説明

非定型抗精神病薬の使用に関連した体重増加を遅延させるための方法および組成物

精神疾患の治療のために非定型抗精神病薬を投薬されている患者における体重増加および関連するメタボリック症候群を予防または低減するための方法および組成物が記載される。本発明は、治療を必要とする患者に、有効な量のドーパミン作動薬を有効な量の非定型抗精神病薬と併せて投与することを含んでなる。本発明の1つの実施形態では、ドーパミン作動薬はプラミペキソールである。ドーパミン作動薬は、プラミペキソールを1日当たり1mg未満のように低用量で投与可能である。ドーパミン作動薬と併せて投与可能な非定型抗精神病薬の例には、クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペラドンが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神疾患の治療のために非定型抗精神病薬を投薬されている患者における体重増加および関連するメタボリック症候群を予防または低減するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本願は、2007年11月5日に出願された米国仮特許出願第60/985,563号の出願日の利益を主張するものであり、前記特許出願の全体が参照により本願に組み込まれる。
【0003】
重篤な精神疾患およびその治療には、疾患症状の固有の病的状態および機能低下に加えて、多くの身体健康上のリスクを伴う。それら身体健康上のリスクの中でも筆頭は、肥満および関連するメタボリック症候群の罹患率の増大である[非特許文献1]。
【0004】
メタボリック症候群は、1998年に世界保健機関(WHO)により、2型糖尿病または耐糖能異常すなわちインスリン抵抗性の存在に、下記すなわち(i)高血圧(>160/90)、(ii)トリグリセリド高値またはHDLコレステロール低値、(iii)体容量指数(BMI)>30kg/mまたはヒップ/ウエスト比高値(男性>0.9または女性>0.85)、および(iv)一晩に≧20μg/分の微量アルブミン尿、のうち2つ以上を伴うものとして定義された。耐糖能異常の人の40%および2型糖尿病の人の70%はメタボリック症候群の特徴を有し、したがって心筋梗塞を含む心臓病および脳卒中が3倍増となるリスクがある。遺伝がメタボリック症候群発症の最大の予測因子である一方、ある種の精神疾患(例えば双極性障害)および向精神性の薬物治療もリスク増大に関係している[非特許文献1、2、3及び4]。
【0005】
北米の市場では一般に処方される6つの非定型抗精神病薬が入手可能である。4つ(クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペリドン)は大幅な体重増加を伴うが、体重増加量は薬物および個々の患者に依存して大きく変動する[非特許文献5]。体重増加およびメタボリック症候群によってもたらされる健康上のリスクに加えて、患者は治療の中止を選ぶこともできるが結果として患者の精神疾患が悪化することも多い。
【0006】
ほとんどの抗精神病薬は神経伝達物質またはその受容体の活性を調節することにより機能する。定型すなわち従来の抗精神病薬(例えばハロペリドール、クロルプロマジン)はドーパミン(DA)アンタゴニストである。中脳辺縁系の領域におけるDA2受容体(D2R)の遮断は、統合失調症に関連した陽性症状の減少に関与していると思われる。しかしながら、中脳皮質の領域では、ドーパミンの遮断により陰性症状および認識機能障害を悪化させる可能性がもたらされる。隆起漏斗系(tubulinfundibular)のエリアでは、ドーパミンの遮断によりプロラクチンが増加し、黒質線条体では錐体外路系副作用(EPSE)がもたらされる。ほとんどの非定型抗精神病薬は、D2Rに対するよりも強く5HT2受容体に拮抗作用する。この5HT2受容体抑制の結果、ドーパミン放出が増大して、前頭前皮質では陰性症状および認知が改善され、黒質線条体路ではEPSEのリスクが低減または除去される可能性がある[非特許文献6]。
【0007】
新規な2つの抗精神病薬アリピプラゾールおよびジプラジドン(ziprazidone)は、一般に体重増加、糖尿病またはメタボリック症候群には関係していない[非特許文献5]。この違いの理由は、体重減少がドーパミン作動性に関係していることから、上記薬物のドーパミンへの影響の及ぼしかたにあるのかもしれない。視交叉上核におけるドーパミン神経伝達の減少は、肥満およびインスリン抵抗性の発症に先行する。D2RおよびD4Rを遮断する薬物は、動物モデルにおいて食欲を増大させ体重増加を引き起こす[非特許文献7、8及び9]。
【0008】
アリピプラゾールはD2Rに対して高い親和性を有するドーパミン部分作動薬である。この受容体にとって利用可能なドーパミンが豊富にある脳領域では、アリピプラゾールはドーパミン拮抗薬として作用する。その結果、統合失調症の陽性症状に関連する過度のドーパミン活性が存在する中脳辺縁系では、アリピプラゾールはドーパミンを阻害する。対して、統合失調症ではドーパミンが相対的に欠乏している中脳皮質エリアでは、アリピプラゾールはドーパミン作動薬として作用する。その結果、陰性症状および認知的症状の改善がもたらされる。アリピプラゾールはさらに、5HT1A受容体(抗不安作用および抗うつ作用を担う)においては高親和性の部分作動薬として、5HT2受容体においては拮抗薬としても作用するが、D2R親和性と同程度には作用しない。5HT2拮抗作用は前頭前皮質および黒質におけるドーパミン放出を増加させ、さらに陰性症状および認知ならびに錐体外路系副作用を改善する。5HT2拮抗作用はまた、前頭前皮質におけるノルアドレナリン(noradrenolin)の増加をもたらす。アリピプラゾールは抗コリン作用を持たず、極めて低い抗ヒスタミン作働性およびα1親和性を示すが、このことは、この薬剤に関連した認知機能障害および起立性低血圧の発生率が低いことを説明するとも考えられる[非特許文献6]。
【0009】
ジプラジドンが体重増加を引き起こさない理由は未だ完全には明らかにされていないが、ドーパミン作用と関係がある可能性もありうる。
ドーパミン調節が体重増加に関係していることは文献において広く知られている。ドーパミンは、主として中脳辺縁系(報酬)脳回路および中間視床下部(満腹)脳回路を介して食物摂取量を調整することにより、エネルギー収支を調節する。視床下部背内側および弓状核におけるドーパミンニューロンの発火は、摂食を抑制する。摂食は、視床下部腹内側部(VM)における細胞外ドーパミン濃度を上昇させる。慢性的な高脂肪食は視床下部におけるドーパミン代謝回転の減少をもたらす。ドーパミン受容体2、3および4はいずれも「D2様」受容体であり、食物摂取量の調整において重要である。ドーパミンがD2Rに結合する能力およびドーパミン受容体の密度はいずれも体容量指数(BMI)に反比例する[非特許文献10]。この所見と一致して、D2RのmRNA発現は肥満と正の相関を有する。肥満している人(BMI高値)では、結合すべきドーパミン受容体が少なく、かつドーパミンが十分には結合せず、このことが摂食を停止させるメッセージが届くのを妨げる。D2R mRNAの活性を増大させることは、慢性的な運動不足に対する補正としてD2Rの利用度を増大させる試みである(長期的な毎日の運動はラットにおいてD2R密度を増大させることが示されている)[非特許文献7及び8]。
【0010】
D2Rの利用度が低いと、DAによって調節される報酬回路の刺激に対する肥満者の感度が低下し、このことにより肥満者は過剰摂食のリスクにさらされる。高エネルギー摂取による肥満(過度の食物摂取)は、D2Rの減少による「報酬不全症候群(reward deficiency syndrome)」をもたらす。食物を摂取するとドーパミンが増加し、その結果、特に肥満している人ではドーパミン輸送体mRNAの活性の増大がもたらされる。このドーパミン輸送体産生の増大は、シナプスにおいてドーパミン受容体と相互作用するために利用可能なドーパミンの減少をもたらす[非特許文献8]。
【0011】
症例によっては、体重増加が多因子的な場合もある。食物摂取量の調節において重要な、多数の食欲促進性(食欲を刺激する)および食欲減退性(食欲を抑制する)のペプチドおよびサイトカインが存在する。これらのペプチドおよびサイトカインの一部は、ドーパミンと相互作用し、かつ何らかの精神疾患またはその治療により影響を受ける可能性がある。
【0012】
レプチンは、脂肪細胞、胎盤、腸および恐らくは脳において産生される重要な食欲抑制因子である。体脂肪が減少すると、レプチンも減少して食物摂取量の増加がもたらされる。体脂肪が増加すると、より多くのレプチンが産生されて満腹に結び付くはずである。肥満は「レプチン抵抗性」(インスリン抵抗性に似ている)に関係していると考えられるかもしれない。体脂肪が高いとレプチンは慢性的に高値であり、このことから脳血液関門を横切るレプチンの活性輸送体が飽和して、摂食を停止させるレプチンのメッセージが届かない。しかしながら、レプチンが視床下部に注入されれば摂食は止まる。レプチンは体容量指数と高い相関を有し、思春期後には著しく増加するが、テストステロンによって大きく軽減されるため、女性は男性より2〜3倍高いレプチン値を有している。運動および断食はレプチンを減少させ、摂食を刺激する[非特許文献1]。
【0013】
レプチンおよびインスリンは、エネルギー貯蔵における中枢神経系へ向けた重要なシグナルである。レプチンは脳の報酬回路に関与する。視床下部では、レプチンは重要な食欲促進因子である神経ペプチドYを阻害し、いくつかの重要な食欲抑制因子を刺激する。ノルアドレナリン(noradrenolin)ニューロンは、前視床下部の室傍核(periventrical nucleus)において神経ペプチドYとともに共局在化している。レプチン欠乏下では、室傍核および恐らくは他の視床下部エリアにおけるノルアドレナリン(noradrenolin)は増加する(レプチンは通常は視床下部においてノルアドレナリン(noradrenolin)活性を遮断する)が、このことがレプチン欠乏と関連した摂食亢進症を担うメカニズムと考えられるかもしれない。ノルアドレナリン(noradrenolin)または神経ペプチドYが室傍核に直接注入されると、摂食の増加がもたらされる。神経ペプチドYの増加もインスリン抵抗性の増大および基礎代謝率(BMR)の低減に関係している[非特許文献1]。
【0014】
レプチンのドーパミンとの相互作用は、摂食報酬効果に関連した中脳辺縁系のドーパミン投射と関係があると考えられるかもしれない。視床下部背内側および弓状核におけるドーパミン作動性は摂食を抑制し、ドーパミン値は肥満マウスの弓状核では減少している。レプチンは、in vitroにおいて視床下部の神経終末からのドーパミン分泌を抑制する。視床下部背内側および弓状核におけるドーパミンニューロンの発火は摂食を抑制する。D2Rの活性化は視床下部神経ペプチドYのmRNA発現を低減し、摂食を低減する。レプチンによる摂食の低減はH1の遮断(抗ヒスタミン作用)により拮抗作用を受け、過食および体重増加をもたらす。
【0015】
外側視床下部は、摂食報酬系における重要領域のようである。オレキシンは、外側視床下部領域および脳弓周囲領域のニューロンとともに重要な食欲促進因子である。オレキシンは摂食を促進し、ドーパミン報酬系に対して興奮性の影響を及ぼす。オレキシンは、薬物依存に関連した報酬系にも関与すると考えられるかもしれない。ドーパミンは、外側核(LH)/脳弓周囲領域で作用することにより報酬経路および食物摂取を抑制する。ドーパミン受容体の活性化は摂食を抑制し、D2R受容体拮抗作用は、LH/脳弓周囲領域におけるドーパミンの食欲抑制作用を遮断する。食欲を抑制するドーパミン活性は、オレキシンニューロンの抑制に起因しているかもしれない。オレキシンニューロンのFOS発現を増大させる抗精神病薬はドーパミン受容体の遮断も行う[非特許文献1及び9]。
【0016】
ドーパミンは、オレキシンニューロンにおいて用量依存的で可逆的な方式で興奮性シナプス伝達を調整する。調整の方向はドーパミン受容体の種類に依存する。D1Rは低用量のドーパミンでオレキシンを促進する。D2Rは、高用量のドーパミンで自発性の興奮性神経伝達の頻度を減少させる。LH/脳弓周囲領域における低〜中間濃度のドーパミンは、D1Rを介してオレキシンニューロンを興奮させ、このことが腹側被蓋領域(VTA)ニューロンを興奮させ、最終的には側坐核および前頭前皮質におけるドーパミン放出が増大する(報酬経路の励起および食欲増大を伴った正のフィードバックループが作成される)。類似の方式で、5HT2C受容体に拮抗作用する非定型抗精神病薬(例えばオランザピンおよびクエチアピン)は、VTNから側坐核へのドーパミンの放出を脱抑制することにより、報酬経路に対する興奮性作用を介して摂食を増大させる。LH/脳弓周囲領域における高濃度のドーパミンはD2Rを活性化し、このことがオレキシンニューロンを抑制する。VTAニューロンの励起が低減し、負のフィードバックループが確立されて報酬経路の抑制(食欲の減少)がもたらされる[非特許文献1、7、8及び9]。
【0017】
近年発表された論文では、経口血糖降下薬メトホルミンおよびその食欲抑制特性の作用機序が研究されている[非特許文献11]。in vitroでは、メトホルミンは視床下部においてAMP活性化キナーゼのリン酸化を阻止し、このことが神経ペプチドY濃度を減少させる。これは摂食の減少をもたらすはずである。この作用は、視床下部におけるレプチンの作用に酷似している。AMP活性化キナーゼは、レプチンの末梢作用のうちの一部を仲介する可能性があり、また興味深いことに、メトホルミンはレプチンのように二重作用を有し、骨格筋細胞においてAMP活性化キナーゼを活性化する一方で、視床下部においてAMP活性化キナーゼを抑制する。メトホルミンは、向精神性の薬物治療に関連した体重増加の阻止においては有益な効果を一貫して実証してはいない[非特許文献1、11]。
【0018】
炎症誘発性サイトカインは、感染症の際の食欲不振の発症にとって極めて重要である。これらには腫瘍壊死因子(TNFα)、インターロイキン1β(IL−1β)およびIL−6が挙げられる。TNFαは脂肪細胞で合成されるが、脂肪細胞はTNFα受容体も産生する。TNFαおよびその受容体はいずれも肥満に関係している。TNFαはインスリン抵抗性を引き起こし、耐糖能を低下させる可能性がある。クロザピン、オランザピン、ならびに抗うつ薬のアミトリプチリンおよびミルタザピンはTNFα系の活性化物質である。体重増加を必ずしも引き起こすとは限らない薬物(パロキセチン、ベンラファキシン、ハロペリドール)は、TNFα系の活性化に関係していない。しかしながら、TNFαと肥満との間の関連性について説明する明確な原因機構は見出されていない。TNFα系の活性化はクロザピンおよびオランザピンを用いた治療の最初の1週間以内に生じ、次いで一定を維持する[非特許文献1]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Zimmermann U,Kraus T,Himmerich H,Schuld A,Pollmaecher T(2003)Epidemiology,implications and mechanisms underlying drug−induced weight gain in psychiatric patients. J Psychiatr Res 37:193−220
【非特許文献2】Taylor V,MacQueen G(2006)Associations between bipolar disorder and metabolic syndrome:a review. J Clin Psychiatry 67(7):1034−1041
【非特許文献3】McElroy SL,Frye MA,Suppes T,Dhavale D,Keck PE,Leverich GS,Altshuler L,Denicoff KD,Nolen WA,Kupka R,Grunze H,Walden J,Post RM(2002)Correlates of overweight and obesity in 644 patients with bipolar disorder. J Clin Psychiatry 63(3):207−213
【非特許文献4】McElroy SL,Kotwal R,Malhotra S,Nelson EB,Keck PE,Nemeroff CB(2004)Are mood disorders and obesity related? A review for the mental health professional. J Clin Psychiatry 65(5):634−651
【非特許文献5】Berkowitz RI,Fabricatore AN(2004)Obesity,Psychiatric status,and psychiatric medications. Psychiatr Clin N Am 28:39−54
【非特許文献6】Gruender G,Kungel M,Ebrecht M,Goeroecs T,Modell S(2006)Aripiprazole:Pharmacodynamics of a dopamine partial agonist for the treatment of schizophrenia. Pharmacopsychiatry 29(Suppl l):521−525
【非特許文献7】Kok P,Roelfsema F, Froelich M,van Pelt J,Stokkel MPM,Meinders AE,Piji H(2006)Activation of dopamine D2 receptors simultaneously ameliorates various metabolic features of obese women. Am J Physiol Endocrinol Metab 291:E1038−E1043
【非特許文献8】Huang XF,Yu Y,Zavitsanou K,Han M,Storlien L(2005)Differential expression of dopamine D2 and D4 receptor and tyrosine hydroxylase mRNA in mice prone,or resistant,to chronic high−fat diet−induced obesity. Molecular Brain Research 135(l−2):150−161
【非特許文献9】Alberto CO,Trask RB,Quinlan ME,Hirasawa M(2006)Bidirectional dopaminergic modulation of excitatory synaptic transmission in orexin neurons. J Neurosci 26(39):10043−10050
【非特許文献10】Wang GJ,Volkow ND,Fowler JS(2002)The role of dopamine in motivation for food in humans:implications for obesity. Expert Opin Ther Targets 6(5):601−9
【非特許文献11】Chau−Van C,Gamba M,Salvi R,Gaillard RC,Pralong FP(2007)Metformin inhibits adenosine 5’−monophosphate−activated kinase activation and prevents increases in neuropeptide Y expression in cultured hypothalamic neurons. Endocrinology 148(2):507−ll.Epub 2006 Nov 9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
多くの精神疾患の有効な治療には、薬物療法への長期的な患者のコンプライアンスが必要である。不幸にして、上述のように体重増加は患者が治療を途中終了させて症状の悪化をもたらす原因となることが多い。向精神性の薬物治療を受けている患者において体重増加および関連するメタボリック症候群を引き起こす生物学的機構は未だ完全には解明されていないが、従来の治療のこの重大な副作用を防止または低減するための新たな方法および組成物が差し迫って必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に従って、精神疾患の治療を受けている患者における体重増加、2型糖尿病、およびメタボリック症候群のうちの1つ以上を防止または低減する方法が説明される。該方法は、有効な量のドーパミン作動薬を有効な量の非定型抗精神病薬と併せて患者に投与することを含んでなる。ドーパミン作動薬と併せて投与可能な非定型抗精神病薬の例には、クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペラドン(risperadone)が含まれる。本発明の1つの実施形態では、ドーパミン作動薬はプラミペキソールである。ドーパミン作動薬は、1日当たり1mg未満のプラミペキソールのような低用量で投与可能である。
【0022】
本発明はさらに、有効な量のドーパミン作動薬および非定型抗精神病薬を組み合わせて含んでなる組成物、ならびに該組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以降の説明の全体を通して、本発明についてのより完全な理解を提供するために具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明はこれらの特定事項を用いずに実行可能である。他の例では、発明を不必要に不明瞭にするのを回避するために、良く知られた要素については詳細に表示または説明されていない。従って、明細書および図面については限定的な意味ではなく例示的な意味で考えるべきである。
【0024】
本発明は、精神疾患の治療のために非定型抗精神病薬を投薬されている患者における体重増加および関連するメタボリック症候群を予防または低減するための方法および組成物に関する。より具体的には、本願は、1つ以上の非定型抗精神病薬および1つのドーパミン作動薬の併用投与に関する。以下の実験実施例において示されるように、この併用療法は治療を必要とする患者における体重増加を制限または低減するのに臨床的に有効であることが示されている。
【0025】
本発明に従って有効であることが示された1つのドーパミン作動薬はプラミペキソール(商標MIRAPEX(R)およびSIFROL(R)として販売)である。プラミペキソールは、パーキンソン病および下肢静止不能症候群の治療用に開発されたドーパミン作動薬である。プラミペキソールは腎臓で代謝され、チトクロムp450(CPY)系とは相互作用しない。プラミペキソールは、D3Rに対して、D2Rと比較すると最大で10倍高い親和性を有し、D4Rと比較すると17倍高い親和性を有する。プラミペキソールは、D1またはD5受容体、5HT受容体、Ach受容体、H1受容体、オピオイド受容体、α1アドレナリン作動性受容体またはβアドレナリン作動性受容体に対する親和性は持たないが、α2受容体には軽度の親和性を有している[13]。
【0026】
プラミペキソールの投与が患者の体重に影響を及ぼす可能性があるという提唱については文献に裏付けがある。結合組織炎にプラミペキソールを使用するランダム化比較試験(RCT)において、被験者の40%が14週間の試験の間に2.27kg(5ポンド)超の体重減少を示したのに対し、プラセボ群では10%であった。プラミペキソール群では21%が2.27kg(5ポンド)超の体重増加を示したのに対し、プラセボ群では57%であった[13]。この試験では、最大4.5mgまでの一定した段階的用量増加が使用された。精神疾患症状も、プラセボに対して有意な睡眠障害も報告されず、またプラミペキソールは概して忍容性が高いと述べられたが、両方の群において共通して悪心が報告された(プラミペキソール群79%に対しプラセボ群では71%)。体重減少は、結合組織炎の症状の改善には無関係であった。文献の著者らは、4.5mgの用量が、下肢静止不能症候群またはパーキンソン病の治療のために一般に使用される用量より高いことを指摘している[13]。より高濃度のプラミペキソールは後シナプスのドーパミン神経伝達を促進する一方、より低濃度では海馬におけるドーパミン伝達を抑制する前シナプス作用を促進する。プラミペキソール治療を受けた38人の被験者のうち18人、およびプラセボ群の被験者のうち0人に見られた不安の増大は、段階的用量増加の初期に生じ、著者らは、低用量のプラミペキソールがノルアドレナリン(noradrenolin)レベルを増大させることにより不安を引き起こすと仮定した(「アドレナリン作動性の覚醒」)。
【0027】
低用量のプラミペキソールが、ノルエピネフリンおよび神経ペプチドYのレベルを低下させることによる前シナプス作用を有し、体重減少をもたらすことは可能である。反対に、高用量ではドーパミン作動性を増大させることにより後シナプス作用を引き起こし、報酬経路の励起および摂食の増加ならびに体重増加をもたらす可能性がある。
【0028】
プラミペキソールの市販前開発中に、初期または進行型のパーキンソン病の患者が治験に登録された。大幅な体重減少または体重増加を含まない様々な有害事象が確認されたが、ほとんどの事象は強度が軽いかまたは中程度であった[14]。2000年9月のAnnals of Clinical Psychiatryに発表されたある遡及的な記録調査は、「抗うつ薬または気分安定薬の補助薬として使用されるプラミペキソールは単極性および双極性うつ病の治療に有効かつ安全のようであった」と報告している[15]。従って、プラミペキソールは概して忍容性が良好のようであり、特に低用量で使用される場合は非定型抗精神病薬との併用を妨げる重大な副作用を引き起こさない。
【0029】
さらに、双極性II型患者の治療に関してプラミペキソールを研究している、2004年のBiological Psychiatryに発表されたランダム化比較試験(RCT)から、プラミペキソールが有意な抗うつ性作用を有することが見出された。二重盲検のプラセボ比較試験では、DSM−IVによる双極性障害II型でうつ期の、治療レベルのリチウムまたはバルプロエート(一般に気分安定薬と呼ばれる薬剤)を投薬されている21人の患者が、プラミペキソール群(n=10)またはプラセボ群(n=11)を用いた6週間の治療に無作為に割り当てられた。主要な有効性はモンゴメリ・アスバーグうつ病評価尺度(Montgomery−Asberg Depression Rating Scale)によって評価された。各群1人を除いてすべての対象者が試験を完了した。モンゴメリ・アスバーグうつ病評価尺度の合計スコアに関する分散分析から、有意な治療効果が示された。治療応答(モンゴメリ・アスバーグうつ病評価尺度がベースラインから>50%減少)は、プラミペキソールを投薬されている患者の60%、およびプラセボを投薬されている患者の9%において生じた(p=0.02)。プラミペキソールを投薬されている1人およびプラセボを投薬されている2人が軽躁病の症状を示した[16]。他の研究では、従来の抗うつ薬または気分安定薬(すなわち非定型抗精神病薬を含まない)の既存の治療計画にプラミペキソールを追加することの影響が検討されている[21〜23]。
【0030】
多数のデータが、プラミペキソールがD3優先的な作用を有する可能性があることを示唆しており、これらの観察は特に注目に値する、というのも、D3受容体は、抑うつ状態に関与してきた神経回路においてD3受容体が重要な役割を果たすかもしれないことを示唆する解剖学的な分布を有するからである。D2/D3受容体における作用に加えて、現在ではプラミペキソールが強健な神経栄養効果も及ぼすことが明らかであり、該神経栄養効果の多くは抗アポトーシスタンパク質Bcl−2のアップレギュレーションによって仲介される可能性がある[17、18]。
【0031】
要約すると、いくつかの異なる要因が、非定型抗精神病薬と併せて投与された時に体重増加を遅らせるためのプラミペキソールの使用を支持している。例えば:
1)プラセボの10%に対して研究被験者の40%が2.27kg(5ポンド)超の体重減少を示した結合組織炎の研究。上記に説明されたように、1日当たり4.5mgまで強制的に漸増させたこの研究で重篤な有害事象はなかった[13]。
【0032】
2)プラミペキソールは、気分障害の患者(この場合一般に非定型抗精神病薬が処方される)において著しい副作用または精神病の発生を伴うことなく抗うつ効果を積極的に増大させるようである[15、16]。
【0033】
3)3.5〜4.5mg/日の範囲の用量で体重増加が引き起こされ、この体重増加は用量を減じると減少した、パーキンソン病患者における症例報告[19]。以下の実施例において実証されるように、プラミペキソールは低用量で投与されると特に有効となりうるようである。本特許出願において使用されるように、プラミペキソールの低用量とは、好ましくは1日当たり1mg未満(例えば1日当たり0.125〜0.5mg)の範囲であってよい。プラミペキソールについて前シナプスおよび後シナプスのドーパミン受容体親和性が測定され、体重減少について可能な作用機序が示唆された。例えば、低用量における前シナプスのドーパミン受容体への親和性およびより高用量における後シナプスの受容体への親和性は、プラミペキソールがなぜ低用量で体重増加を防止し、高用量では体重増加をおそらく促進するかについての説明となるかもしれない。
【0034】
4)視床下部のオレキシンを減少させて報酬経路への抑制作用および摂食の減少をもたらす、D2作動性を示す研究。これは、非定型抗精神病薬によって引き起こされる体重増加に関与する可能性のある5HT2C拮抗作用とは逆である[1]。
【0035】
5)1日当たり0.125mgのプラミペキソールはリスペリドンによって引き起こされた乳汁漏出を停止させるという、低用量でもプロラクチンを低下させるのに十分な影響を隆起漏斗系ドーパミンに及ぼすことを示唆する臨床観察(さらに以下に述べる)。
【0036】
6)視床下部レベルにおけるドーパミン作動性は神経ペプチドYを減少させ、その結果として食欲の減少をもたらす[14]。
当業者には当然のことであるが、プラミペキソール以外のドーパミン作動薬も本発明に従って使用可能である。いくつかの他のドーパミン作動薬が、食物摂取量および体重に対して影響を及ぼすことを報告されている。他のドーパミン作動薬の例には、ブロモクリプチン、カベルゴリンおよびペルゴリドが含まれる。
【0037】
ブロモクリプチンはインスリン感受性を増大させることが示されているドーパミン作動薬である。ブロモクリプチンの8日間投与の後には、日中のグルコース濃度およびインスリン濃度が低下し、D2R活性化の交感神経遮断作用により血圧が低下し、基礎代謝率(BMR)が増大する。ブロモクリプチンの長期投与は耐糖能を上昇させ体脂肪を低下させた。ブロモクリプチンは、視床下部神経ペプチドYの低減により、またはその交感神経遮断特性を介して(視床下部NAの増大は肥満のマーカーであり、摂食の増加をもたらす)、グルコース恒常性を改善すると考えられるかもしれない。ブロモクリプチンはまた、視床下部腹内側部のノルアドレナリン(noradrenolin)の低減によりグルコース代謝に影響を与えるとも考えられるかもしれない。その結果、ブロモクリプチンは2型糖尿病を治療する際の有用性について研究されてきた[7]。
【0038】
ブロモクリプチンを用いた副作用の発生率は極めて高い(69%)が、これらの副作用の程度は一般に軽度から中程度である。治療は副作用のために患者のおよそ5%で中止された。これらの副作用を頻度の降順に示すと:悪心(49%)、頭痛(19%)、めまい(17%)、倦怠(7%)、意識もうろう(5%)、嘔吐(5%)、腹部痙攣(4%)、鼻閉(3%)、便秘(3%)、下痢(3%)および眠気(3%)である[12]。
【0039】
本発明に従って使用可能な他のドーパミン作動薬には、カベルゴリン、ペルゴリド、ロピニロールおよびキナゴリドが含まれる。ロピニロールはプラミペキソールに最も似た特徴を有し、同様のD2親和性を有するがD3親和性は低い。しかしながら、ロピニロールは他の薬物との併用を複雑にする肝代謝およびp450相互作用を有する。対照的に、プラミペキソールの90%は尿中にそのまま排泄される。低用量のロピニロールは0.25〜1.0mgとなろう。(高用量は1日当たり4〜6mgの範囲である)。
【0040】
キナゴリドは、ブロモクリプチンよりも極めて忍容性が良好なD2受容体作動薬であり、非定型抗精神病薬との配合剤が作出されれば好ましいであろう1日1回投薬を可能にする24時間の半減期を有する。キナゴリドがCV205−502と命名された1991年のある研究[20]は、この薬物を用いるマクロプロラクチノーマの治療を受けた12人の患者のうち11人における大幅な体重減少に言及している。この体重減少はプロラクチンレベルが低下していることに関係している可能性があったが、D2受容体作動性と直接関係した体重減少でもあるかもしれない。低用量のキナゴリドは1日当たり25〜50マイクログラムとなるであろう。
【0041】
以下の実施例ではさらに本発明がより詳細に例証されるが、当然ながら本発明は特定の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
プラミペキソールは、オランザピンで大幅に体重が増加し(9.07〜18.14kg(20〜40ポンド))、その後オランザピン治療を停止した後に再発した患者において最初に試験された。この患者群はクエチアピンまたはリスペリドンの治験には応答しなかった。
【0043】
再度の体重増加(オランザピン中止の間は体重が減少していた)を防止する試みにおいて、これらの患者について1日当たり0.125mgのプラミペキソールの投薬を開始し、空腹感が弱まるまで週単位で用量を漸増した。18人の患者の中で必要であった最高用量は、0.25mgで1日2回であった。1日当たり0.125〜0.50mgのプラミペキソール用量は、かつてオランザピンで始まったこれらの患者の体重増加を(8週間を超えて)防止しただけでなく、オランザピンおよびクエチアピンで体重増加した患者が減量する助けにもなった。空腹時血糖が正常よりも高かった1人の患者では、プラミペキソールは血糖を正常範囲にするのに有効であったように思われる。
【0044】
実施例1
31歳のある女性は17歳で双極性障害と診断された。この女性はパニック発作、強迫性障害、および社会不安を患っていた。3年前、この女性はカルバマゼピンおよびオランザピン(1日当たり20mg)の投薬中に体重が27.2kg(60ポンド)増え、95.3kg(210ポンド)となった。2年前、ラモトリジン単独(1日当たり400mg)の投薬中は女性の体重は68.4kg(150ポンド)であった。
【0045】
この患者がオランザピン(1日当たり20mg)と併せてプラミペキソール(0.25mg、1日2回)を投与されると、体重が4.99kg(11ポンド)減少した(84.8kg(187ポンド)から79.8kg(176ポンド)となった)。
【0046】
実施例2
34歳のある女性は重篤な抑うつを伴う外傷後ストレス障害を患っていた。この女性はクエチアピン(1日当たり300mg)を投薬されたが、その結果体重が9.07kg(20ポンド)増加した(70.3kg(155ポンド)となった)。したがって、クエチアピンは中止された。リスペリドン(1日当たり2mg)が試みられたが、女性はさらに5.44kg(12ポンド)増え(75.8kg(167ポンド)となった)、乳汁漏出を発症した。したがって、リスペリドンは中止された。
【0047】
リスペラドン(risperadone)が中止された同日、オランザピン(1日当たり5mg)およびプラミペキソール(1日当たり0.125mg)が併用投与された。その次の週の内に乳汁漏出が止まり、体重は72.6kg(160ポンド)まで減少した。プラミペキソールの最終用量は、0.25mgを1日2回であった。
【0048】
実施例3
34歳のある女性は双極性障害II型と診断され、パニック発作および外傷後ストレス障害の両方を患っていた。この女性はリスペリドンおよびクエチアピンを用いた強化療法に応答せず、したがってオラズパピン(olazpapine)の治験が1日当たり5mgの用量で開始され、その結果体重が85.3kg(188ポンド)から91.6kg(202ポンド)へ増加した。
【0049】
オランザピン用量は1日当たり10mgに増量され、1日当たり最大で0.75mgの日用量のプラミペキソールと併せて投与された。この結果食欲が著しく減少し、この女性の体重は、関節痛のため1日当たり5mgのプレドニゾンを追加したにもかかわらず91.6kg(202ポンド)に維持された。
【0050】
実施例4
29歳のある女性は大うつ病性障害およびパニック発作を患っていた。この女性はオランザピン(1日当たり5mg)およびプラミペキソール(0.25mg、1日2回)を併用投与された。
【0051】
この女性の当初の体重76.2kg(168ポンド)は維持された。この女性はプラミペキソールを独断で中止し、体重は1週間以内に82.1kg(181ポンド)まで増加した。女性は0.25mgで1日2回のプラミペキソールを再開し、彼女の体重は続く2週間以内に78.9kg(174ポンド)まで減少した。
【0052】
実施例5
30歳のある女性は、パニック発作および大うつ病性障害を伴う外傷後ストレス障害を患っていた。1日当たり225mgのEffexorXR(R)(ベンラファキシン)をクエチアピン(1日当たり300mg)と併せた強化療法により、体重が69.9kg(154ポンド)まで増加し、助力とはならなかった。したがって、クエチアピンは中止された。
【0053】
この患者はオランザピン(1日当たり5mg)およびプラミペキソール(1日当たり0.125mg)を併用投与された。体重は、最初は72.6kg(160ポンド)まで増加したが、プラミペキソール用量を1日当たり0.25mgまで増加した結果、この女性の体重は6週間後の再評価において69.9kg(154ポンド)まで戻った。
【0054】
実施例6
46歳のある女性は、パニック発作ならびに社会不安および全般性不安を伴う双極性障害I型を患っていた。この女性はクエチアピン(1日当たり300mg)およびリスペリドン(1日当たり1mg)を投薬された。その結果、104.3kg(230ポンド)から112.4kg(247ポンド)まで体重が増加した。
【0055】
この女性は体重増加後に1日当たり0.25mgとしてプラミペキソールを開始し、体重は110.7kg(244ポンド)まで減少したが;プラミペキソールが中止されると、女性の空腹感は大きく増大して体重はさらに113.4kg(250ポンド)まで増加した。
【0056】
実施例7
33歳のある男性はパニック発作を伴った大うつ病性障害を患っていた。この男性は、抗うつ薬の強化療法のためクエチアピンおよびリスペリドンの組み合わせが投薬された。男性の体重は91.6kg(202ポンド)から94.3kg(208ポンド)に増加し、症状の悪化がみられた。
【0057】
この男性は、1日当たり5mgのオランザピンおよび1日当たり0.125mgのプラミペキソールの併用を開始し、体重は2週間で98.4kg(217ポンド)まで増加した。プラミペキソール用量が1日当たり0.25mgに増加され、患者の体重は2週間で97.1kg(214ポンド)に減少し、その後96.2kg(212ポンド)まで減少した。プラミペキソール投与前のコレステロールは6.6mmol/Lであり、トリグリセリドは2.88mmol/Lであった。プラミペキソール投与後、これらの数字は食事の変化および体重増加を伴わずにそれぞれ5.6mmol/Lおよび2.4mmol/Lに低下した。
【0058】
実施例8
56歳のある男性は、外傷後ストレス障害およびパニック発作を伴った双極性障害II型を患っていた。この男性は強化療法のため1日当たり375mgのクエチアピンを投与され、体重は117.5kg(259ポンド)であった。
【0059】
この男性の薬物治療はオランザピン(1日当たり15mg)に変更され、体重は、0.25mgのTID(1日に3回)のプラミペキソールを用いて117.5kg(259ポンド)に維持された。プラミペキソール用量を増加するごとに、男性の貪欲な食欲が著しく低下するのが認められた。
【0060】
実施例9
28歳のある女性は、うつ病性混合状態、パニック発作、および強迫性障害を伴った双極性障害II型を患っていた。この女性はラモトリジン(200mg、1日2回)を投薬されていた。クエチアピンを300mgから600mgHS(就寝時)に増加した後、この女性の体重は68.0kg(150ポンド)から72.6kg(160ポンド)に増加した。
【0061】
0.25mgでAMおよびHS(午前中および就寝時)のプラミペキソールを用いると、体量は1.4kg(3ポンド)減少して71.2kg(157ポンド)に維持された。
実施例10
61歳のある男性は難治性うつ病の治療を受けており、複数の至適抗うつ薬試験に参加した。この男性はCipralex(R)(1日当たり40mg)およびWellbutrin(R)(1日当たり300mgでXL(持続放出))を投与された。
【0062】
オランザピンが2.5mgのHS(就寝時)として追加された。この男性は5日間で0.91kg(2ポンド)増え(77.6kg(171ポンド)から78.5kg(173ポンド))、顕著な食欲増大が認められた。0.125mgでAMおよびHS(午前中および就寝時)のプラミペキソールにより、最後の1か月間は1日当たり5mgまでオランザピンの用量を増加したにもかかわらず男性の体重は過去2か月間78.5kg(173ポンド)に維持された。
【0063】
実施例11
35歳のある女性は、パニック発作および社会不安を伴った双極性障害II型を患っていた。この女性は1日当たり300mgのEffexorXR(R)を1年間投薬された。女性は1日当たり100mgのクエチアピンを3か月間投与され、体重増加は伴わなかった。しかしながら、クエチアピンを1日当たり200mgに増量すると、2週間で4.5kg(10ポンド)増えた(68.9kg(152ポンド)から73.5kg(162ポンド)になった)。
【0064】
0.125mgを1日1〜2回としてプラミペキソールをさらに投与すると、この女性の体重は3週間にわたってそれ以上増えなかった。プラミペキソールを0.25mgでAMおよびHS(午前中および就寝時)に3週間増量した後、この女性は体重が2.3kg(5ポンド)増えた。この女性は、用量を0.125mgで1日2回に減量するように勧告された。この患者は、主治医の胃腸病専門医によってプレドニゾンの投与を受けた結果、75.8kg(167ポンド)から83.9kg(185ポンド)まで体重が増加した。従って、プラミペキソール用量の減少の明確な影響を判断することは不可能であった。
【0065】
実施例12
33歳のある女性は双極性障害I型に罹患していた。この女性は20歳から22歳まで過食症に罹患しており、社会不安および身体醜形障害を患っていた。2つの試験においてクエチアピン投与を受けている間、この女性は発疹を発症した。この女性は精神病性うつ病と診断され、1日当たり5mgのオランザピンが処方されたが、1日当たり20mgに増量された。この女性にはラモトリジンおよびprozac(R)も処方された。この女性は体重が16.8kg(37ポンド)増えた(65.8kg(145ポンド)から82.6kg(182ポンド)となった)。
【0066】
この女性については0.25mgで1日2回のプラミペキソールで開始され、女性の体重は4.5kg(10ポンド)減少した(78.0kg(172ポンド)となった)。プラミペキソールを投与していたおよそ2か月の後、空腹時血糖(FBS)は6.6mmol/L、コレステロールは7.5mmol/L、およびトリグリセリドは3.6mmol/Lであってプラミペキソールを開始する前と同じであった。
【0067】
実施例13
26歳のある女性は強迫性障害およびパニック発作を伴った双極性NOS(特定不能)に罹患していた。この女性は、ミルタザピン(1日当たり45mg)投薬中に体重が9.1kg(20ポンド)、さらには運動および食事制限にもかかわらずクエチアピン(600mgでHS(就寝時))投薬中に4.5kg(10ポンド)増えた。
【0068】
この女性には、最大で0.25mgを1日2回のプラミペキソール投薬が開始され、3週間で体重が2.3kg(5ポンド)減少した(59.9kg(132ポンド)から57.6kg(127ポンド)となった)。
【0069】
実施例14
40歳のある女性は重篤な抑うつを伴う外傷後ストレス障害を患っていた。この女性は、EffexorXR(R)、ラモトリジンおよびベンゾジアゼピンを含む複数の薬物が投与された。
【0070】
これにオランザピン(1日当たり10mg)およびプラミペキソール(0.25mg、1日2回)が追加された。この女性の当初の体重141.5kg(312ポンド)が数か月間維持された。
【0071】
実施例15
28歳のある女性は、パニック発作および境界性人格障害を伴った双極性障害I型に罹患していた。それまで躁病に有効であった唯一の薬剤はオランザピンであったが、この患者の体重が以前13.6kg(30ポンド)増えたので、オランザピンは拒否された。
【0072】
この患者は、オランザピン1日当たり2.5〜5mgとプラミペキソール1日当たり0.125〜0.25mgとの組み合わせを用いる試みに同意し、体重増加を経験しなかった。しかしながら、この女性は費用のためにプラミペキソールを継続することができず、直ちに体重が増加した。その結果、オランザピンは中止され、患者は入院した。
【0073】
実施例16
22歳のある女性は、実施例15と同様にパニック発作および境界性人格障害を伴った双極性障害I型に罹患していた。それまで躁病に有効であった唯一の薬剤はオランザピンであったが、この患者の体重が以前10.4kg(23ポンド)増えたので、オランザピンは拒否された。
【0074】
この患者は、オランザピン1日当たり2.5〜5mgとプラミペキソール1日当たり0.125〜0.25mgとの組み合わせを用いる試みに同意し、体重増加を経験しなかった。しかしながら、この女性は費用のためにプラミペキソールを継続することができず、直ちに体重が増加した。その結果、オランザピンは中止され、患者は入院した。
【0075】
先行する開示に照らせば当業者には明白であるが、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく本発明の実行において多数の変更形態および改変形態が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲および今後導入される請求項は、そのような変更形態および改変形態すべてを特許請求の範囲の真の範囲内にあるように含むものと解釈されることが意図されている。
【0076】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神疾患の治療を受けている患者における体重増加、2型糖尿病、およびメタボリック症候群のうちの1つ以上を予防または低減するための方法であって、有効な量のドーパミン作動薬を有効な量の非定型抗精神病薬と併せて患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
ドーパミン作動薬は、プラミペキソール、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、ロピニロールおよびキナゴリドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドーパミン作動薬はプラミペキソールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ドーパミン作動薬はキナゴリドである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
非定型抗精神病薬は、クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペラドンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
2以上の非定型抗精神病薬が投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非定型抗精神病薬は、DA2受容体拮抗作用よりも強い5HT2受容体拮抗作用を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
低用量のドーパミン作動薬が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プラミペキソールの用量は1日あたり1ミリグラム未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
プラミペキソールの用量は1日あたり0.125〜0.5mgの範囲内にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キナゴリドの用量は1日あたり25〜50マイクログラムの範囲内にある、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
ドーパミン作動薬はロピニロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ロピニロールの用量は1日あたり0.25〜1.0ミリグラムの範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
精神疾患は、双極性障害I型、双極性障害II型、強迫性障害、パニック発作、社会不安、外傷後ストレス障害、および抑うつからなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
精神疾患の治療のために非定型抗精神病薬を投薬されている患者における体重増加を予防または低減するための方法であって、有効な量のドーパミン作動性を有する化合物を非定型抗精神病薬と併せて投与することを含んでなる方法。
【請求項16】
有効な量のドーパミン作動薬と有効な量の非定型抗精神病薬とを含んでなる組成物。
【請求項17】
ドーパミン作動薬は、プラミペキソール、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、ロピニロールおよびキナゴリドからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ドーパミン作動薬はプラミペキソールである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ドーパミン作動薬はキナゴリドである、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
非定型抗精神病薬は、クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペラドンからなる群から選択される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
医薬として有効な担体をさらに含んでなる、請求項16〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
ドーパミン作動薬は1mg未満の単位投与形態のプラミペキソールである、請求項16〜18、20または21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
非定型抗精神病薬の投与に関連した体重増加を予防または低減するための、該非定型抗精神病薬と組み合わせたドーパミン作動薬の使用。
【請求項24】
ドーパミン作動薬はプラミペキソールである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
ドーパミン作動薬はキナゴリドである、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
非定型抗精神病薬は、ブロモクリプチン、クロザピン、オランザピン、クエチアピンおよびリスペラドンからなる群から選択される、請求項23に記載の使用。

【公表番号】特表2011−502175(P2011−502175A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532391(P2010−532391)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001962
【国際公開番号】WO2009/059418
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510124434)
【氏名又は名称原語表記】MCINTOSH,Diane
【出願人】(510124445)
【氏名又は名称原語表記】KJERNISTED,Kevin
【Fターム(参考)】