説明

非接触式高分解能の手形取り込みのための装置及び方法

【課題】異なる複数の焦点距離の各々において対象の手の手形画像全体を取り込むための非接触式手形取り込みのためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】、画像取り込みデバイス(14)は、撮像カメラ(32)と、偏向状態に基づいた様々な光路長を伴う複数の光変調素子(42)及び偏向感受型光学素子(40)を有する電気光学配列(34)と、を含む。該デバイスに対して異なる焦点距離の各々において手形画像を取り込ませるように制御システム(38)を画像取り込みデバイス(14)に結合させており、ここで各手形画像は冗長な手形画像データが取り込まれるように隣接する焦点距離における手形画像の焦点深度と重複した焦点深度を有する。制御システム(38)は、各手形画像を位置データと位置合わせすると共に、異なる焦点距離で取り込んだ手形画像から合成手形画像を作成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的には生体データ取り込みのためのシステム及び方法に関し、またより詳細には非接触式の高分解能手形(handprint)取り込みデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋(fingerprint)のパターン及び幾何学形状は各個人ごとに異なると共に、経時的に変化しないことがよく知られている。したがって指紋が修正不可能な物理的特質に依拠しているために、指紋は個人に関する極めて正確な特定子の役割をする。指紋の分類は通常アーチ、ループ、渦巻きなどのある種の特徴に基づいており、その最も特異な特徴は隆起や隆起の流れの全体形状内に見出される分岐点や端点であるマイニューシャ(minutiae)である。さらに最近では、生体認証に関する可能な強力な手段として掌紋(palm print)も認識されてきた。生体計測に関するさらにフールプルーフの高い「将来的なモダリティ」を提供するために掌紋を指紋と組み合わせて使用可能であることが確認されている。
【0003】
従来では、インクと紙によって指紋を取得しており、対象がその指の表面をインクで覆うと共に、紙や同様の表面上にその指を押し当て/ローリングさせてローリング式の指紋が作成される。さらに最近では、光学式の指紋画像取り込み技法を利用して指紋像を取得するような様々な電子指紋走査システムが開発されている。こうした電子指紋走査システムは典型的には、対象の指をスクリーンと接触させた後に、光学収集のフルローリング像の指紋を提供するようにそのスクリーン全体にわたって指を物理的にローリングさせることを要する接触方式の指紋読取機の形態をしている。しかしこうした接触方式の指紋読取機はこれに関連して大きな欠点を有する。例えば現場環境では、泥、グリースやその他のゴミが接触方式指紋読取機のウィンドウ上に堆積することがあり、作成される指紋画像が低品質となることがある。さらにこうした接触方式の指紋読取機が疾病その他の感染が人から人へと広がる媒介となる。
【0004】
最新世代の電子式指紋走査システムでは、対象の指に物理的に接触することを必要とせずに指紋が取り込まれる非接触式指紋読取機が提唱されている。しかし既存の非接触式指紋走査システムは、収集可能な指紋画像の種類に関する限界がある。例えば、非接触式指紋走査システムの既存の一タイプは、カメラ画像を利用することによって指の単一の平坦画像を収集することが可能である。しかしこうした単一の平坦画像は、1枚のカメラ画像を使用するために指紋を大きな面積で取り込むことが可能でないため、全指紋データを提供していない。
【0005】
既存タイプの別の非接触式指紋走査システムは、構造化光(structured light)などの方法を用いて指のフル3D画像を収集する。位相シフト式構造化光技法では、パターン周期の一部のパターンが画像間でシフトするようにして、ある角度から対象上に正弦波パターンを投射させた対象の3枚以上の画像を用いている。トライアンギュレーション(triangulation)効果を創成するためにこの投影角度及び観察角度は異っていなければならなず、このため指や手のひらなどの湾曲した対象を取り込む能力が制限される。こうした計測の結果は、詳細な3D物体計測となるが、高い安定度を提供するためにはこれらの計測においてデータ取り込みの間に周到な指の固定を必要とするような高い安定度が要求される。さらに、平坦な指紋画像の指紋の隆起と谷部の間にコントラストを生成するのに利用される技法は、同じ画像内では指の先端部や側部など指のすべての領域を明瞭なフォーカスにできない浅い被写界深度を用いている。
【0006】
最近、General Electric(GE)社により提出された米国特許出願第12/694,840号及び同第12/889,663号に、既存のタイプのさらに別の非接触式指紋走査システムが記載されている。このGE出願に記載されている非接触式指紋収集システムは、複数の画像深度の画像組の取り込みが可能な高速切替え式の光学系を用いてローリング等価の指紋データを取り込んでいる。各画像は、個々には浅い被写界深度を必要とする高分解能フォーカスを有しており、これはちょうど高分解能顕微鏡が一度に浅い深度にわたってしかフォーカス可能でないのと同じである。この焦点シフトは、高分解能レンズ系内に組み入れた複屈折光学素子と連携して液晶パネル(LCP)を用いることによって生成される。このLCPは、光の偏向をミリ秒のタイムスケールで切替えることが可能であり、このため光の偏向を90度回転させて複屈折光学素子内で光に異なる屈折率を示させるようにし、これによりシステムを異なる焦点距離に集束させることができる。取り込み後にオルソ−ノーマル投影(ortho−normal projection)法を利用しており、これらの画像では完全な位置合わせが必要でない。
【0007】
しかしこのGE出願に記載された非接触式指紋収集システムにはある種の制約が存在する。例えばこの非接触式指紋収集システムは指紋画像だけを収集するように構成されていて掌紋画像の収集に対応しておらず、したがってその指紋画像はこうした2D等価掌紋データを何ら伴わずにローリング等価指紋データだけを提供している。さらに個々の各指紋の取り込みについて小さい撮像域を有する単独のカメラを利用しており、このため3D形状情報は対象の指に関してのみ集めることができ、手全体については集めることができない。またさらには、利用するカメラが1000画素毎インチ(PPI)の固有分解能を有する高分解能カメラであり、したがって30メガ画素以上のカメラを使用する必要があり、システムの費用が増大する。最後に非接触式指紋収集システムではソフトウェアベースの処理方式でのみ複数の深度指紋画像間に位置合わせが提供でき、このためその位置合わせが計算集約的/算定集約的となる。
【0008】
上に示したように、将来世代の生体データ取り込みデバイスでは、指紋だけでなく掌紋も取り込み、生体計測に関するさらによりフールプルーフなモダリティを提供する(すなわち、手形全体を取り込む)ことが望ましい。こうした手形取り込みデバイスであれば、手のボリュメトリック取り込みが理想的に提供され、手の複数の形状及び格好の取り込みを可能とし、またさらには指紋(すなわち、ローリング展開式の指紋)と掌紋の両方に関する2D等価データを可能にするように取り込みの深度が拡大される。この手形取り込みデバイスでは、手全体の画像をワンショットで取り込むようなより低分解能でより低コストのカメラを理想的に用いることになり、この際にレベルIV生体データ性能レベルを提供するような所望の値(例えば、1000PPI)まで分解能を高めるために超解像処理(super−resolution processing)が適用される。この手形取り込みデバイスではまた、システムの計算/算定要求を低下させかつ位置合わせ処理を高速化するようなガイドマークタイプの位置合わせデバイスによって複数深度手形画像間で理想的に位置合わせを提供することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第20090080709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、手と手形読取機との間の接触を排除しかつフルローリング等価指紋データと2D等価掌紋データを提供するようなフル非接触式手形画像を収集するシステム及び方法を設計することが望ましい。さらにこうしたシステムは、1000PPI以上の手形画像分解能を提供する画像処理を用いたより低分解能より低コストのカメラを利用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、非接触式手形データ収集のための装置及び方法を目的とする。
【0012】
本発明の一態様による非接触式生体データ収集デバイスは、位置レンジのうちのいずれかでかつ異なる複数の焦点距離の各々において対象の手の手形画像全体を取り込むように構成された画像取り込みデバイスを含んでおり、この画像取り込みデバイスはさらに、第1の画像分解能レベルで手形画像を取り込むように構成された撮像カメラと、手と撮像カメラの間に位置決めされた電気光学配列であって、複数の異なる焦点距離の各々における手形画像の取り込みを提供するために光路長が異なる偏向状態に伴って変化する複数の光変調素子及び偏向感受型光学素子を含んだ電気光学配列と、を含む。本非接触式生体データ収集デバイスはさらに、画像取り込みデバイスに結合されて該画像取り込みデバイスに対して複数の異なる焦点距離の各々において、その各手形画像が冗長な手形画像データが取り込まれるように隣接する焦点距離における手形画像の焦点深度と重複した焦点深度を有するように手形画像を取り込ませるように構成された制御システムを含む。この制御システムはさらに、各手形画像を位置データと位置合わせし手形画像同士の間並びに手の各部分間に画素対応関係を生成すると共に、複数の異なる焦点距離の各々で取り込んだ位置合わせ済み手形画像から合成手形画像を作成するように構成されている。
【0013】
本発明の別の態様による対象の手の生体データを非接触方式で収集するための方法は、画像取り込みシステムによって複数の固定の焦点位置の各々において手の少なくとも一部分の画像を取り込むステップであって、各画像は掌紋と複数の指紋のうちの少なくとも一方を含みかつ各画像は第1の画像分解能レベルで取り込まれている。本方法はさらに、複数の固定の焦点位置で取り込んだ手形画像を位置合わせして手形画像同士の間に画素対応関係を生成するステップと、該複数の固定の焦点位置で取り込んだ画像を合成し合成画像を形成するステップと、を含んでおり、合成画像の該形成はさらに、冗長な深度データとそれぞれの手形画像間の横方向画像シフトを含む画像を画像処理アルゴリズムに入力するステップと、該画像処理アルゴリズムから第1の画像分解能レベルより上昇させた第2の空間分解能レベルを有する合成画像を作成するステップと、含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様による手形を撮像するための非接触式手形収集デバイスは、所望の撮像箇所への対象の手の位置決めを支援するためにフィードバックを対象に提供するように構成された位置決め支援デバイスと、複数の焦点深度の各々において手形から手の手形画像を取り込むように構成された画像取り込みデバイスと、を含んでおり、該画像取り込みデバイスはさらに、第1の空間分解能レベルで手形画像を取り込むように構成された撮像カメラと、手と撮像カメラの間に位置決めされており、複数の異なる焦点深度の各々における手形画像の取り込みを提供するために複数の光変調素子及び偏向感受型光学素子を含んだ電気光学配列と、を含む。本非接触式手形収集デバイスはさらに、画像取り込みデバイスに動作可能に接続されたプロセッサを含んでおり、該プロセッサは、冗長な深度データ及びそれぞれの手形画像間の横方向画像シフトを含んだ手形画像を複数の焦点深度の各々において取り込ませるように撮像デバイスを制御するようにプログラムされている。このプロセッサはさらに、複数の焦点深度で取り込んだ手形画像を位置合わせして手形画像を相関させること、depth from focusとdepth from defocusアルゴリズムのうちの一方を用いて手の3D形状を決定すること、該位置合わせ済み手形画像及び手の3D形状を処理して手形画像の第1の空間分解能レベルより高い第2の空間分解能レベルを有する合成手形画像を形成すること、並びに該合成画像から手形の2次元ローリング等価画像を作成すること、を行うようにプログラムされている。
【0015】
様々な別の特徴及び利点については、以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかとなろう。
【0016】
図面では、本発明を実施するように目下企図される好ましい実施形態について例証している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による非接触式手形取り込みデバイスの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による図1の非接触式手形取り込みデバイス内に含まれる画像取り込みデバイスのブロック概要図である。
【図3】本発明の一実施形態による8〜16個の焦点距離を生成するための図2の画像取り込みデバイスと共に使用可能な複数の液晶パネル(LCP)及び複屈折素子を有する多段式電気光学配列を表した図である。
【図4】本発明の一実施形態による1000画素毎インチ(PPI)の超解像合成手形画像を作成するために使用される処理流れ図である。
【図5】本発明の一実施形態による手形歪みマップの作成を目的とした手の寸法及び湾曲を決定するためのモデル化技法を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
非接触式手形取り込みのための装置及び方法に関連して以下において本発明の実施形態の動作環境について記載することにする。この非接触式手形取り込みデバイスは、指紋及び掌紋の画像を含んだローリング等価手形画像を提供する。動作時においてこのデバイスは、手の一連の/複数の単一ショット画像を迅速に取り込む。これらの画像の各々は小さい被写界深度を有しており、単一の任意の画像で焦点が合った状態とすることが可能なのは手の掌紋及び指紋の領域の一部分のみである。このため手の画像は、各焦点距離が先行する画像/後続の画像から小さい増分だけ分離されているような手に対する異なる特異な有効焦点距離(すなわち、「深度」)(例えば、8個または16個の深度)で撮影される。この結果、手の上の任意の関心対象点が画像のうちの少なくとも1つ(また画像のうちの幾つかとすることも可能)において良好なフォーカスとなり、その一連の画像は指及び掌紋の所望の情報をすべて有することになる。もちろん、すべての領域が良好なフォーカスとなった手の単一画像があることが望ましく、したがってこれを、収集した複数の画像を処理を通じて最終的な1枚の合成画像に合成させることによって実現している。この処理システムは、各画像のどの領域が良好なフォーカスであるかを決定した後、収集した各画像からの良好フォーカスの領域を用いて画像を合成して最終の合成画像を作成することになる。入力画像より高い分解能を有する出力合成画像を作成するために超解像処理を用いることもあり、この超解像処理は、手の領域が複数の入力画像で良好なフォーカスとなっているときに特に有効となる。手形の3次元(3D)モデルも構築され、これを用いて合成画像内に存在する表面パターンデータ(指紋及び/または掌紋)をローリング展開(unroll)し、1000画素毎インチ(PPI)以上の超解像を有する手から取得した平坦画像の等価画像にしている。
【0019】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による非接触式手形収集デバイス10を表している。デバイス10は、非接触方式で対象から手形画像を収集するように構成された画像取り込みデバイス14を囲繞する外側ハウジング12を含む(これについては以下でさらに詳細に説明することにする)。非接触式手形収集デバイス10のハウジング12は、画像取り込みデバイス14による手の撮像を提供するようにその前面パネル内に撮像用ウィンドウ/窓16を含む。
【0020】
本発明の一実施形態では手形収集デバイス10は、様々な環境まで搬送可能かつ様々な環境において使用可能な可搬式デバイスとして構成されている。手形収集デバイス10上には、その上にハウジング12及び画像取り込みデバイス14を装着させる基部18が含まれており、この基部18は手形収集デバイス10の搬送を容易にしかつその機能を向上させるような調節可能で折り畳み式の基部として構成させることが好ましい。図1に示したように一実施形態ではその基部18を、高耐久性の三脚の形態とすることが可能であるが、適当な別の基部設計も本発明の趣旨の域内にあるものと想定される。手形収集デバイス10内には、電池などの可搬式電源20も含まれると共に、これを用いて画像取り込みデバイス14や手形収集デバイス10のその他の電子機器に対してパワー供給されており、このため電力網へのアクセスをもたない環境においてデバイス10の動作を提供することができる。
【0021】
デバイス10の動作時において対象22は、その手が適当な位置に来た後での画像取り込みデバイス14による対象の手の画像収集を可能とするように手24を撮像用ウィンドウ16の近傍に位置決めし、これにより複数の指紋及び掌紋(すなわち、手形)が非接触方式で収集される。非接触式手形収集デバイス10によって対象22から手形データを収集するためには、対象の手24を撮像用ウィンドウ16の近傍でかつ画像取り込みデバイス14を基準として適正に位置決めしなければならないことが理解されよう。すなわち、手の合フォーカス画像を指定の焦点距離または深度に収めるために、画像取り込みデバイス14から所望の/指定の距離に手24を適正に位置決め決めしなければならないことが理解されよう。これを実現するために、手形収集デバイス10上に利用者観察用モニタ26及び接近検知システム27(図2)を設けている。利用者観察用モニタ26は、対象22が自らの手24を撮像用ウィンドウ16の近傍に適正に位置決め及び方向設定するためのフィードバックを提供することによって位置決め支援デバイスの役割をする一方、接近検知システム27は画像取り込みデバイス14を基準とした対象の手24の位置を検知しており、また一実施形態では手が画像取り込みを可能とするような正しい位置にあるときにデータ収集を自動的にトリガしている。本発明の一実施形態ではその利用者観察用モニタ26は、手の所望の位置を示すマーカを基準としてその手を表示すると共に、対象22に対して自分の手24が画像取り込みデバイス14による撮像に関する受容可能な位置に来ているときに視覚的指示またはアラートを提供する。さらに一実施形態では接近検知システム27はさらに、対象に対して所望の撮像箇所に対するその手の近傍に関するフィードバックを提供するために手部トラッキングデバイスすなわち画像取り込みデバイス14を基準とした手の箇所のトラッキングを提供する能力を含む。
【0022】
さらに図1に示したように、手形収集デバイス10上にはオペレータ制御モニタ28も含まれている。オペレータ制御モニタ28は、オペレータに対して手部走査手順を開始してその走査から得られたデータを観察する能力が提供されるように位置決めされかつ構成されている。例えばオペレータ制御モニタ28は、手部走査手順を開始する間にオペレータに対して画像取り込みデバイス14を基準とした対象の手24の位置決めに関するフィードバックを提供し、その手の位置決めについてオペレータが対象を支援し指示できるようにすることがある。手部走査手順が終了した後に、オペレータ制御モニタ28はさらに、取り込まれた手形に関して得られたデータ及び情報をオペレータに提供する(例えば、その手形が手形データベース内に保存されたいずれかの手形とマッチングする場合を含む)ことがある。
【0023】
ここで図2を見ると、本発明の一実施形態による画像取り込みデバイス14のブロック概要図を示している。画像取り込みデバイス14は、手までの異なる有効焦点距離で撮影した複数の手形画像を一体となって収集する役割をする光源30、カメラ32及び電気光学系34を含む。電気光学系34の個々の構成要素に対して選択的に電力を提供するように電圧源36が設けられており、また画像取り込みデバイス14の動作を制御するように制御システムまたはプロセッサ38が設けられている。プロセッサ38は、手までの異なる有効焦点距離で撮影した複数の手形画像を取り込むように光源30、カメラ32、電気光学系34及び電圧源36の動作を制御すると共に、さらに手形の高分解能合成画像を提供するためにこの取り込んだ画像に対する後続の画像処理を実行する(これについては以下で詳細に説明することにする)。
【0024】
本発明の一実施形態では、高パワーの光ビームを提供すると共にバースト/パルス状の光を放出するように迅速かつ動的に制御を受けることが可能なストロボ動作発光ダイオード(LED)光源とした光源30を設けている。カメラ32は、例えば600画素毎インチ(PPI)画像分解能の手部画像を提供可能な1600万画素のカメラなど市場で容易に入手可能なカメラの形態としている。しかし画像取り込みデバイス14において600PPIより高分解能のカメラやより低分解能のカメラを用いることも可能であることも想定される(500PPI以上のカメラでは実地の検討に基づくことが望ましい)。カメラ32は、浅い被写界深度(DOF)を必要とする高分解能フォーカスを有する画像を収集するように構成されている。電気光学系34は、カメラ32により収集した画像の各々の間に焦点シフトを提供しており、ここで電気光学系は、冗長な画像情報を提供するような焦点距離(レンジ)のシフトを伴った8〜16個の焦点シフトを提供するように構成される。この冗長な画像情報は、カメラ32の固有分解能のものと比較して上昇させた最終画像分解能を提供するために超解像法に従って解析を受けることになる。一実施形態では最終画像分解能は、カメラ32の固有分解能の概ね2倍に至る(例えば、1000PPIの最終画像分解能となる)。
【0025】
さらに図2を参照すると画像取り込みデバイス14はさらに、対象の手24の上に基準標的点を生成するように構成された固定標的発生器39を含む。一実施形態では標的発生器39は、レーザービームスポットや別の投射標的を手24の上に導くように構成されたレーザー発生器の形態である。レーザー発生器39の方向及び位置がカメラ32に対して固定であるため、カメラ32により収集した画像は、手形画像取り込みの間に生じる可能性があるカメラ32を基準とした手24の任意のシフトに関する補正が可能である。固定標的発生器39はしたがって、対象とカメラを接続することになる基準として機能させるように発生器39によって固定の標的が収集画像に追加されると、望遠鏡撮像で使用されるガイドスタータイプの基準と同様の動作をする。したがって、標的発生器39を含めることによって、僅かな手の動きに対して画像取り込みデバイス14がより強力になる。
【0026】
ここで図3を参照すると、本発明の一実施形態による複数の偏向感受型光学素子40及び複数の光変調素子42を含んだ画像取り込みデバイス14(図1)の電気光学系34を表している。光変調素子42は、例えばファラデー回転器、光電結晶、ウェーブプレートまたは液晶パネル(LCP)の形態とすることがある。偏向感受型光学素子40は、異なる焦点距離における複数の手形画像の取り込みを可能とするための、複屈折ウィンドウまたは複屈折レンズなどその光路長が光の偏向方向に依存する素子である。偏向感受型光学素子40は、石英、ニオブ酸リチウム、方解石、オルトバナジウム酸イットリウム、または適当な同様の別の材料などの透明な材料を含むことがあると共に、画像取り込みデバイス14の光軸46と直交するファスト軸(fast axis)44で切断されている。到来する光がファスト軸44に沿って偏向されているときはその光学経路はnoのL倍に等しく、また到来する光がファスト軸44と直交するときはその光学経路はneのL倍に等しい。Lという記号は素子間の距離を意味しており、またnoとneという記号は異方性軸に対するそれぞれ直交方向(通常)と平行方向(非通常)の偏向に関する屈折率を意味している。石英結晶の場合では、この2つの向きの間での屈折率シフトはほぼ0.018RIU(屈折率単位)であり、厚さが1センチメートルのウィンドウによって0.18ミリメートルの経路長変化を提供することが可能である。方解石は、厚さが1センチメートルのウィンドウに関する1.6ミリメートルの画像シフトについて約0.16RIUの屈折率シフトを有する。これに対してニオブ酸リチウムは、概ね0.2RIUの屈折率シフトを有しており、これにより方解石の1.6ミリメートルと比較して1.9ミリメートルのシフトが生成される可能性がある。
【0027】
図3に示したように、電気光学系34は多段式シフト装置として構成している。図3の実施形態では電気光学系34は、収集しようとする手に関する多数の画像(すなわち、オーバーサンプリング)に対応するように8〜16個までの焦点面(番号48で示す)を提供しこれらの面間に冗長度をもつような複数のLCP42及び複屈折光学素子40を含んでいるが、LCPと複屈折素子の代わりに別の光変調素子42及び偏向感受型光学素子40を使用することも可能であることが理解されよう。動作時において、LCP42によって生じる偏向回転を制御するために、電圧源36から供給される電子信号(すなわち、電圧)が用いられる。LCP42に対しては、その向き状態を変化させる(すなわち、偏向回転を変化させる)ために1つまたは複数の異なる電圧が印加される。引き続いてこれが、手形からの反射光に複屈折素子40内部の異なる屈折率経路を示させ(すなわち、光の直線状偏向を回転させ)ており、これにより異なる光路長が生じる。一実施形態ではその電子信号は、各LCP42が光の偏向をミリ秒の時間スケールで切替え可能となるように供給される。光の偏向が90度だけ回転すると、その光は複屈折光学素子40内で異なる屈折率を示し、これにより画像取り込みデバイス14が異なる有効焦点距離/面48に集束する。光路長の任意の変動によって、手24とカメラ32の間の物理的な距離変化と同様にカメラ32により収集した画像上のフォーカス/フォーカス外れが変化する。
【0028】
追加される各LCP42及び複屈折素子40ごとに、画像取り込みデバイス14により生成可能な固定の焦点位置44の数が2倍となることが理解されよう。したがって、3つのLCP42を含む電気光学系34を有する画像取り込みデバイス14では8つの別々の焦点面48が設けられることになり、一方4つのLCP42を含む電気光学系34を有する画像取り込みデバイス14では16個の別々の焦点面48が設けられることになる。焦点面48の間に2.5ミリメートルの集束ステップ50を用いると、8枚の画像によって20ミリメートルのレンジボリュームが提供されることになり、また16枚の画像を用いると40ミリメートルのレンジ(取り込みレンジが1.5インチを超える)が提供されることになる。取り込み深度をかなり強化すれば、手の上のあらゆる領域を取り込みレンジ内部に収めることが可能であるため、手の位置及び形状の何らかの変動を許容する場合であっても手24(図2)の局所領域を個別に取り込む能力が不要になる。データ収集に関する最良位置を選択するために、依然として利用者フィードバック及び距離検知を用いることが可能である。
【0029】
画像取り込みデバイス14内に電気光学系34の様々な構成を含めることができるが、こうした構成の各々は画像取り込みデバイス14の光路長を変化させるようにカメラ32と対象の手24の間に位置決めされたLCP42及び複屈折光学素子40を含む。電気光学系34に追加したLCP42の追加の各段によって、手24から反射して戻されてカメラ32により受け取られる光の強度が低下することが理解されよう。すなわち、LCP42の各段によって約30パーセントの光損失の可能性が存在する。しかし、画像取り込みデバイス14内に設けたストロボ動作のLED光源30(図2)などのより高パワーの光によって光損失が緩和される。さらに画像取り込みデバイス14は、上に記載したLCP42及び複屈折素子40を超える追加の構成要素を備えることがあることが理解されよう。例えばLCP42と組み合わせてレンズ52を用いることがあり、LCP42に電圧を印加したときにこの組み合わせを有効な焦点位置としている。追加のレンズ、ミラー、光フィルタ、アパーチャ、照光用デバイス、電子部品などの別の構成要素も画像取り込みデバイス14内に含まれていることも想定される。
【0030】
さらにある種の実施形態では、LCP42及び複屈折素子40からの光の偏向の方向付けのために、電気光学系34内に1つまたは複数の偏光子(図示せず)を含めることがある。ある種の実施形態では、鏡面性反射と拡散性反射の両方を計測するために偏向を利用することがあり、具体的には偏向させる光を青波長領域と赤波長領域上に集束させている。鏡面性及び拡散性の反射の計測値を用いると、偽物では本物の指によるものと比べて偏向光に対する応答が異なる偽指の材料を用いていることから、本物の指紋及び掌紋を偽物から区別することができる。すなわち指は異なる波長の光に対して異なった拡散を生じさせ、このため光をすべての方向に散乱させる半透明材料と光を一定方向に反射させる鏡面性材料とをより大きく対比させる役割をすることが知られている。赤波長成分を有する光は生体の指のより深くまで貫通してそこで拡散されるため、指の表面で反射されより高い偏向度を維持する青波長成分を有する光と比べて光の偏向度がより低いという異なる性質を示す。青と赤の波長間での光の貫通の差のため、またしたがって指のフィーチャ上に見られるコントラストのために(内部光が指を輝かせるために表面コントラストが低下するために)、本物の指紋を偽装指紋から真贋鑑定するのに十分となり得る。
【0031】
図1〜3に戻って参照を続け、本明細書の以下において手形取り込みデバイス10の動作について詳細に記載することにする。システム動作の際に、オペレータによる指示に従い、また利用者観察用モニタ26によるなど手形取り込みデバイス10からの単純なフィードバックを用いることによって、対象22は自分の手24を画像取り込みデバイス14を基準としたある具体的な向きに配置させる。システムがボリュメトリックな取り込みデバイスであるため、画像取り込みデバイス14に対する手の正確な位置決めは不要であり、必要となるのは単に手24を撮像用ウィンドウ16の近傍においてかつ画像取り込みデバイス14に対して手形を露呈させる一般的な形状/格好において配置させることだけである。すなわち手形取り込みデバイス10は、手の複数の形状及び格好に関する取り込みが可能となるように取り込みの深度を拡大させた手のボリュメトリック取り込みを提供することができる。
【0032】
所望の箇所に手24を配置させた後、手形取り込みデバイス10は次いで、画像取り込みデバイス14を用いて複数の(例えば、8枚または16枚の)手形画像を高速シーケンスで取り込んでおり、これらの手形画像は画像取り込みデバイス内の電気光学系34の動作を制御することによって異なる焦点距離で取り込まれる。すなわち、電圧源36から供給される電子信号(すなわち、電圧)を用いて、電気光学系34内の光変調素子42が生じさせる偏向回転を制御しており、この際に偏向回転を変化させるように光変調素子42に対して1つまたは複数の異なる電圧が印加されている。これにより光に対して偏向感受型光学素子40内部で異なる屈折率経路を示させることになり、異なる光路長が得られる。光路長を任意に変動させることによって、手24とカメラ32の間の物理的な距離変化と同様にカメラ32により収集した画像に対するフォーカス/フォーカス外れの変化が得られ、異なる焦点距離または固定の焦点位置48において複数の手形画像(8枚または16枚の画像)を取り込むことができる。
【0033】
各手形画像は、レンジまたは深度が直前の画像から設定された量(すなわち、集束ステップ50(図3))だけ離れていると共に、焦点面の離間に匹敵する被写界深度全体にわたって最適に集束される。すなわち取り込まれる各手形画像の焦点深度は、各固定の焦点位置または撮像面48の間の集束ステップ50のサイズに概ね等しい。一実施形態では、2.5ミリメートルの集束ステップを実現しており、これによれば8枚の画像によって20ミリメートルレンジのボリュームが提供されることになり、また16枚の画像を用いると40ミリメートルのレンジ(取り込みレンジが1.5インチを超える)が提供されることになる。取り込み深度を40ミリメートルまで大幅に強化すると、手の位置及び形状に関して何らかの変動を許容した場合であっても手のあらゆる領域をボリュメトリック取り込みレンジの域内に来させることが可能であるため、手の局所領域を別々に取り込む能力は不要となる。取り込まれる各手形画像の焦点深度を各固定の焦点位置48間の集束ステップ50のサイズに概ね等しくすると、複数の手形画像内に冗長な深度/レンジデータが取り込まれる。このデータが冗長であることは、面間の冗長性によってさらに画像オーバーサンプリングを提供できるため手の上のあらゆる領域をある画像の取り込みレンジの域内に来させることが可能であることを意味する。
【0034】
焦点距離(すなわち、深度/レンジ)のシフトを有するように取り込んだ手形画像以外に、取り込まれる手形画像の各々はさらに、取り込まれる別の各手形画像と比較して小さい横方向シフトを含む。冗長な手形画像データは、画像の小さい渦巻きが作成されるように、これら小さい既知の横方向シフトを偏向感受型光学素子42により導入して意図的に作成することが可能である。サイズが1画素未満であるようなこの小さいシフトのことを、サブピクセルシフトと呼んでおり、またこのシフトが取り込んだ手形画像の超解像強調で用いることを要する必要な画像を作成する役割をする。本システムではこのサブピクセルシフトを、異なる焦点位置48の間での切替え並びに横方向画像シフトの提供(レンズをわずかに偏心させるか小さい光学くさびを用いるかのいずれかによる)の機能を有する高速画像切替え電気光学配列/システム34によって実現している。この画像の小さい横方向シフトによって、サブピクセルサンプリングに基づいて有効画像分解能を概ね2倍にすることが可能となる。
【0035】
動作時において手形取り込みデバイス10は、手形画像同士の間に画素対応関係を生成すると共に手の各部分間(すなわち、指紋と掌紋の間)の位置合わせを提供して「位置合わせ済み手形画像」が作成されるように、各異なる焦点距離/固定の焦点位置48で取り込んだ手形画像を位置データと位置合わせする役割をしている。すなわち、画像の取り込み中の手のあらゆる動きは画像のシフトと解釈されることがあるため、手の位置を基準として画像を安定化させ、小さい画像シフトが制御された方式に維持可能となるようにする必要があることが理解されよう。したがって、固定標的発生器39により発生させたレーザービームスポットなど各手形画像内で識別可能な手の上に投射させる固定の基準標的点を用いて、位置に関して各画像を位置合わせしている。固定の基準標的点の方向及び位置がカメラに対して固定であるため、カメラを基準とした手のシフトについて手形画像を補正することが可能である。次いでセンサシステムの内部に所望の画像シフトを制御された方式で導入することが可能である。この画像の安定化及び位置合わせは主に横方向シフトに対応するものであるが、焦点距離の変化に関連する情報を(単純に十字を投射する場合は手の格好に関する情報も)提供することが可能である。しかしこのシステムは画像全体にわたるレンジ情報をすでに収集しているため、追加のレンジデータがあればそれは冗長なものとなる。
【0036】
異なる焦点距離にある異なる固定の焦点位置の各々における複数の手形画像の取り込み並びに「位置合わせ済み手形画像」を提供するようなこれらの画像の各々の位置データとの位置合わせ以外に、手形取り込みデバイス10はさらに手の3D形状を決定するようにも機能する。すなわち、depth from focus(DFF)アルゴリズムとdepth from defocus(DFD)アルゴリズムのうちの一方を用いて手の輪郭マップまたは「深度マップ」が算定/または作成される。DFF解析/算定は、異なる焦点距離で取り込んだ複数の画像を合成して各画像の合フォーカス箇所を指定の画像を取り込んだ既知の焦点距離と相関させている3Dマップを提供する画像解析法の1つである。DFD解析/算定は、画像内のフォーカス外れボケの度合いを計算することによって深度情報を算定するために異なる焦点距離で取り込んだ複数の手形画像を合成している画像解析法の1つである。すなわちDFD解析/算定は、フォーカス外れの量並びに撮像用デバイスレンズの固有インパルス応答関数(すなわち、そのレンズに関してフォーカスに従って画像がどのように変化するか)を使用してレンジ情報を提供する。DFDでは、そのボケを典型的には合フォーカス画像と有効点広がり関数のコンボリューションとしてモデル化しており、次式から幾何学的算定が可能である。
【0037】
R={D/2}×{1/f−1/o−1/s} [式1]
上式において、Rはボケ半径、Dは収集アパーチャの直径、fはレンズの焦点距離、oは対象までの被写体距離、またsはセンサまでの画像距離である。
【0038】
理想的にはDFF/DFDの品質を維持するために、手の実際の箇所において柔軟性を提供するようにカバーされる深度を手の深度を超える深度とすることが可能である。すなわち、その2つの端部位置において予測される画像フルレンジを超えて(すなわち、レンジの遠位点と近位点を超えて)収集した画像、加えてレンジデータの曖昧さをすべて除去するのに役立てるように中心の近くで1画像を存在させるべきである。使用する画像の数を制限することは手に関する十分な3D形状情報を取得するのに要する処理が低減可能となり有用であるが、対象に関して可能な最高の分解能データを収集するためには、対象の深度全体を通じて(その各組が位相シフトさせた画像からなるような)明瞭な画像の全組を収集することが望ましい。DFF/DFDから良好な3Dデータを取得するためには、使用する画像の被写界深度を制御する。画像の集束品質から深度情報を実現するためにはそのシステムは、フィーチャのコントラストの低下の形で集束品質の変化を確認可能でなければならない。しかし最良データ品質のためには、関心対象フィーチャをより明瞭に解像させるべきである。幾つかの場合では、3D情報の取得のために表面テクスチャなどの小さいフィーチャあるいは投射されたパターンなどの追加のフィーチャが用いられることもあり得るが、記録しようとする関心対象フィーチャはより大きなフィーチャとすることがある。
【0039】
異なる焦点距離における複数の手形画像、位置合わせ情報及び3D形状情報(すなわち、レンジ)は、撮像デバイス14内の制御システム/プロセッサ38によって合成されて最良合成画像が作成される。図4の外観図に示したように、合成画像64を作成するために異なる焦点距離における複数の手形画像56、位置合わせ情報58及び手の3D形状60が制御システム/プロセッサ38(図2)上に保存された超解像アルゴリズム62内に入力される。手形画像内に存在する冗長な深度データ及び横方向画像シフト(すなわち、サブピクセルシフト)によって合成手形画像64の有効画像分解能の概ね2倍化(すなわち、「超解像」)が可能となる。すなわち、異なる焦点距離における複数の手形画像56、位置合わせ情報58及び3D形状情報60を超解像アルゴリズム62内に入力することにより超解像精細部を含んだ合成画像64が作成されるようにすることによって、カメラ32(図2及び3)により取り込まれる手形画像56の分解能を合成手形画像64において概ね2倍に増大させることが可能である。
【0040】
図4に示したように超解像アルゴリズム62は次式のように記載することが可能である。
【0041】
【数1】

[式2]
上式において、
【0042】
【数2】

は右側の項を最小にすることにより得られる理想の合成出力画像の推定値であり、Xは理想の合成出力画像であり、Yiは第i番目の収集画像であり、Aiは手と焦点距離の位置/位置合わせと画像iを収集した際のカメラボケとに対応する理想の合成出力画像の変換であり、またΨ(X)はある程度の平滑度を履行させるなどのための理想の合成出力画像に対する任意選択の追加の正則化制約(regularization constraint)である。
【0043】
例示的な一実施形態では、超解像処理アルゴリズムの適用、並びにシステムにより容易に提供されるオーバーサンプリング及び冗長なデータ取り込みの使用によって、画像取り込みデバイス14内でカメラ32により提供される分解能と比較して空間画像分解能を上昇させた合成画像が得られる。一実施形態ではその超解像処理アルゴリズムの実現によって提供される画像分解能は、カメラ32の固有分解能の概ね2倍までとすることが可能である。したがって例えば合成画像の画像分解能を、画像取り込みデバイス14のカメラ32により提供される500〜600PPIというより低い固有空間画像分解能に対して、1000画素毎インチ(PPI)とすることができる。50ミリメートル(2インチ)までの作用距離について、1000PPIにある全手部合成手形画像64が作成される。2.5ミリメートルステップではその手形画像組は、ある具体的なフィーチャについて1000PPIの有効分解能での撮像が予測可能であるような少なくとも2枚の画像を包含することになる。合成手形画像に関する1000PPIの分解能はレベルIII性能レベルでの生体認証にとって十分であり、したがって指紋及び掌紋のマイニューシャ精細部(500PPI、レベルII性能レベルの最小要件)並びに汗孔精細部(1000PPI、レベルIII性能レベルの最小要件)の画像取り込みを提供することができる。
【0044】
手形画像56、位置合わせ情報58及び3D形状情報60に対して超解像アルゴリズム62を適用した後では、得られる作成合成画像64がアンラップされ、3D手部画像形状の投影が指及び手のひらのローリング等価紋となるように変換される。カメラによって観察される前面投影(すなわち、手形画像)とDFD算定から取得した手部幾何学形状全体の詳細3Dモデルとを用いて、ローリング展開した2D画像が作成される。用いられるモデルは、接触法で取得した2次元投影上への手形表面の投影の逆に対応する画像歪みのシミュレーションとなる。図5に示したように一実施形態ではその歪みマップは、凸表面と凹表面を示した手のモデル並びに小指球66、拇指球68、手のひら上部70、手のひら下部72及び指紋74の面などの手の面を構成する凸状性に関する有意な局所的変動に基づくことがある。歪みマップから手形をアンラップするためには、一般化したアンラップ用アルゴリズムが用いられる。手の複数のしぐさ(すなわち、手を平たくしている場合や丸めている場合)については、複数の手形画像によりカバーされる大きな深度によってまたアンラップ用アルゴリズム内において対応している。アンラップ用アルゴリズム及び手の形状情報利用に関する主要な特徴は、アンラップ処理の間においてマイニューシャ同士の距離が保全されることである。
【0045】
アンラップ用アルゴリズムによる合成画像からの手形の単一の高分解能2次元ローリング等価画像の作成は、レガシーデータとの比較を向上させるために接触プリントをマッチングさせるような手形の幾何学的補正に対応させるようにして手のひらと指の形状を補正している。この手形の2次元ローリング等価画像は、接触方式の手形を保存した標準データベースと容易に比較することが可能である。
【0046】
したがって本発明の実施形態によって、ワンショット、1000PPI、非接触、移動式の手形(指紋及び掌紋)生体取り込みシステムが提供される。手形収集デバイス10によって、現場条件におけるローリング式のプリント収集が改善される。手形収集デバイス10は、LCD/複屈折ベースの焦点切替え法、depth from defocusの形状収集及び超解像画像処理法を用いた手全体の非接触式生体取り込みである。取り込んだ限られた数のフォーカス外れ画像から手の強調3Dマップを抽出するためにdepth from defocus(DFD)方式が用いられる。フルレンジにわたる堅牢性及び手部画像の多様性を提供するために本システムは、手の深度レンジをカバーするレンジにわたって少なくとも8枚の画像を取り込んでいる。画像の小さいシフト(すなわち、横方向のサブピクセルシフト)並びに冗長な撮像を用いることによって、同一面詳細部の空間分解能(超解像)の改善が提供される。指及び手のひらの湾曲した形状に関してプリントパターンを補正するために手の3D形状情報を用い、これにより生体情報の接触式のローリング式プリントに対する2D等価物を提供している。手形収集デバイス10は、個々の画像について支援を最小限にして手の非接触画像の取り込みが十分に高速であり、1/30秒未満の露出時間でかつ8〜16枚の画像に対する総取り込み時間が5秒未満であることが予測される。
【0047】
したがって、本発明の一実施形態による非接触式生体データ収集デバイスは、位置レンジのうちのいずれかでかつ異なる複数の焦点距離の各々において対象の手の手形画像全体を取り込むように構成された画像取り込みデバイスを含んでおり、この画像取り込みデバイスはさらに、第1の画像分解能レベルで手形画像を取り込むように構成された撮像カメラと、手と撮像カメラの間に位置決めされた電気光学配列であって、複数の異なる焦点距離の各々における手形画像の取り込みを提供するために光路長が異なる偏向状態に伴って変化する複数の光変調素子及び偏向感受型光学素子を含んだ電気光学配列と、を含む。本非接触式生体データ収集デバイスはさらに、画像取り込みデバイスに結合されて該画像取り込みデバイスに対して複数の異なる焦点距離の各々において、その各手形画像が冗長な手形画像データが取り込まれるように隣接する焦点距離における手形画像の焦点深度と重複した焦点深度を有するように手形画像を取り込ませるように構成された制御システムを含む。この制御システムはさらに、各手形画像を位置データと位置合わせし手形画像同士の間並びに手の各部分間に画素対応関係を生成すると共に、複数の異なる焦点距離の各々で取り込んだ位置合わせ済み手形画像から合成手形画像を作成するように構成されている。
【0048】
本発明の別の実施形態による対象の手の生体データを非接触方式で収集するための方法は、画像取り込みシステムによって複数の固定の焦点位置の各々において手の少なくとも一部分の画像を取り込むステップであって、各画像は掌紋と複数の指紋のうちの少なくとも一方を含みかつ各画像は第1の画像分解能レベルで取り込まれている。本方法はさらに、複数の固定の焦点位置で取り込んだ手形画像を位置合わせして手形画像同士の間に画素対応関係を生成するステップと、該複数の固定の焦点位置で取り込んだ画像を合成し合成画像を形成するステップと、を含んでおり、合成画像の該形成はさらに、冗長な深度データとそれぞれの手形画像間の横方向画像シフトを含む画像を画像処理アルゴリズムに入力するステップと、該画像処理アルゴリズムから第1の画像分解能レベルより上昇させた第2の空間分解能レベルを有する合成画像を作成するステップと、含む。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態による手形を撮像するための非接触式手形収集デバイスは、所望の撮像箇所への対象の手の位置決めを支援するためにフィードバックを対象に提供するように構成された位置決め支援デバイスと、複数の焦点深度の各々において手形から手の手形画像を取り込むように構成された画像取り込みデバイスと、を含んでおり、該画像取り込みデバイスはさらに、第1の空間分解能レベルで手形画像を取り込むように構成された撮像カメラと、手と撮像カメラの間に位置決めされており、複数の異なる焦点深度の各々における手形画像の取り込みを提供するために複数の光変調素子及び偏向感受型光学素子を含んだ電気光学配列と、を含む。本非接触式手形収集デバイスはさらに、画像取り込みデバイスに動作可能に接続されたプロセッサを含んでおり、該プロセッサは、冗長な深度データ及びそれぞれの手形画像間の横方向画像シフトを含んだ手形画像を複数の焦点深度の各々において取り込ませるように撮像デバイスを制御するようにプログラムされている。このプロセッサはさらに、複数の焦点深度で取り込んだ手形画像を位置合わせして手形画像を相関させること、depth from focusとdepth from defocusアルゴリズムのうちの一方を用いて手の3D形状を決定すること、該位置合わせ済み手形画像及び手の3D形状を処理して手形画像の第1の空間分解能レベルより高い第2の空間分解能レベルを有する合成手形画像を形成すること、並びに該合成画像から手形の2次元ローリング等価画像を作成すること、を行うようにプログラムされている。
【0050】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0051】
10 非接触式手形収集デバイス
12 外側ハウジング
14 画像取り込みデバイス
16 撮像用ウィンドウ/パネル
18 基部
20 可搬式電源
22 対象
24 手
26 利用者観察用モニタ
27 接近検知システム
28 オペレータ制御モニタ
30 光源
32 カメラ
34 電気光学系
36 電圧源
38 制御システム/プロセッサ
39 固定標的発生器
40 偏向感受型光学素子
42 光変調素子、LCP
44 ファスト軸
44 固定の焦点位置
46 光軸
48 有効焦点距離/面
52 レンズ
56 手形画像
58 位置合わせ情報
60 3D形状
62 超解像アルゴリズム
64 合成画像
66 小指球
68 拇指球
70 手のひら上部
72 手のひら下部
74 指紋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置レンジのうちのいずれかでかつ異なる複数の焦点距離の各々において対象の手の手形画像全体を取り込むように構成された画像取り込みデバイス(14)であって、
第1の画像分解能レベルで手形画像を取り込むように構成された撮像カメラ(32)と、
手と撮像カメラ(32)の間に位置決めされた電気光学配列(34)であって、複数の異なる焦点距離の各々における手形画像の取り込みを提供するために複数の光変調素子(42)と光路長が異なる偏向状態に伴って変化する偏向感受型光学素子(40)とを含んだ電気光学配列(34)と、
を備えた画像取り込みデバイス(14)と、
前記画像取り込みデバイス(14)に結合された制御システム(38)であって、
画像取り込みデバイス(14)に対して複数の異なる焦点距離の各々において手形画像を取り込ませるステップであって、各手形画像は冗長な手形画像データが取り込まれるように隣接する焦点距離における手形画像の焦点深度と重複した焦点深度を有する画像取り込みステップと、
手形画像同士の間並びに手の各部分間に画素対応関係を生成するように各手形画像を位置データと位置合わせするステップと、
複数の異なる焦点距離の各々で取り込んだ位置合わせ済み手形画像から合成手形画像を作成するステップと、
を行うように構成された制御システム(38)と、
を備える非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項2】
前記冗長な手形画像データは、深度データと偏向感受型光学素子(40)により導入される横方向画像シフトとを含んでおり、該横方向画像シフトは複数の異なる焦点距離において取り込まれるそれぞれの手形画像間のサブピクセルシフトを含む、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項3】
前記合成手形画像は第1の画像分解能レベルより高い第2の画像分解能レベルを有する、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項4】
前記制御システム(38)は、
冗長な手形画像データの深度データ及び横方向画像シフトが超解像アルゴリズムに提供されるように手形画像を超解像アルゴリズム内に入力するステップと、
合成画像の空間分解能が手形画像の第1の画像分解能レベルから第2の画像分解能レベルまで増大されるように超解像アルゴリズムから合成画像を作成するステップと、
を行うように構成されている、請求項3に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項5】
前記画像取り込みデバイス(14)はさらに、カメラ(32)を基準とした手のシフトについて手形画像を補正するために対象の手の上に投射される固定の基準標的点(39)を備えており、該固定の基準標的点(39)は各手形画像を位置合わせするための位置データを提供するために収集した任意の手形画像内部に既知の箇所を有する、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項6】
前記制御システム(38)は、depth from focusアルゴリズムとdepth from defocusアルゴリズムのうちの一方を用いて複数の異なる焦点距離の各々で取り込んだ手形画像から手の深度マップを作成するように構成されている、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項7】
各手形画像は焦点距離がその他の手形画像から設定された集束ステップだけ離れており、かつ該各手形画像の焦点深度は集束ステップのサイズと概ね等しい、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項8】
前記光変調素子(42)はファラデー回転器、光電結晶、ウェーブプレート及び液晶パネル(LCP)のうちの少なくとも1つを備え、かつ前記偏向感受型光学素子(40)は複屈折ウィンドウと複屈折レンズのうちの少なくとも一方を備える、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項9】
前記画像取り込みデバイス(14)はさらに、複数の光変調素子(42)に対してその向き状態を変化させ、これにより複数の異なる焦点距離の各々における手形画像の取り込みを提供するように手形から反射される光の直線状偏向を回転させかつ偏向感受型光学素子(40)の光路長を変動させるような電圧を印加するための電圧源(36)を備えており、かつ
前記制御システム(38)は、複数の異なる焦点距離の各々における手形画像の取り込みを提供するために複数の光変調素子(42)の各々に対する電圧の印加を制御するように構成されている、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。
【請求項10】
前記制御システム(38)は、手形の2次元ローリング等価画像を作成するために合成画像に対して、手形の凸表面と凹表面に対応するアンラップ用アルゴリズムを適用するように構成されている、請求項1に記載の非接触式生体データ収集デバイス(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212432(P2012−212432A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72648(P2012−72648)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】