CSFへの組み込みのオートラジオグラフィー分析。加えた精製直交性(o-)メタノコッカス・ジャナスシイ(Methanococcus jannaschii)tRNAおよびo-メチル-チロシンシンテターゼの量は、PANOx-SP無細胞反応において多様であった。試料を10%Bis-Tris NuPAGEゲルにおいて泳動させ、Mark 12分子量標準物質と比較した。バンド1は、二量体タンパク質産物からなり、バンド2はo-メチル-チロシンを組み込んだ完全長のタンパク質産物であり、バンド3は、切断型タンパク質産物(残基75位で切断)である。レーン2は、全て天然アミノ酸を有する精製mGM-CSF標準物質を示す。
【図2】異なるプロセス開発戦略を用いたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)におけるo-メチル-チロシンの組み込みに関する無細胞タンパク質合成の収率。活性なCAT濃度を、比色法に基づく活性アッセイ[26]によって決定し、L-[U-14C]-ロイシン取り込み後のシンチレーション計数によって確認した。オートラジオグラフィー分析を、MES緩衝液において10%Bis-Tris NuPAGEゲルにおいて行った。このデータはn=6の実験の平均値である。
【図3】p-アジド-フェニルアラニンを含有するCATのオートラジオグラフィー分析(o-メチル-チロシンおよびp-アセチル-フェニルアラニンの結果は類似であった)。MES緩衝液において泳動させた10%Bis-Tris NuPAGEゲルから、オートラジオグラムを展開した。(A)細胞抽出物(例は、KC6細胞株に由来する)における制御されたtRNA転写および直交性シンテターゼ量を段々に増加させて、30℃で5時間の無細胞反応後の改変タンパク質産生。(B、C)unAA-PANOx-SP系における無細胞タンパク質合成の際のオートラジオグラフィーの時間経過および活性なCATの収率。およそ167μg/mLの直交性p-アジド-フェニルアラニンシンテターゼを、30℃で行われる22時間の無細胞反応において用いた。
【図4】無細胞タンパク質合成反応における発現後の直交性シンテターゼ蓄積のオートラジオグラフィー分析。オートラジオグラムを、MES緩衝液において泳動させた10%ビス-トリスNuPAGEゲルから展開した。p-アジド-フェニルアラニンtRNAシンテターゼは、KC6細胞抽出物におけるプロテアーゼによって重度に分解される。シンテターゼは、ARG1、ARG2、またはMCJ29変異体細胞株を用いて細胞抽出物を産生する場合には分解されない(全ての結果が類似であったため、一つの例を挙げる)。ompT欠失または変異がKC6またはKGK10細胞株に組み込まれると、新たに合成されたシンテターゼは安定である。
【図5】反応戦略I〜IIIcを用いる反応からの活性なクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)の収率は、本発明によって提供される著しい改善を示す。開発段階IおよびII(Developmental phase I and II)は、精製tRNAおよびシンテターゼが生理的な量で組み込まれることを必要とする(収率は実施例1において記述される収率と類似であった)。開発戦略IIIaは、インビボでの直交性シンテターゼおよびtRNAの発現を必要とする(KC6細胞抽出物)。開発戦略IIIbは、インビボでのtRNAの転写および167μg/mL未満の活性な精製直交性シンテターゼの付加を必要とする。開発戦略IIIcは、unAA-PANOx-SP成分比、反応環境、抽出物調製プロトコール、およびtRNA発現の改善の結果としてもたらされた。オートラジオグラフィーによるタンパク質産物の分析により、無細胞反応産物の大部分が、非天然アミノ酸を含有する完全長のタンパク質であることが示される。これらの結果は、n=6より多くの実験において再現された。
【図6】ジスルフィド結合含有タンパク質の改変タンパク質産生。p-アジドおよびp-アセチル-フェニルアラニン非天然アミノ酸は、hGM-CSFおよびmGM-CSFに首尾よく組み込まれた(p-アジド-フェニルアラニン無細胞収率のみを示す)。p-アセチル-フェニルアラニンおよびp-アジド-フェニルアラニンの組み込みの双方に関するオートラジオグラムにより、完全長の改変産物が新規unAA-PANOx-SP無細胞系によって合成されることが確認される。pK7tRNAmjプラスミドを含有するKC6細胞株を用いて細胞抽出物を作製した。それぞれの非天然アミノ酸およびタンパク質に関して、三つの異なる無細胞反応を30℃で6時間行った。
【図7】図6において記述される改変タンパク質産物に関するhGM-CSFおよびmGM-CSFに関する生物活性アッセイの結果。産生されるほぼ全ての完全長産物(可溶性分画)は、正確に折り畳まれ、細胞増殖に基づくアッセイにおいて試験した場合に生物活性を示す。試料は1試料あたり3個ずつ試験した(n=3)。
【図8】unAA(p-アジド-フェニルアラニン)が残基34または182位に組み込まれた完全長のTetA膜タンパク質の無細胞産生のオートラジオグラム。同様に、蔗糖勾配浮遊アッセイによって分離されたTetAタンパク質産物の分布も示す。合成されたTetAタンパク質を、14C-ロイシン取り込み後のその放射活性によって同定した。小胞会合TetAは、分画2まで浮遊するが、凝集TetAは分画5〜7において勾配の底に沈んだままである。グルタメートホスフェート無細胞系を用いて、活性な酸化的リン酸化経路を確実にするこれらの膜タンパク質を合成した。
【図9】残基34位および182位でp-アジド-フェニルアラニンによって改変されているTetAのプロテアーゼK消化のオートラジオグラフィー分析。MES緩衝液中の10%Bis-Tris NuPAGEゲルをこの実験のために用いた。「内部」非天然アミノ酸置換は、膜のペリプラスム側(小胞内部)に存在し、「外部」挿入非天然アミノ酸は、膜の細胞質側(小胞外)に存在する。
【図10】pET24a_MS2cp_T15STOP発現ベクターを用いる無細胞タンパク質合成収率(30μl反応、n=2)。
【図11】天然アミノ酸(+対照)によって合成されたMS2カプシド試料および、15位でのp-アジド-フェニルアラニン(非天然AA)によって終止コドンが抑制されたMS2カプシド試料の10%〜40%(2.5%段階)蔗糖密度勾配速度沈降プロフィール。放射標識MS2外被タンパク質の位置は、取り込まれた14C-ロイシンのシンチレーション計数によって決定される。
【図12】図11において示される蔗糖密度勾配によって分離された非天然アミノ酸試料の分画12〜15、および+対照試料の分画11〜15(分画20μl、7.25μl NuPAGE LDS試料緩衝液-Invitrogen、0.625 mM DTT-Invitrogen)のSDS-Pageゲル(MES泳動緩衝液と共に10%ビストリスゲル、Invitrogen;60 mA泳動条件で60分;SimplySafe Stain, Invitrogen)。MS2外被タンパク質単量体の分子量は13.7 kDaである。
【図13】図12において示されるゲルのオートラジオグラム。
【図14】図14A〜Dは、15位でp-アジド-フェニルアラニンまたはチロシンと共に合成されたVLPから単離されたMS2外被タンパク質の関連するキモトリプシン断片の質量分析。対照およびp-アジド-フェニルアラニン産物をまず単離した後、キモトリプシンによって消化した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
態様の詳細な説明
本発明の方法において、標的タンパク質は、直交性tRNAがアミノ酸に通常対応していないナンセンスコドン、たとえば終止コドン;4 bpコドン等と塩基対を形成する、非天然アミノ酸によってアミノアシル化された少なくとも一つの直交性tRNAを含む無細胞反応混合物において合成される。方法には、共役した転写-翻訳反応が含まれる。本発明は、非天然アミノ酸を含有するポリペプチドを高収率で産生するために、無細胞タンパク質合成の際にナンセンスコドン抑制を用いる。関心対象のポリペプチドには、ジスルフィド結合を含有するタンパク質、融合タンパク質、ウイルス外被タンパク質、および/または細胞膜を通して、または細胞膜内部に初めから分泌されるタンパク質を含む、タンパク質の任意の異種または均質な組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。非天然アミノ酸は、天然において一般的に見いだされない任意のアミノ酸類似体、または類似のものからなり、標的化翻訳後修飾のために用いることができる分子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。反応混合物は細胞抽出物を含み、細胞抽出物は任意でアミノ酸が安定化、レダクターゼが最小化、および/またはプロテアーゼが変異されていてもよい。
【0015】
意外にも、直交性tRNAは無細胞合成用の抽出物が調整される細菌性細胞によって確実に合成することができるが、直交性tRNAシンテターゼは、細菌性細胞抽出物において分解を受けやすいことが見いだされている。この分解における少なくとも一つの要因は、細菌性細胞におけるompTプロテアーゼの存在である。このプロテアーゼは通常、細胞の細胞質内のポリペプチドには接触せず、したがって無傷の細胞における非天然アミノ酸を用いたポリペプチド合成の際には、直交性成分に有害な影響を及ぼさない。本発明の方法において、tRNAシンテターゼは、外因的に合成され、無細胞反応ミックスに加えられる。または、反応ミックスは、ompTが不活化されている、または天然に不活性である細菌性細胞から調製される。
【0016】
本発明の方法は、高収率の活性な改変タンパク質を提供し、その収率はインビボ発現系によって達成されうる収率より大きい可能性がある。本発明の一つの態様において、活性な改変タンパク質の収率は反応混合物の少なくとも約50μg/ml、反応混合物の少なくとも約100μg/ml、反応混合物の少なくとも約250μg/ml、またはそれ以上である。このように産生された標的ポリペプチドの実質的な部分は、通常、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれより多くの所望の非天然アミノ酸を含有する。
【0017】
本明細書において用いられるように、改変タンパク質または標的タンパク質は、既定の部位で少なくとも一つの非天然アミノ酸を含み、1、2、3、4、5個またはそれより多い非天然アミノ酸からなる、または含有してもよい。非天然アミノ酸がポリペプチド中に二つまたはそれより多い部位に存在する場合、非天然アミノ酸は同じかまたは異なりうる。非天然アミノ酸が異なる場合、直交性tRNAおよび同族のtRNAシンテターゼは、それぞれの非天然アミノ酸に関して存在できる。非天然アミノ酸には、p-アセチル-フェニルアラニン、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、およびp-アジド-フェニルアラニンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0018】
本発明の方法は、本来のタンパク質と同等の生物活性を有する、非天然アミノ酸を含有するタンパク質を提供する。組成物におけるタンパク質の比活性は、機能的アッセイにおける活性レベルを決定する段階、非機能的アッセイ、たとえば免疫染色、ELISA、クーマシーまたは銀染色ゲルでの定量等において存在するタンパク質の量を定量する段階、および総タンパク質に対する生物活性タンパク質の比率を決定する段階によって決定してもよい。一般的に、このように定義される比活性は、本来のタンパク質の少なくとも約5%、通常、本来のタンパク質の少なくとも約10%であるが、約25%、約50%、約90%、またはそれより多くてもよい。
【0019】
本発明の方法により、自己組織化ウイルス外被タンパク質の高い収率がもたらされる。タンパク質の実質的な部分、通常少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%またはそれより多くを安定なウイルス様粒子(VLP)に組織化してもよく、この場合安定なVLPは、少なくとも約60ポリペプチド鎖を含むカプシド構造を、生理的条件で長期間、たとえば少なくとも約24時間、少なくとも約1週間、少なくとも約1ヶ月間、またはそれより長い期間維持する。一旦組織化されると、VLPは、pHの変化、熱、凍結、イオンの変化等に曝露されても、本来のウイルス粒子に相応の安定性を有しうる。
【0020】
本発明の方法によって合成されるポリペプチドは、他の非天然アミノ酸に共有結合する非天然アミノ酸を通して、ポリペプチドに対して任意のリガンド(ジスルフィド結合を含有する、または含有しない)を付着させることができる利点を提供する。リンカーを用いて、たとえば二つのポリペプチド鎖のあいだに二つの類似または独自の非天然アミノ酸を連結させてもよい。類似または異なるリガンドを用いる一つまたは複数の部位での部位特異的翻訳後修飾は、穏やかな[3+2]環状付加反応または独自の「ケトンハンドル」を有するリガンド特異的反応性によって行ってもよいが、これらに限定されない。またはアジド基をアルキンに連結させることができるが、この場合いずれかがポリペプチド表面に組み込まれ、一方がリンカーまたはリガンドの一部となる。
【0021】
定義
本発明は、記述される特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、および試薬は変化する可能性があることから、それらに限定されないと理解される。同様に、本明細書において用いられる用語は、特定の態様を記述する目的のみのためであって、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるであろう本発明の範囲を制限することを意図しないと理解される。
【0022】
本明細書において用いられるように、単数形「一つ」、「および」および「その」には、本文がそうでないことを明らかに指示している場合を除き、複数形が含まれる。このように、たとえば「一つの細胞」という言及には、そのような細胞の複数が含まれ、「その培養」という言及には、一つまたは複数の培養および当業者に公知のその同等物等に対する言及が含まれる。本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、そうでないことを明らかに示している場合を除き、本発明が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0023】
「所望のタンパク質」または「選択されたタンパク質」という用語は互換的に用いられ、一般的に少なくとも一つの非天然アミノ酸を含み、非天然アミノ酸がタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおいて特異的部位でコードされる、約5個より多いアミノ酸を有する任意のペプチドまたはタンパク質を指す。ポリペプチドは、細菌性無細胞抽出物が由来する細菌にとって同種であってもよく、細菌性無細胞抽出物において産生されたヒトタンパク質、ウイルスタンパク質、酵母タンパク質等のように、細菌性無細胞抽出物が由来する細菌にとって外因性、つまり異種、すなわち異物であってもよい。
【0024】
哺乳動物ポリペプチドの例には、レニン;ヒト成長ホルモンが含まれる成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA-鎖;インスリン;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子のような凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼまたはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)のようなプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-αおよび-β;エンケファリナーゼ;RANTESおよび他のケモカイン;ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1α);ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン;ミュラー管阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼのような微生物タンパク質;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、または-6(NT-3、NT-4、NT-5、またはNT-6)、またはNGF-βのような神経成長因子のような神経栄養因子;血小板由来増殖因子(PDGF);αFGFおよびβFGFのような線維芽細胞増殖因子;上皮細胞増殖因子(EGF);TGF-αおよびTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5が含まれるTGF-βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-1(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD-3、CD-4、CD-8、およびCD-19のようなCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形態形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、および-γのようなインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、たとえば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、たとえばIL-1からIL-18;スーパーオキシドジスムターゼ;T-細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊加速因子;たとえばAIDSエンベロープの一部のようなウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;抗体;および上記のポリペプチドの任意の断片のような分子が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0025】
関心対象のウイルス外被タンパク質には、任意の公知のウイルス型、たとえば天然痘(痘瘡);ワクシニア;水痘-帯状疱疹が含まれるヘルペスウイルス;HSV1、HSV2、KSVH、CMV、EBV;アデノウイルス;B型肝炎ウイルス;SV40;T4ファージ、T2ファージのようなT偶数系ファージ;ラムダファージ等のようなdsDNAウイルスが含まれる。一本鎖DNAウイルスには、phiX-174;アデノ随伴ウイルス等が含まれる。負鎖RNAウイルスには、麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;RSウイルス(RSV);パラインフルエンザウイルス(PIV);メタニューモウイルス;狂犬病ウイルス;エボラウイルス;インフルエンザウイルス等が含まれる。正鎖RNAウイルスには、ポリオウイルス;ライノウイルス;コロナウイルス;風疹;黄熱病ウイルス;西ナイルウイルス;デング熱ウイルス;ウマ脳炎ウイルス;A型肝炎およびC型肝炎ウイルス;タバコモザイクウイルス(TMV)等が含まれる。二本鎖RNAウイルスには、レオウイルス等が含まれる。レトロウイルスには、ラウス肉腫ウイルス、HIV-1およびHIV-2のようなレンチウイルス等が含まれる。
【0026】
バクテリオファージ、特にMS2バクテリオファージは関心対象である。ミオウイルス科(収縮性のテールを有するファージ)には、ミュー様ウイルス;P1様ウイルス;たとえばP1;phiW39等;P2様ウイルス;SPO-1様ウイルス;T4様ウイルス等が含まれる。ポドウイルス科(短いテールを有するファージ)には、N4-様ウイルス;P22-様ウイルス、たとえばP22;phi-29様ウイルス、たとえばphi-29;T7様ウイルス、たとえばT3;T7;W31等が含まれる。シフォビラーダ科(長い非収縮性のテールを有するファージ)には、c2-様ウイルス;L5-様ウイルス;ラムダ様ウイルス、たとえばファージラムダ、HK022;HK97等;N15-様ウイルス;PhiC31-様ウイルス;psiM1-様ウイルス;T1様ウイルス、たとえばファージT1等が含まれる。ミクロウイルス科(等尺性ssDNAファージ)には、クラミジアミクロウイルス;ミクロウイルス、たとえばファージα3、ファージWA13;ファージG4;ファージphiX174および関連する大腸菌ファージが含まれる。当業者に公知である多くのさらなるファージがなおも分類されていない。多くの外被タンパク質の配列は公共に入手可能である。
【0027】
非天然アミノ酸。本発明の方法において用いることができる非天然アミノ酸の例には、チロシンアミノ酸の非天然類似体;グルタミンアミノ酸の非天然類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然類似体;セリンアミノ酸の非天然類似体;トレオニンアミノ酸の非天然類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、もしくはアミノ置換アミノ酸、またはその任意の組み合わせ、光活性化可能なクロスリンク剤を有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規官能基を有するアミノ酸;もう一つの分子と共有的または非共有的に相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射活性アミノ酸;フォトケージおよび/または光異性化可能なアミノ酸;ビオチンまたはビオチン類似体含有アミノ酸;グリコシル化または炭水化物改変アミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸;重い原子置換アミノ酸;化学的切断可能または光切断可能なアミノ酸;伸長側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含有するアミノ酸;糖置換アミノ酸、たとえば糖置換セリン等;炭素連結糖含有アミノ酸;酸化還元活性アミノ酸;α-ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,α二置換アミノ酸;β-アミノ酸;プロリン以外の環状アミノ酸等が含まれる。
【0028】
関心対象の非天然アミノ酸には、CLICK化学反応に関する反応基(reactant group)を提供するアミノ酸が含まれるがこれらに限定されるわけではない(具体的に参照により本明細書に組み入れられる、Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions Hartmuth C. Kolb, M. G. Finn, K. Barry Sharpless Angewandte Chemie International Edition Volume 40, 2001 , P. 2004を参照されたい)。たとえば、アミノ酸p-アセチル-L-フェニルアラニンおよびp-アジド-L-フェニルアラニンは関心対象である。
【0029】
直交成分。本明細書において用いられるように、直交成分には、非天然アミノ酸によってアミノアシル化されたtRNAが含まれ、この場合直交性tRNAはアミノ酸に通常対応しないコドン、たとえば終止コドン;4 bpコドン等と塩基対を形成する。反応混合物はさらに、同族の直交性tRNAをアミノアシル化する(非天然アミノ酸によって)ことができるtRNAシンテターゼを含んでもよい。そのような成分は、当技術分野において公知であり、たとえば2006年5月16日に公布された米国特許 第7,045,337号において記述されている。直交性tRNAは、セレクターコドン(selector Codon)を認識し、これは終止コドン、たとえばアンバー、オーカー、およびオパールコドン;四つまたはそれより多い塩基のコドン;天然または非天然塩基対に由来するコドン等のようなナンセンスコドンであってもよい。直交性tRNAアンチコドンループは、mRNA上でセレクターコドンを認識して、ポリペプチドにおけるこの部位で非天然アミノ酸を組み込む。
【0030】
直交性tRNAシンテターゼは、好ましくは外因的に合成され、精製されて、本発明の反応ミックスに、通常、少なくとも約10μg/ml、少なくとも約20μg/ml、少なくとも約30μg/ml、および多くて200μg/mlの規定量で付加される。タンパク質は、細菌または真核細胞において合成されて、たとえば当技術分野において公知であるようにアフィニティクロマトグラフィー、PAGE、ゲル排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等によって精製されてもよい。
【0031】
直交性tRNAは、そこから無細胞合成のための抽出物が得られる細胞において合成してもよく;外因的に合成、精製して、反応ミックスに加えてもよく、またはデノボで合成してもよく、この場合無細胞合成反応は、転写および翻訳反応を可能にする。直交性tRNAがそこから無細胞合成のための抽出物が得られる細胞において合成される場合、プロモーター、培地等の適切な選択を通して、発現を制御してもよい。
【0032】
本明細書において用いられるように、インビトロ合成は、生物学的抽出物および/または既定の試薬を含む反応ミックスにおけるポリペプチドの無細胞合成を指す。反応ミックスは、高分子を産生するための鋳型、たとえばDNA、mRNA等;高分子を合成するための単量体、たとえばアミノ酸、ヌクレオチド等、ならびに合成にとって必要な補因子、酵素、および他の試薬、たとえばリボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子等を含むであろう。そのような合成反応系は当技術分野において周知であり、文献に記述されている。無細胞合成反応は、当技術分野において公知であるように、バッチ、連続流、または半連続流として行ってもよい。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、無細胞合成は、酸化的リン酸化が活性化される反応、たとえばCYTOMIM(商標)系において行われる。呼吸鎖および酸化的リン酸化の活性化は、O2の存在下でのポリペプチドの合成の増加によって証明される。酸化的リン酸化が活性化される反応において、O2の存在下での全体的なポリペプチド合成は、HQNOのような特異的電子輸送鎖阻害剤の存在下で、またはO2の非存在下で少なくとも約40%低減される。反応化学は、参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願WO 2004/016778において記述されるとおりであってもよい。
【0034】
CYTOMIM(商標)の合成環境は、グルコースおよびリン酸塩を含有する培地において生育させた細菌性細胞に由来する細胞抽出物を利用し、この場合グルコースは、最初に、少なくとも約0.25%(重量/容積)、より通常少なくとも約1%、および通常多くて約4%、より通常多くて約2%の濃度で存在する。そのような培地の例は、2YTPG培地であるが、定義されている、および定義されていない栄養源の両方を用いることで、大腸菌(E. coli)のような細菌の生育にとって適した培地が多数公表されていることから、当業者は、多くの培養培地がこの目的の対して適合可能であると認識するだろう(グルコース含有培地の例に関しては、Sambrook, J., E.F. Fritsch, and T. Maniatis. 1989. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition. Cold Spring Harbor University Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい)。または、合成培地または複雑な増殖培地のいずれかにおいて高い生育速度を維持するために必要な、グルコースが絶えず供給されるプロトコールにおいて、培養物を生育させてもよい。
【0035】
反応混合物を、小胞、たとえば内膜小胞溶液を含めることによって補給してもよい。提供される場合、そのような小胞は、約0〜約0.5容積、通常、約0.1〜約0.4容積を含んでもよい。
【0036】
いくつかの態様において、PEGは多くて微量、たとえば0.1%未満存在し、0.01%未満であってもよい。PEGを実質的に含まない反応は、十分に低レベルでPEGを含有し、例えば酸化的リン酸化はPEG阻害されない。分子スペルミジンおよびプトレシンをPEGの代わりに用いてもよい。スペルミンまたはスペルミジンは、少なくとも約0.5 mM、通常少なくとも約1 mM、好ましくは約1.5 mM、および多くて約2.5 mMの濃度で存在する。プトレシンは、少なくとも約0.5 mM、好ましくは少なくとも約1 mM、好ましくは約1.5 mM、および多くて約2.5 mMの濃度で存在する。スペルミジンおよび/またはプトレシンは、初めの細胞抽出物に存在してもよく、または個別に加えてもよい。
【0037】
反応混合物におけるマグネシウム濃度は全体的な合成に影響を及ぼす。しばしば、細胞抽出物にはマグネシウムが存在し、濃度を最適化するために、これをさらなるマグネシウムによって調節してもよい。そのような方法において有用なマグネシウム塩の供給源は当技術分野において公知である。本発明の一つの態様において、マグネシウム源は、グルタミン酸マグネシウムである。好ましいマグネシウム濃度は少なくとも約5 mM、通常少なくとも約10 mM、および好ましくは少なくとも約12 mM、ならびに多くて約25 mM、通常多くて約20 mMの濃度である。合成を増強するまたは費用を低減する可能性がある他の変更には、反応混合物からHEPES緩衝液およびホスホエノールピルビン酸を省略することが含まれる。
【0038】
系は、好気性および嫌気性条件で行うことができる。特に15μlより大きい反応に関しては、合成収率を増加させるために酸素を供給してもよい。反応チャンバーの頭隙に酸素を満たすことができる;酸素を反応混合物に注入してもよい;等。酸素を持続的に供給するか、またはより長い反応時間の場合にはタンパク質発現の過程のあいだ反応チャンバーの頭隙を再充填することができる。硝酸塩、硫酸塩、またはフマル酸塩のような他の電子受容体も同様に、必要な酵素が細胞抽出物において活性であるように、細胞抽出物の調製に関連して供給してもよい。
【0039】
酸化的リン酸化の活性化のために外因性の補因子を加える必要はない。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、NAD+、またはアセチル補酵素Aのような化合物を用いてタンパク質合成収率を補足してもよいが必要ではない。ホスホエノールピルビン酸シンテターゼ(Pps)の代謝的阻害剤であるシュウ酸を加えることは、タンパク質の収率を増加させるために有益である可能性があるが、必要ではない。
【0040】
無細胞タンパク質合成の鋳型は、mRNAまたはDNAのいずれかとすることができるが、好ましくは、認識可能なプロモーターをもつDNA鋳型からmRNAを持続的に生成する複合系である。内因性のRNAポリメラーゼを用いるか、または外因性のファージRNAポリメラーゼ、典型的にT7またはSP6を反応混合物に直接加える。または、RNA依存的RNAポリメラーゼであるQBレプリカーゼのための鋳型にメッセージを挿入することによって、mRNAを持続的に増幅することができる。精製mRNAは一般的に、それが反応混合物に加えられる前に化学修飾によって安定化される。mRNAレベルを安定化させるために役立つように、ヌクレアーゼを抽出物から除去することができる。鋳型は関心対象の任意の特定の遺伝子をコードしうる。
【0041】
他の塩、特にマンガンのような生物学的に関連する塩も同様に、加えてもよい。カリウムは一般的に、少なくとも約50 mMおよび多くて約250 mMの濃度で存在する。アンモニウムは、通常多くて200 mM、より通常多くて約100 mMの濃度で存在する。通常、反応物はpH 約5〜10、および温度約20℃〜50℃の範囲で維持され、より通常pH約6〜9、および温度約25℃〜40℃の範囲で維持される。これらの範囲は、関心対象の特異的条件に関して拡大してもよい。
【0042】
望ましくない酵素活性に対する代謝阻害剤を反応混合物に加えてもよい。または、望ましくない活性の原因となる酵素もしくは因子を、抽出物から直接除去してもよく、または望ましくない酵素をコードする遺伝子を不活化もしくは染色体から欠失させてもよい。
【0043】
生物学的抽出物。本発明の目的に関して、生物学的抽出物は、タンパク質合成機構にとって必要な成分、通常、細菌性細胞抽出物を含む任意の調製物であり、そのような成分は、所望のタンパク質をコードする核酸を発現することができる。このように、細菌性抽出物は、所望のタンパク質をコードするメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を翻訳することができる成分を含み、任意で所望のタンパク質をコードするDNAを転写することができる成分を含む。そのような成分には、たとえばDNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAポリメラーゼ)、所望のタンパク質をコードするDNAの転写開始にとって必要な任意の転写活性化因子、転移リボ核酸(tRNA)、アミノアシル-tRNAシンテターゼ、70Sリボソーム、N10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、ホルミルメチオニン-tRNAfMetシンテターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、IF-1、IF-2およびIF-3のような開始因子、EF-Tu、EF-Ts、およびEF-Gのような伸長因子、RF-1、RF-2、およびRF-3のような終結因子等が含まれる。
【0044】
本発明の好ましい態様において、反応混合物は、細菌細胞からの抽出物、たとえば当技術分野において公知である大腸菌S30抽出物を含む。いくつかの態様において、細菌株は、それが直交性tRNAを内因性に発現するように改変される。簡便のため、抽出物の供給源として用いられる生物は供給源となる生物と呼ばれることがある。活性抽出物を産生するための方法は当技術分野において公知であり、たとえば、それらはPratt (1984), Coupled transcription-translation in prokaryotic cell-free systems, p. 179-209, in Hames, B. D. and Higgins, S. J. (ed.), Transcription and Translation: A Practical Approach, IRL Press, New York. において見いだされる可能性がある。Kudlicki et al. (1992) Anal Biochem 206(2):389-93は、超遠心によってS30からのリボソーム分画を採取することによって、S30大腸菌無細胞抽出物を改変している。Zawada and Swartz Biotechnol Bioeng, 2006. 94(4): p. 618-24およびLiu et al., 2005, Biotechnol Progr 21 :460は、正確な調製のための改変技法を教示している。
【0045】
抽出物が由来する細菌株を本発明の目的に関してさらに改変してもよい。一つの態様において、抽出物は、一つまたは複数のタンパク質を欠損する大腸菌株、たとえばKC6(A19△tonA△tnaA△speA△endA△sdaA△sdaB△gshA met+)、KGK10(TrxB-HAが含まれうるA19△speA△tnaA△tonA△endA△sdaA△sdaB△gshA△gor met+、 ARG1(A19△tonA△tnaA△speA△endA△sdaA△sdaB△gshA met+ OmpTD83A)、ARG2(TrxB-HAが含まれうるA19△speA△tnaA△tonA△endA△sdaA△sdaB△gshA△gor met+ OmpTD83A);MCJ29(A19△speA△tnaA△ompT△ptrC△degP△tonA△endA met+)株等に由来する。
【0046】
本明細書において用いられるフォールディングは、アミノ酸残基の相互作用が構造を安定化するように作用する、ポリペプチドおよびタンパク質の三次元構造の形成プロセスを指す。非共有的相互作用は、構造を決定するために重要であり、膜がタンパク質に接触する効果は、正確な構造にとって重要となる可能性がある。天然に存在するタンパク質およびポリペプチド、またはその誘導体および変種の場合、適当なフォールディングの結果は典型的に、最適な生物活性がもたらされる配置であり、これは、活性に関するアッセイ、たとえばリガンド結合、酵素活性等によって簡便にモニターすることができる。
【0047】
いくつかの例において、たとえば所望の産物が合成起源(synthetic origin)の産物である場合、生物活性に基づくアッセイはあまり意味がないであろう。そのような分子の適当なフォールディングは、物理的特性、エネルギー的検討、モデリング試験等に基づいて決定されてもよい。
【0048】
膜会合タンパク質の合成の後に、すなわち膜のリフォールディングまたは翻訳後導入の非存在下で、活性な膜会合型の直接単離を行ってもよい。分離技法は、当技術分野において公知であるように膜の完全性を維持する条件を利用してもよく、または当技術分野において一般的に実践される単離膜タンパク質に対して用いられるいくつかの膜活性洗浄剤のいずれかを用いてもよい。
【0049】
関心対象の分離技法には、アフィニティクロマトグラフィーが含まれる。アフィニティクロマトグラフィーは、生体高分子に通常存在する非常に特異的な結合部位を利用して、特定のリガンドに対するその結合能に基づいて分子を分離する。リガンドがタンパク質試料に対して明らかに提示されるように、共有結合によりリガンドを不溶性の多孔性支持媒質に付着させ、それにより、一つの分子種の天然の生物特異的結合を用いて混合物から第二の種を分離および精製する。抗体は、アフィニティクロマトグラフィーにおいて一般的に用いられる。好ましくは、ミクロスフェアまたはマトリクスは、アフィニティクロマトグラフィーの支持体として用いられる。そのような支持体は当技術分野において公知であり、市販されており、これにはリンカー分子にカップリングさせることができる活性化支持体が含まれる。たとえばアガロースまたはポリアクリルアミドに基づくAffi-Gel支持体は、蠕動ポンプまたは重力流溶出によるほとんどの研究室規模の精製にとって適した低圧ゲルである。圧安定性のマクロ孔ポリマーに基づくAffi-Prep支持体は、調製的およびプロセス規模の利用に適している。
【0050】
タンパク質はまた、イオン交換クロマトグラフィーによって分離してもよく、および/または当技術分野において公知の方法を用いて濃縮、濾過、透析等してもよい。
【0051】
合成法
反応は、大規模リアクター、小規模を利用してもよく、または同時合成を複数行うように多重化されてもよい。連続反応は、フィード機構を用いて試薬の流れを導入し、プロセスの一部として最終産物を単離してもよい。バッチシステムもまた重要であり、この場合活性な合成のための期間を延長させるためにさらなる試薬を導入してもよい。リアクターは、バッチ、拡大バッチ、半バッチ、半連続、フェドバッチおよび連続のような任意の様式で行ってもよく、それらは適応の目的に従って選択される。
【0052】
伸長の際に少なくとも一つの非天然アミノ酸をポリペプチド鎖に導入する合成戦略には、以下が含まれるがこれらに限定されるわけではない:(I)外因性の精製直交性シンテターゼ、非天然アミノ酸、および直交性tRNAを無細胞反応物に付加する、(II)外因性の精製直交性シンテターゼおよび非天然アミノ酸を反応物に付加するが、直交性tRNAは無細胞反応の際に転写される、(III)外因性の精製直交性シンテターゼおよび非天然アミノ酸を反応混合物に付加するが、直交性tRNAは細胞抽出物の供給源になる生物によって合成される。好ましくは、直交成分は、合成レベルを制御することができるように調節可能なプロモーターによって合成されるが、付加または特異的消化によって関連するDNA鋳型レベルの制御のような他の手段を用いてもよい。
【0053】
直交性シンテターゼの分解を防止するために、抽出物を産生するために用いられる細菌株は、欠失または変異ompT(外膜タンパク質T)を有してもよい。ompTが変異している場合、好ましくはプロテアーゼ機能が不活性であるがシャペロン機能がなおも存在するように変異される。そのような抽出物は、そのような変異または欠失を含まない抽出物と比較してシンテターゼ分解レベルが減少している。
【0054】
反応混合物はまた、たとえば反応ミックスに約0.5 mM〜約10 mM、通常約1 mM〜約4 mMの濃度のGSSGを補給することによって;約0.5 mM〜約10 mM、通常約1 mM〜約4 mMの濃度のGSHを補給することによって、酸化的なタンパク質フォールディング環境を維持するように改変してもよい。100μg/mL DsbCまたはSkpのようなタンパク質成分も同様に含まれていてもよい。細胞抽出物は任意でヨードアセトアミド(IAM)によって前処置されていてもよい。
【0055】
反応は、通常少なくとも約1μlであり、多くて15μlである小規模、または反応容積が少なくとも約15μl、通常少なくとも約50μl、より通常少なくとも約100μlの大規模反応のいずれかの任意の容積の反応であってよく、500μl、1000μl、またはそれより多くてもよい。たいていの場合、個々の反応は、約10 mlより多くないが、多数の反応を同時に行うことができる。しかし、原則として、反応は、十分な酸素(または他の電子受容体)が必要に応じて供給される限りいかなる規模で行ってもよい。
【0056】
無細胞抽出物、遺伝子鋳型、およびアミノ酸のような上記の成分のほかに、タンパク質合成にとって特異的に必要な材料を反応に加えてもよい。これらの材料には、塩、フォリン酸、環状AMP、タンパク質または核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤または調節剤、酸化/還元電位(複数)の調節剤、非変性界面活性剤、緩衝剤成分、スペルミン、スペルミジン、プトレシン等が含まれる。
【0057】
塩には好ましくは、カリウム、マグネシウム、およびアンモニウム塩(たとえば酢酸またはグルタミン酸の塩)が含まれる。そのような塩の一つまたは複数は、対陰イオンとして代わりのアミノ酸を有してもよい。最適な濃度に関してイオン種のあいだに相互依存が存在する。これらのイオン種は典型的に、タンパク質産生に関して最適化される。反応培地の特定の成分の濃度を変化させる場合、もう一つの成分の濃度もそれに従って変化する可能性がある。たとえば、ヌクレオチドおよびエネルギー源化合物のようないくつかの化合物の濃度を、他の化合物の濃度変化に従って同時に調節してもよい。同様に、リアクターにおける成分の濃度レベルは、時間と共に変化してもよい。酸化還元電位の調節物質は、ジチオスレイトール、アスコルビン酸、グルタチオン、および/またはその酸化型であってもよい。
【0058】
半連続的操作モードでは、膜の外側または外部表面を、既定の順序で周期的に変化させる既定の溶液に接触させる。これらの溶液は、アミノ酸およびヌクレオチドのような物質を含有する。この場合、リアクターは、透析、ディアフィルトレーションバッチまたはフェドバッチモードで操作される。供給溶液は、同じ膜または異なる注入ユニットを通してリアクターに供給されてもよい。合成タンパク質は、リアクターに蓄積された後、系の操作終了後、タンパク質精製のための通常の方法に従って単離および精製される。産物を含有する小胞もまた、たとえば反応液が吸着マトリクスを通過してポンプで押し出されることから、インサイチューまたは循環ループのいずれかで反応混合物からのアフィニティ吸着によって連続的に単離してもよい。
【0059】
試薬の流れが存在する場合、液体流の方向は、膜に対して垂直および/または接線方向となりうる。接線流は、ATPをリサイクルするためおよび膜が詰まるのを防止するために有効であり、垂直方向の流れに重ね合わせてもよい。膜に対して垂直方向の流れを、陽圧ポンプもしくは真空吸引ポンプによって、または当技術分野において公知の他の方法を用いて膜の内外圧を利用することによって、引き起こす、またはもたらしてもよい。膜の外側表面に接する溶液は、周期的に変化させてもよく、膜に関して不変の接線流であってもよい。リアクターは、適当な撹拌手段によって内部または外部撹拌してもよい。
【0060】
リアクターにおけるタンパク質合成の際に、所望のタンパク質を選択的に単離するためのタンパク質単離手段には、合成された所望のタンパク質を吸着させるための抗体分子または他の分子によってコーティングされた粒子を充填したユニットが含まれてもよい。好ましくはタンパク質単離手段は、交互に使用される二つのカラムを含む。
【0061】
翻訳反応において産生されるタンパク質の量は、様々な方法で測定することができる。一つの方法は、翻訳される特定のタンパク質の活性を測定するアッセイの利用に依拠する。タンパク質の活性を測定するためのアッセイの例は、ルシフェラーゼアッセイ系、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼアッセイ系である。これらのアッセイは、翻訳反応から産生された機能的に活性なタンパク質の量を測定する。活性アッセイでは、不適当なタンパク質のフォールディングのため、またはタンパク質活性にとって必要な他の翻訳後修飾を欠損しているために不活性である完全長のタンパク質は測定されない。
【0062】
共役したインビトロ転写および翻訳反応において産生されたタンパク質の量を測定するもう一つの方法は、既知の量の35S-メチオニン、3H-ロイシン、または14C-ロイシンのような放射標識アミノ酸を用いて反応を行い、その後新たに翻訳されたタンパク質に組み込まれる放射標識アミノ酸の量を測定することである。組み込みアッセイは、切断型タンパク質産物が含まれるインビトロ翻訳反応において産生された全てのタンパク質における放射標識アミノ酸の量を測定する。放射標識タンパク質はさらに、タンパク質ゲルにおいて分離してもよく、産物が適当な大きさであること、および二次タンパク質産物が産生されていないことをオートラジオグラフィーによって確認してもよい。
【0063】
本発明の方法を実践するためのキットも同様に提供されてもよい。そのようなキットには、タンパク質合成のための、および、例えば直交性tRNAおよび/またはtRNAシンテターゼまたはこれらをコードするポリヌクレオチドを含有する非天然アミノ酸の部位特異的挿入のための菌性抽出物、酸化的リン酸化が活性化される反応にとって適切な緩衝液、および小胞が含まれてもよい。キットにはまた、SRPおよびSRタンパク質を発現するためのベクターを含む、タンパク質合成のためのベクターが含まれてもよく、ベクターは、細菌性抽出物において有用なプロモーター系を含んでもよい。
【0064】
以下の実施例は、本発明を作製および使用する方法に関する完全な開示および記述を当業者に提供するために発表され、本発明であると見なされる範囲を制限することを意図しない。用いる数字(たとえば、量、温度、濃度等)に関しては正確を期するように努力したが、何らかの実験誤差および逸脱があることは考慮されるべきである。特に明記していなければ、部分は重量での部分であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏であり、および圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0065】
実験
実施例として用いられる無細胞タンパク質合成反応は、グルタメートホスフェート/CytomimおよびPANOx-SP系であった。これらの系を、標的タンパク質に非天然アミノ酸を効率よく組み込むように改変した。非天然アミノ酸o-メチル-L-チロシン、p-アセチル-L-フェニルアラニン、またはp-アジド-L-フェニルアラニンは、メタノコッカス・ジャナスシイからの直交性tRNATyr/チロシン-シンテターゼ対を用いてアンバー終止コドンに部位特異的に導入された。非天然アミノ酸は市販されており、遺伝子配列は科学文献において記述されている(参照により本明細書に組み入れられる、Wang et al. (2001) Science 292(5516):498-500;Wang et al. (2003) Proc Natl Acad Sci U S A 100(1):56-61;Chin et al. (2002) J Am Chem Soc 124(31 ):9026-7;Farrell et al. (2005) Nat Methods, 2005. 2(5):377-84;Liu et al. (2003)J Am Chem Soc 125(7): 1702-3)。これらの非天然アミノ酸は、可溶性の細菌タンパク質、ジスルフィド結合を含有する分泌哺乳動物タンパク質、および膜タンパク質に組み込まれた。この無細胞タンパク質合成プラットフォームは、抽出物調製のために用いられる細胞株、正確な調製プロトコール、ヘルパータンパク質濃度、および無細胞反応条件を改変することによって開発された。標的タンパク質活性は、適切であれば比色法、細胞増殖、免疫沈降、および輸送アッセイによって確認してもよい。
【0066】
実施例1
非天然アミノ酸を含有する複雑なタンパク質を無細胞タンパク質合成を用いて高収率で発現させるための方法
細菌性タンパク質クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ジスルフィド結合タンパク質mGM-CSFおよびhGM-CSF、ならびに膜タンパク質TetAを本発明の方法を用いて合成した。高収率で標的タンパク質を合成するために、大腸菌tRNAの相対濃度(好ましいコドン)に関して最適化したオリゴヌクレオチドからのオーバーラップPCRによって、鋳型遺伝子を合成した。さらに、遺伝子配列のN-末端を、それが本発明者らの無細胞系において翻訳開始を促進するように最適化した(N-末端をA-Tに富むようにする)。野生型プラスミドpK7CAT、pK7hGM-CSF、pK7hGM-CSFOPT(またはまれなコドンに関してさらに最適化した)、pK7mGM-CSF、およびpK7TetAを、NdeIおよびSalI制限部位でpK7ベクター(添付の配列を参照されたい)に最適化タンパク質配列をライゲーションすることによって開発した。次に、本発明者らは、フォールディングに有意に影響を及ぼさないであろう、または本来のグリコシル化部位であることが知られている残基でアンバー終止コドン(TAG)を挿入するために、オーバーラップPCRおよび/またはQuickChange部位特異的変異誘発を行った。これによって、

が開発された。{質問:これらの配列は出願に含まれるか?それらは末端で欠失しているように思われる}。遺伝子はT7プロモーターおよびターミネーターの制御下にあった。プラスミドを調製した後XL 1-Blue化学コンピテント細胞に形質転換して、Qiagen Plasmid Maxi Kit(Qiagen, Valencia CA)を用いて精製した。
【0067】
非天然アミノ酸を組み込むために用いられるグルタメートホスフェート/cytomim無細胞反応の成分には、13.3μg/ml鋳型プラスミド、1.2 mM AMP、0.86 mM CMP、0.86 mM GMP、0.86 mM UMP、34μg/mlフォリン酸、170.6μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然アミノ酸、0.5〜10 mM非天然アミノ酸、1〜200μg/mLアミノアシルシンテターゼ、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、1 mMプトレシン、1.5 mMスペルミジン、4 mMシュウ酸ナトリウム、1 mMジチオスレイトール、10 mMグルタミン酸アンモニウム、130 mMグルタミン酸カリウム、8 mM グルタミン酸マグネシウム、10 mMリン酸カリウムpH 7.2、12μM L-[14C]-ロイシン、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、0.01〜0.4倍量の大腸菌S30抽出物、および0〜0.41倍量の内膜小胞溶液が含まれる。
【0068】
T7 RNAポリメラーゼは、Grodberg and Dunn J Bacteriol, 1988. 170(3): p. 1245-53によって記述される大腸菌株BL21(pAR1219)から調製する。大腸菌S30抽出物は、以下のいかなる株から調製してもよい:以下に概要される技法に従って生育され(Zawada and Swartz, 2006, Biotechnol and Bioeng 94:618、Liu et al. Biotechnol Prog, 2005. 21(2): p. 460-5)によって記述されるように調製した、KC6(A19△tonA△tnaA△speA△endA△sdaA△sdaB△gshA met+)(Calhoun and Swartz Biotechnol Prog, 2005. 21(4): p. 1146-53)、KGK10(TrxB-HAが含まれうるA19△speA△tnaA△tonA△endA△sdaA△sdaB△gshA△gor met+、ARG1(A19△tonA△tnaA△speA△endA△sdaA△sdaB△gshA met+ OmpTD83A)、ARG2(TrxB-HAが含まれうるA19△speA△tnaA△tonA△endA△sdaA△sdaB△gshA△gor met+ OmpTD83A)(ゲノム改変技法を以下に記述する)、およびMCJ29(A19△speA△tnaA△ompT△ptrC△degP△tonA△endA met+)。当業者に対し、他の任意の細胞株を構築してもよく、それを用いてこの無細胞系において用いることができるであろう細胞抽出物を生成してもよい。抽出物はまた、細胞の生育の際に発現されたpK7tRNAmjプラスミドまたはシンテターゼプラスミド(pK7OMeTyr)の産物と共に生成された。これらのプラスミドは、恒常的(Ipp)または制御可能なプロモーター(lac、ara等)およびrrnCまたはT7ターミネーター(pK7tRNAmjを参照されたい)間の適切な遺伝子配列を用いて設計された。
【0069】
unAA-PANOx-SP系をエネルギー系として選択した。この反応には、170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、0.6 mM ATP、0.43 mMの各GTP、UTP、およびCTP、1.5 mMスペルミジン、1.0 mMプトレシン、17μg/mlフォリン酸、85.3 μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然アミノ酸、0.5〜10 mM非天然アミノ酸、0〜200μg/mLアミノアシルシンテターゼ、10μM L-[U-14C]-ロイシン、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、13.3μg/mL鋳型プラスミド、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、および0.01〜0.40倍量の大腸菌S30抽出物が含まれた。細胞抽出物の供給源は先に記述したとおりである。unAA-PANOx-SP系にはまた、16 mMグルタミン酸マグネシウム、33 mMホスホエノールピルビン酸、および2.7 mMシュウ酸ナトリウムが含まれる。
【0070】
マウスGM-CSF(mGM-CSF)およびヒトGM-CSF(hGM-CSF)は、改変ジスルフィド結合タンパク質産生を証明するために合成された活性なタンパク質である。これらの反応は典型的に、1〜16 mM酸化グルタチオン緩衝液(GSSG)、1〜4 mM還元グルタチオン緩衝液(GSH)、およびおよそ0〜200μg/mL DsbCまたはSkpを添加した全量30μLのunAA-PANOx-SP反応であった。さらに、細胞抽出物を0〜2 mMヨードアセトアミド(IAM)によって前処置した。必要なDsbCおよびSkpは、株BL21(DE3)からの過剰発現および精製によって調製された(Yin and Swartz, 2004, Biotechnol Bioeng, 86:188-95)。抽出物のヨードアセトアミド(IAM)処置を必要とする反応において、少量の濃縮IAMを最初に反応容器に加えた。次に、かなり大量のS30抽出物を少量のIAMと共に急速かつ十分に混合した。抽出物をIAMと共に室温で30分間インキュベートした後、無細胞反応において用いた。
【0071】
転写-翻訳複合反応を1.5 mLエッペンドルフチューブまたはペトリ皿において、記されるように25〜37℃で3〜24時間行った。
【0072】
非天然アミノ酸を組み込むための戦略には、(I)精製直交性シンテターゼおよび直交性tRNAを無細胞反応物に加える段階、(II)精製直交性シンテターゼを加えるが、直交性tRNAが無細胞反応の際に転写される段階、(III)直交性シンテターゼおよび/または直交性tRNAを発現する細胞から細胞抽出物を生成する段階(もしあれば、細胞抽出物において発現されない精製因子を無細胞反応に付加する)、および(IV)連続的なタンパク質発現方法論の開発が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0073】
実施例2
無細胞反応における精製シンテターゼおよび精製/制御されたtRNA転写
非天然アミノ酸組み込み戦略IおよびIIが本実施例において記述される。戦略Iは、無細胞反応に精製直交性シンテターゼおよび精製直交性tRNAを加えることであり、戦略IIは、無細胞反応混合物に精製直交性シンテターゼを加えるが、直交性tRNAは無細胞反応の際に転写されることであった。
【0074】
戦略Iに関してtRNAのインビトロ転写を線状の鋳型から行った。1 mLの反応に関して以下が必要であった:5×転写緩衝液(200 mM Tris-HCl pH 7.9、100 mM DTT、125 mM MgCl2)200μL、NTP(25 mMの各NTP)ミックス80または160μL、24 μM 3H UTP 10μL、約0.1 mg/mlのPCR産生精製線状DNA鋳型(T7プロモーターの後ろ、QIAquick PCR精製キットから精製)50μL、40 U/ml RNアーゼアウト(RNase out)25μL、水580または505 μl、1 U/mlピロホスファターゼ10μL、100 mMスペルミジン20μL、および5 mg/ml T7 RNAポリメラーゼ20μL。この反応混合物を37℃で3〜3.5時間インキュベートした。反応後、DNアーゼ5μLを加えて、室温で10分間インキュベートすることによってDNAを分解した。精製は、フェノール/クロロホルム抽出によって行った。戦略IIにおいて、tRNA発現遺伝子カセット(lppプロモーターおよびrrnCターミネーターが含まれる)をpK7ベクター(添付の配列を参照されたい)においてPstI部位でクローニングした。
【0075】
本実施例において、本発明者らは、o-メチル-L-チロシンをpK7mGM-CSF_N75STOPに組み込むことを選択した。この実験を行うために、同様にメタノコッカス・ジャナスシイを起源とするチロシン-シンテターゼ変異体を発現および精製することが必要であった。チロシン-シンテターゼ遺伝子をpK7ベクターにクローニングして、ヘキサヒスチジンタグをC-末端に付着させた。o-メチル-チロシン置換を行うために必要なシンテターゼの変異は、Wang et al., 前記によって公表された。BL21 DE3細胞をシンテターゼ変異体プラスミドによって形質転換して、LB培地において生育させて、0.6 ODで1 mM IPTGによって誘導した。細胞を3 ODで回収して、7140×gで30分間遠心した。次に、細胞を、S30緩衝液(10 mM Tris-酢酸pH 8.2、14 mM 酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム)において浮遊させて連続して3回洗浄した。細胞沈降物を浮遊させて、細胞を1回のホモジナイゼーション(20,000 psiより大きい)によって溶解した。溶解した細胞を20,000×gで30分間遠心した。上清を、10 mMイミダゾール、50 mMリン酸緩衝液(pH 8.0)、および300 mM NaClによって平衡にしたNi-NTAカラム(Amersham Biosciences)1 mLにローディングした。次にカラムを、同じ緩衝液において25 mMイミダゾール30 mLによって洗浄して、同じ緩衝液において250 mMイミダゾールによって溶出した。精製産物をAmicon Ultra-15 Centrifugal Filter Units(5,000 MWCO)によって濃縮して、その後浮遊させて、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)に対して再濃縮した。
【0076】
(ジスルフィド結合の形成および異性化にとって必要な)酸化環境を維持する標準的なPANOx-SP系を本実施例において用いて、これは以下の成分を含有する:170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、16 mMグルタミン酸マグネシウム、33 mMホスホエノールピルビン酸、2.7 mMシュウ酸ナトリウム、0.6 mM ATP、0.43 mM各GTP、UTP、およびCTP、1.5 mMスペルミジン、1.0 mMプトレシン、17μg/mLフォリン酸、85.3μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然のアミノ酸、10μM L-[U-14C]-ロイシン、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、13.3μg/mL pK7mGM-CSF_N75STOP、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、4 mM酸化グルタチオン緩衝液(GSSG)、1 mM還元グルタチオン緩衝液(GSH)、100μg/mL DsbC、および1 mMヨードアセトアミド(IAM)によって30分間前処置した0.24倍量のKC6大腸菌S30抽出物。抽出物は、Zawada and Swartz Biotechnol Bioeng, 2006. 94(4): p. 618-24およびLiu et al, 前記によって記述されるとおりに調製した。
【0077】
先に記述したPANOx-SP系を用いて、37℃で3時間合成後、合成されたタンパク質を、液体シンチレーションカウンター(LS3801, Beckman Coulter, Inc.)を用いてTCA-沈殿可能な放射活性を測定し、 SDS-PAGEオートラジオグラム(MES緩衝液において10%Bis-Tris NuPAGEゲル)を行うことによって定量した。戦略Iを用いて、産生されたn=9の反応(o-メチル-チロシンを含有)後の最大の活性な無細胞合成mGM-CSFは、図1から定量されるようにおよそ50 ng/mLであり、シンチレーション計数の結果と一致した。図1において示されるように、産生された改変タンパク質の量は、これらのアッセイに関する検出限界の下限であった。戦略IIは、n=9のPANOx-SP無細胞反応において20±5 ng/mLを産生し、類似の低い収率をもたらした。
【0078】
実施例3
直交性tRNAおよびシンテターゼのインビボ発現
本実施例において用いた標準的なPANOx-SP無細胞発現環境は、以下の成分を含有する:170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、16 mMグルタミン酸マグネシウム、33 mMホスホエノールピルビン酸、2.7 mMシュウ酸ナトリウム、0.6 mM ATP、0.43 mM各GTP、UTP、およびCTP、1.5 mMスペルミジン、1.0 mMプトレシン、17μg/mLフォリン酸、85.3μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然アミノ酸、10μM L-[U-14C]-ロイシン、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、13.3μg/mL pK7CAT_Y109STOP、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、およびインビボで発現された直交性rRNAおよびtRNAシンテターゼを含有する0.24倍量のKC6大腸菌S30抽出物。直交性tRNAおよびシンテターゼプラスミド(Wang et al.前記によって公表されたpDuleプラスミド)の化学的コンピテントKC6細胞への形質転換後、抽出物を Zawada and Swartz, 前記およびLiu et al, 前記によって記述されるように調製して(以下に記述される改変を加えて)、3 ODで回収した。
【0079】
戦略IIIは、直交性シンテターゼおよび直交性tRNAの双方を発現する改変細胞株からの細胞抽出物の生成を必要とした。最初に、Zawada et al. Fermentation Biotechnology, ed. S. B. 2003, Washington, DC: ACS Press. 142-156によって概要された技法に従って発酵を行った。しかし、合成培地における大腸菌A19フェニルアラニン栄養素要求株およびKC6細胞株の生育速度はおよそ0.5〜0.6時間-1であった。これによって、本発明者らの無細胞系においてCAT改変タンパク質の産生において戦略IおよびIIに対して有意な改善を示さない細胞抽出物が産生された(図2においてプロット)。2×YTPG増殖培地に変化させると、生育速度は37℃で0.7〜0.9時間-1に増加した。生育速度のこの改善後、抽出物の分析的キャラクタリゼーションを行った。分析アッセイによって、細胞抽出物内の総タンパク質濃度は、許容可能(Bradfordアッセイによって決定した場合に〜42 mg/mL)であること、天然アミノ酸の濃度は低いこと(Dionex HPLCシステムによって定量した場合に<0.2 mM)、および小胞濃度は多様である(クロロホルム抽出後のホスフェートアッセイによって測定した場合に0.5〜3.5 mg/Lことが見いだされた(Chen et al. Anal. Chem., 1956. 28: p. 1756-1758およびFiske and Subbarow, 1925, J. Biol. Chem., 66: p. 374-389。系のキャラクタリゼーションの際に、小胞濃度を増加させることが、非天然アミノ酸を含有するタンパク質量の増加を引き起こすに役立つことが見いだされた。図2において示されるように、4 mM o-メチル-チロシンが含まれるCAT無細胞タンパク質合成の収率は、系の発展の結果として、およそ17μg/mLの活性CATまで増加した。図2において示されるオートラジオグラム(MES緩衝液において行った10%Bis-Tris NuPAGEゲルから生成)は、非天然アミノ酸を含有する完全長のタンパク質産物の濃度の増加および切断型タンパク質産物の濃度の減少を示している。
【0080】
実施例4
tRNAのインビボ発現および精製シンテターゼの付加
無細胞反応において直交性シンテターゼおよびtRNAの濃度を増加させると、無細胞産物の蓄積が増加し、アンバー終止コドンでのタンパク質切断は減少した。この理由は、当該濃度をより高めると、直交性シンテターゼおよびtRNA濃度を制限する可能性のある任意のプロテアーゼまたはヌクレアーゼを圧倒する可能性があり、それによって改変タンパク質産物の産生の増加が起こる可能性があると推論された。
【0081】
このアプローチにおいて、高い直交性tRNAレベル(tRNAシンテターゼ遺伝子が除去された改変pDULEベクターを用いて)は、細胞抽出物の産生(合成培地を用いて)の際に達成され、制御された。しかし、細胞に対するストレスを最小限にするために、直交性シンテターゼを個別に産生した。この実験に関して、p-アジド-フェニルアラニンを容易に組み込むメタノコッカス・ジャナスシイのチロシン-シンテターゼ変異体を産生させ、精製した。必要な変異は、Chin et al., 前記によって公表された。この遺伝子をT7プロモーターの後に挿入して、ヘキサヒスチジンタグをC-末端に付着させ、得られたプラスミドをBL21 DE3 pLys 細胞株に形質転換した。細胞をLB培地において生育させて、0.6 ODで1 mM IPTGによって誘導した。培養物を3 ODで回収して7140×gで30分間遠心した。次に細胞をS30緩衝液(10 mM Tris-酢酸pH 8.2、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム)において浮遊させて、連続して3回遠心した。細胞沈降物を浮遊させて、細胞を1回のホモジナイゼーションによって溶解した。次に、破断した細胞を20,000×gで30分間遠心した。上清を採取してDNアーゼと共に室温で30分間インキュベートした。上清を、10 mMイミダゾール、50 mMリン酸緩衝液(pH 8.0)、および300 mM NaClによって平衡にしたNi-NTAカラム1 mLまたは5 mLにローディングした。次にカラムを、同じ緩衝液において25 mMイミダゾール30 mlによって洗浄し、同じ緩衝液において250 mMイミダゾールによって溶出した。次に、精製産物を Amicon Ultra-15 Centrifugal Filter Units(5,000 MWCO)によって濃縮して、7,000 MWCOの透析チューブによってリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に対して透析した。
【0082】
pK7tRNAmjプラスミドを含有するKC6細胞株(既に記述されたKGK10、MCJ29、ARG1、およびARG2株も同様に用いられうる)を合成培地において4または10 L発酵器において生育させた。発酵物を3 ODで回収して、Liu et al. 前記によって記述される簡略技法を用いて抽出物を調製した。この技法を以下のように改変した:(1)ホモジナイゼーション遠心後にS30緩衝液の希釈を行わなかった;および(2)1回の透析段階を行った。場合によっては、小胞をより高濃度に保護するために、90分間のランオフ反応後の最後の遠心を省略することができる。小胞濃度を決定するための技法は、Chen et al. , 前記およびFiske and Subbarow、前記から得られた。
【0083】
本実施例で行ったunAA-PANOx-SP反応には、170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、0.6 mM ATP、0.43 mM各GTP、UTP、およびCTP、1.5 mMスペルミジン、1.0 mMプトレシン、17μg/mLフォリン酸、85.3μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然のアミノ酸、4 mM非天然アミノ酸、0〜167μg/mLアミノアシルシンテターゼ、10μM L-[U-14C]-ロイシン、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、13.3μg/mL pK7CAT_Y109STOP、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、および0.24倍量の大腸菌S30抽出物が含まれた。細胞抽出物の供給源は先に記述されたとおりである。unAA-PANOx-SP系にはまた、16 mMグルタミン酸マグネシウム、33 mMホスホエノールピルビン酸、および2.7 mMシュウ酸ナトリウムが含まれる。これらの反応は記される時間で30℃で行った。
【0084】
戦略IVにおいて、抽出物調製の際のtRNAの発現を制御(tRNAシンテターゼ遺伝子を欠損する改変pDuleプラスミドから)し、、抽出物調製プロトコールを改変し、およびunAA-PANOx-SP無細胞反応への精製p-アジド-フェニルアラニンシンテターゼを付加することによって、結果として改変タンパク質収率が増加した。図3Aにおいて認められるように、シンテターゼ濃度が増加すると、完全長の活性なCAT収率は図2において示される収率よりおよそ10倍(125 μg/mLより大きく)増加した。比色アッセイによって決定すると、可溶性のCAT濃度の90〜100%が正確に折り畳まれた活性なタンパク質である。抽出物調製プロトコールにおける変更は、より高い直交性tRNAおよび小胞濃度を提供するために役立ち、これは8時間より長い時間の持続的な改変タンパク質合成にとって必須である(図3Bを参照されたい)。これは活性な酸化的リン酸化経路を確実にし、このことはタンパク質合成の最初の1時間のあいだにPEPが初めに消費された後に持続的に産物が形成されるということにより明白である(図3Cを参照されたい)。
【0085】
実施例5
非天然アミノ酸組み込みのための細胞抽出物の改善
活性な細菌および哺乳動物分泌タンパク質が本発明者らの転写/翻訳複合系において産生されたが、本発明者らはより高い収率を求めた。本発明者らは、制限的である成分の一つが直交性シンテターゼの濃度であることを見いだした。この成分が制限される一つの理由を図4、レーン1に示す。これは、標準的なPANOx-SP無細胞タンパク質合成反応において37℃で3時間産生された直交性p-アジド-フェニルアラニンtRNAシンテターゼタンパク質産物である。反応条件は、実施例2において既に記述した(産物をL-[U-14C]-ロイシンによって標識した)。直交性シンテターゼは、タンパク質溶解による分解を受けやすいようにみえる。このことは、KC6細胞抽出物に、500μg/mLより多いL-[U-14C]-ロイシン標識直交性シンテターゼを加えることによって、さらに確認された。37℃で6時間インキュベーション後、完全長のシンテターゼはオートラジオグラフィーによって検出されなかった。本発明者らは、シンテターゼ分解を制御することによって、改変タンパク質の産生増加を試みた。
【0086】
Swartz研究室において既に生成され、ジスルフィドレダクターゼ濃度を最小化することでアミノ酸濃度を安定化することが知られている細胞株(KGK10およびKC6)を用いて、新規細胞株を構築した。これらの細胞株を、遺伝子産物が存在しないか、または、本発明の無細胞抽出物中にも存在しているが、プロテアーゼとしては不活性であるがシャペロンとして活性となるように、外膜タンパク質TをコードするompT遺伝子を欠失または変異させることによって改変した。
【0087】
MCJ29変異体は、JewettのPh.D.学位論文、Department of Chemical Engineering. 2005, Stanford University: Stanford, p. 240によって記述されるように生成した。ARG1およびARG2変異体は、対立遺伝子交換のためのプラスミドを構築するために、pKOベクター[28]を用いる遺伝子置換によって生成した。置換される遺伝子ompTに隣接するおよそ1 kb断片を、プライマーompTNoおよびompTCo(G.M. Churchのウェブサイトから得られた配列に基づいて)によるPCRによって、ゲノムDNAから増幅した。本発明者らは、適した制限酵素NotIおよびSalIを用いて、野生型ompTからのPCR産物をpKOVベクターにクローニングした。次に、本発明者らは、プライマーompTD83AmutF

およびmutR

と共にQuickChange部位特異的変異誘発キットを用いて野生型ompT遺伝子配列に所望のD83A変異を導入した。pKOV遺伝子置換ベクターにクローニングされた変異体対立遺伝子を、KC6(最終的にARG1を生成する)またはKGK10(最終的にARG2を生成する)に電気穿孔して、細胞を30℃で1時間回復させた。細胞を予め加温したクロラムフェニコール/LBプレートに入れて、42℃でインキュベートした。組み込み頻度を測定するために、電気穿孔した細胞をまた30℃のクロラムフェニコール/LBプレートにも播種した。42℃のプレートからコロニー1〜5個をLBブロス1 mlに採取して、連続希釈して、30℃の5%w/v蔗糖プレートに直ちに播種した。5%蔗糖プレート上のコロニーを、置換ベクターの喪失を試験するために、クロラムフェニコールプレートにおいて30℃でスクリーニングした。要約すると、本発明者らは、「コロニー採取」により、置換現象に対する蔗糖耐性およびクロラムフェニコール感受性コロニーを探し、かつプライマーompT5'およびompTD83AによるPCRによって本発明者らの選択を確認した。その結果、ompT遺伝子に不活化D83A変異を含有するであろう新規細胞株ARG1およびARG2が得られた。
【0088】
図4において示されるように、無細胞タンパク質合成反応における発現後の直交性シンテターゼ蓄積のオートラジオグラフィー分析。オートラジオグラムは、MES緩衝液において行った10%Bis-Tris NuPAGEゲルから展開した。p-アジド-フェニルアラニンtRNAシンテターゼは、KC6細胞抽出物においてプロテアーゼによって重度に分解する。ARG1、ARG2および/またはMCJ29変異体細胞株(全ての結果が類似であったことから一つの例を示す)を用いて細胞抽出物を産生する場合には、シンテターゼは分解しない。ompT欠失または変異をKC6またはKGK10細胞株に組み込むと、新たに産生されたシンテターゼは安定である。
【0089】
、レーン2、細胞抽出物を調製するために用いられる細胞株に対するこれらのゲノム改変は、標準的なPANOx-SP反応において産生する場合にp-アジド-フェニルアラニンtRNAシンテターゼの分解をほぼ消失させた。p-アセチル-フェニルアラニンシンテターゼをARG1およびMCJ29抽出物と共に37℃で6時間インキュベートした場合でも同じ結果が観察された。
【0090】
実施例6
無細胞プラットフォームにおける非天然アミノ酸を含有する細菌タンパク質の高レベル産生
既に記述された別のエネルギー系のいずれかを用いることもできたが、非天然アミノ酸を含有するタンパク質産生の増加を例示するために、unAA-PANOx-SPを選択した。具体的に、本実施例に関して無細胞反応には、170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、0.6 mM ATP、0.43 mM各GTP、UTP、およびCTP、1.5 mMスペルミジン、1.0 mMプトレシン、17 μg/mLフォリン酸、85.3μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然アミノ酸、2 mM非天然アミノ酸、150 μg/mLアミノアシルtRNAシンテターゼ、10μM L-[U-14C]-ロイシン、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、13.3μg/mL鋳型プラスミド、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、および直交性メタノコッカス・ジャナスシイtRNAを含有する0.29倍量のS30抽出物(明記された細胞株の一つを用いて調製)が含まれた。細胞抽出物の供給源は先に記述されたとおりである。unAA-PANOx-SP系にはまた、16 mMグルタミン酸マグネシウム、33 mMホスホエノールピルビン酸、および2.7 mMシュウ酸が含まれる。
【0091】
図5は、p-アジドまたはp-アセチル-フェニルアラニンを含有するCATの産生における有意な増加(図2において示したデータと比較して)を示す。戦略IおよびIIは、mGM-CSFに関して図1に示される収率と類似の収率を示す。同様に、戦略IIIaは実施例3、図2において示される改変タンパク質産生の改善を裏付ける。さらに、戦略IIIbは図3において示される再現性およびシンテターゼ制限を裏付ける。最後に、本実施例において記載される組成物を用いて、戦略IIIcは、unAA-PANOx-SP成分比(非天然アミノ酸、直交性シンテターゼ、および細胞抽出物)の最適化、反応環境(30℃で8時間)の最適化、抽出物調製のための変異細胞株の使用(ARG1およびARG2)、それらが産生される技法の改変、および新しい細胞株へのpK7tRNAmjプラスミドの組み込みによって、細菌に基づく新規の無細胞系が、p-アジドまたはp-アセチル-フェニルアラニンを含有する改変タンパク質を2〜3倍多く(300μg/mLより多い)産生したことを示している。これらの収率は、類似の無細胞反応(非天然アミノ酸を付加しない)において産生された野生型CATタンパク質のおよそ75%であった。さらに、図5において認められるように、オートラジオグラフィーによる戦略IIIcのタンパク質産物の分析により、無細胞反応産物が主に、非天然アミノ酸を含有する完全長のタンパク質であることが示された。
【0092】
実施例7
非天然アミノ酸を含有する生物活性哺乳動物分泌タンパク質の合成
細菌に基づく新規の無細胞系の設計およびCAT収率の増加から、非天然アミノ酸を用いて産生されていなかった数多くの異なる複雑なタンパク質への非天然アミノ酸の組み込みを始めることが妥当であった。本報告において示される複雑なタンパク質の例は、mGM-CSF、hGM-CSF、およびTetA膜タンパク質である。そのような基盤技術は、融合タンパク質、一本鎖可変断片(scFvs)、Fab抗体断片、および完全長の抗体が含まれるがこれらに限定されるわけではなく、例として示されていない多数の複雑なタンパク質に拡大することができる。
【0093】
実施例6において記述される反応と類似のunAA-PANOx-SP無細胞反応に従って、pK7mGM-CSF_N75STOP、pK7hGM-CSF_N36STOP、またはpK7hGM-CSFOPT_N36STOPからの活性タンパク質の収率を、細胞増殖に基づくアッセイによって決定した。正確なフォールディングを確保するために、実施例6によって記述されたunAA-PANOx-SP系を、4 mM GSSG、1 mM GSH、およびおよそ100μg/mL DsbCを反応ミックスに補給することによって、酸化的なタンパク質のフォールディング環境を維持するように改変した。さらに、細胞抽出物を1 mMヨードアセトアミド(IAM)によって前処置した。少量の濃縮IAMを反応容器に最初に加えた。かなり大量のS30抽出物を少量のIAMと急速かつ十分に混合した。抽出物を室温で30分間インキュベートした後、無細胞反応において用いた。改変pDuleプラスミド(tRNAシンテターゼ遺伝子を欠損する)を含有するKC6細胞株を用いて、細胞抽出物を調製し、無細胞反応を30℃で6時間行った。
【0094】
mGM-CSFまたはhGM-CSF依存的細胞株、NFS-60またはTF1(ATCCから購入)を用いてマウスおよびヒトGM-CSFの生物活性をアッセイした。可溶性の無細胞発現タンパク質ならびにマウスおよびヒトGM-CSFの市販の標準物質を1試料あたり3個ずつ連続希釈した。10%FCSを有するRPMI培地と対数期細胞培養物の等量を、連続希釈した無細胞産物およびGM-CSF標準物質に加えて、その細胞増殖刺激機能を試験した。細胞を平底96ウェル組織培養プレートにおいて細胞5000個の濃度で播種した。NSF-60細胞に関して37℃、5%CO2で16〜20時間、およびTF1細胞に関して36〜48時間インキュベートした後、[3H]-チミジン50μLを各ウェルに最終濃度6.7μCi/mLとなるように加え、[3H]-チミジンの取り込みによって増殖をモニターした。37℃および5%CO2で8〜10時間インキュベートした後、細胞をガラスファイバーのフィルターマットに回収して洗浄した。[3H]-チミジン取り込みをWallach 1450 Microbetaシンチレーションカウンター(Perkin Elmer Life Sciences)を用いて測定した。
【0095】
改変されたジスルフィド結合タンパク質に関するunAA-PANOx-SP無細胞タンパク質合成の収率を図6に示す。さらに、産生されたタンパク質は、正確に折り畳まれ、図7においてプロットされる生物活性データ(既に記述された方法)において示されるように生物学的に活性である。これらの結果は、新しい無細胞系が、インビボ系によって産生されるタンパク質と同等のGM-CSF活性を有する非天然アミノ酸を含有する活性なジスルフィド結合タンパク質を産生することを示している。直交性tRNAを含有しない、シンテターゼを含有しない、または非天然アミノ酸を含有しないそれらの無細胞反応は、細胞増殖を刺激するいかなるタンパク質も生成しなかった。これらのデータはまた、GM-CSFまたはNもしくはC-末端で類似の免疫刺激物質を有する融合タンパク質構築物が、その中に非天然アミノ酸を組み込むことができ、この新規無細胞タンパク質合成プラットフォームによって産生されうることを示唆している。
【0096】
実施例8
膜タンパク質への非天然アミノ酸の組み込み
正確に折り畳まれた膜タンパク質を産生するためにグルタメートホスフェート無細胞系を用いることは、それがMuller and Blobel Proc Natl Acad Sci U S A, 1984. 81(24): p. 7737-41およびOsborn et al J Biol Chem, 1972. 247(12): p. 3962-72から改作された方法を用いることによって小胞溶液の調製も必要とするという点において独特である。KC6細胞を20 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTAにおいて浮遊させて洗浄した。最終的な細胞沈降物を同じ緩衝液に細胞1 グラムあたり1 mLに浮遊させて、氷中で0.2 mg/mLのニワトリ卵白ライソザイムと共に15分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞溶液を20,000 psiでホモジナイザーに3回通過させた。破砕されていない細胞および破片を30,000×gで各20分間2回遠心することによって除去した。次に、小胞を超遠心(154,000×g、1.5時間)によって採取して、緩衝液H(20 mM HEPES-KOH、pH 7.5、1 mM DTT、5 mM EDTA)において250 mM蔗糖を含有する溶液0.5 mL/g細胞によって231,000×gで1時間再度沈降させた。これらの粗精製小胞を20%(w/w)蔗糖に浮遊させて、50%、45%、40%、35%、30%、および25%(w/w)蔗糖の層を含有する段階的勾配の上部にローディングした。114000×gで24時間超遠心後、内膜小胞を含有する分画を採取する。これらの小胞を採取して20 mM HEPES-KOH pH 7.2、60 mM KCl、1 mM DTTにおいて高濃度(1〜2 mg/mL)で最終的に浮遊させる。
【0097】
無細胞成分が生成された後、本発明者らは、複合グルタメートホスフェート転写/翻訳系を用いて、非天然アミノ酸(p-アジド-フェニルアラニン)を含有する膜タンパク質TetAを合成して、それが小胞膜に適当に折り畳まれうるか否かを査定した。非天然アミノ酸を組み込むために用いられるグルタメートホスフェート無細胞反応の成分には、13.3μg/mL pK7TetA_D34STOPまたはpK7TetA_Q182STOP(添付の配列を参照されたい)、1.2 mM AMP、0.86 mM CMP、0.86 mM GMP、0.86 mM UMP、34μg/mLフォリン酸、170.6 μg/mL大腸菌tRNA混合物、各2 mMの20個の天然アミノ酸、4 mMの非天然アミノ酸、75 μg/mLアミノアシルシンテターゼ、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、1 mMプトレシン、1.5 mMスペルミジン、4 mMシュウ酸ナトリウム、1 mMジチオスレイトール、10 mMグルタミン酸アンモニウム、130 mMグルタミン酸カリウム、8 mMグルタミン酸マグネシウム、10 mMリン酸カリウム、pH 7.2、12μM [14C]-ロイシン、0.1 mg/mL T7 RNAポリメラーゼ、0.29倍量の大腸菌S30抽出物、および0.21倍量の内膜小胞溶液が含まれる。
【0098】
非天然アミノ酸を含有するTetA膜タンパク質(42.5 kDa)を産生できることは、図8Aのオートラジオグラムから明らかである。これは、37℃での無細胞タンパク質合成の6時間後であった。液体シンチレーションカウンターを用いてTCA沈殿可能な放射活性を測定することによって、総合成タンパク質を定量した。これは、プラスミドpK7TetA_D34STOPおよびpK7TetAQ182STOPから生成されたTetA変異体タンパク質に関して226および349μg/mLであると計算された。さらなる分析の前に、反応を100 kDa MWCO透析バッグにおいて500〜1000倍量の10 mM Tris-HCl pH 8.0、100 mM KClに対して毎回少なくとも3時間の透析後緩衝液を3回交換する透析によっておおよそ精製した。
【0099】
大腸菌小胞に挿入されたタンパク質の量を定量するために、本発明者らは、透析された無細胞反応産物を蔗糖浮遊アッセイ(sucrose floating assay)に供した。透析された無細胞反応産物を密度の高い蔗糖溶液と混合して3段階の蔗糖勾配の底にローディングする。層の密度は、超遠心(16時間、237,000×g)後、ミスフォールディングされたタンパク質凝集体(密度p〜1.3 g/mL)が底の層に留まっているが、より軽い小胞(p〜1.13〜1.25 g/mL、挿入されたタンパク質の量に応じて)が第二の層より上の界面に浮遊するように選択される。図8は、蔗糖浮遊分析後の放射標識TetAの分布を示す。合成されたタンパク質の膜との非特異的会合を低減させるために、6 M尿素を勾配全体に加えた。反応物に小胞が存在する場合、合成TetAの大部分が小胞に会合することが認められる(分画2)。この会合は、凝集したTetAがより下位の分画(分画6〜8)に保持されることによって示されるように、小胞をタンパク質合成反応に加えない場合には起こらない。さらなる小胞を含有しない反応は、大量の膜会合または凝集タンパク質産物を示さなかった。このことは、非天然アミノ酸を含有するタンパク質の産生における酸化的リン酸化の重要性を強調している。そのような経路は、さらなる小胞が存在しない場合には活性ではない。図8Bにおいて認められるように、小胞に挿入されることが示されたTetAの量は、無細胞反応物1 mlあたり100μgより多い挿入されたTetAの総収率に一致する。明らかに、Q182STOP反応からの産物の大部分が切断型および小胞会合型の双方であったことから、切断された182アミノ酸TetAも同様に挿入される(図8Aを参照されたい)。
【0100】
膜タンパク質が適切に小胞に挿入されることを確実にするために、本発明者らは、非特異的プロテアーゼである0.2μg/μLプロテナーゼKに透析反応混合物を曝露した。細胞質ドメインまたは膜貫通セグメント間の大きいループのような、膜の中に埋もれていない膜タンパク質の一部は、膜内または小胞内部のセグメントと比較して、プロテアーゼによってより急速に分解する。このように、プロテナーゼK消化によって生成されたタンパク質断片を経時的に観察することによって、本発明者らは、タンパク質が適当なフォールディングに対応する予測されるトポロジーを有するか否かを確認することができる。
【0101】
図9は、プロテナーゼKと共に25℃でインキュベートした後に得られたバンドプロフィールを示す。60分後であっても完全長のTetAの有意な分画がなおも小胞に存在する。しかし、膜をLDS洗浄剤によって溶解した場合、TetAはもはや消化から保護されない。このようにしてTetAは小胞膜に組み込まれる。
【0102】
これらのデータは、無細胞発現系を用いて改変膜タンパク質が高収率で合成されることを証明し、さらに合成されたタンパク質が小胞に挿入されて適当に折り畳まれることを示している。
【0103】
実施例9
最適化MS2遺伝子の合成
材料および方法
プラスミドの構築。MS2外被タンパク質遺伝子を、DNAworksを用いて大腸菌tRNAの相対的濃度(好ましいコドン)およびオリゴヌクレオチドからの合成の双方に関して最適化した。DNAworksによって推奨される配列に基づくオリゴヌクレオチド(長さの平均値60 bp、Operon Technologies, USA)を、2段階PCRを用いて最適化MS2外被タンパク質遺伝子ヌクレオチド配列にアセンブル(assembled)した。pET24a-MS2cpは、NdeIおよびSalI制限部位で最適化MS2外被タンパク質配列をpET-24a(+)ベクター(Novagen, USA)にライゲーション(T4 DNAリガーゼ、NEB、USA)することによって生成した。pET24a-MS2cpをDH5α細胞(One Shot MAXX Efficiency DH5α-T1Rコンピテント細胞、Invitrogen)に形質転換して、プラスミドをQiagen Plasmid Maxi Kit(Qiagen, Valencia, CA)によって精製した。2段階PCRおよびカスタムオリゴヌクレオチド(Operon Technologies, USA)を用いて、T15STOP(アンバー終止コドン)置換をMS2cp配列に変異させた。変異した配列を、Nde IおよびSal I制限部位でpET24a(+)ベクター(Novagen, USA)にライゲーションして、pET24a_MS2cp_T15STOPと命名した。ベクターをDH5α細胞(One Shot MAXX Efficiency DH5α-T1Rコンピテント細胞、Invitrogen)に形質転換して、無細胞タンパク質合成反応において用いるために、プラスミドをQiagen Plasmid Maxi Kit(Qiagen, Valencia, CA)によって精製した。最適化外被タンパク質配列をSEQ ID NO:9として提供する。
【0104】
実施例10
非天然アミノ酸を含有するMS2外被タンパク質の発現
材料および方法
PANOx-SP無細胞発現系。本実施例において行ったPANOx-SP無細胞反応は、容積が30μLであり、1.5 mlエッペンドルフチューブにおいて30℃で8時間インキュベートした。反応には、以下の成分が含まれる:1.2 mM ATP、0.85 mM各GTP、UTP、およびCTP、34μg/mLフォリン酸、170.6μg/mL大腸菌tRNA混合物、24 nM pET24aMS2_T15STOPプラスミド、100μg/mL T7 RNAポリメラーゼ、5μM L-[U-14C]-ロイシン、各2 mMの20個の非標識アミノ酸、4 mM p-アジド-フェニルアラニン、〜150μg/mL純粋メタノコッカス・ジャナスシイ変異チロシンシンテターゼ、0.33 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、0.27 mM補酵素A(CoA)、30 mMホスホエノールピルビン酸、1.5 mMスペルミジン、1 mMプトレシン、170 mMグルタミン酸カリウム、10 mMグルタミン酸アンモニウム、20 mMグルタミン酸マグネシウム、2.7 mMシュウ酸ナトリウム、および以下のように調製した28%v/v KC6_tRNA S30抽出物。T7 RNAポリメラーゼは、Grodberg and Dunnによって記述されるように、大腸菌株BL21(pAR1219)から調製する。
【0105】
メタノコッカスジャナスシイ直交性チロシンシンテターゼの精製。この実験に関して、p-アジド-フェニルアラニンを既に組み込んだメタノコッカスジャナスシイチロシンシンテターゼ変異体を産生して精製した。必要な変異は、Chin et al.,前記によって公表された。この遺伝子をT7プロモーターの後に挿入し、ヘキサヒスチジンタグをC-末端に付着させて、得られたプラスミドをBL21DE3 pLys細胞株に形質転換した。細胞をLB培地において生育させて、0.6 ODで1 mM IPTGによって誘導した。細胞を3 ODで回収して7140×gで30分間遠心した。次に細胞をS30緩衝液(10 mM Tris-酢酸、pH 8.2、14 mM酢酸マグネシウム、60 mM酢酸カリウム)において浮遊させて連続して3回洗浄した。細胞沈降物を浮遊させて、細胞を1回のホモジナイゼーションによって溶解した。次に、破断された細胞を20,000×gで30分間遠心した。上清を採取してDNアーゼと共に室温で30分間インキュベートした。次に、上清を、10 mMイミダゾール、50 mMリン酸緩衝液(pH 8.0)、および300 mM NaClによって平衡にした1または5 mL Ni-NTAカラムにローディングした。次にカラムを、同じ緩衝液において25 mMイミダゾール30 mLによって洗浄して、同じ緩衝液において250 mMイミダゾールによって溶出した。精製された産物をAmicon Ultra-15 Centrifugal Filter Units(5,000 MWCO)によって濃縮して、7,000 MWCO透析チューブによってリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に対して透析した。
【0106】
高濃度の直交性tRNAを含有するS30抽出物の産生。このアプローチにおいて、高い直交性tRNAレベル(pK7ベクターに挿入されたtRNAmj遺伝子、SEQ ID NO:10を用いる)が、細胞抽出物の産生の際に達成され、かつ制御された。抽出物は、細胞株KC6(A19△tonA△tnaA△speA△endA△sdaA△sdaB△gshA met+)の生育の際に発現されたpK7tRNAmjプラスミドによって生成された。pK7tRNAmjプラスミド(KC6_tRNAと呼ばれる)を含有するKC6細胞株(KGK10、MCJ29、ARG1、およびARG2も同様に用いることができる)を合成培地において4 リットル発酵器中において生育させた(18)。発酵物を、3 ODで回収してLiu et alの簡易技法を用いて抽出物を調製した。この技法は以下のように改変された:(1)ホモジナイゼーションの遠心後S30緩衝液の希釈は行わなかった、(2)1回の透析段階を行った。
【0107】
タンパク質収率の決定。合成されたタンパク質の総収率は、液体シンチレーションカウンター(LS3801, Beckman Coulter, Inc.)におけるTCA沈殿および放射活性測定によって決定した。可溶性の収率は、TCA沈殿および試料の、25℃、15,000 RCFで15分間の遠心後の上清のシンチレーション計数によって決定した。
【0108】
結果
pET24a_MS2cp_T15STOPを用いる30μLのPANOxSP系無細胞反応を行って、総収率および可溶性収率は、図10において示されるように、それぞれ77μg/ml(±6.6μg/ml)および63μg/ml(±3.2μg/ml)と決定された。
【0109】
実施例11
p-アジド-フェニルアラニンを組み込んだMS2 VLPの組織化の証明
材料および方法
SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィー。可溶性タンパク質を、15,000×gで15分間の遠心によって不溶性分画から分離した。試料を、Mark12 MW標準物質(Invitrogen)分子量マーカーと共にMES緩衝液において行うNuPAGE 10%Bis-Trisゲル(Invitrogen, La Jolla, CA)にアプライした。ゲルをクーマシーブルー染色(BioRad)によって染色して、ゲルドライヤー、モデル583(Bio-Rad, Richmond, CA)によって乾燥させた後、Kodak scientific造影フィルム(Rochester, NY)に曝露した。
【0110】
透析。非取り込みL-[U-14C]-ロイシンを除去するために、産生された無細胞を、6-8000 MWCO Specra/Pro Molecularporous Membrane Tubing(Spectrum Labs)においてTSM緩衝液(10 mM Tris-HCl、100 mM塩化ナトリウム、1 mM塩化マグネシウム、pH 7.0)300 mL に対して緩衝液を2回交換して終夜透析した。
【0111】
蔗糖段階的勾配速度沈降。透析された無細胞rxn産物を蔗糖不連続勾配遠心に供した。ポリアロース(polyallose)16×102 mm遠心チューブ(Beckman, Palo Alto, CA)に、TSM緩衝液および15 mM EDTAにおいて2.5%w/vずつ減少する蔗糖溶液(40%、37.5%、35%、32.5%、30%、27.5%、25%、22.5%、20%、17.5%、15%、12.5%、10%w/v)1 mLを連続的に充填した。透析した無細胞反応産物をチューブの上部に層状に載せて、Beckman L8-M超遠心器においてBeckman-Coulter SW-32スイングバケットローター(Fullerton, CA)において、4℃、31,000 rpmで「ゆっくり」加速して(プロフィール9)および「ブレーキ」をかけないで減速することによって3.5時間遠心を行った。Teledyne lsco Foxy Jr. Density Gradient Fractionation System(Lincoln, NE)を用いて0.5 mL分画を採取して、各分画におけるMS2外被タンパク質濃度を、TCA沈殿および液体シンチレーションカウンター(LS3801, Beckman Coulter, Inc.)を用いる放射活性測定によって決定した。
【0112】
蔗糖勾配分画放射標識MS2外被タンパク質収率の決定。各蔗糖勾配分画におけるMS2外被タンパク質の収率は、各分画50μLを個々のクロマトグラフィーペーパー(Whatman, USA)にスポットし、乾燥させた後、放射活性測定によって決定した。クロマトグラフィーぺーパーを、Beckman Readysafe Scintillation Cocktail 5 mLに浸して、液体シンチレーションカウンター(LS3801 , Beckman Coulter, Inc.)において放射線を計数した。放射線の計数を、MS2外被タンパク質の分子量、および放射標識ロイシンが取り込まれている場合にはMS2外被タンパク質におけるロイシンの数に基づいて収率に変換した。
【0113】
VLP濃度。VLPを含有する蔗糖勾配分画を、Amicon Ultra-4 100,000 MWCO Centrifugal Filter Devicesに勾配分画およびTSM緩衝液を4 mLまで充填することによって濃縮した。Fiberlite F13-14x15cyローター(Piramoon Tech.)およびFiberlight 15 mLアダプター(Piramoon)を有するSorvall RC5B遠心器において、ユニットを5,500 rpmで4℃で15分間遠心した。濃縮した試料を直ちに採取して4℃で保存した。
【0114】
結果
pET24a_MS2cp_T15STOPベクターとのPANOx-SP改変無細胞反応において産生された全てのタンパク質にp-アジド-フェニルアラニン非天然アミノ酸が含まれることを確認するために、陽性および陰性対照を同時に行った。陰性対照は、直交性シンテターゼの非存在下を除き、同じ条件で行った。陽性対照反応は、PANOx-SP改変無細胞反応においてpET24a_MS2cpベクターによって行った。方法の章において記述され、蔗糖勾配速度沈降の後に放射線計数によって決定された原核細胞に基づく反応において、pET24a_MS2cp_T15STOPベクターによって発現された、p-アジド-フェニルアラニンを組み込んだMS2外被タンパク質の組織化の収率は、図11において示されるように22μg/mL(+/-0.6μg/mL、n=2)であった。
【0115】
実施例12
ThermoFinnigan LCQ Deca XP+イオントラップLC-MSによる180アクセス可能なp-アジド-フェニルアラニンを有するMS2 VLPの組織化の検証
材料および方法
質量分析プロトコール。濃縮された非天然アミノ酸を組み込んだMS2カプシドおよび対照野生型MS2カプシド試料をAmicon-ultra 4メンブレンフィルターを用いて濃縮した。図11において示される試料と類似の蔗糖密度勾配試料から採取した組織化MS2 VLPからこれらの試料を得た。試料をSDS-PAGE NuPAGE 10%Bis-Trisゲル(Invitrogen, La Jolla, CA)にアプライした。ゲルを、Mark12 MW標準物質(Invitrogen)分子量マーカーと共にMES泳動緩衝液(Invitrogen)によって60 mAで60分間泳動させて、SimplySafe Stain(Invitrogen)によって染色した。水によるすすぎを最小限にしてゲルを水中に終夜浸すことによって脱染色した。可能な限り多くの周辺のブランクゲルを除外しながら、13.7 kDのバンドを湿ったゲルから切り出した。
【0116】
ゲル切断断片に対して、45 mMジチオスレイトール(DTT, Sigma)10 mLおよび100 mM Tris pH 7.8 100 mLを加えて、試料を55℃で30分間インキュベートした後、溶液相を捨てた。次に、100 mMアクリルアミド(ICN)10 mLおよび100 mM Tris pH 7.8 100 mLをゲル断片に加えて、混合物を室温で30分間インキュベートした。もう一度溶液相を捨てた。ゲル片を50 mM Tris pH 7.8/50%アセトニトリル(ICN)500 mlによって30分間洗浄し、溶液相を捨てた。次にゲル断片をSpeedVacロータリーエバポレーション装置において完全に乾燥させた。最後に、25 mM Tris pH 7.8においてキモトリプシン5 pmolをゲル断片に加えて膨張させた後、十分量の25 mM Tris pH 7.8を加えて溶液がゲル断片を覆うようにした。断片を37℃で終夜インキュベートした。溶液相を除去してさらなる処置を行わずにThermoFinnigan LCQ Deca XP+イオントラップLC-MSに注入して分析した。
【0117】
結果
図13Aは、T15アミノ酸(881.6 m/z)が含まれるMS2野生型カプシド単量体のキモトリプシン消化断片のHPLCトレースを示す。消化後、T15を含有する断片の配列は、

であった。図13Bは、MS2野生型単量体試料を示し、図13Aにおいて示される断片が非天然アミノ酸を含有すれば、出現すると予測されるHPLCトレースの領域を示す(912 m/z)。T15p-アジド-フェニルアラニンを含有する断片の配列は

であると予測され、その予測される分子量および質量対電荷比は、MW=1821、m/z=912であると予測される。予測されるように、野生型MS2対照試料は、キモトリプシン消化物の後に、非天然アミノ酸を組み込んだ断片が溶出すると予想される位置に対応するピークが認められないことから、非天然アミノ酸を含有しない。
【0118】
図13Cは、p-アジド-フェニルアラニンによってT15位置で置換されたMS2カプシドのクロマトグラムを示す。既に記載したように、これはunAAが組み込まれない場合に、断片が存在すると予測される領域である。明らかに、これは当てはまらない。最後に、図13Dは、T15p-アジド-フェニルアラニン置換を含有するMS2単量体試料に関するHPLCトレース、および測定された電荷対質量比を示す。ピークは、予測される場所で溶出して、非天然アミノ酸が組み込まれたペプチド断片に関して予測される質量対電荷比を有する。これらの結果によって、MS2ウイルスカプシドの外部エピトープ上にp-アジド-フェニルアラニンを組み込むことに成功したと結論付けられる。
【0119】
本発明は、記述される特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、構築物および試薬は、当然のこととして変化する可能性があることから、それらに限定されないと理解される。同様に、本明細書において用いられる用語は、特定の態様のみを記述する目的のためであって、添付の特許請求の範囲のみよって制限されるであろう本発明の範囲を制限すると意図されないと理解される。
【0120】
特に明記していなければ、本明細書において用いられる全ての技術的および化学的用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記述されるものと類似または同等の任意の方法、装置、および材料を本発明の実践または試験において用いることができるが、好ましい方法、装置、および材料を本明細書に記述する。
【0121】
本明細書において言及した全ての刊行物は、たとえば、刊行物において記述され、現在記述される本発明に結びつけて用いてもよい細胞株、構築物、および方法論を記述および開示する目的のために参照により本明細書に組み入れられる。先に考察した、および本文を通して考察した刊行物は、単にその開示が本出願の提出日以前であったために提供される。本明細書におけるいかなる開示も先行発明に基づいて、本開示がなされた日付を早める権利が本発明者にはないと自認したと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナンセンスコドンと塩基対を形成する直交性tRNA、細菌性細胞抽出物、ポリペプチドおよび/またはmRNA合成機構の成分;ポリペプチドの転写用鋳型;ポリペプチドの合成用単量体;ならびに翻訳にとって必要な補因子、酵素、および他の試薬を含む無細胞インビトロ翻訳反応ミックスにおいて、ポリペプチドを合成する段階を含む、無細胞インビトロ反応において少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するポリペプチドを合成するための方法であって、
反応ミックスが、非天然アミノ酸によって直交性コドンをアミノアシル化する、外因的に合成された直交性tRNAシンテターゼを含み、
ポリペプチドが少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を用いて合成される方法。
【請求項2】
外因的に合成された直交性tRNAシンテターゼが少なくとも30μg/mlの濃度で反応ミックスに加えられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
直交性tRNAが細菌性細胞抽出物の供給源である細菌によって内因性に合成される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
反応混合物が、少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質の少なくとも約50μg/mlを産生する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質の少なくとも50%が生物学的に活性である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質が、転写翻訳共役反応において合成される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
直交性tRNAが終止コドンと塩基対を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化的リン酸化が無細胞インビトロ翻訳反応において活性化される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
外因性の膜小胞が無細胞インビトロ翻訳反応に加えられる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質が膜結合タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質が分泌型タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つの部位特異的非天然アミノ酸を含有するタンパク質が少なくとも一つのジスルフィド結合を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ポリペプチドがウイルス外被タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
二つまたはそれより多くの種の外被タンパク質が合成される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ウイルス外被タンパク質がバクテリオファージ外被タンパク質である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
バクテリオファージがMS2である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
非天然アミノ酸が、アミノ酸に通常存在しない反応基(reactant group)を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
非天然アミノ酸が修飾されたフェニルアラニンまたはチロシンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
非天然アミノ酸がオルトまたはパラ位で修飾される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
非天然アミノ酸がp-アセチル-フェニルアラニン、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、およびp-アジド-フェニルアラニンから選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
無細胞インビトロ翻訳反応がompT変異細菌株に由来する細菌性抽出物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項記載の方法において用いるためのキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2009−542214(P2009−542214A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518303(P2009−518303)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/015170
【国際公開番号】WO2008/066583
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【氏名又は名称原語表記】The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University
【住所又は居所原語表記】1705 El Camino Real, Palo Alto, CA 94306−1106, USA
【Fターム(参考)】