説明

非接触券処理装置、非接触券処理方法、非接触券処理プログラム及び記録媒体

【課題】 2枚目のICカードが存在するか否かをチェックするタイプの非接触券処理装置において、2枚目の捕捉用待ち時間(t2)内で運賃判定処理を終了することにより、装置全体の判定処理時間を短縮して通過阻止が発生する確率を減少させ、改札業務の効率化を向上した非接触券処理装置及び処理方法を提供する。
【解決手段】 この改札制御装置40は、メモリ41に記憶されているシステムプログラム及びワーキングデータを用いて演算処理を行って、自動改札機300を統括的に制御する制御部42と、図示しないI/Oユニットを介してドア406L、406Rを駆動制御するドア駆動ユニット44と、表示部403の表示内容を駆動制御する表示画面駆動ユニット45と、ICカード200と交信してデータを読み書きするリーダライタ100と、駅制御装置46と通信を行う通信制御部43と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触券処理装置、非接触券処理方法、非接触券処理プログラム及び記録媒体に関し、さらに詳しくは、非接触券の判定処理時間を短縮する非接触券処理装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる新しい情報記録媒体が市場に広く出回っている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内にIC(Integrated Circuit)が組み込まれているものを総称した名称である。その中で非接触型ICカードは、電鉄の駅への入退場時に使用される定期券或いはプリペイド乗車券として、従来の磁気カード方式に代わり多くの駅の改札で採用されている。
しかし、改札機を通過しようとするICカード利用客は、読取り部にタッチ(以下、かざし「近接(接触を含む)」と記す)しながら極力早く通過しようとするため、ICカードリーダライタ(以下、リーダライタと記す)との交信時間が短くなる。装置側では、その短い時間内に判定処理を行わなければならないため、ICカードの記録情報が正確に読めなかったり、或いはICカードの情報を更新する時間が不足する。そのため、読取りや書き込みエラーが発生しやすく、十分な交信時間が確保できなかった場合には改札機は当該利用客の通過を阻止するため、自動改札機の本来の目的である改札業務の効率化を阻害する要因となっている。
また、改札機での通過を阻止する他の要因として、複数のICカードの同時使用(重ねた状態でのかざし、少なくとも一部が重畳(積層)した状態でのかざし)による判定NGがある。複数のICカードが同時にかざされた場合、どちらのICカードを有効とするかの判定が困難となるため、現在ICカードに関しては磁気カードとは異なり2枚の同時使用を認めていない。即ち、少なくとも一部が重ねられた2枚のICカードをほぼ同時に検知する「2枚かざし検知」においては、検知タイミングに時間差が発生することが検証により分かっている。図7のように改札制御装置40がリーダライタ100に対して1枚目のカード捕捉を行い(時間ta)、そのカードの認証を完了し(時間tb)、2枚目の捕捉用要求(時間tc)により2枚目が無いか否かを判定するために捕捉用待ち時間(時間td)の間待機し、2枚目が無いことを確認した上で1枚目のデータを読み込み(時間te)、運賃判定処理を実行し(時間tf)、1枚目のICカードへの書き込みを行っている(時間tg)。従って、各動作に要する時間は、t1=ta+tb、t2=tc+td、t3=te+tf+tgとなり、この一連の動作のために要する合計時間T1は、T1=t1+t2+t3となる。
【0003】
図8は図7の従来の改札機の動作を更に詳細に説明するフローチャートである。まず、改札制御装置40が1枚目のICカードの捕捉を行い(S11)、そのカードの認証動作を行う(S12)。認証の結果、認証されないICカードであると判定されるとエラー処理(S19)を行って終了する。認証されると2枚目のICカードの有無を確認するための2枚目補足用要求をリーダライタ100に出し(S13)、捕捉用待ち時間(t2)が経過するまで待つ(S14)。時間(t2)が経過すると、2枚目のICカードが有るか否かをチェックして(S15)、有ればエラー処理(S19)を行って終了する。2枚目が無ければ1枚目のICカードに記録されているデータを読み込んで(S16)、そのデータに基づいて運賃判定処理を実行し(S17)、1枚目のICカードにデータを書き込んで(S18)終了する。
このように、従来の改札機では、2枚目のICカードが存在するか否かをチェックするために、必ず捕捉用待ち時間(t2)待ってから運賃判定処理を行うシーケンスがプログラムに組み込まれており、この時間が全体の判定処理時間を長くする要因となっている。このことは、利用客がICカードを更に長くかざさなければ通過阻止の確率が増加することを意味しており、エラーの発生率の増加をもたらしたり、改札業務の効率化を阻害することになる。
また従来例として特許文献1には、非接触券処理装置の本体に設けられているアンテナの交信範囲に非接触券がかざされたときに、その本体とその非接触券との間でデータ授受を行うデータ授受手段と、前記非接触券処理装置本体が前記非接触券から本体から送出された所定のデータの書込みを終了した旨の書込終了信号を受信しないときに、新たなデータ授受により得られた非接触券の読取データの内容、カードID及びカードメモリ内の書込識別情報が本体に記憶されている内容と一致したときは減額処理を行わずにその新たなデータ授受に係る非接触券の使用を有効と判定する技術について開示されている。
【特許文献1】特開2001−283265公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上で説明したとおり、改札機での通過阻止の要因には大きくわけて2つあり、一つは人的な要因であり、他の一つは改札機の制御方法による要因である。人的な要因はある程度の改善は見込めるが、完全に無くすことは不可能である。また改札機の制御方法では、2枚目のICカードが存在するか否かをチェックする改札機においては、必ず2枚目の捕捉用待ち時間(t2)待ってから運賃判定処理を行うシーケンスが必要なため、これ以上判定処理時間を短縮することは困難であるといった問題がある。
また特許文献1に開示されている従来技術は、同じICカードが再度かざされた場合でも、2度引きを防止する処理方法に関する発明であり、中央装置との複雑なデータのやり取りが必要となり、制御が複雑となるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、2枚目のICカードが存在するか否かをチェックするタイプの非接触券処理装置において、2枚目の捕捉用待ち時間(t2)内で運賃判定処理を終了することにより、装置全体の判定処理時間を短縮して通過阻止が発生する確率を減少させ、改札業務の効率化を向上した非接触券処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券を処理する非接触券処理装置において、該非接触券処理装置の本体に設けられているアンテナの交信範囲に前記非接触券が近接されたときに、当該非接触券処理装置の本体と非接触券との間でデータ授受を行うデータ授受手段と、前記非接触券処理装置を制御する制御手段と、を備え、少なくとも2枚の前記非接触券が重ねて前記アンテナの交信範囲に近接された場合に、前記少なくとも2枚の非接触券の中から最初に捕捉された第1の非接触券が正規の非接触券であると認証されてから2枚目の非接触券を捕捉可能とするための捕捉用待ち時間後に、枚数超過としてエラー処理する非接触券処理装置であって、前記制御手段は、前記データ授受手段により捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始すると同時に前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行し、該運賃判定処理の実行中に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すように制御することを特徴とする。
本発明の特徴は、従来の非接触券処理装置のハード構成を変更することなく、装置全体の判定処理時間を短縮するために、2枚目の非接触券が存在するか否かをチェックするタイプの非接触券処理装置において、捕捉用待ち時間内で運賃判定処理を終了するようにしたものである。この変更はソフトウェアレベルで可能である。これにより、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間の分だけ短縮することが可能となる。そして、1枚目の非接触券の読み込みを開始するとすぐに運賃判定処理を実行し、その実行中にマルチタスクにより2枚目の非接触券の有無を判定するための要求を出すものである。
請求項2は、前記制御手段は、前記データ授受手段により捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始し、該読み取りの終了後前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出し、その後、前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行することを特徴とする。
本発明では、1枚目の非接触券の読み込みを開始すると、次に2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出し、その動作が終了すると1枚目の非接触券の運賃判定処理を実行するものであり、全ての動作がシングルタスクでシーケンシャルに行われる。
請求項3は、前記制御手段は、前記捕捉用待ち時間を計時するタイマーを備え、前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すと同時に前記タイマーをスタートさせ、該タイマーが前記捕捉用待ち時間を計時完了し、且つ前記2枚目の非接触券が捕捉されない場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新することを特徴とする。
請求項1または2の処理を実行するために、制御手段は、2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すと、捕捉用待ち時間を計時するタイマーをスタートさせ、タイマーがタイムオーバしたときに2枚目の非接触券が捕捉されていなければ、1枚目の非接触券に記録されている記録内容を更新するものである。
【0006】
請求項4は、前記捕捉用待ち時間は前記運賃判定処理の処理時間と少なくとも一部が重複していることを特徴とする。
捕捉用待ち時間内に運賃判定処理を終了させるのが最も効果的である。そのためには、少なくとも捕捉用待ち時間と運賃判定処理時間が同じである必要がある。従って、捕捉用待ち時間は運賃判定処理時間と同じか、それ以上であることが必要十分条件であり、逆の場合は、捕捉用待ち時間と運賃判定処理時間の差の時間だけ短縮される。
請求項5は、前記制御手段は、前記データ授受手段により2枚目の非接触券が捕捉された場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないことを特徴とする。
捕捉用待ち時間が到来すると、2枚目の非接触券が捕捉されたか否かを判定する。その結果、捕捉されると2枚の同時使用を認めない原則により、エラーとして処理され、第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないようにする。
請求項6は、前記非接触券処理装置は、非接触式自動改札機であることを特徴とする。
本発明の非接触券処理装置は、電鉄の改札に設置され、ICカードによる乗客の入出場を処理する非接触式自動改札機に適応している。
請求項7は、無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券を処理する非接触券処理方法において、非接触券処理装置の本体に設けられているアンテナの交信範囲に前記非接触券が近接されたときに、当該非接触券処理装置の本体と非接触券との間でデータ授受を行うデータ授受ステップと、前記非接触券処理装置を制御する制御ステップと、を備え、少なくとも2枚の前記非接触券が重ねて前記アンテナの交信範囲に近接された場合に、前記少なくとも2枚の非接触券の中から最初に捕捉された第1の非接触券が正規の非接触券であると認証されてから2枚目の非接触券を捕捉可能とするための捕捉用待ち時間後に、枚数超過としてエラー処理する非接触券処理方法であって、前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始すると同時に前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行し、該運賃判定処理の実行中に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すように制御することを特徴とする。
本発明は請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0007】
請求項8は、前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始し、該読み取りの終了後に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出し、その後、前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行することを特徴とする。
本発明は請求項2と同様の作用効果を奏する。
請求項9は、前記制御ステップでは、前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すと同時に前記タイマーをスタートさせ、該タイマーが前記捕捉用待ち時間を計時完了し、且つ前記2枚目の非接触券が捕捉されない場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新することを特徴とする。
本発明は請求項3と同様の作用効果を奏する。
請求項10は、前記捕捉用待ち時間は前記運賃判定処理の処理時間と少なくとも一部が重複していることを特徴とする。
本発明は請求項4と同様の作用効果を奏する。
請求項11は、前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより2枚目の非接触券が捕捉された場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないことを特徴とする。
本発明は請求項5と同様の作用効果を奏する。
請求項12は、請求項7乃至11の何れか一項に記載の非接触券処理方法をコンピュータが制御可能にプログラミングしたことを特徴とする。
請求項13は、請求項12に記載の非接触券処理プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、7の発明によれば、2枚目の非接触券が存在するか否かをチェックするタイプの非接触券処理装置において、装置全体の判定処理時間を短縮するために、捕捉用待ち時間内で運賃判定処理を終了するために、1枚目の非接触券の読み込みを開始すると同時に運賃判定処理を実行し、この実行中にマルチタスクにより2枚目の非接触券の捕捉用要求を出すようにしたので、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間だけ短縮することができ、且つ従来の処理手順に近い非接触券処理装置を実現することができる。
また請求項2、8では、2枚目の非接触券が存在するか否かをチェックするタイプの非接触券処理装置において、装置全体の判定処理時間を短縮するために、捕捉用待ち時間内で運賃判定処理を終了するために、1枚目の非接触券の読み込みを開始するとシングルタスクにより順次処理を実行するので、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間だけ短縮することができ、且つ制御方法が単純化された非接触券処理装置を実現することができる。
また請求項3、9では、制御手段は、捕捉用待ち時間を計時するタイマーをスタートさせ、タイマーがタイムオーバしたときに2枚目の非接触券が捕捉されていなければ、1枚目の非接触券に記録されている記録内容を更新するので、1枚目の非接触券のデータを更新する動作を2枚目の非接触券がないときに限り実行することができ、無駄な更新動作を防ぐことができる。
また請求項4、10では、捕捉用待ち時間と運賃判定処理時間が少なくとも一部が重複しているので、最大でも捕捉用待ち時間後には1枚目の非接触券のデータを更新することができる。
【0009】
また請求項5、11では、制御手段は、データ授受手段により2枚目の非接触券が捕捉された場合、第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないので、第1の非接触券の元データを保存することができる。
また請求項6では、非接触券処理装置は、非接触式自動改札機であるので、装置全体の判定処理時間を短縮して通過阻止が発生する確率を減少させ、改札業務の効率化を向上させることができる。
また請求項12では、本発明の非接触券処理方法をコンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができる。
また請求項13では、非接触券処理プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、駅務機器のひとつである自動改札機(非接触券処理装置)本体の外観構成を示す斜視図である。この自動改札機300は、改札通路Pに沿い所定の間隔を保って設けられた一対の筐体401L、401Rと、一方の筐体401Rの改札通路Pの進入側上面に設けられたICカード(非接触券)近接部402と、筐体401Rの退出側上面に設けられた表示部403と、筐体の側面上方に設けられたスピーカ404と、一対の筐体の向かい合う側面に配置され改札通路P内の利用者の通行を検知するフォトセンサ等の人間検知センサ405と、筐体の側面に設けられ利用者の改札通過を直接阻止するドア406L、406Rとを備えて構成される。尚、ICカード近接部402内にはループアンテナ(アンテナ)9が配設されている。また、筐体401R内部には改札制御装置40とリーダライタ(データ授受手段)100が収納され、リーダライタ100とループアンテナ9が内部で接続されている。
図2は改札制御装置40の内部構成と周辺回路との構成を示すブロック図である。この改札制御装置40は、メモリ41に記憶されているシステムプログラム及びワーキングデータを用いて演算処理を行って、自動改札機300を統括的に制御する制御部42と、図示しないI/Oユニットを介してドア406L、406Rを駆動制御するドア駆動ユニット44と、表示部403の表示内容を駆動制御する表示画面駆動ユニット45と、ICカード200と交信してデータを読み書きするリーダライタ100と、駅制御装置46と通信を行う通信制御部43と、を備えて構成される。この制御部42には、I/Oユニットを介してスピーカ404の音声を駆動制御する音声駆動ユニット、及び人間検知センサ405の検知信号を入力するためのセンサアンプ等が接続されているが、ここでは省略されている。また通信制御部43には駅制御装置46が接続されているとともに、その駅制御装置46は、通信回線48を介して本社のホストコンピュータ47に接続されている。更に駅制御装置46には、図示しないが自動改札機300以外に当駅に設置されている他の自動改札機や自動券売機等の他の駅務機器も接続されている。
図3は、ICカード用リーダライタの構成を示すブロック図である。このICタグ用リーダライタ(以下、単にリーダライタと呼ぶ)100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行って自動改札機300を統括的に制御する改札制御装置40によって制御される。リーダライタ100は、外部の改札制御装置40とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカードとの電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0011】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、ICカードの構成を先に説明しておく。図4は、一般的なICカードの構成を示すブロック図である。本実施形態のICカード200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするループアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、ループアンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0012】
次に、図3と図4を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波としてICカード近接部402から放射される。次に、ICカード200がICカード近接部402に近接されると、ループアンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、ICカード200内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してループアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード200が規格に合致したカードであると認識する。それにより、以後リーダライタ100とICタグ200の間でポーリングが行われる。
【0013】
図5は本発明の改札制御装置40の制御手順を表すシーケンス図である。同じ時間には図7と同じ符号を付して説明する。まず改札制御装置40がリーダライタ100に対して1枚目のICカード捕捉を行うように制御する(時間ta)。そして、そのICカードが規格に合致したカードであるかの認証を完了すると(時間tb)、マルチタスクで処理する場合は、実線のように1枚目のICカードの読み込みを開始して(時間te)、ほぼ同時に1枚目のICカードの運賃判定処理を実行しておき(時間tf)、その実行中に2枚目の捕捉用要求をリーダライタから送信する(時間tc)。また、シングルタスクで処理する場合は、点線のように1枚目のICカードの読み込みを開始して(時間te)、次に2枚目の捕捉用要求をリーダライタから送信して(時間tc)、1枚目のICカードの運賃判定処理を実行する(時間(tf))。そして捕捉用待ち時間(td)になると、2枚目のICカードが無いことを確認した上で1枚目のICカードへの書き込みを行う(時間tg)。従って、各動作に要する時間は、t4=ta+tb+te、t2=tc+td、t5=tgとなり、この一連の動作のために要する合計時間T2は、T2=t4+t2+t5となる。ここで、図7の従来の制御手順と比較するためにT1とT2の時間を比較してみる。T1=t1+t2+t3であり、T2=t4+t2+t5であるから、共通の時間t2を消去すると、結局、T1=t1+t3となり、T2=t4+t5となる。即ち、T1=(ta+tb)+(te+tf+tg)と変換でき、T2=(ta+tb+te)+tgと変換できる。この式から共通項を消去すると、T1=tfが残りT2は全て消去される。即ち、T1よりT2は時間tf分短いといえる。この時間tfは図5から明らかな通り、1枚目のICカードの運賃判定処理を実行する時間であり、この時間分装置全体の判定処理時間を短縮したことになる。尚、本実施形態では2枚目の捕捉用要求をリーダライタから送信する時間tc後に、1枚目のICカードの運賃判定処理を実行しているが、同時に並行処理することにより更に時間を短縮することもできる。
【0014】
図6は図5の本発明の改札制御装置40の制御手順を更に詳細に説明するフローチャートである。このフローチャートでは、説明を簡略化するためにシングルタスクの場合について説明する。改札制御装置40が1枚目のICカードの捕捉を行い(S1)、そのカードの認証動作を行う(S2)。認証の結果、認証されないICカードであると判定されると(S2でNOのルート)、エラー処理(S9)を行って終了する。ステップS2で認証されると(S2でYESのルート)、1枚目のICカードに記録されているデータを読み込んで(S3)、2枚目のICカードを捕捉するための2枚目補足用要求をリーダライタ100に出し(S4)、捕捉用待ち時間(t2)が経過するまでに(S5でNOのルート)1枚目のICカードのデータに基づいて運賃判定処理を実行しておき(S8)、時間(t2)が経過すると(S5でYESのルート)、2枚目のICカードが有るか否かをチェックして(S6)、有れば(S6でYESのルート)エラー処理(S9)を行って終了する。ステップS6で2枚目が無ければ(S6でNOのルート)、1枚目のICカードにデータを書き込んで(S7)終了する。
本実施形態の特徴は、従来の改札機のハード構成を変更することなく、装置全体の判定処理時間を短縮するために、2枚目のICカードが存在するか否かをチェックするタイプの改札機において、捕捉用待ち時間内で運賃判定処理を終了するようにしたものである。この変更はソフトウェアにより可能である。これにより、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間だけ短縮することが可能となる。そして、1枚目のICカードの読み込みを開始するとすぐに運賃判定処理を実行し、その実行中にマルチタスクにより2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すものである。これにより、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間だけ短縮することができ、且つ従来の処理手順に近い非接触券処理装置を実現することができる。また1枚目のICカードの読み込みを開始すると、次に2枚目のICカードを捕捉するための要求を出し、その動作が終了すると1枚目のICカードの運賃判定処理を実行するものであり、全ての動作がシングルタスクでシーケンシャルに行っても構わない。これにより、装置全体の判定処理時間を運賃判定処理に要する時間だけ短縮することができ、且つ制御方法が単純化された非接触券処理装置を実現することができる。
【0015】
以上の処理を実行するために、制御装置40は、2枚目のICカードを捕捉するための要求を出すと捕捉用待ち時間を計時するタイマーをスタートさせ、1枚目のICカードの運賃判定処理を実行する。そしてタイマーがタイムオーバしたときに2枚目のICカードが捕捉されていなければ、1枚目のICカードに記録されている記録内容を更新するものである。
また本発明は捕捉用待ち時間内に運賃判定処理を終了させるのが最も効果的である。そのためには、少なくとも捕捉用待ち時間と運賃判定処理時間が同じである必要がある。従って、捕捉用待ち時間は運賃判定処理時間と同じか、それ以上であることが必要十分条件であり、逆の場合は、捕捉用待ち時間と運賃判定処理時間の差の時間だけ短縮される。
以上、本実施形態として改札機を例にとって説明したが、ICカードを利用して各種処理を実施する装置一般、例えば、自動販売機、両替機、または出金機等に適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の駅務機器のひとつである自動改札機本体の外観構成を示す斜視図。
【図2】本発明の改札制御装置40の内部構成と周辺回路との構成を示すブロック図。
【図3】ICカード用リーダライタの構成を示すブロック図。
【図4】一般的なICカードの構成を示すブロック図。
【図5】本発明の改札制御装置40の制御手順を表すシーケンス図。
【図6】本発明の改札制御装置40の制御手順を更に詳細に説明するフローチャート。
【図7】従来の改札制御装置40の制御手順を表すシーケンス図。
【図8】従来の改札制御装置40の制御手順を更に詳細に説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0017】
40 改札制御装置、41 メモリ、42 制御部、43 通信制御部、44 ドア駆動ユニット、45 表示画面駆動ユニット、46 駅制御装置、100 リーダライタ、200 ICカード、300 自動改札機、403 表示部、406L、406R ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券を処理する非接触券処理装置において、該非接触券処理装置の本体に設けられているアンテナの交信範囲に前記非接触券が近接されたときに、当該非接触券処理装置の本体と非接触券との間でデータ授受を行うデータ授受手段と、前記非接触券処理装置を制御する制御手段と、を備え、少なくとも2枚の前記非接触券が重ねて前記アンテナの交信範囲に近接された場合に、前記少なくとも2枚の非接触券の中から最初に捕捉された第1の非接触券が正規の非接触券であると認証されてから2枚目の非接触券を捕捉可能とするための捕捉用待ち時間経過後に、枚数超過としてエラー処理する非接触券処理装置であって、
前記制御手段は、前記データ授受手段により捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始すると同時に前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行し、該運賃判定処理の実行中に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すように制御することを特徴とする非接触券処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記データ授受手段により捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始し、該読み取りの終了後前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出し、その後、前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の非接触券処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記捕捉用待ち時間を計時するタイマーを備え、前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すと同時に前記タイマーをスタートさせ、該タイマーが前記捕捉用待ち時間を計時完了し、且つ前記2枚目の非接触券が捕捉されない場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新することを特徴とする請求項1または2に記載の非接触券処理装置。
【請求項4】
前記捕捉用待ち時間は前記運賃判定処理の処理時間と少なくとも一部が重複していることを特徴とする請求項1、2または3に記載の非接触券処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記データ授受手段により2枚目の非接触券が捕捉された場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非接触券処理装置。
【請求項6】
前記非接触券処理装置は、非接触式自動改札機であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の非接触券処理装置。
【請求項7】
無線通信機能を備えたICカードからなる非接触券を処理する非接触券処理方法において、非接触券処理装置の本体に設けられているアンテナの交信範囲に前記非接触券が近接されたときに、当該非接触券処理装置の本体と非接触券との間でデータ授受を行うデータ授受ステップと、前記非接触券処理装置を制御する制御ステップと、を備え、少なくとも2枚の前記非接触券が重ねて前記アンテナの交信範囲に近接された場合に、前記少なくとも2枚の非接触券の中から最初に捕捉された第1の非接触券が正規の非接触券であると認証されてから2枚目の非接触券を捕捉可能とするための捕捉用待ち時間経過後に、枚数超過としてエラー処理する非接触券処理方法であって、
前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始すると同時に前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行し、該運賃判定処理の実行中に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すように制御することを特徴とする非接触券処理方法。
【請求項8】
前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより捕捉された前記第1の非接触券を正規の非接触券であると認証すると、当該非接触券の読み取りを開始し、該読み取りの終了後に前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出し、その後、前記第1の非接触券の記録内容に基づいた運賃判定処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の非接触券処理方法。
【請求項9】
前記制御ステップでは、前記2枚目の非接触券を捕捉するための要求を出すと同時に前記タイマーをスタートさせ、該タイマーが前記捕捉用待ち時間を計時完了し、且つ前記2枚目の非接触券が捕捉されない場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新することを特徴とする請求項7に記載の非接触券処理方法。
【請求項10】
前記捕捉用待ち時間は前記運賃判定処理の処理時間と少なくとも一部が重複していることを特徴とする請求項7、8または9に記載の非接触券処理方法。
【請求項11】
前記制御ステップでは、前記データ授受ステップにより2枚目の非接触券が捕捉された場合、前記第1の非接触券に記録されている記録内容を更新しないことを特徴とする請求項7、8または9に記載の非接触券処理方法。
【請求項12】
請求項7乃至11の何れか一項に記載の非接触券処理方法をコンピュータが制御可能にプログラミングしたことを特徴とする非接触券処理プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触券処理プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−164084(P2006−164084A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357458(P2004−357458)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】