説明

非接触型ICカード調整方法、非接触型ICカード調整システム、非接触型ICカードおよび移動通信装置

【課題】 非接触型ICカードにおける共振回路の調整を容易に行え、再調整も容易に行えるようにする。
【解決手段】 非接触型ICカードは、アンテナ2に並列接続可能な複数のコンデンサ4a,4b,4cと、それらをアンテナ2に接続させる複数のスイッチ5a,5b,5cと、コンデンサ4a,4b,4cのアンテナ2に対する接続状態を設定するスイッチ切替回路7とが内蔵されておる。リーダ/ライタ装置20には、非接触型ICカードからの電波によって誘起される電圧値を測定する電圧測定回路24が設けられている。そして、入力装置9から、電圧測定回路24で測定された電圧値があらかじめ決められている値になるように、スイッチ切替回路7に、スイッチ5a,5b,5cの切替状態を制御させる指示を入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型ICカードの共振回路を調整する調整方法および調整システム、非接触型ICカード、ならびに非接触型ICカードが搭載されている移動通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信方式を利用した非接触型ICカードが搭載された機器が広く普及しつつある。非接触型ICカードは、ICチップとアンテナコイル(以下、アンテナという。)が内蔵されたカードである。非接触型ICカードの実現例として、携帯機器に内蔵されるようなごく小サイズのものからクレジットカード大のものまで種々のサイズのものがある。
【0003】
近接型の非接触型ICカード(具体的には、非接触型ICカードが搭載されている機器)をリーダ/ライタ装置に近づけると、非接触型ICカードに内蔵されているアンテナとリーダ/ライタ装置におけるアンテナとの電磁結合によってアンテナに起電力が生ずる。発生した電力によって非接触型ICカードに内蔵されているICチップが駆動される。そして、ICチップ内の回路の制御によってアンテナから電波が出力される。
【0004】
非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間での無線通信において使用されるキャリア周波数は規格として所定周波数(例えば、13.56MHz)に定められている。そこで、非接触型ICカードには、共振周波数を所定周波数に同調させるための同調回路が設けられている。同調回路において一般にコンデンサが用いられ、アンテナとコンデンサとで共振回路が形成される。
【0005】
非接触型ICカードが搭載された機器を実際に使用する場合に、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離が変化すると、共振回路の利得が変化し、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間で良好な通信ができなくなるという問題が指摘されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
そのような問題を解消するために、特許文献1,2には、共振回路を構成するコンデンサの容量を可変できるようにする方式が記載されている。例えば、特許文献1には、それぞれがスイッチと直列接続された複数のコンデンサが並列接続されたコンデンサ並列体を設け、電磁結合にもとづいて発生された電圧の値に応じてスイッチのオン/オフを制御する方式が記載されている。そして、そのような方式によって共振周波数を変化させ、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離が変化しても、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間で良好な通信が維持されるようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−160122号公報(段落0003−0009、図1)
【特許文献2】特開平5−128319号公報(段落0005−0007、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現実の使用環境では、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離はさほど変化しないと考えられる。例えば、鉄道駅の改札に設置されたリーダ/ライタ装置と非接触型ICカードとの間で通信を行わせる場合、利用者は、非接触型ICカードが搭載された機器(カードなど)を、固定的に設置されているリーダ/ライタ装置の前面に設けられているプラスチック面などに当てる。また、コンビニエンスストアに設置されたリーダ/ライタ装置と非接触型ICカードとの間で通信を行わせる場合、利用者は、非接触型ICカードが搭載された機器(カードなど)を、固定的に設置されているリーダ/ライタ装置を内蔵した機器における定められた部分に置く。そのような使用形態では、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離はほぼ固定的であり、通信距離は常に確保されているといえる。
【0009】
すると、非接触型ICカードの現実的な使用形態を考慮した場合、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離が変わることを考慮するよりも、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離はほぼ一定であるとして、その距離において良好な通信ができるように非接触型ICカードの共振回路の設定を行うことが重要である。そのような設定を行っておけば、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間の距離が多少ずれても、良好な通信が維持される。
【0010】
つまり、非接触型ICカードが搭載された個々の機器を、リーダ/ライタ装置と良好な通信が行えるように共振回路が調整された状態で利用者に提供することが重要である。換言すれば、非接触型ICカード製造時のアンテナの太さや長さ等のばらつきを考慮して、それぞれの機器における非接触型ICカードの共振回路の特性(共振周波数)を最適化するように調整した上で、利用者に提供することが重要である。なお、良好な通信が行えるとは、非接触型ICカードとリーダ/ライタ装置との間で、データの送受信が成功することを意味する。
【0011】
図6は、共振回路の調整方法の一例を説明するための回路図である。アンテナ2およびIC部6を有する非接触型ICカードにおいて、まず、アンテナ2に並列に多数の個数のコンデンサを接続しておく。そして、共振回路のインピーダンスをネットワークアナライザ等で測定しながらコンデンサを1つずつ外す。そして、共振回路のインピーダンスが、例えば共振周波数が所定周波数としてのキャリア周波数に一致するような値になったときに、コンデンサを外す作業を止め、そのときに残っているコンデンサの数に応じた容量値を共振回路における調整された容量値とする。
【0012】
そのような調整によって、アンテナ2のパターンの太さや長さにばらつきがあっても、非接触型ICカードにおける共振回路の定数が最適値に調整される。しかしながら、そのような調整の仕方では、調整に時間がかかるという問題がある。また、一旦調整がなされてからは、再調整を行うことができないという問題がある。
【0013】
なお、図6を参照して説明されるような調整方法によって調整された非接触型ICカードに対して、さらに、特許文献1,2に記載されたような方式を適用することもできる。
【0014】
本発明は、上記のような問題を解決するための発明であって、非接触型ICカードおよび非接触型ICカードが搭載されている移動通信装置において、非接触型ICカードにおける共振回路の調整を容易に行えるとともに、再調整も容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による非接触型ICカード調整方法は、電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードであり、かつ、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子(例えば、コンデンサ4a,4b,4c)とそれらの容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子(例えば、スイッチ5a,5b,5c)とが内蔵された非接触型ICカードの共振回路を調整する方法であって、接触型ICカードからの電波によってリーダ/ライタ装置に誘起される電圧値を測定し、測定された電圧値があらかじめ決められている値(マージンを持った範囲でもよい。)になるように複数の切替素子の切替状態を制御することによって、複数の容量素子のアンテナコイルに対する接続状態を設定することを特徴とする。
【0016】
測定された電圧値があらかじめ決められている値になったときの複数の切替素子の切替状態を、非接触型ICカードのメモリ部に記憶させるようにしてもよい。
【0017】
本発明による非接触型ICカード調整システムは、電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードであり、かつ、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、それらの容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、複数の切替素子の切替状態を制御して複数の容量素子のアンテナコイルに対する接続状態を設定する切替回路とが内蔵された非接触型ICカードの共振回路を調整するシステムであって、非接触型ICカードからの電波によってリーダ/ライタ装置に誘起される電圧値を測定する電圧測定回路と、測定された電圧値があらかじめ決められている値になるように、切替回路に、複数の切替素子の切替状態を制御させる指示を入力する入力回路(例えば、入力装置9)とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明による非接触型ICカードは、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、複数の容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、特性が調整された共振回路を実現するための切替パターン(例えば、オン/オフパターン)を記憶したメモリ部と、メモリ部に記憶されている切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態(例えば、スイッチのオン/オフ状態)を制御する切替回路(例えば、スイッチ切替回路7)とを備えたことを特徴とする。
【0019】
メモリ部には、複数種類の切替パターンが記憶され、切替回路が、選択指示に応じて、メモリ部に記憶されている複数種類の切替パターンのいずれかを選択し、選択した切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態を制御するように構成されていてもよい。
【0020】
本発明による移動通信装置は、内蔵する非接触型ICカードが、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、複数の容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、特性が調整された共振回路を実現するための切替パターンを記憶したメモリ部と、メモリ部に記憶されている切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態を制御する切替回路とを備えたことを特徴とする。
【0021】
移動通信装置において、内蔵する非接触型ICカードは、メモリ部に複数種類の切替パターンが記憶され、切替回路が、選択指示に応じて、メモリ部に記憶されている複数種類の切替パターンのいずれかを選択し、選択した切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態を制御するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、非接触型ICカードの共振回路を調整するときに、リーダ/ライタ装置側に誘起された電圧があらかじめ定めた値になるように共振回路の特性を最適化するので、ネットワークアナライザ等の測定器を使用することなく調整を行うことができ、測定器を使用した場合に比べて調整効率を上げることができる。また、記憶されている切替パターンを変更可能に構成することによって共振回路の特性を変えることができるようになり、使用環境が変化したことに応じて通信距離が確保できなくなったような場合でも、容易に非接触型ICカードの共振回路を再調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による移動通信装置における非接触型ICカードに関連する部分と、調整用のリーダ/ライタ装置とを示す図、すなわち非接触型ICカードの共振回路を調整する非接触型ICカード調整システムの構成例を示す構成図である。
【0024】
図1に示すように、非接触型ICカード10には、アンテナ2およびIC部6の他に、同調用のコンデンサ3と調整用のコンデンサ並列体4とが、アンテナ2と並列に設けられている。同調用のコンデンサ3は、常にアンテナ2に並列接続されるコンデンサである。図1には、一例としてコンデンサ並列体4において3つの調整用のコンデンサ4a,4b,4cが設けられている例が示されている。コンデンサ4aは、切替スイッチ部5におけるスイッチ5aで、アンテナ2に並列接続されたり切り離されたりする。また、コンデンサ4bは、切替スイッチ部5におけるスイッチ5bで、アンテナ2に並列接続されたり切り離されたりする。そして、コンデンサ4cは、切替スイッチ部5におけるスイッチ5cで、アンテナ2に並列接続されたり切り離されたりする。
【0025】
さらに、非接触型ICカード10には、スイッチ5a,5b,5cのオン/オフを制御するスイッチ切替制御回路7と、スイッチ5a,5b,5cのオン/オフのパターンを記憶するメモリ部8が搭載されている。スイッチ切替制御回路7は、非接触型ICカード10の外部の入力装置9とのインタフェース機能も有する。スイッチ5a,5b,5cのオン/オフのパターンは、入力装置9から入力され、スイッチ切替制御回路7を介してメモリ部8に設定される。なお、オン/オフのパターンとは、例えば、コンデンサ4aのみをアンテナ2に接続させ、コンデンサ4b,4cをアンテナ2に接続させない場合には、(オン、オフ、オフ)である。また、ここでは、コンデンサ並列体4において3つの調整用のコンデンサ4a,4b,4cが設けられている例を示すが、コンデンサの数は3つに限られない。
【0026】
IC部6は、変復調回路、およびCPUやメモリ部が形成されたIC(LSI)を含む。また、非接触型ICカード10において、アンテナ2とそれに接続されるコンデンサとで形成される共振回路とIC部6との間には、直流電圧を生成する整流回路等(図示せず)が設けられている。
【0027】
リーダ/ライタ装置20には、アンテナ22、同調用のコンデンサ23および例えば13.56MHzで発振する発振器25の他に、電圧測定回路24が設けられている。電圧測定回路24は、非接触型ICカード10のアンテナコイル2が電波を出しているときにリーダ/ライタ装置20のアンテナコイル22に誘導された電流による電圧を測定する。例えば、誘導された電流の値に比例した電圧を発生させ、その値を測定した電圧の値とする。
【0028】
また、リーダ/ライタ装置20には、電圧測定回路24が測定した電圧の値を表示する表示部26が接続されている。
【0029】
移動通信装置が携帯電話機である場合には、図2に例示するように、基地局との間で無線伝送を行うためのアンテナ41、高周波信号の変復調等を行う無線回路42、装置制御とデータ処理を行うマイクロコンピュータ等による制御部44、音声処理を行う音声回路43、入力キーが配置された操作部45、LCD等による表示部46、スピーカ47およびマイクロフォン48などを備えた携帯電話機に、非接触型ICカード10が搭載される。
【0030】
次に、図3のフローチャートを参照して共振回路の調整方法について説明する。
非接触型ICカード10における共振回路の調整を行う場合、調整者は、まず、非接触型ICカード10を、リーダ/ライタ装置20に近づける(ステップS1)。ここで、非接触型ICカード10とリーダ/ライタ装置20との間の距離を、実際の運用において非接触型ICカード10を内蔵した移動通信装置とリーダ/ライタ装置との間の距離と同じになるようにする。例えば、鉄道駅の改札に設けられているタッチアンドゴー方式のリーダ/ライタ装置での使用を想定する場合には、リーダ/ライタ装置の前面に設けられているプラスチック面とリーダ/ライタ装置におけるアンテナとの間の距離と同じになるようにする。
【0031】
そして、リーダ/ライタ装置20から電波を送出させる。すると、非接触型ICカード10において起電力が生じ、発生した電圧で駆動されるIC部6が動作開始し、アンテナ2を介してデータを電波として送出する(ステップS2)。すると、電磁結合によってリーダ/ライタ装置20におけるアンテナ22に電流が誘導される。電圧測定回路24は、その電流に応じた電圧値を表示部26に出力する。表示部26は、測定された電圧値を表示する。なお、調整開始時点では、スイッチ5a,5b,5cは全てオン状態であり、メモリ部8には、初期状態としてのオン/オフのパターン(オン、オン、オン)が設定され、スイッチ切替回路7は、初期状態のオン/オフのパターンに従ってスイッチ5a,5b,5cの設定を行っているとする。ただし、初期状態は、他の状態、例えば(オフ、オフ、オフ)の状態であってもよい。
【0032】
調整者は、表示部26に表示された電圧値を視認する。また、調整者は、非接触型ICカード10の共振回路の共振周波数が適切に設定されている場合に誘導される電流に応じた電圧値(目標電圧値)をあらかじめ把握している。そして、表示部26に表示された電圧値が、目標電圧値にマージンを持たせた範囲である指定範囲に入っているか否か判断する(ステップS3)。指定範囲に入っている場合には、そのときのオン/オフのパターンをメモリ部8に保存させる(ステップS5)。
【0033】
表示部26に表示された電圧値が指定範囲に入っていない場合には、調整者は、入力装置9から、電圧値が指定範囲に入る方向に、新たなオン/オフのパターンを入力する(ステップS4)。例えば、初期状態のオン/オフのパターンが(オン、オン、オン)であったら、(オン、オン、オフ)のようにする。
【0034】
そして、再度、ステップS2,S3の処理を実行する。表示部26に表示された電圧値が指定範囲に入って場合には、そのときのオン/オフのパターンをメモリ部8に保存させるように、入力装置9からスイッチ切替回路7に指示を出す。
【0035】
その後、非接触型ICカード10を移動通信装置に組み込む。なお、ここでは、非接触型ICカード10単体で調整を行う場合を例にしているが、非接触型ICカード10を移動通信装置に組み込んだ後に、非接触型ICカード10の共振回路の調整を行うようにしてもよい。
【0036】
メモリ部8は、不揮発性のメモリである。非接触型ICカード10の共振回路の調整が終了した後、スイッチ切替回路7がメモリ部8に記憶されているオン/オフのパターンに従ってスイッチ5a,5b,5cのオン/オフを設定するように、スイッチ切替回路7を設定しておく。従って、移動通信装置の実稼働時には、非接触型ICカード10の共振回路は、調整された状態で動作する。
【0037】
以上に説明したように、この実施の形態では、非接触型ICカード10の共振回路を調整するときに、リーダ/ライタ装置20側に誘起された電圧があらかじめ定めた値になるように共振回路の特性(共振周波数)を調整するので、ネットワークアナライザ等の測定器を使用することなく調整を行うことができ、測定器を使用した場合に比べて調整効率を上げることができる。
【0038】
また、メモリ部8に記憶されているオン/オフのパターンを変更することによって共振回路の特性を変えることができるので、使用環境が変化したことに応じて通信距離が確保できなくなったような場合でも、容易に非接触型ICカード10の共振回路を再調整することができる。
【0039】
さらに、この実施の形態では、リーダ/ライタ装置20側に誘起された電圧にもとづいて調整を行っているので、調整のための電圧測定回路を非接触型ICカード10に搭載する必要はない。従って、調整容易な非接触型ICカード10を、コスト増なく得ることができることになる。
【0040】
実施の形態2.
上記の実施の形態では、調整者が表示部26に表示された電圧値にもとづいてスイッチ5a,5b,5cの切替の指示を入力装置9から入力するようにした。しかし、スイッチ5a,5b,5cの切替の指示を自動的に行うようにしてもよい。図4は、スイッチ5a,5b,5cの切替の指示を自動的に行う場合の非接触型ICカードと調整用のリーダ/ライタ装置とを示す回路図である。
【0041】
図4に示す例では、電圧測定回路24は、切替パターン制御回路30に対して電圧値を出力する。切替パターン制御回路30には、少なくとも、非接触型ICカード10の共振回路の共振周波数が適切に設定されている場合に誘導される電流に応じた電圧値(目標電圧値)にマージンを持たせた範囲である指定範囲が設定されている記憶部と、電圧測定回路24が出力した電圧値と指定範囲とを比較する比較回路と、比較回路の比較結果にもとづいて入力装置9に指示を与える制御回路とが搭載されている。
【0042】
図4に例示するように構成された場合にも、共振回路の調整は、図3のフローチャートに示すように実行される。すなわち、調整者は、まず、非接触型ICカード10を、リーダ/ライタ装置20に近づける。ただし、上記の実施の形態の場合とは異なり、その後は、調整者が表示部26の表示を視認したり入力装置9から指示入力を行うのではなく、切替パターン制御回路30が自動的に調整を実行する。具体的には、電圧測定回路24が出力した電圧値が指定範囲に入っていることが切替パターン制御回路30における比較回路によって確認されたら、切替パターン制御回路30における制御部が、そのときのオン/オフのパターンをメモリ部8に保存させるように入力装置9に指示を出す。また、電圧測定回路24が出力した電圧値が指定範囲に入っていない場合には、切替パターン制御回路30における制御部は、電圧値が指定範囲に入る方向に新たなオン/オフのパターンを入力するように入力装置9に指示を出す。
【0043】
この実施の形態でも、ネットワークアナライザ等の測定器を使用することなく調整を行うことができ、測定器を使用した場合に比べて調整効率を上げることができる。また、容易に非接触型ICカード10の共振回路を再調整することができる。さらに、切替パターン制御回路30が自動的に調整を遂行するので、調整効率をさらに上げることができる。
【0044】
実施の形態3.
図5に例示するように、メモリ部8に複数のオン/オフパターンを設定しておいて、非接触型ICカードが搭載されている移動通信装置の実稼働時に、適宜、使用するオン/オフパターンを切り替え、いずれか一方のオン/オフパターンを使用するようにしてもよい。例えば、鉄道駅の改札に設置されたリーダ/ライタ装置とコンビニエンスストアに設置されたリーダ/ライタ装置とで、共振回路の特性を変えた方がよいような場合に、あらかじめ、2通りのオン/オフパターンをメモリ部8に設定しておく。それぞれの設定の仕方は、上記の各実施の形態において説明された通りである。
【0045】
その場合、移動通信装置には、オン/オフパターン切替のためのユーザインタフェースが組み込まれる。例えば、移動通信装置が図2に例示されたように構成されている場合に、ユーザが操作部45からの選択指示の入力を可能にするプログラムが、マイクロコンピュータによる制御部44に実装される。ユーザは、鉄道駅の改札を通過する前に、改札に設置されたリーダ/ライタ装置用に調整されたオン/オフパターンを選択し、コンビニエンスストアにおいて、コンビニエンスストアに設置されたリーダ/ライタ装置用に調整されたオン/オフパターンを選択する。制御部44は、選択に応じて、非接触型ICカード10のスイッチ切替回路7に対して、選択後のオン/オフパターンをメモリ部8から読み出して切替スイッチ部5の設定を行うように選択指示を出す。
【0046】
この実施の形態では、種々の使用環境のそれぞれについて、非接触型ICカード10とリーダ/ライタ装置との間の通信距離を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、非接触型ICカード10、および非接触型ICカード10を搭載した移動通信装置において、リーダ/ライタ装置との間で良好な通信を行えるような調整および再調整を容易に行うために好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】非接触型ICカードの共振回路を調整する非接触型ICカード調整システムの構成例を示す構成図である。
【図2】非接触型ICカードを搭載した移動通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】非接触型ICカードの共振回路の調整方法を示すフローチャートである。
【図4】非接触型ICカードの共振回路を調整する非接触型ICカード調整システムの他の構成例を示す構成図である。
【図5】メモリ部に記憶されているオン/オフパターンの一例を示す説明図である。
【図6】共振回路の調整方法の一例を説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0049】
2 アンテナ
3 コンデンサ
4 コンデンサ並列体
4a〜4c コンデンサ
5 切替スイッチ部
5a〜5c スイッチ
6 IC部
7 スイッチ切替回路
8 メモリ部
9 入力装置
10 非接触型ICカード
20 リーダ/ライタ装置
22 アンテナ
23 コンデンサ
24 電圧測定回路
25 発振器
26 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードであり、かつ、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子とそれらの容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子とが内蔵された非接触型ICカードの共振回路を調整する非接触型ICカード調整方法であって、
前記非接触型ICカードからの電波によってリーダ/ライタ装置に誘起される電圧値を測定し、
測定された電圧値があらかじめ決められている値になるように前記複数の切替素子の切替状態を制御することによって、前記複数の容量素子のアンテナコイルに対する接続状態を設定する
ことを特徴とする非接触型ICカード調整方法。
【請求項2】
測定された電圧値があらかじめ決められている値になったときの複数の切替素子の切替状態を、非接触型ICカードのメモリ部に記憶させる
請求項1記載の非接触型ICカード調整方法。
【請求項3】
電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードであり、かつ、アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、それらの容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、前記複数の切替素子の切替状態を制御して前記複数の容量素子のアンテナコイルに対する接続状態を設定する切替回路とが内蔵された非接触型ICカードの共振回路を調整する非接触型ICカード調整システムであって、
前記非接触型ICカードからの電波によってリーダ/ライタ装置に誘起される電圧値を測定する電圧測定回路と、
測定された電圧値があらかじめ決められている値になるように、前記切替回路に、前記複数の切替素子の切替状態を制御させる指示を入力する入力回路とを備えた
ことを特徴とする非接触型ICカード調整システム。
【請求項4】
電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードであって、
アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、
前記複数の容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、
特性が調整された共振回路を実現するための切替パターンを記憶したメモリ部と、
前記メモリ部に記憶されている切替パターンに従って前記複数の切替素子の切替状態を制御する切替回路と
を備えたことを特徴とする非接触型ICカード。
【請求項5】
メモリ部には、複数種類の切替パターンが記憶され、
切替回路は、選択指示に応じて、前記メモリ部に記憶されている複数種類の切替パターンのいずれかを選択し、選択した切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態を制御する
請求項4記載の非接触型ICカード。
【請求項6】
電磁結合によって電力を得る非接触型ICカードを搭載した移動通信装置であって、
前記非接触型ICカードは、
アンテナコイルに並列接続可能な複数の容量素子と、
前記複数の容量素子をアンテナコイルに接続させる複数の切替素子と、
特性が調整された共振回路を実現するための切替パターンを記憶したメモリ部と、
前記メモリ部に記憶されている切替パターンに従って前記複数の切替素子の切替状態を制御する切替回路と
を備えたことを特徴とする移動通信装置。
【請求項7】
メモリ部には、複数種類の切替パターンが記憶され、
切替回路は、選択指示に応じて、前記メモリ部に記憶されている複数種類の切替パターンのいずれかを選択し、選択した切替パターンに従って複数の切替素子の切替状態を制御する
請求項6記載の移動通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−244214(P2006−244214A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60238(P2005−60238)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】