非常覚知ヘッド
【課題】トンネル内での異常発生を走行中の運転者に知らせて緊急停止させることを可能とする。
【解決手段】非常覚知ヘッド14はトンネル内での非常設備作動時にトンネル内の車線に向けて非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる。非常覚知ヘッド14は、加圧消火用水が供給される配管に接続されたヘッド本体42と、ヘッド本体42の前方に配置されて非常覚知パターンを放水する放水口66を設けたノズル部44と、ノズル部44の放水角度を調整すると共にノズル部44を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構を備える。
【解決手段】非常覚知ヘッド14はトンネル内での非常設備作動時にトンネル内の車線に向けて非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる。非常覚知ヘッド14は、加圧消火用水が供給される配管に接続されたヘッド本体42と、ヘッド本体42の前方に配置されて非常覚知パターンを放水する放水口66を設けたノズル部44と、ノズル部44の放水角度を調整すると共にノズル部44を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発生時にトンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、また交通量が多く距離の長いトンネルにあっては、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置やトンネル防護のための水噴霧ヘッドから水を散布させる水噴霧設備が設けられている。
【0003】
またトンネル内で事故などの異常が発生した場合、トンネル進入口に設置した信号機を赤にして進入を禁止したり、情報表示盤など異常発生を知らせるようにしている。
【0004】
ところで、このような信号機や情報表示盤を使用したトンネル進入を禁止する設備にあっては、高速道路や自動車専用道路では一般に信号機による交通規制は行われていないことから、信号機が赤に切り替わっても、それに気付くことなくトンネルに進入したり、赤信号に気付いても状況が把握できないため、そのまま進入してしまうことが想定され、重大な事故に繋がる恐れがある。またトンネルが長いと既に進入した車両には信号機は役立たない。
【0005】
また交通量の多いトンネルや距離の長いトンネルにあっては、信号機や情報表示盤が設置されるが、短いトンネルにあっては、全てに信号機や情報表示盤を設置することは困難であり、このようなトンネル内で事故や車両火災などの異常が発生した場合、異常に気付くことなくトンネルに進入し、事故などの異常発生現場に近づいてから緊急停止することとなり、重大な事故に繋がる恐れがある。
【0006】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、トンネル内で事故や車両火災などの異常が発生し、近くに設置されている消火栓装置からノズル付きホースを引き出して放水したような場合、非常覚知ヘッドからトンネル内の車線方向に放水を行って非常覚知パターンを形成し、運転者は非常覚知パターンを見て緊急停止し、また非常覚知パターンに気付かずに突っ切ったとしても、車両に所定パターンの水がかることで異常を知って緊急停止し、異常発生場所に進入する前に確実に停止し、二次災害の発生を未然に防止できる非常用設備を提案している(特願2010−093910号、同2010−093912号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−211279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トンネル内に非常覚知ヘッドを設置して非常覚知パターンを放水する場合、非常覚知ヘッドはトンネルを走行している車両運転者に対し視覚的に有効な放水軌跡を形成する必要があり、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて様々に変化させる必要がある。
【0009】
ところで、従来から非常用設備としてトンネルに設置されている水噴霧設備で使用している水噴霧ヘッドは、トンネル内の車線を横断する方向に噴霧するように配管に固定されている。これは水噴霧の分布範囲が水噴霧ヘッドの性能に依存しており、トンネル天井に当たらない程度に設置高さを可変するが、噴霧幅や到達距離はヘッドの方向で決定される。このため水噴霧ヘッドはヘッド方向が変化しないように水噴霧ヘッドを配管に固定設置している。
【0010】
このようなトンネル非常設備の1つである水噴霧ヘッドと同様に、非常覚知ヘッドについても配管にヘッド方向を固定した状態で設置することが考えられている。しかし、非常覚知ヘッドの方向は運転者に非常を気づかせる目的のもので水噴霧ヘッドとは性質が異なるものであり、放射方向は一義的に決められず、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて様々に変化させる必要があり、配管にヘッド方向を固定して非常覚知ヘッドを設置していると、現場に応じて配管や継手の設置角度を変えてヘッド方向を調整する必要があり、放水方向の調整を含む設置工事や設備設計が煩雑になるという問題がある。
【0011】
本発明は、放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて調整可能して放水方向の調整を含む設置工事を容易にする非常覚知ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、トンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに於いて、
加圧水が供給される配管に接続されたヘッド本体と、
ヘッド本体の前方に配置されて非常覚知パターンを放水する放水口を設けたノズル部と、
ノズル部の放水角度を調整すると共にノズル部を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、角度調整機構は、
ノズル部の流入側に形成した球状軸部と、
ノズル本体の先端開口部に形成され、ノズル部の球状軸部を摺動自在に着座する球状軸受け部と、
ノズル本体の先端外側に形成されたネジ部に螺合し、緩め状態でノズル部の角度調整を可能とし、締め込み状態でノズル部を固定するナット部材と、
を備える。
【0014】
この場合、ノズル部は筒部材であり、筒部材の先端に加圧水の放水により離脱されるキャップ部材を装着する。
【0015】
角度調整機構は、
ノズル本体から延在し、軸方向に加圧水を通す内部流路を形成すると共に軸部外周に内部流路に連通穴した環状溝を形成した軸部と、
軸部に回転自在に配置され、軸部の環状溝から外部に連通したノズル部を構成するノズル穴を形成した回転リング部材と、
回転リング部材のノズル穴を任意の方向に調整した状態で軸部の固定する固定ネジ部材と、
を備える。この場合、軸部に複数の回転リング部材を回転自在に配置しても良い。
【0016】
ノズル部は放水口から棒状、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧のいずれかの形態をもつ非常覚知パターンを放水する。
【0017】
ノズル部の放水口内面に撥水性のコーティングを施す。
【0018】
非常覚知ヘッドを、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体から引き出された配管に1又は複数設ける。
【0019】
非常覚知ヘッドを、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体の内部に1又は複数設置し、筐体前面の放水開口から外部に向けて放水する。
【0020】
装置筐体は、トンネル内に設置され、ノズル付きホースに加圧水を供給して放水させる消火栓装置の装置筐体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非常覚知ヘッドによれば、ヘッド本体は配管に固定配置されるが、ヘッド本体に対し放水口を供えたノズル部は放水方向を調整自在に設けられており、配管や継手の設置角度を変えてヘッド方向を調整することなく、ノズル側の向きを必要に応じて変えることで、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅や照明装置との視覚的な干渉防止等に応じて様々に変化させる調整が簡単且つ確実にでき、運転者が非常を確実に認識できる方向に放水させることができ、放水方向の調整を含む設置工事を容易に行うことができる。現場の設置状況に応じてヘッドを選択して設置することも可能となる。
【0022】
このように非常覚知ヘッドからの放水方向が簡単に調整できることで、トンネルを走行している車両運転者から見て視覚的に強く捉えることのできる有効な放水軌跡を形成することができ、運転者は非常覚知パターンを見て緊急停止し、また非常覚知パターンに気付かずに突っ切ったとしても、車両に水がかることで異常を知って緊急停止し、異常発生場所に侵入する前に確実に停止し、二次災害の発生を未然に防止できる。
【0023】
また、調整後にあってはヘッド本体に対しノズル部が固定されることで、調整した方向に確実に非常覚知パターンを放水することができる。
【0024】
また、ヘッド部として筒部材を使用している場合、筒部材にキャップ部材を装着しておくことで、トンネル内に剥き出しで設置していても、埃や異物の付着で放水口が詰まることを確実に防止できる。またキャップ部材は消火用水の放水で外れることから、放水時にキャップ部材を外すような作業は必要ない。
【0025】
またノズル本体側の軸部にノズル穴を形成した回転リング部材を設けた角度調整機構にあっては、軸部を中心に360度の範囲で調整でき、調整角度範囲を大きくできる。
【0026】
また軸部にノズル穴を形成した回転リング部材を複数設けることで、複数の異なる方向に非常覚知パターンを放水するマルチ非常放水ヘッドとして使用できる。
【0027】
また、放水口の内面に撥水性のコーティングを施しておくことで、結露などによる水分の付着を抑制し、錆の発生やゴミの付着により放水口の詰まりを防止することができる。
【0028】
また、非常感知ヘッドは消火栓装置などの装置筐体から引き出した配管に接続してもよいし、装置筐体内に設置して前面の放水開口から放水するようにしてもよく、いずれについても簡単且つ容易に放水方向を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による非常覚知ヘッドを備えた消火栓装置の設置状態をトンネル平面で示した説明図
【図2】本発明の非常覚知ヘッドの実施形態を示した説明図
【図3】消火栓装置からの配管に非常感知ヘッドを配置した説明図
【図4】図3の非常覚知ヘッドの配管接続部分を取り出して示した説明図
【図5】図3の消火栓装置に設けた覚知放水系統を示した説明図
【図6】消火栓装置からの配管に複数の非常感知ヘッドを配置した説明図
【図7】図6の非常覚知ヘッドの配管接続部分を取り出して示した説明図
【図8】消火栓装置の筐体内に非常感知ヘッドを配置した説明図
【図9】非常覚知ヘッドの棒状パターンによる横放水を示した説明図
【図10】非常覚知ヘッドの棒状パターンによる斜め放水を示した説明図
【図11】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるクロス放水を示した説明図
【図12】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるマルチ放水を示した説明図
【図13】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるマルチ放水の他の例を示した説明図
【図14】ロータリー型角度調整機構をもつ本発明による非常覚ヘッドの他の実施形態を示した説明図
【図15】放水口を複数もったロータリー型角度調整機構をもつ本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明による非常覚知ヘッドを備えた消火栓装置の設置状態をトンネル平面で示した説明図である。
【0031】
図1において、道路22が通るトンネル12内の監視員通路が設けられた一方の側壁には、例えば50メートル間隔で消火栓装置10が設置されている。消火栓装置10は扉内にノズル付ホースを収納しており、火災時に消火栓扉を開いてノズル付のホースを引き出し、消火栓弁開放レバーを操作することで放水を行う。消火栓装置10からのノズル付ホースは、トンネル走行方向の左右25mの範囲に放水できるように引き出すことができる。
【0032】
消火栓装置10には、火災時に操作して火災検出信号を出力する発信機が設けられ、発信機の近くには発信機設置場所を示す火災表示灯と、発信機の押釦操作に対する応答表示を行う応答表示灯が設けられている。消火栓装置10にポンプ設備20からの給水配管16が接続され、防災受信盤18と信号線接続している。
【0033】
本実施形態にあっては、トンネル12内に設置している消火栓装置10に、トンネル10内の道路22を横切る方向に放水して非常覚知パターンを形成する非常覚知ヘッド14を設けている。非常覚知ヘッド14に対応して消火栓装置10内には制御装置11が設けられ、トンネル12内での非常設備作動時に弁装置を開駆動制御して非常覚知ヘッド14から放水させる。
【0034】
ここで、制御装置11は次の場合に非常覚知ヘッド14から放水する。
(1)消火栓扉の開放を検出した場合
(2)消火栓弁の開放を検出した場合
(3)消火器扉の開放を検出した場合
(4)消火器の取り出しを検出した場合
(5)火災検知器により火災を検出した場合
(6)消火栓等に設けられた発信機の非常押し釦を操作した場合
(7)水噴霧設備の放水を放水開始前に知らせたい場合
(8)センタ装置側からの進入禁止指示を受けた場合、
【0035】
このような非常設備作動を検出するため、消火栓扉検出スイッチ、消火栓弁開放検出スイッチ、消火器扉検出スイッチ、消火器取り出し検出スイッチ、水噴霧放水検出スイッチなどが必要に応じて設けられる。勿論、これ以外の場合にも必要に応じて非常覚知ヘッド14からの放水を行うことができる。
【0036】
各消火栓装置10の制御装置11は信号線を介してセンター等に配置された防災受信盤18に接続されており、各スイッチの状態信号が防災受信盤18で監視され、状態変化を警報や表示を行うことができる。
【0037】
防災受信盤18は、火災時に消火栓装置10の制御装置11に制御信号を送ることもでき、例えばある消火栓装置の状態変化を検出した時に他の消火栓装置10の制御装置11に制御信号をおくって、状態表示や弁装置の駆動などの各種の制御を行うことができる。
【0038】
図1にあっては、入口から4台目の消火栓装置10の付近で車両事故などにより火災が発生した場合を示しており、火災発生場所に近い消火栓装置10の消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出して放水した場合、例えば消火栓扉の開放検出により制御装置11が弁装置を開制御し、消火栓装置10の外部に配管接続している非常覚知ヘッド14から例えば棒状パターン15による覚知放水を行う。棒状パターン15による覚知放水の方向はトンネル10内の道路を真横に横切る方向としている。なお、破線の棒状パターン15aに示すように、斜め前方に向けて放水してもよい。なお、覚知放水の制御は防災受信盤18が制御装置11に制御信号を送信して行っても良い。
【0039】
このような非常覚知ヘッド14からの放水によりトンネル内の道路22を横切る方向に非常覚知パターンを形成し、火災発生場所に進入してくる車両の運転者に前方で異常が発生していることを覚知させ、火災発生場所の手前で確実に制動停止させることが可能となる。
【0040】
即ち、火災場所に向かってくる車両の運手者は、道路を横切る棒状パターン15の放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車両側面を横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0041】
また棒状パターン15による放水としたことで、非常覚知ヘッド14からの放水量を異常発生の覚知に最小限必要な量、例えば消火栓装置に備えるノズル付きホースによる放水量と同程度もしくはそれ以下の量に抑え、ポンプ設備20側に設けている貯水槽の貯水量に制約があっても必要な時間に亘り覚知放水ができ、かつ確実に運転者に異常を認識させることができる。
【0042】
また覚知放水は、火災発生場所の消火栓装置10に設けた非常覚知ヘッド15からの放水に限定されず、その手前の区間に設けた1又は複数の消火栓装置10の非常覚知ヘッド14からも放水する連動覚知放水を行っても良く、火災発生場所に向かってくる複数台の車両に同時に異常発生を覚知させることができる。このような連動覚知放水は、例えば発信機釦の操作で火災信号を受信した防災受信盤18からの遠隔制御で行う。両面通行の場合は火源位置を中心に両側に配置された非常覚知ヘッド15から放水をおこなうようにしてもよい。
【0043】
図2は本発明による非常覚知ヘッドの実施形態を示した説明図であり、図2(A)に外観を示し、図2(B)に断面を示している。
【0044】
図2において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体42、ノズル部44及びナット部材46で構成される。ヘッド本体42は内部軸方向に流入口48と内部流路50を形成しており、流入口48の外側に配管接続用の接続ネジ部52を形成し、これに続く本体外側をボルトに相当する6面体としている。
【0045】
ヘッド本体42の内部流路50が開口する先端にはノズル部44が配置される。ノズル部44は流入側に球状軸部54を形成し、球状軸部54から前方に放水穴64を形成した筒部材62を一体に形成し、放水穴64の先端に放水口66を開口している。
【0046】
ノズル部44の球状軸部54はヘッド本体42の先端に形成した球状軸受け部56に回動自在に配置され、ヘッド本体42の先端外側のネジ部58にナット部材46を締めこむことで、ナット部材46のテーパ開口部60によりノズル部44の球状軸部54を回動自在に支持する。
【0047】
このようにノズル部44の放水角度を調整すると共にノズル部44を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構が、ノズル部44の球状軸部54、ノズル本体42の球状軸受け部56、ナット部材46により構成される。この角度調整機構によるノズル部44の放水角度の調整範囲は、図示のヘッド本体42の軸心線を中心に最大放水角θとなる円錐範囲となり、例えばθ=30〜45°程度となる。
【0048】
また、ノズル部44の筒部材62にはゴムやプラスチックなどで作られたキャップ68が装着され、放水口66に対するゴミ等の異物の付着による詰まりを防止する。キャップ68は加圧消火用水の放水により筒部材62から離脱されるので、手で外す必要なない。また、キャップ68に紐をつけて飛ばないようにしておくことで、放水終了後に再使用することができる。
【0049】
本実施形態のノズル部44はストレートな放水穴64を形成していることから、非常覚知パターンは棒状パターン(ソリッドパターン)となるが、放水口66の形状を変えることで、放水口66から1又は複数のホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧などの様々な形態をもつ非常覚知パターンを放水することができる。
【0050】
また、ノズル部44の放水口内面、即ち放水穴64にはフッ素系又はシリコン系の樹脂を用いた撥水性のコーティングを施している。この撥水性のコーティングにより結露や放水で付着した水をはじき、錆の発生やゴミの付着を抑制し、放水口の詰まりを防止することができる。なお、球状軸部54と球状軸受け部56の間にテフロン(R)などのシール材を設けても良い。ノズル部44に形成する放水口66は1個に限らず複数個設けて、複数の放水パターンを所定角度毎にずらして形成して放水し、運転者が非常覚知を認識しやすくしてもよい。
【0051】
図3は図1に示したトンネルに設置された消火栓装置の説明図である。図3において、消火栓装置10は、筐体26の前面に配置した化粧板28の右側の扉開口に、消火栓扉30と保守扉32が設けており、その内部が消火用ホースを収納するホース収納空間及び消火栓弁などのバルブ類収納空間となっている。
【0052】
消火栓扉30は下側のヒンジを中心に前方に開閉する。消火栓扉30の上には、上側を回動軸として上向きに開閉する保守扉32が設けられており、点検時に消火栓扉30を開いて内側のロックを外すことで開くことができる。
【0053】
筐体26の左側扉開口の右側には通報装置板34が設けられ、ここに赤色表示灯36、発信機38、及び応答ランプ40を設けている。赤色表示灯36は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機38を押してスイッチボタンをオンすると、発信信号が監視室に設置された防災受信盤18に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が図1の防災受信盤18から送られて、応答ランプ40を点灯する。
【0054】
通報装置板34の左側には消火器扉42が設けられ、消火器扉42に対応した筐体の内部を消火器収納空間とし、例えば2本の消火器を収納している。消火器扉42は左側を回動軸として前方に開くことができる。また、消火器扉44の下側には覗き窓44が設けられ、外部から筐体内部に設置される消火器の収納状態を確認できるようにしている。
【0055】
消火栓装置10の筐体上部からはヘッド配管70が引き出され、ヘッド配管70の先端にエルボなどの継手を使用して非常覚知ヘッド14を接続している。
【0056】
消火栓装置10にあっては、非常覚知ヘッド14からの放水のため、消火栓扉30及び/または消火器扉42に扉開を検出する検出スイッチを必要に応じて設けることになる。また消火器45の取り出し検出は、例えば消火器45を載せる部分に検出スイッチを設け、消火器の取り出しで作動するようにする。
【0057】
図4は図3に示した非常覚知ヘッドの配管接続部分を平面で取り出して示している。図4において、ヘッド配管70の先端にはエルボ72が設けられ、エルボ72で直角に立ち上げた後、エルボ74でトンネル車線方向に向け、エルボ74の先端に本発明による非常覚知ヘッド44を接続している。ヘッド本体42は配管側に固定されているが、ナット部材46を緩めることでノズル部44の向きを動かすことができ、ノズル部44の可動範囲内で任意の放水方向に向け、この状態でナット部材46を締め付けて固定することになる。ノズル部44は交換可能であり、非常覚知に最適な流量または放水パターンを形成するノズルに交換することができる。
【0058】
図5は図3の消火栓装置に設けたノズル放水系統及び覚知放水系統の実施形態を示した説明図である。図5において、ノズル放水系統は、消火栓装置内に収納されたノズル付きのホースを外部に引き出すなど消火作業を行うための設備系統であり、給水弁76、消火栓弁78、自動調圧弁80などで構成される。覚知放水系統は、火災を検出した場合など運転者に非常覚知を行うための設備系統であり、非常覚知放水弁82、自動排水弁84及び圧力センサ86などで構成される。
【0059】
ノズル放水系統において、消火栓弁78は給水源から伸びた給水配管に分岐接続され、消火栓弁開閉レバー75の操作により開閉される。自動調圧弁80は消火栓弁78の2次側に接続され、ホース側の放水圧力を規定圧に調整する。
【0060】
覚知放水系統において、非常覚知放水弁82は電動弁を使用しており、消火栓弁78の1次側から分岐した配管に設けられ、2次側を外部に引き出したヘッド配管70を接続し、図1に示した制御装置11により開閉制御される。ヘッド配管70の先端には非常覚知ヘッド14が接続されており、必要に応じて点線の非常覚知ヘッド14に示すように、複数台設けることもできる。
【0061】
また非常覚知放水弁82は2次側に設けた圧力センサ86の検出圧力を所定の放水圧力に保つように図1の制御装置11により制御され、これによって非常覚知ヘッド14からの放水圧力を規定圧に調整できる。
【0062】
自動排水弁84は配管内の水圧が無いときに開放し、圧力が加わると閉鎖する弁であり、覚知放水後に非常覚知放水弁82を閉鎖した場合に開放し、ヘッド配管70内の水を排水する。
【0063】
図6は消火栓装置から引き出したヘッド配管70に3台の非常覚知ヘッド14A,14B,14Cを接続した場合であり、図7に非常覚知ヘッドの配管接続部分を平面で取り出して示している。
【0064】
図7において、ヘッド配管70の先端にはエルボによって3台の非常覚知ヘッド14A,14B,14Cが接続固定されている。この固定状態で非常覚知ヘッド14A,14B,14Cのヘッド本体42は配管側に固定されているが、ナット部材46を緩めることでノズル部44を動かすことができ、ノズル部44の可動範囲内で例えば矢印A,B,Cに示す任意の方向に向け、この状態でナット部材46を締め付けて固定する。放水方向を示す矢印A,B,Cは、トンネル横の車両進入側から見た放水角度が統一した水平方向の角度で放水しても良いが、それぞれ放水角度を異ならせて、消火栓装置から近い位置、中間位置、反対側のトンネル内壁である遠い位置に向くように放水角度を異ならせて放水してもよい。
【0065】
図8は消火栓装置の筐体内に非常覚知ヘッドを配置した説明図である。図8において、消火栓装置10の前面上部に設けている保守扉32の左下側に放水開口90を形成し、その背後となる筐体内に、放水口を前方に向けて例えば3台の非常覚知ヘッド14を配置している。非常覚知ヘッド14は筐体内で図7に示したようにヘッド配管に接続固定されており、ノズル部を任意の方向に調整して固定することができる。
【0066】
このように消火栓装置10の筐体内に非常覚知ヘッド14を配置することで、外部に対する配管作業が不要となり、消火栓装置10の機能の一つとして非常覚知ヘッド14を設けることができる。
【0067】
また図8にあっては、放水開口90は開いたままであるが、放水開口90に覚知放水ヘッド14からの放水を受けて開く放水扉を設けるようにしても良い。非常覚知ヘッド14を保守扉32に設けているが、これに限らず化粧板28(例えば保守扉28よりも上方の化粧板28の枠)に配置しても良い。
【0068】
なお、図6や図8の実施形態においては、消火栓扉30を開放して消火作業を行う人の邪魔にならないように放水方向を調節しておく必要がある。消火作業を行っている消火栓装置の非常覚知ヘッド14からは放水せずに、その隣の非常覚知放水弁82を開放して隣の非常覚知ヘッド14から非常覚知を行う様に防災受信盤18から制御しても良い。
【0069】
次に本実施形態の非常覚知ヘッドによる非常覚知パターンについて図6乃至図10を参照して説明する。
【0070】
図9は非常覚知ヘッドの棒状パターンによる横放水を示した説明図であり、図9(A)はトンネル断面、図9(B)はトンネル平面を示している。
【0071】
図9において、非常覚知ヘッド14は放水量を覚知に必要な必要最小限とするため棒状パターン15で放水しており、本実施形態にあっては、図9(A)のトンネル断面に示すように、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続したトンネル側壁の非常覚知ヘッド14から道路を真横に横切る方向に棒状パターン15で放水し、且つ図9(B)のトンネル平面に示すように、走行方向に対しても真横に横切る方向に棒状パターン15を放水している。
【0072】
このような棒状パターン15の横放水により、トンネル12内を走行してくる車両は進行方向の道路を横切る棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体側面を横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0073】
また火災発生によりトンネル上部に煙層が形成されるが、非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15は道路22の路面に近い位置での横放水であるため、放水によって煙層が乱されてトンネル全体に煙が広がってしまうことはない。
【0074】
さらに、棒状に放水された消火用水は、トンネルの対向壁面に放水されるため、壁面下方に設けた排水口に排水されるため、道路に滞留することがないため、車両が滑るなどの二次災害を極力防ぐことも可能となる。
【0075】
棒状パターン15の高さは特に限定されないが、一般的な車両の高さよりも少し上の高さ位置に設定した場合は、通行する車に消火用水がかかることがなく、運転者の視界を妨げることがない。
【0076】
図10は非常覚知ヘッドの棒状パターンによる斜め放水を示した説明図である。本実施形態にあっては、図10(A)のトンネル断面に示すように、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続したトンネル側壁の非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15を道路を横切る方向に放水し、且つ図10(B)のトンネル平面に示すように、走行方向に対して棒状パターン15を斜め方向に放水している。
【0077】
このような棒状パターン15の斜め放水により、トンネル12内を走行してくる車両は進行方向から斜めに横切るから棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体を斜めに横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0078】
また火災発生によりトンネル上部に煙層が形成されるが、非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15は道路22の路面に近い位置での斜め放水であるため、放水によって煙層が乱されてトンネル全体に煙が広がってしまうことはない。
【0079】
図11はトンネル内に非常覚知ヘッドを配置した実施形態における棒状パターンによるクロス放水を示した説明図である。
【0080】
図11(A)のトンネル断面において、トンネル12の側壁に非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した非常覚知ヘッド14を配置し、更に、ヘッド配管24をトンネル上部から反対側のトンネル側面に配管し、そこに非常覚知ヘッド14を配置し、トンネル両側の側壁に設置した非常覚知ヘッド14から道路を横切る方向に棒状パターン15を放水することでクロス放水とし、且つ図11(B)のトンネル平面に示すように、両側に配置した非常覚知ヘッド14から走行方向に対しても斜めに棒状パターン15を放水することでクロス放水としている。
【0081】
このような棒状パターン15の2本のクロス放水により、トンネル内を走行してくる車両は進行方向にクロスして横切る棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体を斜めに横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0082】
またトンネル走行方向に所定間隔で配置されている複数の非常覚知装置10に設けた非常覚知ヘッド14から同時にクロス放水を行うと、トンネル前方に複数のクロス放水パターンが浮かび上がり、異常事態の発生を確実に覚知できる。またクロス放水は路面に近い位置の放水となるため、トンネル上部に形成される煙層を乱すようなことはない。また、クロス放水においても、運転者の視界を妨げることを防ぐことができる。
【0083】
図12は複数の非常覚知ヘッドを配置した実施形態における棒状パターンによるマルチ放水を示した説明図であり、3台の非常覚知ヘッドを設けた場合を例にとっている。
【0084】
図12(A)のトンネル断面においては、トンネル12の側壁に非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した3台の非常覚知ヘッド14を配置し、道路22を横切る方向に棒状パターン15を放水している。また図12(B)のトンネル平面にあっては、3台の非常覚知ヘッド14から棒状パターン15を、真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。
【0085】
このような棒状パターン15を用いたマルチ放水により、トンネル内を走行してくる車両は棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知することができる。一本の放水パターンよりも放水により気づきやすい。もし放水に気付かなかったとしても放水を車体に受けるようにパターン位置を設定した場合は、車体に受けた音や水滴で異常事態の発生を覚知することができる。また路面に近い位置の放水とすれば、トンネル上部に形成される煙層を乱すようなことはない。たとえ、煙層に放水パターンが形成されたとしても、棒状パターンであるから煙層をかき乱す程の威力がない。
【0086】
図13は複数の非常覚知ヘッドを配置した棒状パターンによるマルチ放水の他の実施形態を示した説明図であり、3台の非常覚知ヘッドを設けた場合を例にとっている。
【0087】
本実施形態では、図13(A)のトンネル断面についても、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した3台の非常覚知ヘッド14から、道路22を真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。また図13(B)のトンネル平面についても、3台の非常覚知ヘッド14から棒状パターン15を、真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。
【0088】
このような棒状パターン15を用いたマルチ放水により、トンネル内を走行してくる車両は棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも放水を車体に受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0089】
なお、図9乃至図13に示した非常覚知ヘッド14の棒状パターンによる放水は、水平放水以外にトンネル上部の煙層を乱さない範囲での上向き放水や複数の非常覚知ヘッドからのマルチ放水を交差されたクロス放水など適宜の放水パターンとすることができる。
【0090】
図14は本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図であり、ロータリー型の放水角度機構を備えたことを特徴とし、図14(A)に外観を示し、図14(B)に断面を示す。
【0091】
図14において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体92、ノズル部として機能する回転リング部材94及びストッパ96で構成される。
【0092】
ヘッド本体92は内部軸方向に流入口98と内部流路100を形成しており、流入口98の外側に配管接続用の接続ネジ部102を形成し、これに続く本体外側をボルトに相当する6面体としている。
【0093】
ヘッド本体92の先端から軸部95が延在され、軸部95内には軸方向に加圧消火用水を通す内部流路100が形成され、軸部95の外周には内部流路100に連通穴104により連通した環状溝106を形成している。
【0094】
軸部95に対しては回転リング部材94が回転自在に配置される。回転リング部材94は両側にテフロン(R)などのベアリングワッシャ112を配置して回動自在とし、また軸部95に対し隙間を持つリング穴により回転自在に配置され、軸部95の環状溝106に相対した位置にノズル穴108を径方向に設け、回転リング部材94の外周面に放水口110を開口している。
【0095】
軸部50の外周に形成した環状溝106の両側にはOリング114が配置され、回転リング部材94のリング穴との隙間から外部に消火用水が漏れださないようにしている。
【0096】
また回転リング部材94の径方向に形成されたネジ穴には固定ネジ118がはめこまれており、固定ネジ118を緩めることで回転リング部材94を回転可能として放水口110を360°の範囲の任意の方向に調整し、固定ネジ118を締めることで調整した角度に固定することができる。
【0097】
軸部95の先端にはストッパ96がねじ込み固定され、軸部95に対し回転リング部材94の回転自在に保持している。
【0098】
また本実施形態の回転リング部材94はストレートな放水穴108を形成していることから、非常覚知パターンは棒状パターンとなるが、放水口110の形状を変えることで、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧などの様々な形態をもつ非常覚知パターンを放水することができる。
【0099】
また、放水口110の内面、即ち放水穴108にフッ素系又はシリコン系の樹脂を用いた撥水性のコーティングを施し、結露や放水で付着した水をはじき、錆の発生やゴミの付着を抑制し、放水口の詰まりを防止する。
【0100】
このようなロータリー型の角度調整機構をもつ非常覚知ヘッド14によれば、軸部95を中心に360°の範囲で放水方向を調整することができる。即ち、図14のように横に配置すれば、垂直周りの広い範囲で放水方向が調整でき、また、縦に配置すれば、水平周りの広い範囲で放水方向が調整できる。
【0101】
図15はロータリー型の角度調整機構を備えた本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図であり、放水口を3つ設けた3連構造としたことを特徴し、図15(A)に外観を示し、図15(B)に断面を示す。
【0102】
図15において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体92、ノズル部として機能する放水口110を設けた3つの回転リング部材94及びストッパ96で構成される。軸部95に設けた回転リング部材94による角度調整機構は、図14の実施形態と同じであり、同じ角度調整機構を軸部95に3つ並べて配置している。
【0103】
このような3連の放水口110をもつ非常覚知ヘッド14によれば、ヘッド配管に接続するだけで、図7の3台の非常覚知ヘッド14を個別配管接続したと同じ3連放水ができ、設置スペースの節減と取り付け作業を簡単にすることができる。
【0104】
なお、上記の実施形態は非常覚知パターンを継続的に放水する場合を例にとっているが、非常覚知パターンを断続的或いは周期的に放水するようにしてもよい。このような断続的又は周期的な覚知放水により、覚知機能を高めると同時に放水量を低減できる。また、運転者の視界を防ぐことができる。道路面を必要以上に濡らすことを防ぐことができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、例えば扉を開放した消火栓装置の非常覚知ヘッドから放水をおこなうようにしているが、これに限らず、防災受信盤18が扉開放信号等の起動条件が確立した信号を受けて、扉を開放した消火栓装置よりも車両進入側に配置された消火栓装置の非常覚知ヘッドから放水制御を行ってもよく、火源よりも手前側で運転者に対して非常覚知を行うようにしてもよい。また、複数の消火栓の非常覚知ヘッドから放水をおこなうようにしてもよい。また、消火栓装置の消火時の操作に悪影響を与えないために、扉を開放した消火栓装置の非常覚知ヘッドからは放水を行わずに、その消火栓装置を除いた、もしくはそれより車両進入側に設置された非常覚知ヘッドから放水して非常の覚知を行うようにしても良い。
【0106】
非常覚知ヘッドは必ずしも消火栓装置と組み合わせて配置する必要はなく、消火栓装置の間に独立して設けられても良い。この場合は消火栓装置の制御装置11とは別の非常覚知ヘッド用の制御装置を別途備えて防災受信盤18との伝送により非常覚知を行っても良い。
【0107】
非常覚知放水弁82を開放して非常覚知ヘッド14による非常覚知放水中に、同一消火栓装置の消火栓扉が開放されて消火作業が開始された場合に、非常覚知放水が消火作業に悪影響を及ぼす場合には非常覚知放水弁82を閉鎖して非常覚知放水を停止させてもよい。例えば自動調圧弁80の二次側に圧力センサを設置して消火時の放水圧を測定して非常覚知を制御するようにしても良い。圧力センサ86が所定閾値よりも低くなった場合に消火作業がされていると判断して非常覚知放水を停止するようにしても良い。
【0108】
また非常覚知ヘッドを動かすことで、スイング放水や旋回放水を行って覚知機能を高めるようにしても良い。
【0109】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0110】
10:消火栓装置
11:制御装置
12:トンネル
14:非常覚知ヘッド
15:棒状パターン
26:筐体
42,92:ヘッド本体
44,94:ノズル部
46:ナット部材
48,98:流入口
50,100:内部流路
54:球状軸部
56:球状軸受け部
58:ネジ部
60:テーパ開口部
62:筒部材
64,108:放水穴
66,110:放水口
68:キャップ
70:ヘッド配管
72,74:エルボ
78:消火栓弁
80:自動調圧弁
82:非常覚知放水弁
84:自動排水弁
86:圧力センサ
90:放水開口
95:軸部
96:ストッパ
104:連通穴
106:環状溝
112:ベアリングワッシャ
114:Oリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発生時にトンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、また交通量が多く距離の長いトンネルにあっては、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置やトンネル防護のための水噴霧ヘッドから水を散布させる水噴霧設備が設けられている。
【0003】
またトンネル内で事故などの異常が発生した場合、トンネル進入口に設置した信号機を赤にして進入を禁止したり、情報表示盤など異常発生を知らせるようにしている。
【0004】
ところで、このような信号機や情報表示盤を使用したトンネル進入を禁止する設備にあっては、高速道路や自動車専用道路では一般に信号機による交通規制は行われていないことから、信号機が赤に切り替わっても、それに気付くことなくトンネルに進入したり、赤信号に気付いても状況が把握できないため、そのまま進入してしまうことが想定され、重大な事故に繋がる恐れがある。またトンネルが長いと既に進入した車両には信号機は役立たない。
【0005】
また交通量の多いトンネルや距離の長いトンネルにあっては、信号機や情報表示盤が設置されるが、短いトンネルにあっては、全てに信号機や情報表示盤を設置することは困難であり、このようなトンネル内で事故や車両火災などの異常が発生した場合、異常に気付くことなくトンネルに進入し、事故などの異常発生現場に近づいてから緊急停止することとなり、重大な事故に繋がる恐れがある。
【0006】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、トンネル内で事故や車両火災などの異常が発生し、近くに設置されている消火栓装置からノズル付きホースを引き出して放水したような場合、非常覚知ヘッドからトンネル内の車線方向に放水を行って非常覚知パターンを形成し、運転者は非常覚知パターンを見て緊急停止し、また非常覚知パターンに気付かずに突っ切ったとしても、車両に所定パターンの水がかることで異常を知って緊急停止し、異常発生場所に進入する前に確実に停止し、二次災害の発生を未然に防止できる非常用設備を提案している(特願2010−093910号、同2010−093912号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−211279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トンネル内に非常覚知ヘッドを設置して非常覚知パターンを放水する場合、非常覚知ヘッドはトンネルを走行している車両運転者に対し視覚的に有効な放水軌跡を形成する必要があり、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて様々に変化させる必要がある。
【0009】
ところで、従来から非常用設備としてトンネルに設置されている水噴霧設備で使用している水噴霧ヘッドは、トンネル内の車線を横断する方向に噴霧するように配管に固定されている。これは水噴霧の分布範囲が水噴霧ヘッドの性能に依存しており、トンネル天井に当たらない程度に設置高さを可変するが、噴霧幅や到達距離はヘッドの方向で決定される。このため水噴霧ヘッドはヘッド方向が変化しないように水噴霧ヘッドを配管に固定設置している。
【0010】
このようなトンネル非常設備の1つである水噴霧ヘッドと同様に、非常覚知ヘッドについても配管にヘッド方向を固定した状態で設置することが考えられている。しかし、非常覚知ヘッドの方向は運転者に非常を気づかせる目的のもので水噴霧ヘッドとは性質が異なるものであり、放射方向は一義的に決められず、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて様々に変化させる必要があり、配管にヘッド方向を固定して非常覚知ヘッドを設置していると、現場に応じて配管や継手の設置角度を変えてヘッド方向を調整する必要があり、放水方向の調整を含む設置工事や設備設計が煩雑になるという問題がある。
【0011】
本発明は、放水方向をトンネル形状や車線幅等に応じて調整可能して放水方向の調整を含む設置工事を容易にする非常覚知ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、トンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに於いて、
加圧水が供給される配管に接続されたヘッド本体と、
ヘッド本体の前方に配置されて非常覚知パターンを放水する放水口を設けたノズル部と、
ノズル部の放水角度を調整すると共にノズル部を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、角度調整機構は、
ノズル部の流入側に形成した球状軸部と、
ノズル本体の先端開口部に形成され、ノズル部の球状軸部を摺動自在に着座する球状軸受け部と、
ノズル本体の先端外側に形成されたネジ部に螺合し、緩め状態でノズル部の角度調整を可能とし、締め込み状態でノズル部を固定するナット部材と、
を備える。
【0014】
この場合、ノズル部は筒部材であり、筒部材の先端に加圧水の放水により離脱されるキャップ部材を装着する。
【0015】
角度調整機構は、
ノズル本体から延在し、軸方向に加圧水を通す内部流路を形成すると共に軸部外周に内部流路に連通穴した環状溝を形成した軸部と、
軸部に回転自在に配置され、軸部の環状溝から外部に連通したノズル部を構成するノズル穴を形成した回転リング部材と、
回転リング部材のノズル穴を任意の方向に調整した状態で軸部の固定する固定ネジ部材と、
を備える。この場合、軸部に複数の回転リング部材を回転自在に配置しても良い。
【0016】
ノズル部は放水口から棒状、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧のいずれかの形態をもつ非常覚知パターンを放水する。
【0017】
ノズル部の放水口内面に撥水性のコーティングを施す。
【0018】
非常覚知ヘッドを、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体から引き出された配管に1又は複数設ける。
【0019】
非常覚知ヘッドを、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体の内部に1又は複数設置し、筐体前面の放水開口から外部に向けて放水する。
【0020】
装置筐体は、トンネル内に設置され、ノズル付きホースに加圧水を供給して放水させる消火栓装置の装置筐体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非常覚知ヘッドによれば、ヘッド本体は配管に固定配置されるが、ヘッド本体に対し放水口を供えたノズル部は放水方向を調整自在に設けられており、配管や継手の設置角度を変えてヘッド方向を調整することなく、ノズル側の向きを必要に応じて変えることで、ヘッドからの放水方向をトンネル形状や車線幅や照明装置との視覚的な干渉防止等に応じて様々に変化させる調整が簡単且つ確実にでき、運転者が非常を確実に認識できる方向に放水させることができ、放水方向の調整を含む設置工事を容易に行うことができる。現場の設置状況に応じてヘッドを選択して設置することも可能となる。
【0022】
このように非常覚知ヘッドからの放水方向が簡単に調整できることで、トンネルを走行している車両運転者から見て視覚的に強く捉えることのできる有効な放水軌跡を形成することができ、運転者は非常覚知パターンを見て緊急停止し、また非常覚知パターンに気付かずに突っ切ったとしても、車両に水がかることで異常を知って緊急停止し、異常発生場所に侵入する前に確実に停止し、二次災害の発生を未然に防止できる。
【0023】
また、調整後にあってはヘッド本体に対しノズル部が固定されることで、調整した方向に確実に非常覚知パターンを放水することができる。
【0024】
また、ヘッド部として筒部材を使用している場合、筒部材にキャップ部材を装着しておくことで、トンネル内に剥き出しで設置していても、埃や異物の付着で放水口が詰まることを確実に防止できる。またキャップ部材は消火用水の放水で外れることから、放水時にキャップ部材を外すような作業は必要ない。
【0025】
またノズル本体側の軸部にノズル穴を形成した回転リング部材を設けた角度調整機構にあっては、軸部を中心に360度の範囲で調整でき、調整角度範囲を大きくできる。
【0026】
また軸部にノズル穴を形成した回転リング部材を複数設けることで、複数の異なる方向に非常覚知パターンを放水するマルチ非常放水ヘッドとして使用できる。
【0027】
また、放水口の内面に撥水性のコーティングを施しておくことで、結露などによる水分の付着を抑制し、錆の発生やゴミの付着により放水口の詰まりを防止することができる。
【0028】
また、非常感知ヘッドは消火栓装置などの装置筐体から引き出した配管に接続してもよいし、装置筐体内に設置して前面の放水開口から放水するようにしてもよく、いずれについても簡単且つ容易に放水方向を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による非常覚知ヘッドを備えた消火栓装置の設置状態をトンネル平面で示した説明図
【図2】本発明の非常覚知ヘッドの実施形態を示した説明図
【図3】消火栓装置からの配管に非常感知ヘッドを配置した説明図
【図4】図3の非常覚知ヘッドの配管接続部分を取り出して示した説明図
【図5】図3の消火栓装置に設けた覚知放水系統を示した説明図
【図6】消火栓装置からの配管に複数の非常感知ヘッドを配置した説明図
【図7】図6の非常覚知ヘッドの配管接続部分を取り出して示した説明図
【図8】消火栓装置の筐体内に非常感知ヘッドを配置した説明図
【図9】非常覚知ヘッドの棒状パターンによる横放水を示した説明図
【図10】非常覚知ヘッドの棒状パターンによる斜め放水を示した説明図
【図11】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるクロス放水を示した説明図
【図12】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるマルチ放水を示した説明図
【図13】非常覚知ヘッドの棒状パターンによるマルチ放水の他の例を示した説明図
【図14】ロータリー型角度調整機構をもつ本発明による非常覚ヘッドの他の実施形態を示した説明図
【図15】放水口を複数もったロータリー型角度調整機構をもつ本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明による非常覚知ヘッドを備えた消火栓装置の設置状態をトンネル平面で示した説明図である。
【0031】
図1において、道路22が通るトンネル12内の監視員通路が設けられた一方の側壁には、例えば50メートル間隔で消火栓装置10が設置されている。消火栓装置10は扉内にノズル付ホースを収納しており、火災時に消火栓扉を開いてノズル付のホースを引き出し、消火栓弁開放レバーを操作することで放水を行う。消火栓装置10からのノズル付ホースは、トンネル走行方向の左右25mの範囲に放水できるように引き出すことができる。
【0032】
消火栓装置10には、火災時に操作して火災検出信号を出力する発信機が設けられ、発信機の近くには発信機設置場所を示す火災表示灯と、発信機の押釦操作に対する応答表示を行う応答表示灯が設けられている。消火栓装置10にポンプ設備20からの給水配管16が接続され、防災受信盤18と信号線接続している。
【0033】
本実施形態にあっては、トンネル12内に設置している消火栓装置10に、トンネル10内の道路22を横切る方向に放水して非常覚知パターンを形成する非常覚知ヘッド14を設けている。非常覚知ヘッド14に対応して消火栓装置10内には制御装置11が設けられ、トンネル12内での非常設備作動時に弁装置を開駆動制御して非常覚知ヘッド14から放水させる。
【0034】
ここで、制御装置11は次の場合に非常覚知ヘッド14から放水する。
(1)消火栓扉の開放を検出した場合
(2)消火栓弁の開放を検出した場合
(3)消火器扉の開放を検出した場合
(4)消火器の取り出しを検出した場合
(5)火災検知器により火災を検出した場合
(6)消火栓等に設けられた発信機の非常押し釦を操作した場合
(7)水噴霧設備の放水を放水開始前に知らせたい場合
(8)センタ装置側からの進入禁止指示を受けた場合、
【0035】
このような非常設備作動を検出するため、消火栓扉検出スイッチ、消火栓弁開放検出スイッチ、消火器扉検出スイッチ、消火器取り出し検出スイッチ、水噴霧放水検出スイッチなどが必要に応じて設けられる。勿論、これ以外の場合にも必要に応じて非常覚知ヘッド14からの放水を行うことができる。
【0036】
各消火栓装置10の制御装置11は信号線を介してセンター等に配置された防災受信盤18に接続されており、各スイッチの状態信号が防災受信盤18で監視され、状態変化を警報や表示を行うことができる。
【0037】
防災受信盤18は、火災時に消火栓装置10の制御装置11に制御信号を送ることもでき、例えばある消火栓装置の状態変化を検出した時に他の消火栓装置10の制御装置11に制御信号をおくって、状態表示や弁装置の駆動などの各種の制御を行うことができる。
【0038】
図1にあっては、入口から4台目の消火栓装置10の付近で車両事故などにより火災が発生した場合を示しており、火災発生場所に近い消火栓装置10の消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出して放水した場合、例えば消火栓扉の開放検出により制御装置11が弁装置を開制御し、消火栓装置10の外部に配管接続している非常覚知ヘッド14から例えば棒状パターン15による覚知放水を行う。棒状パターン15による覚知放水の方向はトンネル10内の道路を真横に横切る方向としている。なお、破線の棒状パターン15aに示すように、斜め前方に向けて放水してもよい。なお、覚知放水の制御は防災受信盤18が制御装置11に制御信号を送信して行っても良い。
【0039】
このような非常覚知ヘッド14からの放水によりトンネル内の道路22を横切る方向に非常覚知パターンを形成し、火災発生場所に進入してくる車両の運転者に前方で異常が発生していることを覚知させ、火災発生場所の手前で確実に制動停止させることが可能となる。
【0040】
即ち、火災場所に向かってくる車両の運手者は、道路を横切る棒状パターン15の放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車両側面を横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0041】
また棒状パターン15による放水としたことで、非常覚知ヘッド14からの放水量を異常発生の覚知に最小限必要な量、例えば消火栓装置に備えるノズル付きホースによる放水量と同程度もしくはそれ以下の量に抑え、ポンプ設備20側に設けている貯水槽の貯水量に制約があっても必要な時間に亘り覚知放水ができ、かつ確実に運転者に異常を認識させることができる。
【0042】
また覚知放水は、火災発生場所の消火栓装置10に設けた非常覚知ヘッド15からの放水に限定されず、その手前の区間に設けた1又は複数の消火栓装置10の非常覚知ヘッド14からも放水する連動覚知放水を行っても良く、火災発生場所に向かってくる複数台の車両に同時に異常発生を覚知させることができる。このような連動覚知放水は、例えば発信機釦の操作で火災信号を受信した防災受信盤18からの遠隔制御で行う。両面通行の場合は火源位置を中心に両側に配置された非常覚知ヘッド15から放水をおこなうようにしてもよい。
【0043】
図2は本発明による非常覚知ヘッドの実施形態を示した説明図であり、図2(A)に外観を示し、図2(B)に断面を示している。
【0044】
図2において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体42、ノズル部44及びナット部材46で構成される。ヘッド本体42は内部軸方向に流入口48と内部流路50を形成しており、流入口48の外側に配管接続用の接続ネジ部52を形成し、これに続く本体外側をボルトに相当する6面体としている。
【0045】
ヘッド本体42の内部流路50が開口する先端にはノズル部44が配置される。ノズル部44は流入側に球状軸部54を形成し、球状軸部54から前方に放水穴64を形成した筒部材62を一体に形成し、放水穴64の先端に放水口66を開口している。
【0046】
ノズル部44の球状軸部54はヘッド本体42の先端に形成した球状軸受け部56に回動自在に配置され、ヘッド本体42の先端外側のネジ部58にナット部材46を締めこむことで、ナット部材46のテーパ開口部60によりノズル部44の球状軸部54を回動自在に支持する。
【0047】
このようにノズル部44の放水角度を調整すると共にノズル部44を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構が、ノズル部44の球状軸部54、ノズル本体42の球状軸受け部56、ナット部材46により構成される。この角度調整機構によるノズル部44の放水角度の調整範囲は、図示のヘッド本体42の軸心線を中心に最大放水角θとなる円錐範囲となり、例えばθ=30〜45°程度となる。
【0048】
また、ノズル部44の筒部材62にはゴムやプラスチックなどで作られたキャップ68が装着され、放水口66に対するゴミ等の異物の付着による詰まりを防止する。キャップ68は加圧消火用水の放水により筒部材62から離脱されるので、手で外す必要なない。また、キャップ68に紐をつけて飛ばないようにしておくことで、放水終了後に再使用することができる。
【0049】
本実施形態のノズル部44はストレートな放水穴64を形成していることから、非常覚知パターンは棒状パターン(ソリッドパターン)となるが、放水口66の形状を変えることで、放水口66から1又は複数のホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧などの様々な形態をもつ非常覚知パターンを放水することができる。
【0050】
また、ノズル部44の放水口内面、即ち放水穴64にはフッ素系又はシリコン系の樹脂を用いた撥水性のコーティングを施している。この撥水性のコーティングにより結露や放水で付着した水をはじき、錆の発生やゴミの付着を抑制し、放水口の詰まりを防止することができる。なお、球状軸部54と球状軸受け部56の間にテフロン(R)などのシール材を設けても良い。ノズル部44に形成する放水口66は1個に限らず複数個設けて、複数の放水パターンを所定角度毎にずらして形成して放水し、運転者が非常覚知を認識しやすくしてもよい。
【0051】
図3は図1に示したトンネルに設置された消火栓装置の説明図である。図3において、消火栓装置10は、筐体26の前面に配置した化粧板28の右側の扉開口に、消火栓扉30と保守扉32が設けており、その内部が消火用ホースを収納するホース収納空間及び消火栓弁などのバルブ類収納空間となっている。
【0052】
消火栓扉30は下側のヒンジを中心に前方に開閉する。消火栓扉30の上には、上側を回動軸として上向きに開閉する保守扉32が設けられており、点検時に消火栓扉30を開いて内側のロックを外すことで開くことができる。
【0053】
筐体26の左側扉開口の右側には通報装置板34が設けられ、ここに赤色表示灯36、発信機38、及び応答ランプ40を設けている。赤色表示灯36は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機38を押してスイッチボタンをオンすると、発信信号が監視室に設置された防災受信盤18に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が図1の防災受信盤18から送られて、応答ランプ40を点灯する。
【0054】
通報装置板34の左側には消火器扉42が設けられ、消火器扉42に対応した筐体の内部を消火器収納空間とし、例えば2本の消火器を収納している。消火器扉42は左側を回動軸として前方に開くことができる。また、消火器扉44の下側には覗き窓44が設けられ、外部から筐体内部に設置される消火器の収納状態を確認できるようにしている。
【0055】
消火栓装置10の筐体上部からはヘッド配管70が引き出され、ヘッド配管70の先端にエルボなどの継手を使用して非常覚知ヘッド14を接続している。
【0056】
消火栓装置10にあっては、非常覚知ヘッド14からの放水のため、消火栓扉30及び/または消火器扉42に扉開を検出する検出スイッチを必要に応じて設けることになる。また消火器45の取り出し検出は、例えば消火器45を載せる部分に検出スイッチを設け、消火器の取り出しで作動するようにする。
【0057】
図4は図3に示した非常覚知ヘッドの配管接続部分を平面で取り出して示している。図4において、ヘッド配管70の先端にはエルボ72が設けられ、エルボ72で直角に立ち上げた後、エルボ74でトンネル車線方向に向け、エルボ74の先端に本発明による非常覚知ヘッド44を接続している。ヘッド本体42は配管側に固定されているが、ナット部材46を緩めることでノズル部44の向きを動かすことができ、ノズル部44の可動範囲内で任意の放水方向に向け、この状態でナット部材46を締め付けて固定することになる。ノズル部44は交換可能であり、非常覚知に最適な流量または放水パターンを形成するノズルに交換することができる。
【0058】
図5は図3の消火栓装置に設けたノズル放水系統及び覚知放水系統の実施形態を示した説明図である。図5において、ノズル放水系統は、消火栓装置内に収納されたノズル付きのホースを外部に引き出すなど消火作業を行うための設備系統であり、給水弁76、消火栓弁78、自動調圧弁80などで構成される。覚知放水系統は、火災を検出した場合など運転者に非常覚知を行うための設備系統であり、非常覚知放水弁82、自動排水弁84及び圧力センサ86などで構成される。
【0059】
ノズル放水系統において、消火栓弁78は給水源から伸びた給水配管に分岐接続され、消火栓弁開閉レバー75の操作により開閉される。自動調圧弁80は消火栓弁78の2次側に接続され、ホース側の放水圧力を規定圧に調整する。
【0060】
覚知放水系統において、非常覚知放水弁82は電動弁を使用しており、消火栓弁78の1次側から分岐した配管に設けられ、2次側を外部に引き出したヘッド配管70を接続し、図1に示した制御装置11により開閉制御される。ヘッド配管70の先端には非常覚知ヘッド14が接続されており、必要に応じて点線の非常覚知ヘッド14に示すように、複数台設けることもできる。
【0061】
また非常覚知放水弁82は2次側に設けた圧力センサ86の検出圧力を所定の放水圧力に保つように図1の制御装置11により制御され、これによって非常覚知ヘッド14からの放水圧力を規定圧に調整できる。
【0062】
自動排水弁84は配管内の水圧が無いときに開放し、圧力が加わると閉鎖する弁であり、覚知放水後に非常覚知放水弁82を閉鎖した場合に開放し、ヘッド配管70内の水を排水する。
【0063】
図6は消火栓装置から引き出したヘッド配管70に3台の非常覚知ヘッド14A,14B,14Cを接続した場合であり、図7に非常覚知ヘッドの配管接続部分を平面で取り出して示している。
【0064】
図7において、ヘッド配管70の先端にはエルボによって3台の非常覚知ヘッド14A,14B,14Cが接続固定されている。この固定状態で非常覚知ヘッド14A,14B,14Cのヘッド本体42は配管側に固定されているが、ナット部材46を緩めることでノズル部44を動かすことができ、ノズル部44の可動範囲内で例えば矢印A,B,Cに示す任意の方向に向け、この状態でナット部材46を締め付けて固定する。放水方向を示す矢印A,B,Cは、トンネル横の車両進入側から見た放水角度が統一した水平方向の角度で放水しても良いが、それぞれ放水角度を異ならせて、消火栓装置から近い位置、中間位置、反対側のトンネル内壁である遠い位置に向くように放水角度を異ならせて放水してもよい。
【0065】
図8は消火栓装置の筐体内に非常覚知ヘッドを配置した説明図である。図8において、消火栓装置10の前面上部に設けている保守扉32の左下側に放水開口90を形成し、その背後となる筐体内に、放水口を前方に向けて例えば3台の非常覚知ヘッド14を配置している。非常覚知ヘッド14は筐体内で図7に示したようにヘッド配管に接続固定されており、ノズル部を任意の方向に調整して固定することができる。
【0066】
このように消火栓装置10の筐体内に非常覚知ヘッド14を配置することで、外部に対する配管作業が不要となり、消火栓装置10の機能の一つとして非常覚知ヘッド14を設けることができる。
【0067】
また図8にあっては、放水開口90は開いたままであるが、放水開口90に覚知放水ヘッド14からの放水を受けて開く放水扉を設けるようにしても良い。非常覚知ヘッド14を保守扉32に設けているが、これに限らず化粧板28(例えば保守扉28よりも上方の化粧板28の枠)に配置しても良い。
【0068】
なお、図6や図8の実施形態においては、消火栓扉30を開放して消火作業を行う人の邪魔にならないように放水方向を調節しておく必要がある。消火作業を行っている消火栓装置の非常覚知ヘッド14からは放水せずに、その隣の非常覚知放水弁82を開放して隣の非常覚知ヘッド14から非常覚知を行う様に防災受信盤18から制御しても良い。
【0069】
次に本実施形態の非常覚知ヘッドによる非常覚知パターンについて図6乃至図10を参照して説明する。
【0070】
図9は非常覚知ヘッドの棒状パターンによる横放水を示した説明図であり、図9(A)はトンネル断面、図9(B)はトンネル平面を示している。
【0071】
図9において、非常覚知ヘッド14は放水量を覚知に必要な必要最小限とするため棒状パターン15で放水しており、本実施形態にあっては、図9(A)のトンネル断面に示すように、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続したトンネル側壁の非常覚知ヘッド14から道路を真横に横切る方向に棒状パターン15で放水し、且つ図9(B)のトンネル平面に示すように、走行方向に対しても真横に横切る方向に棒状パターン15を放水している。
【0072】
このような棒状パターン15の横放水により、トンネル12内を走行してくる車両は進行方向の道路を横切る棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体側面を横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0073】
また火災発生によりトンネル上部に煙層が形成されるが、非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15は道路22の路面に近い位置での横放水であるため、放水によって煙層が乱されてトンネル全体に煙が広がってしまうことはない。
【0074】
さらに、棒状に放水された消火用水は、トンネルの対向壁面に放水されるため、壁面下方に設けた排水口に排水されるため、道路に滞留することがないため、車両が滑るなどの二次災害を極力防ぐことも可能となる。
【0075】
棒状パターン15の高さは特に限定されないが、一般的な車両の高さよりも少し上の高さ位置に設定した場合は、通行する車に消火用水がかかることがなく、運転者の視界を妨げることがない。
【0076】
図10は非常覚知ヘッドの棒状パターンによる斜め放水を示した説明図である。本実施形態にあっては、図10(A)のトンネル断面に示すように、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続したトンネル側壁の非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15を道路を横切る方向に放水し、且つ図10(B)のトンネル平面に示すように、走行方向に対して棒状パターン15を斜め方向に放水している。
【0077】
このような棒状パターン15の斜め放水により、トンネル12内を走行してくる車両は進行方向から斜めに横切るから棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体を斜めに横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0078】
また火災発生によりトンネル上部に煙層が形成されるが、非常覚知ヘッド14からの棒状パターン15は道路22の路面に近い位置での斜め放水であるため、放水によって煙層が乱されてトンネル全体に煙が広がってしまうことはない。
【0079】
図11はトンネル内に非常覚知ヘッドを配置した実施形態における棒状パターンによるクロス放水を示した説明図である。
【0080】
図11(A)のトンネル断面において、トンネル12の側壁に非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した非常覚知ヘッド14を配置し、更に、ヘッド配管24をトンネル上部から反対側のトンネル側面に配管し、そこに非常覚知ヘッド14を配置し、トンネル両側の側壁に設置した非常覚知ヘッド14から道路を横切る方向に棒状パターン15を放水することでクロス放水とし、且つ図11(B)のトンネル平面に示すように、両側に配置した非常覚知ヘッド14から走行方向に対しても斜めに棒状パターン15を放水することでクロス放水としている。
【0081】
このような棒状パターン15の2本のクロス放水により、トンネル内を走行してくる車両は進行方向にクロスして横切る棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも車体を斜めに横切るように放水を受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0082】
またトンネル走行方向に所定間隔で配置されている複数の非常覚知装置10に設けた非常覚知ヘッド14から同時にクロス放水を行うと、トンネル前方に複数のクロス放水パターンが浮かび上がり、異常事態の発生を確実に覚知できる。またクロス放水は路面に近い位置の放水となるため、トンネル上部に形成される煙層を乱すようなことはない。また、クロス放水においても、運転者の視界を妨げることを防ぐことができる。
【0083】
図12は複数の非常覚知ヘッドを配置した実施形態における棒状パターンによるマルチ放水を示した説明図であり、3台の非常覚知ヘッドを設けた場合を例にとっている。
【0084】
図12(A)のトンネル断面においては、トンネル12の側壁に非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した3台の非常覚知ヘッド14を配置し、道路22を横切る方向に棒状パターン15を放水している。また図12(B)のトンネル平面にあっては、3台の非常覚知ヘッド14から棒状パターン15を、真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。
【0085】
このような棒状パターン15を用いたマルチ放水により、トンネル内を走行してくる車両は棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知することができる。一本の放水パターンよりも放水により気づきやすい。もし放水に気付かなかったとしても放水を車体に受けるようにパターン位置を設定した場合は、車体に受けた音や水滴で異常事態の発生を覚知することができる。また路面に近い位置の放水とすれば、トンネル上部に形成される煙層を乱すようなことはない。たとえ、煙層に放水パターンが形成されたとしても、棒状パターンであるから煙層をかき乱す程の威力がない。
【0086】
図13は複数の非常覚知ヘッドを配置した棒状パターンによるマルチ放水の他の実施形態を示した説明図であり、3台の非常覚知ヘッドを設けた場合を例にとっている。
【0087】
本実施形態では、図13(A)のトンネル断面についても、非常覚知装置10からのヘッド配管24に接続した3台の非常覚知ヘッド14から、道路22を真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。また図13(B)のトンネル平面についても、3台の非常覚知ヘッド14から棒状パターン15を、真横に横切る方向、異なる斜め方向にマルチ放水している。
【0088】
このような棒状パターン15を用いたマルチ放水により、トンネル内を走行してくる車両は棒状パターン15による放水を見ることで異常事態の発生を覚知し、放水に気付かなくとも放水を車体に受けることで、異常事態の発生を覚知することができる。
【0089】
なお、図9乃至図13に示した非常覚知ヘッド14の棒状パターンによる放水は、水平放水以外にトンネル上部の煙層を乱さない範囲での上向き放水や複数の非常覚知ヘッドからのマルチ放水を交差されたクロス放水など適宜の放水パターンとすることができる。
【0090】
図14は本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図であり、ロータリー型の放水角度機構を備えたことを特徴とし、図14(A)に外観を示し、図14(B)に断面を示す。
【0091】
図14において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体92、ノズル部として機能する回転リング部材94及びストッパ96で構成される。
【0092】
ヘッド本体92は内部軸方向に流入口98と内部流路100を形成しており、流入口98の外側に配管接続用の接続ネジ部102を形成し、これに続く本体外側をボルトに相当する6面体としている。
【0093】
ヘッド本体92の先端から軸部95が延在され、軸部95内には軸方向に加圧消火用水を通す内部流路100が形成され、軸部95の外周には内部流路100に連通穴104により連通した環状溝106を形成している。
【0094】
軸部95に対しては回転リング部材94が回転自在に配置される。回転リング部材94は両側にテフロン(R)などのベアリングワッシャ112を配置して回動自在とし、また軸部95に対し隙間を持つリング穴により回転自在に配置され、軸部95の環状溝106に相対した位置にノズル穴108を径方向に設け、回転リング部材94の外周面に放水口110を開口している。
【0095】
軸部50の外周に形成した環状溝106の両側にはOリング114が配置され、回転リング部材94のリング穴との隙間から外部に消火用水が漏れださないようにしている。
【0096】
また回転リング部材94の径方向に形成されたネジ穴には固定ネジ118がはめこまれており、固定ネジ118を緩めることで回転リング部材94を回転可能として放水口110を360°の範囲の任意の方向に調整し、固定ネジ118を締めることで調整した角度に固定することができる。
【0097】
軸部95の先端にはストッパ96がねじ込み固定され、軸部95に対し回転リング部材94の回転自在に保持している。
【0098】
また本実施形態の回転リング部材94はストレートな放水穴108を形成していることから、非常覚知パターンは棒状パターンとなるが、放水口110の形状を変えることで、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧などの様々な形態をもつ非常覚知パターンを放水することができる。
【0099】
また、放水口110の内面、即ち放水穴108にフッ素系又はシリコン系の樹脂を用いた撥水性のコーティングを施し、結露や放水で付着した水をはじき、錆の発生やゴミの付着を抑制し、放水口の詰まりを防止する。
【0100】
このようなロータリー型の角度調整機構をもつ非常覚知ヘッド14によれば、軸部95を中心に360°の範囲で放水方向を調整することができる。即ち、図14のように横に配置すれば、垂直周りの広い範囲で放水方向が調整でき、また、縦に配置すれば、水平周りの広い範囲で放水方向が調整できる。
【0101】
図15はロータリー型の角度調整機構を備えた本発明による非常覚知ヘッドの他の実施形態を示した説明図であり、放水口を3つ設けた3連構造としたことを特徴し、図15(A)に外観を示し、図15(B)に断面を示す。
【0102】
図15において、本実施形態の非常覚知ヘッド14は、ヘッド本体92、ノズル部として機能する放水口110を設けた3つの回転リング部材94及びストッパ96で構成される。軸部95に設けた回転リング部材94による角度調整機構は、図14の実施形態と同じであり、同じ角度調整機構を軸部95に3つ並べて配置している。
【0103】
このような3連の放水口110をもつ非常覚知ヘッド14によれば、ヘッド配管に接続するだけで、図7の3台の非常覚知ヘッド14を個別配管接続したと同じ3連放水ができ、設置スペースの節減と取り付け作業を簡単にすることができる。
【0104】
なお、上記の実施形態は非常覚知パターンを継続的に放水する場合を例にとっているが、非常覚知パターンを断続的或いは周期的に放水するようにしてもよい。このような断続的又は周期的な覚知放水により、覚知機能を高めると同時に放水量を低減できる。また、運転者の視界を防ぐことができる。道路面を必要以上に濡らすことを防ぐことができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、例えば扉を開放した消火栓装置の非常覚知ヘッドから放水をおこなうようにしているが、これに限らず、防災受信盤18が扉開放信号等の起動条件が確立した信号を受けて、扉を開放した消火栓装置よりも車両進入側に配置された消火栓装置の非常覚知ヘッドから放水制御を行ってもよく、火源よりも手前側で運転者に対して非常覚知を行うようにしてもよい。また、複数の消火栓の非常覚知ヘッドから放水をおこなうようにしてもよい。また、消火栓装置の消火時の操作に悪影響を与えないために、扉を開放した消火栓装置の非常覚知ヘッドからは放水を行わずに、その消火栓装置を除いた、もしくはそれより車両進入側に設置された非常覚知ヘッドから放水して非常の覚知を行うようにしても良い。
【0106】
非常覚知ヘッドは必ずしも消火栓装置と組み合わせて配置する必要はなく、消火栓装置の間に独立して設けられても良い。この場合は消火栓装置の制御装置11とは別の非常覚知ヘッド用の制御装置を別途備えて防災受信盤18との伝送により非常覚知を行っても良い。
【0107】
非常覚知放水弁82を開放して非常覚知ヘッド14による非常覚知放水中に、同一消火栓装置の消火栓扉が開放されて消火作業が開始された場合に、非常覚知放水が消火作業に悪影響を及ぼす場合には非常覚知放水弁82を閉鎖して非常覚知放水を停止させてもよい。例えば自動調圧弁80の二次側に圧力センサを設置して消火時の放水圧を測定して非常覚知を制御するようにしても良い。圧力センサ86が所定閾値よりも低くなった場合に消火作業がされていると判断して非常覚知放水を停止するようにしても良い。
【0108】
また非常覚知ヘッドを動かすことで、スイング放水や旋回放水を行って覚知機能を高めるようにしても良い。
【0109】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0110】
10:消火栓装置
11:制御装置
12:トンネル
14:非常覚知ヘッド
15:棒状パターン
26:筐体
42,92:ヘッド本体
44,94:ノズル部
46:ナット部材
48,98:流入口
50,100:内部流路
54:球状軸部
56:球状軸受け部
58:ネジ部
60:テーパ開口部
62:筒部材
64,108:放水穴
66,110:放水口
68:キャップ
70:ヘッド配管
72,74:エルボ
78:消火栓弁
80:自動調圧弁
82:非常覚知放水弁
84:自動排水弁
86:圧力センサ
90:放水開口
95:軸部
96:ストッパ
104:連通穴
106:環状溝
112:ベアリングワッシャ
114:Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに於いて、
加圧水が供給される配管に接続されたヘッド本体と、
前記ヘッド本体の前方に配置されて前記非常覚知パターンを放水する放水口を設けたノズル部と、
前記ノズル部の放水角度を調整すると共に前記ノズル部を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記角度調整機構は、
前記ノズル部の流入側に形成した球状軸部と、
前記ノズル本体の先端開口部に形成され、前記ノズル部の球状軸部を摺動自在に着座する球状軸受け部と、
前記ノズル本体の先端外側に形成されたネジ部に螺合し、緩め状態で前記ノズル部の角度調整を可能とし、締め込み状態で前記ノズル部を固定するナット部材と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部は筒部材であり、前記筒部材の先端に加圧水の放水により離脱されるキャップ部材を装着したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記角度調整機構は、
前記ノズル本体から延在し、軸方向に加圧水を通す内部流路を形成すると共に軸部外周に前記内部流路に連通穴した環状溝を形成した軸部と、
前記軸部に回転自在に配置され、前記軸部の環状溝から外部に連通した前記ノズル部を構成するノズル穴を形成した回転リング部材と、
前記回転リング部材のノズル穴を任意の方向に調整した状態で前記軸部の固定する固定ネジ部材と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項5】
請求項4記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記軸部に複数の回転リング部材を回転自在に配置したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項6】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部は放水口から棒状、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧のいずれかの形態をもつ非常覚知パターンを放水することを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部の放水口内面に撥水性のコーティングを施したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項8】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体から引き出された配管に1又は複数設けられたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項9】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体の内部に1又は複数設置され、筐体前面の放水開口から外部に向けて放水することを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項10】
請求項8又は9記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記装置筐体は、トンネル内に設置され、ノズル付きホースに加圧水を供給して放水させる消火栓装置の装置筐体であることを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項1】
トンネル内に非常覚知パターンを放水し、トンネル内を走行してくる車両の運転者に異常発生を知らせる非常覚知ヘッドに於いて、
加圧水が供給される配管に接続されたヘッド本体と、
前記ヘッド本体の前方に配置されて前記非常覚知パターンを放水する放水口を設けたノズル部と、
前記ノズル部の放水角度を調整すると共に前記ノズル部を任意の放水角度に調整した状態で固定する角度調整機構と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記角度調整機構は、
前記ノズル部の流入側に形成した球状軸部と、
前記ノズル本体の先端開口部に形成され、前記ノズル部の球状軸部を摺動自在に着座する球状軸受け部と、
前記ノズル本体の先端外側に形成されたネジ部に螺合し、緩め状態で前記ノズル部の角度調整を可能とし、締め込み状態で前記ノズル部を固定するナット部材と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部は筒部材であり、前記筒部材の先端に加圧水の放水により離脱されるキャップ部材を装着したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記角度調整機構は、
前記ノズル本体から延在し、軸方向に加圧水を通す内部流路を形成すると共に軸部外周に前記内部流路に連通穴した環状溝を形成した軸部と、
前記軸部に回転自在に配置され、前記軸部の環状溝から外部に連通した前記ノズル部を構成するノズル穴を形成した回転リング部材と、
前記回転リング部材のノズル穴を任意の方向に調整した状態で前記軸部の固定する固定ネジ部材と、
を備えたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項5】
請求項4記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記軸部に複数の回転リング部材を回転自在に配置したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項6】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部は放水口から棒状、ホロコーン、フルコーン、水幕、トリップ又は噴霧のいずれかの形態をもつ非常覚知パターンを放水することを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記ノズル部の放水口内面に撥水性のコーティングを施したことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項8】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体から引き出された配管に1又は複数設けられたことを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項9】
請求項1記載の非常覚知ヘッドに於いて、加圧水を供給するバルブ類を収納した装置筐体の内部に1又は複数設置され、筐体前面の放水開口から外部に向けて放水することを特徴とする非常覚知ヘッド。
【請求項10】
請求項8又は9記載の非常覚知ヘッドに於いて、前記装置筐体は、トンネル内に設置され、ノズル付きホースに加圧水を供給して放水させる消火栓装置の装置筐体であることを特徴とする非常覚知ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−75480(P2012−75480A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220682(P2010−220682)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]