非接触ICカードシステム
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有料道路での料金収受を、電波を利用した非接触ICカードで行うという試みがなされており、そのための各種システム(非接触ICカードシステム)が各社で頻繁に開発されている。
【0003】非接触ICカードシステムとは、例えば図5R>5に示すように、車両33の利用者が持つ非接触ICカード32と、料金所31の近傍に設けられたアンテナ30と、地上機34とを主構成要素とし、無線によりデータ伝送を行い、料金収受をノンストップ且つキャッシュレスで行うためのものである。
【0004】料金の支払いの方式には、テレホンカードのように料金を前払いして、非接触ICカード32のメモリに記憶し、利用毎にメモリ上の残額(の情報)を更新するタイプと、クレジットカードのように、非接触ICカード32のID番号から利用者を認識し、銀行口座から引き去る、後払いタイプとがある。
【0005】ここで、従来の非接触ICカードシステムの動作原理を説明する。まず、図6は非接触ICカードシステムの地上機の構成を示すもので、発振器40、変調器41、アンプ42、カプラ43、送信アンテナ44、受信アンテナ45、アンプ46、ミキサ47およびフィルタ48から構成されている。送信アンテナ44および受信アンテナ45は、図5の非接触ICカードシステム中のアンテナ30に相当する。
【0006】図7は非接触ICカードの構成を示すもので、送受信アンテナ50、変調器51、検波器52、終端器53およびアンプ54から構成されている。次に、図6および図7の構成における各部の動作を図8および図9を参照して説明する。
【0007】まず、A1は図6に示した地上機側から図7R>7に示した非接触ICカードに送信するためのデータ列である。またA2は発振器40の出力波形であり、搬送波である。これを変調器41を用いて変調すると、波形A3を得ることができる。この波形A3はアンプ42を用いて増幅され、カプラ43を介して送信アンテナ44から電波となって放射される。このカプラ43は、搬送波(A2)を電磁波の結合を利用して分配し、ミキサ47に出力するものである。
【0008】そして、図7に示した非接触ICカード側では、地上機側(の送信アンテナ44)からの電波を、送受信アンテナ50にて受信する。その受信波形A3は変調器51を素通りし、検波器52に入力する。検波器52では、ダイオードにより波形A3を半波整流し、その後低周波フィルタで、高周波成分がカットされ、波形A4が得られる。
【0009】このようにして、データを地上機側から非接触ICカード側に伝送することができる。一方、非接触ICカード側から地上機側にデータを送信する場合には、地上機側の搬送波にデータを変調して送り返すことになる。これは、反射型方式と一般的には称されており、電波法では、特定の周波数帯において、この反射型が義務付けられている。
【0010】波形B1は、非接触ICカードから地上機に送信するデータであり、これを変調器51に入力する。この変調器51は、“変調”というよりも、むしろ通過ゲートの役割を果たしており、送信データ(波形B1)がハイレベルの場合には、ゲートをOFFし、送受信アンテナ50にて受信された地上機からの搬送波を反射し送り返す。また、変調器51は、データがローレベルであれば、ゲートをONさせ搬送波を検波器52側に通過させる。先の送受信アンテナ50における受信時の説明で、受信波形A3が変調器51を素通りしたのは、送信データ(波形B1)が、ローレベルであったためである。この通過波形(のエネルギー)は検波器52によって検波されるが、不要なデータであるため殆どが終端器53によって吸収される。
【0011】このようにして、データB1の変化に応じた変調波B2を得ることができる。この変調波(波形)B2は、電波となって送受信アンテナ50から放射される。アンテナ50から放射された波形B2の電波は、図6R>6に示した地上機の受信アンテナ45で受信され、アンプ46で増幅されて、ミキサ47に入る。ミキサ47は、波形B2と搬送波A2を乗算し、周波数シフトを行い、波形B3を得る。この波形B3をバンドパスフィルタ48を通し、波形B4を得る。
【0012】これで、非接触ICカードの送信データを地上機で受信できたことになる。以上のように、全く同一の周波数を持つ搬送波を用いて復調を行う方法は、ホモダイン検波方式と呼ばれる。
【0013】このホモダイン検波を図10および図11を参照して説明する。図10は、図9に示した波形B2の周波数スペクトラムを示すもので、搬送波F2と信号成分が含まれた変調波F1,F3が見られる。これ(波形B2)に、ミキサ47にて搬送波A2を乗算すると、図11のような周波数シフトが生じ、F2が直流成分までシフトされ、変調波F3がF4にシフトされる。また、F2は同時にF6にもシフトし、F1がF5に、F3がF7にシフトされる。したがって、波形B3には、直流成分と、F4,F5,F6,F7が含まれることになる。
【0014】ここで、目的とするデータ列の周波数成分はF4であるので、符号60に示されるような特性を持ったバンドパスフィルタ48で、F4のみを抽出し、データを復調している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の非接触ICカードシステムでは、複数の通行車線に非接触ICカードシステムを導入した場合には、電波干渉のために、各車線側の地上機と非接触ICカードとの間の通信ができなかったり、通信距離が減少したりすることがある。
【0016】この原因は、図12に示すように、或る(車線側の)地上機(#1)61の搬送波62が直接別の(車線側の)地上機(#2)63の受信アンテナ64に侵入し、妨害波となってS/N比(信号対ノイズ比)を低下させるためである。ここでは、信号(S)は非接触ICカード65からの反射波66であり、ノイズ(N)は地上機(#1)61からの搬送波62になる。
【0017】これを周波数軸上で説明する。図13は、地上機(#2)63で受信した電波の周波数スペクトルを示すもので、F2が地上機(#2)63の搬送波かつ非接触ICカード65からの反射波であり、F1とF3が非接触ICカードの変調波である。また、FN1は地上機(#1)61からの搬送波である。
【0018】このようなスペクトラムを持った受信波をF2にてホモダイン検波すると、F2は直流成分およびF6に、F1はF5に、F3はF4およびF7に、そしてFN1はFN2およびFN3に周波数シフトされることが分かる。
【0019】したがって、FN2がバンドパスフィルタの内部に侵入し、ノイズとなって信号成分F4とのS/N比が低下してしまう。このような、S/N比の低下は、地上機と非接触ICカードの無線回線の低下を意味し、通信距離の減少などの悪影響を及ぼす。
【0020】以上が、有料道路での料金収受に際しての車線(毎に設けられた地上機相互)間の電波干渉である。この電波干渉は、他に、物流管理システム、駐車場システムなど、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステム全般に共通の問題であった。
【0021】本発明は上記事情を考慮してなされたものでその目的は、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う際の、各地上機相互間の電波干渉をなくすことができる非接触ICカードシステムを提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、各領域毎に配置された地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とするものである。本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするために、上記搬送波の基準クロックを各地上機に供給するためのの、各地上機に共通の唯一の基準クロック発生器を設けると共に、各地上機には、この基準クロック発生器からの基準クロックに追従して搬送波を出力する位相同期器を設けたことを特徴とする。
【0023】本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするための他の構成として、各地上機に共通の唯一の搬送波発振器を設け、この搬送波発振器から上記搬送波を発振出力して各地上機に供給するようにしたことをも特徴とする。
【0024】本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするための更に他の構成として、各地上機に共通の唯一の搬送波発振器および同発振器からの搬送波を電波にて放射するための搬送波送信アンテナを設けると共に、各地上機側には、上記搬送波送信アンテナからの搬送波を受信するための搬送波受信アンテナと、この搬送波受信アンテナで受信された搬送波を増幅するアンプとを設け、この増幅後の搬送波を対応する地上機で用いるようにしたことをも特徴とする。
【0025】
【作用】上記の構成においては、各領域(有料道路の料金収受システムに適用される非接触ICカードシステムの例では、料金所の各通行車線)毎に配置された各地上機の搬送波は同一となり、したがって各地上機から(非接触ICカードに対して)は全く同一の周波数の搬送波が出力される。このため、各地上機が、図12の例と同様に、たとえ他の地上機からの搬送波を受信アンテナで受信したとしても、従来とは異なって自身の搬送波と周波数が同一であることから、ホモダイン検波を行うと、直流成分まで周波数シフトされ、バンドパスフィルタで取り除くことができるようになる。したがって、他の地上機との電波干渉は全くなくなる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の第1実施例を、有料道路の料金所近傍に各通行車線毎に設けられた地上機と、そこに進入してきた車両(移動体)の利用者が持つ非接触ICカードとの間で、有料道路の料金収受をノンストップで、かつキャッシュレスで行うために、無線によりデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに実施した場合について、図1および第2を参照して説明する。
【0027】図1は、本発明の第1実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第1実施例における非接触ICカードシステムは、図1に示すように、地上機7の外部に基準クロック発生器1を持ち、地上機7の内部に位相比較器2、フィルタ4、電圧制御発振器5および分周器3から構成された位相同期器6を持つことにより、以下に詳述するように、各地上機7の搬送波の周波数が同一になるようにしたものである。なお、地上機7は、各車線毎に配置されるものであるが、図1では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0028】図1において、基準クロック発生器1は、図2の波形図中のC1のような安定した周波数の波形を出力する。この基準クロック発生器1からの波形C1は、各地上機7に設けられた位相同期器6内の位相比較器2に、例えばケーブルを介して供給される。
【0029】位相比較器2は、同じ位相同期器6内の分周器3から出力される波形C2と、基準クロック発生器1からの波形C1とを比較し、C1の方がC2より位相が進んでいるならば、C1の立ち上がり時間からC2の立ち上がり時間まで、ハイレベルのパルスを出力する。これとは逆に、C2の方がC1より位相が進んでいるならば、位相比較器2は、C2の立ち上がり時間からC1の立ち上がり時間まで、ローレベルのパルスを出力する。
【0030】このようにして、位相比較器2は、図2中のC3のような波形を出力する。位相比較器2から出力された波形C3は、フィルタ4に供給される。このフィルタ4は、ローパスフィルタである。したがって、フィルタ4に供給された波形C3は、同フィルタ4により波形を鈍らされ、図2中のC4のような波形としてフィルタ4から出力される。この波形C4は電圧制御発振器5に供給される。
【0031】電圧制御発振器5は、入力される電圧に応じて周波数を発振させるものであり、図1の構成では、入力される波形C4の電圧が基準値より大きい場合には、発振周波数を大きくし、これとは逆に、入力される波形C4の電圧が基準値より小さい場合には、発振周波数を小さくするようにしている。
【0032】このようにして、電圧制御発振器5は、入力される波形C4の電圧に応じて、図2中のC5のような波形を出力する。この波形C5は、搬送波として用いられる。分周器3は、この電圧制御発振器5からの出力波形C5、即ち搬送波C5を、分周して上記したC2のような波形を位相比較器2に出力する。この例では、分周器3からは、搬送波C5が4分周された波形C2が出力されるようになっている。
【0033】以上に述べたように、本発明の第1実施例によれば、地上機7内に位相同期器6を設けて位相比較器2、フィルタ4、電圧制御発振器5および分周器3からなる帰還系を構成することにより、搬送波C5を基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)の周波数に追従して発振出力させることができる。したがって、基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)を、上記したように、外部から各車線毎の地上機7に供給することにより、各地上機7の搬送波(C5)の周波数を全く同一にすることができる。
【0034】また、このような構成においては、基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)と地上機7の搬送波(C5)の周波数の分周比を、位相同期器6内の分周器3で適当に選ぶことができ、分周比を大きくし、基準クロック(波形C1)の周波数を小さくすることにより、基準クロック(波形C1)の地上機7へのケーブル伝送が容易になるという利点がある。
【0035】さて、地上機7には、位相同期器6の他に、同位相同期器6(内の電圧制御発振器5)にて生成出力された上記搬送波(波形C5)と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、位相同期器6を除く各要素は、図6R>6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)構成要素(変調器41、更には、アンプ42、カプラ430、送信アンテナ44、受信アンテナ45、アンプ46、ミキサ47およびフィルタ48)と同様である。
【0036】また、地上機7と無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0037】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7の動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0038】したがって、本発明の第1実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7での搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0039】図3は、本発明の第2実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第2実施例における非接触ICカードシステムは、図3に示すように、搬送波発振器16それ自体を地上機7aの外部に持ったことを特徴としている。なお、地上機7aは、各車線毎に配置されるものであるが、図3では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0040】図3において、搬送波発振器16から出力される搬送波は、例えばケーブルを介して各地上機7aに供給される。これにより、各地上機7aの搬送波の発振周波数を同一にすることができる。
【0041】搬送波発振器16からの搬送波は、地上機7aに設けられたアンプ17に供給される。アンプ17は、この搬送波を増幅して、搬送波発振器16からのケーブル伝送での減衰分を補うことにより、地上機7aでの搬送波の使用を可能とする。
【0042】地上機7aには、アンプ17の他に、同アンプ17で増幅された搬送波と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、アンプ17を除く各要素は、図6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)各要素と同様である。
【0043】また、地上機7aと無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0044】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7aの動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0045】したがって、本発明の第2実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7aでの搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。次に、本発明の第3実施例について説明する。
【0046】図4は、本発明の第3実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第3実施例における非接触ICカードシステムは、図4に示すように、地上機7bの外部に搬送波発振器18を設け点は、前記第2実施例の場合と同様であるが、この搬送波発振器18からの搬送波を、ケーブルを用いずに各地上機7bに供給するようにしたことを特徴としている。なお、地上機7bは、各車線毎に配置されるものであるが、図4では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0047】図4において、搬送波発振器18から出力される搬送波は、搬送波送信アンテナ19により電波として放射される。地上機7bには搬送波受信アンテナ20が設けられており、搬送波送信アンテナ19から放射された搬送波は、同アンテナ20で受信される。
【0048】搬送波受信アンテナ20で受信された搬送波送信アンテナ19からの搬送波は、地上機7bに設けられたアンプ21に供給される。アンプ21は、この受信搬送波を増幅することにより、地上機7bでの搬送波の使用を可能とする。これにより、各地上機7bの搬送波を同一にすることができる他、ケーブル敷設の手間、敷設費が省略できるという利点がある。
【0049】地上機7bには、アンプ21の他に、同アンプ21で増幅された搬送波と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、アンプ21を除く各要素は、図6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)各要素と同様である。
【0050】また、地上機7bと無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0051】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7bの動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0052】したがって、本発明の第3実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7bでの搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。以上は、本発明を、有料道路の料金所近傍に各通行車線毎に設けられた地上機と、そこに進入してきた車両の利用者が持つ非接触ICカードとの間で、有料道路の料金収受をノンストップで、かつキャッシュレスで行うために、無線によりデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに実施した場合について説明したが、これに限るものではない。即ち本発明は、上記以外にも、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う、物流管理システム、駐車場システムなどの非接触ICカードシステムにも適用可能である。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の非接触ICカードシステムによれば、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にする構成としたので、各地上機が、他の地上機からの搬送波を受信アンテナで受信したとしても、他の地上機との間の電波干渉を招かないで済むようになる。このため、本発明を例えば有料道路の料金収受システムに適用した場合には、複数の車線を持つ料金所の各車線毎に非接触ICカードシステムを設置することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図2】同実施例における動作原理を説明するため波形図。
【図3】本発明の第2実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図4】本発明の第3実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図5】非接触ICカードシステムの代表的な運用イメ一ジを示す図。
【図6】従来の非接触ICカードシステムの地上機側の構成を示すブロック図。
【図7】従来の非接触ICカードシステムの非接触ICカードの構成を示すブロック図。
【図8】従来の非接触ICカードシステムのデータ送信時の動作原理を説明するための波形図。
【図9】従来の非接触ICカードシステムのデータ受信時の動作原理を説明するための波形図。
【図10】反射波の周波数スペクトラムを示す図。
【図11】ホモダイン検波後の周波数スペクトラムを示す図。
【図12】車線間の電波干渉を説明するための図。
【図13】反射波に妨害波が侵入した場合の周波数スペクトラムを示す図。
【図14】反射波と妨害波を同時にホモダイン検波した場合の周波数スペクトラムを示す図。
【符号の説明】
1…基準クロック発生器、 2…位相比較器、 3…分周器、4…フィルタ、 5…電圧制御発振器、 6…位相同期器、7…地上機、 7a…地上機 7b…地上機、8…変調器、 9…アンプ、 10…カプラ、11…送信アンテナ、 12…受信アンテナ、 13…アンプ、14…ミキサ、 15…フィルタ、 16…搬送波発振器、17…アンプ、 18…搬送波発振器、19…搬送波送信アンテナ、20…搬送波受信アンテナ、21…アンプ。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有料道路での料金収受を、電波を利用した非接触ICカードで行うという試みがなされており、そのための各種システム(非接触ICカードシステム)が各社で頻繁に開発されている。
【0003】非接触ICカードシステムとは、例えば図5R>5に示すように、車両33の利用者が持つ非接触ICカード32と、料金所31の近傍に設けられたアンテナ30と、地上機34とを主構成要素とし、無線によりデータ伝送を行い、料金収受をノンストップ且つキャッシュレスで行うためのものである。
【0004】料金の支払いの方式には、テレホンカードのように料金を前払いして、非接触ICカード32のメモリに記憶し、利用毎にメモリ上の残額(の情報)を更新するタイプと、クレジットカードのように、非接触ICカード32のID番号から利用者を認識し、銀行口座から引き去る、後払いタイプとがある。
【0005】ここで、従来の非接触ICカードシステムの動作原理を説明する。まず、図6は非接触ICカードシステムの地上機の構成を示すもので、発振器40、変調器41、アンプ42、カプラ43、送信アンテナ44、受信アンテナ45、アンプ46、ミキサ47およびフィルタ48から構成されている。送信アンテナ44および受信アンテナ45は、図5の非接触ICカードシステム中のアンテナ30に相当する。
【0006】図7は非接触ICカードの構成を示すもので、送受信アンテナ50、変調器51、検波器52、終端器53およびアンプ54から構成されている。次に、図6および図7の構成における各部の動作を図8および図9を参照して説明する。
【0007】まず、A1は図6に示した地上機側から図7R>7に示した非接触ICカードに送信するためのデータ列である。またA2は発振器40の出力波形であり、搬送波である。これを変調器41を用いて変調すると、波形A3を得ることができる。この波形A3はアンプ42を用いて増幅され、カプラ43を介して送信アンテナ44から電波となって放射される。このカプラ43は、搬送波(A2)を電磁波の結合を利用して分配し、ミキサ47に出力するものである。
【0008】そして、図7に示した非接触ICカード側では、地上機側(の送信アンテナ44)からの電波を、送受信アンテナ50にて受信する。その受信波形A3は変調器51を素通りし、検波器52に入力する。検波器52では、ダイオードにより波形A3を半波整流し、その後低周波フィルタで、高周波成分がカットされ、波形A4が得られる。
【0009】このようにして、データを地上機側から非接触ICカード側に伝送することができる。一方、非接触ICカード側から地上機側にデータを送信する場合には、地上機側の搬送波にデータを変調して送り返すことになる。これは、反射型方式と一般的には称されており、電波法では、特定の周波数帯において、この反射型が義務付けられている。
【0010】波形B1は、非接触ICカードから地上機に送信するデータであり、これを変調器51に入力する。この変調器51は、“変調”というよりも、むしろ通過ゲートの役割を果たしており、送信データ(波形B1)がハイレベルの場合には、ゲートをOFFし、送受信アンテナ50にて受信された地上機からの搬送波を反射し送り返す。また、変調器51は、データがローレベルであれば、ゲートをONさせ搬送波を検波器52側に通過させる。先の送受信アンテナ50における受信時の説明で、受信波形A3が変調器51を素通りしたのは、送信データ(波形B1)が、ローレベルであったためである。この通過波形(のエネルギー)は検波器52によって検波されるが、不要なデータであるため殆どが終端器53によって吸収される。
【0011】このようにして、データB1の変化に応じた変調波B2を得ることができる。この変調波(波形)B2は、電波となって送受信アンテナ50から放射される。アンテナ50から放射された波形B2の電波は、図6R>6に示した地上機の受信アンテナ45で受信され、アンプ46で増幅されて、ミキサ47に入る。ミキサ47は、波形B2と搬送波A2を乗算し、周波数シフトを行い、波形B3を得る。この波形B3をバンドパスフィルタ48を通し、波形B4を得る。
【0012】これで、非接触ICカードの送信データを地上機で受信できたことになる。以上のように、全く同一の周波数を持つ搬送波を用いて復調を行う方法は、ホモダイン検波方式と呼ばれる。
【0013】このホモダイン検波を図10および図11を参照して説明する。図10は、図9に示した波形B2の周波数スペクトラムを示すもので、搬送波F2と信号成分が含まれた変調波F1,F3が見られる。これ(波形B2)に、ミキサ47にて搬送波A2を乗算すると、図11のような周波数シフトが生じ、F2が直流成分までシフトされ、変調波F3がF4にシフトされる。また、F2は同時にF6にもシフトし、F1がF5に、F3がF7にシフトされる。したがって、波形B3には、直流成分と、F4,F5,F6,F7が含まれることになる。
【0014】ここで、目的とするデータ列の周波数成分はF4であるので、符号60に示されるような特性を持ったバンドパスフィルタ48で、F4のみを抽出し、データを復調している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の非接触ICカードシステムでは、複数の通行車線に非接触ICカードシステムを導入した場合には、電波干渉のために、各車線側の地上機と非接触ICカードとの間の通信ができなかったり、通信距離が減少したりすることがある。
【0016】この原因は、図12に示すように、或る(車線側の)地上機(#1)61の搬送波62が直接別の(車線側の)地上機(#2)63の受信アンテナ64に侵入し、妨害波となってS/N比(信号対ノイズ比)を低下させるためである。ここでは、信号(S)は非接触ICカード65からの反射波66であり、ノイズ(N)は地上機(#1)61からの搬送波62になる。
【0017】これを周波数軸上で説明する。図13は、地上機(#2)63で受信した電波の周波数スペクトルを示すもので、F2が地上機(#2)63の搬送波かつ非接触ICカード65からの反射波であり、F1とF3が非接触ICカードの変調波である。また、FN1は地上機(#1)61からの搬送波である。
【0018】このようなスペクトラムを持った受信波をF2にてホモダイン検波すると、F2は直流成分およびF6に、F1はF5に、F3はF4およびF7に、そしてFN1はFN2およびFN3に周波数シフトされることが分かる。
【0019】したがって、FN2がバンドパスフィルタの内部に侵入し、ノイズとなって信号成分F4とのS/N比が低下してしまう。このような、S/N比の低下は、地上機と非接触ICカードの無線回線の低下を意味し、通信距離の減少などの悪影響を及ぼす。
【0020】以上が、有料道路での料金収受に際しての車線(毎に設けられた地上機相互)間の電波干渉である。この電波干渉は、他に、物流管理システム、駐車場システムなど、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステム全般に共通の問題であった。
【0021】本発明は上記事情を考慮してなされたものでその目的は、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う際の、各地上機相互間の電波干渉をなくすことができる非接触ICカードシステムを提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、各領域毎に配置された地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とするものである。本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするために、上記搬送波の基準クロックを各地上機に供給するためのの、各地上機に共通の唯一の基準クロック発生器を設けると共に、各地上機には、この基準クロック発生器からの基準クロックに追従して搬送波を出力する位相同期器を設けたことを特徴とする。
【0023】本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするための他の構成として、各地上機に共通の唯一の搬送波発振器を設け、この搬送波発振器から上記搬送波を発振出力して各地上機に供給するようにしたことをも特徴とする。
【0024】本発明はまた、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にするための更に他の構成として、各地上機に共通の唯一の搬送波発振器および同発振器からの搬送波を電波にて放射するための搬送波送信アンテナを設けると共に、各地上機側には、上記搬送波送信アンテナからの搬送波を受信するための搬送波受信アンテナと、この搬送波受信アンテナで受信された搬送波を増幅するアンプとを設け、この増幅後の搬送波を対応する地上機で用いるようにしたことをも特徴とする。
【0025】
【作用】上記の構成においては、各領域(有料道路の料金収受システムに適用される非接触ICカードシステムの例では、料金所の各通行車線)毎に配置された各地上機の搬送波は同一となり、したがって各地上機から(非接触ICカードに対して)は全く同一の周波数の搬送波が出力される。このため、各地上機が、図12の例と同様に、たとえ他の地上機からの搬送波を受信アンテナで受信したとしても、従来とは異なって自身の搬送波と周波数が同一であることから、ホモダイン検波を行うと、直流成分まで周波数シフトされ、バンドパスフィルタで取り除くことができるようになる。したがって、他の地上機との電波干渉は全くなくなる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の第1実施例を、有料道路の料金所近傍に各通行車線毎に設けられた地上機と、そこに進入してきた車両(移動体)の利用者が持つ非接触ICカードとの間で、有料道路の料金収受をノンストップで、かつキャッシュレスで行うために、無線によりデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに実施した場合について、図1および第2を参照して説明する。
【0027】図1は、本発明の第1実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第1実施例における非接触ICカードシステムは、図1に示すように、地上機7の外部に基準クロック発生器1を持ち、地上機7の内部に位相比較器2、フィルタ4、電圧制御発振器5および分周器3から構成された位相同期器6を持つことにより、以下に詳述するように、各地上機7の搬送波の周波数が同一になるようにしたものである。なお、地上機7は、各車線毎に配置されるものであるが、図1では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0028】図1において、基準クロック発生器1は、図2の波形図中のC1のような安定した周波数の波形を出力する。この基準クロック発生器1からの波形C1は、各地上機7に設けられた位相同期器6内の位相比較器2に、例えばケーブルを介して供給される。
【0029】位相比較器2は、同じ位相同期器6内の分周器3から出力される波形C2と、基準クロック発生器1からの波形C1とを比較し、C1の方がC2より位相が進んでいるならば、C1の立ち上がり時間からC2の立ち上がり時間まで、ハイレベルのパルスを出力する。これとは逆に、C2の方がC1より位相が進んでいるならば、位相比較器2は、C2の立ち上がり時間からC1の立ち上がり時間まで、ローレベルのパルスを出力する。
【0030】このようにして、位相比較器2は、図2中のC3のような波形を出力する。位相比較器2から出力された波形C3は、フィルタ4に供給される。このフィルタ4は、ローパスフィルタである。したがって、フィルタ4に供給された波形C3は、同フィルタ4により波形を鈍らされ、図2中のC4のような波形としてフィルタ4から出力される。この波形C4は電圧制御発振器5に供給される。
【0031】電圧制御発振器5は、入力される電圧に応じて周波数を発振させるものであり、図1の構成では、入力される波形C4の電圧が基準値より大きい場合には、発振周波数を大きくし、これとは逆に、入力される波形C4の電圧が基準値より小さい場合には、発振周波数を小さくするようにしている。
【0032】このようにして、電圧制御発振器5は、入力される波形C4の電圧に応じて、図2中のC5のような波形を出力する。この波形C5は、搬送波として用いられる。分周器3は、この電圧制御発振器5からの出力波形C5、即ち搬送波C5を、分周して上記したC2のような波形を位相比較器2に出力する。この例では、分周器3からは、搬送波C5が4分周された波形C2が出力されるようになっている。
【0033】以上に述べたように、本発明の第1実施例によれば、地上機7内に位相同期器6を設けて位相比較器2、フィルタ4、電圧制御発振器5および分周器3からなる帰還系を構成することにより、搬送波C5を基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)の周波数に追従して発振出力させることができる。したがって、基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)を、上記したように、外部から各車線毎の地上機7に供給することにより、各地上機7の搬送波(C5)の周波数を全く同一にすることができる。
【0034】また、このような構成においては、基準クロック発生器1からの基準クロック(波形C1)と地上機7の搬送波(C5)の周波数の分周比を、位相同期器6内の分周器3で適当に選ぶことができ、分周比を大きくし、基準クロック(波形C1)の周波数を小さくすることにより、基準クロック(波形C1)の地上機7へのケーブル伝送が容易になるという利点がある。
【0035】さて、地上機7には、位相同期器6の他に、同位相同期器6(内の電圧制御発振器5)にて生成出力された上記搬送波(波形C5)と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、位相同期器6を除く各要素は、図6R>6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)構成要素(変調器41、更には、アンプ42、カプラ430、送信アンテナ44、受信アンテナ45、アンプ46、ミキサ47およびフィルタ48)と同様である。
【0036】また、地上機7と無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0037】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7の動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0038】したがって、本発明の第1実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7での搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0039】図3は、本発明の第2実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第2実施例における非接触ICカードシステムは、図3に示すように、搬送波発振器16それ自体を地上機7aの外部に持ったことを特徴としている。なお、地上機7aは、各車線毎に配置されるものであるが、図3では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0040】図3において、搬送波発振器16から出力される搬送波は、例えばケーブルを介して各地上機7aに供給される。これにより、各地上機7aの搬送波の発振周波数を同一にすることができる。
【0041】搬送波発振器16からの搬送波は、地上機7aに設けられたアンプ17に供給される。アンプ17は、この搬送波を増幅して、搬送波発振器16からのケーブル伝送での減衰分を補うことにより、地上機7aでの搬送波の使用を可能とする。
【0042】地上機7aには、アンプ17の他に、同アンプ17で増幅された搬送波と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、アンプ17を除く各要素は、図6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)各要素と同様である。
【0043】また、地上機7aと無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0044】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7aの動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0045】したがって、本発明の第2実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7aでの搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。次に、本発明の第3実施例について説明する。
【0046】図4は、本発明の第3実施例を示す非接触ICカードシステムのブロック構成を示す。この第3実施例における非接触ICカードシステムは、図4に示すように、地上機7bの外部に搬送波発振器18を設け点は、前記第2実施例の場合と同様であるが、この搬送波発振器18からの搬送波を、ケーブルを用いずに各地上機7bに供給するようにしたことを特徴としている。なお、地上機7bは、各車線毎に配置されるものであるが、図4では1つだけが示されている。また、非接触ICカードは省略されている。
【0047】図4において、搬送波発振器18から出力される搬送波は、搬送波送信アンテナ19により電波として放射される。地上機7bには搬送波受信アンテナ20が設けられており、搬送波送信アンテナ19から放射された搬送波は、同アンテナ20で受信される。
【0048】搬送波受信アンテナ20で受信された搬送波送信アンテナ19からの搬送波は、地上機7bに設けられたアンプ21に供給される。アンプ21は、この受信搬送波を増幅することにより、地上機7bでの搬送波の使用を可能とする。これにより、各地上機7bの搬送波を同一にすることができる他、ケーブル敷設の手間、敷設費が省略できるという利点がある。
【0049】地上機7bには、アンプ21の他に、同アンプ21で増幅された搬送波と送信データとを入力する変調器8、更には、アンプ9、カプラ10、送信アンテナ11、受信アンテナ12、アンプ13、ミキサ14およびフィルタ(バンドパスフィルタ)15が設けられている。これら、アンプ21を除く各要素は、図6に示した従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の(発振器40を除く)各要素と同様である。
【0050】また、地上機7bと無線によりデータ伝送を行う非接触ICカード自体の構成は、図7に示した従来の非接触ICカードシステムにおける非接触ICカードの構成と同様である。
【0051】更に、上記した搬送波出力を除く地上機7bの動作原理、非接触ICカードの動作原理は、従来の非接触ICカードシステムにおける地上機の動作原理、非接触ICカードの動作原理と同様である。
【0052】したがって、本発明の第3実施例に係る非接触ICカードシステムにおける、上記した地上機7bでの搬送波出力以降の動作については、説明を省力する。以上は、本発明を、有料道路の料金所近傍に各通行車線毎に設けられた地上機と、そこに進入してきた車両の利用者が持つ非接触ICカードとの間で、有料道路の料金収受をノンストップで、かつキャッシュレスで行うために、無線によりデータ伝送を行う非接触ICカードシステムに実施した場合について説明したが、これに限るものではない。即ち本発明は、上記以外にも、各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う、物流管理システム、駐車場システムなどの非接触ICカードシステムにも適用可能である。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の非接触ICカードシステムによれば、各地上機の搬送波の発振周波数を同一にする構成としたので、各地上機が、他の地上機からの搬送波を受信アンテナで受信したとしても、他の地上機との間の電波干渉を招かないで済むようになる。このため、本発明を例えば有料道路の料金収受システムに適用した場合には、複数の車線を持つ料金所の各車線毎に非接触ICカードシステムを設置することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図2】同実施例における動作原理を説明するため波形図。
【図3】本発明の第2実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図4】本発明の第3実施例に係る非接触ICカードシステムのブロック構成図。
【図5】非接触ICカードシステムの代表的な運用イメ一ジを示す図。
【図6】従来の非接触ICカードシステムの地上機側の構成を示すブロック図。
【図7】従来の非接触ICカードシステムの非接触ICカードの構成を示すブロック図。
【図8】従来の非接触ICカードシステムのデータ送信時の動作原理を説明するための波形図。
【図9】従来の非接触ICカードシステムのデータ受信時の動作原理を説明するための波形図。
【図10】反射波の周波数スペクトラムを示す図。
【図11】ホモダイン検波後の周波数スペクトラムを示す図。
【図12】車線間の電波干渉を説明するための図。
【図13】反射波に妨害波が侵入した場合の周波数スペクトラムを示す図。
【図14】反射波と妨害波を同時にホモダイン検波した場合の周波数スペクトラムを示す図。
【符号の説明】
1…基準クロック発生器、 2…位相比較器、 3…分周器、4…フィルタ、 5…電圧制御発振器、 6…位相同期器、7…地上機、 7a…地上機 7b…地上機、8…変調器、 9…アンプ、 10…カプラ、11…送信アンテナ、 12…受信アンテナ、 13…アンプ、14…ミキサ、 15…フィルタ、 16…搬送波発振器、17…アンプ、 18…搬送波発振器、19…搬送波送信アンテナ、20…搬送波受信アンテナ、21…アンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項2】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波の基準クロックを前記各地上機に供給するためのの、前記各地上機に共通の唯一の基準クロック発生器を設けると共に、前記各地上機内に設けられ、前記基準クロック発生器からの前記基準クロックに追従して搬送波を出力する位相同期器を設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項3】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波を発振出力して前記各地上機に供給するためのの、前記各地上機に共通の唯一の搬送波発振器を設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項4】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波を発振出力するための前記各地上機に共通の唯一の搬送波発振器と、この搬送波発振器からの搬送波を電波にて放射するための搬送波送信アンテナとを設けると共に、前記各地上機側に、前記搬送波送信アンテナからの前記搬送波を受信するための搬送波受信アンテナと、この搬送波受信アンテナで受信された前記搬送波を増幅するアンプとを設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項1】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項2】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波の基準クロックを前記各地上機に供給するためのの、前記各地上機に共通の唯一の基準クロック発生器を設けると共に、前記各地上機内に設けられ、前記基準クロック発生器からの前記基準クロックに追従して搬送波を出力する位相同期器を設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項3】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波を発振出力して前記各地上機に供給するためのの、前記各地上機に共通の唯一の搬送波発振器を設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項4】 各領域毎に配置された地上機と対応する領域に進入してきた移動体側の非接触ICカードとの間で無線によるデータ伝送を行う非接触ICカードシステムにおいて、前記各地上機の前記無線によるデータ伝送に用いられる搬送波を発振出力するための前記各地上機に共通の唯一の搬送波発振器と、この搬送波発振器からの搬送波を電波にて放射するための搬送波送信アンテナとを設けると共に、前記各地上機側に、前記搬送波送信アンテナからの前記搬送波を受信するための搬送波受信アンテナと、この搬送波受信アンテナで受信された前記搬送波を増幅するアンプとを設け、前記各地上機の搬送波の発振周波数を同一にしたことを特徴とする非接触ICカードシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【特許番号】第2865978号
【登録日】平成10年(1998)12月18日
【発行日】平成11年(1999)3月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−170364
【出願日】平成5年(1993)7月9日
【公開番号】特開平7−28961
【公開日】平成7年(1995)1月31日
【審査請求日】平成9年(1997)11月7日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【登録日】平成10年(1998)12月18日
【発行日】平成11年(1999)3月8日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)7月9日
【公開番号】特開平7−28961
【公開日】平成7年(1995)1月31日
【審査請求日】平成9年(1997)11月7日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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