説明

非接触保持装置

【課題】ワークを保持するために装置が必要とする空間を、保持面が移動する方向において縮小する非接触搬送装置を提供する。
【解決手段】非接触搬送装置10は、ワークWを保持する保持部材12と保持部材12が装着される装着プレート11とを有している。保持部材12は、ワークWに臨む流出面12aと、流出面12aに開口する旋回室と、旋回室に圧縮空気を導入する導入孔とを有している。一方、装着プレート11は、相対向する装着面15aと裏面15bとを繋ぐ外側面15cを有するプレート本体15と、気体供給源13からの圧縮空気が流れる気体流路と、気体流路の経路上に設けられ装着面15aに開口し、該気体流路と保持部材12の導入孔とが連通するかたちに保持部材12が嵌入される嵌入孔とを有している。装着プレート11の気体流路には、プレート本体15の外側面15cに設けられた供給ポート19を介して圧縮空気が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの異なる領域に負圧と正圧とを作用させることによってワークと保持面とが接触しない状態でワークを保持する非接触保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、ワークを保持するための保持面がワークと接触しない態様で該保持面にワークを保持するという非接触保持装置が知られている。特許文献1に記載の非接触保持装置が有する保持プレートは、ハウジングやベース部等から構成されて、ワークに対向する保持面に旋回室としての凹部を備えている。この保持プレートにおける保持面とは反対側の面には、保持プレートの内部に気体を供給する供給ポートが設けられている。また保持プレートの内部には、供給ポートと旋回室とを連通して供給ポートから旋回室内に気体を導入する気体導入路が設けられている。そしてステージに載置されたワークが上記保持プレートで持ち上げられる際には、保持プレートの保持面がワークに向けて徐々に下げられるとともに、供給ポートから気体導入路を通して旋回室へ気体が供給される。
【0003】
この際、気体導入路を通じて旋回室に導入された気体は、旋回室の内周面に沿うように旋回して、保持面に設けられた開口から保持面に沿うように流出する。そして保持面に設けられた開口の中心に上記旋回流による負圧が発生するとともに、保持面に沿って流出する気体によって保持面とワークとの間に正圧が発生する。このように旋回室に発生した負圧によってワークが保持面に吸引される一方、保持面とワークとの間に発生した正圧によってワークが保持面から離される結果、ワークと保持面とが接触しない状態でワークが保持プレートに保持される。そして保持プレートの保持面がステージから徐々に持ち上げられることによって、ステージに載置されたワークが上記保持プレートで持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−87910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非接触保持装置が有する保持プレートには、供給ポートに気体を供給するためのチューブ等の気体の供給系が接続されている。特許文献1に記載の非接触保持装置のように、保持面とは反対側の面に供給ポートが設けられる構成では、このような気体の供給系が保持面とは反対側の面上に配置されることになる。そして保持プレートによってワークが持ち上げられる際には、保持面とは反対側の面上に配置されたこうした供給系も保持プレートとともに持ち上げられることになる。この際、保持プレートの上方に配置される他の部材と気体の供給系とが接触することになれば、保持プレートに保持されるワークの状態が不安定になってしまう。そのため、特許文献1に記載のような非接触保持装置気体では、保持プレートが移動する空間に加えて、当該空間の上方に、気体の供給系が移動するための空間を別途設けることが余儀なくされていた。
【0006】
特に、ステージに載置されたワークを保持プレートで保持した後に、ステージに向いた該ワークの側面をステージとは反対側に向けるようにワークを反転させる場合、上述したようなチューブ等が保持プレートのステージ側に垂れ下がることになる。そのため、保持プレートの上方に配置される他の部材と気体の供給系との接触のみならず、チューブ等とステージとの接触をも避けるため、保持プレートそのものを予めステージから大きく離す
ことが必要にもなる。その結果、保持プレートが移動する空間を上下方向に、より拡大することが必要にもなっていた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークを保持するために装置が必要とする空間を、保持面が移動する方向において縮小する非接触搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触保持装置は、ワークに対向する保持面を有するとともに該保持面に複数の凹部を有した保持プレートと、前記保持プレートの外側と前記凹部の内部とを連通するように前記保持プレートの内部に設けられて、前記保持プレートの外側から前記複数の凹部の各々の内部に気体を導入して該凹部内に気体の旋回流を発生させる気体導入路とを備え、前記旋回流によって前記凹部の開口に負圧を形成するとともに、前記凹部の開口から流出する気体によって前記保持面と前記ワークとの間に正圧を形成することによって、前記ワークと前記保持面とが接触しない状態で前記ワークを前記保持プレートに保持する非接触保持装置であって、前記保持プレートを構成する外側面のうちで前記保持面と交差するとともに前記保持面から連続する外側面に、前記気体導入路に連通して前記保持プレートの外側から前記気体導入路に気体を供給する供給する供給ポートを有することを要旨とする。
【0009】
本発明の非接触保持装置によれば、保持プレートを構成する外側面のうちで保持面と交差する外側面に供給ポートが設けられる。そのため、保持プレートに気体を供給するためのチューブ等、保持プレートに気体を供給するために必要な気体の供給系が、保持面と交差する外側面に接続されることになる。その結果、上記供給系が保持面とは反対側の面に接続される構成と比較して、ワークを保持するために装置が必要とする空間を、保持プレートが移動する方向、すなわち保持面が移動する方向において縮小することが可能である。
【0010】
この非接触保持装置は、前記気体導入路が、前記保持面と平行な方向に沿って前記供給ポートと前記複数の凹部の各々の内部とを連通する通路であることを要旨とする。
この非接触保持装置によれば、保持プレートの内部に設けられる気体導入路が保持面と平行な方向に延びる形状である。そのため、保持面と交差する方向に沿って気体導入路が設けられる構成と比較して、保持面の法線方向における保持プレートの厚さ、すなわち保持面が移動する方向における保持プレートの厚さを薄くすることが可能である。それゆえに、ワークを保持するために装置が必要とする空間を、保持プレートが移動する方向において縮小することが可能である。
【0011】
この非接触保持装置は、前記保持プレートが、前記保持面を有する板材から構成されて前記気体が流れる流路を内部に備えるとともに、前記流路に連通する複数の嵌入孔を前記保持面に有した装着プレートと、前記複数の嵌入孔の各々に嵌入されて筒内の空間によって前記凹部を構成する筒体からなり、前記筒体の周壁に開口して前記流路と連通し前記筒体の外側から前記凹部へ気体を導入する導入孔を有する保持部材とを備え、前記気体導入路が、前記流路と前記導入孔とによって構成されることを要旨とする。
【0012】
この非接触保持装置によれば、保持プレートが、保持部材と、該保持部材が装着される装着プレートとによって構成される場合であっても、各凹部に気体を供給するために必要な気体の供給系が、保持面と交差する外側面に接続されることになる。そのため、ワークを保持するために装置が必要とする空間を、保持プレートが移動する方向において、より効果的に縮小することが可能である。
【0013】
この非接触保持装置は、前記保持部材が、前記筒体の周壁に設けられた前記導入孔の開口を含むように前記筒体の周壁の全周にわたって凹設されて前記気体導入路に連通する連通凹部を備えることを要旨とする。
【0014】
この非接触保持装置によれば、気体導入路が、装着プレートの内部に設けられた流路と、保持部材の導入路と、該流路及び該導入路に連通する連通凹部とによって構成される。こうした構成によれば、連通凹部を通して流路内の気体を導入孔に供給することが可能であるため、嵌入孔に嵌入される保持部材の位置を筒体の周壁における周方向において定める必要がない。それゆえに、嵌入孔に嵌入される保持部材の位置に高い自由度を得ることが可能である。
【0015】
この非接触保持装置は、前記筒体の内表面が円周面であり、前記導入孔が前記円周面の接線方向に延びる孔であることを要旨とする。
この非接触搬送装置によれば、導入孔を通じて凹部の内部に導入された気体に対して、凹部の内表面である円周面に沿った流れが誘発される。そのため、凹部の内部において旋回流を効率よく発生させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかる非接触搬送装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1におけるA部の拡大図。
【図3】保持部の内部構造を示す断面図。
【図4】図3におけるB−B線に沿った断面図。
【図5】ワークが保持された状態にある非接触搬送装置を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の非接触搬送装置を具体化した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の非接触搬送装置の概略構成を示す斜視図であって、ワークが保持される保持面側から見た斜視図である。
【0018】
図1に示されるように、非接触搬送装置10は、装着プレート11と保持部材12とを有している。装着プレート11は、保持部材12が装着されるとともに圧縮空気供給源13から導入される圧縮空気を該保持部材12に供給する。一方、保持部材12は、装着プレート11がワークW(図3参照)に向けて徐々に下げられるとき、装着プレート11から供給される圧縮空気を用いてワークWを非接触で保持する。そして、非接触搬送装置10は、図示しない移動機構を用いて、保持部材12が装着された装着プレート11を移動させることで該保持部材12が保持しているワークWを搬送する。本実施形態における保持プレートは、これら装着プレート11と保持部材12とによって構成されている。
【0019】
装着プレート11は、一対の対向する面(保持面を構成する装着面15a、裏面15b)を繋ぐ外側面15cを有した板材としてのプレート本体15を有している。プレート本体15の内部には、気体導入路を構成する気体流路17が設けられている。気体流路17は、装着面15aと平行な方向に延びる第1気体流路17aと、同じく装着面15aと平行な方向であって、且つ、第1気体流路17aと直交する方向に延びる4つの第2気体流路17bとから構成されている。各第2気体流路17bは、第1気体流路17aと交差する部分において該第1気体流路17aに連通するとともにプレート本体15内に終端部が設けられている。各気体流路17には、プレート本体15の外側面15cに供給ポート19が設けられており、この供給ポート19に接続されるチューブ21を通じて圧縮空気供給源13から圧縮空気が導入される。このチューブ21は、ワークWの搬送時に該ワークWと接触しないように配設されている。
【0020】
プレート本体15には、装着面15a及び裏面15bに開口し、保持部材12が嵌入される嵌入孔23が複数設けられている。嵌入孔23は、該嵌入孔23の内周面に気体流路17が開口するように、気体流路17の経路上に設けられている。具体的には、第1気体流路17aには、4本の第2気体流路17bの各々を挟む位置に合計8つの嵌入孔23が設けられている。また各第2気体流路17bには、1本の第1気体流路17aを挟む位置に合計2つの嵌入孔23が設けられている。嵌入孔23には、装着面15a側から保持部材12が嵌入されて、裏面15b側から突出した保持部材12の雄ねじ部29にナット31を螺合させることによりプレート本体15に対して装着される(図3参照)。こうした構成であれば、チューブ21が接続される供給ポート19がプレート本体15の外側面15cに設けられているため、保持部材12に気体を供給するためのチューブ21等、保持プレートに気体を供給するために必要な気体の供給系が、装着面15aと交差する外側面15cに接続されることになる。その結果、上記供給系が装着面15aとは反対側の裏面15bに接続される構成と比較して、ワークWを保持するために装置が必要とする空間を、保持プレートが移動する方向、すなわち装着面15aが移動する方向において縮小することが可能である。
【0021】
次に、保持部材12について図2〜図4を参照して説明する。図2は、図1におけるA部の拡大図である。図3は、保持部材12の内部構造を示す断面図であって、プレート本体15に装着された状態を示す図である。図4は、図3におけるB−B線に沿った断面図である。
【0022】
図2及び図3に示されるように、多段状の円筒体である保持部材12は、装着面15aに繋がる端面である流出面12aを有した円環状の係止部25を有している。本実施形態では、プレート本体15が有する装着面15aと保持部材12が有する流出面12aとによって保持面が構成されている。
【0023】
保持部材12は、係止部25よりも縮径されるかたちで該係止部25に連なりプレート本体15の嵌入孔23に嵌入される嵌入部27と、嵌入部27よりも縮径されるかたちで該嵌入部27に連なり外周がねじ切りされた雄ねじ部29とを有している。また保持部材12は、流出面12aに開口し、係止部25と嵌入部27とに跨るように形成された断面円状の旋回室35を有している。保持部材12は、係止部25と装着面15aとが当接する位置まで嵌入孔23に嵌入されている。そして保持部材12は、裏面15bから突出する雄ねじ部29に雌ねじ部材としてのナット31を螺合させることによりプレート本体15に装着されている。
【0024】
こうした構成であれば、保持部材12を装着プレート11に容易に装着することができるとともに、保持部材12を位置決めした状態でプレート本体15に装着することも可能である。そのため保持部材12の位置を向きの調整を容易に行うこともできる。なお、保持部材12は、嵌入部27における係止部25側の端部に形成された凹部に配置されるOリング33により、装着面15a側における気密が保たれる。また、プレート本体15とナット31とに挟まれるシールプラグ34と、雄ねじ部29に巻き回された図示しないシールテープとによって、裏面15b側における気密が保たれる。
【0025】
係止部25は、流出面12a側で縮径する多段状に形成されており、その大径部分の周縁には一対の切り欠き部37が相対向する位置に設けられている。なお、この切り欠き部37は、後述する導入孔41の旋回室35における開口位置に対応するように設けられている。
【0026】
嵌入部27には、その外周面の全周にわたって凹設され、気体導入路を構成する連通凹部39が設けられている。連通凹部39は、保持部材12がプレート本体15の嵌入孔2
3に嵌入された状態でプレート本体15の気体流路17と連通する位置に設けられている。また、図4に示されるように、嵌入部27には、連通凹部39の底面と旋回室35の内周面とに開口し、気体導入路を構成する導入孔41が貫通形成されている。すなわち、導入孔41は連通凹部39を通じて気体流路17に連通するとともに、旋回室35は導入孔41、連通凹部39を通じて気体流路17に連通する。そして上流側の気体流路17内の圧縮空気は、図4に矢印で示すように、一部が連通凹部39及び導入孔41を通じて旋回室35に流入し、残りが連通凹部39を通じて下流側の気体流路17に再び導入される。
【0027】
ここで、保持部材12が上記連通凹部39を有しない構成では、気体流路17からの気体を旋回室35まで導くために、嵌入部27の外周面に設けられた導入孔41の開口と嵌入孔23の内周面における気体流路17の開口とが相対向するように、保持部材12の位置を定める必要がある。そのため、保持部材12をプレート本体15へ装着する際に、非常に手間を要してしまう。これに対して、上記構成からなる保持部材12によれば、嵌入部27の周壁の全周にわたって連通凹部39が設けられているため、連通凹部39を通じて導入孔41と気体流路17とが連通している。それゆえに、嵌入部27の周壁の周方向においては、保持部材12の配置に関わらず、導入孔41と気体流路17とを確実に連通させることができ、保持部材12のプレート本体15への装着に関わる作業を容易なものとすることができる。また、導入孔41にはプレート本体15の気体流路17を通じて圧縮空気が供給されることから、保持部材12自体には、チューブ21を接続するための接続部を設ける必要がなくなる。その結果、保持部材12の構造を簡素化することもできる。
【0028】
図4に示されるように、導入孔41は、旋回室35の内周面である円周面の接線方向であって、該旋回室35の内周面で対向する位置から互いに相反する方向に向かって延出形成されている。こうした構成の導入孔41であれば、該導入孔41を通じて旋回室35に流入した圧縮空気は、該旋回室35の内周面に沿った流れが誘発されることとなり、旋回室35内において旋回流を効率よく発生させることができる。
【0029】
こうした旋回室35における圧縮空気の旋回により、旋回室35にはベルヌーイの定理に基づく負圧が発生する。一方、旋回室35で旋回流になった圧縮空気は、やがて流出面12aにおける開口部から流出する。旋回室35の開口部から流出した圧縮空気は、流出面12aに沿って流出し該流出面12aとワークWとの間に正圧を発生させる。そして、ワークWは、上述した負圧と正圧とが作用することによって流出面12aに接触することなく保持される。
【0030】
次に、こうした構成の非接触搬送装置10について図5を参照して説明する。図5は、上記構成の非接触搬送装置10においてワークWが保持されている状態を模式的に示す平面図であって、一部の保持部材12を省略して示した図である。
【0031】
図5に示されるように、上記構成の非接触搬送装置10は、チューブ21が接続される供給ポート19がプレート本体15の外側面15cに設けられているため、チューブ21が装着面15aとは反対側の裏面15bに接続される構成と比較して、ワークWを保持するために装置が必要とする空間を、装着面15a(ワークW)が移動する方向において縮小することが可能である。また、縮小された空間の分、保持部材12が装着されたプレート本体15の移動可能な範囲を拡大させることができる。例えば、図5に二点差線で示す仮想線43に対して、プレート本体15、つまりはワークWをより近づけることができる。その結果、ワークWの搬送経路の自由度を拡張させることもできる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の非接触搬送装置10によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、圧縮空気供給源13から圧縮空気が導入される気体流路17の供給ポート19は、プレート本体15の外側面15cに設けられている。こうした構成によれば、保持部材12に圧縮空気を供給するためのチューブ21を裏面15b側に配設しなくて済む。その結果、ワークWの反対側において装置自体が占有する空間を縮小させることができ、ワークWの搬送経路の自由度を拡張させることができる。
【0033】
(2)上記実施形態によれば、装着プレート11の内部に設けられる気体流路17が装着面15aと平行な方向に延びる形状である。そのため、装着面15aと交差する方向に沿って気体流路17が設けられる構成と比較して、装着プレート11の厚さ、すなわち装着面15aが移動する方向における装着プレート11の厚さを薄くすることが可能である。それゆえに、ワークWを保持するために装置が必要とする空間を、装着プレート11が移動する方向において縮小することが可能である。
【0034】
(3)上記実施形態によれば、保持部材12の導入孔41とプレート本体15の気体流路17とを保持部材12の嵌入部27の全周にわたって凹設した連通凹部39を通じて連通させた。こうした構成によれば、保持部材12をプレート本体15に装着する作業が容易なものとなる。
【0035】
(4)上記実施形態によれば、導入孔41は、旋回室35の内表面における接線方向であって、該旋回室35の内表面において対向する位置から互いに相反する方向に向かって延出形成されている。こうした構成によれば、導入孔41を通じて旋回室35に流入した圧縮空気に対して該旋回室35の内表面に沿った流れが誘発されるため、旋回室35内に旋回流が効率よく発生する。
【0036】
(5)上記実施形態によれば、1つの気体流路17の経路上に複数の保持部材12が配置されて、気体流路17の下流側に配置されている保持部材12には、上流側に配置されている保持部材12の連通凹部39を通過した圧縮空気が供給される。こうした構成によれば、1つの供給ポート19を通じて複数の保持部材12を作動させることができる。すなわち、保持部材12の各々に対してチューブ21を接続するための接続部を設けなくて済む。その結果、保持部材12に気体を供給する供給系の部材点数を少なくすることもできる。
【0037】
(6)上記実施形態によれば、保持部材12の雄ねじ部29を裏面15bから突出するように構成するとともに、ナット31を雄ねじ部29に螺合させることで保持部材12をプレート本体15に装着した。こうした構成であれば、保持部材12をプレート本体15に容易に装着することができるとともに、保持部材12を位置決めした状態でプレート本体15に装着することも可能であるため該保持部材12の向きの調整を容易に行うこともできる。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態の保持部材12は、裏面15bから突出する雄ねじ部29にナット31を螺合させることにより、プレート本体15に装着した。これに限らず、プレート本体15に保持部材12を装着する上では、例えばプレート本体15に設けた雌ねじ部に保持部材12の雄ねじ部29を螺合させる構成であってもよい。このような構成であっても上記(1)〜(4)と同じような効果を得ることができる。
【0039】
・上記実施形態の非接触搬送装置10では、プレート本体15に気体流路17の経路上に複数の嵌入孔23を形成し、各嵌入孔23に保持部材12を装着した。これに限らず、装着プレート11に設けられる嵌入孔23及び保持部材12は単数であってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(3)と同じような効果を得ることができる。
【0040】
・上記実施形態では、旋回室35の内表面を円周面に形成したが、旋回室で圧縮空気の旋回流が発生するのであれば、旋回室は円周面に限られるものではない。
・上記実施形態では、導入孔41は、旋回室35の内表面における接線方向であって、該旋回室35の内表面で対向する位置から互いに相反する方向に向かって延出形成した。これに限らず、導入孔41は、旋回室35において圧縮空気の旋回流が形成されるのであれば、例えば、上記した対向する位置から旋回室35の内表面における接線方向と交差する方向に延出形成されていてもよい。このような構成であっても、上記(1)(2)と同じような効果を得ることができる。
【0041】
・上記実施形態では、保持部材12の周壁に全周にわたる連通凹部39が形成されている。これに限らず、プレート本体15に保持部材12を装着されているときに気体流路17と導入孔41とが連通するのであれば、連通凹部39を嵌入部27の全周ではなく一部に設ける構成であってもよい。また、連通凹部39を割愛し、気体導入路が気体流路17と導入孔41とによって構成されてもよい。このような構成であっても、上記(1)(2)と同じような効果を得ることができる。なお、保持部材12に連通凹部39が凹設されていない場合、下流側に配置されている保持部材12には、上流側に配置されている保持部材12において一方の導入孔41から旋回室35流入した圧縮空気の一部が他方の導入孔41から流出したものが供給される。
【0042】
・上記実施形態では、装着面15aと平行な方向に沿って気体流路17が形成されるが、供給ポート19から供給される気体が保持部材12に導入される通路であれば、装着面15aと交差する方向に沿って気体流路17が形成される構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1)と同じような効果を得ることができる。
【0043】
・上記実施形態では、装着プレート11と保持部材12とによって、すなわち複数の部材によって保持プレートを構成したが、該装着プレート11と保持部材12とが一体形成された単一の部材によって保持プレートを構成してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、気体として圧縮空気を用いたが、気体として不活性ガスなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
W…ワーク、10…非接触搬送装置、11…装着プレート、12…保持部材、12a…流出面、13…圧縮空気供給源、15…プレート本体、15a…装着面、15b…裏面、15c…外側面、17…気体流路、17a…第1気体流路、17b…第2気体流路、19…供給ポート、21…チューブ、23…嵌入孔、25…係止部、27…嵌入部、29…雄ねじ部、31…ナット、33…Oリング、34…シールプラグ、35…旋回室、37…切り欠き部、39…連通凹部、41…導入孔、43…仮想線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対向する保持面を有するとともに該保持面に複数の凹部を有した保持プレートと、
前記保持プレートの外側と前記凹部の内部とを連通するように前記保持プレートの内部に設けられて、前記保持プレートの外側から前記複数の凹部の各々の内部に気体を導入して該凹部内に気体の旋回流を発生させる気体導入路とを備え、
前記旋回流によって前記凹部の開口に負圧を形成するとともに、前記凹部の開口から流出する気体によって前記保持面と前記ワークとの間に正圧を形成することによって、前記ワークと前記保持面とが接触しない状態で前記ワークを前記保持プレートに保持する非接触保持装置であって、
前記保持プレートを構成する外側面のうちで前記保持面と交差するとともに前記保持面から連続する外側面に、前記気体導入路に連通して前記保持プレートの外側から前記気体導入路に気体を供給する供給する供給ポートを有する
ことを特徴とする非接触保持装置。
【請求項2】
前記気体導入路が、前記保持面と平行な方向に沿って前記供給ポートと前記複数の凹部の各々の内部とを連通する通路である
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触保持装置。
【請求項3】
前記保持プレートが、
前記保持面を有する板材から構成されて前記気体が流れる流路を内部に備えるとともに、前記流路に連通する複数の嵌入孔を前記保持面に有した装着プレートと、
前記複数の嵌入孔の各々に嵌入されて筒内の空間によって前記凹部を構成する筒体からなり、前記筒体の周壁に開口して前記流路と連通し前記筒体の外側から前記凹部へ気体を導入する導入孔を有する保持部材とを備え、
前記気体導入路が、前記流路と前記導入孔とによって構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触保持装置。
【請求項4】
前記保持部材が、
前記筒体の周壁に設けられた前記導入孔の開口を含むように前記筒体の周壁の全周にわたって凹設されて前記流路に連通する連通凹部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の非接触保持装置。
【請求項5】
前記筒体の内表面が円周面であり、
前記導入孔が前記円周面の接線方向に延びる孔である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の非接触保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148024(P2011−148024A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9810(P2010−9810)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】