説明

非接触通信装置

【課題】アンテナを搭載した基板を筐体内に収容してなる非接触通信装置において、基板や実装部品をより確実に保護し得る構成を提供することを目的とする。
【解決手段】ケース体10に保持される基板4(アンテナを搭載した基板)において、当該基板4の厚さ方向に続く孔部5が形成されており、ケース体10の底壁部11には、孔部5内を貫通すると共に基板4の他方面4bよりも被覆板20側に突出するように突起部12が形成されている。そして、外部からの押圧により被覆板20に対し所定位置よりも基板4側へ押す外力が加わったときに、当該被覆板20が突起部12によって受けられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICカードリーダ等の非接触通信装置では、一般的にアンテナの一方面側が化粧板(被覆板)などによって覆われており、例えば、ユーザがこの化粧板に接近させるようにICカードなどの非接触通信媒体を翳したときに、この非接触通信媒体を内部に設けられたアンテナを介して読み取っている。この構成では、ユーザは化粧板を目印にして非接触通信媒体を装置に読み取らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−58696公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような非接触通信装置では、ICカードなどの非接触通信媒体とアンテナとの間で電波の送受信が良好に行われることが望まれ、装置の周囲に構成される通信可能エリア(電波が送受信可能となるエリア)もより大きく確保することが望まれている。特許文献1の技術は、このような課題に着目したものであり、筐体(5)の内部にカードリーダ全体の動作を制御する本体制御部と、送受信データの変復調を行う無線回路部とを格納し、筐体(5)の外部にループアンテナ(2)を設けるようにしてアンテナの大型化を図りやすくしている。具体的には、樹脂製の取付け枠(6)が設けられ、この取付け枠(6)の内部において、ループアンテナ(2)と磁性体層(11)と導電体層(12)が一体に構成されており、このような取付け枠(6)によってループアンテナ(2)と筐体(5)が壁面に取り付けられるようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにアンテナを筐体外に配置してしまうと、筐体内に収容される基板とは別の部材によってアンテナを保持しなければならないため、部品点数の増加や装置構成の大型化が懸念され、アンテナを筐体内の電子部品と接続するための電気的構成も複雑化してしまうことになる。
【0006】
上記のような問題を解消するためには、アンテナを基板上に実装して他の電子部品との一体化を図り、このようにアンテナを搭載した基板を筐体内に収容して装置構成のスリム化を図ることが望ましい。しかしながら、このように筐体内にアンテナを収容すると、筐体外壁等によって電波が遮断され易くなるため通信性が低下することが懸念される。従って、このように筐体内にアンテナを収容する構造を採用する場合には、通信性を極力低下させないようにするため、アンテナを覆う外壁(被覆板)を極力薄く構成し、アンテナを実装した基板をより外壁(被覆板)に近い位置に配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、アンテナを覆う外壁(被覆板)を薄く構成すると、非接触通信媒体によって外壁(被覆板)を押圧するように翳されたときに、外壁(被覆板)が撓みやすく、この外壁(被覆板)が基板等に接触して劣化や損傷等が生じることが懸念される。また、通信性を向上するためには、アンテナを実装した基板をより外壁(被覆板)に近い位置に配置し、翳される非接触通信媒体により近づけた方が望ましいが、このように基板を外壁(被覆板)に近づけると外壁(被覆板)の撓み変形時に基板に接触しやすくなるため上記問題が一層顕著となる。従って、アンテナを搭載した基板を筐体内に収容する構成では、このような問題を生じ難くすることが求められる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アンテナを搭載した基板を筐体内に収容してなる非接触通信装置において、基板や実装部品をより確実に保護し得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アンテナを搭載した基板と、前記基板の一方面側と対向する底壁部を備え、前記基板を前記底壁部に対して所定位置に位置決めした状態で保持するケース体と、前記基板から離れた位置に配置され、前記基板における前記一方面とは反対面側を覆う構成で前記ケース体に組み付けられる被覆板と、を備えた非接触通信装置であって、前記基板には、当該基板の厚さ方向に連通する孔部が形成され、前記底壁部には、前記孔部内を貫通すると共に前記基板の前記反対面よりも前記被覆板側に突出するように構成される突起部が形成されており、外部からの押圧により前記被覆板に対し所定位置よりも前記基板側へ押す外力が加わったときに、当該被覆板が前記突起部によって受けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、ケース体に保持される基板(アンテナを搭載した基板)において、当該基板の厚さ方向に連通する孔部が形成されており、ケース体の底壁部には、孔部内を貫通すると共に基板の反対面よりも被覆板側に突出するように突起部が形成されている。そして、外部からの押圧により被覆板に対し所定位置よりも基板側へ押す外力が加わったときに、当該被覆板が突起部によって受けられるように構成されている。
この構成によれば、非接触通信媒体が被覆板側に翳されたときに当該非接触通信媒体やユーザの手などによって被覆板が基板側に押圧されたとしても、被覆板が突起部によって受けられて基板側に接近し過ぎなくなるため、被覆板が基板に接触することに起因する劣化や損傷をより確実に防ぐことができる。また、被覆板の形状や基板の配置を設計する上で、被覆板をより薄くしたり、基板をより被覆板側に近づけやすくなるため、上記のように基板を効果的に保護しつつ、通信性をも向上し易くなる。
【0011】
請求項2の発明では、アンテナがループアンテナとして構成されている。
このようにアンテナをループアンテナとして構成すると、アンテナ自体の領域をそれほど広く確保せずとも通信を良好に行うことができる。また、このようにアンテナの領域を大きく確保しなくて済むため、基板内において孔部のスペースを確保しやすくなる。
【0012】
請求項3の発明では、基板には、複数の孔部がアンテナの縁部に沿うように並んで形成されており、底壁部には、複数の突起部が、それぞれ各孔部を介して突出するように形成されている。
この構成によれば、アンテナの縁部に沿って孔部及び突起部を効率的に配置することができる。特に、他部品を実装しにくいアンテナの縁部近傍を孔部や突起部の配置スペースとして効率的に利用することができる。
【0013】
請求項4の発明では、孔部は、基板におけるアンテナの外縁位置よりも内側に形成されている。
この構成によれば、他部品を実装し難いアンテナの内側領域を利用して孔部や突起部を配置することができるため、基板レイアウト上より有利となる。また、アンテナの外側領域にそれほど孔部を設ける必要が無いため、アンテナの外部領域に孔部のためのスペースをそれほど確保せずに済み、孔部や突起部を配置することに起因する基板サイズの大型化をより確実に抑制することができる。
【0014】
請求項5の発明では、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが当接するようになっている。
この構成によれば、自然状態において被覆板と基板とをより近づけることができ、基板がより外側に近い位置となるため、被覆板近くに翳された非接触通信媒体とアンテナとの間でより良好に通信が行われ易くなる。
【0015】
請求項6の発明では、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが所定の隙間を隔てて配置されるようになっている。
このように自然状態において被覆板と突起部との間にある程度隙間を設けるようにすることで、被覆板が突起部に常時押されることがなくなり、被覆板に継続的に負荷がかかりにくくなる。
【0016】
請求項7の発明では、孔部は、基板の板面と平行な所定方向を長手方向とする長孔として構成され、突起部は、当該突起部が孔部に挿入された状態で基板が底壁部に対して所定方向に相対移動したときに孔部内を相対移動するように構成されている。
更に、ケース体には、基板を保持する保持部が形成され、この保持部は、突起部が孔部内において長手方向一方寄りに位置するように基板が第1位置に配されたときに、基板を離脱可能状態とし、突起部が孔部内において長手方向他方寄りの第2位置に位置するように基板が第2位置に配されたときに、基板を離脱不能とするように当該基板と係合するようになっている。
この構成によれば、基板を底壁部に対して所定方向に相対移動するといった簡易な操作で安定的に組み付けることができる。また、ケース体の一部によって保持部が形成され、この保持部を基板と係合させるようにして離脱不能としているため、基板を底壁部に組み付けるために、ねじ等の締結部材を一部削減或いは完全に削減することができ、ネジレス化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1実施形態に係る非接触通信装置を概略的に例示する平面図である。
【図2】図2は、図1の非接触通信装置の基板の固定構造を説明する説明図であり、図2(A)は、基板が第1位置に位置し、保持部から離脱している状態を概略的に示す平面図であり、図2(B)は、基板が第2位置に位置し、保持部に保持された状態を概略的に示す平面図である。
【図3】図3(A)は、図2(A)のA−A断面を概略的に示す断面図であり、図3(B)は、図2(B)のB−B断面を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが当接している構造を説明する説明図であり、図4(A)は、非接触通信媒体が被覆板と接触する前の状態を示し、図4(B)は、非接触通信媒体が被覆板と接触している状態を示している。
【図5】図5は、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが所定の隙間を隔てて配置されている構造を説明する説明図であり、図5(A)は、非接触通信媒体が被覆板と接触する前の状態を示し、図5(B)は、非接触通信媒体が被覆板と接触している状態を示している。
【図6】図6は、本第1実施形態における他の変形例に係る非接触通信装置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の非接触通信装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る非接触通信装置を概略的に例示する平面図である。図2は、図1の非接触通信装置の基板の固定構造を説明する説明図であり、図2(A)は、基板が第1位置に位置し、保持部から離脱している状態を概略的に示す平面図であり、図2(B)は、基板が第2位置に位置し、保持部に保持された状態を概略的に示す平面図である。図3(A)は、図2(A)のA−A断面を概略的に示す断面図であり、図3(B)は、図2(B)のB−B断面を概略的に示す断面図である。図4は、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが当接している構造を説明する説明図であり、図4(A)は、非接触通信媒体が被覆板と接触する前の状態を示し、図4(B)は、非接触通信媒体が被覆板と接触している状態を示している。図5は、被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板と突起部とが所定の隙間を隔てて配置されている構造を説明する説明図であり、図5(A)は、非接触通信媒体が被覆板と接触する前の状態を示し、図5(B)は、非接触通信媒体が被覆板と接触している状態を示している。
【0019】
(全体構成)
図1に示す非接触通信装置1は、例えば、ICカードリーダやその他のRFIDタグリーダライタ等として構成されるものであり、例えば所定の載置面に載置した状態、或いは所定の壁面等に固定された状態で使用可能とされている。この非接触通信装置1は、ICカード等の非接触通信媒体を通信対象とし、電磁波を媒介として非接触通信媒体に記憶された情報を読み取ったり、或いは非接触通信媒体に情報を書き込んだりするように構成されている。
【0020】
図1等に示すように、非接触通信装置1は、ループアンテナ2を搭載した基板4と、基板4を保持するケース体10と、ケース体10に組み付けられる被覆板20とを備えている。
【0021】
ループアンテナ2は、基板4の表側の基板面上において当該基板面に沿って実装されており、非接触通信媒体Cに対して電波を送信したり、或いは非接触通信媒体Cからの電波を受信するように機能している。このループアンテナ2は、例えば、導線を多数回巻回して構成されたアンテナコイルや、基板や絶縁フィルムなどの上にループ状の金属導体がパターニングされたものなどによって構成されている。このループアンテナ2は、基板4又は他の基板などに構成された電気回路(送信回路や受信回路等:図示略)に電気的に接続されており、送信回路によって生成された送信信号を電波信号として出力するように構成されている。また、外部からの電波信号を受信し、受信信号として受信回路に与えるように構成されている。
【0022】
基板4は、ループアンテナ2を保持するとともに、コネクタ、配線パターン、他の電子部品等が配置された構成をなしている。なお、ケース体10の内部には、非接触通信媒体C(図4)との間で行われる非接触通信に関する制御等を行う制御部(図示略)や、制御部の制御に応じて非接触通信媒体Cと非接触通信を行う通信回路(送信回路や受信回路等:図示略)、非接触通信に応じて生成された情報などを記憶するメモリ(図示略)などが配置されており、これらは、基板4に実装されていてもよく、基板4とは異なる基板(例えば、底壁部11の下方に配置される第二の基板等)に実装されていてもよい。
【0023】
そして、基板4には、図2に示すように、当該基板4の厚さ方向に連通する孔部5が8つ形成されている。この孔部5は、基板4に配置されたループアンテナ2の外縁位置(外周の外形位置)よりも内側の領域、即ち、ループアンテナ2のループ内に形成されている。より具体的には、各孔部5はいずれも、環状に構成されるループアンテナ2の内側の縁部(内縁部2a)に寄った位置にそれぞれ配置されており、これら孔部5は、ループアンテナ2の内縁部2aに沿うように(ループアンテナ2のループ形状に沿うように)略等間隔で並んで形成されている。またこれら孔部5は、後述の突起部12に対応する位置にそれぞれ形成されている。そして、各孔部5は、いずれも長手状に構成されており、対応する突起部12が挿入可能となるように、横方向の幅W及び縦方向の長さL(図2では、左上の孔部5aのみ符号を図示)が対応する突起部12の径よりも若干大きく構成されている。
【0024】
なお、いずれの突起部12も、基板4の板面と平行な所定方向(図2の例ではケース体10の長手方向)を長手方向とするように細長に構成されており、各突起部12が各孔部5内に挿入された状態で基板4が底壁部11に対して前記所定方向(即ち、孔部5の長手方向)に相対的に移動されたときに各突起部12が各孔部5内を相対的に移動するようになっている(図2(A)(B)参照)。なお、図2の例では、基板4の板面と平行な方向において、ケース体10の短手方向をX方向、ケース体10の長手方向をY方向としており、各孔部5はいずれもY方向を長手方向とするように長手状に構成されている。なお、以下では、X方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、これら前後方向及び左右方向と直交する方向を上下方向として説明する。
【0025】
ケース体10は、図2及び図3に示すように、箱状に構成されており、ループアンテナ2を搭載した基板4や各種部品等を収容している。このケース体10は、例えば、樹脂材料などによって構成されており、縦方向(図2のY方向)に対をなして配置される前壁部10a及び後壁部10bと、横方向(図2のX方向)に対をなして配置される側壁部10c、10dと、これら前壁部10a、後壁部10b、側壁部10c、10dの下端側に連結される下壁部10eとを備えている。また、下壁部10eよりも上方側(より具体的には、上下方向において後述する被覆板20に寄った側)に底壁部11が形成されている。そして、底壁部11の上方において前壁部10a、後壁部10b、側壁部10c、10dの上端側に、上壁部として機能する被覆板20が配置されている。
【0026】
なお、図3(A)の例では、ケース体10における底壁部11よりも下側の部分を二点鎖線にて概略的に示している。また、図3(A)では、被覆板20の位置を二点鎖線にて仮想的に示している。また、図3(B)、図4、図5では、ケース体10における底壁部11よりも下側の部分を省略して示している。
【0027】
本実施形態では、前壁部10a、後壁部10b、側壁部10c、10dによって前後左右が囲まれ、且つ被覆板20と底壁部11によって上下が囲まれる構成で基板4を収容する第1の収容部が構成されており、底壁部11は、この第1の収容部の底壁として機能している。また、前壁部10a、後壁部10b、側壁部10c、10dによって前後左右が囲まれ、且つ底壁部11と下壁部10eによって上下が囲まれる構成で第2の収容部が構成されており、この第2の収容部には、例えば基板4以外の第2の基板などが設けられている。なお、第1の収容部と第2の収容部に跨るように、基板4と第2の収容部に収容される電子部品とを接続する図示しない配線が設けられている。
【0028】
更に、図2、図3に示すように、底壁部11と一体的に構成され且つ底壁部11の壁面から上方に突出するように8つの突起部12が形成されている。これら8つの突起部12は、基板4が底壁部11に対して所定位置に配置されたときに基板4に形成された8つの孔部5に挿入されるようになっており、これら8つの孔部5の配列に対応するように所定間隔で環状に配置されている。各突起部12はいずれも、基板4が図2、図3に示す所定位置に配置されたときに基板4における対応する孔部5内を貫通するように構成されており、いずれの突起部12も、孔部5を介して基板4の他方面4b(基板4における一方面4aとは反対面)よりも被覆板20側に突出するように配置されている。
【0029】
また、図2(B)、図3(B)のように基板4が係止片13及び当接壁15によって保持されているときには、8つの突起部12が8つの孔部5にそれぞれ挿入された状態で、各突起部12の幅方向両側が各孔部5の内壁に当接するようになっており、これにより、底壁部11に対する基板4の幅方向の相対移動が規制されるようになっている(即ち、基板4の幅方向の位置が定められるようになっている)。また、各突起部12は、基板4の孔部5を挿通させやすいように、先端側となるにつれて細くなるように先細り形状とされている。
【0030】
更に、ケース体10の底壁部11には、基板4がケース体10の内部の所定位置に配置されたときに基板4の側部に当接するように配置される2つの当接壁15が設けられている。これら当接壁15は、基板4が図2(A)、図3(A)に示す位置から図2(B)、図3(B)に示す位置にスライドしたときに、基板4の後端部に隣接するように配され、基板4がそのスライド方向とは反対側(図2(A)に示す白抜き矢印とは反対側)に移動することを規制するストッパーとして機能している。これら当接壁15は、「保持部」の一要素として機能しており、後述する係止片13と共に、基板4をケース体10に固定するように構成されている。
【0031】
なお、この当接壁15の大きさや形状などは、ケース体10の大きさに合わせて適宜変更することができる。例えば、図3等に示す例では、当接壁15が基板4の後端部のみに当接する構造を示したが、当接壁15を係合爪として構成し、底壁部11から上方に突出すると共に先端部において前方側に突出する係止部を設けるようにしてもよい。この場合、当接壁15の基端側が基板4の後端部に当接することとなり、当接壁15の先端側が基板4の他方面4bに当接して係止するように機能する。
【0032】
さらに、図2に示すように、ケース体10には、4つの係止片13が形成されており、これら4つの係止片13は、一対の側壁部10c、10dと一体的に設けられている。具体的には、横方向一方側に係止片13a、13bが形成され、係止片13aは側壁部10cの前端寄りに形成され、係止片13bは、側壁部10cの後端寄りに形成されている。また、横方向他方側に係止片13c、13eが形成され、係止片13cは側壁部10dの前端寄りに形成され、係止片13eは、側壁部10dの後端寄りに形成されている。各係止片13は、ケース体10の四隅に近い位置にそれぞれ配置され、底壁部11から基板4の厚さ程度を隔てた位置においてケース体10の側壁部からそれぞれ立設している。図2(A)、図3(A)の状態(第1位置の状態)から基板4を前方側にスライドさせ、図2(B)、図3(B)に示す第2位置に至ったときには、底壁部11と係止片13aの間、及び底壁部11と係止片13cの間に基板4の前端側両側部がそれぞれ挟まれ、更に、底壁部11と係止片13bの間、及び底壁部11と係止片13dの間に基板4の後端側両側部がそれぞれ挟まれるようになっている。これにより、基板4の上下方向(厚さ方向)の相対移動が拘束されることになる。また、ケース体10には、基板4が第2位置となったときに基板4の前端部に当接して当該基板4がそれ以上前方側に移動しないように規制する図示しないストッパー部が設けられており、基板4の後端部は上述の当接壁15によって後方側への移動が規制されるようになっているため、第2位置では基板4の前後方向の移動も拘束されることになる。
本実施形態では、上述の当接壁15と係止片13が「保持部」の一例に相当しており、図2(A)、図3(A)のように突起部12が孔部5内において長手方向一方寄りに位置するように基板4が第1位置に配されたときに基板4を離脱可能状態とし、図2(B)、図3(B)のように突起部12が孔部5内において長手方向他方寄りの第2位置に位置するように基板4が第2位置に配されたときに基板4を離脱不能とするように当該基板4と係合するようになっている。
【0033】
被覆板20は、非接触通信装置1の情報を装飾する化粧板として構成され且つケース体10の開口(具体的には上述の第1収容部の開口)を覆う蓋として機能しており、例えば、ケース体10と同材質の樹脂材料又はケース体10と異材質の樹脂材料などによって構成され、底壁部11から離れた位置であって且つ基板4の他方面4bから離れた位置において底壁部11とほぼ平行に配置されている。この被覆板20はループアンテナ2を全体的に覆い、基板4をも全体的に覆うように配置されており、ICカード等の非接触通信媒体Cが翳されたときにこの非接触通信媒体Cがループアンテナ2や基板4の他部分に直接接触しないように保護している。さらに、被覆板20の外表面(ループアンテナ2と対向する面とは反対面)には、図1に示すように、ユーザに非接触通信媒体Cをこの被覆板20側へ接近させるように促すメッセージ(例えば、「Touch Your Card」)が印刷されている。
【0034】
この被覆板20は、図4(A)に示すように、当該被覆板20に外部からの押圧が加わっていない自然状態において、被覆板20と突起部12とが当接するように構成することができる。この構成では、図4(B)に示すように、非接触通信媒体Cなどによって被覆板20を基板4側に押すような押圧が加わったとしても、被覆板20は、突起部12によって支持され続けるため、被覆板20の基板4側への撓み変形や小さく抑えられることになる。また、このように被覆板20が基板4側へある程度撓み変形しても、基板4に接触する位置まで撓み変形するような事態は生じ難いため、基板4を安定的に保護することができる。
【0035】
また、被覆板20は、図5(A)に示すように、当該被覆板20に外部からの押圧が加わっていない自然状態において、被覆板20と突起部12とが所定の隙間を隔てて配置されるように構成されていてもよい。この場合、非接触通信媒体Cなどによって被覆板20を基板4側に押すような押圧が加わると、被覆板20は、基板側へ撓み変形し、図5(B)に示すように、ある程度撓み変形した時点で突起部12に接触することになる。そして、この突起部12によって支持され続けるため、被覆板20がそれ以上基板4側に大きく撓み変形することが抑えられることになる。
【0036】
(基板の固定構造)
次に、基板4の固定構造について、図2及び図3を用いて、より具体的に説明する。
まず、基板4の各孔部5がケース体10の各突起部12に挿通され、基板4が底壁部11に載置されると、図2(A)及び図3(A)に示すようになり、基板4の一端側(図3(A)において右側)が当接壁15の上に乗り上がって浮いた状態となる。この状態では、図2(A)に示すように、突起部12が孔部5内において長手方向一方寄り((図2において紙面の上方寄り)の位置(第1位置)にあり、基板4は、係止片13に対して離脱可能となっている。
【0037】
そして、第1位置の状態から、図2(A)及び図3(A)に示す白抜き矢印方向へ基板4をスライドさせると(基板4が底壁部11に対して所定方向に相対移動すると)、突起部12が孔部5内を相対移動して、図2(B)及び図3(B)に示す状態となる。この状態では、図2(B)に示すように、突起部12が孔部5内において長手方向他方寄り(図2において紙面の下方寄り)の位置(第2位置)にあり、基板4が係止片13と係合すると共に、基板4の一端側が当接壁15と当接する。そして、基板4は係止片13に対して離脱不能となり、ケース体10に固定されることとなる。
【0038】
(第1実施形態の主な効果)
以上説明したように、本第1実施形態に係る非接触通信装置1では、ケース体10に保持される基板4(アンテナを搭載した基板)において、当該基板4の厚さ方向に続く孔部5が形成されており、ケース体10の底壁部11には、孔部5内を貫通すると共に基板4の他方面4b(反対面)よりも被覆板20側に突出するように突起部12が形成されている。そして、外部からの押圧により被覆板20に対し所定位置よりも基板4側へ押す外力が加わったときに、当該被覆板20が突起部12によって受けられるように構成されている。
この構成によれば、非接触通信媒体Cが被覆板20側に翳されたときに被覆板20が基板4側に押圧されたとしても、被覆板20が突起部12によって受けられて基板4側に接近し過ぎなくなるため、被覆板20が基板4に接触することに起因する劣化や損傷をより確実に防ぐことができる。また、被覆板20の形状や基板4の配置を設計する上で、被覆板20をより薄くしたり、基板4をより被覆板20側に近づけやすくなるため、上記のように基板4を効果的に保護しつつ、通信性をも向上し易くなる。
【0039】
また、上述の非接触通信装置1では、基板4に保持されるアンテナがループアンテナ2として構成されている。
このようにアンテナをループアンテナ2として構成すると、アンテナ自体の領域をそれほど広く確保せずとも通信を良好に行うことができる。また、このようにアンテナの領域を大きく確保しなくて済むため、基板4内において孔部5のスペースを確保しやすくなる。
【0040】
また、基板4には、複数の孔部5がループアンテナ2の縁部に沿うように並んで形成されており、底壁部11には、複数の突起部12が、それぞれ各孔部5を介して突出するように形成されている。
この構成によれば、ループアンテナ2の縁部に沿って孔部5及び突起部12を効率的に配置することができる。特に、他部品を実装しにくいループアンテナ2の縁部近傍を孔部5や突起部12の配置スペースとして効率的に利用することができる。
【0041】
また、孔部5は、基板4におけるループアンテナ2の外縁位置よりも内側に形成されている。
この構成によれば、他部品を実装し難いループアンテナ2の内側領域を利用して孔部5や突起部12を配置することができるため、基板レイアウト上より有利となる。また、ループアンテナ2の外側領域にそれほど孔部5を設ける必要が無いため、ループアンテナ2の外部領域に孔部5のためのスペースをそれほど確保せずに済み、孔部5や突起部12を配置することに起因する基板サイズの大型化をより確実に抑制することができる。
【0042】
また、被覆板20に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板20と突起部12とが当接するようになっている。
この構成によれば、自然状態において被覆板20と基板4とをより近づけることができ、基板4がより外側に近い位置となるため、被覆板20近くに翳された非接触通信媒体Cとループアンテナ2との間でより良好に通信が行われ易くなる。
【0043】
また、被覆板20に外部からの押圧が加わっていない自然状態において被覆板20と突起部12とが所定の隙間を隔てて配置する構成とすることもできる。
このように自然状態において被覆板20と突起部12との間にある程度隙間を設けるようにすることで、被覆板20が突起部12に常時押されることがなくなり、被覆板20に継続的に負荷がかかりにくくなる。
【0044】
また、孔部5は、基板4の板面と平行な所定方向を長手方向とする長孔として構成され、突起部12は、基板4が底壁部11に対して所定方向に相対移動したときに孔部5内を相対移動するように構成されており、更に、ケース体10には、基板4を保持する係止片13が形成され、係止片13は、突起部12が孔部5内において長手方向一方寄りの第1位置にあるときに、基板4を離脱可能状態とし、突起部12が孔部5内において長手方向他方寄りの第2位置にあるときに、基板4を離脱不能とするように当該基板4と係合するようになっている。
この構成によれば、基板4を底壁部11に対して所定方向に相対移動するといった簡易な操作で安定的に組み付けることができる。また、ケース体10の一部によって係止片13が形成され、この係止片13を基板4と係合させるようにして離脱不能としているため、基板4を底壁部11に組み付けるために、ねじ等の締結部材を一部削減或いは完全に削減することができ、ネジレス化を図る上で有利となる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
上記実施形態では、アンテナがループアンテナ2より構成された例を示したが、アンテナはループアンテナ2に限定されず、例えば、図6に示すように、平面状のパッチアンテナ30から構成されていてもよい。この場合、基板4の孔部5及びケース体10の突起部12は、パッチアンテナ30の周囲に配置されるようにするとよい。なお、図6の構成は、ループアンテナ2をパッチアンテナ30に変更した点が形態として異なっており、それ以外は第1実施形態と同一の形態となっている。
【0047】
上記実施形態では、アンテナがループアンテナとして構成され、複数の孔部5がループアンテナの内縁部2aに沿うように並んで形成され、底壁部11において複数の突起部5が、それぞれ各孔部5を介して突出するように形成された例を示したが、この例に限られない。例えば、ループアンテナ2を若干小さく構成し、複数の孔部5がループアンテナの外縁部2bに沿うように並んで形成されるようにしてもよい。この場合でも、底壁部11において複数の突起部5が、それぞれ各孔部5を介して突出するように形成されることになる。また、図6のようにパッチアンテナを用いる場合でも、複数の孔部5がパッチアンテナの外縁部に沿うように並んで形成されるようにしてもよく、この場合でも、底壁部11において複数の突起部5が、それぞれ各孔部5を介して突出するように形成されることになる。
【0048】
図1等の例では、複数の孔部5がアンテナの外縁よりも内側領域に配置される例を示し、図6等の例では、複数の孔部5がアンテナの外縁よりも外側領域に配置される例を示したが、複数の孔部がアンテナの内側領域及び外側領域にそれぞれ形成されていてもよい。
【0049】
上記実施形態では、4つの係止片13で基板4を保持している構成を示したが、基板4を保持できる構成であれば、係止片13の数はこれに限定されない。
【0050】
上記実施形態では、8つの孔部5及び突起部12が設けられた構成を示したが、孔部5及び突起部12の数はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0051】
1…非接触通信装置
2…ループアンテナ(アンテナ)
4…基板
4a…一方面
4b…他方面(反対面)
5…孔部
10…ケース体
11…底壁部
12…突起部
13…係止片(保持部)
14…側壁部
15…当接壁(保持部)
20…被覆板
30…パッチアンテナ(アンテナ)
C…非接触通信媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを搭載した基板と、
前記基板の一方面側と対向する底壁部を備え、前記基板を前記底壁部に対して所定位置に位置決めした状態で保持するケース体と、
前記基板から離れた位置に配置され、前記基板における前記一方面とは反対面側を覆う構成で前記ケース体に組み付けられる被覆板と、
を備えた非接触通信装置であって、
前記基板には、当該基板の厚さ方向に連通する孔部が形成され、
前記底壁部には、前記孔部内を貫通すると共に前記基板の前記反対面よりも前記被覆板側に突出するように構成される突起部が形成されており、
外部からの押圧により前記被覆板に対し所定位置よりも前記基板側へ押す外力が加わったときに、当該被覆板が前記突起部によって受けられることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項2】
前記アンテナがループアンテナとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記基板には、複数の前記孔部が前記アンテナの縁部に沿うように並んで形成されており、
前記底壁部には、複数の前記突起部が、それぞれ各孔部を介して突出するように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触通信装置。
【請求項4】
前記孔部は、前記基板における前記アンテナの外縁位置よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項5】
前記被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において前記被覆板と前記突起部とが当接していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項6】
前記被覆板に外部からの押圧が加わっていない自然状態において前記被覆板と前記突起部とが所定の隙間を隔てて配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項7】
前記孔部は、前記基板の板面と平行な所定方向を長手方向とする長孔として構成され、
前記突起部は、当該突起部が前記孔部に挿入された状態で前記基板が前記底壁部に対して前記所定方向に相対移動したときに前記孔部内を相対移動するように構成されており、
更に、前記ケース体には、前記基板を保持する保持部が形成され、
前記保持部は、前記突起部が前記孔部内において長手方向一方寄りに位置するように前記基板が第1位置に配されたときに、前記基板を離脱可能状態とし、前記突起部が前記孔部内において長手方向他方寄りの第2位置に位置するように前記基板が第2位置に配されたときに、前記基板を離脱不能とするように当該基板と係合することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の非接触通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47897(P2013−47897A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186143(P2011−186143)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】