説明

非接触式超音波眼圧計

【課題】 被検者眼の眼圧を精度良く測定すると共に、被検眼に対するアライメントを容易に行う。
【解決手段】 被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し,受信するための送受信部を有する超音波探触子を備え、前記探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計であって、前記被検者眼の前眼部を正面方向から観察するための観察光学系を備え、前記探触子は、前記送受信部における送信部及び受信部のうち、いずれか一方の部材は前記観察光学系の観察光路外に配置され,他方の部材は前記観察光学系の光路を用いて送信又は受信可能な位置に配置されることにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて非接触にて被検眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に入射する入射波と被検眼からの反射波と比較して被検眼の眼圧を測定する装置としては、被検眼に対して振動を入射する振動子と被検眼からの反射波を検出する振動検出センサとを有する探触子を保持すると共に,先端に眼球が接触される弾性キャップを有するプローブペンを有し、弾性キャップを被検眼に接触させた状態にて被検眼の眼圧を測定する接触式の眼圧検査装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、非接触式の構成としては、被検眼(ただし、模型眼)に対して超音波を入射する振動子と被検眼からの反射波を検出する振動検出センサとを有する探触子が設けられ、被検眼の眼前に探触子を配置させた状態で被検眼の眼圧を非接触にて測定する眼圧検査装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−267299
【特許文献2】国際公開第2008/072527号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成の場合、被検眼にプローブペンを接触させた状態で眼圧測定を行うものであり、被検眼への負担が大きい。また、非特許文献1の構成の場合、模型眼に対する測定を想定したものにすぎず、実際の人眼を測定するにはまだ不十分であり、実用化に向けた課題は多い。例えば、人眼の場合、固視微動や被検眼の視線移動によって眼が動くことから、被検眼に対する探触子のアライメントずれの影響で、振動検出センサによって検出される反射波の特性(例えば、周波数、位相等)が変化してしまい、測定結果にバラツキが生じてしまう可能性がある。また、被検者の恐怖心を緩和するには、角膜と装置との作動距離をある程度確保する必要がある(例えば、10mm程度)。
【0006】
本発明は、上記従来技術を鑑み、被検者眼の眼圧を精度良く測定すると共に、被検眼に対するアライメントを容易に行うことができる非接触式超音波眼圧計を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1)
被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し,受信するための送受信部を有する超音波探触子を備え、前記探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計であって、
前記被検者眼の前眼部を正面方向から観察するための観察光学系を備え、
前記探触子は、前記送受信部における送信部及び受信部のうち、いずれか一方の部材は前記観察光学系の観察光路外に配置され,他方の部材は前記観察光学系の光路を用いて送信又は受信可能な位置に配置されることにより構成されていることを特徴とする。
(2) (1)の非接触式超音波眼圧計において、前記前記送信部及び受信部は被検眼に対向して配置されていることを特徴とする。
(3) (2)の非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部は、所定の保持部材によって観察光路中に保持されていることを特徴とする。
(4) (3)の非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部は、固視標投影用の光束又はアライメント指標投影用の光束を通過させるための開口部が形成されていることを特徴とする。
(5) (4)の非接触式超音波眼圧計において、
中心から近い順に、前記他方の送受信部、前記観察光路、前記一方の送受信部が同心円状に形成されていることを特徴とする。
(6) (5)の非接触式超音波眼圧計において、
前記観察光学系は、対物レンズを有し、前記他方の送受信部と前記一方の送受信部は、該対物レンズを介して一体化されていることを特徴とする。
(7) (1)の非接触式超音波眼圧計において、
前記探触子は、被検者眼に対して対向して配置される超音波反射部材を有し、前記他方の送受信部は、該超音波反射部材を介して超音波を送信又は受信可能な位置に配置されていることを特徴とする。
(8) (1)〜(7)のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、前記開口部の外周を囲むように配置されていることを特徴とする。
(9) (8)の非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、略リング状に形成されていることを特徴とする。
(10) (9)の非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、複数配置されている。
(11) (1)〜(7)のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部と前記一方の送受信部は、その中心軸が同軸となるように配置されていることを特徴とする。
(12) (1)〜(11)のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は送信部であって、周辺領域から前記角膜に向けて超音波ビームを送信し、
前記前記他方の送受信部は受信部であり、該送信部による角膜反射波を正面方向から受信することを特徴とする。
(13) (1)〜(12)のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、前記送受信部の少なくともどちらかは、広帯域空気結合型探触子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者眼の眼圧を精度良く測定すると共に、被検眼に対するアライメントを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系の概略構成図である。なお、以下の測定系及び光学系は、図示無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント用移動機構により、被検者眼Eに対して三次元的に移動されてもよい。また、手持ちタイプ(ハンディタイプ)であってもよい。
【0011】
超音波探触子10は、空気を媒体として被検者眼Eの角膜Ecに向けて超音波ビーム(パルス波又は連続波)を出射し、また、角膜Ecで反射された超音波ビームを検出する。探触子10は、超音波の送受信部11として、角膜Ecに入射させる超音波(入射波)を出射する送信部12と、角膜Ecで反射された超音波(反射波)を検出する受信部13と、を有し、被検者眼Eの眼圧を非接触で測定するために用いられる。なお、探触子10は、送信部12と受信部13とが別構成となっており、それぞれ異なる位置に配置されている。
【0012】
また、本装置の光学系としては、被検者眼Eの前眼部を正面方向から観察するための観察光学系20と、被検者眼Eを固視させるための固視標投影(呈示)光学系30と、上下左右方向のアライメント状態検出用の第1指標を角膜Ecに投影するための第1指標投影光学系40と、前後方向である作動距離方向のアライメント状態検出用の第2指標を角膜Ecに投影するための第2指標投影光学系50と、角膜Ecに投影された第2指標を検出するための指標検出光学系55と、が設けられている。
【0013】
以下の説明において、送受信部11における送信部12及び受信部13のうち、いずれか一方の部材は観察光学系20の観察光路外に配置され,他方の部材は観察光学系20の光路を用いて送信又は受信可能な位置に配置される(図1、図2、図6参照)。
【0014】
図2は、本実施形態に係る探触子10を正面から見たときの概略構成図である。送受信部11において、送信部12は、開口部15の外周より外側に配置され、受信部13は観察光学系20の観察光路中に配置されている。そして、制御部70は、探触子10の駆動を制御し、送信部12を用いて周辺領域から被検者眼角膜に向けて超音波を送信すると共に、受信部13を用いて角膜からの反射波を正面方向から受信する。
【0015】
より具体的には、探触子10は、前眼部観察のために十分な大きさを持つ略リング状の開口部15を有し、開口部15の外側に略リング状の送信部12を有し、開口部15の中心に受信部13を有する。受信部13は、所定の作動距離離れて、被検者眼Eに対向して配置される。より好ましくは、受信部13は、被検者眼Eの眼前の近傍位置に配置される(図1参照)。
【0016】
また、中心から近い順に、受信部13、開口部15、送信部12が同心円状に配置されている。開口部15は、観察光学系20の観察光路Kとして用いられる。
【0017】
送信部11は、開口部15に対応する内径を持つ貫通孔が形成されたベース部10aの被検者眼E側に配置されており、貫通孔の外側に略円環状に配置されている。また、開口部15の外周の形状は、正円形に限るものではなく、種々の形状(例えば、矩形、楕円形、等)であってもよい。
【0018】
また、受信部13の中心部(中心軸上)には、固視光源32(後述する)から発せられた固視標投影用の光束、及びアライメント光源42から発せられたアライメント指標投影用の光束を通過させるための開口部14(例えば、直径1mm程度の円孔)が形成されている。
【0019】
なお、観察光学系20の対物レンズ22は開口部15に配置され、その中心部には、受信部13を保持する孔が形成されている。これにより、受信部13は、対物レンズ22によって保持される。もちろん、開口部15には他の光学部材(例えば、ガラス板、フィルタ、等)が配置されていてもよいし、また、前述のような光学部材が配置されていなくてもよい(ただし、受信部13を保持する部材は必要)。
【0020】
また、送受信部11には、空気中での伝搬効率を高めるために、広帯域の周波数成分を持つ超音波ビームを送受信する空気結合型の超音波送受信部(超音波探触子)が用いられることが好ましい。この場合、マイクロアコースティック(Microacoustic)社のBATTM探触子を用いることができる。このような探触子の詳細については、米国特許5287331号公報、特表2005−506783号公報、等を参照されたい。もちろん、これに限るものではなく、ピエゾ型の超音波送受信部(超音波探触子)が用いられてもよい。また、一方の送受信部が広帯域空気結合型探触子で、他方の送受信部がピエゾ型の探触子であってもよい。
【0021】
図1での説明に戻る。観察光学系20は、対物レンズ22と、結像レンズ24と、二次元撮像素子26と、を有し、その光軸(観察光軸)L1が受信部13の中心軸と略同軸となるように配置されている。このため、被検者眼Eの所定部位(例えば、角膜中心、瞳孔中心)に対して観察光軸L1がアライメントされると、被検者眼Eに対する探触子10の上下左右方向のアライメントがなされる。
【0022】
赤外光源38によって照明された被検者眼Eの前眼部像は、開口部15(対物レンズ22)を通過し、ハーフミラー46を透過し、ダイクロイックミラー(赤外透過・可視反射)36を透過し、結像レンズ24によって撮像素子26に結像する。撮像素子26によって撮像された前眼部像は、後述するモニタ72に表示される。
【0023】
固視標投影光学系30は、可視光源32を有し、被検者眼Eを固視させるための固視標を被検者眼Eに投影する。光源32からの可視光は、開口絞り32aによって光束径が絞られ、ダイクロイックミラー36で反射され、ハーフミラー46を透過し、開口部14を介して被検者眼Eの眼底に投影される。固視標投影光学系30の光軸L2は、観察光学系20の光路(観察光路)中に配置されたダイクロイックミラー36によって観察光軸L1と同軸にされている。
【0024】
第1指標投影光学系40は、赤外光源42を有し、上下左右方向のアライメント状態検出用の第1指標である赤外光を正面方向から角膜Ecに投影する。光源42からの赤外光は、開口絞り42aによって光束径が絞られ、ハーフミラー46で反射され、開口部14を介して角膜Ecに投影される。第1指標投影光学系40の光軸L3は、観察光路(観察光束の光路)中に配置されたハーフミラー46によって観察光軸L1と同軸にされている。
【0025】
そして、第1指標投影光学系40によって角膜Ecに形成された第1指標像は、開口部15(対物レンズ22)を通過し、ハーフミラー46を透過し、ダイクロイックミラー(赤外透過・可視反射)36を透過し、結像レンズ24によって撮像素子26に結像する。すなわち、観察光学系20は、第1指標投影光学系40によって角膜Ecに形成された第1指標像を検出する(角膜Ecで反射された光源42からの赤外光を受光する)。すなわち、観察光学系20は、指標検出光学系を兼ねる。撮像素子26によって撮像された第1指標像は、モニタ72に表示される(図3の点像I参照)。
【0026】
第2指標投影光学系50は、赤外光源51を有し、作動距離方向のアライメント状態検出用の第2指標である赤外光を斜め方向から角膜Ecに投影する。
【0027】
指標検出光学系55は、位置検出素子(例えば、ラインCCD)58を有し、第2指標投影光学系50によって角膜Ecに形成された第2指標像を検出する(角膜Ecで反射された光源51からの赤外光を受光する)。なお、作動距離方向のアライメント状態の検出は、探触子10によって行われてもよい(例えば、被検者眼に出射された超音波が探触子10に戻っているまでの時間が距離に換算される)。
【0028】
図3は、本実施形態に係る装置の制御系の概略ブロック図である。演算制御部70は、装置全体の制御等を行う。送受信部11は制御部70に接続され、制御部70からの駆動信号が送信部12に入力される。また、受信部13から出力された電気信号は、増幅された後、制御部70に入力される。そして、制御部70は、受信部13にて検出された反射波の出力波形を解析して、眼圧値を算出する。また、演算制御部70には、撮像素子26、光源32、光源38、光源42、光源51、位置検出素子58、モニタ72、メモリ75、等が接続されている。なお、メモリ75には、探触子10を用いて眼圧を測定するための測定プログラム、装置全体の制御を行うための制御プログラム、等が記憶されている。
【0029】
以上のような構成を備える装置において、被検者眼Eの眼圧を測定する場合について説明する。まず、検者は、被検者に固視標を注視させる。また、モニタ72に表示された前眼部像を観察しながら、被検者眼Eに対する探触子10のアライメントを行う。このとき、演算制御部70は、図3に示すように、撮像素子26によって撮像された第1指標像Iを含む前眼部像と後述するレチクルLT及びインジケータGとをモニタ72に表示する。なお、演算制御部70は、位置検出素子58からの出力信号に基づいて作動距離方向のアライメント状態を検出し、その検出結果に基づいてインジケータGの表示を制御する。
【0030】
検者は、第1指標像IがレチクルLT内に入るように、上下左右方向のアライメントを行う。また、インジケータGが適正な表示状態(例えば、インジゲータが一本の状態)となるように、作動距離方向のアライメントを行う。
【0031】
上下左右前後方向のアライメントが完了され、所定のトリガ信号が手動で又は自動的に入力されると、演算制御部70は、送信部12から超音波ビームを角膜Ecに向けて出射し、角膜Ecで反射された超音波ビームを受信部13で検出する。そして、演算制御部70は、送受信部11による検出結果に基づいて被検者眼Eの眼圧を求め、その結果をモニタ72に表示する。
【0032】
送信部12から所定波形の超音波ビームが角膜Ecに照射された場合、その超音波ビームによる角膜反射波の特性・波形(反射波の振幅、位相、等)は、被検者の眼圧によって変化する。そこで、制御部70は、受信部13で検出される反射波の特性・波形(例えば、超音波の振幅、位相、等の所定物理量)と眼圧との関係から、被検者眼の眼圧値を算出する。
【0033】
例えば、制御部70は、検出された反射波の音響強度を周波数解析(例えば、フーリエ解析)し、反射波における周波数毎の振幅レベルである振幅スペクトルを取得する。図4は反射波の振幅スペクトルの例である。
【0034】
ここで、制御部70は、得られた振幅スペクトルのピーク振幅レベル(例えば、図4における振幅スペクトルSのピーク値P)を検出する。そして、制御部70は、振幅スペクトルのピーク振幅レベルに基づいて眼圧を算出する。メモリ75には、ピーク振幅レベルと眼圧値との相関関係がテーブルとして記憶されており、制御部70は、検出されたピーク振幅レベルに対応する眼圧値をメモリ75から取得し、得られた眼圧値をモニタ72に表示する。なお、ピーク振幅レベルと眼圧値との相関関係は、例えば、本装置によって取得されるピーク振幅レベルとゴールドマン眼圧計によって得られる眼圧値との相関関係を予め求めておくことにより設定可能である。
【0035】
以上のように、送信部12が開口部15の外周より外側に配置されることにより、送信部12の面積を広く確保できるため、角膜Ecに対して強い超音波ビームを照射できる。また、受信部13が中心部に配置されることにより、角膜Ecに対向して受信部13が配置されるため、角膜頂点付近からの角膜反射波を効率よく検出できる。したがって、被検者眼Eに対する作動距離を長くしても、被検者眼の眼圧を精度良く測定できる。また、さらに、受信部13が被検者眼Eの眼前の近傍位置に配置されていることにより、角膜反射波をより効率よく検出できる。
【0036】
また、送信部12が観察光路外に配置されることで、観察光路中に配置される構成が受信部13のみとなるため、観察光路の中心部における遮光領域が少なくて済む。
【0037】
また、送信部12が開口部15を囲むように配置されることにより、被検者眼Eに対する作動距離を長くしても、角膜反射波の検出信号のS/N比を高くできる。なお、送信部12が略円環状にされることにより、角膜Ecへの入射波が略均一となるため、角膜Ecからの反射波を精度良く検出できる。
【0038】
また、送信部12の被検者眼E側の断面形状は、図1のような平面状ではなく、図5(a)のような円錐状(テーパ状)でもよいし、図5(b)のような球面状でもよい。
【0039】
また、送信部12は、2つ以上のリングからなる構成であってもよい。また、送信部11は、図2のような開口部15の略全体を囲む構成ではなく、開口部15の外周の一部を囲む構成であってもよい。したがって、送受信部11が略円環状に配置される場合、連続的な円でなく、間欠的な円であってもよい。また、送受信部11の形状は、略円環状であることが好ましいが、種々の変容が可能である。例えば、多角形(辺の数が多い方が好ましい)状であってもよい。
【0040】
なお、上記構成においては、送信部12と受信部13の中心軸が同軸となるように配置したが、必ずしもこれに限るものではなく、送信部12と受信部13の中心軸が偏心した状態で配置されていてもよい。
【0041】
また、上記構成においては、送信部12及び受信部13が対物レンズ22を介して一体化された構成となっているが、送信部12及び受信部13は、分離独立して配置されていてもよく、前後の位置関係は必ずしも一致している必要は無い。また、送信部12と受信部13の位置関係は、逆であってもよい。
【0042】
なお、以上の説明においては、振幅スペクトルに基づいて眼圧を算出したが、角膜反射波を周波数解析したときの位相スペクトルに基づいて眼圧を算出してもよい。より具体的には、入射波と反射波のスペクトル分布を求め、所定の周波数における入射波の位相と反射波の位相との位相差を基に眼圧値を算出する。なお、前述した超音波パルス法による硬さ検出手法については、特開2002−272743号公報を参照されたい。
【0043】
図6は本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系について説明する図であって、観察光学系20の観察光路外に受信部13が配置された場合の具体例を示す図である。図6において、図1と同様の番号を付したものについては、特段の説明がない限り、同様の機能を果たすものとする。
【0044】
超音波反射部材(音響ミラー)90は被検者眼に対して対向した位置に配置され、受信部13は、超音波反射部材90を介して超音波を受信可能な位置に配置されている。
【0045】
より具体的には、反射部材90は、観察光学系20の観察光路中に配置され、送信部12の超音波ビームによる角膜反射波を受信部13に向けて反射する。また、観察光学系20は、その観察光路外に受信部13が配置され、かつ、超音波反射部材90と被検眼との間の超音波伝搬経路上に観察光軸L1が形成されるように設けられている。また、対物レンズ22には、超音波を通過させるための開口22bが形成されている。
【0046】
ここで、送信部12から発せられた超音波ビームは角膜Ecによって反射される。そして、正面方向に進行する角膜反射波は、対物レンズ22に形成された開口22bを通過し、超音波反射部材90によって反射された後、受信部13によって検出される。そして、演算制御部70は、受信部13からの出力信号に基づいて眼圧を算出する。
【0047】
なお、図6のように超音波反射部材90と被検眼との間に対物レンズ22が配置されるような場合、開口部22bが設けられることにより、対物レンズ22による超音波の減衰を回避できる。この場合、前眼部観察光が開口22bを介して二次元撮像素子26に受光されてノイズ光となるのを防止するべく、観察光束をカットする特性のコーティングを施した超音波反射部材90を用いるようにしてもよい。
【0048】
また、超音波反射部材90において、超音波を反射すると共に、光を透過する特性を持つ部材(例えば、無色透明の硬質なプラスチック板)を超音波反射部材90として用いるようにしてもよい。これにより、固視標投影光学系30の光路中、アライメント投影光学系40の光路中に超音波反射部材90が配置されていても、固視光束及びアライメント光束のケラレを回避できる。なお、光透過性を持つ超音波反射部材90を用いる場合、超音波反射部材を光が通過することによる光路長の変化を鑑み、ビームスプリッタ36・ビームスプリッタ46等の光路分割部材と同程度の面積を持つ部材を用いるようにしてもよい。
【0049】
また、上記構成に限るものではなく、超音波反射部材90の一部に開口部を設けることで、固視光束及びアライメント光束が開口部を通過して被検眼に入射されるようにしてもよい。なお、上記構成においては、固視標投影光学系30及びアライメント投影光学系40の共通光路中に超音波反射部材90が配置される場合を示したが、固視標投影光学系30、アライメント投影光学系40の少なくともいずれかの光路中に超音波反射部材90が配置される場合においても、上記構成の適用は可能である。
【0050】
また、上記構成に限るものではなく、観察光学系20の対物レンズ22と被検眼との間に超音波反射部材90を設けたものであってもよい。
【0051】
なお、上記構成においては、送信部12と受信部13の位置関係は、逆でもよい。この場合、受信部12は、超音波反射部材90を介して超音波を被検者眼に送信可能な位置に配置される。そして、超音波反射部材90は、送信部12から発せられた超音波ビームを被検眼に向けて反射するために用いられる。
【0052】
なお、上記構成において、上記光学系の一部に、眼圧とは異なる他の眼特性を測定するための測定光学ユニットを設けるようにしてもよい。測定光学ユニットとしては、被検眼眼底の指標を投影しその反射光に基づいて眼屈折力を測定する眼屈折力測定ユニット、被検者角膜に指標を投影しその反射光に基づいて角膜形状を測定する角膜形状測定ユニット等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る探触子を正面から見たときの概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る装置の制御系の概略ブロック図である。
【図4】反射波の振幅スペクトルの例である。
【図5】送信部の断面形状の変容例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る非接触式超音波眼圧計の測定系及び光学系について説明する図であって、観察光学系の観察光路外に受信部が配置された場合の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 超音波探触子
11 送受信部
12 送信部
13 受信部
14 開口部
15 開口部
20 観察光学系
22 対物レンズ
90 超音波反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼角膜に対し超音波ビームを非接触にて送信し,受信するための送受信部を有する超音波探触子を備え、前記探触子によって受信された角膜反射波の特性に基づいて被検者眼の眼圧を測定する非接触式超音波眼圧計であって、
前記被検者眼の前眼部を正面方向から観察するための観察光学系を備え、
前記探触子は、前記送受信部における送信部及び受信部のうち、いずれか一方の部材は前記観察光学系の観察光路外に配置され,他方の部材は前記観察光学系の光路を用いて送信又は受信可能な位置に配置されることにより構成されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項2】
請求項1の非接触式超音波眼圧計において、前記前記送信部及び受信部は被検眼に対向して配置されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項3】
請求項2の非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部は、所定の保持部材によって観察光路中に保持されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項4】
請求項3の非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部は、固視標投影用の光束又はアライメント指標投影用の光束を通過させるための開口部が形成されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項5】
請求項4の非接触式超音波眼圧計において、
中心から近い順に、前記他方の送受信部、前記観察光路、前記一方の送受信部が同心円状に形成されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項6】
請求項5の非接触式超音波眼圧計において、
前記観察光学系は、対物レンズを有し、前記他方の送受信部と前記一方の送受信部は、該対物レンズを介して一体化されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項7】
請求項1の非接触式超音波眼圧計において、
前記探触子は、被検者眼に対して対向して配置される超音波反射部材を有し、前記他方の送受信部は、該超音波反射部材を介して超音波を送信又は受信可能な位置に配置されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、前記開口部の外周を囲むように配置されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項9】
請求項8の非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、略リング状に形成されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項10】
請求項9の非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は、複数配置されている非接触式超音波眼圧計。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記他方の送受信部と前記一方の送受信部は、その中心軸が同軸となるように配置されていることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、
前記一方の送受信部は送信部であって、周辺領域から前記角膜に向けて超音波ビームを送信し、
前記前記他方の送受信部は受信部であり、該送信部による角膜反射波を正面方向から受信することを特徴とする非接触式超音波眼圧計。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの非接触式超音波眼圧計において、前記送受信部の少なくともどちらかは、広帯域空気結合型探触子であることを特徴とする非接触式超音波眼圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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