非接触搬送装置
【課題】一の搬送方向と該一の搬送方向と直交する搬送方向とのコーナー部においても、円滑に90度方向転換させることが可能な非接触搬送装置を提供する。
【解決手段】一の搬送方向(X方向)に沿って配された非接触搬送装置3と、一の搬送方向に対して直交する搬送方向(Y方向)に配された非接触搬送装置4とのコーナー部に配される非接触搬送装置2であって、平面視直角三角形を呈すると共に、平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a、2a’が直角三角形の一方の辺2cを一の搬送方向に向けると共に、他方の辺2dを搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体8と複数個の吸引孔5nが設けられている非接触搬送装置1。
【解決手段】一の搬送方向(X方向)に沿って配された非接触搬送装置3と、一の搬送方向に対して直交する搬送方向(Y方向)に配された非接触搬送装置4とのコーナー部に配される非接触搬送装置2であって、平面視直角三角形を呈すると共に、平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a、2a’が直角三角形の一方の辺2cを一の搬送方向に向けると共に、他方の辺2dを搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体8と複数個の吸引孔5nが設けられている非接触搬送装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型の液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)や太陽電池パネル(ソーラーパネル)等の生産に用いられる非接触搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPDや太陽電池パネル等の生産に際し、1枚のパネルを大型化することで生産効率を上げる方法が採用されている。例えば、液晶パネルの場合には、第10世代で2850×3050×0.7mmの大きさとなる。そのため、従来のように、複数個並べられたローラの上に液晶ガラスを載せて転がり搬送すると、ローラを支持するシャフトの撓みやローラ高さの寸法のばらつきにより液晶ガラスに局部的に強い力が働き、当該液晶ガラスを傷つける虞がある。
【0003】
上記ローラによる転がり搬送装置は、該装置とパネルとが非接触であることが要求される、例えばFPDのプロセス工程では採用することができず、近年においては、空気浮上の搬送装置が採用され始めている。非接触搬送装置として、板状の搬送用レールの一部に多孔質材料(多孔質焼結金属等)を用い、空気供給経路と連通させて給気することで、噴出空気によりFPDを浮上搬送させる装置が存在する。しかし、この非接触搬送装置を用いると、FPDが上下方向に動きながら浮遊するような状態となるため、搬送工程に用いることは可能であるが、例えば30〜50μmの高精度の浮上高さが要求されるプロセス工程には到底採用することはできない。
【0004】
上記多孔質材料を用いた板状の搬送用レールに浮上量を高精度に維持する目的で真空引き用の孔を設けると、装置の構成が複雑になると共に、装置自体が高額になり、また、浮上高さを高精度に維持するために給気圧を高くすると、高剛性空気の圧縮性に係る自励振動が発生し、浮上高さを高精度に保つことができないという問題があった。
【0005】
多孔質材料の代わりにオリフィス(小径の孔)を真空引き用の孔と交互に穿設した装置も存在するが、オリフィスからの強い噴出空気で静電気を発生したり、クリーンルームの環境を乱したり、消費電流が大きくなって運転コストが高騰するという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、流体流量及びエネルギ消費量が少なく、浮上高さを高精度に維持できる非接触搬送装置として、流体噴出口から流体を噴出させることにより、リング状部材の表面側に該表面側から離れる方向へ向かう旋回流を生じさせると共に、リング状部材の表面側の開口部近傍に裏面方向への流体流れを生じさせる旋回流形成体を、搬送用レールの搬送面に2個以上備える非接触搬送装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/119377号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の非接触搬送装置は、図24乃至図27に示すように、搬送用レール50の搬送面50aに、平面視右回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体51aと平面視左回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体52a(図24乃至図26において、平面視左回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体52aを黒塗りで示す)とが該搬送面50aに長手方向に沿って交互に固定され、ポンプ(図示せず)から搬送用レール50の空気通路50bに供給された空気は、貫通孔50cを介して旋回流形成体51aの円板状基板51cの裏面51dに形成された環状溝51eに供給され、空気通路51fを介して噴出口51gから噴出する。これにより、旋回流形成体51aは、円板状基板51cの表面側の上方に上昇旋回流を発生し、この旋回流にて被搬送物であるガラスGを浮上させる。
【0009】
この非接触搬送装置では、搬送用レール50の搬送面50aに形成した凹部に旋回流形成体51aを収容し、この旋回流形成体51aの外周面を凹部の周囲に突設した盛上部によってかしめ接合するため、搬送用レール50への旋回流形成体51aの装着に長時間を要して非接触搬送装置の製造コストの上昇に繋がるとともに、旋回流形成体51aを搬送用レール50にかしめ接合する際に、旋回流形成体51aの取付角度にばらつきを生じたり、旋回流形成体51aや搬送用レール50に反りが発生したりして被搬送物の浮上高さの精度が低下する虞があるという問題があった。
【0010】
また、上記非接触搬送装置を使用した、例えばFPDガラスの空気浮上による搬送において、搬送工程中に搬送方向を90度方向転換させる部位では、図25に示す搬送用レール50を図24に示す搬送方向と直角に配列すると、コーナー部においては搬送用レール50を敷き詰めない限り当該搬送用レール50間に隙間が発生し、ガラスGが薄くなると撓みが大きくなり、搬送用レール50間の隙間が小さくても乗り移れない現象が起こる(図26参照)。
【0011】
上記現象を回避するべく、例えば空気の噴出量を多くし、浮上量を高めて乗り移らせる方法や、ガラスが載置されているステージ(搬送装置)をリフトアップして回転させ、乗り移らす方法などが採られているが、空気の噴出量を多くする方法では、空気の消費量が大きくランニングコストに負担がかかり、またリフトアップする方法では、リフトや回転機構に設備費用を要し、タクトタイム(工程作業時間)を短縮できないなどの問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、一の搬送方向と該一の搬送方向と直交する搬送方向とのコーナー部においても、上記手段を採ることなく円滑に90度方向転換させることが可能な非接触搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明にかかる非接触搬送装置は、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を前記一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、該搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体と、複数個の吸引孔とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の非接触搬送装置によれば、被搬送物(FPDガラス)を該被搬送物の一の搬送方向に対して、平面視直角三角形の斜辺を相対向させ、直角三角形の直角を挟む一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配された一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物に撓みが生じても、被搬送物の先端側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に進入することはないので、リフトや回転機構を使用することなく、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる。
【0015】
上記非接触搬送装置の前記一対の搬送用基板において、前記平面視直角三角形の斜辺間に該斜辺に沿う幅方向に隙間を設けることができる。
【0016】
また、上記非接触搬送装置において、前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の各収容孔部に連通する連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する連通孔と、該連通孔に隣接し、一方の端部が前記上板の吸引孔に連通し、他方の端部が下面に開口する貫通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に結合された空気供給口と、上面に開口すると共に、前記中板の貫通孔に連通する空気吸引経路と該空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されている。
【0017】
上記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の収容孔部に連通する1つの連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する1つの連通孔と、一方の端部が前記上板の吸引孔に開口し、他方の端部が下面に開口する空気吸引経路に開口する連通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に開口する空気供給口と、前記中板の空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されているものであってもよい。
【0018】
前記搬送用基板の上板の収容孔部に装着される上昇流形成体は、内面に円筒内壁面を有する有底の円筒状基体部と、該円筒状基体部の開口部の周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部と、該環状鍔部の外周縁の円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個の係合垂下部と、該係合垂下部の下端に外方に突出する係合突起部と、前記円筒状基体部の外周面から円筒内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かう少なくとも1つの流体噴出孔とを備えている。
【0019】
また、上昇流形成体は、前記流体噴出孔を1つ備え、該流体噴出孔から噴出した流体は、該円筒状基体部の円筒内壁面に衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成するものであるか、あるいは円筒状基体部の外周面から円筒状内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かって相対向するように2つ設けられた流体噴出孔を備え、該2つの流体噴出孔から噴出した流体は、該流体同士が衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成するものであってもよい。
【0020】
上昇流形成体により生じる噴出流体は、噴霧状に分散して上昇流を形成するので、被搬送物にストレスを与えることがなく、負圧の発生がないので被搬送物の浮上量を大きくすることができる。
【0021】
上記上昇流形成体は、熱可塑性合成樹脂を射出成形することによって形成されるのが好ましく、熱可塑性合成樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)が挙げられる。上昇流形成体は、環状鍔部の外周面を前記搬送用基板の上板に形成された前記収容孔部の前記円筒壁面部に圧入嵌合させ、前記係合垂下部の前記係合突起部を前記収容孔部の前記環状肩部に係合させて該収容孔部に装着される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被搬送物(FPDガラス等)を該被搬送物の一の搬送方向に対して、平面視直角三角形の斜辺を相対向させ、直角三角形の直角を挟む一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配された一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物に撓みが生じても、被搬送物の先端側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に進入することはないので、リフトや回転機構を使用することなく、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる非接触搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る非接触搬送装置の一実施の形態を示す図であって、搬送工程における非接触搬送装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のコーナー部における非接触搬送装置の一部拡大平面図である。
【図3】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(上板)の上昇流形成体を装着していない状態の拡大平面図である。
【図4】図3の搬送用基板(上板)の背面図である。
【図5】図3のA−A線矢視断面図である。
【図6】図3のB−B線矢視断面図である。
【図7】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(中板)の平面図である。
【図8】図7の搬送用基板(中板)の背面図である。
【図9】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(下板)の平面図である。
【図10】図9の搬送用基板(下板)の背面図である。
【図11】本発明の非接触搬送装置に使用される上昇流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(b)のC−C線矢視断面図である。
【図12】図2のD−D線矢視断面図である。
【図13】上昇流形成体を介して空気が噴霧状に上方に分散して上昇流を形成する説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線矢視断面図である。
【図14】コーナー部における非接触搬送装置でのガラスの浮上搬送を示す断面図である。
【図15】本発明の非接触搬送装置に使用される他の態様の上昇流形成体であって、(a)は底面図、(b)は(a)のF−F線矢視断面図である。
【図16】図15に示す上昇流形成体を介して空気が噴霧状に上方に分散して上昇流を形成する説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G線矢視断面図である。
【図17】コーナー部における非接触搬送装置の他の実施の形態の断面図である。
【図18】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置を示す平面図である。
【図19】図18に示す非接触搬送装置における搬送用レールを示す図であって、(a)は旋回流形成体を装着していない状態の平面図、(b)は(a)のH−H線矢視断面図である。
【図20】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置における搬送用レールの他の実施の形態を示す図であって、(a)は旋回流形成体を装着していない状態の平面図、(b)は(a)のI−I線矢視断面図である。
【図21】平面視右回り方向(時計回り方向)の旋回流を発生させる旋回流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(b)のJ−J線矢視断面図、(e)は(c)のK部の拡大断面図、(f)は(d)のL部の拡大断面図である。
【図22】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置による被搬送物の浮上搬送を示す断面図である。
【図23】平面視左回り方向(反時計回り方向)の旋回流を発生させる旋回流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(c)のM−M線矢視断面図、(e)は(c)のN部の拡大断面図、(f)は(d)のP部の拡大断面図である。
【図24】従来の搬送工程における非接触搬送装置の全体構成を示す平面図である。
【図25】非接触搬送装置の搬送用レールを示す平面図である。
【図26】コーナー部に位置する非接触搬送装置における被搬送物の浮上搬送を示す図で、(a)は平面図、(b)は断面側面図である。
【図27】従来の非接触搬送装置でのガラスの浮上搬送を示す図で、(a)は断面正面図、(b)は、(a)のQ−Q線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、搬送用流体として空気を用い、被搬送物として液晶ガラスG(以下、ガラスGと略称する。)を搬送する場合を例にとって説明する。
【0025】
非接触搬送装置1は、図1に示すように、ガラスGを非接触で搬送するために使用され、一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3と、該一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに配された非接触搬送装置4と、該非接触搬送装置3と非接触搬送装置4とのコーナー部に配される非接触搬送装置2とから構成される。
【0026】
非接触搬送装置2は、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a及び2a’が該直角三角形の直角を挟む一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該搬送方向に直交する搬送方向Yに向けて配されている。
【0027】
搬送用基板2a及び2a’は、図3乃至図10及び図12に示すように、上板5、中板6及び下板7からなる3層構造を有する。
【0028】
上板5は、図3乃至図6に示すように、斜辺5bと直角を挟む2つの辺5c及び5dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、搬送面となる上面5aに穿設され、該上面5aに開口する平面視円形の開口部5eを有する円筒壁面部5fと、該円筒壁面部5fと環状肩部5gを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部5hと、該拡径円筒壁面部5hと連通し、円筒壁面部5fと同径に形成された環状凹部5iと、一方の端部が該環状凹部5iに開口し、他方の端部が下面5jに開口する空気噴出孔5kとを備えた収容孔部5lと、一方の端部に狭窄孔5mを有すると共に、該狭窄孔5mの一方の端部を上面5aに開口させ、該狭窄孔5mの他方の端部を該狭窄孔5mと連通させて該上板5の下面5jに開口する空気吸引孔5nを複数個備えている。
【0029】
中板6は、図7及び図8に示すように、斜辺6bと直角を挟む2つの辺6c及び6dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、上面6aに前記上板5に形成された複数個の収容孔部5lの空気噴出孔5kに連通するように形成され、開口部を上方に向けた断面半円状の空気供給凹溝6eと、一方の端部が該空気供給凹溝6eに開口し、他方の端部が中板6の下面6fに開口して形成された複数個の空気供給孔6gと、前記上板5に形成された複数個の空気吸引孔5nに連通すると共に、中板6の上面6aから下面6hに向けて貫通する貫通孔6iを備えている。
【0030】
下板7は、図9及び図10に示すように、斜辺7bと直角を挟む2つの辺7c及び7dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、一方の端部が下板7の上面7aに開口し、他方の端部が下板7の下面7eに開口すると共に、前記中板6に形成された複数個の空気供給孔6gに連通する空気供給口7fと、上面7aに前記中板6に形成された複数個の貫通孔6iに連通するように形成され、開口部を上方に向けた断面半円状の空気吸引凹溝7gと、一方の端部が該空気吸引凹溝7gに開口し、他方の端部が該下板7の下面7eに開口する真空吸引口7hを備えている。
【0031】
そして、図12に示すように、上板5に形成された収容孔部5lの空気噴出孔5kを中板6の上面6aに形成された空気供給凹溝6eに連通させ、空気吸引孔5nを中板6に形成された貫通孔6iに連通させて、上板5を中板6の上面6aに位置せしめ、中板6の下面6hに開口する空気供給孔6gに下板7に形成された空気供給口7fに結合させると共に、中板6の下面6hに開口する貫通孔6iを下板7の上面7aに形成された空気吸引凹溝7gに真空吸引口7hを結合させて、中板6を下板7の上面7aに位置させることにより、平面視直角三角形を呈する搬送用基板2aが形成される。該搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7をボルト等の固定手段により締結固定されて形成される。なお、搬送用基板2a’は、搬送用基板2aと同様の構成からなると共に、該搬送用基板2aを180°回転させることにより形成されるもので、説明は省略する。
【0032】
上記搬送用基板2aにおいて、下板7に形成された空気供給口7f及び真空吸引口7hは、各々ねじ孔を備え、空気供給口7fのねじ孔には、例えばコンプレッサーに接続されたホースの先端のニップルが螺合固定され、真空吸引口7hのねじ孔には、例えば真空ポンプに接続されたホースの先端のニップルが螺合固定される。
【0033】
上記搬送用基板2aの上板5に形成された収容孔部5lには、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の熱可塑性合成樹脂から形成された上昇流形成体8が装着される。
【0034】
上昇流形成体8は、図11(a)乃至(d)に示すように、上面に開口する平面視円形の開口部8aを有すると共に、該開口部8aに連通する円筒内壁面8bを有する有底の円筒状基体部8cと、該円筒状基体部8cの開口部8aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部8dと、該環状鍔部8dの外周面8eに該外周面8eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態においては4個)の係合垂下部8fと、該係合垂下部8fの下端に外方に突出する係合突起部8gと、該円筒状基体部8cの外周面8hから円筒内壁面8bに開口すると共に、先端部8iが該円筒状基体部8cの中心Oに向かう少なくとも1つ(本実施の形態では1つ)の空気噴出孔8jを備えている。
【0035】
該上昇流形成体8は、図12に示すように、環状鍔部8dの外周面8eを該収容孔部5lの円筒壁面部5fに圧入嵌合させ、係合垂下部8fの係合突起部8gを該収容孔部5lの環状肩部5gに係合させると共に、該環状鍔部8dの上面8kを該搬送用基板2aの上板5の上面5aと面一にして該収容孔部5lに装着される。
【0036】
上記構成により、搬送用基板2aの空気供給口7fから供給された空気は、空気供給口7fに連通する中板6の空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに供給される。空気供給凹溝6eに供給された空気は、上板5に形成された空気噴出孔5kから収容孔部5lに供給され、該収容孔部5lに装着された上昇流形成体8において、図13及び図14に示すように、円筒状基体部8cの外周面8hから円筒内壁面8bに開口すると共に、先端部8iが円筒状基体部8cの中心Oに向かう空気噴出孔8jから噴出して円筒状基体部8cの円筒内壁面8bに衝突し、該円筒内壁面8bの開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流となり、該上昇流によりガラスGを浮上させると同時に、搬送用基板2aの上板5の上面5aに開口する空気吸引孔5nの狭窄孔5mにおいて吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔5nの狭窄孔5mの吸引力のバランスにより、コーナー部において当該ガラスGは、撓みを生じることなく高精度な平面度を形成して非接触で搬送される。
【0037】
上昇流形成体8においては、負圧を発生しないので浮上量を大きくすることができ、また空気噴出孔8jから噴出した空気は、円筒状基体部8cの円筒内壁面8bに衝突することにより、空気の噴出速度が低下せしめられると共に、噴霧状に分散する上昇流となるので、ガラスGにストレスを与えることを極力抑えることができる。
【0038】
また、コーナー部における非接触搬送装置2においては、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a、2a’が該直角三角形の一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該搬送方向に直交する搬送方向Yに向けて配されているので、搬送時におけるガラスGの撓みに起因する当該ガラスGの搬送先端部が搬送用基板2a、2a’間の隙間に進入する不具合を生じることなく、ガラスGの搬送を極めて円滑に行うことができる。
【0039】
図15(a)及び(b)は、上記上昇流形成体8の他の実施の形態を示すもので、上昇流形成体9は、上面に開口する平面視円形の開口部9aを有すると共に、該開口部9aに連通する円筒壁面部9bを有する有底の円筒状基体部9cと、該円筒状基体部9cの開口部9aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部9dと、該環状鍔部9dの外周面9eに該外周面9eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態においては4個)の係合垂下部9fと、該係合垂下部9fの下端に外方に突出する係合突起部9gと、該円筒状基体部9cの外周面9hから円筒内壁面9bに開口すると共に、先端部9iが該円筒状基体部9cの中心Oに向かって相対向する2つの空気噴出孔9j及び9jを備えている。
【0040】
該上昇流形成体9は、図示しないが前記図12に示した上昇流形成体8の収容孔部5lへの装着と同様にして、環状鍔部9dの外周面9eを該収容孔部5lの円筒壁面部5fに圧入嵌合し、係合垂下部9fの係合突起部9gを該収容孔部5lの環状肩部5gに係合させると共に、該環状鍔部9dの上面9kを該搬送用基板2aの上板5の上面5aと面一にして該収容孔部5lに装着される。
【0041】
搬送用基板2aの空気供給口7fから供給された空気は、空気供給口7fに連通する中板6の空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに供給される。空気供給凹溝6eに供給された空気は、上板5に形成された空気噴出孔5kから収容孔部5lに供給され、図16(a)及び(b)に示すように、該収容孔部5l(図12参照)に装着された上昇流形成体9の空気噴出孔9j及び9jから噴出して空気同士が衝突し、該円筒内壁面9bの上方に噴霧状に分散する上昇流となり、該上昇流によってガラスGは非接触で搬送される。
【0042】
この上昇流形成体9を使用した場合においても、上昇流形成体9においては、負圧を発生しないので浮上量を大きくすることができ、また、空気噴出孔9j及び9jから噴出した空気は、空気同士が衝突することにより空気の噴出速度が低下せしめられると共に、噴霧状に分散する上昇流となるので、ガラスGにストレスを与えることを極力抑えることができる。
【0043】
図17は、搬送用基板2aの他の実施の形態を示す。搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7からなる3層構造を有し、上板5は、図3、図4及び図12に示した前記搬送用基板2aの上板5と同様の構成を有する。
【0044】
中板6は、図17に示すように、中板6の上面6aに形成された断面半円形であって、開口部を上方に向けた空気供給凹溝6eと、一方に端部が該空気供給凹溝6eに開口すると共に、他方の端部が下面6hに開口する複数個の空気供給孔6gと、該中板6の下面6hに形成された断面半円形であって、開口部を下方に向けた空気吸引凹溝6jと、一方の端部が上板5に形成された空気吸引孔5nに連通し、他方の端部が該空気吸引凹溝6jに開口する貫通孔6iを備え、下板7は、下板7の上面7aに開口し、中板6の空気供給孔6gに連通すると共に、下板7の下面7eに開口する空気供給口7fと、下板7の上面7aに開口し、中板6の下面6hに形成された空気吸引凹溝6jに開口する貫通孔6iに連通すると共に、下板7の下面7eに開口する真空吸引口7hを備えている。該搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7をボルト等の固定手段により締結固定されて形成される。
【0045】
図18及び図19は、図1に示す一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3と、該一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに沿って配された非接触搬送装置4を示す。なお、非接触搬送装置3と非接触搬送装置4は、同様の構成を有するため、以下の説明では非接触搬送装置3について説明する。
【0046】
非接触搬送装置3は、搬送用基体3aと、該搬送用基体3aの搬送面としての上面3bに穿設され、上面3bに開口する平面視円形の開口部3cを有する円筒壁面部3dと、該円筒壁面部3dと環状肩部3eを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部3fと、該拡径円筒壁面部3fと連通し、該円筒壁面部3dと同径に形成された環状凹部3gとを有する収容孔部3hとを備え、収容孔部3hは、搬送用基体3aの長手方向Xに沿って複数個千鳥状に形成されている。
【0047】
搬送用基体3aは、搬送用基体3aの長手方向に沿って形成され、供給ポンプ(図示せず)から空気が供給される空気通路3iと、該空気通路3iに連通し、空気通路3iからの空気を収容孔部3hに供給すべく該収容孔部3hに開口する貫通孔3jを備えている。
【0048】
図20は、搬送用基体3aの他の実施の形態を示し、この搬送用基体3aは、搬送用基体3aに搬送面としての上面3bに穿設され、上面3bに開口する平面視円形の開口部3cを有する円筒壁面部3dと、円筒壁面部3dと環状肩部3eを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部3fと、該拡径円筒壁面部3fと連通し、該円筒壁面部3dと同径に形成された環状凹部3gとを有する収容孔部3hとを備え、該収容孔部3hは、搬送用基体3aの長手方向Xに沿って複数個千鳥状に形成され、供給ポンプ(図示せず)から空気が供給される空気通路3iがその一部を収容孔部3hに開口して形成されている。この搬送用基体3aでは、前記図19(a)及び(b)に示す搬送用基体3aにおける該空気通路3iから収容孔部3hに空気を供給する貫通孔3jが不要となる。
【0049】
該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに装着され、平面視右回り方向(時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体10は、図21(a)乃至(f)に示すように、上面に開口する平面視円形の開口部10aを有すると共に、該開口部10aに連通する円筒内壁面10bを有する有底の円筒状基体部10cと、該円筒状基体部10cの開口部10aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部10dと、該環状鍔部10dの外周面10eに該外周面10eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態では4個)の係合垂下部10fと、該係合垂下部10fの下端に外方に突出する係合突起部10gと、円筒状基体部10cの円筒内壁面10bに該円筒状内壁面10bの接線方向であって該円筒状基体部10cの中心Oを挟んで対角線上の相対向する位置に形成された凹部10h及び10hと、それぞれの凹部10hに形成され、円筒内壁面10b側に向かってそれぞれ反対方向に開口する空気の噴出口10i及び10iと、噴出口10i及び10iに連通し、円筒状基体部10cの外周面に開口する空気取入口10j及び10jを備えている。
【0050】
該旋回流形成体10は、図22に示すように、環状鍔部10dの外周面10eを該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hの円筒壁面部3dに圧入嵌合させ、係合垂下部10fの係合突起部10gを該収容孔部3hの環状肩部3eに係合させると共に、該環状鍔部10dの上面10lを該搬送用基体3aの上面3bと面一にして該収容孔部3hに装着される。
【0051】
該搬送用基体3aの収容孔部3hに装着された上記旋回流形成体10は、図21及び図22に示すように、空気取入口10j及び10jを介してそれぞれ噴出口10i及び10iから噴出した空気が円筒状基体部10cの円筒内壁面10bに当接することにより、平面視右回り方向の上昇旋回流(図21(b)中の矢印方向)を発生させると共に、上昇旋回流の中心部には負圧が発生し、当該負圧による吸引力によりガラスGの浮き上がり過ぎが防止される。
【0052】
図23(a)乃至(f)は、平面視左回り方向(反時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体11を示すもので、旋回流形成体11は、上面に開口する平面視円形の開口部11aを有すると共に、該開口部11aに連通する円筒内壁面11bを有する有底の円筒状基体部11cと、該円筒状基体部11cの開口部11aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部11dと、該環状鍔部11dの外周面11eに該外周面11eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態では4個)の係合垂下部11fと、該係合垂下部11fの下端に外方に突出する係合突起部11gと、円筒状基体部11cの円筒内壁面11bに、該円筒状内壁面11bの接線方向であって該円筒状基体部11cの中心Oを挟んで対角線上の相対向する位置に形成された凹部11h及び11hと、それぞれの凹部11hに形成され、円筒内壁面11b側に向かってそれぞれ反対方向に開口する空気の噴出口11i及び11iと、噴出口11i及び11iに連通し、円筒状基体部11cの外周面に開口する空気取入口11j及び11jを備えている。
【0053】
上記旋回流形成体11においても、前記旋回流形成体10を搬送用基体3aの収容孔部3hに装着した方法と同様にして搬送用基体3aの収容孔部3hに装着される。そして、空気取入口11j及び11jを介してそれぞれ噴出口11i及び11iから噴出した空気が円筒状基体部11cの円筒内壁面11bに当接することにより、平面視左回り方向の上昇旋回流(図23(b)中の矢印方向)を発生させると共に、上昇旋回流の中心部には負圧が発生し、当該負圧による吸引力によりガラスGの浮き上がり過ぎが防止される。
【0054】
搬送用基体3aに千鳥状に形成された収容孔部3hには、図18に示すように、前記平面視右回り方向(時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体10と平面視左回り方向(反時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体11とが該搬送用基体3aの長手方向Xに沿って交互に装着される。
【0055】
次に、上記構成を有する非接触搬送装置1の動作について、図1乃至図23を参照して説明する。なお、以下の説明において、コーナー部における非接触搬送装置2の搬送用基板2aに上昇流形成体8を装着した場合について説明する。
【0056】
ガラスGを搬送するにあたっては、図1に示す一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3において、図19に示すように、供給ポンプから搬送用基体3aの空気通路3iに供給された空気は、該空気通路3iに連通する貫通孔3jを介して該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに供給される。収容孔部3hに供給された空気は、該収容孔部3hに装着された旋回流形成体10(図21参照)の空気取入口10j及び10jに進入し、噴出口10i及び10iを通じて円筒状基体10cの円筒内壁面10b側に噴出する。噴出した空気は、該円筒内壁面10bに当接し、平面視右回り方向の上昇旋回流を該円筒内壁面10bの開口部10aの上方に発生させる。なお、搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに旋回流形成体11を装着した場合は、図23に示すように、円筒状基体11cの円筒内壁面11bの開口部11aの上方に平面視左回り方向の上昇旋回流が発生する。
【0057】
このようにして浮上したガラスGは、図示しないリニアモータ、摩擦コロ、ベルトなどにより搬送駆動力が与えられ、一の搬送方向Xに沿って搬送される。
【0058】
一の搬送方向Xに沿って搬送されたガラスGは、コーナー部の非接触搬送装置2に搬送され、該非接触搬送装置2において、図12に示すように、供給ポンプから搬送用基板2aの下板7の空気供給口7fに供給された空気は、中板6に形成された空気供給口7fに連通する空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに進入する。該空気供給凹溝6eに進入した空気は、空気噴出孔5kを介して上板5に形成された収容孔部5lに進入し、該収容孔部5lに装着された上昇流形成体8の空気噴出孔8j(図13参照)から噴出する。
【0059】
空気噴出孔8jから噴出した空気は、該上昇流形成体8の円筒状基体8cの円筒内壁面8bに衝突し、該円筒内壁面8bの開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流を生じる。このとき、上昇流形成体8に空気を供給する空気供給凹溝6eは、図7に示すように、単一の連続凹溝によって形成されているので、空気噴出孔8jからの空気の噴出量の上昇流形成体8毎のばらつきを抑制することができ、ガラスGの浮上量を均一に制御することができる。
【0060】
これと併行して、真空ポンプによって搬送用基板2aの下板7に形成された真空吸引口7hから空気を吸引し、下板7に形成された空気吸引凹溝7g及び該空気吸引凹溝7gに連通する中板6に形成された貫通孔6iを通じて上板5に形成された空気吸引孔5nの開口部の上方空間の空気を吸引する。このとき、空気吸引孔5nから空気を吸引する空気吸引凹溝7gは、図9に示すように、単一の連続凹溝によって形成されているので、空気吸引孔5nからの空気の吸引量の空気吸引孔5n毎のばらつきを制御することができ、ガラスGの吸引圧を均一に制御することができる。
【0061】
このコーナー部の非接触搬送装置2においては、上昇流形成体8の開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流によりガラスGを浮上させると同時に、搬送用基板2aの上板5の上面5aに開口する空気吸引孔5nの狭窄孔5mにおいて、該狭窄孔5mの開口部の上方空間の空気を吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔5nの狭窄孔5mの吸引力のバランスにより、当該ガラスGに撓みを生じることなく高精度な平面度を形成して非接触で搬送される。
【0062】
また、このコーナー部の非接触搬送装置2は、図1に示すように、平面視直角三角形を呈すると共に、該直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a及び2a’が該直角三角形の直角を挟む一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該一の搬送方向Xに直交する搬送方向Yに向けて配され、ガラスGを一対の搬送用基板2a及び2a’において浮上搬送するため、搬送中のガラスGの先端部側に万が一、撓みが生じても、ガラスGの先端部側の撓み部分が搬送用基板2a及び2a’の斜辺2b間の隙間に侵入することはないので、一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置2への乗り移り搬送が可能となる。
【0063】
一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3によって搬送されたガラスGは、コーナー部の非接触搬送装置2において直角に方向転換した後、一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに沿って配された非接触搬送装置4に乗り移り非接触で搬送される。この非接触搬送装置4は、前記非接触搬送装置3と同様の構成が採られる。
【0064】
以上説明したように、本発明の非接触搬送装置は、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、当該非接触搬送装置においては、上昇流形成体の開口部の上方に噴霧状に分散する上昇流により被搬送物を浮上させると同時に、搬送用基板の上板の上面に開口する空気吸引孔の狭窄孔において、該狭窄孔の開口部の上方空間の空気を吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔の狭窄孔の吸引力のバランスにより、被搬送物に撓みを生じることを極力抑えることができ、当該被搬送物を高精度な平面度を形成して非接触で搬送することができる。
【0065】
このコーナー部の非接触搬送装置は、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、被搬送物を一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物の先端部側に万が一、撓みが生じても、被搬送物の先端部側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に侵入することはないので、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 非接触搬送装置(全体構成)
2 非接触搬送装置(コーナー部)
3、4 非接触搬送装置(一の搬送方向と一の搬送方向と直交する搬送方向)
2a、2a’ 搬送用基板
2b 斜辺
2c、2d 辺
5 上板
5a 上面(搬送面)
5l 収容孔部
5m 狭窄孔
5n 空気吸引孔
6 中板
6e 空気供給凹溝
6i 貫通孔
7 上板
7f 空気供給口
7g 空気吸引凹溝
7h 真空吸引口
8 上昇流形成体
8j 空気噴出孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型の液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)や太陽電池パネル(ソーラーパネル)等の生産に用いられる非接触搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPDや太陽電池パネル等の生産に際し、1枚のパネルを大型化することで生産効率を上げる方法が採用されている。例えば、液晶パネルの場合には、第10世代で2850×3050×0.7mmの大きさとなる。そのため、従来のように、複数個並べられたローラの上に液晶ガラスを載せて転がり搬送すると、ローラを支持するシャフトの撓みやローラ高さの寸法のばらつきにより液晶ガラスに局部的に強い力が働き、当該液晶ガラスを傷つける虞がある。
【0003】
上記ローラによる転がり搬送装置は、該装置とパネルとが非接触であることが要求される、例えばFPDのプロセス工程では採用することができず、近年においては、空気浮上の搬送装置が採用され始めている。非接触搬送装置として、板状の搬送用レールの一部に多孔質材料(多孔質焼結金属等)を用い、空気供給経路と連通させて給気することで、噴出空気によりFPDを浮上搬送させる装置が存在する。しかし、この非接触搬送装置を用いると、FPDが上下方向に動きながら浮遊するような状態となるため、搬送工程に用いることは可能であるが、例えば30〜50μmの高精度の浮上高さが要求されるプロセス工程には到底採用することはできない。
【0004】
上記多孔質材料を用いた板状の搬送用レールに浮上量を高精度に維持する目的で真空引き用の孔を設けると、装置の構成が複雑になると共に、装置自体が高額になり、また、浮上高さを高精度に維持するために給気圧を高くすると、高剛性空気の圧縮性に係る自励振動が発生し、浮上高さを高精度に保つことができないという問題があった。
【0005】
多孔質材料の代わりにオリフィス(小径の孔)を真空引き用の孔と交互に穿設した装置も存在するが、オリフィスからの強い噴出空気で静電気を発生したり、クリーンルームの環境を乱したり、消費電流が大きくなって運転コストが高騰するという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、流体流量及びエネルギ消費量が少なく、浮上高さを高精度に維持できる非接触搬送装置として、流体噴出口から流体を噴出させることにより、リング状部材の表面側に該表面側から離れる方向へ向かう旋回流を生じさせると共に、リング状部材の表面側の開口部近傍に裏面方向への流体流れを生じさせる旋回流形成体を、搬送用レールの搬送面に2個以上備える非接触搬送装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/119377号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の非接触搬送装置は、図24乃至図27に示すように、搬送用レール50の搬送面50aに、平面視右回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体51aと平面視左回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体52a(図24乃至図26において、平面視左回り方向の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体52aを黒塗りで示す)とが該搬送面50aに長手方向に沿って交互に固定され、ポンプ(図示せず)から搬送用レール50の空気通路50bに供給された空気は、貫通孔50cを介して旋回流形成体51aの円板状基板51cの裏面51dに形成された環状溝51eに供給され、空気通路51fを介して噴出口51gから噴出する。これにより、旋回流形成体51aは、円板状基板51cの表面側の上方に上昇旋回流を発生し、この旋回流にて被搬送物であるガラスGを浮上させる。
【0009】
この非接触搬送装置では、搬送用レール50の搬送面50aに形成した凹部に旋回流形成体51aを収容し、この旋回流形成体51aの外周面を凹部の周囲に突設した盛上部によってかしめ接合するため、搬送用レール50への旋回流形成体51aの装着に長時間を要して非接触搬送装置の製造コストの上昇に繋がるとともに、旋回流形成体51aを搬送用レール50にかしめ接合する際に、旋回流形成体51aの取付角度にばらつきを生じたり、旋回流形成体51aや搬送用レール50に反りが発生したりして被搬送物の浮上高さの精度が低下する虞があるという問題があった。
【0010】
また、上記非接触搬送装置を使用した、例えばFPDガラスの空気浮上による搬送において、搬送工程中に搬送方向を90度方向転換させる部位では、図25に示す搬送用レール50を図24に示す搬送方向と直角に配列すると、コーナー部においては搬送用レール50を敷き詰めない限り当該搬送用レール50間に隙間が発生し、ガラスGが薄くなると撓みが大きくなり、搬送用レール50間の隙間が小さくても乗り移れない現象が起こる(図26参照)。
【0011】
上記現象を回避するべく、例えば空気の噴出量を多くし、浮上量を高めて乗り移らせる方法や、ガラスが載置されているステージ(搬送装置)をリフトアップして回転させ、乗り移らす方法などが採られているが、空気の噴出量を多くする方法では、空気の消費量が大きくランニングコストに負担がかかり、またリフトアップする方法では、リフトや回転機構に設備費用を要し、タクトタイム(工程作業時間)を短縮できないなどの問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、一の搬送方向と該一の搬送方向と直交する搬送方向とのコーナー部においても、上記手段を採ることなく円滑に90度方向転換させることが可能な非接触搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明にかかる非接触搬送装置は、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を前記一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、該搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体と、複数個の吸引孔とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の非接触搬送装置によれば、被搬送物(FPDガラス)を該被搬送物の一の搬送方向に対して、平面視直角三角形の斜辺を相対向させ、直角三角形の直角を挟む一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配された一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物に撓みが生じても、被搬送物の先端側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に進入することはないので、リフトや回転機構を使用することなく、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる。
【0015】
上記非接触搬送装置の前記一対の搬送用基板において、前記平面視直角三角形の斜辺間に該斜辺に沿う幅方向に隙間を設けることができる。
【0016】
また、上記非接触搬送装置において、前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の各収容孔部に連通する連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する連通孔と、該連通孔に隣接し、一方の端部が前記上板の吸引孔に連通し、他方の端部が下面に開口する貫通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に結合された空気供給口と、上面に開口すると共に、前記中板の貫通孔に連通する空気吸引経路と該空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されている。
【0017】
上記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の収容孔部に連通する1つの連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する1つの連通孔と、一方の端部が前記上板の吸引孔に開口し、他方の端部が下面に開口する空気吸引経路に開口する連通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に開口する空気供給口と、前記中板の空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されているものであってもよい。
【0018】
前記搬送用基板の上板の収容孔部に装着される上昇流形成体は、内面に円筒内壁面を有する有底の円筒状基体部と、該円筒状基体部の開口部の周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部と、該環状鍔部の外周縁の円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個の係合垂下部と、該係合垂下部の下端に外方に突出する係合突起部と、前記円筒状基体部の外周面から円筒内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かう少なくとも1つの流体噴出孔とを備えている。
【0019】
また、上昇流形成体は、前記流体噴出孔を1つ備え、該流体噴出孔から噴出した流体は、該円筒状基体部の円筒内壁面に衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成するものであるか、あるいは円筒状基体部の外周面から円筒状内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かって相対向するように2つ設けられた流体噴出孔を備え、該2つの流体噴出孔から噴出した流体は、該流体同士が衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成するものであってもよい。
【0020】
上昇流形成体により生じる噴出流体は、噴霧状に分散して上昇流を形成するので、被搬送物にストレスを与えることがなく、負圧の発生がないので被搬送物の浮上量を大きくすることができる。
【0021】
上記上昇流形成体は、熱可塑性合成樹脂を射出成形することによって形成されるのが好ましく、熱可塑性合成樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)が挙げられる。上昇流形成体は、環状鍔部の外周面を前記搬送用基板の上板に形成された前記収容孔部の前記円筒壁面部に圧入嵌合させ、前記係合垂下部の前記係合突起部を前記収容孔部の前記環状肩部に係合させて該収容孔部に装着される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被搬送物(FPDガラス等)を該被搬送物の一の搬送方向に対して、平面視直角三角形の斜辺を相対向させ、直角三角形の直角を挟む一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配された一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物に撓みが生じても、被搬送物の先端側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に進入することはないので、リフトや回転機構を使用することなく、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる非接触搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る非接触搬送装置の一実施の形態を示す図であって、搬送工程における非接触搬送装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のコーナー部における非接触搬送装置の一部拡大平面図である。
【図3】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(上板)の上昇流形成体を装着していない状態の拡大平面図である。
【図4】図3の搬送用基板(上板)の背面図である。
【図5】図3のA−A線矢視断面図である。
【図6】図3のB−B線矢視断面図である。
【図7】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(中板)の平面図である。
【図8】図7の搬送用基板(中板)の背面図である。
【図9】コーナー部における非接触搬送装置を形成する搬送用基板(下板)の平面図である。
【図10】図9の搬送用基板(下板)の背面図である。
【図11】本発明の非接触搬送装置に使用される上昇流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(b)のC−C線矢視断面図である。
【図12】図2のD−D線矢視断面図である。
【図13】上昇流形成体を介して空気が噴霧状に上方に分散して上昇流を形成する説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線矢視断面図である。
【図14】コーナー部における非接触搬送装置でのガラスの浮上搬送を示す断面図である。
【図15】本発明の非接触搬送装置に使用される他の態様の上昇流形成体であって、(a)は底面図、(b)は(a)のF−F線矢視断面図である。
【図16】図15に示す上昇流形成体を介して空気が噴霧状に上方に分散して上昇流を形成する説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G線矢視断面図である。
【図17】コーナー部における非接触搬送装置の他の実施の形態の断面図である。
【図18】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置を示す平面図である。
【図19】図18に示す非接触搬送装置における搬送用レールを示す図であって、(a)は旋回流形成体を装着していない状態の平面図、(b)は(a)のH−H線矢視断面図である。
【図20】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置における搬送用レールの他の実施の形態を示す図であって、(a)は旋回流形成体を装着していない状態の平面図、(b)は(a)のI−I線矢視断面図である。
【図21】平面視右回り方向(時計回り方向)の旋回流を発生させる旋回流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(b)のJ−J線矢視断面図、(e)は(c)のK部の拡大断面図、(f)は(d)のL部の拡大断面図である。
【図22】図1の一の搬送方向及び一の搬送方向に直交する搬送方向に沿って配される非接触搬送装置による被搬送物の浮上搬送を示す断面図である。
【図23】平面視左回り方向(反時計回り方向)の旋回流を発生させる旋回流形成体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(c)のM−M線矢視断面図、(e)は(c)のN部の拡大断面図、(f)は(d)のP部の拡大断面図である。
【図24】従来の搬送工程における非接触搬送装置の全体構成を示す平面図である。
【図25】非接触搬送装置の搬送用レールを示す平面図である。
【図26】コーナー部に位置する非接触搬送装置における被搬送物の浮上搬送を示す図で、(a)は平面図、(b)は断面側面図である。
【図27】従来の非接触搬送装置でのガラスの浮上搬送を示す図で、(a)は断面正面図、(b)は、(a)のQ−Q線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、搬送用流体として空気を用い、被搬送物として液晶ガラスG(以下、ガラスGと略称する。)を搬送する場合を例にとって説明する。
【0025】
非接触搬送装置1は、図1に示すように、ガラスGを非接触で搬送するために使用され、一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3と、該一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに配された非接触搬送装置4と、該非接触搬送装置3と非接触搬送装置4とのコーナー部に配される非接触搬送装置2とから構成される。
【0026】
非接触搬送装置2は、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a及び2a’が該直角三角形の直角を挟む一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該搬送方向に直交する搬送方向Yに向けて配されている。
【0027】
搬送用基板2a及び2a’は、図3乃至図10及び図12に示すように、上板5、中板6及び下板7からなる3層構造を有する。
【0028】
上板5は、図3乃至図6に示すように、斜辺5bと直角を挟む2つの辺5c及び5dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、搬送面となる上面5aに穿設され、該上面5aに開口する平面視円形の開口部5eを有する円筒壁面部5fと、該円筒壁面部5fと環状肩部5gを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部5hと、該拡径円筒壁面部5hと連通し、円筒壁面部5fと同径に形成された環状凹部5iと、一方の端部が該環状凹部5iに開口し、他方の端部が下面5jに開口する空気噴出孔5kとを備えた収容孔部5lと、一方の端部に狭窄孔5mを有すると共に、該狭窄孔5mの一方の端部を上面5aに開口させ、該狭窄孔5mの他方の端部を該狭窄孔5mと連通させて該上板5の下面5jに開口する空気吸引孔5nを複数個備えている。
【0029】
中板6は、図7及び図8に示すように、斜辺6bと直角を挟む2つの辺6c及び6dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、上面6aに前記上板5に形成された複数個の収容孔部5lの空気噴出孔5kに連通するように形成され、開口部を上方に向けた断面半円状の空気供給凹溝6eと、一方の端部が該空気供給凹溝6eに開口し、他方の端部が中板6の下面6fに開口して形成された複数個の空気供給孔6gと、前記上板5に形成された複数個の空気吸引孔5nに連通すると共に、中板6の上面6aから下面6hに向けて貫通する貫通孔6iを備えている。
【0030】
下板7は、図9及び図10に示すように、斜辺7bと直角を挟む2つの辺7c及び7dからなる平面視直角三角形を呈すると共に、一方の端部が下板7の上面7aに開口し、他方の端部が下板7の下面7eに開口すると共に、前記中板6に形成された複数個の空気供給孔6gに連通する空気供給口7fと、上面7aに前記中板6に形成された複数個の貫通孔6iに連通するように形成され、開口部を上方に向けた断面半円状の空気吸引凹溝7gと、一方の端部が該空気吸引凹溝7gに開口し、他方の端部が該下板7の下面7eに開口する真空吸引口7hを備えている。
【0031】
そして、図12に示すように、上板5に形成された収容孔部5lの空気噴出孔5kを中板6の上面6aに形成された空気供給凹溝6eに連通させ、空気吸引孔5nを中板6に形成された貫通孔6iに連通させて、上板5を中板6の上面6aに位置せしめ、中板6の下面6hに開口する空気供給孔6gに下板7に形成された空気供給口7fに結合させると共に、中板6の下面6hに開口する貫通孔6iを下板7の上面7aに形成された空気吸引凹溝7gに真空吸引口7hを結合させて、中板6を下板7の上面7aに位置させることにより、平面視直角三角形を呈する搬送用基板2aが形成される。該搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7をボルト等の固定手段により締結固定されて形成される。なお、搬送用基板2a’は、搬送用基板2aと同様の構成からなると共に、該搬送用基板2aを180°回転させることにより形成されるもので、説明は省略する。
【0032】
上記搬送用基板2aにおいて、下板7に形成された空気供給口7f及び真空吸引口7hは、各々ねじ孔を備え、空気供給口7fのねじ孔には、例えばコンプレッサーに接続されたホースの先端のニップルが螺合固定され、真空吸引口7hのねじ孔には、例えば真空ポンプに接続されたホースの先端のニップルが螺合固定される。
【0033】
上記搬送用基板2aの上板5に形成された収容孔部5lには、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の熱可塑性合成樹脂から形成された上昇流形成体8が装着される。
【0034】
上昇流形成体8は、図11(a)乃至(d)に示すように、上面に開口する平面視円形の開口部8aを有すると共に、該開口部8aに連通する円筒内壁面8bを有する有底の円筒状基体部8cと、該円筒状基体部8cの開口部8aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部8dと、該環状鍔部8dの外周面8eに該外周面8eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態においては4個)の係合垂下部8fと、該係合垂下部8fの下端に外方に突出する係合突起部8gと、該円筒状基体部8cの外周面8hから円筒内壁面8bに開口すると共に、先端部8iが該円筒状基体部8cの中心Oに向かう少なくとも1つ(本実施の形態では1つ)の空気噴出孔8jを備えている。
【0035】
該上昇流形成体8は、図12に示すように、環状鍔部8dの外周面8eを該収容孔部5lの円筒壁面部5fに圧入嵌合させ、係合垂下部8fの係合突起部8gを該収容孔部5lの環状肩部5gに係合させると共に、該環状鍔部8dの上面8kを該搬送用基板2aの上板5の上面5aと面一にして該収容孔部5lに装着される。
【0036】
上記構成により、搬送用基板2aの空気供給口7fから供給された空気は、空気供給口7fに連通する中板6の空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに供給される。空気供給凹溝6eに供給された空気は、上板5に形成された空気噴出孔5kから収容孔部5lに供給され、該収容孔部5lに装着された上昇流形成体8において、図13及び図14に示すように、円筒状基体部8cの外周面8hから円筒内壁面8bに開口すると共に、先端部8iが円筒状基体部8cの中心Oに向かう空気噴出孔8jから噴出して円筒状基体部8cの円筒内壁面8bに衝突し、該円筒内壁面8bの開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流となり、該上昇流によりガラスGを浮上させると同時に、搬送用基板2aの上板5の上面5aに開口する空気吸引孔5nの狭窄孔5mにおいて吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔5nの狭窄孔5mの吸引力のバランスにより、コーナー部において当該ガラスGは、撓みを生じることなく高精度な平面度を形成して非接触で搬送される。
【0037】
上昇流形成体8においては、負圧を発生しないので浮上量を大きくすることができ、また空気噴出孔8jから噴出した空気は、円筒状基体部8cの円筒内壁面8bに衝突することにより、空気の噴出速度が低下せしめられると共に、噴霧状に分散する上昇流となるので、ガラスGにストレスを与えることを極力抑えることができる。
【0038】
また、コーナー部における非接触搬送装置2においては、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a、2a’が該直角三角形の一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該搬送方向に直交する搬送方向Yに向けて配されているので、搬送時におけるガラスGの撓みに起因する当該ガラスGの搬送先端部が搬送用基板2a、2a’間の隙間に進入する不具合を生じることなく、ガラスGの搬送を極めて円滑に行うことができる。
【0039】
図15(a)及び(b)は、上記上昇流形成体8の他の実施の形態を示すもので、上昇流形成体9は、上面に開口する平面視円形の開口部9aを有すると共に、該開口部9aに連通する円筒壁面部9bを有する有底の円筒状基体部9cと、該円筒状基体部9cの開口部9aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部9dと、該環状鍔部9dの外周面9eに該外周面9eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態においては4個)の係合垂下部9fと、該係合垂下部9fの下端に外方に突出する係合突起部9gと、該円筒状基体部9cの外周面9hから円筒内壁面9bに開口すると共に、先端部9iが該円筒状基体部9cの中心Oに向かって相対向する2つの空気噴出孔9j及び9jを備えている。
【0040】
該上昇流形成体9は、図示しないが前記図12に示した上昇流形成体8の収容孔部5lへの装着と同様にして、環状鍔部9dの外周面9eを該収容孔部5lの円筒壁面部5fに圧入嵌合し、係合垂下部9fの係合突起部9gを該収容孔部5lの環状肩部5gに係合させると共に、該環状鍔部9dの上面9kを該搬送用基板2aの上板5の上面5aと面一にして該収容孔部5lに装着される。
【0041】
搬送用基板2aの空気供給口7fから供給された空気は、空気供給口7fに連通する中板6の空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに供給される。空気供給凹溝6eに供給された空気は、上板5に形成された空気噴出孔5kから収容孔部5lに供給され、図16(a)及び(b)に示すように、該収容孔部5l(図12参照)に装着された上昇流形成体9の空気噴出孔9j及び9jから噴出して空気同士が衝突し、該円筒内壁面9bの上方に噴霧状に分散する上昇流となり、該上昇流によってガラスGは非接触で搬送される。
【0042】
この上昇流形成体9を使用した場合においても、上昇流形成体9においては、負圧を発生しないので浮上量を大きくすることができ、また、空気噴出孔9j及び9jから噴出した空気は、空気同士が衝突することにより空気の噴出速度が低下せしめられると共に、噴霧状に分散する上昇流となるので、ガラスGにストレスを与えることを極力抑えることができる。
【0043】
図17は、搬送用基板2aの他の実施の形態を示す。搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7からなる3層構造を有し、上板5は、図3、図4及び図12に示した前記搬送用基板2aの上板5と同様の構成を有する。
【0044】
中板6は、図17に示すように、中板6の上面6aに形成された断面半円形であって、開口部を上方に向けた空気供給凹溝6eと、一方に端部が該空気供給凹溝6eに開口すると共に、他方の端部が下面6hに開口する複数個の空気供給孔6gと、該中板6の下面6hに形成された断面半円形であって、開口部を下方に向けた空気吸引凹溝6jと、一方の端部が上板5に形成された空気吸引孔5nに連通し、他方の端部が該空気吸引凹溝6jに開口する貫通孔6iを備え、下板7は、下板7の上面7aに開口し、中板6の空気供給孔6gに連通すると共に、下板7の下面7eに開口する空気供給口7fと、下板7の上面7aに開口し、中板6の下面6hに形成された空気吸引凹溝6jに開口する貫通孔6iに連通すると共に、下板7の下面7eに開口する真空吸引口7hを備えている。該搬送用基板2aは、上板5、中板6及び下板7をボルト等の固定手段により締結固定されて形成される。
【0045】
図18及び図19は、図1に示す一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3と、該一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに沿って配された非接触搬送装置4を示す。なお、非接触搬送装置3と非接触搬送装置4は、同様の構成を有するため、以下の説明では非接触搬送装置3について説明する。
【0046】
非接触搬送装置3は、搬送用基体3aと、該搬送用基体3aの搬送面としての上面3bに穿設され、上面3bに開口する平面視円形の開口部3cを有する円筒壁面部3dと、該円筒壁面部3dと環状肩部3eを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部3fと、該拡径円筒壁面部3fと連通し、該円筒壁面部3dと同径に形成された環状凹部3gとを有する収容孔部3hとを備え、収容孔部3hは、搬送用基体3aの長手方向Xに沿って複数個千鳥状に形成されている。
【0047】
搬送用基体3aは、搬送用基体3aの長手方向に沿って形成され、供給ポンプ(図示せず)から空気が供給される空気通路3iと、該空気通路3iに連通し、空気通路3iからの空気を収容孔部3hに供給すべく該収容孔部3hに開口する貫通孔3jを備えている。
【0048】
図20は、搬送用基体3aの他の実施の形態を示し、この搬送用基体3aは、搬送用基体3aに搬送面としての上面3bに穿設され、上面3bに開口する平面視円形の開口部3cを有する円筒壁面部3dと、円筒壁面部3dと環状肩部3eを介して拡径する帯状の拡径円筒壁面部3fと、該拡径円筒壁面部3fと連通し、該円筒壁面部3dと同径に形成された環状凹部3gとを有する収容孔部3hとを備え、該収容孔部3hは、搬送用基体3aの長手方向Xに沿って複数個千鳥状に形成され、供給ポンプ(図示せず)から空気が供給される空気通路3iがその一部を収容孔部3hに開口して形成されている。この搬送用基体3aでは、前記図19(a)及び(b)に示す搬送用基体3aにおける該空気通路3iから収容孔部3hに空気を供給する貫通孔3jが不要となる。
【0049】
該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに装着され、平面視右回り方向(時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体10は、図21(a)乃至(f)に示すように、上面に開口する平面視円形の開口部10aを有すると共に、該開口部10aに連通する円筒内壁面10bを有する有底の円筒状基体部10cと、該円筒状基体部10cの開口部10aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部10dと、該環状鍔部10dの外周面10eに該外周面10eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態では4個)の係合垂下部10fと、該係合垂下部10fの下端に外方に突出する係合突起部10gと、円筒状基体部10cの円筒内壁面10bに該円筒状内壁面10bの接線方向であって該円筒状基体部10cの中心Oを挟んで対角線上の相対向する位置に形成された凹部10h及び10hと、それぞれの凹部10hに形成され、円筒内壁面10b側に向かってそれぞれ反対方向に開口する空気の噴出口10i及び10iと、噴出口10i及び10iに連通し、円筒状基体部10cの外周面に開口する空気取入口10j及び10jを備えている。
【0050】
該旋回流形成体10は、図22に示すように、環状鍔部10dの外周面10eを該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hの円筒壁面部3dに圧入嵌合させ、係合垂下部10fの係合突起部10gを該収容孔部3hの環状肩部3eに係合させると共に、該環状鍔部10dの上面10lを該搬送用基体3aの上面3bと面一にして該収容孔部3hに装着される。
【0051】
該搬送用基体3aの収容孔部3hに装着された上記旋回流形成体10は、図21及び図22に示すように、空気取入口10j及び10jを介してそれぞれ噴出口10i及び10iから噴出した空気が円筒状基体部10cの円筒内壁面10bに当接することにより、平面視右回り方向の上昇旋回流(図21(b)中の矢印方向)を発生させると共に、上昇旋回流の中心部には負圧が発生し、当該負圧による吸引力によりガラスGの浮き上がり過ぎが防止される。
【0052】
図23(a)乃至(f)は、平面視左回り方向(反時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体11を示すもので、旋回流形成体11は、上面に開口する平面視円形の開口部11aを有すると共に、該開口部11aに連通する円筒内壁面11bを有する有底の円筒状基体部11cと、該円筒状基体部11cの開口部11aの周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部11dと、該環状鍔部11dの外周面11eに該外周面11eの円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個(本実施の形態では4個)の係合垂下部11fと、該係合垂下部11fの下端に外方に突出する係合突起部11gと、円筒状基体部11cの円筒内壁面11bに、該円筒状内壁面11bの接線方向であって該円筒状基体部11cの中心Oを挟んで対角線上の相対向する位置に形成された凹部11h及び11hと、それぞれの凹部11hに形成され、円筒内壁面11b側に向かってそれぞれ反対方向に開口する空気の噴出口11i及び11iと、噴出口11i及び11iに連通し、円筒状基体部11cの外周面に開口する空気取入口11j及び11jを備えている。
【0053】
上記旋回流形成体11においても、前記旋回流形成体10を搬送用基体3aの収容孔部3hに装着した方法と同様にして搬送用基体3aの収容孔部3hに装着される。そして、空気取入口11j及び11jを介してそれぞれ噴出口11i及び11iから噴出した空気が円筒状基体部11cの円筒内壁面11bに当接することにより、平面視左回り方向の上昇旋回流(図23(b)中の矢印方向)を発生させると共に、上昇旋回流の中心部には負圧が発生し、当該負圧による吸引力によりガラスGの浮き上がり過ぎが防止される。
【0054】
搬送用基体3aに千鳥状に形成された収容孔部3hには、図18に示すように、前記平面視右回り方向(時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体10と平面視左回り方向(反時計回り方向)の上昇旋回流を発生させる旋回流形成体11とが該搬送用基体3aの長手方向Xに沿って交互に装着される。
【0055】
次に、上記構成を有する非接触搬送装置1の動作について、図1乃至図23を参照して説明する。なお、以下の説明において、コーナー部における非接触搬送装置2の搬送用基板2aに上昇流形成体8を装着した場合について説明する。
【0056】
ガラスGを搬送するにあたっては、図1に示す一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3において、図19に示すように、供給ポンプから搬送用基体3aの空気通路3iに供給された空気は、該空気通路3iに連通する貫通孔3jを介して該搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに供給される。収容孔部3hに供給された空気は、該収容孔部3hに装着された旋回流形成体10(図21参照)の空気取入口10j及び10jに進入し、噴出口10i及び10iを通じて円筒状基体10cの円筒内壁面10b側に噴出する。噴出した空気は、該円筒内壁面10bに当接し、平面視右回り方向の上昇旋回流を該円筒内壁面10bの開口部10aの上方に発生させる。なお、搬送用基体3aに形成された収容孔部3hに旋回流形成体11を装着した場合は、図23に示すように、円筒状基体11cの円筒内壁面11bの開口部11aの上方に平面視左回り方向の上昇旋回流が発生する。
【0057】
このようにして浮上したガラスGは、図示しないリニアモータ、摩擦コロ、ベルトなどにより搬送駆動力が与えられ、一の搬送方向Xに沿って搬送される。
【0058】
一の搬送方向Xに沿って搬送されたガラスGは、コーナー部の非接触搬送装置2に搬送され、該非接触搬送装置2において、図12に示すように、供給ポンプから搬送用基板2aの下板7の空気供給口7fに供給された空気は、中板6に形成された空気供給口7fに連通する空気供給孔6gを介して空気供給凹溝6eに進入する。該空気供給凹溝6eに進入した空気は、空気噴出孔5kを介して上板5に形成された収容孔部5lに進入し、該収容孔部5lに装着された上昇流形成体8の空気噴出孔8j(図13参照)から噴出する。
【0059】
空気噴出孔8jから噴出した空気は、該上昇流形成体8の円筒状基体8cの円筒内壁面8bに衝突し、該円筒内壁面8bの開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流を生じる。このとき、上昇流形成体8に空気を供給する空気供給凹溝6eは、図7に示すように、単一の連続凹溝によって形成されているので、空気噴出孔8jからの空気の噴出量の上昇流形成体8毎のばらつきを抑制することができ、ガラスGの浮上量を均一に制御することができる。
【0060】
これと併行して、真空ポンプによって搬送用基板2aの下板7に形成された真空吸引口7hから空気を吸引し、下板7に形成された空気吸引凹溝7g及び該空気吸引凹溝7gに連通する中板6に形成された貫通孔6iを通じて上板5に形成された空気吸引孔5nの開口部の上方空間の空気を吸引する。このとき、空気吸引孔5nから空気を吸引する空気吸引凹溝7gは、図9に示すように、単一の連続凹溝によって形成されているので、空気吸引孔5nからの空気の吸引量の空気吸引孔5n毎のばらつきを制御することができ、ガラスGの吸引圧を均一に制御することができる。
【0061】
このコーナー部の非接触搬送装置2においては、上昇流形成体8の開口部8aの上方に噴霧状に分散する上昇流によりガラスGを浮上させると同時に、搬送用基板2aの上板5の上面5aに開口する空気吸引孔5nの狭窄孔5mにおいて、該狭窄孔5mの開口部の上方空間の空気を吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔5nの狭窄孔5mの吸引力のバランスにより、当該ガラスGに撓みを生じることなく高精度な平面度を形成して非接触で搬送される。
【0062】
また、このコーナー部の非接触搬送装置2は、図1に示すように、平面視直角三角形を呈すると共に、該直角三角形の斜辺2bを相対向させた一対の搬送用基板2a及び2a’が該直角三角形の直角を挟む一方の辺2cを一の搬送方向Xに向けると共に、他方の辺2dを該一の搬送方向Xに直交する搬送方向Yに向けて配され、ガラスGを一対の搬送用基板2a及び2a’において浮上搬送するため、搬送中のガラスGの先端部側に万が一、撓みが生じても、ガラスGの先端部側の撓み部分が搬送用基板2a及び2a’の斜辺2b間の隙間に侵入することはないので、一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置2への乗り移り搬送が可能となる。
【0063】
一の搬送方向Xに沿って配された非接触搬送装置3によって搬送されたガラスGは、コーナー部の非接触搬送装置2において直角に方向転換した後、一の搬送方向Xに対して直交する搬送方向Yに沿って配された非接触搬送装置4に乗り移り非接触で搬送される。この非接触搬送装置4は、前記非接触搬送装置3と同様の構成が採られる。
【0064】
以上説明したように、本発明の非接触搬送装置は、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、当該非接触搬送装置においては、上昇流形成体の開口部の上方に噴霧状に分散する上昇流により被搬送物を浮上させると同時に、搬送用基板の上板の上面に開口する空気吸引孔の狭窄孔において、該狭窄孔の開口部の上方空間の空気を吸引し、上昇流による浮上力と空気吸引孔の狭窄孔の吸引力のバランスにより、被搬送物に撓みを生じることを極力抑えることができ、当該被搬送物を高精度な平面度を形成して非接触で搬送することができる。
【0065】
このコーナー部の非接触搬送装置は、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、被搬送物を一対の搬送用基板において浮上搬送するため、搬送中の被搬送物の先端部側に万が一、撓みが生じても、被搬送物の先端部側の撓み部分が搬送用基板の斜辺間の隙間に侵入することはないので、一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置から直角に方向転換したコーナー部の非接触搬送装置への乗り移り搬送が可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 非接触搬送装置(全体構成)
2 非接触搬送装置(コーナー部)
3、4 非接触搬送装置(一の搬送方向と一の搬送方向と直交する搬送方向)
2a、2a’ 搬送用基板
2b 斜辺
2c、2d 辺
5 上板
5a 上面(搬送面)
5l 収容孔部
5m 狭窄孔
5n 空気吸引孔
6 中板
6e 空気供給凹溝
6i 貫通孔
7 上板
7f 空気供給口
7g 空気吸引凹溝
7h 真空吸引口
8 上昇流形成体
8j 空気噴出孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を前記一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、該搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体と、複数個の吸引孔とが設けられていることを特徴とする非接触搬送装置。
【請求項2】
前記一対の搬送用基板において、前記平面視直角三角形の斜辺間には該斜辺に沿う幅方向に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非接触搬送装置。
【請求項3】
前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の各収容孔部に連通する連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する連通孔と、該連通孔に隣接し、一方の端部が前記上板の吸引孔に連通し、他方の端部が下面に開口する貫通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に結合された空気供給口と、上面に開口すると共に、前記中板の貫通孔に連通する空気吸引経路と該空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触搬送装置。
【請求項4】
前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の収容孔部に連通する1つの連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する1つの連通孔と、一方の端部が前記上板の吸引孔に開口し、他方の端部が下面に開口する空気吸引経路に開口する連通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に開口する空気供給口と、前記中板の空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触搬送装置。
【請求項5】
前記上昇流形成体は、内面に円筒内壁面を有する有底の円筒状基体部と、該円筒状基体部の開口部の周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部と、該環状鍔部の外周縁の円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個の係合垂下部と、該係合垂下部の下端に外方に突出する係合突起部と、前記円筒状基体部の外周面から円筒内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かう少なくとも1つの流体噴出孔とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触搬送装置。
【請求項6】
前記上昇流形成体は、前記流体噴出孔を1つ備え、該流体噴出孔から噴出した流体は、該円筒状基体部の前記円筒内壁面に衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成することを特徴とする請求項5に記載の非接触搬送装置。
【請求項7】
前記上昇流形成体は、前記円筒状基体部の外周面から前記円筒状内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かって相対向するように2つ設けられた流体噴出孔を備え、該2つの流体噴出孔から噴出した流体は、該流体同士が衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成することを特徴とする請求項5に記載の非接触搬送装置。
【請求項8】
前記上昇流形成体は、前記環状鍔部の外周面を前記搬送用基板の前記上板に形成された前記収容孔部の前記円筒壁面部に圧入嵌合させ、前記係合垂下部の前記係合突起部を前記収容孔部の前記環状肩部に係合させて該収容孔部に装着されることを特徴とする請求項6又は7に記載の非接触搬送装置。
【請求項1】
一の搬送方向に沿って配された非接触搬送装置と、該一の搬送方向に対して直交する搬送方向に配された非接触搬送装置とのコーナー部に配される非接触搬送装置であって、平面視直角三角形を呈すると共に、該平面視直角三角形の斜辺を相対向させた一対の搬送用基板が該直角三角形の一方の辺を前記一の搬送方向に向けると共に、他方の辺を該搬送方向に直交する搬送方向に向けて配され、該搬送用基板には、平面視直角三角形の搬送面に複数個の上昇流形成体と、複数個の吸引孔とが設けられていることを特徴とする非接触搬送装置。
【請求項2】
前記一対の搬送用基板において、前記平面視直角三角形の斜辺間には該斜辺に沿う幅方向に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非接触搬送装置。
【請求項3】
前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の各収容孔部に連通する連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する連通孔と、該連通孔に隣接し、一方の端部が前記上板の吸引孔に連通し、他方の端部が下面に開口する貫通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に結合された空気供給口と、上面に開口すると共に、前記中板の貫通孔に連通する空気吸引経路と該空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触搬送装置。
【請求項4】
前記平面視直角三角形を呈する搬送用基板は、上面に開口する平面視円形の開口部を有する円筒壁面部と該円筒壁面部と環状肩部を介して拡径すると共に、下面に開口する拡径円筒壁面部を有する収容孔部と、該収容孔部に隣接して穿設され、上、下面に開口する吸引孔を長手方向及び幅方向に沿って交互に複数個備えた上板と、上面に開口し、前記上板の収容孔部に連通する1つの連続した空気供給経路と、一方の端部が該空気供給経路に開口し、他方の端部が下面に開口する1つの連通孔と、一方の端部が前記上板の吸引孔に開口し、他方の端部が下面に開口する空気吸引経路に開口する連通孔とを備えた中板と、該中板の連通孔に開口する空気供給口と、前記中板の空気吸引経路に結合された真空吸引口とを備えた下板とからなり、前記上板の収容孔部には上昇流形成体が装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触搬送装置。
【請求項5】
前記上昇流形成体は、内面に円筒内壁面を有する有底の円筒状基体部と、該円筒状基体部の開口部の周縁に径方向外方に張り出す環状鍔部と、該環状鍔部の外周縁の円周方向に沿い、かつ径方向に相対向して下方に延びる複数個の係合垂下部と、該係合垂下部の下端に外方に突出する係合突起部と、前記円筒状基体部の外周面から円筒内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かう少なくとも1つの流体噴出孔とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触搬送装置。
【請求項6】
前記上昇流形成体は、前記流体噴出孔を1つ備え、該流体噴出孔から噴出した流体は、該円筒状基体部の前記円筒内壁面に衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成することを特徴とする請求項5に記載の非接触搬送装置。
【請求項7】
前記上昇流形成体は、前記円筒状基体部の外周面から前記円筒状内壁面に開口すると共に、先端部が該円筒状基体部の中心に向かって相対向するように2つ設けられた流体噴出孔を備え、該2つの流体噴出孔から噴出した流体は、該流体同士が衝突し、噴霧状に上方に分散して上昇流を形成することを特徴とする請求項5に記載の非接触搬送装置。
【請求項8】
前記上昇流形成体は、前記環状鍔部の外周面を前記搬送用基板の前記上板に形成された前記収容孔部の前記円筒壁面部に圧入嵌合させ、前記係合垂下部の前記係合突起部を前記収容孔部の前記環状肩部に係合させて該収容孔部に装着されることを特徴とする請求項6又は7に記載の非接触搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−176822(P2012−176822A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40247(P2011−40247)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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