説明

非接触電力供給装置

【目的】 受電側の負荷に変動が生じた場合でも、給電側発振回路に供給する交流周波数と受電側共振回路の共振周波数を同調させることができ、極めて効率よく安定して電力を供給できる非接触電力供給装置を提供する。
【構成】 受電側には、受電側共振コイルL3に共振コンデンサC3を並列接続した共振回路3を設け、給電側には、受電側共振回路3の共振周波数を検出する検出コイルL2と、該検出コイルL2が検出する誘導起電力の周波数に応じて上記給電側発振回路2に供給する交流周波数を上記受電側共振回路3の共振周波数に同調させる制御手段1を設けた。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、充電池を備えた電子機器などに電磁誘導により非接触で電力を供給する非接触電力供給装置に関する。
【従来の技術】従来より、電磁誘導により電力を供給する方法として、例えば、特開平3−98432号公報に開示されているような方法が提案されている。この方法に用いる装置の構成は、図5に示すような構成になっている。すなわち、給電側には、発振器B3に給電側発振コイルL6を接続した給電側発振回路6と、共振コンデンサC6を共振コイルL7に並列に接続した給電側共振回路7とが独立して構成されている。そして、受電側には、受電側共振コイルL8に共振コンデンサC7を並列に接続した受電側共振回路8と、ブリッジD3とコンデンサC8とから成る整流平滑回路9が構成されている。そして、給電側共振回路7の共振周波数と受電側共振回路8の共振周波数に近くなるようにあらかじめ設定された周波数で給電側発振回路6を発振させることにより、給電側発振回路6と給電側共振回路7および受電側共振回路8とほぼ同一の周波数で共振し、効率よく電力を伝達できる装置が開示されている。
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような装置では、給電側共振回路7の共振周波数および受電側共振回路8の共振周波数は、それぞれ独立に決まっており、給電側発振回路の発振周波数も独立に固定されていた。そのため、受電側の負荷の変動すると、受電側の共振回路8の共振周波数が変化し、給電側発振回路6および給電側共振回路7が受電側共振回路8と同調できなくなる。その結果、供給できる電力が大きく減少し、安定して十分な電力を供給することができないという問題点があった。そこで本発明の目的は、上記のような受電側の負荷に変動が生じた場合でも、給電側発振回路の発振周波数と受電側共振回路の共振周波数を同調させることができ、極めて効率よく安定して電力を供給できる非接触電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】給電側の発振回路の電力を給電側コイルから該給電側コイルに対向する受電側コイルに電磁誘導により非接触で供給する電力供給装置において、上記受電側コイルに並列接続した共振コンデンサと、受電側の共振周波数を検出する検出コイルと、該検出コイルが検出する誘導起電力の周波数に応じて上記給電側コイルに供給する電力の交流周波数を上記受電側コイルの共振周波数に同調させる制御手段とを備えたことを特徴としている。
【作用】制御手段の検出コイルが、受電側コイルの共振周波数を電磁誘導による誘導起電力として検出し、該誘導起電力の周波数に応じて受電側コイルに供給する電力の交流周波数を受電側コイルの共振周波数と一致するように制御する。その結果、受電側の共振周波数と給電側に供給する交流周波数とは、受電側の負荷が変化して受電側共振回路の共振周波数が変化しても、その都度該共振周波数に追随して同調することができる。
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例の構成図、図2は本実施例を機器内に搭載した例の要部断面図、図3は図1の実施例の間隔dを変えて受電側の出力電圧と出力電流の関係を示した測定図、図4は図1の実施例の間隔dを変えて受電側の出力電流と電力の伝達効率との関係を示した測定図である。まず、図1に基づいて本実施例の非接触電力供給装置の構成を説明する。本実施例は、給電部Sと受電部Rとから構成されており、図1に示した回路構成のうち、右側の回路が給電部Sで、左側の回路が受電部Rである。そして、給電部Sは、電源B1と、周波数制御回路1を含む給電側発振回路2とから構成されており、受電部Rは、受電側共振回路3と整流回路4および平滑回路5とから構成されている。上記給電側発振回路2の発振コイルL1の中性点aにはコイルL4を介して電源B1の正電極が接続されており、電源B1からの電力が供給されている。そして上記発振コイルL1の上端点bおよび下端点cには並列に接続されたコンデンサC1を介して周波数制御回路1に接続されている。そして上記周波数制御回路1は、検出コイルL2,トランジスタQ1,トランジスタQ2,抵抗R1,抵抗R2で構成されている。トランジスタQ1およびトランジスタQ2のそれぞれのエミッタは発振コイルL1の上端点bまたは下端点cに、それぞれのコレクタは共に電源Bの負電極に、そしてそれぞれのベースは検出コイルL2の異なる端点とそれぞれ抵抗R1またはR2を介して電源B1の正電極に接続されている。それから、受電部Rは、受電側共振回路3と、整流回路4および平滑回路5から構成されている。上記受電側共振回路3は、受電側共振コイルL3に共振コンデンサC3を並列に接続して構成されている。上記整流回路4および平滑回路5は、一般にチョーク・インプット型整流方式と呼ばれているもので、整流回路4は、ダイオードD1およびダイオードD2を受電側共振コイルL3の上端点eおよび下端点fとチョークコイルL5との間に接続して構成されており、平滑回路5は、チョークコイルL5をダイオードD1およびダイオードD2と負荷抵抗R3との間に接続し、平滑コンデンサC4を負荷抵抗R3に並列に接続して構成されている。図2はこの回路を機器に搭載した要部断面図で、給電側コアFsと受電側コアFrとが対向するように置かれており、給電側コアFsには給電側発振コイルL1と検出コイルL2とが巻かれており、受電側コアFrには受電側共振コイルL3が巻かれている。次に、上記構成の回路の動作について説明する。まず、図1の回路の給電部Sの発振回路2の動作について説明する。電源B1の電圧が抵抗R1またはR2を介してトランジスタQ1およびQ2のベースに印加され、トランジスタQ1またはQ2のうちhFEの高い方のトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間が導通する。すると、給電側発振コイルL1の中性点aから上端点bの方向に電流が流れ、その方向に磁束ができる。このとき検出コイルL2に、給電側発振コイルL1に生じた磁束により上記方向とは逆向きの誘導起電力が発生する。すると、トランジスタQ1のベースの電位がローレベルに、トランジスタQ2のベースの電位がハイレベルになり、トランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間が導通しなくなり、トランジスタQ2のエミッタ−コレクタ間が導通するようになる。すると今度は、前記方向とは逆向きの方向、すなわち中性点aから給電側発振コイルL1の下端点cの方向に電流が流れ、その同じ方向に磁束が発生する。その磁束により検出コイルL2に前記と逆向きの誘導起電力が生じ、トランジスタQ2をOFFにトランジスタQ1をONにする。このように給電側発振コイルL1の磁束の影響を受けて検出コイルL2に生じる誘導起電力によりトランジスタQ1とトランジスタQ2が交互にONOFFを繰り返すことにより発振が行われる。次に、受電側の共振回路3の動作について説明する。受電側共振コイルL3に給電側発振コイルL1の磁束により受電側共振コイルL3の下端点fから上端点eの方向に誘導起電力が生じると、共振コンデンサC3の電極に電荷が溜まる。前記方向の起電力がなくなると、共振コンデンサC3に溜まった電荷が受電側共振コイルL3に向かって移動しはじめ、共振コンデンサC3の放電がはじまる。この放電によって、受電側共振コイルL3はレンツの法則にしたがい逆起電力が生じる。共振コンデンサC3の電荷がすべて受電側共振コイルL3に移動し終わると、同時にこんどは受電側共振コイルL3に移動した電荷が逆に共振コンデンサC3に向かって逆流しはじめる。そこで再び共振コンデンサC3は充電される。共振コンデンサC3の充電が終わると前と同じように受電側共振コイルL3に向かって放電がはじまる、という動作が繰り返される。そして、整流回路4および平滑回路5の動作は次の通りである。整流回路4を構成する2つのダイオードD1,D2は、次のように動作する。受電側共振コイルL3の下端点fから上端点eの方向に誘導起電力生じたとき、ダイオードD1が受電側共振コイルL3の中性点dと上端点eとの部分に発生した起電力を取り出し、受電側共振コイルL3の上端点eから下端点fの方向に誘導起電力生じたとき、ダイオードD2が受電側共振コイルL3の中性点dと下端点fとの部分に発生した起電力を取り出す。上記2つのダイオードD1およびD2により整流された脈流はチョークコイルL5に流れ、チョークコイルL5の自己誘導作用を利用して、平滑コンデンサC4とにより平滑され負荷に供給される。そして、最後に上記周波数制御回路1の動作を説明する。検出コイルL2には、給電側発振コイルL1と受電側共振コイルL3とからの両方の磁束の影響を受けて、誘導起電力が発生する。もし、周囲の振動などにより給電側発振コイルL1と受電側共振コイルL3との間隔に変動が生じて、上記給電側発振コイルL1から発振される周波数と受電側共振コイルL3から発振される周波数とにずれが生じると、検出コイルL2は上記給電側発振コイルL1の周波数と受電側共振コイルL3の周波数の間の周波数の誘導起電力が発生する。そして、上記給電側の発振周波数よりも受電側共振周波数に近い周波数の誘導起電力がトランジスタQ1およびトランジスタQ2のベースに作用し、トランジスタQ1およびQ2をON,OFFさせて給電側発振回路2の発振周波数を上記受電側共振回路3の共振周波数に、徐々に近づけてゆき、一致させることができる。その結果、周囲の振動などにより給電側発振コイルL1と受電側共振コイルL3との距離が変化し、受電側共振回路3の共振周波数が変化した時でも、給電側発振回路2と受電側共振回路3との周波数のずれをなくすことができ、安定して十分な電力を供給することができる。次に、上記のような動作により、次のような測定結果が得られた。図3は、電源B1に15Vの定電圧電源を接続したとき、給電側発振コイルL1と受電側共振コイルL3との間隔dが3mm,4mm,5.2mmの場合の受電側の負荷抵抗R3に生じる電圧と電流の関係を示したものである。この測定結果から、例えば上記間隔dが3mmの場合を見ると、10Wを越える出力が得られることがわかる。また、図3で例えば上記間隔dが4mmの場合を見ると、出力電圧が約14V以下では出力電流がほぼ一定になることが示されている。この現象は、負荷抵抗R3が小さくなると、受電側共振回路2の共振コンデンサC3に溜まる電荷が受電側共振コイルL3に流れずに負荷抵抗R3に流れるため、受電側共振回路3に共振が起こらなくなり、伝達できる電力が減少するためである。その結果、受電側が短絡したときなど、負荷に過電流が流れるのを防止できる。また、受電側の負荷に充電池を接続した装置などに用いる場合には、充電用の定電流回路を必要としないため、特に都合よく機能する。そして図4は、電源B1に15Vの定電圧電源を接続したとき、給電側発振コイルL1と受電側共振コイルL3との間隔dが3mm,4.5mmの場合の電力の伝達効率、すなわち給電側の電力と受電側の負荷R3に生じる電力との比率を示したものである。この図から本実施例の非接触電力供給装置の伝達効率が80%近くにまで達していることがわかる。
【発明の効果】以上詳述したように本発明の非接触電力供給装置では、給電コイルと受電コイルの距離に変動があっても、その都度同調することができ、簡単な回路構成で十分な電力を非常に効率よく供給することができる。また、非接触定電流供給装置としても用いることができ、充電池を備えた機器など広範囲のものに搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の非接触電力供給装置の回路図。
【図2】図1の非接触電力供給装置を機器内に搭載した例の要部断面図。
【図3】図1の非接触電力供給装置の出力電圧と出力電流の関係を示した測定図。
【図4】図1の非接触電力供給装置の出力電流と電力の伝達効率との関係を示した測定図。
【図5】従来の非接触電力供給装置の回路図。
【符号の説明】
S…給電部、R…受電部、1…周波数制御回路、2…給電側発振回路、3…受電側共振回路、4…整流回路、5…平滑回路、L1…給電側発振コイル、L2…検出コイル、L3…受電側共振コイル、C3…共振コンデンサ、Q1…トランジスタ、Q2…トランジスタ、Fs…給電側コア、Fr…受電側コア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 給電側の発振回路の電力を給電側コイルから該給電側コイルに対向する受電側コイルに電磁誘導により非接触で供給する電力供給装置において、上記受電側コイルに並列接続した共振コンデンサと、受電側の共振周波数を検出する検出コイルと、該検出コイルが検出する誘導起電力の周波数に応じて上記給電側コイルに供給する電力の交流周波数を上記受電側コイルの共振周波数に同調させる制御手段とを備えたことを特徴とする非接触電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−178464
【公開日】平成6年(1994)6月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−307706
【出願日】平成4年(1992)10月21日
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(594010401)キガワ電子技研株式会社 (1)