説明

非帯電性着色樹脂粒子、そのシリコーンオイル分散体、電気泳動表示装置及び非帯電性着色樹脂粒子の製造方法

【課題】着色泳動粒子の電気泳動を阻害しない非泳動の非帯電性着色樹脂粒子を提供する。
【解決手段】シリコーン鎖と、カルボキシル基とアミノ基の反応物とを表面に有し、カルボキシル基が正帯電性着色樹脂粒子に由来し、アミノ基がアミノ基含有化合物に由来する基であり、且つ動的粘度が100センチストークス以下であるシリコーンオイル中に固形分濃度10wt%で分散した状態で、電極間距離を50μmとした並行平板となるITO電極間に10Vの電圧を60秒間印加した際に10nC/cm2以下の帯電量測定値を示すことを特徴とする非帯電性着色樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非帯電性着色樹脂粒子、そのシリコーンオイル分散体、電気泳動表示装置及び非帯電性着色樹脂粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、安定して非帯電性を示す非帯電性着色樹脂粒子、そのシリコーンオイル分散体、電気泳動表示装置及び非帯電性着色樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯電性を示す着色樹脂粒子の電気泳動を利用した画像表示装置が注目されている。視野角が通常の印刷物並みに広いこと、消費電力が少ないこと、電源オフにしても表示された情報が消えないというメモリー性を有すること等、従来の表示装置にない特徴を有するこの装置は、安価な表示装置として普及することが期待されている。
【0003】
ここで、着色樹脂粒子が画像表示装置の画像表示用素子として用いられる一例を紹介する。スペーサーを介して対向配置された、少なくとも一方が透明である2枚の電極基板の間に、画像表示素子として正及び/又は負の帯電性を示す着色樹脂粒子が分散媒中に分散された表示液を封入して表示パネルを構成する。この表示パネルの2枚の電極基板間に電界を印加することにより、帯電性を示す着色樹脂粒子を電気泳動させて表示を得ることができる。
【0004】
最近、このような画像表示装置を多色表示化する試みが行われている。
このような多色表示に関する従来技術としては、染料等を溶解させることにより着色された分散媒を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、電圧の印加によって電気泳動性を示す着色粒子(以下着色泳動粒子)が表示面となる透明電極基板上に配列されるときに、着色粒子同士の隙間に色調の異なる分散媒が入り込むことで混色が発生し、所望の色表示がされないという問題があった。
【0005】
特許文献1の問題を解決する技術として、電圧印加による電気泳動を示さず、且つ溶媒との屈折率の差が大きい樹脂粒子(以下非泳動粒子)を非極性の溶媒に分散することにより白色の分散媒としたものを用いる方法が知られている(特許文献2参照)。特許文献2では、着色泳動粒子を表示面とは反対の電極基板上に移動させて非泳動粒子による発色を表示させようとすると、非泳動粒子の隠蔽性が低いため、反対の電極に配列された着色泳動粒子の色が表示面から見えてしまうという問題があった。
【0006】
特許文献2の問題を解決する技術として、溶媒との屈折率の差が大きい樹脂粒子に着色剤としての酸化チタンを均一に被覆させて無帯電化した非泳動粒子を溶媒に分散することにより白色の分散媒としたものを用いる方法が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2551783号公報
【特許文献2】特開2001−188269号公報
【特許文献3】特開2008−122468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の結果を鑑み、更に非泳動粒子による発色を強めるため、発明者等は特許文献3の実施例2に記載の非泳動粒子を増量させて同様の実験を行ったところ、単に増量するだけでは表示液全体の粘度が増加し、着色泳動粒子の電気泳動による移動速度が遅くなることが分かった。また、非泳動粒子の着色剤の割合を増加することにより上記不具合の解消を試みたが、非泳動性粒子の帯電量が高くなり、着色泳動粒子の電気泳動を阻害することが分かった。本発明は、上記の問題を解決するものであり、その目的とするところは、着色泳動粒子の電気泳動を阻害しない非泳動の非帯電性着色樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者等は、鋭意検討の結果、一旦表面にシリコーン鎖及びカルボキシル基を有する正帯電性着色樹脂粒子を作製した後に、正帯電性着色樹脂粒子のカルボキシル基をアミノ基含有化合物のアミノ基と反応させることにより、安定した非帯電性着色樹脂粒子が得られることを意外にも見出すことで、本発明に至った。
【0010】
かくして本発明によれば、シリコーン鎖と、カルボキシル基とアミノ基の反応物とを表面に有し、カルボキシル基が正帯電性着色樹脂粒子に由来し、アミノ基がアミノ基含有化合物に由来する基であり、且つ動的粘度が100センチストークス以下であるシリコーンオイル中に固形分濃度10wt%で分散した状態で、電極間距離を50μmとした並行平板となるITO電極間に10Vの電圧を60秒間印加した際に10nC/cm2以下の帯電量測定値を示すことを特徴とする非帯電性着色樹脂粒子が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の非帯電性着色樹脂粒子の製造方法であって、表面にシリコーン鎖及びカルボキシル基を有する正帯電性着色樹脂粒子のカルボキシル基をアミノ基含有化合物のアミノ基と反応させて非帯電性着色樹脂粒子を得ることを特徴とする非帯電性着色樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記の非帯電性着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させて得られるシリコーンオイル分散体が提供される。
更に、本発明によれば、上記のシリコーンオイル分散体を用いて得られる電気泳動表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による非帯電性着色樹脂粒子は、安定した非帯電性を有しているので、電気泳動表示装置に用いた場合、着色泳動粒子の移動を妨げないで、所望の色表示を実現することができる。
【0014】
また、アミノ基含有化合物が、脂肪族アミン又はアミノ基含有シリコーン化合物から選択される化合物である場合、更に安定した非帯電性を有する非帯電性着色樹脂粒子を得ることができる。
【0015】
また、アミノ基含有化合物のアミノ基が、正帯電性着色樹脂粒子1モル当量に対して0.2〜1.5モル当量含まれる場合、更に安定した非帯電性を有する非帯電性着色樹脂粒子を得ることができる。
【0016】
また、シリコーン鎖が、下記による構成単位
【化1】

(RはC1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは整数である。)
を有する場合、更に安定した非帯電性を有する非帯電性着色樹脂粒子を得ることができる。
【0017】
また、非帯電性着色樹脂粒子が、着色剤としての酸化チタンを20重量%〜90重量%含む場合、着色剤の含有量が高くても、安定した非帯電性を有する非帯電性着色樹脂粒子を得ることができる。
【0018】
また、本発明による非帯電性着色樹脂粒子の製造方法により、安定した非帯電性を有する非帯電性着色樹脂粒子を製造することが可能になる。この製造方法で得られた非帯電性着色樹脂粒子は、電気泳動表示装置に用いられる場合、着色泳動粒子の移動を妨げないで、所望の色表示を実現することができる。
【0019】
本発明による非帯電性着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させて得られるシリコーンオイル分散体を用いた電気泳動表示装置は、所望しない色が表示されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例及び比較例において得られた着色樹脂粒子の帯電量を評価するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による非帯電性着色樹脂粒子(以下、非帯電粒子ともいう)は、シリコーン鎖と、カルボキシル基とアミノ基の反応物とを表面に有する。カルボキシル基は、正帯電性着色樹脂粒子(以下、正帯電粒子ともいう)に由来し、アミノ基は、アミノ基含有化合物に由来する基である。また、非帯電性着色樹脂粒子は、動的粘度が100センチストークス以下であるシリコーンオイル中に固形分濃度10wt%で分散した状態で、電極間距離を50μmとした並行平板となるITO電極間に10Vの電圧を60秒間印加した際に10nC/cm2以下の帯電量測定値を示す。
なお、本発明において「非帯電性」とは、極性の評価方法において正、負のいずれの反応を示さず、且つ上記の帯電量測定値を有するものを示す。極性の評価方法及び帯電量の測定方法については、実施例で説明する。
【0022】
正帯電性着色樹脂粒子表面に存在するシリコーン鎖としては、例えば次式で示されるオルガノシロキサン構造を有するものが挙げられる。
【化2】

(RはC1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは整数である。)
アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられる。フェニル基は、C1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
【0023】
非帯電性着色樹脂粒子は、例えば懸濁重合、乳化重合、分散重合等の公知の方法により得られたカルボキシル基を有する正帯電性を示す着色樹脂粒子(正帯電性着色樹脂粒子)にアミノ基含有化合物を反応させることにより得られる。
【0024】
(1)正帯電性着色樹脂粒子の製法
以下分散重合法による正帯電性着色樹脂粒子の製造方法の一例について説明するが、本発明は、この製造方法のみに限定されるものではない。
【0025】
正帯電性着色樹脂粒子は、ビニル単量体と分散剤を分散重合により共重合させて得ることができる。
ここで、正帯電性着色樹脂粒子は、カルボキシル基を有するが、このカルボキシル基は、分散剤と共重合するビニル単量体中に含まれるカルボキシル基を有するビニル単量体に由来してもよく、分散剤を形成する際の単量体混合物中に含まれるカルボキシル基を有するビニル単量体に由来してもよい。
【0026】
(分散剤)
正帯電性着色樹脂粒子にシリコーン鎖を導入するための、分散重合に用いられる分散剤としては、シリコーンマクロモノマーとビニル単量体とα−メチルスチレンダイマーとの共重合体が挙げられる。シリコーンマクロモノマーとしては、片末端に重合性不飽和基を有し、且つシリコーン単位(ジメチルポリシロキサン単位等のオルガノシロキサン単位)を有する種々の化合物を使用することができる。
【0027】
シリコーンマクロモノマーとしては、例えば下記式で示される構造を有するものが挙げられる。
【化3】

(R1は水素原子又はメチル基であり、R2はC2〜4のアルキレン基であり、R3は同一又は異なったC1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは整数である。)
【0028】
上記式で表される構造を有する具体的なものとしては、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
シリコーンマクロモノマーの分子量は、数平均分子量500〜40000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。シリコーンマクロモノマーは、二種以上混合して用いられてもよい。上記式中のnは、この数平均分子量を与えうる整数である。
【0029】
分散剤用のビニル単量体は、正帯電性着色樹脂粒子製造用のビニル単量体と同一であっても、異なっていてもよい。以下に分散剤用及び/又は正帯電性着色樹脂粒子用のビニル単量体について述べる。
【0030】
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、及び2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のアクリル酸やメタクリル酸のカルボン酸含有エステル類、マレイン酸、フマール酸等を挙げることができる。ビニル単量体は、1種のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0031】
カルボキシル基を有するビニル単量体の添加量は、正帯電性着色樹脂粒子を製造するための分散重合に用いられる分散剤、ビニル単量体、着色剤を混合した重合性単量体組成物100重量%中、1〜30重量%が好ましい。より好ましくは、2〜20重量%である。1重量%未満では、重合によって製造された非帯電性着色樹脂粒子の真密度が大きくなるので、分散媒中での非帯電性着色樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等が発生する場合がある。一方、30重量%を超えると、非帯電性を得るために必要なアミノ基含有化合物の量が過多となり、余剰のアミノ基含有化合物を除去するための洗浄に多くの時間を要し、生産効率が低下する場合がある。
【0032】
また、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外に広く一般に用いられている各種のビニル単量体を使用してもよい。
そのようなビニル単量体として、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン及びその誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩等が挙げられる。これら各種ビニル単量体を本発明の効果を妨げない範囲で1種もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
更に、ビニル単量体として、重合性の二重結合を2個以上有する化合物を加えてもよい。このような化合物は、架橋剤としての役割も果たす。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体のような芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイト等のジビニル化合物及び3以上のビニル基を含有する化合物等を挙げることができる。これらを単独でもしくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
分散剤用のビニル単量体の使用量は、分散剤用のシリコーンマクロモノマー100重量部に対して、2〜50重量部が好ましい。より好ましくは、5〜25重量部である。2重量部未満だと、非帯電性着色樹脂粒子との親和性が悪くなるため化学的に結合することが難しく、その結果、非帯電性着色樹脂粒子の分散安定性が悪くなる場合がある。一方、50重量部を超えると、非極性溶媒との親和性が悪くなり非帯電性着色樹脂粒子の分散安定性が悪くなる場合がある。
【0035】
分散剤用のα−メチルスチレンダイマーは、下記式で表される構造を有する付加開裂型の連鎖移動剤である。
【化4】

【0036】
α−メチルスチレンダイマーとシリコーンマクロモノマーとビニル単量体との共重合により、分子量が制御された、且つ末端に反応性の二重結合を有する重合性共重合体(リビング共重合体)が得られる。
【0037】
α−メチルスチレンダイマーの使用量は、分散剤の数平均分子量によって異なるが、一般には分散剤用のシリコーンマクロモノマー100重量部に対して0.1〜10重量部である。0.1重量部未満だと、得られる分散剤の数平均分子量が大きなりすぎる場合がある。一方、10重量部を超えると、α−メチルスチレンダイマーによる分子量制御が難しくなり、数平均分子量の低下が行えず、添加に見あった効果が得られない場合がある。
【0038】
分散剤とビニル単量体との分散重合を行うことにより、重合時の粒子同士の合着による凝集を防ぎながらシリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖が表面へ化学的に固定化された正帯電性着色樹脂粒子を得ることが可能となる。その結果として、シリコーンオイルへの分散安定性に優れるサブミクロンあるいはそれ以下の粒子径を有する非帯電性着色樹脂粒子が得られる。
【0039】
分散剤の分子量は特に限定されるものではないが、数平均分子量2000〜50000の範囲であることが好ましい。
【0040】
(分散剤の製法)
分散剤は、例えば、シリコーンマクロモノマーとビニル単量体とα−メチルスチレンダイマーとを、非極性溶媒に添加し、公知の方法により攪拌しながら加熱することにより、共重合させて得ることができる。共重合には、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、通常ビニル単量体に予め溶解されて用いられる。
【0041】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)のようなアゾ系開始剤;及び、ベンゾイルパーオキサイド、ハラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド及びt−ブチルパーベンゾエートのような過酸化物系開始剤等が挙げられる。
【0042】
重合開始剤は、モノマー組成物(シリコーンマクロモノマーとビニル単量体との混合物)中に0.1〜5重量%程度の量で含有されることが好ましい。
【0043】
上記の共重合における反応温度及び時間は、特に限定されるものではなく、例えば、用いられる重合開始剤の種類や使用量及び使用するシリコーンマクロモノマーとビニル単量体とα−メチルスチレンダイマーとの反応性等により適時調整することが可能である。反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、反応温度40〜80℃、反応時間2〜25時間の範囲である。
【0044】
また、共重合における重合雰囲気は、大気雰囲気でも不活性ガス雰囲気でもよいが、雰囲気中の酸素による重合速度の遅延及び重合阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。このような不活性ガスとしては、窒素ガス及びアルゴンガスが挙げられるが、経済性の面から窒素ガスが好ましい。
【0045】
ここで、分散剤は、分散剤の製造後に、使用した非極性溶媒から分離されても、分離されなくてもよい。分離されない場合は、非極性溶媒に分散又は溶解した分散剤を、正帯電性着色樹脂粒子の製造にそのまま使用できる。
【0046】
非極性溶媒としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルが挙げられる。
【0047】
これらのうち、作業環境等の環境への影響を考慮して、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルが好ましい。
【0048】
また、分散剤の製造において、超音波による分散を効率よく行うため、使用されるシリコーンオイルは、JIS K 2283で測定した動粘度が100センチストークス以下のオイルであることが更に好ましい。
【0049】
分散剤としての共重合体の調製に用いられる非極性溶剤の量は、モノマー組成物100重量部に対し、20〜400重量部が好ましい。より好ましくは、50〜200重量部である。
【0050】
(正帯電性着色樹脂粒子の製法)
正帯電性着色樹脂粒子の製造は、上記分散剤と、ビニル単量体とを非極性溶媒に添加混合し、分散重合させることにより行われる。
【0051】
正帯電性着色樹脂粒子の製造に使用されるビニル単量体には、分散剤の製造にカルボキシル基を有する単量体を使用しなかった場合、カルボキシル基を有する単量体を含む必要がある。分散剤の製造にカルボキシル基を有する単量体を使用した場合は、カルボキシル基を有する単量体を含んでも含まなくてもよい。
【0052】
これにより、正帯電性着色樹脂粒子はシリコーン鎖とカルボキシル基を有することとなり、その結果、表面にカルボキシル基とアミノ基の反応物を有する非帯電性着色樹脂粒子を得ることが可能になる。
ここで、ビニル単量体としては、分散剤の欄で記載したビニル単量体をいずれも使用できる。
【0053】
正帯電着色粒子の重合時の合着を防ぐため、分散重合は超音波の照射下で行うことが好ましい。また。マグネチックスターラー等の機械的攪拌装置を併用してもよい。
【0054】
分散重合反応は、前記の分散剤の製法と同じ理由から、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。より好ましい不活性ガス雰囲気は、窒素ガス雰囲気である。
【0055】
上記の分散重合における反応温度及び時間については特に限定されるものではなく、用いる重合開始剤の種類や使用量及び反応に使用するビニル単量体の量等により適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜12時間である。
【0056】
分散重合に用いられる重合開始剤は、分散剤の製法の欄で記載した重合開始剤をいずれも使用できる。
【0057】
正帯電性着色樹脂粒子を製造するための分散重合に用いられる非極性溶媒としては、分散剤の欄で挙げたものをいずれも使用できる。また、分散剤の製造工程で用いたものをそのまま用いてもよい。非極性溶媒の量は、モノマー組成物100重量部に対し、400〜1900重量部が好ましい。より好ましくは、400〜900重量部である。
【0058】
正帯電性着色樹脂粒子は、用いる分散剤の量及び用いるビニル単量体の選択により粒子径を制御することが可能である。
例えば、用いるビニル単量体に対して、用いる分散剤の割合を増やすことにより、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。また、非極性溶剤に対する親和性が高いビニル単量体を選択して用いることによっても、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。
【0059】
正帯電性着色樹脂粒子には、公知の有機顔料又は無機顔料を好適に用いることができる。
例えば、黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。これらのうち、非帯電粒子と他の色を有する電気泳動粒子とを組み合わせて紙に近い表示を得るという観点から酸化チタンが好ましい。
【0060】
正帯電性着色樹脂粒子に含まれる着色剤としての酸化チタンは、20〜90重量%が好ましい。より好ましくは、20〜60重量%である。酸化チタンの含有量が20重量%未満だと、隠蔽性が低くなることにより、白色の発色が悪くなる場合がある。一方、90重量%を超えると、樹脂の被覆が不完全となり、シリコーンオイルへの分散性が悪化する場合がある。
【0061】
更に、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等も使用できる。
また、顔料を分散させる際にカップリング剤や顔料分散剤を用いることも可能である。
【0062】
顔料は、非極性溶媒に、公知の方法により分散された後、重合処理することにより、分散剤や正帯電性着色樹脂粒子中に混合することができる。
なお、顔料を分散させる装置としては、特に限定されないが、例えばボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア型分散装置、ホモミキサー、ホモジナイザー、バイオミキサー等の剪断型分散装置、超音波分散装置等が挙げられる。
【0063】
(2)非帯電性着色樹脂粒子の製法
非帯電性着色樹脂粒子は、正帯電性着色樹脂粒子のカルボキシル基とアミノ基含有化合物のアミノ基とを反応させることで得られる。
アミノ基含有化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン、ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン等のアミノ基含有シリコーン化合物等が挙げられる。
【0064】
アミノ基含有化合物の添加量は、上記カルボキシル基を有する正帯電性着色樹脂粒子1モル当量に対して、0.2〜1.5モル当量が好ましい。より好ましくは、0.3〜1.0モル当量である。0.2モル当量未満だと、得られる非帯電性着色樹脂粒子の帯電量が10nC/cm2より高くなる場合がある。一方、1.5モル当量を超えると、添加に見合った効果が得られず、また余剰のアミノ基含有化合物を除去するための洗浄に多くの時間を要することとなり、生産効率が低下する場合がある。
【0065】
非帯電性着色樹脂粒子を得るために、正帯電性着色樹脂粒子とアミノ基含有化合物とを反応させる方法としては、公知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、正帯電性着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体にアミノ基含有化合物を添加し、加熱下アミノ基含有化合物をシリコーンオイルに溶解させた状態で攪拌し、その後、シリコーンオイルを用いて遠心沈降と洗浄を繰り返して得る方法等が挙げられる。
【0066】
非帯電性着色樹脂粒子の平均粒子径は、0.02〜1.0μmが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.8μmである。平均粒子径が0.02μm未満だと、重合時に非極性溶剤の粘度が上昇し、その結果安定した平均粒子を有する非帯電性着色樹脂粒子の製造が行えない場合がある。一方、1.0μmを超えると、シリコーンオイル中での分散安定性が悪くなる場合がある。
【0067】
また、得られた非帯電性着色樹脂粒子は、非極性溶媒から取り出してもよく、また取り出さずにそのまま使用することもできる。取り出された樹脂粒子は、必要に応じて、非極性溶媒で洗浄できる。更に、洗浄後の非極性着色樹脂粒子を再度非極性溶媒中に分散させてもよい。
【0068】
本発明の非帯電性着色樹脂粒子は、非極性溶媒(例えば、シリコーンオイル)への分散安定性に優れている。また、着色剤の含有量が高く、かつ安定した非帯電性を有している。この性質を利用して、電気泳動を利用した画像表示装置の表示素子として好適に使用できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
まず、平均粒子径の測定方法、平均分子量の測定方法、極性の評価方法及び帯電量の評価方法について説明する。
【0071】
(平均粒子径の測定方法)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定したZ平均粒子径を意味する。つまり、樹脂粒子のシリコーンオイル分散液にレーザー光を照射し、樹脂粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めたZ平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例及び比較例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用している。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することで、Z平均粒子径を算出できる。
【0072】
(平均分子量の測定方法)
平均分子量(Mw)の測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行われる。なお、平均分子量はポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。具体的には以下のようにして測定する。
試料50mgをテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットルに溶解させ、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上でクロマトグラフを用いて測定する。クロマトグラフの条件は下記の通りとする。
液体クロマトグラフ:東ソー社製、商品名「ゲルパーミエーションクロマトグラフ HLC−8020」
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel GMH−XL−L」φ7.8mm×30cm×2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:テトラヒドロフラン(THF)
キャリアーガス流量:1ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:35℃
検出:RI
注入量:100マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、870
【0073】
(極性の評価方法)
シリコーンオイル中における着色樹脂粒子の極性については、次の方法により測定を行う。
20mlのガラス瓶に、着色樹脂粒子を量り取り、そこへ着色樹脂粒子固形分が5重量%となるようにシリコーンオイル(動粘度:2センチストークス、KF−96L−2CS、信越化学社製)を加えて10gとし、これを測定用試料とする。
次に、片面に酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意する。冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒間静置する。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していればその粒子極性を負、右側のガラス板に粒子が付着していればその粒子極性を正と判断する。
【0074】
(帯電量の評価方法)
片面に酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板(幅25mm、長さ100mm、厚み0.7mm)2枚を用意する。そのうち、1枚のコート面にスペーサーとして厚み50μmのシリコーンフィルム(幅20mm、長さ25mm)を図1に示すように貼り付ける。その後、2枚のガラス板をコート面が内側になるようにした状態でスペーサーを介して挟み込んだ平行平板を冶具とし、2枚の酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板のすき間(幅25mm、長さ20mm、厚み50μm)にシリンジを用いて測定用試料を毛細管現象により浸透させる。次に冶具の両側を測定装置(AUTOLAB社製: PGSTAT128N)につなぎ、測定項目としてクロノアンペロメトリー&クロノクーロメトリーにて+10Vの電圧を60秒間印加させて得られた測定値を測定面積で除し、これを帯電量(nC/cm2)とする。
【0075】
(実施例1)
(a−1)分散剤の作製
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(信越化学社製:KF−96L−1CS、動粘度:1センチストークス)100重量部と、予め重合開始剤として2,2’−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、以下ABNV)2.0重量部を溶解したメタクリル酸メチル8.0重量部、シリコーンマクロモノマー(チッソ社製:サイラプレーンFM−0721、R1=CH3,R2=C36,R3=CH3,数平均分子量5,850)90.9重量部及びα−メチルスチレンダイマー(日本油脂社製:ノフマーMSD)1.1重量部を添加した。この混合液を窒素雰囲気下50℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。次に70℃でシリコーンオイルを除去し、反応物を得た。得られた反応物は無色透明な液体(以下分散剤)であり、トルエンを用いたGPCによる分子量測定の結果、数平均分子量は26,800であった。
【0076】
(b−1)正帯電性着色樹脂粒子の作製
ジルコニアビーズ(直径1mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF−96L−1CS)95重量部、分散剤50重量部、着色剤としての酸化チタン(石原産業社製:PT−401M)30重量部を添加し、室温にて24時間ビーズミルによる分散を行った。
次に上記溶液175重量部を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコーンオイル(信越化学社製:KF−96L−1CS、動粘度:1センチストークス)805重量部、予め重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド(日本油脂社製:パーロイルL、以下LPO)2.5重量部を溶解したアクリル酸イソステアリル5.0重量部、メタクリル酸5.0重量部、エチレングリコールジメタクリレート10重量部を添加し、窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。
なお、超音波照射は、300mlセパラブルフラスコを出力150Wの超音波洗浄機(VELVO−CLEAR社製:VS−150)の洗浄槽(内寸:L230mm×W180mm×H110mm)に浸漬し、槽内水を60℃恒温に保った状態で行った。
分散重合終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、シリコーンオイル(KF−96L−1CS)に再度分散させた。この操作を3回繰り返し、樹脂粒子を洗浄することで重合開始剤等の反応残渣を除去した。その後にシリコーンオイル(KF−96L−1CS)に分散を行い、固形分10%の着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた着色樹脂粒子は、シリコーンオイル溶媒中での平均粒子径が228nmであり、明確な正帯電性を示した。また帯電量は52nC/cm2であった。
【0077】
(c−1)アミノ基含有化合物との反応
次に攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた300mlセパラブルフラスコに上記固形分10%の正帯電性着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体100重量部とステアリルアミン5重量部を加え、攪拌下60℃で4時間反応を行った。
反応終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、エタノール/シリコーンオイル(KF−96L−1CS)の1対1の混合溶媒に再度分散させた。この操作を3回繰り返した後、更にシリコーンオイル(KF−96L−1CS)で同様の洗浄を行った。その後更にシリコーンオイル(信越化学社製:KF−96L−2CS、動粘度:2センチストークス)に分散し、揮発成分を減圧乾燥下90℃で除去した後、固形分10%の着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた着色樹脂粒子は、シリコーンオイル溶媒中での平均粒子径が232nmであり、明確な帯電極性は示さなかった。またその帯電量は2.4nC/cm2であった。
【0078】
(実施例2)
(a−2)分散剤の作製
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(KF−96L−1CS)100重量部と、予め重合開始剤としてABNV2.0重量部を溶解したメタクリル酸5.0重量部、メタクリル酸メチル3.0重量部、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM−0721)90.9重量部及びα−メチルスチレンダイマー(ノフマーMSD)1.1重量部を添加し、窒素雰囲気下50℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。次に70℃でシリコーンオイルを除去した。得られた反応物は無色透明な液体(以下分散剤)であり、トルエンを用いたGPCによる分子量測定の結果、数平均分子量は22,700であった。
【0079】
(b−2)正帯電性着色樹脂粒子の作製
ジルコニアビーズ(直径1mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF−96L−1CS)95重量部、分散剤50重量部、着色剤としての酸化チタン(PT−401M)30重量部を添加し、室温にて24時間ビーズミルによる分散を行った。
次に上記溶液175重量部を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコーンオイル(KF−96L−1CS)805重量部、予め重合開始剤としてLPO2.5重量部を溶解したメタクリル酸メチル10重量部、エチレングリコールジメタクリレート10重量部を添加し、実施例1同様に窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。
分散重合終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、シリコーンオイル(KF−96L−1CS)に再度分散させた。この操作を3回繰り返し、樹脂粒子を洗浄することで重合開始剤等の反応残渣を除去した。その後にシリコーンオイルに分散を行い、固形分10%の着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた着色樹脂粒子は、シリコーンオイル溶媒中での平均粒子径が212nmであり、正帯電性を示した。また帯電量は46.4nC/cm2であった。
【0080】
(c−2)アミノ基含有化合物との反応
次に攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた300mlセパラブルフラスコに上記固形分10%の正帯電性着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体100重量部とステアリルアミン5重量部を加え、攪拌下60℃で4時間反応を行った。
反応終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、エタノール/シリコーンオイル(KF−96L−1CS)の1対1の混合溶媒に再度分散させた。この操作を3回繰り返した後、更にシリコーンオイル(KF−96L−1CS)で同様の洗浄を行った。その後更にシリコーンオイル(KF−96L−2CS)に分散し、揮発成分を減圧乾燥下90℃で除去した後、固形分10%の着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた着色樹脂粒子は、シリコーンオイル溶媒中での平均粒子径が232nmであり、明確な帯電極性は示さなかった。またその帯電量は1.6nC/cm2であった。
【0081】
(比較例1)
(a−3)分散剤の作製
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応容器にシリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM−0721)14重量部、予め重合開始剤としてABNV0.1重量部を溶解したN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学社製:ライトエステルDM)6重量部をシリコーンオイル(KF−96L−1CS)180重量部に溶解した溶液を入れ、窒素雰囲気下60℃で6時間加熱した。反応終了後、減圧下70℃でシリコーンオイルを除去した。得られた溶液は、均一で透明であった。
【0082】
(b−3)分散剤への反応性基の付与
次に、攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応容器内に前記分散剤1.5重量部、酸化チタン(商品名;CR−90、石原産業社製)30重量部、シリコーンオイル150重量部を合わせて氷冷しながら1時間超音波照射し、酸化チタンを分散した。分散終了後4−ビニルベンジルクロリド0.3重量部を加えて40℃で3時間加熱して酸化チタンに吸着した分散剤の余剰のアミノ基をビニル基に変性した。
【0083】
(c−3)着色樹脂粒子の作製
続いて上記に2−ビニルナフタレン40重量部、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM−0721)30重量部、及び開始剤としてLPO7.5重量部を加え、65℃で10時間反応させた。反応終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、エタノール/シリコーンオイル(KF−96L−1CS)の1対1の混合溶媒に再度分散させた。この操作を3回繰り返した後、更にシリコーンオイル(KF−96L−1CS)で同様の洗浄を行った。その後更にシリコーンオイル(KF−96L−2CS)に分散し、揮発成分を減圧乾燥下90℃で除去した後、固形分10%の着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた着色樹脂粒子は、シリコーンオイル溶媒中での平均粒子径が432nmであり、明確な帯電極性は示さなかった。しかしながらその帯電量は26.6nC/cm2であった。
【0084】
(比較例2)
上記の実施例1中の(b−1)正帯電性着色樹脂粒子の作製で得られた着色樹脂粒子を比較例2とした。
【0085】
(比較例3)
上記の実施例2中の(b−2)正帯電性着色樹脂粒子の作製で得られた着色樹脂粒子を比較例3とした。
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を表1にまとめて示す。
【0086】
【表1】

MMA:メタクリル酸メチル
ABNV:2,2’−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)
LPO:ラウロイルパーオキサイド
【0087】
実施例及び比較例の結果より、一旦正帯電性の着色樹脂粒子を作製しておいてから、正帯電性着色樹脂粒子中のカルボキシル基をアミノ基含有化合物のアミノ基と反応させることにより得られる樹脂粒子は、帯電量が低く、安定した非帯電性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン鎖と、カルボキシル基とアミノ基の反応物とを表面に有し、カルボキシル基が正帯電性着色樹脂粒子に由来し、アミノ基がアミノ基含有化合物に由来する基であり、且つ動的粘度が100センチストークス以下であるシリコーンオイル中に固形分濃度10wt%で分散した状態で、電極間距離を50μmとした並行平板となるITO電極間に10Vの電圧を60秒間印加した際に10nC/cm2以下の帯電量測定値を示すことを特徴とする非帯電性着色樹脂粒子。
【請求項2】
前記アミノ基含有化合物が、脂肪族アミン又はアミノ基含有シリコーン化合物から選択される化合物である請求項1に記載の非帯電性着色樹脂粒子。
【請求項3】
前記アミノ基含有化合物のアミノ基が、前記正帯電性着色樹脂粒子1モル当量に対して0.2〜1.5モル当量含まれる請求項1又は2に記載の非帯電性着色樹脂粒子。
【請求項4】
前記シリコーン鎖が、下記による構成単位
【化1】

(RはC1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは整数である。)
を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の非帯電性着色樹脂粒子。
【請求項5】
前記非帯電性着色樹脂粒子が、着色剤としての酸化チタンを20重量%〜90重量%含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の非帯電性着色樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の非帯電性着色樹脂粒子の製造方法であって、表面にシリコーン鎖及びカルボキシル基を有する正帯電性着色樹脂粒子のカルボキシル基をアミノ基含有化合物のアミノ基と反応させて非帯電性着色樹脂粒子を得ることを特徴とする非帯電性着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の非帯電性着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させて得られるシリコーンオイル分散体。
【請求項8】
請求項7に記載のシリコーンオイル分散体を用いて得られる電気泳動表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−209447(P2011−209447A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75795(P2010−75795)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】