説明

非接触形状計測装置及び非接触形状計測方法

【課題】非測定物の見かけの形状をできるだけ歪ませることなく形状計測できると共に、長い物や連続的に移動する物であっても形状計測できる非接触形状計測装置を提供する。
【解決手段】非接触形状計測装置は、長手方向であるx方向に沿ったライン状光源を有する照明装置であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に対して照射する照明装置と、前記x方向に沿った1ラインごとに、前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むラインセンサカメラと、得られた前記画像信号に基づいて、前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度を算出し、前記y方向に沿った前記照明装置の光強度パターンにおけるy方向の位置と光強度との関係に基づいて前記被測定物の各箇所の高さを算出する演算部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の形状を非接触で計測する非接触形状計測装置及び非接触形状計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相シフト法による3次元計測では、被測定物を固定(静止)した状態に保ち、その被測定物の全体にわたって、位相シフトさせながら縞状パターンを投影して、エリアセンサカメラで被測定物全体による格子画像を撮影していた。これによって、被測定物全体の各箇所の投影した縞状パターンと撮影した格子画像との間の位相差を算出し、3次元計測していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】研究成果報告書「応力・ひずみ・形状・変形の高速高精度全視野計測の研究」和歌山大学システム工学部 光メカトロニクス学科 光波画像計測研究室、教授 森本吉春 他、2005年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の3次元計測装置では、一方向から測定物の全体を観測した場合には被測定物は、遠近による歪みが現れるため台形形状の画像となるという問題がある。また、その遠近による歪みは形状測定の精度にも影響を生じるという問題がある。
【0005】
さらに、被測定物の全体を同時に観測するため、被測定物を静止させて観測する必要があった。このため、長い物や連続的に移動する物は測定できなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、被測定物の見かけの形状をできるだけ歪ませることなく形状計測できると共に、長い物や連続的に移動する物であっても形状計測できる非接触形状計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非接触形状計測装置は、長手方向であるx方向に沿ったライン状光源を有する照明装置であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に対して照射する照明装置と、
前記x方向に沿った1ラインごとに、前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むラインセンサカメラと、
得られた前記画像信号に基づいて、前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度を算出し、前記y方向に沿った前記照明装置の光強度パターンにおけるy方向の位置と光強度との関係に基づいて前記被測定物の各箇所の高さを算出する演算部と、
を備える。
【0008】
また、前記照明装置は、前記y方向に沿って一定の光強度の光強度パターンを有する基準光を被測定物に照射する基準光源をさらに備えてもよい。この場合には、前記演算部は、前記基準光源による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うことができる。
【0009】
さらに、前記照明装置は、
前記x方向に垂直であって前記y方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第1光源と、
前記第1の方向と前記y方向とを含む平面に平行であって、前記y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第2光源と、
を備えてもよい。この場合には、前記第1光源と前記第2光源とを切り替えて前記被測定物に光を照射する。
【0010】
またさらに、前記照明装置は、
前記第1の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第1基準光を被測定物に照射する第1基準光源と、
前記第2の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第2基準光を被測定物に照射する第2基準光源と、
をさらに備えてもよい。この場合、前記演算部は、
前記第1基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第1の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うことができると共に、
前記第2基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第2の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うことができる。
【0011】
また、前記照明装置は、
前記x方向に沿った複数のライン状光源と、
前記複数のライン状光源からの光を前記被測定物に照射する光学系と、
を備えてもよい。この場合、前記光学系によって、前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物上に照射する。
【0012】
さらに、前記光学系は、光透過率が前記y方向に沿って単調に変化する光学フィルタを含んでもよい。
【0013】
またさらに、前記照明装置及び前記ラインセンサカメラに対して前記被測定物を前記y方向に沿って相対移動させる搬送装置をさらに備えてもよい。
【0014】
また、前記照明装置は、前記y方向に沿って光強度が直線的に変化する光強度パターンを有する光を照射するものであってもよい。
【0015】
本発明に係る非接触形状計測方法は、長手方向であるx方向に沿ったライン状の光であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に対して照射するステップと、
前記一方向に垂直な方向に沿った1ラインごとに、前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むステップと、
得られた前記画像信号に基づいて、前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度を算出し、前記光強度に基づいて前記被測定物の各箇所の高低差を算出するステップと、
を含む。
【0016】
また、前記光を照射するステップは、被測定物に対して、長手方向であるx方向に沿ったライン状の光であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が一定の光強度パターンを有する基準光を照射するステップをさらに含むと共に、
前記基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うステップ、をさらに含んでもよい。
【0017】
さらに、前記光を照射するステップは、
前記x方向に垂直であって前記y方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第1ステップと、
前記第1の方向と前記y方向とを含む平面に平行であって、前記y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第2ステップと、
を含んでもよい。この場合、前記第1ステップと前記第2ステップとを切り替えて前記被測定物に光を照射する。
【0018】
またさらに、前記光を照射するステップは、
前記第1の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第1基準光を被測定物に照射するステップと、
前記第2の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第2基準光を被測定物に照射するステップと、
をさらに含んでもよい。この場合には、前記高低差を算出するステップは、
前記第1基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第1の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うと共に、
前記第2基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第2の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うことができる。
【0019】
また、前記光を照射するステップは、
前記x方向に沿ったライン状の光を発光させるステップと、
前記ライン状の光について、前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光に変換して、前記被測定物上に照射するステップと、
を含んでもよい。
【0020】
さらに、前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンは、光強度が前記y方向に沿って直線的に変化する光強度パターンであってもよい。
【0021】
またさらに、前記光を照射するステップが第1の方向から光を前記被測定物に照射する第1ステップと、第2の方向から光を前記被測定物に照射する第2ステップとを含む場合において、同期信号に合わせて前記第1ステップと前記第2ステップを切り替えて光を照射すると共に、
前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むステップは、前記同期信号に合わせて画像信号を取り込むこととしてもよい。
【0022】
また、前記被測定物の各箇所の高低差を算出するステップでは、前記第1ステップと前記第2ステップを切り替えて光を照射して、前記被測定物からの反射光を取り込んだ画像信号について、前記第1ステップ及び前記第2ステップごとに前記被測定物の各箇所の高低差を算出してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の非接触形状計測装置及び非接触形状計測方法によれば、被測定物を連続搬送状態で形状計測することが可能であり、シート状の実質的にエンドレスに延在する被測定物の検査も可能である。また、照明装置として、長手方向であるx方向に沿ったライン状光源を用いる。また、y方向に光強度が単調に変化する光強度パターンの光を照射して、被測定物の各箇所の反射光の光強度を得て、その光強度から、光強度と高さとの関係に基づいて被測定物の形状を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】(a)は、被測定物と、被測定物上に照明光が照射される範囲との関係を示す概略図であり、(b)は、照明光について、y方向に沿った明るさ(光強度)の変化を示す概略図である。
【図3】(a)は、被測定物に照射される直線的に変化する光強度パターンと、被測定物の高低差による反射光の光強度との関係を示す概略図であり、(b)は、照射光によって照射される平面上の位置P1、P3と、点P1での高さzとの関係を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る非接触形状計測方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。
【図6】(a)は、光源が一つの場合の点灯のタイミングチャートであり、(b)は、光源が2つの場合の光源切り替えを示す点灯のタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2に係る非接触形状計測方法における基準光源を用いた反射光の光強度の較正と、y方向の位置と高さとの関係を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る非接触形状計測方法のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態4に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る非接触形状計測装置について添付図面を用いて以下に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材は同一の符号を付している。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る非接触形状計測装置の構成を示す概略図である。この非接触形状計測装置は、被測定物3に、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を照射する照明装置1と、被測定物3からの光を画像信号として、長手方向であるx方向に沿った1ラインずつ取り込むラインセンサカメラ2と、被測定物3を移動させる搬送装置4と、各装置を制御すると共に、ラインセンサカメラ2で得られた画像信号から被測定物の各箇所の反射光の光強度を得て、その光強度に基づいて被測定物3の形状を算出するコンピュータ5とを備える。コンピュータ5は、ラインセンサカメラ2で取り込んだ画像信号を記憶するフレームメモリ6と、ラインセンサカメラ2を制御するカメラコントローラ7aと、照明装置1を制御する照明コントローラ7bとを備える。なお、カメラコントローラ7aと、照明コントローラ7bとを制御部7として一つとしてもよい。また、搬送装置4の回転ローラの回転に連動してパルス信号を発生するロータリーエンコーダ9と、ロータリーエンコーダ9からのパルス信号によってタイミング信号を発生させるタイミングコントローラ10とを備える。
【0027】
次に、この非接触形状計測装置の動作について説明する。
まず、搬送装置4の回転ローラが矢印の方向に回転すると、被測定物3は図1における左側から右側に向かって(y方向の負方向)に移動する。また、回転ローラに取り付けられたロータリーエンコーダ9は回転ローラと共に回転し、パルス信号を発生する。このパルス信号はタイミングコントローラ10を経てコンピュータ5に導かれる。また、上記パルス信号は、コンピュータ5の制御部7の中のカメラコントローラ7aを経由してラインセンサカメラ2にトリガ信号(図6(a))として供給される。ラインセンサカメラ2は、トリガ信号1回ごとに画像信号1ライン分をフレームメモリ6に取り込む。一方、同じトリガ信号によってコンピュータ5の制御部7の中の照明コントローラ7bを経由して点灯のタイミング信号を生成し、照明装置1を点灯する。また、照明装置1を構成する光源が複数存在する場合にはタイミング信号によって光源を切り替える。
なお、システム構成の都合でロータリーエンコーダ9の取り付けができない場合、ロータリーエンコーダ9のパルス信号に代えて、外部で発振回路等によって生成したタイミング信号を使用してもよい。
【0028】
<照明装置>
図2(a)は、被測定物3と、被測定物3上に照明光が照射される範囲との関係を示す概略図であり、(b)は、照明光について、y方向に沿って直線的に変化する明るさ(光強度)を示す概略図である。この照明装置1は、長手方向がx方向に沿ったライン状光源であって、被測定物3に照射する光強度(明るさ)は、x方向に沿ってほぼ均一な明るさであって、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を照射する。このy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンとしては、例えば、図2(b)のように、直線的に変化する光強度パターンであってもよい。なお、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンは、直線的に変化する場合に限られず、y方向の特定の位置からの距離に応じて光強度が曲線的に単調増加又は単調減少するものであってもよい。
【0029】
この照明装置1に用いるライン状光源としては、LED、レーザ、その他、ON/OFF制御の応答速度が速く明るいものであればよい。また、通常のライン状光源を用いて、コリメータレンズ系、投影パターンフィルムからなる光学系を用いて、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンの光を照射することができる。あるいは、液晶パネル、結像レンズ系等を組み合わせて照明装置1を構成してもよい。また、複数の光源、例えば、照明装置1として、255段階の連続的に異なる光強度を有する光源をy方向に並べて構成してもよい。この場合、階段状の光強度を有するよう構成してもよい。あるいは、均一なライン状光源にy方向に光強度をグラデーションさせる光フィルタを組み合わせて照明装置1を構成してもよい。
【0030】
また、この照明装置1は、後述する被測定物3の高さの測定原理から、被測定物3の垂直上方からではなく、斜め上方から被測定物3を照射する必要がある。例えば、照明装置1は、x方向に垂直であってy方向の正方向と鋭角の角度をなす方向から、図3に示すように、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に照射する。
【0031】
<ラインセンサカメラ>
この非接触形状計測装置では、ラインセンサカメラ2を用いて、上記ライン状光源の長手方向であるx方向と平行な方向に沿った1ラインごとの画像信号を取り込む。この場合、照明装置1と、画像信号を取り込む被測定物3の1ラインと、ラインセンサカメラ2との位置関係を固定して、上記ライン状の光源の長手方向と垂直な方向に被測定物3を移動させながら形状計測する。これによって、被測定物3の見かけの形状をできるだけ歪ませることなく形状計測できる。また、被測定物3が長い物や連続的に移動する物であっても形状計測できる。なお、図1では、ラインセンサカメラ2は、被測定物3の垂直上方に配置しているが、これに限られず、別角度で配置してもよい。例えば、ラインセンサカメラ2は照明装置1と鏡面反射に対応する位置に設けてもよい。
【0032】
この場合、上述したように照明装置1と、画像信号を取り込む被測定物3の1ラインと、ラインセンサカメラ2との位置関係を一定とする。被測定物3を上記ライン状の光源の長手方向と垂直な方向に被測定物3を移動させながら形状計測することによって、元の被測定物3の形状を歪ませることなく画像を得ることができる。例えば、矩形形状の被測定物3の場合、1回の撮像で全体の形状を観測した場合には、遠近法による歪みが現れるため台形形状の画像となるが、本発明の実施の形態に係る非接触形状計測装置の場合には歪みを生じることなく矩形状の画像が得られる。
【0033】
なお、エリアセンサカメラを用いてもよい。この場合には、被測定物3の全体の各箇所における高さを全体として求めることができる。
【0034】
<被測定物の高さを求める原理>
図3(a)は、被測定物3に照射される直線的に変化する光強度パターンと、被測定物3の高低差による反射光の光強度との関係を示す概略図である。この非接触形状計測装置では、図3の左上に示すように、y方向に沿って光強度が直線的に変化する光強度パターンを有する光を照射する。被測定物3が平坦な場合には、点P1に照射される光強度はL1であり、ラインセンサカメラ2において検出される反射光の光強度はR1となる。一方、例えば、図3(a)に示すように、被測定物3が平坦ではなく、点P1で高さzを有する場合には、光強度L2の光が頂点P2で反射され、ラインセンサ2で検出される。この場合の反射光の光強度は、R1ではなくR2となる。この光強度R2を検出することによって、光強度と高さとの関係から、点P2の高さzを算出できる。
【0035】
図3(b)は、照射光によって照射される平面上の位置P1、P3と、点P1での高さzとの関係を示す概略図である。照射光が面の垂直方向とのなす入射角αと、点P1と点P3との間のy方向の差分Δyとを用いると、高さzは、以下の式で表される。
z=Δy/tanα ・・・(1)
つまり、図3(a)及び(b)に示すように、反射光の光強度R2となるy方向の位置P3と点P1との差分Δyを導くことによって、上記式(1)に基づいて高さzが得られる。なお、入射角αは一定であるので、高さzはy方向の差分Δyに比例する。
【0036】
別の計算方法を下記に示す。図3(a)において、突起物が無い場合の点P1がカメラの真下の点となり、この点の光の強さはL1となる。突起物3bがあれば図3(a)の頂点P2がカメラの真下の点となり、この点の光の強さはL2となる。カメラ出力値は光の強さと反射率に比例し、光の強さは直線的に変化する為に高さはカメラ出力値に比例することは明らかである。従って、点P1点と点P2に照射されるそれぞれの光の強さL1とL2およびカメラ出力値R1,R2の関係は、以下の式で表現される。
R1=k11×L1 (k11:点P1の反射率を含めた変換係数)・・・(2)
R2=k12×L2 (k12:点P2の反射率を含めた変換係数)・・・(3)
さらに点P1と点P2におけるカメラ出力値R1、R2と高さZ1、Z2は
Z1=k2×R1 (k2:カメラ出力値から高さへの変換係数)・・・(4)
Z2=k2×R2 ・・・(5)
高さzは点P1と点P2の差分であらわされる。
z=Z2−Z1=k2×(k12×L2−k11×L1) ・・・(6)
点P1、点P2の反射率を含めた変換係数は同じとしてk11=k12=k1とすると
z=k2×k1×(L2−L1) ・・・(7)
として高さzが求められる。
ここで、図3(a)より、(1)式のΔyと(7)式の(L2−L1)は比例することがわかる。また(1)式の1/tanαと(7)式のk2×k1もどちらも定数であることから比例することは明らかである。よって(1)式と(7)式は表現方法は違うが、等価な式であることがわかる。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態1に係る非接触形状計測方法のフローチャートである。
(a)光源1から、x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に対して照射する(S01)。
(b)ラインセンサカメラ2において、x方向に沿った1ラインごとに、被測定物3からの反射光を画像信号として取り込む(S02)。
(c)制御部7において、被測定物3の各箇所における光強度を算出し、y方向に沿った照明装置1の光強度パターンにおけるy方向の位置と光強度との関係に基づいて被測定物3の各箇所の高さを算出する(S03)。
以上によって、被測定物3の各箇所の高さを算出することができる。
【0038】
(効果)
本発明の実施の形態1に係る非接触形状計測装置によれば、被測定物を連続搬送状態で形状計測することが可能である。例えば、シート状の実質的にエンドレスに延在する被測定物についても検査可能である。また、照明装置としてライン状光源を用いるので、必要な照明範囲を狭くできるため、照明むらを抑えることができる。さらに、y方向に光強度が単調に変化する光強度パターンの光を被測定物に照射することによって、光強度と高さの関係に基づいてリアルタイムに形状計測を行うことができる。
【0039】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。この非接触形状計測装置では、実施の形態1に係る非接触形状計測装置と比較すると、照明装置として2つの光源11、12を備える点で相違する。第1光源11は、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に照射する。第2光源12は、基準光源であって、y方向に沿って一定の光強度の光強度パターンを有する基準光を被測定物3に照射する。図6(b)のタイミングチャートに示すように、第1光源11と第2光源12とを切り替えて被測定物3に光を照射する。ここで基準光源12の位置関係については、光源11側にあってもよい。
【0040】
この非接触形状計測装置では、第2光源(基準光源)12による被測定物3の各箇所からの反射光の光強度によって、被測定物3の各箇所からの反射光の較正を行うことができる。すなわち、被測定物3の表面状態は一様ではなく、例えば、明るい部分では反射光が強くなり、暗い部分では反射光が弱くなる。そこで、上記のように基準光源12を用いて、一定の光強度の光強度パターンを有する基準光による反射光の光強度によって、被測定物3の各箇所からの反射光の較正を行って、被測定物3の表面状態の相違による反射光の強度変化への影響を排除できる。
【0041】
図7は、実施の形態2における基準光源12を用いた反射光の光強度の較正と、y方向の位置と高さとの関係を示す概略図である。この場合、第1光源11から照射する光強度パターンの最大の光強度Lmaxの基準光を照射する。これに対して、通常より明るい部分では、図7で明るさR’maxの点線で示した反射光のパターンが得られる。つまり、明るい部分からの反射光は、0〜最大R’maxの範囲で変化する。一方、通常より暗い部分では、明るさR’’maxの点線で示した反射光のパターンが得られる。つまり、暗い部分からの反射光は、0〜最大R’’maxの範囲で変化する。そこで、同じ点P1が高さzを有する場合に得られる反射光も、通常部分ではR2であるが、明るい部分ではR’2となり、暗い部分ではR’’2となる。反射光の較正では、各部分での反射光が、どのような光強度の範囲で変化するかを特定し、反射光の光強度とy方向の位置と高さとの関係を明らかにすることができる。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態2に係る非接触形状計測方法のフローチャートである。
(a)第2光源(基準光源)12から、y方向に沿って一定の光強度パターンを有する基準光を被測定物3に照射する(S10)。この場合、基準光源12からは、第1光源11から照射する光強度パターンの最大の光強度Lmaxの基準光を照射する。
(b)ラインセンサカメラ2において、x方向に沿った1ラインごとに、被測定物3からの光を画像信号として取り込む(S11)。
(c)制御部7において、基準光による被測定物3の各箇所の光強度を算出し、被測定物3からの反射光の光強度を較正する(S12)。この場合、上述のように、明るい部分からの反射光は、0〜最大R’maxの範囲で変化するものであると較正される。一方、暗い部分からの反射光は、0〜最大R’’maxの範囲で変化するものであると較正される。
(d)第1光源11から、x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に対して照射する(S13)。
(e)ラインセンサカメラ2において、x方向に沿った1ラインごとに、被測定物3からの反射光を画像信号として取り込む(S14)。
(f)制御部7において、被測定物3の各箇所における光強度を算出し、y方向に沿った第1光源11の光強度パターンにおけるy方向の位置と反射光の較正された光強度との関係に基づいて被測定物3の各箇所の高さを算出する(S15)。具体的には、明るい部分からの反射光R’2、通常部分からの反射光R2,暗い部分からの反射光R’’2のそれぞれについて、図7によってy方向の差分Δyを導いて、上記式(1)に基づいて点P1での高さzを得る。
以上によって、第2光源(基準光源)12を用いることによって、被測定物3の各箇所からの反射光の較正を行って、被測定物3の表面状態の相違による反射光の強度変化への影響を排除できる。
【0043】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る非接触形状計測装置では、実施の形態2と同様に2つの光源11、12を有するが、第2光源12として基準光源ではなく、第1光源11と同様の光強度パターンを有する光を照射する点で相違する。つまり、第1光源11は、x方向に垂直であってy方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に照射する。第2光源12は、第1の方向とy方向とを含む平面に平行であって、y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に照射する。
【0044】
上記のように、この非接触形状計測装置では、第1方向から光を照射する第1光源11と、第1方向と相対する第2方向から光を照射する第2光源12とを有し、第1光源11と、第2光源12とを切り替えて光を照射する。これによって、一方向からの光の投影だけでは影となって反射光が検出できない部分についても反対方向からの光によって反射光を得ることができ、高さを検出できる。
【0045】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。この非接触形状計測装置では、照明装置として4つの光源11、12、13、14を用いていることを特徴とする。第1光源11は、x方向に垂直であってy方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物3に照射する。第2光源12は、第1の方向とy方向とを含む平面に平行であって、y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に照射する。第3光源13は、第1基準光源であって、第1の方向から、y方向に沿って一定の光強度の光強度パターンを有する第1基準光を被測定物3に照射する。第4光源14は、第2基準光源であって、第2の方向から、y方向に沿って一定の光強度の光強度パターンを有する第2基準光を被測定物3に照射する。
【0046】
上記のように、この非接触形状計測装置では、第1方向から光を照射する第1光源11と、第1方向と相対する第2方向から光を照射する第2光源12とを有し、第1光源11と、第2光源12とを切り替えて光を照射する。これによって、一方向からの光だけでは影となって反射光が検出できない部分についても反対方向からの光によって反射光を得ることができ、高さを検出できる。
【0047】
この非接触形状計測装置では、さらに、第1方向から第1基準光を照射する第3光源(第1基準光源)13及び第2方向から第2基準光を照射する第4光源(第2基準光源)14を備える。この第1基準光源13及び第2基準光源14による被測定物3の各箇所からの反射光の光強度によって、被測定物3の各箇所からの反射光の較正を行うことができる。これによって、被測定物3の表面状態の相違による反射光の強度変化への影響を排除できる。
【0048】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5に係る非接触形状計測装置の構成の一例を示す概略図である。この非接触形状計測装置では、実施の形態1から4と対比すると、ラインセンサカメラ2は、被測定物3の垂直上方ではなく、図9に示すように、照明装置1に対して鏡面反射を受ける位置に設けられていることを特徴とする。これによって、被測定物3の表面状態が鏡面反射するものである場合に反射光を有効に検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の非接触形状計測装置は、被測定物を連続搬送している状態での形状計測に利用できる。また、シート状の実質的にエンドレスに延在する被測定物の検査に用いることもできる。たとえば、フィルムの表面状態を計測したり、電子基板上に半田印刷されたクリーム半田の高さを計測することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 照明装置
2 ラインセンサカメラ
3 被測定物
3a、3b、3c 突起物
3d 照明範囲
4 搬送装置
5 コンピュータ
6 フレームメモリ
7 制御部
7a カメラコントローラ
7b 照明コントローラ
8 光源切り替えスイッチ
9 ロータリーエンコーダ
10 タイミングコントローラ
11 第1光源
12 第2光源
13 第3光源
14 第4光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向であるx方向に沿ったライン状光源を有する照明装置であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を被測定物に対して照射する照明装置と、
前記x方向に沿った1ラインごとに、前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むラインセンサカメラと、
得られた前記画像信号に基づいて、前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度を算出し、前記y方向に沿った前記照明装置の光強度パターンにおけるy方向の位置と光強度との関係に基づいて前記被測定物の各箇所の高さを算出する演算部と、
を備えた非接触形状計測装置。
【請求項2】
前記照明装置は、前記y方向に沿って一定の光強度の光強度パターンを有する基準光を被測定物に照射する基準光源をさらに備え、
前記演算部は、前記基準光源による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行う、請求項1に記載の非接触形状計測装置。
【請求項3】
前記照明装置は、
前記x方向に垂直であって前記y方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第1光源と、
前記第1の方向と前記y方向とを含む平面に平行であって、前記y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第2光源と、
を備え、前記第1光源と前記第2光源とを切り替えて前記被測定物に光を照射する、請求項1に記載の非接触形状計測装置。
【請求項4】
前記照明装置は、
前記第1の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第1基準光を被測定物に照射する第1基準光源と、
前記第2の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第2基準光を被測定物に照射する第2基準光源と、
をさらに備え、
前記演算部は、
前記第1基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第1の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うと共に、
前記第2基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第2の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行う、
請求項3に記載の非接触形状計測装置。
【請求項5】
前記照明装置は、
前記x方向に沿った複数のライン状光源と、
前記複数のライン状光源からの光を前記被測定物に照射する光学系と、
を備え、
前記光学系によって、前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物上に照射する、請求項1に記載の非接触形状計測装置。
【請求項6】
前記光学系は、光透過率が前記y方向に沿って単調に変化する光学フィルタを含む、請求項2に記載の非接触形状計測装置。
【請求項7】
前記照明装置及び前記ラインセンサカメラに対して前記被測定物を前記y方向に沿って相対移動させる搬送装置をさらに備える、請求項1に記載の非接触形状計測装置。
【請求項8】
前記照明装置は、前記y方向に沿って光強度が直線的に変化する光強度パターンを有する光を照射する、請求項1に記載の非接触形状計測装置。
【請求項9】
被測定物に対して、長手方向であるx方向に沿ったライン状の光であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を照射するステップと、
前記一方向に垂直な方向に沿った1ラインごとに、前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むステップと、
得られた前記画像信号に基づいて、前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度を算出し、前記光強度に基づいて前記被測定物の各箇所の高低差を算出するステップと、
を含む、非接触形状計測方法。
【請求項10】
前記光を照射するステップは、被測定物に対して、長手方向であるx方向に沿ったライン状の光であって、前記x方向に垂直なy方向に沿って光強度が一定の光強度パターンを有する基準光を照射するステップをさらに含むと共に、
前記基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うステップ、をさらに含む、請求項9に記載の非接触形状計測方法。
【請求項11】
前記光を照射するステップは、
前記x方向に垂直であって前記y方向の正方向と鋭角の角度をなす第1の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第1ステップと、
前記第1の方向と前記y方向とを含む平面に平行であって、前記y方向の負方向に対して鋭角の角度をなす第2の方向から、y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光を前記被測定物に照射する第2ステップと、
を備え、前記第1ステップと前記第2ステップとを切り替えて前記被測定物に光を照射する、請求項9に記載の非接触形状計測方法。
【請求項12】
前記光を照射するステップは、
前記第1の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第1基準光を被測定物に照射するステップと、
前記第2の方向から、前記y方向に沿って一定の光強度を有する第2基準光を被測定物に照射するステップと、
をさらに備え、
前記高低差を算出するステップは、
前記第1基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第1の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行うと共に、
前記第2基準光による前記被測定物の各箇所からの反射光の光強度によって、前記第2の方向について、前記被測定物の各箇所からの反射光の較正を行う、
請求項11に記載の非接触形状計測方法。
【請求項13】
前記光を照射するステップは、
前記x方向に沿ったライン状の光を発光させるステップと、
前記ライン状の光について、前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンを有する光に変換して、前記被測定物上に照射するステップと、
を含む、請求項9に記載の非接触形状計測方法。
【請求項14】
前記y方向に沿って光強度が単調に変化する光強度パターンは、光強度が前記y方向に沿って直線的に変化する光強度パターンである、請求項9に記載の非接触形状計測方法。
【請求項15】
前記光を照射するステップが第1の方向から光を前記被測定物に照射する第1ステップと、第2の方向から光を前記被測定物に照射する第2ステップとを含む場合において、同期信号に合わせて前記第1ステップと前記第2ステップを切り替えて光を照射すると共に、
前記被測定物からの反射光を画像信号として取り込むステップは、前記同期信号に合わせて画像信号を取り込む、請求項11に記載の非接触形状計測方法。
【請求項16】
前記被測定物の各箇所の高低差を算出するステップでは、前記第1ステップと前記第2ステップを切り替えて光を照射して、前記被測定物からの反射光を取り込んだ画像信号について、前記第1ステップ及び前記第2ステップごとに前記被測定物の各箇所の高低差を算出する、請求項15に記載の非接触形状計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−276582(P2010−276582A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132218(P2009−132218)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(509016232)株式会社ジェムコ (2)
【Fターム(参考)】