説明

非接触式温度計測用フェライト組成物

【課題】外部から温度計測するための温度センサの一部として好適に用いることができる非接触式温度計測用フェライト組成物を提供することである。
【解決手段】酸化鉄をFe換算で48.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で29.0〜30.35モル%、酸化銅をCuO換算で5.5〜6.8モル%、残部が酸化マグネシウムで構成される主成分を有し、主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ケイ素をSiO換算で30〜350ppm含む非接触式温度計測用フェライト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象に接触することなく外部から温度計測するための温度センサの一部として好適に用いることができる非接触式温度計測用フェライト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、密封された状態で販売される缶飲料や瓶詰飲料等は、温度管理に際して、商品を開封して内部の液温を測定することができない。そのため、通常、このような飲料等の温度管理は、冷却加温機能のある保温機や自動販売機等の庫内の温度を飲料等の液温と擬制して、庫内の温度を商品の販売に適した液温(例えば、55〜60℃)に制御するのが一般的である(特許文献1)。
【0003】
しかし、庫内の温度を飲料等の液温と擬制する方法では、実際の液温を正確に把握することが困難であった。
【0004】
特にホット飲料等の場合、過剰な加熱は、品質劣化や容器の破損等を招くおそれがあり、また、加熱不足は、適温(例えば55〜60℃)に達しないまま販売される等の問題があるため、的確な温度制御が求められ、実際の飲料の液温の正確な把握が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−166051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、外部から検査対象に接触することなく、検査対象の液温が所定の温度(55〜60℃)に達したことを外部から正確に把握することができる温度センサの一部として好適に用いることができる非接触式温度計測用フェライト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物は、
酸化鉄をFe換算で48.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で29.0〜30.35モル%、酸化銅をCuO換算で5.5〜6.8モル%、残部が酸化マグネシウムで構成される主成分を有し、主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ケイ素をSiO換算で30〜350ppm含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物によれば、室温付近では高い磁束密度を有するものの、55〜60℃の温度において、磁束密度が急激に変化する。すなわち、この温度範囲において磁束密度の変化率が最大となる。その磁束の変化を計測することで、測定対象の温度(たとえばホット飲料等の販売に適正な温度の上限)を計測することが可能となる。したがって、本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物を、たとえば粒子状にしてダミーとなる検査対象に注入し、外部から磁束の変化を計測することで、非接触式な温度計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)および図1(b)は本発明の一実施形態に係る非接触式温度計測用フェライト組成物で構成された感温磁性体を有する非接触式温度計測システムの概念図である。
【図2】図2は本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物における温度と磁束密度の関係を示すグラフである。
【図3】図3は本発明の実施例および比較例に係る非接触式温度計測用フェライト組成物における温度と磁束密度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態に係るフェライト組成物はMg−Zn系のフェライト組成物であり、主成分として酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銅、酸化マグネシウムを含有し、副成分として、酸化ケイ素を含む。
【0011】
具体的には、本実施形態に係るフェライト組成物は、
酸化鉄をFe換算で48.0〜49.7モル%、好ましくは48.0〜49.1モル%、
酸化亜鉛をZnO換算で29.0〜30.35モル%、好ましくは29.0〜30.0モル%、
酸化銅をCuO換算で5.5〜6.8モル%、好ましくは5.5〜6.5モル%、
残部が酸化マグネシウムで構成される主成分を有し、
主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ケイ素をSiO換算で30〜350ppm、好ましくは30〜200ppm含む。
【0012】
本実施形態に係るフェライト組成物は、所定の温度以下では高い磁束密度を有するものの、所定の温度(55〜60℃)において、磁束密度が急激に変化する。上記組成範囲とすることにより、55〜60℃において、該フェライト組成物の磁束密度の急激な変化を観測することができる。
【0013】
本実施形態において、フェライト組成物の磁束密度が急激に変化する温度を変曲点とし、変曲点における磁束密度の変化率αは、1.2以上、より好ましくは1.4以上である。なお、磁束密度の変化率αが大きいことは、磁束密度の急激な変化を意味しており、変化率αが小さい場合に比べて、変曲点の判別が容易になるため好ましい。
【0014】
酸化鉄の含有量が少ないと変曲点が所定の温度(55〜60℃)を下回る傾向にあり、酸化鉄の含有量が多いと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を超える傾向にある。
【0015】
酸化亜鉛の含有量が少ないと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を上回る傾向にあり、酸化亜鉛の含有量が多いと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を下回る傾向にある。
【0016】
酸化銅の含有量が少ないと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を上回る傾向にあり、酸化銅の含有量が多いと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を下回る傾向にある。
【0017】
酸化ケイ素の含有量は、主成分100重量%に対して、SiO換算で、30〜350ppm、好ましくは30〜200ppmである。酸化ケイ素の含有量が少ないと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を下回る傾向にあり、酸化ケイ素の含有量が多いと磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)を超える傾向にある。
【0018】
また、本実施形態に係るフェライト組成物には、原料中の不可避的不純物元素の酸化物が数ppm〜数百ppm程度含まれ得る。
【0019】
具体的には、B、C、P、S、Cl、As、Se、Br、Te、Iや、Li、Na、Al、K、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Pb、Bi等の典型金属元素や、Sc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素が挙げられる。
【0020】
次に、本実施形態に係るフェライト組成物の製造方法の一例を説明する。
まず、出発原料(主成分の原料および副成分の原料)を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。なお、平均粒径が0.1〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
【0021】
主成分の原料としては、酸化鉄(α−Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、あるいは水酸化マグネシウム(Mg(OH))などを用いることができる。さらに、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物等を用いることができる。焼成により上記した酸化物になるものとしては、たとえば、金属単体、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、有機金属化合物等が挙げられる。なお、主成分中の酸化マグネシウムの含有量はMgO換算で計算されるが、主成分の原料としては、Mg(OH)が好ましく用いられる。
【0022】
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を起こさせ、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800〜1100℃の温度で、通常1〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、主成分の原料と副成分の原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼き後に行なってもよい。
【0023】
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、仮焼き材料の平均粒径が、好ましくは1〜2μm程度となるまで行う。
【0024】
次に、粉砕材料の造粒(顆粒)を行い、造粒物を得る。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、たとえば、加圧造粒法やスプレードライ法などが挙げられる。スプレードライ法は、粉砕材料に、ポリビニルアルコールなどの通常用いられる結合剤を加えた後、スプレードライヤー中で霧化し、低温乾燥する方法である。
【0025】
次に、造粒物を所定形状に成形し、成形体を得る。造粒物の成形としては、たとえば、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。乾式成形法は、造粒物を、金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより行う成形法である。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
次に、成形体の焼成を行う。焼成は、多くの空隙を含んでいる成形体の粉体粒子間に、融点以下の温度で粉体が凝着する焼結を起こさせ、緻密な焼結体を得るために行われる。こうした焼成は、好ましくは1000〜1200℃の温度で、通常1〜5時間程度行う。なお、昇温速度は好ましくは150〜250℃/時間、降温速度は好ましくは150〜250℃/時間である。焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。
【0027】
次に得られた焼結体を粉砕し、本実施形態のフェライト粉末を得る。粉砕にはバイブミルもしくはジョークラッシャー等を用い行う。フェライト粉末の粒径は、好ましくは、40〜150μm、さらに好ましくは、80〜120μmである。このような粒径のフェライト粉末を、以下に示すように感温磁性体として用いることで、検査対象となる液体の内部により注入しやすくなる。
【0028】
次に、本実施形態に係るフェライト組成物から成る感温磁性体を用いて、温度計測を行う方法について説明する。
【0029】
図1(a)に示すように、本実施形態に係るフェライト組成物から成る感温磁性体2に対して、温度計測用駆動コイル4から感温磁性体2に向けて磁束M1を発生させる。そのとき感温磁性体2の温度Tが、感温磁性体2のキュリー温度Tc未満では、感温磁性体2の近くにおいて、磁束M1の集中が生じる。磁束M1の集中が生じると、その磁束M1の垂直方向の磁束M2を検出コイル6により検出することができる。
【0030】
磁束M1の集中度合い(磁束密度に対応する)は、感温磁性体2の温度Tにより変化する。すなわち、磁束M1の集中度合いは、感温磁性体2の温度Tがキュリー温度Tcに近づくほど少なくなり、図1(b)に示すように、感温磁性体2の温度Tが磁性体2のキュリー温度Tc以上になると、磁束M1の集中度合いが略0になり、その磁束M1の垂直方向の磁束M2も略0になる。
【0031】
このため検出コイル6により検出される磁束M2の変化、特に磁束変化の変曲点を検出することで、感温磁性体2の温度を検出することが可能になる。本実施形態では、ホット飲料の適正な温度、詳しくは55〜60℃での使用を考慮し、感温磁性体2を構成するフェライトの組成物範囲を決定している。
【0032】
次に、本実施形態に係るフェライト組成物を用いたホット飲料等の温度測定の一例を説明する。
【0033】
本実施形態に係るフェライト組成物から成る感温磁性体を、液体(検査対象)と共に注入したダミー缶を準備し、商品であるホット飲料と共に、加温機能のある保温機等の庫内で保温する。
【0034】
ダミー缶の少なくとも一部は非磁性材料で構成され、その外部に温度測定用駆動コイル4および検出コイル6が配置され、外部からダミー缶中の感温磁性体の磁束密度の変化を観察し、磁束密度の変曲点を検出することで、缶内部の液体の温度(55〜60℃)を正確に測定することが可能となる。
【0035】
これにより、ダミー缶と同じ庫内に同様に保温されているホット飲料の温度(提供に最適な温度の上限)について、商品を開封することなく、正確に把握することが可能となる。
【0036】
なお、温度測定用駆動コイル4と検出コイル6との間に、本実施形態に係るフェライト組成物からなる感温磁性体以外の磁性物質が介在すると、磁性物質の磁束密度が干渉するため、当該感温磁性体の磁束密度の変化を正確に把握することができなくなる。
【0037】
そのため、ダミー缶の少なくとも一部は非磁性材料で構成されていることが好ましく、当該非磁性材料の外部に温度測定用駆動コイル4および検出コイル6が配置される。非磁性材料としては、紙、プラスチック、ガラス等の材料を用いることができる。
【0038】
また、ダミー缶に感温磁性体と共に注入される液体は、ホット飲料等と同じ液体であってもよいし、熱伝導が同程度の液体であってもよい。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0040】
たとえば、本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物には、その他の成分、たとえばB、C、S,Cl、As、Se、Br、Te、I等の典型非金属元素や、Li、Na、Al、K、Ca、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Pb、Bi等の典型金属や、Sc、Ti、V、Cr、Co、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素などを含ませても良い。
【0041】
また、本発明に係る非接触式温度計測用フェライト組成物で構成される感温磁性体は、粉形態で使用されることが望ましいが、必ずしも粉形態である必要はなく、その他の形態で用いられても良い。
【0042】
また、本発明のフェライト組成物で構成される感温磁性体により温度測定を行う用途は、缶飲料の温度測定に限らず、直接検温できない液体等の温度を非接触式に外部から測定したいあらゆる分野に応用することができる。
【0043】
たとえば、管や容器の内部を流動する(あるいは静止している)液体の温度を外部から測定することも可能である。なお、管や容器少なくとも一部は非磁性材料で構成され、その外部に温度測定用駆動コイル4および検出コイル6が配置される。
【0044】
さらに、検査対象は液体以外でもよく、スラリーやゼリー状物質等についても同様の方法で温度測定が可能である。また、本発明に係るフェライト組成物を注入できるものであれば、測定対象は固体であってもよい。
【0045】
また、本発明のフェライト組成物で構成される感温磁性体により温度測定する際には、検査対象の液体中に感温磁性体が分散(浮遊)するように、液体の攪拌、液体の比重の調整等を行ってもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1〜11
【0047】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0048】
まず、主成分の原料として、Fe、ZnO、CuOおよびMg(OH)を準備した。副成分の原料としてはSiOを準備した。
【0049】
次に、準備した主成分の原料の粉末を秤量し、さらに、副成分の原料の粉末を表1に示す量となるように秤量した後、ボールミルで5時間湿式混合して原料混合物を得た。
【0050】
次に、得られた原料混合物を、空気中において950℃で2時間仮焼して仮焼き材料とした後、ボールミルで20時間湿式粉砕して、平均粒径が1.5μmである粉砕材料を得た。
【0051】
次に、この粉砕材料を乾燥した後、該粉砕材料100重量%に、バインダーとしてのポリビニルアルコールを1.0重量%添加して造粒し、20メッシュの篩で整粒して顆粒とした。この顆粒を196MPa(2ton/cm)の圧力で加圧成形して、トロイダル形状(寸法=外径22mm×内径12mm×高さ6mm)の成形体を得た。
【0052】
次に、これら各成形体を、空気中において1000〜1200℃で2.5時間焼成して、焼結体としてのトロイダルコアサンプルを得た。得られたサンプルについて、蛍光X線分析を行い、フェライトコアの組成を測定した。結果を表1に示す。さらにサンプルに対し、以下の特性評価を行った。
【0053】
<磁束密度(B)>
得られたトロイダルコアサンプルに、1次巻線および2次巻線を5回ずつ巻回し、100A/m、100kHz、40〜70℃で磁束密度(B)を測定した。測定はB−Hアナライザー(岩崎通信機株式会社製SY−8232)を用いて行った。
【0054】
各測定温度における磁束密度(B)から、以下の式(1)により各サンプルの磁束密度の変曲点における変化率αを求めた。
α=(Bat i℃−Bat i+2℃)/(Bat i−2℃−Bat i℃) ・・・(1)
ここで、式(1)のi℃は変曲点、i+2℃は変曲点+2℃、i−2℃は変曲点−2℃をそれぞれ意味する。なお、温度と磁束密度の関係を図2に示す。
【0055】
図2に示すように、フェライトコアは変曲点において、急激に磁束密度が変化する。本実施例では、各サンプルの磁束密度の変化率αが1.2以上となる温度を磁束密度の変曲点とした。各サンプルの磁束密度の変曲点を調べた結果を表1、表2および図3に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1より、Feの含有量が本発明の範囲外である場合(比較例1および2)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にないことが確認された。これに対し、Feの含有量が本発明の範囲内である場合(実施例1〜3)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にあることが確認された。
【0059】
表1および図3より、ZnOの含有量が本発明の範囲外である場合(比較例3および4)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にないことが確認された。これに対し、ZnO の含有量が本発明の範囲内である場合(実施例2および4〜7)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にあることが確認された。
【0060】
表1より、CuOの含有量が本発明の範囲外である場合(比較例5および6)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にないことが確認された。これに対し、CuOの含有量が本発明の範囲内である場合(実施例2、8および9)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にあることが確認された。
【0061】
表2より、SiOの含有量が本発明の範囲外である場合(比較例7および8)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にないことが確認された。これに対し、SiOの含有量が本発明の範囲内である場合(実施例2、10および11)、磁束密度の変曲点が所定の温度(55〜60℃)の範囲内にあることが確認された。
【0062】
このようなフェライト組成物で構成される感温磁性体を、粉状に粉砕して、40〜150μmの粒径とし、例えばプラスチックで構成されたダミー缶に、水(測定対象)と共に注入し、ダミー缶から、たとえば図1に示す検出コイル6により磁束M2の変化を測定することで、感温磁性体が変曲点の温度に到達したこと、すなわち缶内部の水が所定の温度(55〜60℃)に達したことを正確に確認することができる。
【符号の説明】
【0063】
2… 感温磁性体
4… 駆動用コイル
6… 検出用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄をFe換算で48.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で29.0〜30.35モル%、酸化銅をCuO換算で5.5〜6.8モル%、残部が酸化マグネシウムで構成される主成分を有し、主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ケイ素をSiO換算で30〜350ppm含むことを特徴とする非接触式温度計測用フェライト組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91590(P2013−91590A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236289(P2011−236289)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】