説明

非接触ICカード読取装置

【課題】無線通信を行うときに、複数のアンテナで発生する電波の干渉を抑える。
【解決手段】パッシブ型の第1非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第1近距離無線通信方式の第1コイルアンテナと、パッシブ型の第2非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第2近距離無線通信方式の第2コイルアンテナと、を備え、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは、前記第1コイルアンテナが近距離無線通信のための電波を発生するときに前記第2コイルアンテナが誘導起電力を発生しない位置で、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナの一部の領域が重なるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の近距離無線通信方式を用いて、非接触ICカードとの間で近距離無線通信を行う装置として、例えば特許文献1のRFIDリーダが知られている。このRFIDリーダは、異なる周波数での動作に対応する2つのコイルアンテナを備えている(以下、高周波コイルアンテナ、低周波コイルアンテナと称する)。例えば、高搬送周波数(例えば13.56MHz)を用いて、RFIDリーダの電波によって電力の供給を受けるパッシブ型の非接触ICカードとの間で近距離無線通信を行う場合、RFIDリーダは、高周波コイルアンテナで電波を発生させていた。一方、例えば、低搬送周波数(例えば125kHz)を用いてパッシブ型の非接触ICカードとの間で近距離無線通信を行う場合、RFIDリーダは、低周波コイルアンテナで電波を発生させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−12129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるRFIDリーダでは、例えば、高周波コイルアンテナで電波が発生しているときに、低周波コイルアンテナでも電波が発生した場合、低周波コイルアンテナの電波による磁界によって高周波コイルアンテナで誘導起電力が発生して、高周波コイルアンテナの電波が劣化する虞があった。特に、高周波コイルアンテナと、低周波コイルアンテナとを例えばRFIDリーダの内部に近接して配置した場合、高周波コイルアンテナの電波と低周波コイルアンテナの電波とが干渉する問題は顕著となる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、パッシブ型の第1非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第1近距離無線通信方式の第1コイルアンテナと、パッシブ型の第2非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第2近距離無線通信方式の第2コイルアンテナと、を備え、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは、前記第1コイルアンテナが近距離無線通信のための電波を発生するときに前記第2コイルアンテナが誘導起電力を発生しない位置で、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナの一部の領域が重なるように配置されることを特徴とする非接触ICカード読取装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、近距離無線通信を行うときに、コイルアンテナで発生する電波の干渉を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触ICカード読書装置に用いられるコイルアンテナの配置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る非接触ICカード読書装置を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非接触ICカード読書装置に用いられる無線通信回路を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態に係る非接触ICカード読書装置におけるコイルアンテナ10、20の中心軸の間の距離と、誘導起電力との関係の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
===非接触ICカード読書装置===
図2は、本実施形態における非接触ICカード読書装置を示す図である。尚、基板61は、非接触ICカード読書装置100の内部に配設されているので見えない状態となっているが、説明の便宜上、点線で示されている。
【0011】
非接触ICカード読書装置100(非接触ICカード読取装置)は、例えば非接触ICカード75を用いて決済を行う装置である。尚、非接触ICカード75は、非接触ICカード読書装置100で発生する電波によって電力が供給され、その電力によって動作する例えばパッシブ型の非接触ICカードである。非接触ICカード読書装置100は、非接触ICカード75との間で近距離無線通信を行うための装置である。非接触ICカード読書装置100は、筐体70、表示パネル71、決済釦72、電源釦73、カード挿入口74、基板61、無線通信回路200を含んで構成される。
【0012】
筐体70は、例えば矩形柱形状を呈する。筐体70の例えば上面には、表示パネル71が設けられる。筐体70の例えば正面には、決済釦72、カード挿入口74が設けられる。筐体70の例えば側面には、電源釦73が設けられる。筐体70の例えば内部には、基板61、無線通信回路200が配設される。
【0013】
非接触ICカード75は、例えば電子マネーの残金を示す残金情報が記憶されており、非接触ICカード75を用いて決済を行うとき、非接触ICカード読書装置100のカード挿入口74に挿入される。
【0014】
無線通信回路200は、非接触ICカード75との間で近距離無線通信を行うための回路である。尚、無線通信回路200の詳細は後述する。
【0015】
基板61は、例えば矩形形状を呈し、非接触ICカード読書装置100が非接触ICカード75との間で近距離無線通信を行うときに用いられるコイルアンテナ10、20が夫々、例えば表面と裏面とに設けられた、例えばプリント配線基板である。尚、コイルアンテナ10、20は夫々、基板61の表面と裏面とに例えば複数回巻回されて形成された銅パターンのコイルアンテナである。コイルアンテナ10、20が形成された基板61の表面と裏面は夫々、絶縁処理が施されている。コイルアンテナ10、20の詳細は後述する。基板61は、カード挿入口74に挿入された非接触ICカード75との間で近距離無線通信できるように、筐体70の内部における、カード挿入口74に挿入された非接触ICカード75の例えば下側の、非接触ICカード75と対向する位置に配設される。
【0016】
電源釦73は、非接触ICカード読書装置100に電源を投入するための釦である。例えば、電源釦73を押下した場合、非接触ICカード読書装置100の無線通信回路200に電源電圧が供給されて、基板61のコイルアンテナ10、20で電波が発生するものとする。尚、基板61のコイルアンテナ10、20で発生する電波の詳細は後述する。
【0017】
表示パネル71は、例えば、非接触ICカード75の電子マネーの残金を表示する例えば液晶ディスプレイである。
【0018】
決済釦72は、例えば、非接触ICカード75を用いて決済を行うときに押下する釦である。例えば、非接触ICカード75が非接触ICカード読書装置100に挿入された状態で、決済釦72を押下したとき、決済が行われる。
【0019】
===無線通信回路===
以下、図3を参照して、本実施形態に係る無線通信回路200について説明する。図3は、本実施形態に係る非接触ICカード読書装置に用いられる無線通信回路を示す回路図である。
【0020】
無線通信回路200は、非接触ICカード75との間で近距離無線通信を行うための回路である。無線通信回路200は、コイルアンテナ10、20、RF回路30、40、制御回路50を含んで構成される。
【0021】
制御回路50は、非接触ICカード読書装置100の動作を制御する回路である。制御回路50は、例えば近距離無線通信を行うための電波を発生するように、RF回路30、40に制御命令を送信したり、RF回路30、40から受信した情報が表示されるように、表示パネル71を制御したりする。尚、制御回路50を構成する複数の回路素子をまとめてIC(Integrated Circuit)としてもよい。ここで、説明の便宜上、制御回路50には、例えば2つのRF回路30、40が接続されているものとする。RF回路30は、制御回路50から受信した制御命令に基づいて、コイルアンテナ10から電波を発生させたり、コイルアンテナ10で受信した電波に基づいて、情報を制御回路50に送信したりする。尚、RF回路30の詳細は後述する。RF回路40は、制御回路50から受信した制御命令に基づいて、コイルアンテナ20から電波を発生させたり、コイルアンテナ20で受信した電波に基づいて、情報を制御回路50に送信したりする。尚、RF回路40の詳細は後述する。コイルアンテナ10、20は夫々、RF回路30、40に接続される。尚、コイルアンテナ10、20の詳細、コイルアンテナ10、20とRF回路30、40との接続の詳細については後述する。
【0022】
RF回路30、コイルアンテナ10によって行われる近距離無線通信と、RF回路40、コイルアンテナ20によって行われる近距離無線通信とは、例えば相互に異なる近距離無線通信方式であるものとする。尚、例えば、RF回路30、コイルアンテナ10の近距離無線通信方式は、13.56MHzの搬送周波数を用いて近距離無線通信が行われる、国際規格であるISO/IEC14443のTypeAとする。このRF回路30、コイルアンテナ10による近距離無線通信を、タイプAの近距離無線通信とする。一方、例えば、RF回路40、コイルアンテナ20の近距離無線通信方式は、タイプAの近距離無線通信と例えば同様な13.56MHzの搬送周波数を用いて、タイプAの近距離無線通信よりも通信速度が速い、FeLiCa(フェリカ)(登録商標)とする。このRF回路40、コイルアンテナ20による近距離無線通信を、タイプCの近距離無線通信とする。
【0023】
例えば、電源釦73を押下して、無線通信回路200に電源電圧が供給された場合、制御回路50は、コイルアンテナ10、20で電波が交互に発生するようにRF回路30、40に制御命令を送信する。尚、制御回路50は、コイルアンテナ10、20で発生した電波を受信した非接触ICカード75が反応できるように、例えば0.5秒毎にコイルアンテナ10、20で電波が交互に発生するように、RF回路30、40に制御命令を送信するものとする。その後、例えば、非接触ICカード読書装置100に、タイプAの近距離無線通信を行う非接触ICカードが挿入された場合、コイルアンテナ10が、そのタイプAの近距離無線通信を行う非接触ICカードから電波を受信する。その場合、制御回路50は、コイルアンテナ20で発生する電波を停止して、タイプAの近距離無線通信を行う制御命令をRF回路30に送信する。一方、例えば、非接触ICカード読書装置100に、タイプCの近距離無線通信を行う非接触ICカードが挿入された場合、コイルアンテナ20が、そのタイプCの近距離無線通信を行う非接触ICカードから電波を受信する。その場合、制御回路50は、コイルアンテナ10で発生する電波を停止して、タイプCの近距離無線通信を行う制御命令をRF回路40に送信する。
【0024】
===コイルアンテナ、RF回路===
以下、図3を参照して、本実施形態に係るコイルアンテナ10、20、RF回路30、40について説明する。
【0025】
コイルアンテナ10は、コイル1を含んで構成される。コイルアンテナ10は、電波を発生したり、受信したりするように基板61の例えば表面に配置される。尚、基板61におけるコイルアンテナ10の配置の詳細は後述する。基板61には、コイルアンテナ10をRF回路30に接続するための、例えば3つの端子T11、T12、T13が設けられている。コイル1の一端P11は、端子T11に接続される。コイル1の他端P12は、端子T13に接続される。コイル1の両端の略中央P13は、端子T12に接続される。
【0026】
RF回路30は、例えば3個の抵抗31、32、33、例えば7個のコンデンサC31乃至C37、コイル34、35、送受信回路36を含んで構成される。送受信回路36は、制御回路50から受信した制御命令に基づいて、コイルアンテナ10で電波を発生させたり、コイルアンテナ10で受信した電波に基づいて、情報を制御回路50に送信したりする回路である。尚、送受信回路36は、当該送受信回路36を構成する複数の回路素子をまとめたICであり、送受信回路36には、端子T11、T12、T13に接続される例えば4個の端子36a、36b、36c、36dが設けられているものする。端子36aは、例えば、コイルアンテナ10で受信した電波に基づく電圧が印加される端子である。端子36b、36dは、例えば、コイルアンテナ10で電波を発生させるときに、電圧を出力する端子である。端子36cは、例えば、接地GNDされる端子である。例えば、コイル1、抵抗31、32、コンデンサC31、C32は、タイプAの近距離無線通信を行う際、コイルアンテナ10で電波を発生させたり、電波を受信させたりするための共振回路(以下、タイプAの共振回路という)を構成する。尚、コイル1、抵抗31、32、コンデンサC31、C32のインピーダンスは、タイプAの近距離無線通信を行うときに、タイプAの共振回路が共振する値に設定されている。コイル34、コンデンサC35、C36は、コイルアンテナ10で電波を発生する際、端子36bからタイプAの共振回路の接続点P31に、電圧を供給するための回路である。尚、接続点P31の詳細は後述する。コンデンサC37、抵抗33、コンデンサC35、C36は、コイルアンテナ10で電波を受信する際、タイプAの共振回路の接続点P31の電圧を、端子36aに印加するための回路である。コイル35、コンデンサC33、C34は、コイルアンテナ10で電波を発生する際、端子36dからタイプAの共振回路の接続点P32に、電圧を供給するための回路である。尚、接続点P32の詳細は後述する。端子36bは、コイル34、コンデンサC36、抵抗31を介して、端子T11に接続さる。端子36cは、端子T12に接続されるとともに、接地GNDされる。又、端子36cは、コンデンサC31、C32、C34、C35の一端夫々に接続される。端子36dは、コイル35、コンデンサC33、抵抗32を介して端子T13に接続される。コンデンサC31の他端は、抵抗31とコンデンサC36との間に接続される。尚、この接続点が上記接続点P31である。コンデンサC32の他端は、抵抗32とコンデンサC33との間に接続される。尚、この接続点が上記接続点P32である。コンデンサC35の他端は、コイル34とコンデンサC36との間に接続されるとともに、抵抗33の一端に接続される。コンデンサ34の他端は、コイル35とコンデンサC33との間に接続される。端子36aは、コンデンサC37、抵抗33を介して、コンデンサC35の他端に接続される。
【0027】
コイルアンテナ20は、コイル2、21、コンデンサC21、抵抗22を含んで構成される。コイル2、21は、基板61の例えば裏面に配置され、コンデンサC21、抵抗22は、基盤61の例えば表面に配置される。尚、基板61におけるコイルアンテナ20の配置の詳細は後述する。例えば、コイル2、コンデンサC21、抵抗22は、タイプCの近距離無線通信を行う際、コイルアンテナ20で電波を発生させたり、電波を受信させたりするための共振回路(以下、タイプCの共振回路という)を構成する。コイル2の両端の間には、並列に接続されたコンデンサC21、抵抗22が接続される。尚、コイル2、コンデンサC21、抵抗22のインピーダンスは、タイプCの近距離無線通信を行うときに、タイプCの共振回路が共振する値に設定されている。コイル21は、コイルアンテナ20で電波を発生するときに、タイプCの共振回路が共振する電圧をコイル2に印加したり、コイルアンテナ20で受信した電波によってコイル2の両端に現れる電圧を検出したりするためのコイルである。基板61には、コイルアンテナ20をRF回路40に接続するための、例えば2つの端子T21、T22が設けられている。コイル21の一端は、端子T21に接続される。コイル21の他端は、端子T22に接続される。
【0028】
RF回路40は、コンデンサC41、トランス41、44、送受信回路47を含んで構成される。送受信回路47は、制御回路50から受信した制御命令に基づいて、コイルアンテナ20で電波を発生させたり、コイルアンテナ20で受信した電波に基づいて、情報を制御回路50に送信したりする回路である。尚、送受信回路47は、当該送受信回路47を構成する複数の回路素子をまとめたICであり、送受信回路47には、端子T21、T22に接続される例えば4個の端子47a、47b、47c、47dが設けられているものする。端子47a、47bは、例えば、コイルアンテナ20で電波を発生させるとき、電圧を出力する端子である。端子47c、47dは、例えば、コイルアンテナ20で受信した電波に基づく電圧が印加される端子である。トランス41は、端子47a、47bから出力された電圧を、コイルアンテナ20で電波が発生する電圧に変圧するための変圧器である。トランス41は、例えば、巻線42、43を含む。トランス44は、端子T21、T22に印加された電圧を、端子47c、47dで受信できる電圧に変圧するための変圧器である。トランス44は、例えば、巻線45、46を含む。端子47aは、巻線43の一端に接続され、端子47bは、巻線43の他端に接続される。端子47cは、巻線46の一端に接続され、端子47dは、巻線46の他端に接続される。巻線42の一端は、コンデンサC41を介して端子T21に接続されるとともに、巻線45の一端に接続される。巻線42の他端は、端子T22に接続されるとともに、巻線45の他端に接続される。
【0029】
例えば、送受信回路36が、電波を発生する制御命令を制御回路50から受信した場合、送受信回路36は、コイルアンテナ10で電波を発生させる電圧を端子36b、36dから出力する。その電圧は、タイプAの共振回路の接続点P31、P32に印加される。タイプAの共振回路の共振によって、コイルアンテナ10で電波が発生する。
【0030】
例えば、送受信回路47が、電波を発生する制御命令を制御回路50から受信した場合、送受信回路47は、コイルアンテナ20で電波を発生させる電圧を端子47a、47bから出力する。その電圧は、トランス41を介して、コイル21の両端に印加される。コイル21の電圧に基づいてコイル2の両端に現れた電圧で、タイプCの共振回路が共振する。タイプCの共振回路の共振によって、コイルアンテナ20で電波が発生する。
【0031】
例えば、コイルアンテナ10が電子マネーの残金情報の重畳された電波を受信した場合、その電波による電圧が接続点P31に現れる。その接続点P31に現れた電圧は、送受信回路36の端子36aに印加される。端子36aに印加された電圧に基づいて、送受信回路36は、制御回路50に電子マネーの残金情報を送信する。
【0032】
例えば、コイルアンテナ20が電子マネーの残金情報の重畳された電波を受信した場合、その電波による電圧がコイル21の両端に現れる。そのコイル21の両端に現れた電圧は、トランス44を介して、送受信回路47の端子47c、47dに印加される。端子47c、47dに印加された電圧に基づいて、送受信回路47は、制御回路50に電子マネーの残金情報を送信する。
【0033】
===コイルアンテナの配置===
以下、図1、図4を参照して、本実施形態に係るコイルアンテナ10、20の配置について説明する。図1は、本実施形態に係る非接触ICカード読書装置に用いられるコイルアンテナの配置を示す図である。尚、コイル2、21は、基板61の例えば裏面に配置され見えない状態となっているが、説明の便宜上、コイル2は点線で示され、コイル21は一点鎖線で示されている。
【0034】
基板61は、前述のように、基板61の表面(+Z側の面)と裏面(−Z側の面)とに例えば銅の配線パターンを形成できる例えば矩形形状のプリント配線基板である。基板61には、例えば表面と裏面との間を貫通する端子T11、T12、T13、T21、T22が設けられる。基板61の表面には、例えばコイル1、コンデンサC21、抵抗22が配置される。コイル1は、基板61と直交する方向(Z軸方向)に沿った中心軸A(コイルアンテナの中心軸)を中心に例えば矩形形状に2周巻回されて基板61の表面に形成された銅パターンのコイルである。尚、コンデンサC21、抵抗22の配置の詳細は、後述する。基板61の裏面には、例えばコイル2、21が配置される。コイル2は、中心軸Aと平行な中心軸B(コイルアンテナの中心軸)を中心に例えば矩形形状に2周巻回されて基板61の裏面に形成された銅パターンのコイルである。尚、中心軸Bは、例えば基板61に沿って例えば−Y方向に中心軸Aから距離dだけ離れているものとする。コイル21は、中心軸Bを中心に例えば矩形形状に1周巻回されて基板61の裏面に形成された銅パターンのコイルである。コイル21は、例えばコイル2の1周目と2周目の間に配置されているものする。尚、コイル1、2は、例えば形状が同様であり、巻回しのピッチが同様な幅であり、コイル1、2の巻回された面夫々が相互に平行であるものとする。そのとき、コイル1、2は、Z軸方向に基板61の厚さだけ離れる。コイルアンテナ10のコイル1に囲まれる一部の領域と、コイルアンテナ20のコイル2に囲まれる一部の領域とが夫々、基板61の表面、裏面から基板61を介して重なった状態となる。抵抗22、コンデンサC21は、基板61の表面に配置される。コンデンサC21は、コイル2における−Y側でX軸に沿う辺の略中央の位置に設けられる。抵抗22は、コンデンサC21の例えば−Y側に設けられる。前述したように、コンデンサC21、抵抗22は、例えば基板61の裏面で並列に接続された状態でコイル2に接続される。
【0035】
図4は、本実施形態に係る非接触ICカード読書装置におけるコイルアンテナ10、20の中心軸A、Bの間の距離dと、誘導起電力との関係の一例を示す特性図である。尚、コイルアンテナ10、20は、例えば、形状が同様であり、巻数が同様の2周であり、巻回のピッチが同様の幅であり、Z軸方向に基板61の厚さだけ離れた状態で、コイルアンテナ10、20の巻回された面夫々が相互に平行であるものとする。誘導起電力は、例えばコイルアンテナ20で発生する電波によって、コイルアンテナ10の両端に生じる誘導起電力の絶対値を示す。
【0036】
コイルアンテナ10、20は、お互いの電波によって誘導起電力が発生しないように、中心軸A、Bの間の距離dを調整して、お互いの電波の干渉を抑える必要がある。距離dが0の場合、距離dが距離d1よりも短い場合、距離dが距離d1と等しい場合、距離dが距離d1よりも長く距離d2よりも短い場合、距離dが距離d2と等しい場合、距離dが距離d2よりも長く距離d3よりも短い場合、距離dが距離d3以上の場合に分けて説明する。尚、距離d2は距離d1よりも長く、距離d3は距離d2よりも長いものとする。コイルアンテナ20の電波によって電界を発生させ、コイルアンテナ10の両端に誘導起電力が発生しない距離dについて説明する。コイルアンテナ20で電波が発生する場合、コイル2には、例えば交流電流が流れる。尚、コイルアンテナ20で電波が発生する交流電流をコイル2に供給するための交流電源が、例えば端子T21、T22の間に接続され、コイルアンテナ10で発生する誘導起電力を測定するための電圧計が、例えば端子T11、T13の間に接続されているものとして説明する。例えば、コイル2を−Z方向に向かって時計回り方向に流れる電流(以下、電流IAという)に基づいて、以下説明する。
【0037】
<距離dが0の場合>
距離dが0の場合、コイルアンテナ10、20は、基板61を介して完全に重なった状態となる。コイル2の電流IAによって、基板61の表面から裏面に向かう方向にコイルアンテナ10を鎖交する磁束(以下、表から裏へ磁束という)が発生する。その磁束によって、絶対値V1の誘導起電力がコイルアンテナ10に発生する。
【0038】
<距離dが距離d1よりも短い場合>
距離dが距離d1よりも短い場合、コイルアンテナ10、20の一部の領域が基板61を介して重なった状態となる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、基板61の裏面から表面に向かう方向にコイルアンテナ10を鎖交する磁束(以下、裏から表への磁束という)とが発生する。この場合、例えば、表から裏への磁束の方が、裏から表への磁束よりも強い状態である。絶対値V1よりも小さい絶対値の誘導起電力がコイルアンテナ10に発生する。尚、距離dが長くなるに従って、表から裏への磁束が弱くなり、裏から表への磁束が強くなるので、距離dが長くなるに従って、コイルアンテナ10の誘導起電力の絶対値は小さくなる。
【0039】
<距離dが距離d1と等しい場合>
距離dが距離d1と等しい場合、コイルアンテナ10、20の一部の領域が基板61を介して重なった状態となる。尚、この場合、コイルアンテナ10、20が重なる領域の面積は、距離dが距離d1よりも短い場合にコイルアンテナ10、20が重なる領域の面積よりも小さくなる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とが発生する。この場合、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とは、例えば同じ強さとなり、相殺される。コイルアンテナ10には、誘導起電力が発生しない状態となる。
【0040】
<距離dが距離d1よりも長く距離d2よりも短い場合>
距離dが距離d1よりも長く距離d2よりも短い場合、コイルアンテナ10、20の一部の領域が基板61を介して重なった状態となる。尚、この場合、コイルアンテナ10、20が重なる領域の面積は、距離dが距離d1と等しい場合にコイルアンテナ10、20が重なる領域の面積よりも小さくなる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とが発生する。この場合、例えば、表から裏への磁束の方が、裏から表への磁束よりも弱い状態である。絶対値V2よりも小さい絶対値の誘導起電力がコイルアンテナ10に発生する。尚、絶対値V2の詳細は後述する。距離dが長くなるに従って、表から裏への磁束が弱くなり、裏から表への磁束が強くなるので、距離dが長くなるに従って、コイルアンテナ10の誘導起電力の絶対値は大きくなる。
【0041】
<距離dが距離d2と等しい場合>
距離dが距離d2と等しい場合、コイルアンテナ10、20は重ならずに、互いに離れた状態となる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とが発生する。この場合、表から裏への磁束の方が、裏から表への磁束よりも弱い状態である。絶対値V2の誘導起電力がコイルアンテナ10に発生する。
【0042】
<距離dが距離d2よりも長く距離d3よりも短い場合>
距離dが距離d2よりも長く距離d3よりも短い場合、コイルアンテナ10、20は、距離dが距離d2と等しい場合よりも、互いに離れた状態となる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とが発生する。この場合、表から裏への磁束の方が、裏から表への磁束よりも弱い状態である。距離dが長くなるに従って、表から裏への磁束、裏から表への磁束がともに弱くなるので、距離dが長くなるに従って、コイルアンテナ10の誘導起電力の絶対値は小さくなる。
【0043】
<距離dが距離d3以上の場合>
距離dが距離d3以上となった場合、コイルアンテナ10、20は、距離dが距離d2よりも長く距離d3よりも短い場合よりも、互いに離れた状態となる。コイル2の電流IAによって、表から裏への磁束と、裏から表への磁束とがともに発生しない。この場合、コイルアンテナ10には、誘導起電力が発生しない状態となる。
【0044】
コイルアンテナ10、20は、中心軸A、Bの間の距離dが、誘導起電力が最初に発生しなくなる距離d1となるように基板61に配置される。この場合、コイルアンテナ10の一部の領域と、コイルアンテナ20の一部の領域とが重なった状態となる。尚、コイルアンテナ10、20は、例えば同様な形状であるので、この場合、コイルアンテナ10の電波によって、コイルアンテナ20でも誘導起電力が発生しない状態となる。
【0045】
===非接触ICカード読書装置の動作===
以下、図1乃至図4を参照して、本実施形態に係る非接触ICカード読書装置の動作について説明する。
【0046】
非接触ICカード読書装置100の電源釦73を押下してから、非接触ICカード75の残金が表示パネル71に表示されるまでの非接触ICカード読書装置100の動作について説明する。非接触ICカード75は、例えばタイプCの近距離無線通信を行う非接触ICカードであるものとして説明する。
【0047】
例えば、電源釦73を押下して、非接触ICカード読書装置100の電源が投入された場合、制御回路50は、コイルアンテナ10、20で電波が例えば0.5秒毎に交互に発生するようにRF回路30、40に制御命令を送信する。例えば、RF回路30が、電波を発生する制御命令を制御回路50から受信した場合、RF回路30は、コイルアンテナ10で電波を発生させる電圧を送受信回路36の端子36b、36dから出力する。その電圧は、タイプAの共振回路の接続点P31、P32に印加される。タイプAの共振回路の共振によって、コイルアンテナ10で電波が発生する。一方、例えば、RF回路40が、電波を発生する制御命令を制御回路50から受信した場合、RF回路40は、コイルアンテナ20で電波を発生させる電圧を送受信回路47の端子47a、47bから出力する。その電圧は、トランス41を介して、コイル21の両端に印加される。コイル21の電圧に基づいてコイル2の両端に現れた電圧で、タイプCの共振回路が共振する。タイプCの共振回路の共振によって、コイルアンテナ20で電波が発生する。尚、前述の通り、コイルアンテナ10、20は、中心軸A、Bの間の距離dが、距離d1と等しくなるように、基板61に配置されている。よって、コイルアンテナ10、20で発生する電波によって、お互いのコイルアンテナに誘導起電力が発生しないので、コイルアンテナ10、20の電波の干渉が抑えられている。
【0048】
例えば、非接触ICカード読書装置100に、非接触ICカード75が挿入された場合、非接触ICカード75との間で例えばタイプCの近距離無線通信が行われる。例えば非接触ICカード75の電子マネーの残金情報の重畳された電波を、コイルアンテナ20が受信した場合、その電波による電圧がコイル21の両端に現れる。そのコイル21の両端に現れた電圧は、トランス44を介して、送受信回路47の端子47c、47dに印加される。端子47c、47dに印加された電圧に基づいて、RF回路40は、制御回路50に非接触ICカード75の電子マネーの残金を示す残金情報を送信する。制御回路50は、RF回路40から受信した残金情報に基づいて、非接触ICカード75の電子マネーの残金が表示されるように、表示パネル71を制御する。尚、非接触ICカード75が、例えばタイプAの近距離無線通信を行う非接触ICカードである場合の非接触ICカード読書装置100の動作も同様であるので、その説明は省略する。
【0049】
前述したように、コイルアンテナ10、20は、中心軸A、Bの間の距離dが、距離d1と等しくなるように基板61に配置される。尚、距離d1は、例えば、コイルアンテナ20が電波を発生している際に、中心軸A、Bの間の距離dを離していったとき、コイルアンテナ10でコイルアンテナ20の電波による誘導起電力が最初に発生しなくなる距離である。そのとき、コイルアンテナ10の一部の領域と、コイルアンテナ20の一部の領域とは重なった状態となる。よって、近距離無線通信を行うときに、コイルアンテナで発生する電波の干渉を抑えることができる。又、コイルアンテナ10の一部の領域と、コイルアンテナ20の一部の領域とが重なった状態となっているので、コイルアンテナ10、20を配置するスペースを小さくでき、コンパクトな非接触ICカード読書装置100を提供できる。又、タイプAの近距離無線通信を行う非接触ICカードとタイプCの近距離無線通信を行う非接触ICカードは夫々、例えば非接触ICカード読書装置100の内部における同じ位置で、コイルアンテナ10、20との間で電波を送受信できる。よって、例えばタイプAの近距離無線通信を行う非接触ICカードを非接触ICカード読書装置100に挿入しても、例えばタイプCの近距離無線通信を行う非接触ICカードを非接触ICカード読書装置100に挿入しても、決済を行うことができる。従って、使い勝手のよい非接触ICカード読書装置100を提供できる。
【0050】
又、コイルアンテナ10、20は夫々、基板61の例えば表面、裏面に配置されるので、非接触ICカード読書装置100の部品点数及びコストを抑えることができる。
【0051】
又、コイルアンテナ10、20は例えば矩形形状とされる。よって、非接触ICカード読書装置100の内部に配設される例えば汎用的な矩形形状の基板61の、配線を配置する面を有効に利用できるので、非接触ICカード読書装置100のコストを抑えることができる。
【0052】
又、コイルアンテナ10、20は、近距離無線通信を行うための電波を交互に発生するように制御される。よって、コイルアンテナ10、20を有する非接触ICカード読書装置100は、コイルアンテナ10の近距離無線通信方式で近距離無線通信を行う非接触ICカードと、コイルアンテナ20の近距離無線通信方式で無線通信を行う非接触ICカードとの間で通信を行うことができる。従って、例えば複数の近距離無線通信方式の非接触ICカードとの間で近距離無線通信できる非接触ICカード読書装置100を提供できる。
【0053】
尚、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0054】
本実施形態においては、コイルアンテナ10、20を夫々、基板61の例えば表面、裏面に配置する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コイルアンテナ10、20を夫々、別の基板に配置して、中心軸A、Bの間の距離dが距離d1と等しくなるように、コイルアンテナ10が配置された基板と、コイルアンテナ20が配置された基板とを非接触ICカード読書装置100の内部に配設してもよい。この場合、例えば、コイルアンテナ10、20の電波の干渉の状態に応じて、電波の干渉が抑えられるように、コイルアンテナ10の基板の位置とコイルアンテナ20の基板の位置を調整して、中心軸A、Bの間の距離dを調整できるので、電波の干渉の状態を調整可能な非接触ICカード読書装置100を提供できる。
【0055】
又、本実施形態においては、コイルアンテナ10、20を矩形形状とし、巻数が例えば2の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コイルアンテナ10、20の形状を、コイルアンテナ10、20が配置される基板の形状に応じて、例えば円形状としてもよい。又、例えば、コイルアンテナ10、20を、非接触ICカード75との間で確実に近距離無線通信を行える形状とし、巻数を他の巻数としてもよい。この場合、非接触ICカード75との間で確実に近距離無線通信を行うことができる非接触ICカード読書装置100を提供できる。
【0056】
又、本実施形態においては、非接触ICカード読書装置100のカード挿入口74に非接触ICカード75を挿入して決済する構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、決済を行うときに、非接触ICカード75を筐体70の上面にかざしたり接触させたりして、非接触ICカード75と非接触ICカード読書装置100との間で近距離無線通信が行われるように、基板61を筐体70における例えば上面の裏側に設ける構成としてもよい。この場合、決済を行うときに、非接触ICカード75をカード挿入口74に挿入する手間を省けるので、使い勝手のよい非接触ICカード読書装置100を提供できる。
【符号の説明】
【0057】
1、2、21 コイル
10、20 コイルアンテナ
30、40 RF回路
36、47 送受信回路
50 制御回路
61 基板
70 筐体
71 表示パネル
72 決済釦
73 電源釦
74 カード挿入口
75 非接触ICカード
100 非接触ICカード読書装置
200 無線通信回路
d、d1、d2、d3 距離
V1、V2 絶対値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブ型の第1非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第1近距離無線通信方式の第1コイルアンテナと、
パッシブ型の第2非接触ICカードから情報を読み取るときに用いられる第2近距離無線通信方式の第2コイルアンテナと、を備え、
前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは、前記第1コイルアンテナが近距離無線通信のための電波を発生するときに前記第2コイルアンテナが誘導起電力を発生しない位置で、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナの一部の領域が重なるように配置される
ことを特徴とする非接触ICカード読取装置。
【請求項2】
前記第1コイルアンテナが近距離無線通信のための電波を発生するとともに、前記第1コイルアンテナの中心軸と前記第2コイルアンテナの中心軸との間の距離が離されていき、前記第2コイルアンテナが誘導起電力を最初に発生しなくなる位置で、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは、前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナの一部の領域が重なるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード読取装置。
【請求項3】
前記第1コイルアンテナは基板の表面に配置され、
前記第2コイルアンテナは前記基板の裏面に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触ICカード読取装置。
【請求項4】
前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは矩形形状を呈する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の非接触ICカード読取装置。
【請求項5】
前記第1コイルアンテナ及び前記第2コイルアンテナは、近距離無線通信を行うための電波を交互に発生するように制御される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の非接触ICカード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198615(P2012−198615A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60791(P2011−60791)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】