説明

非接触式超音波眼圧計

【課題】 被検者眼の眼圧を好適に測定可能な非接触式超音波眼圧計を提供する。
【解決手段】 被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し、超音波ビームによる角膜反射波を受信する送受信部を有する超音波探触子を備え、探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計において、送受信部の汚れを検知する汚れ検知手段と、汚れ検知手段による検知結果を報知する報知手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて非接触にて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて非接触にて被検者眼の眼圧を測定する装置としては、被検者眼に入射させる超音波を発する送信部と被検者眼で反射された超音波を検出する受信部とを有する探触子を有し、探触子から出力される信号に基づいて眼圧を測定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、探触子の送受信部は外部に露出されており、送受信部の表面にホコリや手垢などが付着した場合、検出される角膜反射波に変動が生じてしまい、被検者眼の眼圧を正確に測定することができない。
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑み、被検者眼の眼圧を好適に測定可能な非接触式超音波眼圧計を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し、前記超音波ビームによる角膜反射波を受信する送受信部を有する超音波探触子を備え、前記探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計において、前記送受信部の汚れを検知する汚れ検知手段と、前記汚れ検知手段による検知結果を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の非接触式超音波眼圧計において、前記汚れ検知手段は、前記送受信部から送信された超音波を受信し、受信した超音波に基づいて前記超音波探触子の汚れを検知することを特徴とする。
(3) (2)の非接触式超音波眼圧計において、前記汚れ検知手段は、前記送受信部により超音波を受信することを特徴とする。
(4) (2)の非接触式超音波眼圧計において、前記汚れ検知手段は、前記送受信部とは異なる第2の受信部を有し、第2の受信部により受信した超音波に基づいて前記送受信部の汚れを検知することを特徴とする。
(5) (2)の非接触式超音波眼圧計において、前記超音波探触子が設けられた眼圧計本体の被検眼側に着脱可能に設けられ、前記角膜以外への超音波ビームの照射を制限する超音波制限部材を有することを特徴とする。
(6) (5)の非接触式超音波眼圧計において、前記超音波制限部材は、内側が空洞になっている筒状構造であり、被検眼方向に向かって内径が狭くなるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検者眼の眼圧を好適に測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系の概略構成図であり、図2は、本実施形態に係る探触子を正面から見たときの概略構成図である。なお、以下の測定系及び光学系は、ある筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント用移動機構により、被検者眼Eに対して三次元的に移動されてもよい。また、手持ちタイプ(ハンディタイプ)であってもよい。
【0010】
<超音波探触子>
超音波探触子10は、空気を媒体として被検者眼Eの角膜Ecに向けて超音波ビーム(例えば、パルス波)を送信(出射)し、角膜Ecで反射された超音波ビームを検出する。探触子10は、超音波の送受信部11として、角膜Ecに入射させる超音波(入射波)を出射する送信部12と、角膜Ecで反射された超音波(反射波)を検出する受信部13と、を有し、受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼Eの眼圧を測定するために用いられる。
【0011】
なお、本実施形態の探触子10は、送信部12と受信部13とが別構成となっており、それぞれ異なる位置に配置されている。もちろん、これに限るものではなく、送信部12と受信部13とが兼用されていてもよい。
【0012】
探触子10は、その中心部に、観察光路として用いるのに十分な大きさを持つ開口部15を有し、送受信部11が開口部15を囲むように配置されている。
【0013】
より具体的には、送受信部11は、開口部15に対応する内径を持つ貫通孔が形成されたベース部10aの被検者眼E側に配置されており、貫通孔の外側に略円環状に配置されている。また、送信部12と受信部13とは、それぞれ異なる位置に同心円状に配置されている。
【0014】
なお、図2の場合、送信部12が外側に配置され、受信部13が内側に配置されているが、受信部13が外側に配置され、送信部12が内側に配置されていてもよい。この場合、受信部13を囲むように装着部14が設けられることになる。
【0015】
また、対物レンズ22は、開口部15に配置されている。もちろん、開口部15には他の光学部材(例えば、ガラス板、フィルタ、等)が配置されていてもよいし、また、前述のような光学部材が配置されていなくてもよい。
【0016】
また、開口部15は、観察光学系20による観察範囲が許容できる範囲で確保されるように、観察光学系20による被検者眼の観察のために十分な大きさを持つ。例えば、開口部15の大きさ(ベース部10aの貫通孔の内径)は、被検者眼に対するアライメントがスムーズに行えるか、前眼部の状態が良好に確認できるか、等を考慮して適宜決定される。また、開口部15の形状は、正円形に限るものではなく、種々の形状(例えば、矩形、楕円形、等)であってもよい。
【0017】
また、送受信部11には、空気中での伝播効率を高めるために、広帯域の周波数成分を持つ超音波ビームを送受信する空気結合型の超音波送受信部(超音波探触子)が用いられることが好ましい。この場合、マイクロアコースティック(Microacoustic)社のBATTM探触子を用いることができる。このような探触子の詳細については、米国特許5287331号公報、特表2005−506783号公報、等を参照されたい。もちろん、これに限るものではなく、ピエゾ型の超音波送受信部(超音波探触子)が用いられてもよい。
【0018】
なお、送受信部11の構成について、送信部と受信部とが、光軸に対して対称な位置に設けられた構成であってもよい。
【0019】
また、眼圧計本体の被検眼側には、角膜Ec以外への超音波ビームの照射を制限する超音波制限部材17(以下、制限部材17と省略する)が設けられている(図3参照)。また、送信部12の外側には、制限部材17を筐体19に取り付けるための装着部14が設けられている。
【0020】
そして、制限部材17は、筐体19の眼E側の側面に対し着脱可能に設けられている。このため、装着部14の外周にはおねじが形成されている。
【0021】
図3は、制限部材17の側方図(図3(a))と制限部材17の断面構造を示す側方断面略図(図3(b))をそれぞれ示したものである。制限部材17は、被検眼Eと探触子10との間に配置される。そして、制限部材17は、内側が空洞になっている筒状構造を有し、被検眼方向に向かって径がしだいに狭くなるように構成されている。このような形状により、被検者の鼻等に対し制限部材17が接触しづらくなる。また、被検眼に対して斜め方向からアライメント光を投受光するアライメント光学系(例えば、指標投影光学系50及び指標検出光学系55)を設ける際に妨げにならない。なお、制限部材17を紙面に対して垂直に切ったときの断面形状は、円形に限るものではなく、多角形等であってもよい。
【0022】
そして、制限部材17の末端側大径部17aの内周面には、めねじが形成されており、そのめねじと装着部14のおねじがネジ止めされている。これにより、制限部材17は、筐体19における眼E側の面に装着される。
【0023】
また、制限部材17の被検眼方向の先端側小径部17bの内側には、超音波を通過させるためのアパーチャー31が形成されている。なお、アパーチャー31の大きさは、角膜Ecのみからの反射波を検出するために、開瞼エリアより小さくなるように形成されている。また、アパーチャー31は、観察光学系20の観察光路が十分に確保される大きさである必要がある。
【0024】
なお、制限部材17の材質について、例えば、超音波を反射する特性を持つ材質(例えば、アルミ)が用いられる。この場合、制限部材17によって反射された超音波は、角膜Ecで反射された超音波に比べ、速く戻ってくるため、時間的な差によりノイズとして除去される。
【0025】
また、超音波を吸収する特性を持つ吸音材(グラスウール、ウレタン等)を用いてもよい。また、制限部材17の内面に吸音材が接合された構成であってもよい。
【0026】
また、制限部材17を筐体19に対して着脱可能とする構成について、差込み式やマグネット、面ファスナー等が用いられてもよい。
【0027】
また、制限部材17は、送受信部11の全体を前面から覆うように設置されており、探触子10を外部からの接触や衝撃から保護する役割を有する。
【0028】
<光学系>
図1に戻る。本装置の光学系としては、被検者眼Eの前眼部を正面方向から観察するための観察光学系20と、被検者眼Eを固視させるための固視標投影(呈示)光学系30と、上下左右方向のアライメント状態検出用の第1指標を角膜Ecに投影するための第1指標投影光学系40と、前後方向である作動距離方向のアライメント状態検出用の第2指標を角膜Ecに投影するための第2指標投影光学系50と、角膜Ecに投影された第2指標を検出するための指標検出光学系55と、第3指標投影光学系38(38a〜38d)と、が設けられている。
【0029】
観察光学系20は、対物レンズ22と、結像レンズ24と、二次元撮像素子26と、を有し、その光軸(観察光軸)L1が送受信部11の中心軸と略同軸となるように配置されている。このため、被検者眼Eの所定部位(例えば、角膜中心、瞳孔中心)に対して観察光軸L1がアライメントされると、被検者眼Eに対する探触子10の上下左右方向のアライメントがなされる。
【0030】
第3指標投影光学系38によって照明された被検者眼Eの前眼部像は、開口部15を通過し、対物レンズ22を透過し、ハーフミラー46を透過し、ダイクロイックミラー36を透過し、結像レンズ24によって撮像素子26に結像する。撮像素子26によって撮像された前眼部像は、後述するモニタ72に表示される。なお、ダイクロイックミラー36は、第1指標投影光学系40に用いられる赤外光を透過し、第2指標投影光学系50に用いられる赤外光を遮断する特性を持っている。
【0031】
固視標投影光学系30は、可視光源32を有し、被検者眼Eを固視させるための固視標を被検者眼Eに投影する。光源32からの可視光は、赤外光を透過して可視光を反射するダイクロイックミラー36で反射され、ハーフミラー46を透過し、対物レンズ22を透過して被検者眼Eの眼底に投影される。固視標投影光学系30の光軸L2は、観察光学系20の光路(観察光路)中に配置されたダイクロイックミラー36によって観察光軸L1と同軸にされている。
【0032】
第1指標投影光学系40は、赤外光源42を有し、上下左右方向のアライメント状態検出用の第1指標である赤外光を正面方向から角膜Ecに投影する。光源42からの赤外光は、ハーフミラー46で反射され、対物レンズ22を透過して角膜Ecに投影される。これにより、光源42の虚像である指標i1を形成する。第1指標投影光学系40の光軸L3は、観察光路(観察光束の光路)中に配置されたハーフミラー46によって観察光軸L1と同軸にされている。
【0033】
観察光学系20は、第1指標投影光学系40によって角膜Ecに形成された第1指標像を検出する(角膜Ecで反射された光源42からの赤外光を受光する)。すなわち、観察光学系20は、指標検出光学系を兼ねる。撮像素子26によって撮像された第1指標像は、モニタ72に表示される(図5の点像i10参照)。
【0034】
第2指標投影光学系50は、赤外光源51を有し、作動距離方向のアライメント状態検出用の第2指標である赤外光を斜め方向から角膜Ecに投影する。なお、第2指標投影光学系50の赤外光源51は、第1指標投影光学系40の光源42とは異なる波長の赤外光を発する。
【0035】
指標検出光学系55は、位置検出素子(例えば、ラインCC)58を有し、第2指標投影光学系50によって角膜Ecに形成された第2指標像を検出する(角膜Ecで反射された光源51からの赤外光を受光する)。なお、作動距離方向のアライメント状態の検出は、探触子10によって行われてもよい(例えば、被検者眼に出射された超音波が探触子10に戻っているまでの時間が距離に換算される)。
【0036】
第3指標投影光学系38は4個の光源38a〜38dを持ち(図1及び図2参照)、探触子10より外側に配置されている。光源38aと38b及び光源38cと38dは、それぞれ光軸L1を挟んで同じ高さ距離に配置され、指標の光学的距離を同一にしている。光源38a〜38dは第1指標投影光学系の光源と同じ波長の赤外光を出射する。光源38a、38bからの光は被検眼の角膜周辺に向けて斜め上方向から照射され、光源38a、38bの虚像である指標i2、i3を形成する。また、光源38a、38bは開瞼状態を光学的に検出する(後述する)ための光源を兼ねている。光源38c、38dからの光は被検眼の角膜周辺に向けて斜め下方向から照射され、光源38c、38dの虚像である指標i4、i5を形成する。光源38a〜38dは被検眼前眼部を照明する照明用光源を兼ねている。
【0037】
第3指標投影光学系38は、複数のアライメント指標を被検眼に対して投影し、少なくとも一つが被検眼角膜中心部より上側に投影されるように(指標i2、指標i3),他のアライメント指標は前記角膜中心部及び/または該中心部より下側に投影されるように(指標i1、指標i4、指標i5)構成される。なお、本実施形態では、指標投影系は、探触子10による超音波ビームの照射エリアの上方に角膜輝点が少なくとも一つ形成されるように配置されている。
【0038】
4個の指標i2、i3、i4、i5の光束は、観察光学系20を介して撮像素子26に入射し、撮像素子26上に像を形成する。
【0039】
図4は、本実施形態に係る装置の制御系の概略ブロック図である。演算制御部(以下、制御部と省略する)70は、装置全体の制御等を行う。また、探触子10からの出力信号を処理して被検者眼Eの眼圧を求める。探触子10(送受信部11)は増幅器81に接続されており、探触子10から出力された電気信号は増幅器81によって増幅され、制御部70に入力される。また、制御部70には、撮像素子26、光源32、光源38a〜38d、光源42、光源51、位置検出素子58、モニタ72、メモリ75、等が接続されている。なお、メモリ75には、探触子10を用いて眼圧を測定するための測定プログラム、装置全体の制御を行うための制御プログラム、等が記憶されている。
【0040】
なお、送受信部11の汚れを検知する汚れ検知手段として、眼圧測定用の角膜反射波を検出する受信部13と、受信部13からの出力信号を得る制御部70が送受信部11の汚れの有無を検知するセンサとして用いられる。そして、上記センサによる検知結果は、モニタ72、音声等を介して検者に報知される。
【0041】
以上のような構成を備える装置において、被検者眼Eの眼圧を測定する場合について説明する。まず、検者は、被検者に固視標を注視させる。また、モニタ72に表示された前眼部像を観察しながら、被検者眼Eに対する探触子10のアライメントを行う。このとき、制御部70は、図5に示すように、撮像素子26によって撮像された指標像i10〜i50を含む前眼部像と後述するレチクルLT及びインジケータGとをモニタ72に表示する。なお、制御部70は、位置検出素子58からの出力信号に基づいて作動距離方向のアライメント状態を検出し、その検出結果に基づいてインジケータGの表示を制御する。
【0042】
検者は、第1指標像i10がレチクルLT内に入るように、上下左右方向のアライメントを行う。また、インジケータGが適正な表示状態(例えば、インジゲータが一本の状態)となるように、作動距離方向のアライメントを行う。
【0043】
上下左右前後方向のアライメントが完了され、所定のトリガ信号が手動で又は自動的に入力されると、制御部70は、角膜Ec上に向けて送信部12から超音波ビームを連続的に出射し、その角膜Ecで反射された超音波ビームを受信部13で検出する。
【0044】
そして、送信部12から出射される超音波について、角膜Ecに向かう超音波ビームは、アパーチャー31を通過して角膜Ecに照射され、角膜Ec以外に向かう超音波は、制限部材17によって制限される。すなわち、アパーチャー31が形成された制限部材17は、探触子10から出射される超音波のビーム形状を制限する。
【0045】
これにより、超音波ビームは、角膜Ecにのみに照射され、その角膜反射波のみが検出される。よって、角膜Ec以外から反射したノイズ波を除去することができる。
【0046】
なお、超音波ビームを被検眼に出射させ、その反射波を検出する際には、被検者眼の開瞼状態が十分でない場合(例えば、測定中に瞬きがあった場合)、被検者眼に入射される超音波が瞼(又は睫)によって遮られてしまい、角膜反射波を適正に検出できずに測定エラーとなる可能性がある。そのため、被検者眼の開瞼状態が十分である状態で、超音波ビームを被検眼に出射させるのが好ましい。
【0047】
なお、開瞼状態が十分か否かについて、例えば、第3指標投影光学系38による角膜反射像の有無により光学的に検知される。また、開瞼状態について、受信部13から出力された反射波の音響強度の変化により検知することも可能である。
【0048】
<汚れ検知>
図6は、受信部13によって検出された反射波の音響強度の時間的変化を示したグラフである。Vは音響強度を示し、Vpは音響強度におけるピークを示す。なお、図6(a)は、広帯域空気結合型超音波探触子を用いた場合に受信部13から出力された反射波の音響強度を示すグラフである。図6(b)は、送受信部11に汚れが有る状態で、受信部13から出力された反射波の音響強度を示すグラフである。制御部70は、反射波の検出信号に基づいて送受信部11における汚れの有無を判定する。
【0049】
送受信部11に汚れが無い場合、送受信部11の汚れにより超音波のエネルギーが減衰してしまうことが無く、被検者眼に照射された超音波は、角膜で反射され、眼圧測定に十分な反射波が受信部13によって検出される(図6(a)参照)。一方、送信部12及び受信部13の少なくともどちらかに汚れがある場合、超音波ビーム出射時或いは受信時に超音波のエネルギーは、汚れにより減衰してしまい、音響強度の低い反射波が受信部13によって検出される(図6(b)参照)。
【0050】
そこで、制御部70は、音響強度のピークVpが所定値Vs以上か否かより送受信部11の汚れの有無を判定する。音響強度Vが所定値Vs以上であれば、汚れ無しと判定される。また、音響強度Vが所定値Vsより小さければ、汚れ有りと判定される。なお、所定値Vsは実験等により予め設定され、メモリ75に記憶される。
【0051】
汚れ無しと判定された反射波は、適正な眼圧値の算出が可能な反射波として判定され、測定がされる。また、汚れが有りと判定された反射波は、汚れによってエネルギーが減衰しているか減衰している可能性が高い反射波として判定される。
【0052】
なお、制御部70は、上記手法により開瞼状態が十分と判定された状態で汚れ検知を行うのが好ましい。そこで、制御部70は、所定時間において複数回の超音波を出射し、これらの受信結果から検知する。(開瞼状態は時間的に変化するが、汚れは定常的であるため)。例えば、制御部70は、各反射波の中で最もピークの大きい反射波から汚れの有無を判定する。
【0053】
その後、制御部70は、眼圧値の算出が可能な反射波に対し、その角膜反射波の特性(例えば、振幅、位相、等)に基づいて眼圧値を算出する。そして、測定値が所定数得られると、制御部70は、測定を終了し、算出された測定値をモニタ72に出力する(紙出力、外部装置へのデータ出力でもよい)。この場合、各反射波に対応する眼圧値、取得された所定数の眼圧値における平均値・最大値・最小値・中間値等、が出力されるようなことが考えられる。この場合、眼の脈動による眼圧の変動が示された測定結果が表示されるようにしてもよい。
【0054】
また、送受信部11に汚れが有りと判定された場合、検知結果を報知する報知手段として、制御部70は、判定結果をモニタ72上に表示する。この場合、汚れが有るという表示がモニタ72上で報知される(例えば、「汚れエラー」等の表示)。なお、音声発生部を設け、汚れが有る旨を音声によって報知してもよいし、モニタ72の画面の色を変化させて報知してもよい。なお、汚れが有りと判定された際に、一時的に測定が停止するようにしてもかまわない。この際には、制御部70は、反射波が測定対象から除外された時に、送信部12からの超音波ビームの出射を停止させ、判定結果をモニタ72上に表示する。
【0055】
そして、汚れエラーが表示された場合、検者は送受信部11の汚れを除去する必要がある。ここで、検者は、制限部材17を回転させ、これを装着部14から離脱させる。そして、露出した送受信部11に付着した汚れを拭き取ることで、容易に送受信部11の汚れを除去することができる。これにより、被検者眼の眼圧を正確に測定することが可能になる。
【0056】
なお、以上の説明においては、受信部13を汚れ検知に用いたが、これに限るものではなく、送受信部11から送信された超音波を受信し、受信した超音波に基づいて超音波探触子10の汚れを検知する構成であればよい。例えば、送受信部11とは異なる第2の受信部を設け、第2の受信部により受信した超音波に基づいて送受信部11の汚れを検知してもよい。
【0057】
具体的には、眼圧の測定前に被検眼の位置に第2の受信部を設け、送信部12からの超音波ビームを検出し、判定を行うようにしてもよい。この場合、送信部12の汚れのみを判定することになる。また、別途、汚れ検知用の光源と受光素子を設け、光源より送受信部に光を出射し、その反射光を受光素子より検出し、その光量変化から汚れを検出するといったような構成でもかまわない。
【0058】
なお、本実施例においては、制限部材17の形状について、探触子10から出射される超音波のビーム形状を制限できる構造であればよい。例えば、円柱状(多角柱状でもよい)の空洞を持つ制限部材であってもよい。この場合、アパーチャーの開口が円柱状の空洞の径に対して狭い構成であってもよい。
【0059】
また、制御部70は、時間的に変化する音響強度の周波数を解析し(例えば、フーリエ変換)、音響強度における各周波数の振幅に基づいて汚れの有無を判定してもよい。例えば、ある周波数での振幅が所定値以上か否かにより判定される。また、汚れの有無による周波数帯域の変化を利用してもよい。なお、汚れがあるときと汚れがないときでの超音波の受信結果の変化を利用するものであれば、種々の変容が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る探触子を正面から見たときの概略構成図である。
【図3】制限部材の側方図と制限部材の断面構造を示す側方断面略図をそれぞれ示したものである。
【図4】本実施形態に係る装置の制御系の概略ブロック図である。
【図5】本実施形態に係る前眼部観察画面を示す図である。
【図6】受信部によって検出された反射波の音響強度の時間的変化を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
10 探触子
17 超音波制限部材
70 制御部
72 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し、前記超音波ビームによる角膜反射波を受信する送受信部を有する超音波探触子を備え、前記探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計において、
前記送受信部の汚れを検知する汚れ検知手段と、
前記汚れ検知手段による検知結果を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項2】
請求項1の非接触式超音波眼圧計において、
前記汚れ検知手段は、前記送受信部から送信された超音波を受信し、受信した超音波に基づいて前記超音波探触子の汚れを検知することを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項3】
請求項2の非接触式超音波眼圧計において、前記汚れ検知手段は、前記送受信部により超音波を受信することを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項4】
請求項2の非接触式超音波眼圧計において、
前記汚れ検知手段は、前記送受信部とは異なる第2の受信部を有し、第2の受信部により受信した超音波に基づいて前記送受信部の汚れを検知することを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項5】
請求項2の非接触式超音波眼圧計において、
前記超音波探触子が設けられた眼圧計本体の被検眼側に着脱可能に設けられ、前記角膜以外への超音波ビームの照射を制限する超音波制限部材を有することを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項6】
請求項5の非接触式超音波眼圧計において、前記超音波制限部材は、内側が空洞になっている筒状構造であり、被検眼方向に向かって内径が狭くなるように構成されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212124(P2011−212124A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81598(P2010−81598)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】