説明

非対称複合メンブレンの製造方法

【課題】良好な選択性を維持しながら大気操作条件下においても流量が多くでき、機械的一体性を向上したメンブレンを提供する。
【解決手段】電子線反応性基を有するポリマーを多孔質ベースメンブレンに塗工して皮膜を形成し、被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射し、電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに永久的にグラフトして、ベースメンブレンの気孔を充填する皮膜を形成し、非対称メンブレンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメンブレン(膜)に関する。特に、本発明は非対称複合メンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリエチレンオキシドメンブレン系は、混合ガスの供給流れからの二酸化炭素や硫化水素のような酸性ガスの選択的除去による水素ガス精製に非常に有効であると報告されている。ポリエチレンオキシドメンブレンは、高い選択性能をもつが、大気操作条件では流量が低い。メンブレンの低い透過性は厚みが比較的大きいことによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4873037号明細書
【特許文献2】米国特許第5236588号明細書
【特許文献3】米国特許第5985475号明細書
【特許文献4】米国特許第7339008号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0180425号明細書
【特許文献6】特開2003−251162号公報
【特許文献7】特開2004−351881号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lin et al., "Plasticization-Enhanced Hydrogen Purification Using Polymeric Membranes", Science, Volume 311, pp. 639-642, 2006
【非特許文献2】Merkel et al., "Ultrapermeable, Reverse-Selective Nanocomposite Membranes", Science, Volume 296, pp. 519-522, 2002
【非特許文献3】Lin et al., "Transport and Structural Characteristics of Crosslinked Poly(ethylene oxide) Rubbers", Journal of Membrane Science, Volume 276, pp. 146-161, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、良好な選択性を維持しながら流量を増し機械的一体性を向上したメンブレンを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1実施形態では、非対称メンブレンの形成方法は、電子線反応性基を有するポリマーを多孔質ベースメンブレンに塗工して皮膜を形成し、被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射し、電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに永久的にグラフトして、ベースメンブレンの気孔を充填する皮膜を形成する工程を含む。
【0007】
別の実施形態では、非対称メンブレンの形成方法は、電子線反応性基を有するポリマーを多孔質ベースメンブレンに塗工して皮膜を形成し、但し、ポリマーはポリエチレンオキシド又はその誘導体を含み、多孔質ベースメンブレンは延伸ポリテトラフルオロエチレンを含み、次いで被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射し、電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに永久的にグラフトして、ベースメンブレンの気孔を充填する皮膜を形成する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によれば、電子線反応性基含有ポリマー材料をベースメンブレン上にコーティングし、次いで電子線を照射して永久的に被覆された非対称メンブレンを形成する。
【0009】
ここで用いる用語「ベースメンブレン」は未被覆のメンブレンを指し、もっと包括的な用語の「メンブレン」(膜)は、文言上又は文脈上そうでないと明記されていない限り、本発明の実施形態を含有するメンブレンを意味する。ベースメンブレンを形成するのに、フルオロポリマー、スルホン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド又はナイロンなどの様々な材料を用いることができる。適当なフルオロポリマーとしては延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(FEP)、ポリ(エチレン−alt−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロプロピルビニルエーテル)(PFA)、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−co−HFP)及びポリビニルフルオライド(PVF)が挙げられるが、これらに限らない。開口気孔構造をもつメンブレンを形成するのに用いることができる他の材料と方法には、1つ以上のポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー(例えば、ポリメタクリレート)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタル酸エステル、ポリブチレンテレフタル酸エステル)、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロース系ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド類(例えば、ナイロン、ポリフェニレンテレフタルアミド)及びこれらの2つ以上の組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、ベースメンブレンは延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0010】
ePTFEのようなフルオロポリマーは、機械的に強く、耐熱性で、化学的不活性な材料である。これらの有利な特性は炭素−フッ素結合の結合強さが高く、化学分解を軽減することに由来する。炭素−フッ素結合の解離エネルギーは既知の最強のものの一つであるが、フルオロカーボン上でのラジカル形成のギブス自由エネルギー値は炭素−水素結合のそれと同等である。このため、電子線照射により官能化ポリエチレンオキシド誘導体をフルオロポリマーのベースメンブレンに高エネルギー線グラフトすることが可能である。
【0011】
例えばベースメンブレンの穿孔、延伸、膨張(発泡)、バブリング又は抽出の1つ以上により、ベースメンブレンを透過性にすることができる。適当なメンブレン形成方法には、適当な材料の発泡、スカイビング(削りだし)又はキャスティングもある。別の実施形態では、メンブレンを繊維織布又は不織布から形成してもよい。
【0012】
1実施形態では、連続気孔を形成することができる。適当な気孔率は約10体積%超の範囲にすることができる。1実施形態では、気孔率は約10体積%〜約20体積%、約20体積%〜約30体積%、約30体積%〜約40体積%、約40体積%〜約50体積%、約50体積%〜約60体積%、約60体積%〜約70体積%、約70体積%〜約80体積%、約80体積%〜約90体積%又は約90体積%超の範囲とすることができる。
【0013】
孔径はすべての気孔につき均一にすることができ、また気孔(ポア)が所定のパターンをもつことができる。或いはまた、孔径が気孔毎に異なり、また気孔が不規則なパターンをもつことができる。適当な孔径は約100μm未満とすることができる。1実施形態では、平均孔径は、約1μm〜約20μm、約20μm〜約40μm、約40μm〜約60μm、約60μm〜約80μm又は約80μm〜約100μmの範囲とすることができる。1実施形態では、平均孔径は、約0.1μm未満、約0.01μm〜約0.1μm、約0.1μm〜約0.25μm、約0.25μm〜約0.5μm又は約1μm未満の範囲とすることができる。
【0014】
1実施形態では、ベースメンブレンは、三次元マトリックスとすることができ、或いは多数のノード(結節)を多数のフィブリルによって互いに連結した格子型構造をもつことができる。ノードとフィブリルの表面はメンブレン中に多数の気孔を画成することができる。少なくとも部分的に焼結されたフィブリルの寸法は、フィブリルの長さ方向に垂直な方向に測った直径で表して約0.05μm〜約0.5μmの範囲とすることができる。多孔質メンブレンの比表面積は約0.5m2/g〜約110m2/g(メンブレン材料1g当たりの平方メートル)の範囲とすることができる。
【0015】
ノード及びフィブリルの表面は、両主表面間で曲がりくねった経路にてメンブレンを貫通する多数の相互連結気孔を画定する。1実施形態では、メンブレン中の気孔の平均有効孔径はミクロン(μm)範囲とすることができる。メンブレン中の気孔の適当な平均有効孔径は約0.01μm〜約0.1μm、約0.1μm〜約5μm、約5μm〜約10μm又は約10μm超の範囲とすることができる。
【0016】
1実施形態では、ベースメンブレンを製造するのに、まず微細粉末粒子と潤滑剤の混合物を押出すことができる。その後、押出物をカレンダ加工することができる。カレンダ加工した押出物を一方向又は二方向以上に「延伸」即ち、ストレッチすることによりノードを連結するフィブリルを形成して三次元マトリックス又は格子型構造を画成することができる。用語「延伸」とは、メンブレン材料の弾性限度を超えるストレッチによって永久歪み又は伸びをフィブリルに導入することをいう。メンブレンを加熱又は「焼結」し、メンブレン材料の一部を結晶状態から非晶状態に変化させることにより、材料中の残留応力を低減し、最小限にすることができる。1実施形態では、想定されるメンブレンの最終用途に適当であれば、メンブレンを焼結しなくても、部分的に焼結してもよい。
【0017】
1実施形態では、ベースメンブレンは、メンブレンの両主側面に隣接する環境と流体連通する多数の連結気孔(ポア)を画定することができる。水性の極性液体などの液体物質が気孔を濡らし、気孔を透過するのを可能にするメンブレン材料の傾向は、1つ又は2つ以上の特性の関数として表すことができる。このような特性にはメンブレンの表面エネルギー、液体物質の表面張力、メンブレン材料の液体物質との相対接触角、気孔の寸法又は有効流路面積及びメンブレン材料と液体物質の親和性が挙げられる。
【0018】
ベースメンブレンに電子線反応性基を有するポリマーを被覆して皮膜を形成する。ポリマーは電子線反応性基で誘導体化することができる。好ましい実施形態では、ポリマーはポリエチレンオキシド又はその誘導体を含む。ポリエチレンオキシドの適当な誘導体には、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート又はこれらの組合せがあるが、これらに限らない。
【0019】
皮膜はポリマーを約0.1重量%〜約20重量%含有することができる。1実施形態では、皮膜はポリマーを約20重量%〜約40重量%含有する。別の実施形態では、皮膜はポリマーを約40重量%〜約60重量%含有する。他の実施形態では、皮膜はポリマーを約60重量%〜約80重量%含有する。さらに他の実施形態では、皮膜はポリマーを約80重量%〜約100重量%含有する。
【0020】
付着分(重量%)又は焼失分(重量%)を計算してベースメンブレンに適用された電子線反応性皮膜の量を求めることができる。1実施形態では、メンブレンは、付着分(重量%)又は焼失分(重量%)が0.5〜100重量%の皮膜を有する。別の実施形態では、メンブレンは、付着分(重量%)又は焼失分(重量%)が3〜15重量%の皮膜を有する。
【0021】
電子線反応性基は、ポリエチレン又は上記のコーティング材料に共有結合で結合することができるものであればいずれも使用できる。電子線反応性基は、高エネルギー照射下でラジカルを形成することができる部分と定義する。電子線反応性基は、電子線源にさらされるとフリーラジカルを発生し、他の反応性基体への架橋及びグラフトを達成する。ポリエチレン又は他のコーティング材料に共有結合できる反応物質は、モノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの組合せとすることができる。1実施形態では、電子線反応性官能基はメタクリレート及び/又はアクリレートを含む。別の実施形態では、電子線反応性官能基は、一級、二級、三級脂肪族基又は脂環式基を含む。他の実施形態では、電子線反応性官能基はベンジル基のような芳香族基を含む。他の電子線反応性官能基には、アクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、含ビニル又は含アリル化合物、ベンジル基及び三級炭素(CHR3)含有物質がある。
【0022】
皮膜に共有結合できる適当なメタクリレート、アクリレート及びビニルケトン化合物には、アクリロイルクロリド、(2E)−2−ブテノイルクロリド、無水マレイン酸、2(5H)−フラノン、アクリル酸メチル、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン、アクリル酸エチル、クロトン酸メチル、アクリル酸アリル、クロトン酸ビニル、2−イソシアナトエチル メタクリレート、メタクリル酸、無水メタクリル酸、メタクリロイルクロリド、グリシジル メタクリレート、2−エチルアクリロイルクロリド、3−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、メチル 2−メチルアクリレート、メチル trans−2−メトキシアクリレート、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、メチル (2E)−2−メチル−2−ブテノエート、エチル 2−メチルアクリレート、エチル 2−シアノアクリレート、ジメチルマレイン酸無水物、アリル 2−メチルアクリレート、エチル (2E)−2−メチル−2−ブテノエート、エチル 2−エチルアクリレート、メチル (2E)−2−メチル−2−ペンテノエート、2−ヒドロキシエチル 2−メチルアクリレート、メチル 2−(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル メタクリレート、3−(トリクロロシリル)プロピル 2−メチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル 2−メチルアクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル メタクリレート、6−ジヒドロ−1H−シクロペンタ[c]フラン−1,3(4H)−ジオン、メチル 2−シアノ−3−メチルクロトネート、trans−2,3−ジメチルアクリル酸、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0023】
適当なビニル及びアリル電子線活性化合物には、臭化アリル、塩化アリル、ジケテン、5−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、3−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、2−クロロエチルビニルエーテル、4−メトキシ−2(5H)−フラノンなどがあるが、これらに限らない。
【0024】
適当なイソシアネ−ト電子線活性化合物には、ビニルイソシアネ−ト、アリルイソシアネ−ト、フルフリルイソシアネート、1−エチル−4−イソシアナトベンゼン、1−エチル−3−イソシアナトベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−3−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3,5−ジメチルベンゼン、1−ブロモ−2−イソシアナトエタン、(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−4−メチルベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−3−メチルベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−2−メチルベンゼンなどがあるが、これらに限らない。
【0025】
適当なスチレン電子線活性化合物には、3−ビニルベンズアルデヒド、4−ビニルベンズアルデヒド,4−ビニルベンジルクロリド、trans−シンナモイルクロリド、フェニルマレイン酸無水物、4−ヒドロキシ−3−フェニル−2(5H)−フラノンなどがあるが、これらに限らない。
【0026】
適当なエポキシド電子線活性化合物には、グリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、2−(3−ブテニル)オキシラン、3−ビニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、酸化リモネンなどがあるが、これらに限らない。
【0027】
非対称メンブレンの製造方法は一般に、多孔質ベースメンブレンを電子線反応性基を含有するポリエチレンオキシド及び/又はその誘導体でコーティングし、メンブレンを制御した条件下で乾燥し、次いでこの複合材に電子線を、1実施形態では0.1〜2000キログレイ(kGy)、別の実施形態では1〜60kGy、他の実施形態では好ましくは5〜40kGyの線量で照射する工程を含む。
【0028】
ある実施形態では、コーティング中にベースメンブレンを十分に濡らして、確実に電子線反応性基含有ポリマーを均一に被覆・堆積できるようにする。親水性ポリマーのコーティングは、特定の方法に限定されないが、溶液堆積、高圧溶液堆積、減圧濾過、塗装、グラビアコーティング、エアブラシなどによって堆積することができる。このような方法では、ポリマーを非プロトン性及び/又はプロトン性極性溶剤に溶解することができる。例えば、ポリマーを水又は適当な非プロトン性極性溶剤に溶解し、その後イソプロピルアルコールと混合することができる。
【0029】
乾燥は、通常溶剤を除去するのに有効な温度で行い、ほぼ室温から約150℃までの温度とすることができる。用途に応じて皮膜を真空乾燥又は風乾することができる。スプレー及び/又は浸漬(ソーキング)を行って複合材料を再び濡らす(湿潤する)ことができる。その後の電子線照射は、用途に応じて、ドライ(乾燥)又はウェット(湿潤)状態いずれでも行うことができる。
【0030】
本発明の実施形態のメンブレンは、様々な寸法をもつことができ、寸法は用途に特有な基準に従って選択できる。1実施形態では、メンブレンの流体流れ方向の厚さは約1μm未満の範囲とすることができる。例えば、メンブレンの流体流れ方向の厚さは50nm〜約1μm、1実施形態では約1μm〜約10μmの範囲とすることができる。別の実施形態では、メンブレンの流体流れ方向の厚さは、約10μm〜約100μm、約100μm〜約1mm、約1mm〜約5mm又は約5mm超の範囲とすることができる。1実施形態では、メンブレンを複数の異なる層で形成することができる。
【0031】
メンブレンの流体流れ方向に垂直な幅は約10mm超とすることができる。1実施形態では、メンブレンの幅は、約10mm〜約45mm、約45mm〜約50mm、約50mm〜約10cm、約10cm〜約100cm、約100cm〜約500cm、約500cm〜約1m又は約1m超とすることができる。幅は円形領域の直径でも、多角形領域の最も近い縁端までの距離でもよい。1実施形態では、メンブレンはメートル範囲の幅と不定な長さの長方形とすることができる。即ち、メンブレンは、ロールに形成し、連続形成作業中に所定の距離でメンブレンを切断することにより長さを決定することができる。
【0032】
本発明の実施形態に従って製造されたメンブレンは1つ又は2つ以上の所定の特性を有する。このような特性には、乾燥輸送メンブレンの濡れ性、乾湿サイクル性、極性液体又は溶液の濾過、非水性液体又は溶液の流れ、低pH条件下での流れ及び/又は持久性、高pH条件下での流れ及び/又は持久性、室温条件での流れ及び/又は持久性、高温条件下での流れ及び/又は持久性、高圧での流れ及び/又は持久性、所定の波長のエネルギーに対する透過性、音響エネルギーに対する透過性又は触媒材料の支持性の1つ又は2つ以上が挙げられる。さらに「持久性」は、コーティング材料が機能を持続的に、例えば1日より長く、もしくは1サイクル(乾湿、冷熱、高低pHサイクルなど)より多く、維持する能力を指す。
【0033】
1実施形態では、メンブレンの耐紫外線(UV)性は、特性を低下することなく、メンブレンの滅菌を可能にする。なお、別の実施形態では、紫外光源のような照射源に曝露することによりコーティング組成物の架橋を開始又は促進でき、この場合、もし存在すればUV開始剤がUV吸収組成物と競合することもある。
【0034】
メンブレンを通過する流体の流量は1つ又は2つ以上の因子に依存することがある。そのような因子にはメンブレンの物理的及び/又は化学的特性、流体の特性(例えば、粘度、pH、溶質など)、環境特性(例えば、温度、圧力など)などの1つ以上が挙げられる。1実施形態では、メンブレンは流体又は液体に対し透過性かつ蒸気に対し透過性であっても、流体又は液体ではなく蒸気に対し透過性であってもよい。蒸気透過性である場合、適当な蒸気透過率は、約1000グラム/平方メートル/日(g/m2/day)未満、約1000g/m2/day〜約1500g/m2/day、約1500g/m2/day〜約2000g/m2/day又は約2000g/m2/day超の範囲とすることができる。1実施形態では、メンブレンは、蒸気に対する透過性を維持したまま液体又は流体に対して選択的に不透過性とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明の方法及び実施形態を具体的に示すものにすぎず、特許請求の範囲に限定をあたえると解釈すべきではない。
【0036】
実施例1
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートをイソプロピルアルコールに溶解して約65重量%の溶液を調製する。この溶液を延伸ポリテトラフルオロエチレンに塗布し、余分な溶液をスキージーで除去する。メンブレンを室温、大気圧で乾燥する。次いでメンブレンを大気圧で窒素パージしながら電子線下に通す。電子線の加速電圧は80kV、線量は100kGyである。
【0037】
すべての範囲は上下限の値を含み、上下限の値は互いに組合せることができる。ここで用いる用語「第1」、「第2」などは、順序、数量又は重要性を表すものではなく、ある要素を他の要素と区別するのに使用する。数量にともなう修飾語「約」は、表示値を含み、文脈で示された意味を持つ(例えば特定の数量の測定にともなう誤差を含む)。本発明を説明する文脈(特に、請求項の文脈)中の単数表現は、文脈上そうでない場合又は明らかに矛盾する場合以外は、単数も複数も含む。
【0038】
以上、本発明を数多くの実施形態について詳細に説明したが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明を変更して、本発明の要旨及び技術的範囲に相当するがこれまで説明しなかった変種、改変、置換又は均等物の組合せをいくつでも取り入れることができる。さらに、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明の観点は上記の実施形態の一部のみを含むものでもよい。したがって、本発明は前述の説明によって制限を受けるものではなく、特許請求の範囲のみによって制限を受けるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線反応性基を有するポリマーを多孔質ベースメンブレンに塗工して皮膜を形成し、
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射し、
電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに永久的にグラフトして、ベースメンブレンの気孔を充填する皮膜を形成する工程を含む、
非対称メンブレンの形成方法。
【請求項2】
多孔質ベースメンブレンが、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、セルロース系ポリマー又はこれらの2つ以上の組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多孔質ベースメンブレンが、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(エチレン−alt−テトラフルオロエチレン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロプロピルビニルエーテル)、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリビニルフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン又はこれらの2つ以上の組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーがポリエチレンオキシド又はその誘導体を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
電子線反応性基がメタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、含ビニル化合物、含アリル化合物、ベンジル基、三級炭素含有物質又はこれらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射する工程で、被覆された多孔質ベースメンブレンを電子線に0.1kGy〜2000kGyの範囲の線量で曝露する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに多孔質ベースメンブレンに前記ポリマーを塗工する前に、前記ポリマーを溶剤又は混合溶剤に溶解する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー源を照射する工程が、被覆されたメンブレンを高エネルギー源に複数回曝露する追加の工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
照射前に、被覆された多孔質ベースメンブレンを乾燥する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
被覆された多孔質メンブレンを乾燥する工程で、被覆された多孔質メンブレンを150℃未満の温度に加熱する、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2010−149113(P2010−149113A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−275009(P2009−275009)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】