説明

非引火性電解液

【課題】
良好なイオン伝導性および電池特性を有し、且つ、液としての難燃性を有するのみならず気相部での燃焼、爆発を起こさない非引火性の非水電解液を提供する。
【解決手段】
環状カーボネートおよび電解質塩を含有する溶液に下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、且つRf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素リン酸エステルを10〜90体積%存在させることを特徴とする非引火性電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水系二次電池に用いられる非水電解液の不燃化に関する。より詳細には含フッ素リン酸エステルと環状カーボネートおよび電解質塩を特定の割合で共存することによって、良好なイオン伝導性および電池特性を有し、安全性の向上だけでなく、保管や輸送上の安全対策の軽減できる非引火性の非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系二次電池は、高出力密度、高エネルギー密度を有し、携帯電話、ノートパソコン、タブレット型コンピューター等の電源として汎用されている。また、近年は、二酸化炭素排出量の少ないクリーンなエネルギーとして、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として、盛んに研究されている。
【0003】
非水系二次電池としては、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池等が知られている。例えば、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池の場合は、正極にリチウム含有遷移金属酸化物を主要構成成分とする材料が用いられ、負極には金属リチウムまたはリチウム合金が用いられる場合、あるいは、グラファイトに代表される炭素質材料を主要構成成分とする材料が用いられる場合等がある。これらは、それぞれリチウム二次電池、リチウムイオン二次電池と称される。正極、負極は、セパレータを介して設けられ、正極、負極間は、Liイオンが移動する媒体として、非水電解液が満たされる。この非水電解液としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質塩が、エチレンカーボネートやジメチルカーボネート等の高誘電率の有機溶媒に溶解されたものが広く用いられている。ここで、これら有機溶媒は、揮発性、引火性を有しており、引火性物質に分類される溶媒である。
【0004】
このように、引火性液体を溶媒とした非水電解液、並びにこの非水電解液を用いた非水系二次電池は生産から輸送、貯蔵にかかる間にわたり「引火性液体」とみなされ、非水電解液及び非水電解液を用いた二次電池を工場で生産したり輸送、貯蔵したりする場合、防爆や防火対策を施した設備での取扱いが必要となっている。
【0005】
このような問題点に対し、非水電解液の難燃化を目的として、含フッ素リン酸エステル(特許文献1〜3、非特許文献1)や含フッ素エーテル(特許文献4、5)、含フッ素エステル(特許文献6、7)、含フッ素カーボネート(特許文献8、9)等の含フッ素溶媒を用いることが提案されている。
【0006】
これら含フッ素溶媒を用いた非水電解液の難燃化メカニズムは明らかではないが、電解液の燃焼時にガス化したフッ素化合物の窒息効果により、あるいは燃焼により分解した分解物が燃焼の連鎖を停止すること等により自己消火しているものと考えられる。
【0007】
しかしながら、これら先行技術による難燃化された非水電解液であっても、電解液の引火点を消失させるには至っていない。即ち、製造や輸送、貯蔵等の不具合により非水電解液の漏えいが生じた場合に、気相部において引火または爆発を起こす危険性を払拭できていない。このため、引火点の観測されない、即ち、気相部で引火、爆発を起こす危険性のない非水電解液が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−88023号公報
【特許文献2】特開2007−141760号公報
【特許文献3】特開2007−258067号公報
【特許文献4】特開平9−097627号公報
【特許文献5】特開平11−26015号公報
【特許文献6】特開平6−20719号公報
【特許文献7】特開平10−116627号公報
【特許文献8】特開平7−6786号公報
【特許文献9】特開2007−305352号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Electrochemical Soc.,150,A161(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものである。即ち、良好なイオン伝導性および電池特性を有し、且つ、液としての難燃性を有するのみならず気相部での燃焼、爆発を起こさない非引火性の非水電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の環状カーボネートと含フッ素リン酸エステル及び電解質塩を共存させることにより、良好なイオン伝導性、電池特性が得られ、且つ、電解液の引火点が消失することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
即ち、本発明は下記の要旨に係わるものである。
(1) 環状カーボネートおよび電解質塩を含有する溶液に下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、且つRf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素リン酸エステルを10〜90体積%存在させることを特徴とする非引火性電解液。
(2) 含フッ素リン酸エステルが、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rf及びRfは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)
で表されることを特徴とする(1)に記載の非引火性電解液。
(3) 一般式(1)で表される含フッ素リン酸エステルが、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2−ジフルオロエチル)2,2,2−トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)に記載の非引火性電解液。
(4) 環状カーボネートがエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の非引火性電解液。
(5) 電解質塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF及びLiN(SOからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.2〜2.5mol/Lの濃度で存在させることを特徴とする(1)乃至(4)に記載の非引火性電解液。
(6) 環状カーボネートの全量または一部が、フルオロエチレンカーボネートまたはジフルオロエチレンカーボネートである(1)乃至(5)に記載の非引火性電解液。
(7) (1)乃至(6)に記載の非引火性電解液を電解液として含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池またはリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好なイオン伝導性および電池特性を有し、且つ、液としての難燃性を有するのみならず気相部での燃焼、爆発を起こさない非引火性の非水電解液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例、比較例で使用したコイン型セルのリチウム二次電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の非引火性電解液は第1の成分として、前記一般式(1)で表される含フッ素リン酸エステルを含有する。一般式(1)において、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、且つRf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。
【0020】
炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、およびn−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基及び3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。このような含フッ素リン酸エステルとして、例えば、リン酸トリス(トリフルオロメチル)、リン酸トリス(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)、リン酸トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)、リン酸トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル及びリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチル等を挙げることができる。
【0021】
これら含フッ素リン酸エステルのうち、Rf、Rf及びRfの少なくとも1つが含フッ素アルキル基であるものがイオン伝導性及び非引火性の点で好ましく、特に、一般式(2)で示されるような2,2,2−トリフルオロエチル基を有する含フッ素リン酸エステルであるリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチルが好ましい。
【0022】
これら含フッ素リン酸エステルの使用量は、液体成分全体に対する体積比で10〜90%である。含フッ素リン酸エステルの添加量が10%未満の場合、引火点を有するだけでなく、電解液が固化し充放電ができなくなる場合がある。含フッ素リン酸エステルの添加量が90%を超える場合は、イオン伝導度が低下し、十分な充放電特性を得られない場合がある。
【0023】
本発明の非引火性電解液は第2の成分として環状カーボネートを含有する。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート等を挙げることができる。これら環状カーボネートの全量または一部に、フルオロエチレンカーボネートまたはジフルオロエチレンカーボネートを用いた場合、イオン伝導性、非引火性の点がより優れるため好ましい。これら環状カーボネートの使用量は、液体成分全体に対して体積比で10〜90%である。環状カーボネートの使用量が10%未満の場合、イオン伝導度が低下し、十分な充放電特性を得られない場合があり、90%を超える場合、引火点を有するだけでなく、電解液が固化し、充放電ができなくなる場合がある。
【0024】
本発明の非引火性電解液は第3の成分として電解質塩を含有する。代表的な電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO等のリチウム塩、EtNPF、EtNBF、BuNPF、BuNBF等のアンモニウム塩、Mg(ClO等のマグネシウム塩、MeMgBr、MeMgCl、EtMgBr、EtMgCl等のGrignard試薬等を挙げることができる。これら電解質塩のうち、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO等のリチウム塩が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、電池の高率充放電特性を良好なものとするため、非引火性電解液における電解質塩の濃度は0.2〜2.5mol/Lの範囲とすることが望ましい。
【0025】
本発明の非引火性電解液は上記の三成分に加え、さらに低粘度の不燃性溶媒を共存させてもよい。低粘度の不燃性溶媒の共存により、電解液全体の粘度が低下し、電池特性が向上する効果が期待される。低粘度の不燃性溶媒としては含フッ素エーテルや含フッ素エステル、含フッ素カーボネート等を例示することができ、例えば、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、ペルフルオロブチルメチルエーテル、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等を挙げることができる。
【0026】
本発明の非引火性電解液を用いた非水系二次電池は、少なくとも正極、負極、セパレータから成る。負極材料としては、金属リチウム、リチウム合金あるいはリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材料等が用いられる。正極材料としては、通常、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiNiO2、LiFeO、LiFePOなどのリチウムと遷移金属の複合酸化物等が用いられる。セパレータとしては、微多孔性膜等が用いられ、材料として、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等が用いられる。非水系二次電池の形状、形態としては、通常、円筒型、角型、コイン型、カード型等が選択される。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0028】
試験例1
引火点測定
引火点測定には消防法の引火点測定方法に準じた方法を選択し、セタ式引火点試験器RT−1型(ERDCO Engineering Corporation製)を用いた。このRT−1試験器を所定温度まで昇温し、温度が一定になったところで、電解液4mlを注入した。2分経過後、開閉器より内部を見ながら試験炎をのぞかせ、引火の有無を観察した。
【0029】
試験例2
イオン伝導度
電気伝導率計(京都電子製CM−117型)を用いて20℃における各電解液のイオン伝導度を計測した。
【0030】
電池作成例
非水系二次電池の作成
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を用い、これに導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO:カーボンブラック:PVDF=85:7:8となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミ製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて正極を得た。
【0031】
負極活物質としては天然球状グラファイトを用い、バインダーとしてPVDFをグラファイト:PVDF=9:1となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものを銅製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて負極を得た。
【0032】
セパレータは無機フィラー含浸ポリオレフィン多孔質膜を用いた。
【0033】
以上の構成要素を用いて、図1に示した構造のコイン型セルを用いたリチウム二次電池を作成した。リチウム二次電池はセパレータ6を挟んで正極1、負極4を対向配置し、負極ステンレス製キャップ3にステンレス製板バネ5を設置し、負極4、セパレータ6および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に本発明の電解液を注入した後、ガスケット7を配置後、正極ステンレス製キャップ2をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで作成した。
【0034】
試験例3
充放電試験
上記電池作成例の方法で作成したリチウムイオン二次電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、1Cの充電電流で4.2Vの定電流-定電圧充電を行い、1Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とし、この操作を100回繰り返した際の放電容量を測定し、100サイクル後の放電容量/初期放電容量比を容量維持率として比較を行った。
【0035】
実施例1
リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下TFEPと略す)とエチレンカーボネート(以下ECと略す)を体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液aを作成した。
【0036】
実施例2
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(以下E2PPと略す)とECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液bを作成した。
【0037】
実施例3
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル(以下E2EPと略す)とECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液cを作成した。
【0038】
実施例4
リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(以下TFPPと略す)とECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液dを作成した。
【0039】
実施例5
リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル(以下P2EPと略す)とECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液eを作成した。
【0040】
実施例6
TFEP、ECおよびフルオロエチレンカーボネート(以下FECと略す)を体積比33.3:33.3:33.3で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液fを作成した。
【0041】
実施例7
E2PP、ECおよびFECを体積比33.3:33.3:33.3で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液gを作成した。
【0042】
実施例8
E2EP、ECおよびFECを体積比33.3:33.3:33.3で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液hを作成した。
【0043】
実施例9
TFPP、ECおよびFECを体積比33.3:33.3:33.3で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液iを作成した。
【0044】
実施例10
P2EP、ECおよびFECを体積比33.3:33.3:33.3で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液jを作成した。
【0045】
実施例11
E2PP、ECおよびFECを体積比15:70:15で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液kを作成した。
【0046】
実施例12
E2PP、ECおよびFECを体積比20:70:10で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液lを作成した。
【0047】
実施例13
E2PP、FECを体積比40:60で混合した。この混合溶液にLiPF61.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液mを作成した。
【0048】
比較例1
ECおよびジメチルカーボネート(以下DMC)を体積比50:50で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液nを作成した。この電解液を試験例1のセタ式引火点測定器にて引火点を測定したところ、32℃で音を発して引火した。
【0049】
比較例2
E2PPおよびDMCを体積比30:70で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液oを作成した。この電解液を試験例1のセタ式引火点測定器にて引火点を測定したところ、29℃で引火することを確認した。
【0050】
比較例3
E2PPおよびECを体積比8:92で混合した。この混合溶液にLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、40℃にて充分に撹拌して溶解を行い、その後、20℃まで冷却したところ、電解液は途中で固化した。
【0051】
実施例14
E2PPとECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiBFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液qを作成した。
【0052】
実施例15
E2PPとECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiClOを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液rを作成した。
【0053】
実施例16
E2PPとECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiN(SOCFを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液sを作成した。
【0054】
実施例17
E2PPとECを体積比3:7で混合した。この混合溶液にLiN(SOを1.0mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解し、電解液tを作成した。
【0055】
実施例18
E2PPとECを体積比90:10で混合した。この混合溶液にLiPFを0.5mol/Lの濃度となるように加え、20℃にて充分に撹拌して完全に溶解することを確認し、この電解液をuとした。
【0056】
表1に実施例1〜8、表2に実施例9〜13、比較例1〜3、表3に実施例14〜18の各電解液の組成および試験結果を示す。
【0057】
実施例1〜3、実施例5〜8、実施例10〜18において、電解液の引火点は観測されなかった。一方、比較例1、2の電解液は、通常想定される実用温度である30℃付近で引火点を有することが確認された。また、実施例4、実施例9についてはそれぞれ157℃、178℃の温度で引火点が観測されたが、その温度は十分に高く、通常の使用状態において引火の可能性は低いと考えられる。
【0058】
比較例3の電解液はECの融点である40℃で電解質塩を溶解し、その後室温まで冷却したところ、電解液が完全に固化したため、その後の試験を中断した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の非引火性電解液は、良好なイオン伝導性および電池特性を有し、且つ、液としての難燃性を有するのみならず気相部での燃焼、爆発を起こす可能性がないため、非水電解質二次電池用電解液として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 正極
2 正極ステンレス製キャップ
3 負極ステンレス製キャップ
4 負極
5 ステンレス製板バネ
6 無機フィラー含浸ポリオレフィン多孔質セパレータ
7 ガスケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状カーボネートおよび電解質塩を含有する溶液に下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、且つRf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素リン酸エステルを10〜90体積%存在させることを特徴とする非引火性電解液。
【請求項2】
含フッ素リン酸エステルが、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の非引火性電解液。
【請求項3】
一般式(1)で表される含フッ素リン酸エステルが、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2−ジフルオロエチル)2,2,2−トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非引火性電解液。
【請求項4】
環状カーボネートがエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の非引火性電解液。
【請求項5】
環状カーボネートの全量または一部が、フルオロエチレンカーボネートまたはジフルオロエチレンカーボネートであることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の非引火性電解液。
【請求項6】
電解質塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF及びLiN(SOからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.2〜2.5mol/Lの濃度で存在させることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の非引火性電解液。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の非引火性電解液を電解液として含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池またはリチウム二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−20713(P2013−20713A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150733(P2011−150733)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】