説明

非対称な膜の形成方法

本開示は、非対称な膜の形成方法を提供する。より具体的には、コーティングされた多孔質基材を形成するために、重合可能種を多孔質基材に適用するための方法が提供される。コーティングされた多孔質基材は、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露され、重合可能種を重合して多孔質基材中に保持される重合物質を形成し、その結果、第1主表面における重合物質の濃度は、第2主表面におけるよりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非対称な膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜は、ある種類を保持し、他の種類に膜を透過させる分離プロセスにおいて使用され得る。いくつかの膜の用途としては、例えば、食品、及び飲料、医薬品、薬品、自動車、電気、化学、バイオテクノロジー、及び乳業の業界における使用が挙げられる。
【0003】
非対称な膜が記載されてきた。非対称な膜は、光阻害剤及び高濃度の光開始剤の追加と共に、長波長紫外線源の下において形成されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、非対称な膜の形成方法を提供する。
【0005】
一態様において、非対称な膜の形成方法が提供される。本方法は、第1主表面及び第2主表面を有する多孔質基材を提供する工程を含む。本方法は、重合可能組成物を多孔質基材に適用して、コーティングされた多孔質基材を提供する工程を含む。重合可能組成物は、少なくとも1つの重合可能種及び少なくとも1つの光開始剤を含む。本方法は、コーティングされた多孔質基材を、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露して重合可能種を重合し、非対称な膜を提供する工程を含む。非対称な膜は、多孔質基材内に保持される重合物質を有する。重合物質は、第1主表面において、第2主表面におけるよりも高い濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】長波長紫外線源で照射された多孔質基材の略図。
【図2】340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源で照射された多孔質基材の略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に含まれるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、二種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0009】
特に指示がない限り、明細書及び「特許請求の範囲」で使用される成分の量、性質の測定等を表す全ての数は、どの場合においても、「およそ」という用語で修飾されていると理解すべきである。
【0010】
紫外線源は、重合可能組成物を開始及び重合し、多孔質基材内に保持される重合物質を提供するために効果的である。重合可能組成物の重合可能種は、多孔質基材の孔の中で重合することができる。重合物質の勾配濃度は多孔質基材の厚さの少なくとも一部にわたって保持され、非対称な膜を提供し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされた多孔質基材に放射線を供給するために、低波長紫外線源が選択され得る。第1主表面に供給される放射照度は、第2主表面に供給される放射照度より大きい。放射照度は、放射線が、コーティングされた多孔質基材の厚さを通じて進みながら、伝播し、吸収される際に減少し得る。紫外線源に暴露される間、第1主表面に位置する重合可能組成物は、第2主表面の重合可能組成物よりも大きな放射照度を受ける場合がある。
【0011】
本開示の方法は、同じ組成物の対称な膜と比較して、高いフラックスの非対称な膜を形成するための連続的プロセスを提供する。用語「非対称的」とは、孔径及び構造が膜の一方の側面と他方の側面とで同じではない膜を指す。非対称な膜の孔は、重合物質で部分的に充填される(例えば、ゲルで充填される)。340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源で、コーティングされた多孔質基材の一方の側面を、無酸素(O)環境下で照射すると、多孔質基材内に保持される重合物質の非対称な分布を生じ得る。このプロセスは、1)高濃度の光開始剤、及び/又は2)光阻害剤を加えることなく、かつ長波長の照射源を適用することなく達成することができる。例えば、本明細書において形成される非対称な膜は、高いフラックス、及び軟水化用途における良好な脱塩率を有する。
【0012】
多孔質基材は、一方の表面から他方の表面へと延びる相互接続する経路の網状組織を有する材料である。これらの相互接続する経路は、濾過された液体が通過しなくてはならない複雑な通路を提供する。
【0013】
本開示の方法では、第1主表面、孔(例えば、間隙性)、及び第2主表面を有する多孔質基材が、多孔質基材がコーティング可能(例えば、基材の厚さの少なくとも一部に適用される重合可能組成物を有することができる)であるか、又はコーティング可能であるように適合可能であり、かつ開口部若しくは孔を含む限りにおいて、様々な材料から選択され得る。多孔質基材の第1主表面とは、紫外線源に近接する表面を指す。第2主表面、すなわち第1主表面と反対側の表面は、第1主表面の紫外線源への距離よりも大きな紫外線源への距離で位置する。
【0014】
好適な多孔質基材としては、例えば、フィルム、多孔質膜、織布ウェブ、不織布ウェブ、中空繊維などが挙げられる。多孔質基材はポリマー材料、セラミック材料など、又はこれらの組み合わせから形成され得る。いくつかの好適なポリマー材料としては、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩化ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテル)スルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(カーボネート)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリオレフィンとしては、例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−デセンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なフッ素化ポリマーとしては、例えば、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンの共重合体(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)、クロロトリフルオロエチレンの共重合体(ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)など)など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリアミドとしては、例えば、ポリ(イミノ(1−オキソヘキサメチレン))、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、ポリカプロラクタムなど、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリイミドとしては、例えば、ポリ(ピロメリットイミド)などが挙げられる。好適なポリ(エーテルスルホン)としては、例えば、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)、ポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、約10マイクロメートル未満の平均孔径を有し得る。他の実施形態では、多孔質基材の平均孔径は、約5マイクロメートル未満、約2マイクロメートル未満、又は約1マイクロメートル未満であり得る。他の実施形態では、多孔質基材の平均孔径は、約10ナノメートルより大きい場合がある。いくつかの実施形態では、多孔質基材の平均孔径は、約50ナノメートル超、約100ナノメートル超、又は約200ナノメートル超である。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、約10ナノメートル〜約10マイクロメートルの範囲内、約50ナノメートル〜約5マイクロメートルの範囲内、約100ナノメートル〜約2マイクロメートルの範囲内、又は200ナノメートル〜約1マイクロメートルの範囲内の平均孔径を有し得る。
【0016】
いくつかの好適な多孔質基材としては、例えば、ナノ孔質膜、ミクロ孔質膜、ミクロ孔質不織布ウェブ、ミクロ孔質織布ウェブ、ミクロ孔質繊維などが挙げられる。いくつかの実施形態では、この多孔質基材は、異なる孔径(例えば、ミクロ細孔、ナノ細孔など)の組み合わせを有することができる。一実施形態では、多孔質基材は、ミクロ孔質である。いくつかの実施形態では、多孔質基材は微粒子又は複数の微粒子を含み得る。
【0017】
選択される多孔質基材の厚さは、膜の意図される用途に依存する場合がある。一般的に多孔質基材の厚さは、約10マイクロメートルより大きい場合がある。いくつかの実施形態では、多孔質基材の厚さは、約1,000マイクロメートル超、又は約10,000マイクロメートル超であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は疎水性である。別の実施形態では、多孔質基材は親水性である。疎水性又は親水性のいずれかである多孔質基材は、以下で記載されるように、重合可能組成物でコーティングされ、紫外線源に暴露され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、多孔質基材がミクロ孔質の熱誘起相分離(TIPS)膜を含む。TIPS膜は、熱可塑性物質とその熱可塑性物質の融点を超える第2物質との溶液を形成することによって、調製することができる。冷却と同時に熱可塑性材料は結晶化し、相が第2物質から分離する。結晶化した材料は、多くの場合、伸張され得る第2物質は、任意により、伸張前又は伸張後に取り除くことができる。TIPS膜は、米国特許第1,529,256号(Kelley)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinski)、同第5,962,544号(Waller,Jr.)、及び同第4,539,256号(Shipman)に開示されている。いくつかの実施形態では、TIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(すなわち、PVDF)、ポリ(エチレン)又はポリ(プロピレン)などのポリオレフィン、ビニル含有ポリマー又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーなどのビニル含有コポリマー、及びブタジエン含有ポリマー又はコポリマー、及びアクリレート含有ポリマー又はコポリマーなどの高分子材料を含む。PVDFを含むTIPS膜は、米国特許出願公開第2005/0058821号(Smithら)に更に開示されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、典型的には約10マイクロメートルを超える平均孔径を有する不織ウェブであり得る。好適な不織布ウェブとしては、例えば、Wente,V.A.「Superfine Thermoplastic Fibers」(Industrial Engineering Chemistry,48,1342〜1346(1956))及びWente,V.A.「Manufacture of Super Fine Organic Fibers」(Naval Research Laboratories(Report No.4364)(1954年5月25日))に記載されているメルトブローンマイクロファイバー不織布ウェブが挙げられる。いくつかの実施形態では、好適な不織布ウェブはナイロンから調製され得る。
【0021】
好適な多孔質基材のいくつかの例としては、DURAPORE、及びMILLIPORE EXPRESS MEMBRANEの商品名で(Millipore Corporation(Billerica,Massachusetts)から入手可能)で既知の親水性、及び疎水性のミクロ孔質膜などの市販の材料が挙げられる。商品名NYLAFLO及びSUPORで知られている他の好適な市販の微多孔質膜がPall Corporation(East Hills,NewYork)から入手可能である。
【0022】
本開示の方法では、重合可能種が、多孔質基材に適用される。用語「重合可能組成物」とは、一般的に少なくとも1つの重合可能種及び少なくとも1つの光開始剤を有する組成物を指す。重合可能種は、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露された際に、多孔質基材の第1主表面上で、孔、若しくは孔の少なくとも一部内で、又は第2主表面上において、重合され得る。重合種の重合の開始のために選択される光開始剤は、紫外線源からの放射線を選択的に吸収することができる。いくつかの実施形態では、米国特許第5,891,530号(Wright)に記載されるように、多孔質基材に適用される重合可能組成物は光開始剤を必要としない。重合可能組成物は、多孔質基材の厚さの少なくとも一部に適用され得る。紫外線源への暴露の後、重合可能組成物の重合可能種は、多孔質基材の厚さの少なくとも一部を通じて延びる重合物質を形成し得る。生じる重合物質は、化学的又は物理的相互作用により、第1主表面上、第2主表面上、及び多孔質基材内に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、重合物質は、多孔質基材の表面上にグラフト結合し得る。別の実施形態では、重合物質は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合などにより、多孔質基材の孔の表面の中、及び上に存在する場合がある。
【0023】
重合可能組成物の光開始剤は、重合可能種の重合を開始することができる。重合可能組成物は、約0.001〜約5.0重量%の光開始剤を含むことができる。いくつかの好適な光開始剤としては、例えば、有機化合物、有機金属化合物、無機化合物などが挙げられる。フリーラジカル光開始剤のいくつかの例としては、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、ベンジルケタール、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、アクリルホスフィンオキシドなど、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、いくつかの光開始剤(例えば、アクリルホスフィンオキシド)は、長波長紫外線、短波長紫外線など、又はこれらの組み合わせを吸収することができる。
【0024】
(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合を開始するための代表的な光開始剤としては、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、例えば、α−メチルベンゾイン;α−フェニルベンゾイン;α−アリルベンゾイン;α−ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えば、ベンジルジメチルケタール(例えば、商標名IRGACURE 651で、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)から入手可能)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル;アセトフェノン及びその誘導体、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(例えば、商標名DAROCUR 1173で、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、商標名IRGACURE 184で、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(例えば、商標名IRGACURE 907として、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、IRGACURE 369として、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)が挙げられる。他の有用な光開始剤としては、ピバロインエチルエーテル、アニソインエチルエーテル;アントラキノン、例えばアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−メトキシアントラキノン、ベンズアントラキノンハロメチルトリアジン;ベンゾフェノン及びその誘導体;上記のようなヨードニウム塩及びスルホニウム塩;チタン錯体、例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン(商標名CGI 784DCで、同様にCiba Specialty Chemicalsから入手可能);ハロメチルニトロベンゼン、例えば4−ブロモメチルニトロベンゼン;モノ−及びビス−アシルホシフィン(例えば、Ciba Specialty Chemicalsから商標名IRGACURE 1700、IRGACURE 1800、IRGACURE 1850、及びDAROCUR 4265として入手可能)が挙げられる。
【0025】
重合可能組成物の光開始剤は、多孔質基材の厚さの少なくとも一部にわたって重合可能種の重合を開始するように選択され得る。多孔質基材の厚さは、第1主表面から、第2主表面まで延びる。光開始剤は、第1主表面で紫外線に暴露した際に、重合可能種の重合を開始することができ、多孔質基材の厚さの一部を通じて延び得る。重合物質を形成するための、重合可能種の開始は第2主表面までの厚さを通じて減少し得る。
【0026】
重合可能組成物の重合可能種(例えば、モノマー)は、多くの重合手段によって重合することができる。特に、重合可能種は、化学的結合(例えば、フリーラジカル反応)により別の重合可能種に結合し、既知の重合方法により共有結合を形成することができる。重合の際、コーティングされた多孔質基材の重合可能種は、紫外線源に接触したときに非対称な膜を形成し得る。重合可能組成物でコーティングされる前の、多孔質基材の表面特性は、本明細書に記載される非対称な膜の表面特性とは異なる場合がある。同様に、官能基を有する非対称な膜は、多孔質基材のものとは異なる主表面特性を有し得る。例えば、多孔質基材に重合物質を加えることは、他の種と接触した際に、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合などを含む相互作用により、反応表面を提供し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、重合可能組成物の重合可能種は、フリーラジカル重合可能基を有するモノマーであり得る。いくつかの実施形態では、重合可能種は、フリーラジカル重合可能基、及び追加の官能基をその上に含み得る。フリーラジカル重合可能基は、(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基(acryoyl group)、又はビニル基のようなエチレン性不飽和基であることができる。光開始剤によって開始された後、フリーラジカル重合可能基は、紫外線源に暴露された際に多孔質基材内で重合し、重合物質を形成することができる。重合可能種のフリーラジカル重合可能基の、コーティングされた多孔質基材の他の重合可能種との、紫外線に暴露された際の反応は、第1主表面及び第1主表面に最も近い開口部又は孔の内部で、非対称な膜の第2主表面におけるよりも、高い濃度の重合物質の形成を生じ得る。
【0028】
フリーラジカル重合可能基を有することに加えて、重合可能種は第2又は追加的な官能基を含有し得る。いくつかの実施形態では、第2の官能基は、第2のエチレン性不飽和基、開環基(例えば、エポキシ基、アズラクトン基、及びアジリジン基)、イソシアナト基、イオン基、アルキレンオキシド基、又はこれらの組み合わせから選択される。重合可能種の第2又は追加的な官能基は、多孔質基材内に保持される重合物質の更なる反応性又は親和性を提供し得る。いくつかの実施形態では、追加の官能基は、多孔質基材と他の種、又は少なくとも1個の求核性基を有する求核性化合物などの他の物質との間で連結基を形成するように反応することができる。
【0029】
追加の官能基の存在は、特定の種類の化合物に対する親和性などの所望の表面特性を非対称な膜に付与することができる。いくつかの実施形態では、重合可能種はイオン基を含むことができ、それによって重合物質を含む非対称な膜は、多くの場合において反対の電荷を有する化合物に対する親和性を有することができる。すなわち、負電荷を帯びた基を有する化合物は、カチオン基を有する重合物質を持つ非対称な膜に引き寄せられることがあり、正電荷を帯びた基を有する化合物は、アニオン基を有する重合物質を持つ非対称な膜に引き寄せられることがある。更に、重合物質の選択は、重合可能組成物による表面改質の前では疎水性であった、非対称な膜の少なくとも一方の主表面に、親水性特性を付与することができる。一つの実施形態では、アルキレンオキシド基を含む重合物質は、非対称な膜に親水性特性を付与することができる。
【0030】
更に他の実施形態では、重合可能組成物の好適な重合可能種は、エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合可能基、及びイオン基である追加的な官能基を有し得る。イオン基は、正電荷、負電荷又はそれらの組み合わせを有することができる。いくつかの好適なイオン種の場合、イオン基は、pH条件により中性又は帯電していてもよい。この部類の種は、通常、1つ以上の逆帯電した化合物に対する望ましい表面親和性を付与するために、又は1つ以上の同様に帯電した化合物に対する親和性を低下させるために用いられる。
【0031】
更に他の実施形態では、負電荷を有する好適なイオン性重合可能種は、式Iの(メタ)アクリルアミドスルホン酸、又はこの塩を含む。
【0032】
【化1】

【0033】
式I中、Rは水素又はメチルであり、Yは、直鎖又は分枝アルキレン(例えば、1個〜10個の炭素原子、1個〜6個の炭素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。式Iによる例示のイオン種には、N−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及び2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性種の塩も用いることが可能である。塩に対する対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン又はナトリウムイオンであってもよい。
【0034】
負電荷を有する他の好適なイオン性重合可能種としては、スルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸、及び4−スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドホスホン酸、例えば、(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−アクリルアミドエチルホスホン酸、及び3−メタクリルアミドプロピルホスホン酸)、アクリル酸、及びメタクリル酸、並びにカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、及び3−カルボキシプロピルメタクリレートが挙げられる。なお他の好適な酸性種には米国特許第4,157,418号(Heilmannら)に述べられている(メタ)アクリロイルアミノが含まれる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸としては、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性種の任意の塩も用いることができる。
【0035】
正電荷を提供することのできる他のイオン性重合可能種は、式IIのアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド、又はこれらの第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩等である。
【0036】
【化2】

【0037】
式II中、Rは水素又はメチルであり、Lはオキシ又は−NH−であり、Yはアルキレン(例えば、1個〜10個の炭素原子、1個〜6個の炭素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。各Rは独立して、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されているアルキル)、又はアミノアルキル(すなわち、アミノで置換されているアルキル)である。あるいは、2個のR基は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族であって、部分的に不飽和(すなわち、不飽和ではあるが芳香族ではない)、又は飽和である複素環式基を形成でき、この場合、複素環式基は任意に応じて、芳香族(例えば、ベンゼン)、部分的に不飽和(例えば、シクロヘキセン)、又は飽和(例えば、シクロヘキサン)である第2の環と融合することができる。
【0038】
式IIのいくつかの実施形態では、R基は両方とも水素である。他の実施形態では、R基の1個は水素で、他の1個は、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R基の少なくとも1個は、アルキル基の炭素原子のいずれかの上に配置されているヒドロキシ基又はアミノ基とともに1個〜10個、1個〜6個、又は1個〜4個の炭素原子を有しているヒドロキシアルキル又はアミノアルキルである。更に他の実施形態では、R基は、この基が結合している窒素原子と結びついて複素環式基を形成する。複素環式基は、少なくとも1つの窒素原子を含み、酸素又は硫黄などの他のへテロ原子を含有することができる。代表的な複素環式基としては、イミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン又はシクロヘキサンなどの追加の環に結合されてもよい。追加の環に結合される代表的な複素環式基としては、ベンゾイミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。
【0039】
代表的なアミノ(メタ)アクリレート(すなわち、式IIのLはオキシ)には、例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルアクリレートなどが挙げられる。
【0040】
例示のアミノ(メタ)アクリルアミド(すなわち、式IIのLが−NH−)には、例えば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
式IIのイオン種の例示の四級塩には、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)並びに(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
他の重合可能な種が、例えば、イオン交換樹脂に正電荷を帯びた基を提供することが既知であるものから選択され得る。このような重合可能種としては、例えば、アルケニルアズラクトンのジアルキルアミノアルキルアミン付加物(例えば、2−(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2−アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロライド、及びビニルジメチルアズラクトンの3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物)並びにジアリルアミンモノマー(例えば、ジアリルアンモニウムクロライド、及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
【0043】
非対称な膜を作製するためのいくつかの方法においては、好適な重合可能種は、2個のフリーラジカル重合可能基、加えて親水性基を有し得る。例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、重合可能種として使用され、疎水性多孔質基材に親水性特性を付与することができる。これらの重合可能種は2個の(メタ)アクリロイル基、及び親水性ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリアルキレンオキシド)基を有する。
【0044】
膜がエポキシ基、アズラクトン基、又はイソシアナト基を含む重合可能種を有する場合、官能基が1個、若しくは複数個の求核性基を有する求核性化合物と反応し、疎水性の多孔質基材に親水性特性を付与することができるように非対称な膜が更に処理され得る。未反応の求核性基は、親水性官能化された膜の形成に寄与することができる。いくつかの代表的な求核化合物は、求核基に加えてポリアルキレンオキシド基などの親水基を含む。例えば、ポリアルキレングリコールジアミン及びポリアルキレングリコールトリアミンなどの求核化合物は、複数のアミノ基を含むことができる。
【0045】
本開示の重合可能組成物は、例えば、コーティング可能な溶液、分散液、エマルションなどとして調製され得る。重合可能組成物は、多孔質基材の第1主表面、間隙性孔、及び第2主表面に適用され得る。いくつかの実施例では、多孔質基材は、第1主表面、間隙性孔、及び第2主表面をコーティングするために有効である、少なくとも1つの重合可能種、及び少なくとも1つの光開始剤を含む重合可能組成物を満たすか、又は浸漬することができる。重合可能種の濃度は、例えば、重合可能種、多孔質基材の上若しくは中での重合可能種の重合、若しくは架橋の程度、重合可能種の反応性、架橋剤濃度、又は使用される溶媒が挙げられるがこれらに限定されない多くの要因によって変化し得る。いくつかの実施形態では、重合可能組成物の重合可能種の濃度は、約2重量%〜約99.9重量%の範囲内であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、重合可能組成物は溶媒を更に含む。一態様では、重合可能組成物は架橋剤を更に含む。
【0047】
一実施形態では、多孔質基材は、重合可能組成物と接触する前に親水性表面を有し得る。重合可能組成物を、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に接触させた後、疎水性表面は、非対称な膜の少なくとも一方の表面に疎水性特性を付与することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、重合可能組成物の重合可能種は、第1エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合可能基と、第2エチレン性不飽和基である第2官能基を有する。一実施形態では、重合可能種は、網状組織、又はゲル化重合物質を形成する重合可能種を架橋するために好適な架橋剤である。2個のエチレン性不飽和基を有する好適な重合可能種としては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。用語ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、用語ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレートと交換可能に使用される。(メタ)アクリレートにおけるような用語「(メタ)アクリル」は、アクリレートにおけるようなアクリル基とメタクリレートにおけるようなメタクリル基の両方を包含するために使用される。例示のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートには、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマーが含まれる。約400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールジアクリレート種は、例えば、商品名SR344で市販されており、約400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート種は、SR603という商品名で、Sartomer Company,Incorporated(Exton,Pennsylvania)から市販されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、好適な重合可能種は、第1のエチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合可能基と、エポキシ基である追加的な官能基を有する。この部類の好適な重合可能種としては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これに限定されない。この部類の重合可能種は、更なる反応性のために利用可能な少なくとも1つのエポキシ基を有する官能化された非対称な膜を提供することができる。多孔質基材に望ましい表面特性(例えば異なる反応性を有する特定の化合物又は官能基に対する親和性)を付与するために、エポキシ基は、別の種又は求核性化合物などの他の反応材料と反応することができる。エポキシ基と求核性化合物との反応は、例えば、エポキシ環の開環、及び求核性化合物を多孔質基材につなげるように機能する連結基の形成をもたらす。エポキシ基と反応する好適な求核基としては、一級アミノ基、二級アミノ基及びカルボキシ基が挙げられるがこれらに限定されない。この求核性化合物は、多数のエポキシ基を架橋することができる1個以上の求核性基か、又は、官能化された膜に親水性の特性を付与することができる1個以上の随意の基か、を含むことができる。エポキシ基の開環により形成される連結基は、エポキシが一級アミノ基と反応するときC(OH)HCHNH−基をしばしば含み、あるいはエポキシがカルボキシ基と反応するときC(OH)HCHO(CO)−基をしばしば含む。
【0050】
いくつかの場合においては、多孔質基材内の重合物質のエポキシ基は、多官能アミン、例えば、2つの一級アミノ基を有するジアミン又は3つの一級アミノ基を有するトリアミンと反応することができる。このアミノ基の一方は、エポキシ基との開環反応を行い、求核性化合物と多孔質基材との間に−C(OH)HCHNH−基を含む連結基を形成することができる。第2アミノ基、又は第2、若しくは第3アミノ基は、1つ以上追加のエポキシ基との反応により非対称な膜に親水性特性を付与するか、又は2つ以上の重合可能種を架橋することができる。いくつかの実施例では、多官能アミンは、ポリアルキレングリコールジアミン又はポリアルキレングリコールトリアミンであり、エポキシ基との反応は、ポリアルキレングリコール基(すなわち、ポリアルキレンオキシド基)を有する重合物質の結合をもたらす。ポリアルキレングリコール基、加えて任意の末端一級アミノ基は、非対称な膜に親水性を付与する傾向がある。
【0051】
更に他の実施形態では、好適な重合可能種は、エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合可能基と、アズラクトン基である追加の官能基を有する。好適な重合可能種としては、2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトンなどのビニルアズラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。この部類の重合可能種は、更なる反応性に利用可能な少なくとも1個のアズラクトン基を有する非対称な膜を提供することができる。アズラクトン基は、別の種などの他の反応材料又は求核化合物と反応し、多孔質基材に所望の表面特性(例えば、特定の化合物又は異なる反応性を有する官能基に対する親和性)を付与することができる。アズラクトン基と求核性化合物との反応は、例えば、アズラクトン環の開環と、求核性化合物を多孔質基材につなげるように機能する連結基の形成をもたらす。求核化合物は、典型的に少なくとも1個の求核基を含む。アズラクトン基と反応する好適な求核基としては、一級アミノ基、二級アミノ基及びヒドロキシ基が挙げられるがこれらに限定されない。求核性化合物は、多数のアズラクトン基を架橋できる追加の求核基を含むことができ、又は非対称な膜に親水性の性格を付与することができる他の任意の基を含むことができる。アズラクトン基の開環によって形成される連結基は、−(CO)NHCR−(CO)−基をしばしば含む。式中、Rはメチルのようなアルキルであり、(CO)はカルボニルを示す)。
【0052】
いくつかの場合では、アズラクトン基は、2個の一級アミノ基を有するジアミン又は3個の一級アミノ基を有するトリアミンなどの多官能アミンと反応することができる。アミノ基の1個は、アズラクトン基との開環反応することができ、求核性化合物と多孔質ベース基材の間に−(CO)NHCR(CO)−の基を含む結合の形成を生じる。第2アミノ基、又は、第2及び第3アミノ基は、非対称な膜に親水性特性を付与することができ、あるいは、多数の重合可能種を架橋することができる。ある実施例では、多官能性アミンは、ポリアルキレングリコールジアミン又はポリアルキレングリコールトリアミンであり、アズラクトン基との反応が、ポリアルキレングリコール基(すなわちポリアルキレンオキシド基)を有する重合可能種の結合をもたらす。ポリアルキレングリコール基、並びに任意の末端一級アミノ基は、非対称な膜に親水性特性を付与する傾向がある。
【0053】
更に他の実施形態では、好適な重合可能種は、エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合可能基、及びイソシアナト基である追加の官能基を有する。いくつかの好適な重合可能種としては、2−イソシアナトエチルメタクリレート及び2−イソシアナトエチルアクリレートのようなイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。この部類の重合可能種は、反応性のために利用可能な少なくとも1個のイソシアナト基を有する非対称な膜を提供することができる。非対称な膜に望ましい表面特性(例えば、異なる反応性を有する特定の化合物又は官能基に対する親和性)を付与するために、イソシナト基は、別の種などの他の反応物質と、又は求核性化合物と反応することができる。イソシアナト基と求核化合物との反応は、求核基が一級アミノ又は二級アミノ基の場合、尿素連鎖又は求核基がヒドロキシ基の場合、ウレタン連鎖をもたらすことができる。求核性化合物は、多数のイソシアナト基を架橋することができる追加の求核基を含有でき、若しくは親水性特性を非対称な膜に付与することができる他の任意の基を含有し得る。求核性化合物とイソシアナト基との反応により形成される連結基は、求核性基が一級アミノ基のときは−NH(CO)NH−基をしばしば含み、あるいは求核性基がヒドロキシであるときは−NH(CO)O−をしばしば含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、重合可能種は非反応性側基を含み得る。重合可能物質は、物理的交絡により孔の内部に保持され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、重合可能組成物は、多孔質基材中でゲル化するか、又は重合物質の網状組織を形成するために、架橋剤を更に含む。重合可能種の一部を架橋するか、又は重合可能種の殆ど、若しくは全てを実質的に架橋するために、架橋剤を加えることができる。
【0056】
重合可能な組成物の架橋剤(例えば、架橋物質)としては、二官能性、及び多官能性アクリレート、及びメタクリレートフリーラジカル重合可能モノマーが挙げられる。架橋剤のいくつかの例としては、例えば、アルキルジオール、トリオール、及びテトロールのエステル誘導体(例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレート)が挙げられる。いくつかの他の二官能性及び多官能性の、アクリレート及びメタクリレートモノマーは、米国特許第4,379,201号(Heilmannら)に記載されている。いくつかの実施形態では、二官能性及び多官能性アクリレートモノマーとしては、例えば、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなど、又はこれらの組み合わせが挙げられる。二官能性及び多官能性の、アクリレート及びメタクリレートとしては、アクリル化エポキシオリゴマー、アクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー、アクリル化ポリエーテルオリゴマー、及びアクリル化ポリエステルオリゴマー、例えば、EBECRYLの商標名でCYTEC SURFACE SPECIALTIES(Smyrna,Georgia)から市販されているものが挙げられる。上記の他の市販のモノマーの例は、Sartomer(Exton,Pennsylvania)から入手可能である。
【0057】
多孔質基材をコーティング、液浸、湿潤、浸漬してコーティングされた多孔質基材を提供するために、重合可能組成物が多孔質基材に適用される。重合可能組成物は、多孔質基材の第1主表面から第2主表面へと延びる厚さを有する多孔質基材に適用され得る。重合可能組成物は、第1主表面から、少なくとも1マイクロメートルで延びる厚さまで湿潤又は浸透させるために、多孔質基材に適用され得る。いくつかの実施形態では、重合可能組成物は、多孔質基材の全体厚さを通じて湿潤又は浸透することができる。いくつかの実施形態では、多孔質基材を重合可能種に浸漬させることができる。「浸漬する」又は「満たす」とは一般的に、第1主表面に、相互接続する孔に多孔質基材の厚さの範囲内で、及び第2主表面に重合可能組成物が供給されることを意味する。いくつかの実施形態では、重合可能組成物が多孔質基材の厚さ全体にわたって孔の表面を湿潤させ、第1及び第2主表面の湿潤を包括し得る。重合可能種を多孔質基材に適用するために好適な方法としては、例えば、飽和若しくは浸漬技術、スプレーコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、フラッドコーティング、ダイコーティング、ロールコーティング、蒸着、又は他の既知のコーティング、又は適用方法が挙げられる。多孔質基材に適用される重合可能組成物は一般的に、第1主表面、第2主表面及び多孔質基材の孔をコーティングすることができるような粘度を有する。重合可能種の粘度は、重合可能組成物を受けるために選択される適用方法によって変更することができる。
【0058】
重合可能組成物が多孔質基材に適用された後、コーティングされた多孔質基材は、340nm未満のピーク放出波長を有する紫外線源に暴露されて、重合可能組成物の重合可能種を開始及び重合することができる。非対称な膜を形成するために選択される紫外線源は、意図される加工条件及び、多孔質基材の厚さを通じて重合物質の勾配濃度を提供するために、重合可能組成物中に存在する光開始剤を活性化するために必要とされる適切なエネルギー源に依存し得る。同様に、紫外線源を選択するための他の検討事項としては、重合可能組成物中に存在する重合可能種、架橋剤及び関連する物質の量と種類、光開始剤を活性化し重合可能種を重合するために使用される紫外線源、連続的プロセスのために移動するウェブ(例えば、多層構造)の速度、多孔質基材の紫外線源からの距離、並びに、多孔質基材の厚さが挙げられる。
【0059】
本開示の非対称な膜を調製するために、様々な紫外線(UV)源が使用され得る。好適な供給源としては、低圧、及び中圧水銀アークランプ、非電極式水銀ランプ、発光ダイオード、水銀キセノンランプ、レーザー、並びに340nm未満の範囲内のいくらかのスペクトル出力を有する他の任意の供給源が挙げられる。利用可能な紫外線源は、広帯域、狭帯域、又は単色であり得る。広帯域紫外線源が使用される場合、フィルターが適用されてスペクトル出力を特定のスペクトル領域に狭め、それによってピーク強度(例えば、放射)が340nm未満の波長で生じ、それによって再湿潤可能な非対称な膜形成プロセスにとって有害であり得るより長い波長を排除することができる。好適な紫外線源は出力によって制限されず、パルス状又は連続的な供給源であり得る。これらの紫外線源のいくつかは水銀を含んでも、含まなくてもよい。好ましい紫外線源は、一般的に特別な冷却条件を必要としない比較的低いIR(赤外線)放射を有するものであり得る。紫外線源からの赤外線放出の制御を補助するために、ダイクロイック反射鏡(コールドミラー)、及び/又はダイクロイック前窓(ホットミラー)、及び/又はウォータージャケット、並びに当業者に既知の他の方法が使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、紫外線出力が約50〜100nm以下の範囲である、狭帯域紫外線源が選択され得る。狭帯域紫外線源の一例としては、例えば、蛍光紫外線ランプが挙げられ、これは特別なフィルター無しに動作することができ、低い赤外線放出を有する。好ましい実施形態では、単色の、又は実質的に単色の紫外線源、例えば、エキシマランプ、レーザー、発光ダイオード、及び殺菌ランプが使用される。これらの供給源は、そのスペクトル出力の95%超が、約20〜30nm以下の範囲に限定されている。エキシマランプのいくつかの例としては、308nmのピーク放出を有するXeClエキシマランプ、222nmのピーク放出を有するKrClエキシマランプ、172nmのピーク放出を有するXeエキシマランプ、254nmのピーク放出を有する殺菌ランプが挙げられる。狭いスペクトル範囲内の紫外線出力を提供し、低い赤外線出力を有する実質的に単色のランプが一般的に好ましい。これらのランプは、再湿潤可能な非対称な膜の内部に保持されるコポリマーの内部における、重合物質の勾配形成における更なる制御を可能にすることができ、市販されている。このような供給源は、当該技術分野において既知である。紫外線源は単一の供給源であるか、又は複数の供給源であり得る。同様に、複数の紫外線源は、同じ供給源であるか、又は異なる紫外線源の組み合わせであり得る。
【0061】
低出力及び高出力紫外線源(例えば、ランプ)は、再湿潤可能な非対称な膜を形成するために有用であり得る。ランプ出力は、ランプの長さに基づきワット/インチ(W/in)で表現することができる。例えば、高出力ランプ、例えば、236W/cm(600W/in)電極「H」バルブ(Fusion UV Systems,Inc.(Gaithersburg,Maryland))は、マイクロ波エネルギーによって励起され得る25.4cm(10インチ)長さの中圧水銀バルブである。最大出力において、25.4cm(10インチ)ランプは、236W/cm(600W/in)の出力を供給するために、定格が6000Wである電源を必要とする。このような高出力ランプは、多量の紫外線を生成するが、700℃を超えるランプ表面温度で動作し、それによって紫外線出力は、かなりの赤外線放出を伴い得る。対照的に、低出力蛍光紫外線ランプは、1〜2W/inの典型的な出力で動作し、動作するためにより少ない出力を必要とし、約43℃〜49℃の表面温度を有し得る。
【0062】
コーティングされた多孔質基材を暴露する際、ピーク放射照度は、ピーク紫外線強度のスペクトル領域において、0mW/cmを超え、最大約100mW/cmまで延びることができ、スペクトル出力は、光開始剤の吸収スペクトルの少なくとも一部と重複しなくてはならない。
【0063】
紫外線スペクトルは、長波長紫外線、中波長紫外線、短波長紫外線及び真空紫外線として既知の4つの主なスペクトル領域に分離され、これらはそれぞれ一般的に、315〜400nm、280〜315nm、200〜280nm、及び100〜200nmとして定義される。本明細書において引用される波長領域は、幾分恣意的に設定され、4つの主なスペクトル領域を定義するために放射計製造者によって公表される正確な波長領域とは一致しない場合がある。更に、いくつかの放射計製造者は、真空紫外線領域(395〜445nm)は紫外線から可視光の遷移区域であるものとして特定している。
【0064】
場合によっては、高出力紫外線源が利用され得る。これらの供給源は、約1W/cmを超えるピーク放射照度を有し、かなりの赤外線放射を伴い得る。より好ましい紫外線源は、約1〜2μW/cm〜10〜20mW/cmの範囲のピーク紫外線放射照度を提供する殺菌バルブ、又は蛍光バルブの配列を含み得る。Quantum Technologies(Irvine,California)から市販されている、配列された、又は複数のマイクロ波駆動蛍光ランプからのピーク放射照度は、50mW/cmに及び得る。ランプの配列からの実際の放射照度は、電圧、ランプの出力規格、配列された、又は複数のランプにおけるランプ間隔、反射鏡の種類(存在する場合)、個別のランプの古さ、紫外線が透過するべきいずれかのウィンドウ若しくはフィルムの透過スペクトル、使用される特定の放射計及びそのスペクトル感度、並びにランプの配列の膜からの距離といった多くの要因に依存し得る。
【0065】
多孔質基材は、重合可能組成物を重合して非対称な膜を形成するために、一定期間(例えば、暴露時間)にわたって紫外線源に暴露され得る。いくつかの暴露時間は、高放射照度(>1W/cm)における1秒未満から、低放射照度(<50mW/cm)における数秒〜最大数分に及び得る。多孔質基材への合計紫外線エネルギー暴露は、紫外線源放射照度及び暴露時間によって決定され得る。例えば、多孔質基材を紫外線に暴露するために、蛍光バルブ又は殺菌バルブの配列が使用され得る。ピークランプ出力と関連するスペクトル領域の範囲内の合計紫外線エネルギーは、約100mJ/cm〜約4000mJ/cm超、約200mJ/cm〜約3000mJ/cm、約300mJ/cm〜約2500mJ/cm、又は約400mJ/cm〜約2000mJ/cmであり得る。
【0066】
本開示の再湿潤可能な非対称な膜は、重合物質の勾配濃度が、多孔質基材の第1主表面から、第2主表面までの厚さの少なくとも一部を通じて延びるように調製され得る。紫外線源への暴露の際に、第1主表面に存在する光開始剤は、より高いピーク放射照度の紫外線に暴露され得る。第1主表面のより高いピーク放射照度は、第1主表面及び第1主表面の孔の内部におけるより高い割合の開始を生じ得る。放射照度が多孔質基材の厚さ内に伝播するに伴い、ピーク放射照度は減少し、したがって光開始剤分解の程度、及びしたがって基材の孔の内部の重合の程度が減少する。内部フィルター効果から生じる、重合物質の勾配濃度が形成され得る。内部フィルター効果は、紫外線が多孔質基材の厚さに浸透するに伴って、一定の波長が吸収性種(例えば、光開始剤、多孔質基材、又はこれらの組み合わせ)によって選択的に除去される際に生じ得る。これらの波長は効果的に除去又は低減される。紫外線が多孔質基材中に、又はこれを通じて更に浸透する際、表面に作用する放射線の波長分布は、一定の波長の吸収の結果変化し得る。多孔質基材のより深い部分では、光開始剤を効果的に励起するために利用できる所定の波長領域の紫外線が不十分である。重合可能種の重合の程度は急速に低減し、多孔質基材の厚さの内部において重合物質の勾配濃度を形成し得る。
【0067】
重合物質の勾配濃度の鋭さは、入射する紫外線の波長における、多孔質基材の吸光度によって決定され得る。実質的に単色の供給源以外の供給源が利用される場合、吸収は波長に依存するために、吸収は不確定である。しかしながら、実質的に単色の供給源が使用される場合、膜厚さと比較可能な厚さの重合可能組成物のフィルムを通じた放射線源のピーク波長における吸光度(ランベルト・ベールの法則、紫外線/可視分光光度計を使用して測定)は、0.3超、0.4超、0.5超、又は0.6超であるべきである。いくつかの実施形態では、吸光度は1.0超、又は更に2.0超、及び10、又は更に20に及び得る。
【0068】
340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露するために選択されるコーティングされた多孔質基材は、約10マイクロメートルを超える厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされた多孔質基材の厚さは、約1,000マイクロメートル超、又は約10,000マイクロメートル超であり得る。重合可能組成物は、第1主表面から第2主表面までの厚さを通じて延びる相互接続された孔の少なくとも一部を湿潤させるために、多孔質基材に十分に満たすか又は浸漬することができる。
【0069】
コーティングされた多孔質基材が受ける紫外線の放射照度は、重合可能種が重合される程度に影響し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも10重量%の重合可能種が重合され得る。他の実施形態では、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%の重合可能種が重合されて、多孔質基材の厚さ内に存在する重合物質を形成し得る。
【0070】
コーティングされた多孔質基材に供給される紫外線の放射照度は、選択される紫外線源の種類、使用されるライン速度(例えば、連続的なプロセスライン)、及び紫外線源からコーティングされた多孔質基材の第1主表面までの距離が挙げられるがこれらに限定されない加工パラメーターに依存し得る。いくつかの実施形態では、放射照度はライン速度を制御することによって調節され得る。例えば、第1主表面に供給される放射照度は、低いライン速度においてより高い場合があり、第1主表面に供給される放射照度は、高いライン速度においてより低い場合がある。
【0071】
コーティングされた多孔質基材に供給される紫外線源の放射照度は、上記のように滞留時間に依存し得る。多孔質基材の厚さ全体にわたる重合可能種の重合の程度は、放射照度によって制御することができ、コーティングされた多孔質基材の厚さにわたって分布する重合物質の濃度に影響する場合がある。コーティングされた多孔質基材の厚さを通じて供給されるピーク放射照度は、例えば、0超〜約100mW/cmの範囲内であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、紫外線源への暴露の際のコーティングされた多孔質基材における放射照度は、第1主表面から基材の厚さへと少なくとも約0.5マイクロメートル延び得る。別の実施形態では、重合可能種を重合するためにコーティングされた多孔質基材に供給される放射照度は、第1主表面から少なくとも約1マイクロメートルであり得る。いくつかの実施形態では、コーティングされた多孔質基材に供給される放射照度は重合可能種に、少なくとも約2マイクロメートルまで、少なくとも約5マイクロメートルまで、少なくとも約10マイクロメートルまで、又は少なくとも約25マイクロメートルまで多孔質基材の厚さに延びて影響し得る。紫外線源の使用に関して、低い放射照度及び長い暴露が好ましいが、実際の動作の問題として、重合可能種の重合は、より高い放射照度及びより短い暴露を必要とし得る速度を要する場合がある。
【0073】
図1は、コーティングされた多孔質基材への340nmを超えるピーク放射波長を有する、長波長放射線源40の適用を例示する。図1(比較例)は、長波長放射線源40によって照射される多孔質基材5の断面図を例示する。多孔質基材5は、第1主表面10、第2主表面20、及び孔35を含む。長波長放射線源5は、重合可能種を照射して重合物質30を形成することができ、これは第1主表面10から第2主表面20までの多孔質基材の厚さを通じて延びる。多孔質基材5の照射の後、対称な膜が形成され得る。
【0074】
図2は、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源80の、コーティングされた多孔質基材への適用を例示する。図2は、低い強度の放射線源80によって照射される多孔質基材45の断面図を例示する。多孔質基材は、第1主表面50、第2主表面60、及び孔95を含む。紫外線源80は重合可能種を照射して第1濃度の重合物質65(第1重合物質)を形成し、これは第1主表面50付近の孔95の一部を通じて延び、平均的な重合物質濃度の位置85まで延びる。孔95では、孔95の一部が、第2主表面60の近位に第2濃度の重合物質70(第2重合物質)を含み得る。図2で引用された、第1濃度及び第2濃度の重合物質は、単に例示目的であり、多孔質基材の孔の中に保持された重合物質の絶対的濃度を定義するものではない。第1濃度の重合物質65が孔95に接触する場所で、第1重合物質の孔境界面90が形成される。第2濃度の重合物質70が孔95に接触する場所で、第2重合物質の孔境界面100が形成される。平均的な重合物質濃度の位置85は、第1主表面50から第2主表面60に延びる厚さの約5%以上に位置し得る。いくつかの実施形態では、重合物質濃度位置85は、第1主表面50から第2主表面60に延びる多孔質基材の厚さの、少なくとも約10パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも50パーセント、又は少なくとも約75%であり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では非対称な膜は多層構造を使用して形成することができ、前述のように多孔質基材は重合可能組成物でコーティングされて、コーティングされた多孔質基材を提供する。コーティングされた多孔質基材の第1主表面に隣接して第1層を配置することができ、かつコーティングされた多孔質基材の第2主表面に隣接して第2層を配置して、それにより多層構造を形成することができる。第1層及び第2層は、分離した材料片であるか、あるいは材料の連続的なシートを構成し得る。連続法のラインでは、例えば、第1層及び第2層は、ロールから巻き出され、コーティングされた多孔質基材と接触され得る。コーティングされた多孔質基材を第1層と第2層との間に位置付けて(すなわち、挟み込む)多層構造を形成する前述の実施形態では、単一のローラー又は多数個のローラーが使用されて、過剰な重合可能組成物及び捕捉された空気泡をコーティングされた多孔質基材から計量又は除去し得る。多層構造の第1層及び第2層は、340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源を出る際に、酸素への暴露からの保護を一時的に膜に提供することができる、任意の不活性材料を含み得る。第1層及び第2層のために好適な材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、3M Company及びDupontから入手可能なフッ化ポリオレフィン、他の芳香族ポリマーフィルム材料、及び他の任意の非反応性ポリマーフィルム材料から選択されるシート材料が挙げられる。第1層は、選択される紫外線源のピーク放出波長に対して実質的に透過性であるべきである。一度組み立てられると、多層構造は典型的には紫外線源による照射へと進む。照射後、第1層及び第2層が多層構造から取り外されて(すなわち、除去されて)、非対称な膜を提供することができる。
【0076】
多層構造の第1層の厚さは、一般に、10マイクロメートル〜250マイクロメートル、20マイクロメートル〜200マイクロメートル、25マイクロメートル〜175マイクロメートル、又は25マイクロメートル〜150マイクロメートルの範囲であり得る。第2の層は、同一の厚さ又は第1の層のそれと異なる厚さを有し得る。第1の層は、第2の層に使用されるものと同一の材料又は異なる材料であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1層が、コーティングされた多孔質基材上の第1の主表面に隣接して配置されて、二層構造を形成する。第1層は、紫外線源とコーティングされた多孔質基材との間に位置付けることができる。紫外線源による照射の後、第1層は二層構造から取り除かれて(すなわち、排除されて)、非対称な膜を提供することができる。
【0078】
別の実施形態では、コーティングされた多孔質基材は第1の層及び第2の層を含まない。コーティングされた多孔質基材は不活性雰囲気(例えば、窒素、アルゴン)に供されて、コーティングされた多孔質基材への酸素の浸透を低減させてもよい(例えば、無酸素環境を提供する)。
【0079】
いくつかの実施形態では、コーティングされた多孔質基材を通じた紫外線源の浸透は、紫外線源の選択によって制限することができ、非対称な膜の内部の重合物質の勾配を生成し、これが第1主表面上及び第2主表面上において異なる重合物質組成物を生じ得る。いくつかの実施形態では、重合物質は、第1主表面上及び多孔質基材の厚さの一部内に存在し得る。多孔質基材の厚さ内に存在する重合物質は、第1主表面から第2主表面へと延びる重合物質の勾配濃度を有し得る。一実施形態では、非対称な膜は親水性表面及び疎水性表面を有する。
【0080】
本開示の方法によって形成される非対称な膜は、多くの要因によって様々な表面特性及び構造的特性を有し得る。これらの要因としては、非限定的に、多孔質基材の物理的及び化学的特性、多孔質基材の孔の形状(すなわち、対称的又は非対称的な)、多孔質基材の形成方法、コーティングされた多孔質基材の表面(すなわち、第1主表面、間隙性孔及び第2主表面)で、重合されて保持される重合種、非対称な膜に施される任意の重合後処理(例えば、加熱工程)、並びに任意の重合後反応(例えば、重合可能種の追加的な官能基と、例えば、求核性化合物又はイオン基を有する化合物などの化合物との反応)が挙げられる。
【0081】
本開示の非対称な膜は、様々な重合可能組成物への暴露の際に様々な程度の湿潤性を呈し得る。湿潤性は、多くの場合、非対称な膜の親水性又は疎水性特性と相関し得る。本明細書で使用されるとき、用語「瞬間的湿潤」又は「瞬間的湿潤性」は、水が多孔質基材表面と接触すると直ちに、典型的には、1秒未満で水滴が所定の非対称な膜に浸透することを指す。例えば、表面湿潤エネルギーが約72ダイン/cm以上だと、通常、瞬間湿潤を生じる。本明細書で使用する時、用語「非瞬間湿潤」は、水の液滴が所定の基材内へ浸透することを指すが、水が基材表面に接触すると直ぐにではない。本明細書で使用する際、用語「非湿潤」とは、水滴が所定の非対称な膜に浸透しないことを意味する。例えば、約60ダイン/cm以下の表面湿潤エネルギーでは通常、圧力の適用がないと非湿潤を生じる。
【0082】
疎水性の多孔質基材上への重合可能組成物の適用と、紫外線へのコーティングされた疎水性多孔質基材の処理によって、疎水性特性を有する第1及び第2主表面、親水性特性を有する第1主表面及び疎水性特性を有する第2主表面、又は親水性特性を有する第1及び第2主表面を有する膜を生じ得る。同様に、親水性多孔質基材上への重合可能種の適用と、紫外線へのコーティングされた親水性多孔質基材の処理によって、親水性特性を有する第1及び第2主表面、疎水性特性を有する第1主表面及び親水性特性を有する第2主表面、又は疎水性特性を有する第1及び第2主表面を有する非対称な膜を生じ得る。
【0083】
一つの実施形態では、多孔質基材は疎水性又は親水性である。別の実施形態では、疎水性表面及び親水性表面を含む非対称な膜が形成され得る。第1の主表面は親水性であり、第2の主表面は疎水性であることができる。
【0084】
一実施形態では、非対称な膜は対称な多孔質基材を含み得る。非対称な膜は、重合物質の濃度が、第1主表面において第2主表面よりも高くなるように、第1主表面から第2主表面まで延びる重合物質の勾配濃度を含み得る。別の実施形態では、第1の主表面が親水性であり、第2の主表面が疎水性である。
【0085】
別の実施形態では、非対称な膜は非対称な多孔質基材を含み得る。非対称な膜は、重合物質の濃度が、第1主表面において第2主表面よりも高くなるように、第1主表面から第2主表面まで延びる重合物質の勾配濃度を含み得る。別の実施形態では、第1の主表面が親水性であり、第2の主表面が疎水性である。
【0086】
一実施形態では、非対称な膜は化学的に非対称であり得る。非対称な膜は第1主表面及び第2主表面を有する対称な多孔質基材を含み、主表面(例えば、親水性)は、多孔質基材の厚さの少なくとも一部にわたって保持される重合物質を含有し得る。非対称な膜は、第1主表面において、第2主表面におけるよりも高い重合物質の濃度を有し得る。
【0087】
別の実施形態では、非対称な膜は物理的に非対称であり得る。例えば、物理的に非対称な多孔質基材は、第1主表面において、第2主表面におけるよりも高い重合物質の濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、重合物質の勾配は、少なくとも一方の主表面における孔の少なくとも部分的な遮断、及び多孔質基材の厚さを通じて第2主表面まで延びる孔径の増加に寄与し得る。
【0088】
第1主表面において、第2主表面におけるよりも高い重合物質の濃度を有するものとして形成される非対称な膜が記載される。非対称な膜は、軟水化、濾過及びクロマトグラフィーに用途を見出すことができる。連続的なプロセスによって形成される非対称な膜は、より効率的な及びより経済的な膜の生成を提供する。
【0089】
本開示は、例示的なものであり、本開示の範囲を制限することを意図しない以下の実施例により、更に明らかになるであろう。
【実施例】
【0090】
本開示は、以下の非限定的な実施例により具体的に記載される。特に指定されない限り、以下の実施例に報告される全ての部、百分率、及び比率は、重量基準である。
【0091】
試験手順
水フラックス測定値、及びMgCl除去率値
上記で調製された非対称な膜の水フラックス及びMgCl(塩化マグネシウム、塩)除去率値が、41.8cmの活性表面積を有する撹拌式限外濾過セル(モデル8400;Millipore Corporation(Bedford,Massachusetts))で測定された。膜間圧力は、加圧窒素ガス下で、344.7kPa(50psi(平方インチ当たりのポンド))に設定された。水フラックスは、時間の関数としての膜を透過する水の量、非対称な膜の面積、及び設定圧力に基づいて計算された。MgCl除去率(脱塩率)は、浸透(C)、及び供給量(C)(500ppmのMgCl水溶液)の伝導率から、以下の等式に従って得られた。
【0092】
【数1】

【0093】
R=パーセント脱塩率
伝導率(C及びC)は、伝導率計測器(VWR Digital Conductivity Bench Meter;VWR International(West Chester,Pennsylvania))で測定され、浸透質量は、電子天秤(モデルTE3102S;Sartorius(Edgewood,New York))で測定された。伝導率及び浸透質量のデータは、Winwedge 32コンピューターソフトウェア(TAI Technologies(Philadelphia,Pennsylvania))を使用して、時間の関数として収集された。脱塩率値が停滞した後に減少し始めた後、測定は中止された。脱塩率は、試験の最後の供給濃度によって調整された。
【0094】
非対称な膜のプロセス
非対称な膜は、連続的なプロセスによって調製された。米国特許第4,726,989号(Mrozinski)に記載されるポリプロピレン熱誘起相分離(TIPS)膜は、重合可能組成物でダイコーティングされて、コーティングされた多孔質基材を形成した。コーティングされた多孔質基材は、間隔を調節したニップの2つのライナーの間で積層された。2つのライナー(例えば、フィルム)の一方は第1主表面に積層され、他方のライナーは、第2主表面に積層されて、多層構造を形成した。30マイクロメートル(1.18mil)厚さの二軸延伸ポリプロピレンライナー(BOPP)フィルム(3M Company(St.Paul,Minnesota))は、約78.5パーセント(短波長紫外線)及び85.9パーセント(長波長紫外線)の透過率を有した。多層構造の縁部(すなわち、2つのライナーの縁部)は、感圧接着剤テープ(Scotch ATG Tape 926、3M(St.Paul,Minnesota))で封止された。多層構造は、BOPPライナーによって封入され、コーティングされた多孔質基材上の超過の重合可能組成物が最小化された。多層構造は、47”の長い紫外線ウィンドウを有するQuantum Microwave Multi−Lamp UV Curing System(モデル:Quant−23/48R、Quantum Technologies(Irvine,California))で照射された。Quantum UV Systemは、長波長紫外線ランプ(26169−3,UV A 365nm Peak Lamps TL60/10R、Philips(Somerset,New Jersey))、又は短波長紫外線ランプ(23596−0,Germicidal Sterlilamp 254nm Lamps TUV115W、Philips(Somerset,New Jersey))のいずれかを使用した。ライン速度は、機械速度ディスプレイを使用して調節された。多層構造が紫外線トレーによって運搬された際に、紫外線源の強度がPowerMap放射計(EIT UV Power MAPSpectral Response,UV:A,B,C,V,Range:Low,Head S/N 1408,Body S/N 1022(Sterling,Virginia)) によって測定された。重合可能組成物の重合可能種が重合され、多孔質基材内に保持される重合物質を形成した。多層基材がロール上に集められて、ライナーが取り外された。非対称膜が回収された。更なる試験の前に、非対称膜が蒸留水で洗浄された。
【0095】
(実施例1)
ポリプロピレンミクロ孔質TIPS膜(泡立ち点孔径=0.58μm、約85〜95マイクロメートル(3.5〜3.6ミル)の厚さ、152.7L/m・h・kPa(1052L/m・h・psi)の水フラックス)が、重合可能組成物でダイコーティングされた。重合可能組成物は、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド((APTAC)、水中で75重量%、Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri))とN,N’−メチレンビスアシルアミド(97%、Alfa Aesar(Ward Hill,Massachusetts))と1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(Irgacure 2959、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York))とをエタノール/水溶媒混合物(60/40(体積:体積比))中に含んだ。APTAC濃度は、エタノール/水混合物中で0.55モル/kgであった。エタノール/水中のN,N’−メチレンビスアシルアミド、及び、Irgacure 2959は、重合可能種のAPTACに対してそれぞれ10モルパーセント、及び2モルパーセントの濃度を有した。多孔質基材に対して前処理は必要でなかった。コーティングされた多孔質基材を形成するために、重合可能組成物がポリプロピレンミクロ孔質TIPS膜に適用された。コーティングされた多孔質基材は、多層構造を形成する前に、及び紫外線源による照射の前に、「非対称な膜のプロセス」に記載されるように調製された。多層構造は、連続的なプロセス装置により、約30.5cm/分のライン速度で運搬された。コーティングされた膜の第1主表面(側面A)が、短波長紫外線源(5.77mW/cmの光強度)で照射された。湿潤した膜は、約110〜120マイクロメートル(4.4〜4.6ミル)の厚さであった。膜の分離性能が表1に掲載される。
【0096】
比較例1(CE 1)
比較例1は、実施例1と同様に調製されたが、ただし紫外線源(長波長紫外線)を使用して膜の一方の側面を照射した。コーティングされた膜の第1主表面(側面A)が、長波長紫外線(28.55mW/cmの光強度)で照射された。湿潤した膜は、約110〜120マイクロメートル(4.4〜4.6ミル)の厚さであった。膜の分離性能が表1に掲載される。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に例示されるように、実施例1は側面Aから側面Bにかけて40%の脱塩率変化を示し、側面Aから側面Bに延びる重合物質の勾配濃度を示唆している。側面Bが供給に面した場合、脱塩率が低減し、膜中の重合物質の非対称な濃度を示唆した。比較例1は、側面Aから側面Bにかけて、ごく僅かなパーセント脱塩率を示し、側面Aから側面Bの膜の厚さを通じて同様の濃度の重合物質が延びていることを示唆した。
【0099】
短波長紫外線源で照射された実施例1は、長波長紫外線源で照射した比較例1と比較して、純水フラックスにおいて約3倍の改善を示した。
【0100】
実施例2及び比較例2(CE 2)
実施例2(実施例1の膜)及び比較例2(比較例1の膜)は、負電荷を帯びた色素(商標名METANIL YELLOWで、Alfa Aesar(Heysham,Lancashire,England)から市販)で個別に着色された。実施例2及び比較例2の膜が、バイアル瓶の中の水性色素溶液中に浸されて、約24時間にわたって撹拌された。膜がバイアル瓶から取り出されて脱イオン水ですすがれ、乾燥された。側面Aは、実施例2及び比較例2の第1主表面を表わし、側面Bはその第2主表面を表わした。表2はこの結果を掲載する。
【0101】
【表2】

【0102】
表2に例示されるように、実施例2は側面Aにおける、膜の黄色の色素に対する親和性を示し、暗黄色を生じ、黄色の色素は側面Bから洗い落とされた。側面Aの表面は、側面Bにおけるよりも高い濃度の重合物質を有し、非対称な膜を示した。比較例2は、側面A及び側面Bの両方においてほぼ同等の、黄色の色素に対する膜の親和性を示した。比較例2の各側面は、明るい橙色を有し、側面A及び側面Bにおける重合物質の同様の濃度を示唆し、対称な膜の形成を示唆した。
【0103】
(実施例3〜4)
ポリプロピレンミクロ孔質TIPS膜(泡立ち点孔径=0.72μm、約120〜130マイクロメートル(4.2〜4.3ミル)の厚さ、214.1L/m・h・kPa(1475L/m・h・psi)の水フラックス)が、図1の重合可能種でダイコーティングされた。ポリプロピレン膜の前処理は必要ではなかった。コーティングされた多孔質基材を形成するために、重合可能種がポリプロピレンミクロ孔質TIPS膜に適用された。コーティングされた多孔質基材は、多層構造を形成する前に、及び短波長紫外線源による照射の前に、「非対称な膜のプロセス」に記載されるように調製された。多層構造は、連続的なプロセス装置により、約50cm/分のライン速度で運搬された。コーティングされた膜の第1主表面(側面A)は、異なる短波長紫外線光強度(PowerMap放射計によって測定される光強度)で照射された。実施例3〜4に示される膜の分離性能が、表3に示される。
【0104】
【表3】

【0105】
表3は、コーティングされた多孔質基材上の異なる光強度における短波長紫外線の効果を例示する。より高い短波長紫外線光強度で、純水フラックスにおける変化が観察され得る。
【0106】
(実施例5〜13)
実施例3〜4で使用されたポリプロピレン多孔質TIPS膜は、実施例1の重合可能組成物でダイコーティングされた。PP膜の前処理は必要ではなかった。コーティングされた多孔質基材を形成するために、重合可能種がポリプロピレン多孔質TIPS膜に適用された。コーティングされた多孔質基材は、多層構造を形成する前に、及び短波長紫外線源による照射の前に、「非対称な膜のプロセス」に記載されるように調製された。多層構造は、連続的なプロセス装置上で、表4に示される様々なライン速度で運搬された。コーティングされた膜の第1主表面(側面A)は、異なる短波長紫外線光強度(PowerMap放射計によって測定される光強度)で照射された。実施例5〜13の膜の分離性能が、表4に掲載される。
【0107】
【表4】

【0108】
表4は、膜を形成するための、ライン速度、及びコーティングされた多孔質基材上の短波長紫外線光強度の効果を例示する。
【0109】
本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく本開示の様々な修正形態及び変更形態が、当業者には、明らかとなろう。また、本発明は、本明細書に記載した例示的な要素に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称な膜を形成する方法であって、
第1主表面及び第2主表面を有する多孔質基材を提供する工程と、
重合可能組成物を前記多孔質基材に適用し、コーティングされた多孔質基材を提供する工程であって、前記重合可能組成物が、
i)少なくとも1つの重合可能種、及び
ii)少なくとも1つの光開始剤を含む、工程と、
前記コーティングされた多孔質基材を340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露し、前記重合可能種を重合して非対称な膜を形成する工程であって、前記非対称な膜は前記多孔質基材中に保持される重合物質を有し、前記重合物質は前記第1主表面において、前記第2主表面におけるよりも高い濃度を有する、工程とを含む、方法。
【請求項2】
340nm未満のピーク放射波長を有する紫外線源に暴露した後に、前記非対称な膜を洗浄する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質基材がミクロ孔質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質基材がミクロ孔質の熱誘起相分離膜を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質基材が親水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質基材が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質基材がフィルム、不織布ウェブ、織布ウェブ、繊維、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔質基材が微粒子を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維が中空繊維である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質基材がポリオレフィン、ポリアミド、フッ素化ポリマー、ポリ(エーテル)スルホン、セルロース誘導体、ポリ(エーテル)イミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、セラミックス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質基材がポリオレフィンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィンがポリエチレン又はポリプロピレンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質基材がポリアミドを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアミドがナイロン6,6を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記適用する工程が、ダイコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記重合可能組成物を適用する工程が、前記多孔質基材を浸漬するか、又は満たす工程を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記重合可能組成物を適用する工程が前記多孔質基材の厚さの一部を、前記第1主表面から少なくとも1マイクロメートルまで浸漬するか、又は満たす工程を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記重合可能種の少なくとも1つが、アクリレート、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、アリル、ビニルエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記重合可能種の少なくとも1つがイオン基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イオン基がスルホン酸、又はスルホン酸塩を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン基がアミン又は第四級アンモニウム塩を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記イオン基がカルボン酸又はカルボン酸塩を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン基がホスホン酸又はホスホン酸塩を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン基が正電荷を帯びているか、負電荷を帯びているか、又はこれらの組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記重合可能種の少なくとも1つがイオン基を含む、請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
非イオン基を含む少なくとも1つの重合可能種を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記重合可能組成物が溶媒を更に含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コーティングされた多孔質基材の前記暴露が不活性環境を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
340nm未満のピーク放射を有する前記紫外線源が狭帯域紫外線源である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記紫外線源が複数の単色放射線源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の単色放射線源が、エキシマランプ源、低圧水銀ランプ源、発光ダイオード、レーザー源、又はこれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記紫外線源が複数の蛍光放射線源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記紫外線源が、単色放射線源、蛍光放射線源、又はこれらの組み合わせを含む、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記紫外線源が、約140nm〜約320nmの範囲内のピーク放射波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記紫外線源が約200nm〜約300nmの範囲内のピーク放射波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記非対称な膜の前記第1主表面が親水性であり、前記非対称な膜の前記第2主表面が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記非対称な膜の前記第1主表面が疎水性であり、前記非対称な膜の前記第2主表面が親水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記コーティングされた多孔質基材を、透明な第1層と第2層との間に位置付けて多層構造を形成し、前記透明な第1層が前記第1主表面に隣接して位置付けられ、前記第2層が前記第2主表面に隣接して位置付けられ、前記透明な第1層が前記紫外線源に最も近く、前記コーティングされた多孔質基材を340nm未満のピーク放射波長を有する前記紫外線源に暴露する工程が、前記多層構造を紫外線に暴露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記コーティングされた多孔質基材を340nm未満のピーク放射波長を有する前記紫外線源で処理した後に、前記透明な第1層、及び前記第2層を前記多層構造から取り除く工程を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記重合可能組成物が架橋剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法によって形成される非対称な膜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−527230(P2011−527230A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516367(P2011−516367)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043687
【国際公開番号】WO2010/002501
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】