説明

非接触電力伝送装置

【課題】 通信回路を保護する為の保護回路を簡素化し、製造コストを削減した、伝送効率の良い非接触電力伝送装置を提供すること。
【解決手段】 非接触で電力伝送および通信を行う非接触電力伝送装置1であり、送電装置2は送電コイル5と、電力伝送部7と、通信処理部8と、制御部9と、半導体スイッチ4と、共用整合部6を備え、受電装置3は受電コイル15を備えている。半導体スイッチ4は通信処理部8に直列に接続され、通信処理部8と電力伝送部7は並列に接続される。また、送電コイル5は共用整合部6を介して電力伝送部7および半導体スイッチ4に接続され、制御部9は電力伝送部7と通信処理部8に接続される。半導体スイッチ4は受電装置3との通信処理時に導通し、電力伝送時にスイッチが切れ、電力伝送部7と通信処理部8を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁結合や電磁界共鳴を利用して、非接触で電力伝送とデータ通信を行う、非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化に伴い、携帯電話や携帯型音楽プレーヤ等に代表される携帯電子機器は、小型化や軽量化が図られ、広く普及している。更に近年、携帯電子機器は多機能化および高速処理化が図られ、それに伴い携帯電子機器が必要とする電力量が増加傾向にある。しかし、一般的な携帯電子機器は、内蔵した二次電池に充電した電力により駆動しており、二次電池の電力が不足する度に二次電池を充電する構成のものが多い。
【0003】
最近では、電磁誘導や磁気共鳴の原理を利用し、金属接点がなくても電力伝送を可能にする非接触電力伝送技術を用いた非接触電力伝送装置の需要が高まっている。非接触電力伝送技術は、電気的接点を必要としないため、感電や短絡の危険性がないことに加えて、接点不良がないことや耐久性に優れるといった特徴を有している。
【0004】
非接触電力伝送装置は誤動作等の防止や効率の良い電力伝送のために、受電装置の認証情報や充電容量などの制御情報を送電装置側と受電装置側間で通信する必要がある。そのため、一般的には、送電装置と受電装置間で認証情報や制御情報等の情報通信を行い、送電装置側で受電装置が適合機器であるか等の確認を行った後に、電力伝送を行っている。
【0005】
このような処理を行う従来の構成として、電力伝送処理と通信処理とを1つのコイルで行う非接触電力伝送装置がある。しかし、1つのコイルで電力伝送処理と通信処理とを行う構成の場合、充電のための電力は通信信号に比べて大電力であるため、充電電力によって通信処理用の回路を破壊する可能性があった。
【0006】
その対策として、従来は、充電電力から通信処理回路を保護するために通信処理回路に保護回路を介在させていた。このように、大電力から通信回路を保護するための保護回路を介在させた構成としては、例えば、特許文献1に開示された方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−348837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術のように通信回路を保護する為の保護回路を介在させた構成とすると、回路構成が煩雑化し、製造コストが増大するという課題があった。
【0009】
そこで本発明は、通信回路を保護する為の保護回路を簡素化し、製造コストを削減した、伝送効率の良い非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明による非接触電力伝送装置は、送電コイルを有する送電装置と、前記送電コイルに磁気的に結合する受電コイルを有する受電装置とからなる非接触電力伝送装置であり、前記送電装置はさらに、電力伝送部と、通信処理部と、制御部と、半導体スイッチと、共用整合部とを備え、前記共用整合部は前記電力伝送部に接続され、前記半導体スイッチの一端は前記共用整合部と前記電力伝送部の間に接続され、前記半導体スイッチの他端は前記通信処理部と接続され、前記送電コイルは前記共用整合部を介して前記電力伝送部および前記半導体スイッチに接続され、前記制御部は前記通信処理部と前記電力伝送部に接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による非接触電力伝送装置は、前記共用整合部は、前記共用整合部の入力インピーダンスと、前記電力伝送部及び前記通信処理部の出力インピーダンスを等価にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成により、通信回路を保護する為の保護回路を簡素化し、製造コストを削減した、伝送効率の良い非接触電力伝送装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の動作を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の電力伝送部と通信処理部の動作を示す状態遷移図である。
【図4】本発明の実施例による送電装置の整合部の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態による非接触電力伝送装置1は送電装置2と受電装置3から構成される。送電装置2は、電力を送電する電力伝送部7と、通信を行う通信処理部8と、電力伝送部7と通信処理部8とを切り換える半導体スイッチ4と、電力伝送部7と通信処理部8と半導体スイッチ4の制御を行う制御部9と、共用整合部6と、電力伝送および受電装置3と通信信号の送受信を行う送電コイル5とを備えている。
【0016】
さらに、電力伝送部7は、充電電力を送電する充電アンプ10と、そのインピーダンス整合を行う充電用整合部11とを有し、通信処理部8は、通信信号を送信する通信アンプ12と、そのインピーダンス整合を行う通信用整合部13と、受電装置3が返信した通信信号を受信する受信部14を有している。
【0017】
また、本実施の形態による非接触電力伝送装置の受電装置3は、送電装置2からの電力を受電し、送電装置2と通信信号の送受信を行う受電コイル15と、二次電池17と、受電した電力を二次電池17に充電する為の充電部16と、通信信号の制御を行う通信部18とを備えている。
【0018】
送電コイル5は、受電コイル15と磁気的に結合して受電装置3に電力を送電するとともに、送電装置2と受電装置3間で通信信号の送受信を行う。
【0019】
ここで、一般的に半導体スイッチは、導通時に大電流を流すと発熱する可能性や、破損する恐れがある。よって、大電流による半導体スイッチ4の発熱や破損を防止するため、半導体スイッチ4は通信処理部8に直列に接続し、電力伝送部7に対して並列に接続することが望ましい。
【0020】
共用整合部6は、インピーダンス変換回路にて構成され、送電コイル5のインピーダンスを下げ、半導体スイッチ4への印加電圧を下げる。これにより、半導体スイッチ4との接続部である共用整合部6の入力側は、送電コイル5との接続部である共用整合部6の出力側より電圧を下げられる。
【0021】
ここで、一般的に、半導体スイッチが切られた状態で高電圧を印加すると、半導体スイッチが破損する恐れがある。そのため、共用整合部6を半導体スイッチ4と送電コイル5の間に介在させて、送電コイル5のインピーダンスを下げる。送電コイル5のインピーダンスが下がることで、半導体スイッチ4への印加電圧が下がり、半導体スイッチ4の破損を防止できる。
【0022】
充電用整合部11は、インピーダンス変換や高周波ノイズ除去または直流除去などのフィルタ回路等で構成され、充電アンプ10のインピーダンスと送電コイル5のインピーダンスを整合させる。
【0023】
通信用整合部13は、インピーダンス変換や高周波ノイズ除去または直流除去などのフィルタ回路等で構成され、通信アンプ12のインピーダンスと送電コイル5のインピーダンスを整合させる。
【0024】
また、共用整合部6を介在させることによって、充電用整合部11および通信用整合部13の出力インピーダンスと共用整合部6の入力インピーダンスを等価にし、充電電力および通信信号の伝送損失を抑制できる。
【0025】
電力伝送と通信信号の送受信を共通のアンテナで行う構成において、通信回路を保護するための保護回路として、半導体スイッチを一つ組み込むことで、電力伝送部と通信処理部の切り換えを行うことができ、従来技術に比べて保護回路の簡素化が可能となり、製造コストが削減できる。
【0026】
本発明の非接触電力伝送装置において、半導体スイッチの代わりにメカニカルリレーを用いる事もできる。メカニカルリレーは機械的接点で構成されるスイッチであるため、導通時の抵抗が微小であり、電力伝送部に直列に接続することもできる。しかし、スイッチング速度が高速で、接点磨耗がないため寿命が長く、無接点のためにスイッチの入り切り時のノイズが抑制でき、さらに小型および軽量で実装性に優れる半導体スイッチが望ましい。半導体スイッチまたはメカニカルリレーの使用は目的に応じて適宜選択すれば良い。また、半導体スイッチは、電界効果トランジスタやフォトリレーを用いることが好ましい。
【0027】
ここで、受電装置側のアンテナとして、充電と通信を共通のコイルで行う1つのアンテナ構成としたが、充電用と通信用のそれぞれのアンテナとして2つのアンテナ構成としても良い。
【0028】
図2は本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の動作を示すフロー図である。本発明による非接触電力伝送装置は、主として識別情報取得処理と電力送電処理の2つの処理が行われることにより動作する。
【0029】
図3は本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置の電力伝送部と通信処理部の動作を示す状態遷移図である。図2で示したフローチャートの処理を実施したときの、電力伝送部と通信処理部の動作の一例を示すタイミング図である。
【0030】
図2、図3に示すように、送電装置2は、受電装置3が送電範囲内に載置されているかを確認するために、所定の間隔を置き、受電装置3の識別情報問い合わせ信号を送信する識別情報取得処理を行う。識別情報問い合わせ信号に対する応答がない場合は、一定の時間を置いて識別情報問い合わせ信号を繰り返し送信する。識別情報問い合わせ信号に対する応答を受信した場合、送電装置2は電力送電処理へ移行する。
【0031】
ここで、識別情報問い合わせ信号は送電装置2の制御部9から出力され、通信アンプ12、通信用整合部13および半導体スイッチ4を介して共用整合部6を通り、送電コイル5から受電装置3に送信される。識別情報問い合わせ信号を受信した受電装置3は、通信部18で応答信号を生成するなどの処理を行い、送電開始が可能であることを示す通信信号を、受電コイル15を介して送電装置2に返信する。送電装置2では送電コイル5で受信した受電装置3からの通信信号を、共用整合部6、半導体スイッチ4、受信部14を介して制御部9に伝達する。この時、半導体スイッチ4は導通状態である。
【0032】
電力送電処理では、二次電池17の充電容量を確認するための充電容量確認信号を、識別情報問い合わせ信号と同様の方法で受電装置3へ送信する。その後、送電装置2は受電装置3からの返信される充電容量を取得して、二次電池17の充電が満充電であるかの判断を行い、不十分の場合は電力を所定の時間だけ送電し、再び充電容量確認信号を送信する処理を繰り返す。
【0033】
この時、充電容量が満充電であると判断した場合は、送電装置2は電力送電処理をスキップして識別情報取得処理へ移行する。二次電池17が満充電の状態である場合、受電装置3は送電装置2へ信号を送信する代わりに、送電装置2の識別情報問い合わせ信号に応答しないという処理を行わせても良い。
【0034】
ここで、電力の送電は、送電装置2の制御部9から出力され、充電アンプ10及び充電用整合部11を介して共用整合部6を通り、送電コイル5から受電装置3に送電される。この時、半導体スイッチ4は切られており、充電電力が通信処理部8に回り込むのを防止することができる。
【0035】
受電装置3では、充電部16で送電された電力から直流電力を生成する整流化等の処理を行い、二次電池17を充電する。
【0036】
図3からもわかるように、識別情報取得処理時には、識別情報問い合わせ信号を送信して、その応答を受信するために、半導体スイッチ4は導通状態となっている。また、電力送電処理時には、充電容量確認信号を送信してその応答を受信する間は、半導体スイッチ4が導通状態となり通信処理部8が動作する。そして、電力伝送時は半導体スイッチ4が切られて電力伝送部7が動作する。
【実施例】
【0037】
図4は本発明の実施例による送電装置の整合部の一例を示す回路図である。
【0038】
電力伝送部は、直流除去のための充電用カップリングコンデンサ25と、高周波ノイズ除去のためのローパスフィルタ26(LPF)から成る充電用整合部23と、充電電力を伝送するための充電アンプ21とから構成した。
【0039】
通信処理部は、直流除去のための通信用カップリングコンデンサ27と、通信アンプ22の出力部と送電コイル31のインピーダンスを等価とするためにインピーダンス変換部28から成る通信用整合部24と、通信信号を送信するための通信アンプ22とから構成した。
【0040】
共用整合部29は、送電コイル31のインピーダンスを下げるためのコンデンサにより構成した。
【0041】
半導体スイッチ30は通信処理部に直列に接続し、通信処理部と半導体スイッチは電力伝送部に対して並列に接続した。さらに、電力伝送部と通信処理部との接続部と送電コイル31の間に共用整合部29を接続した。
【0042】
送電コイル31はインダクタンスLが586nHで抵抗Rが1Ωとした。この場合、充電電力および通信信号の周波数が13.56MHzで、送電コイルアンテナのインピーダンスは1+j50Ωであった。
【0043】
共用整合部29のコンデンサの容量を240pFとすることで、共用整合部29と送電コイル31のインピーダンスは1+j1Ωに低下した。
【0044】
充電用整合部23は、フィルタを複数用いて多段にしてもよいし、充電アンプ21の出力部と送電コイル31のインピーダンスを等価にするためにインピーダンス変換回路を追加してもよく、必要に応じて適宜決定すればよい。また、通信用整合部24は高周波ノイズ除去等のフィルタ回路を追加してもよい。
【0045】
充電用整合部23にローパスフィルタ26のような、GND(グランド)に並列接続される素子がある場合、通信信号送信時、通信アンプ22の出力部と送電コイル31のインピーダンスを等価とさせる等価回路に充電用整合部23の素子が含まれてしまうため、充電用整合部23を考慮してインピーダンスを合わせる必要がある。
【0046】
充電アンプ21の構成は特に制限しないが、電解効果トランジスタで構成したスイッチングアンプが好ましい。また、通信アンプ22の構成は特に制限しないが、バイポーラトランジスタで構成したリニアアンプが好ましい。
【0047】
以上より、通信回路を保護する為の保護回路を簡素化し、製造コストを削減した、伝送効率の良い非接触電力伝送装置が得られる。
【0048】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正、フローチャートの変更が可能である。例えば、共用整合部、充電用整合部および通信用整合部の回路設計は、充電電力および通信信号の周波数に応じて、適宜決定すれば良い。すなわち、当業者であれば成し得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 非接触電力伝送装置
2 送電装置
3 受電装置
4、30 半導体スイッチ
5、31 送電コイル
6、29 共用整合部
7 電力伝送部
8 通信処理部
9 制御部
10、21 充電アンプ
11、23 充電用整合部
12、22 通信アンプ
13、24 通信用整合部
14 受信部
15 受電コイル
16 充電部
17 二次電池
18 通信部
25 充電用カップリングコンデンサ
26 ローパスフィルタ
27 通信用カップリングコンデンサ
28 インピーダンス変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルを有する送電装置と、前記送電コイルに磁気的に結合する受電コイルを有する受電装置とからなる非接触電力伝送装置であり、前記送電装置はさらに、電力伝送部と、通信処理部と、制御部と、半導体スイッチと、共用整合部とを備え、前記共用整合部は前記電力伝送部に接続され、前記半導体スイッチの一端は前記共用整合部と前記電力伝送部の間に接続され、前記半導体スイッチの他端は前記通信処理部と接続され、前記送電コイルは前記共用整合部を介して前記電力伝送部および前記半導体スイッチに接続され、前記制御部は前記通信処理部と前記電力伝送部に接続されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記共用整合部は、前記共用整合部の入力インピーダンスと、前記電力伝送部および前記通信処理部の出力インピーダンスを整合させることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−90514(P2013−90514A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231197(P2011−231197)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)