説明

非接触ICカード通信調整板

【課題】外部読取装置や複合型の非接触ICカードの仕様の如何にかかわらず、読取エラーの発生が極めて少ない非接触ICカード通信調整板を提供する。
【解決手段】非接触ICカード通信調整板1のシールドシート10の片面または両面に積層した2枚一組の磁性シート20をシールドシート10上で位置の変更を可能なものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部読取装置が発信する電磁波を利用して外部読取装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、外部読取装置と非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非接触ICカード通信調整板としては、例えば本願出願人が提案した特許文献1および特許文献2に示すようなものがある。
すなわち、特許文献1は、電磁シールド効果を有する略四辺形の電磁シールド層の片面または両面に該電磁シールド層よりもやや狭い面積を有する高透磁層を積層したものである。そして、高透磁層は、電磁シールド層にほぼ相似の形状を有しており、その周縁外側は電磁シールド層に囲まれるように形成されている。
【0003】
また、特許文献2は、並行する帯状の磁性シートを有しており、それぞれの磁性シートは、シールドシートを非接触ICカードに重ね合わせた使用状態において該非接触ICカードの両側長端に沿うようにシールドシートの一方の端縁から他方の端縁まで延設したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−350748号公報
【特許文献2】特許第4096065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、電磁シールド層の外周縁部を残してその内側全体に高透磁層が形成されているので、外部読取装置と非接触ICカードとの通信は良好にすることができるが、高透磁層の占める面積が大きいので高価になるという問題点があった。また、製造過程においては、電磁シールド層の外周縁部を残すために、高透磁層の周縁が電磁シールド層の外周縁に重ならないようにしなければならず、そのための所定レベル以上の製造技術が必要であるという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2では、並行する帯状の磁性シートは、シールドシートの一方の端縁から他方の端縁まで延設されているので、長いシールドシートに並行する帯状の磁性シートを積層したものを所定の長さで切断するだけでよく、製造過程が容易であり、また、磁性シートが特許文献1のものよりも少なくて済むので、その分だけコストの低いものとなっている。
【0007】
しかしながら、近年は、ICカードの多機能化が進み、接触型ICチップと非接触型ICチップとを同一カードに搭載した複合型のICカード(複合型の非接触ICカード)が多くなってきている。このような、複合型のICカードでは、非接触ICカードとしての部品であるアンテナの形状、配置、大きさ等が複合型ではない非接触ICカードに比べると限定されることがある。このため、並行する帯状の磁性シート同士の間にシールドシートが露出した中間領域を有している特許文献2のタイプのものでは、使用状態においてその中間領域に非接触ICカードのアンテナの多くの部分が位置してしまうものも有り得る。この場合、外部読取装置は、非接触ICカードの情報を読み取り難くなるという問題点がある。
【0008】
また、非接触ICカードから情報を読み取るための外部読取装置は、読み取り性能が統一されているわけではない。例えばSuica(東日本旅客鉄道株式会社の登録商標)等の非接触ICカードからなる乗車カードを読み取る外部読取装置の性能は、北海道、東日本、西日本など、地域によって異なるところがある。このため、従来の非接触ICカード通信調整板を使用した場合に、同じ非接触ICカードであっても地域によっては外部読取装置が良好に情報の読み取りをできたり、できなかったりするという問題点がある。
【0009】
また、公表されること無く高反応のICカードが発行されてもいる。非接触ICカードに内蔵のICチップやアンテナの改良又は高性能化により、外部読取装置との応答性に変化が起きている。例えば同じSuicaであっても発行時期によっては、外部読取装置に面していない被接触ICカード通信調整板の裏側に重ねた非接触ICカードの情報まで読み取られてしまうものがあるが、発行時期の古いものでは、応答性能が低いために外部読取装置に向けても外部読取装置側で情報が読み取れないという場合もある。
【0010】
このように従来の非接触ICカード通信調整板を使用した場合、外部読取装置の読み取り性能が略同じであっても、非接触ICカードが発信する電波の強さの違いによって外部読取装置が良好にデータの読み取りをできたり、できなかったりするという問題点がある。
【0011】
逆に、何れの場合であっても従来の非接触ICカード通信調整板の両側に非接触ICカードを重ねて使用している場合、外部読取装置に面していない非接触ICカード通信調整板の裏側に重ねた非接触ICカードの情報まで外部読取装置が読み取ってしまうという問題点もある。
【0012】
また、外部読取装置の仕様変更によっても、同一地域でこれまで不都合なく使用できていた非接触ICカード通信調整板では、外部読取装置に面していない非接触ICカード通信調整板の裏側まで電磁波が回り込んでしまって、非接触ICカード通信調整板の裏側に重ねた非接触ICカードの情報を外部読取装置が読み取ってしまうことが起こり得るという問題点がある。
【0013】
本発明は、このような従来の技術が有する読取エラーの問題点に着目してなされたもので、複合型の非接触ICカードの使用に際して、外部読取装置や複合型の非接触ICカードの仕様の如何にかかわらず、読取エラーの発生が極めて少ない非接触ICカード通信調整板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。[1] 外部読取装置(40)が発信する電磁波を利用して前記外部読取装置(40)と非接触で通信することができる非接触ICカード(30)に重ね合わせて使用する、前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板(1)において、
前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を遮断ないし減衰させるシールドシート(10)と、該シールドシート(10)の片面または両面に積層され、前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を透過させる磁性シート(20)と、を備え、
前記シールドシート(10)は、該シールドシート(10)を前記非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において前記非接触ICカード(30)の両側長辺(31a,31a)に沿うシールドシート長辺部(10a,10a)と前記非接触ICカード(30)の両側短辺(31b、31b)に沿うシールドシート短辺部(10b、10b)とを有するものであり、
前記磁性シート(20)は、前記シールドシート(10)上の位置を変更可能な少なくとも2枚一組の大片の磁性シート(20,20)である
ことを特徴とする非接触ICカード通信調整板(1)。
【0015】
[2] 外部読取装置(40)が発信する電磁波を利用して前記外部読取装置(40)と非接触で通信することができる非接触ICカード(30)に重ね合わせて使用する、前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板(1)において、
前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を遮断ないし減衰させるシールドシート(10)と、該シールドシート(10)の片面または両面に積層され、前記外部読取装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を透過させる磁性シート(20)と、を備え、
前記シールドシート(10)は、該シールドシート(10)を前記非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において前記非接触ICカード(30)の両側長辺(31a,31a)に沿うシールドシート長辺部(10a,10a)と前記非接触ICカード(30)の両側短辺(31b、31b)に沿うシールドシート短辺部(10b、10b)とを有するものであり、
前記磁性シート(20)は、前記シールドシート(10)上の位置を変更可能な少なくとも2枚一組の大片の磁性シート(20,20)であり、該一組の大片の磁性シート(20,20)のうち、一方は、前記シールドシート(10)の両短辺部(10b、10b)のうち一方にのみと接し、他方は、前記シールドシート(10)の両短辺部(10b、10b)のうち他方にのみと接し、それぞれシールドシート(10)の短辺部(10b、10b)に接する辺縁(23a)の長さはシールドシート(10)の短辺部(10b、10b)の長さの1/2よりも短い
ことを特徴とする非接触ICカード通信調整板(1)。
【0016】
[3] 前記シールドシート(10)は、表面に開口部(11a)が内部(11b)よりも狭く形成されたガイド溝(11)を有し、
前記大片の磁性シート(20)は、前記ガイド溝(11)に移動可能に嵌合した突起部(25)を有し、前記ガイド溝(11)に沿って位置の変更を可能とした
ことを特徴とする項[1]または[2]に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0017】
[4] 前記シールドシート(10)は、表面に開口部が内部よりも狭く形成された複数の固定穴を有し、
前記大片の磁性シート(20)は、前記複数の固定穴に嵌脱可能な突起部を有し、該突起部を前記固定穴に選択的に嵌脱させて位置の変更を可能とした
ことを特徴とする項[1]または[2]に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0018】
[5] 前記大片の磁性シート(20)それぞれは、片面に前記シールドシート(10)との貼着剥離が自在な粘着剤層を有する
ことを特徴とする項[1]または[2]に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0019】
[6] 前記シールドシート(10)は、前記大片の磁性シート(20)の移動位置を示す目印(12)を有する
ことを特徴とする項[1]から[5]の何れか一項に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0020】
前記本発明は次のように作用する。
非接触ICカード通信調整板(1)のシールドシート(10)は、透過しようとする電磁波を遮断ないし減衰することができる導電性のシートである。また、磁性シート(20)は、電磁波を空気層よりも高密度に透過させることができるものである。
【0021】
したがって、非接触ICカード(30)の表裏両面のうち外部読取装置(40)に面する側に非接触ICカード通信調整板(1)が重ね合わされているような状態にあるときは、非接触ICカード通信調整板(1)側の面が磁性シート(20)を備える面であるか否かにかかわらず、シールドシート(10)が外部読取装置(40)からの電磁波を遮断して、非接触ICカード(30)と外部読取装置(40)との通信を防止することができる。
【0022】
逆に、外部読取装置(40)に面する側とは反対側で非接触ICカード通信調整板(1)が非接触ICカード(30)に重ね合わさった状態にあり、すなわち、非接触ICカード(30)が外部読取装置(40)に面するような状態にあり、かつ、その重ね合わさった非接触ICカード通信調整板(1)側の面が磁性シート(20)を備えない面であるときは、外部読取装置(40)からの電磁波は、非接触ICカード(30)を透過した後、シールドシート(10)によって減衰させられるので、この場合にも外部読取装置(40)との通信を防止することができる。
【0023】
これに対して、非接触ICカード通信調整板(1)に重ね合わさった非接触ICカード(30)が外部読取装置(40)に面するような状態にあり、かつ、その重ね合わさった非接触ICカード通信調整板(1)側の面が磁性シート(20)を備える面であるときは、外部読取装置(40)からの電磁波は、非接触ICカード通信調整板(1)に遮られずに直接に非接触ICカード(30)に至る。そして、アンテナコイル(33)が電磁波を受信すると、磁気誘導により非接触ICカード(30)内に電流が供給され、これにより、非接触ICカード(30)が動作して電磁波を発信する。このようにして、非接触ICカード通信調整板(1)は、非接触ICカード(30)と外部読取装置(40)との通信を可能にしたり、防止したりすることができる。
【0024】
非接触ICカード通信調整板(1)は、シールドシート(10)の片面または両面に磁性シート(20)が積層されている。この磁性シート(20)は、シールドシート(10)上の位置を変更可能な少なくとも2枚一組の大片の磁性シート(20,20)である。したがって、外部読取装置(40)や非接触ICカード(30)の仕様の違いによって、外部読取装置(40)による非接触ICカード(30)の情報の読み取りに不具合が生じる場合には、使用者がシールドシート(10)上の大片の磁性シート(20,20)の位置を適宜に変更することによって不具合が生じないようにすることができる。
【0025】
シールドシート(10)がその表面にガイド溝(11)を有し、大片の磁性シート(20)にシールドシート(10)のガイド溝(11)に移動可能に嵌合する突起部(25)を設けたものにあっては、大片の磁性シート(20)をシールドシート(10)上の適宜な位置で突起部(25)をガイド溝(11)の開口部(11a)から内部(11b)に嵌め込めばよい。
【0026】
また、ガイド溝(11)に代えて複数の固定穴をシールドシート(10)の表面に設け、大片の磁性シート(20)には、複数の固定穴に嵌脱可能な突起部を設けたものにあっては、該突起部を適宜に選択した固定穴に突起部を嵌め込めばよい。このようにして、大片の磁性シート(20)のシールドシート(10)上の位置を変更することによって、外部読取装置(40)や非接触ICカード(30)の仕様の違いに対応することができ、外部読取装置(40)の読取エラーの発生を防止することができる。
【0027】
シールドシート(10)上の大片の磁性シート(20)の位置を変更する手段として、大片の磁性シート(20)の片面にシールドシート(10)との貼着剥離が自在な粘着剤層を形成しても良い。この場合、シールドシート(10)にガイド溝(11)や固定穴を設けたり、大片の磁性シート(20)に突起部(25)などを設けたりする必要がなくなるので、非接触ICカード通信調整板(1)の製造コストを低く抑えることができる。
【0028】
また、シールドシート(10)側に、大片の磁性シート(20)の移動位置を示す目印(12)を設けたものにあっては、大片の磁性シート(20)を適宜な位置に迅速かつ正確に移動、変更することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の非接触ICカード通信調整板によれば、外部読取装置や非接触ICカードの仕様の異なる地域で使用する場合や同一地域内で外部読取装置や非接触ICカードの仕様が変更された場合であっても、シールドシート上の大片の磁性シートの位置を変更することにより、外部読取装置が読取エラーをすることなく非接触ICカードから情報を読み取れるようにすることができる。
【0030】
また、大片の磁性シートの片面にシールドシートとの貼着剥離が自在な粘着剤層を形成することにより、シールドシート上における大片の磁性シートの位置変更が可能な非接触ICカード通信調整板を安価に提供することができる。
【0031】
また、シールドシート側に、大片の磁性シートの位置を示す目印を設けることにより、誰でも大片の磁性シートを適宜な位置に迅速かつ正確に移動、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板を示す平面図である。
【図2】図1の非接触ICカード通信調整板における磁性シートを示す平面図である。
【図3】図1の非接触ICカード通信調整板を長辺側から見た側面図である。
【図4】図2における磁性シートの突起部とシールドシートにおけるガイド溝との嵌合状態部分を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の作用を説明する図である。
【図6】非接触ICカードを示す斜視図である。
【図7】非接触ICカードの使用状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明の好適な各種の実施の形態を説明する。
図1から図5は、本発明の実施の形態を示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板を示す平面図であり、図2は、図1の非接触ICカード通信調整板における磁性シートを示す平面図であり、図3は、図1の非接触ICカード通信調整板を長辺側から見た側面図である。図4は、図2における磁性シートの突起部とシールドシートにおけるガイド溝との嵌合状態部分を示す模式図である。図5は、本発明の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の作用を説明する図である。
また、図6は、非接触ICカードを示す斜視図であり、図7は、非接触ICカードの使用状態を示す概略図である。
【0034】
図6および図7に示すように、非接触ICカード通信調整板1を使用する非接触ICカード30は、カード型の本体31にICチップ32と該ICチップ32に接続されたアンテナコイル33とが埋設されたものであり、電磁波を利用して無線で非接触に外部読取装置40との間でデータやプログラムの読み書きを行うものである。外部読取装置40はカードリーダ・ライタ等である。
【0035】
外部読取装置40側から非接触ICカード30に誘導電磁波を照射すると、非接触ICカード30側ではアンテナコイル33が誘導電磁波を受信して、アンテナコイル33に誘導起電力が生じる。この誘導起電力が非接触ICカード30の駆動電力となるとともに誘導電磁波に重畳された電磁波によりICチップ32に記憶されたデータが読み取られる。
【0036】
このような非接触ICカード30に重ね合わせて使用する非接触ICカード通信調整板1は、外部読取装置40と非接触ICカード30との間での通信を防止するために、非接触ICカード30と外部読取装置40との間の電磁波を遮断ないし減衰させる作用を発揮することができるようにしたものである。
【0037】
図2および図3に示すように、非接触ICカード通信調整板1は、電磁波を遮断ないし減衰させるためのシールドシート10に電磁波の透過する磁性シート20を積層したものである。この非接触ICカード通信調整板1は、図7に示すように外部読取装置40と非接触ICカード30との間で行われる非接触の通信状態を調整するために使用するものである。
【0038】
シールドシート10は、略四辺形の平面形状に形成されており、その大きさは、非接触ICカード30と重ね合わせたときに非接触ICカード30に内蔵されるアンテナコイル33より大きいものであることが好ましい。これにより、非接触ICカード通信調整板1を非接触ICカード30に重ね合わせたときに、非接触ICカード通信調整板1の周縁からの電磁波の回り込みを減少させて、外部読取装置40と非接触ICカード30との間の電磁波を確実に遮断ないし減衰させるようにすることができる。
【0039】
非接触ICカード30のアンテナコイル33は、送信と受信を兼用するものであるが、これには限定されず、送信用アンテナと受信用アンテナとを別個に備えていてもよい。送信用と受信用とに別個のアンテナを備えている場合には、いずれか一方のアンテナをシールドシート10により遮蔽することができれば、非接触ICカード30と外部読取装置40との通信を防止することができる。
【0040】
このシールドシート10は、導電性を有することによって電磁シールド効果が得られる素材を用いて形成されている。金属であれば、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル等である。また、金属以外の物質としては、例えば導電性セラミックなどを用いることができる。これら金属等は、板状に形成したものが使用される。
【0041】
シールドシート10は、所定の媒体から成る基体(Base)にメッシュ状、ラティス状、箔状、あるいは板状等に形成した金属等を貼付等して設けたものであってもよい。基体の素材としては、例えば、シート状のプラスチック、布、紙等を使用することができる。
【0042】
また、シールドシート10は、平板状に形成した基体に粉状の金属等を塗布したものであってもよい。また、粉状のプラスチックに金属粉を含有させ、これを層状に成形したものであってもよい。さらに、層状の基体に金属等を貼付したり、縫い込んだりしてシールドシート10を構成するようにしてもよい。
【0043】
基体に使用するプラスチックは、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)その他の任意の樹脂材料を用いることができる。これら樹脂材料を基体とする場合、シールドシート10は、基体中に導電性パウダーが混入されたプラスチックフィルム状に形成されたものや表面に金属薄膜が蒸着されたプラスチックフィルム状に形成されたもの、表面に金属箔が貼り付けられたプラスチックフィルム状に形成されたものや表面に導電性樹脂が塗布されたプラスチックフィルム状に形成されたもの、他にも内部に金属線又は金属製の網が埋め込まれたプラスチックフィルム状に形成されたもの等にすることができる。
以上のようにして形成したシールドシート10は、透過しようとする電磁波を遮蔽することができる。
【0044】
このシールドシート10に積層する磁性シート20は、非接触により外部読取装置40と通信する非接触ICカード30が当該外部読取装置40と通信するのを誘導する役割を果たすものであり、シールドシート10との組み合わせにより、非接触ICカード30の通信状態を好適に調整するものである。
【0045】
電磁波を遮断ないし減衰させるシールドシート10は、略長方形のものであり、4つの角に丸みが付けられている。シールドシート10は、非接触ICカード通信調整板1を非接触ICカード30に重ね合わせた使用状態において非接触ICカード30の両側長辺31a,31aそれぞれに沿うシールドシート長辺部10a,10aと非接触ICカード30の両側短辺31b,31bそれぞれに沿うシールドシート短辺部10b,10bとを有している。
【0046】
図1に示すように、本実施の形態の非接触ICカード通信調整板1は、シールドシート10に積層される磁性シートとして2枚の大片の磁性シート20,20を有している。図3においては、シールドシート10の片面だけに磁性シート20,20が積層されているように示したが、両面に積層してもよい。磁性シート20,20を片面だけに積層したものでは、その片面を使用する場合にのみ非接触ICカード通信調整板1としての機能が発揮されるが、磁性シート20,20を両面に積層したものでは、非接触ICカード通信調整板1の両側に1枚ずつ非接触ICカードを重ねてそれぞれの非接触ICカードを使用することができる。
【0047】
磁性シート20は、透磁率μに優れた材料が使用される。例えば、使用する電磁波の周波数において、比透磁率は100以上のものが好ましく、より好ましくは1000以上のものである。具体的には、パーマロイ、フェライト、センダスト、方向性ケイ素鋼等を使用することができる。これにより、磁性シート20は、電磁波を空気層よりも高密度に透過させることができる。
【0048】
磁性シート20,20は、同一の形状のものである。例示したものは、四辺形のものであり、シールドシート10の長辺部10a、10aの延びる方向に平行に延びる磁性シート長辺21と該磁性シート長辺21に対して傾斜した方向に延びる傾斜辺22およびシールドシート10の短辺部10b、10bの延びる方向に平行に延びる磁性シート短辺23,24とから成っている。
【0049】
磁性シート短辺23,24は長さが異なり、短い方の磁性シート短辺23は、辺縁23aがシールドシート10の短辺部10b、10bの一方の辺縁と重なるように配置されている。磁性シート短辺23の辺縁23aの長さは、シールドシート10の短辺10bの長さの1/2よりも短くなっている。この辺縁23aは、概して短い方が良い。
【0050】
一方、長い方の磁性シート短辺24は、その辺縁がシールドシート10の短辺部10bには至っていない。したがって、磁性シート20は、シールドシート10の一方の短辺部10bのみと接している。
【0051】
図1、図3および図4に示したように、シールドシート10の表面には、1枚の磁性シート20につき2本のガイド溝11,11が平行に形成されている。図4に示したように、ガイド溝11,11は、その開口部11aが内部11bよりも狭く形成されている。ガイド溝11,11は、シールドシート10の短辺部10bが延びる方向に延びている。このガイド溝11は、例えば幅が0.5mmであり、長さが1.5mmのものである。
【0052】
一方、磁性シート20には、ガイド溝11に移動可能に嵌合する突起部25が設けられている。突起部25は、断面がガイド溝11の開口部11aよりも大きいがガイド溝11の内部11bに収容される大きさの頭部25aが形成されている。
【0053】
非接触ICカード通信調整板1は、磁性シート20に設けられた突起部25をシールドシート10に形成されたガイド溝11に嵌合させることによって機能する。磁性シート20は、突起部25をガイド溝11内で移動できる範囲で位置を変えることができる。
【0054】
図1において、実線で示した状態は、2枚の磁性シート20,20それぞれの傾斜辺22,22が接して、全体として1枚の磁性シートを形成するように磁性シート20,20を配置した例を示している。また、破線で示したものは、2枚の磁性シート20,20それぞれの傾斜辺22,22の間にシールドシート10が露出するように、磁性シート20,20を配置した例を示している。
【0055】
破線に重なって実線で示したものは、磁性シート20の位置を変更する際に、適宜な位置に迅速且つ正確に移動、変更できるように磁性シート20の固定位置を示す目印12である。目印12は、2枚の磁性シート20,20それぞれにつき複数の目印12が設けられている。図1では、それぞれの磁性シート20,20につき一本ずつ示し、他の目印の図示は省略されている。
【0056】
以上のように構成される非接触ICカード通信調整板1は、非接触ICカード30と略同じ大きさであってもよいし、ある程度余裕のある大きさであっても良い。
【0057】
次に本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1の作用を説明する。
図5は、本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1の両面に磁性シート20を設けたもののそれぞれの面に非接触ICカード30a,30bを重ね合わせた使用状態での非接触ICカード通信調整板1の作用を説明する図である。図示した使用状態では、非接触ICカード通信調整板1のシールドシート10に磁性シート20が積層された両面にそれぞれ非接触ICカード30a,30bが重ね合わせられている。
【0058】
図5において、矢印は、非接触ICカード30a,30bの情報を読み取るための電磁波(信号)を示している。また、「○」印は、通信が正常に行われることを示し、「×」印は、通信が正常に行われないことを示す。
【0059】
図5においてシールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう電磁波は、非接触ICカード30aの裏面側に配置されている磁性シート20によってシールドシート10の影響が軽減される。これにより、非接触ICカード30aは、外部からの電磁波を問題なく受信することができ、また、非接触ICカード30aから電磁波を発信することができる。これは、高透磁率である磁性シート20中には磁界が集中しやすいため、非接触ICカード30aも磁界の中に置かれることによるものである。このため、非接触ICカード30aは、外部からの電磁波を受信し、また、電磁波を発信することができる。したがって、シールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう方向に外部読取装置40が電磁波を発信したときには、非接触ICカード30aと外部読取装置40との間で通信をすることができる。
【0060】
一方、同じシールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう電磁波は、非接触ICカード通信調整板1のシールドシート10によって遮蔽されるので、シールドシート10の右側に重ね合わせられた非接触ICカード30bに到達することはない。このため、非接触ICカード30bが非接触ICカード通信調整板1を挟んで反対側から来る電磁波を受信してしまうことはなく、外部読取装置40と非接触ICカード30bとの間の不所望の通信を防止することができる。
【0061】
このような作用は、シールドシート10の右側から非接触ICカード30bに向かう電磁波についても全く同様のことが言える。
【0062】
一般に、導体(シールドシート10)の内部には電磁波が存在せず、また、空気と導体との境界面でも境界条件より電磁波が充分に存在しない性質を有する。このため、例えば図5に示すように非接触ICカード30bを読み取るための電磁波が右側から発信されても、非接触ICカード30bの裏面に配置されるシールドシート10のために電磁波が減衰してしまう。これにより、非接触ICカード30bは、非接触ICカード30bに対して電磁波を発信した外部読取装置40と通信することができない。
【0063】
また、非接触ICカード30aに対してシールドシート10の右側から進行して来る電磁波は、非接触ICカード30bに対してシールドシート10の左側から進行して来る電磁波がシールドシート10に遮断されてしまうのと同様にシールドシート10によって遮断されるので、非接触ICカード30aに到達することがない。このため、非接触ICカード30aによる電磁波の受信は行われず、シールドシート10の右側にある外部読取装置40と非接触ICカード30aとの通信は妨げられる。
【0064】
本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1によれば、非接触ICカード30a,30bと非接触ICカード通信調整板1との重ね合わせ方および非接触ICカード通信調整板1に重ね合わせた非接触ICカード30a,30bを外部読取装置40が発する電磁波が来る方向に対してどのように位置させるかによって、非接触ICカード30a,30bと外部読取装置40との通信を好適に調整することができる。
【0065】
非接触ICカード通信調整板1は、シールドシート長辺部10a,10aに沿って磁性シート長辺21,21の辺縁との間にシールドシート10の露出部分が延びている。このシールドシート10の露出部分が有ることにより、非接触ICカード通信調整板1の表裏両側に非接触ICカード30を配置した使用状態であっても、外部読取装置40が外部読取装置40に面する非接触ICカード通信調整板1の表側とは反対の裏側に配置された非接触ICカード30の情報をシールドシート長辺部10a,10a側から読み取ってしまう読込エラーがほぼ完全に防止される。
【0066】
また、長さの短いシールドシート短辺部10b,10bの辺縁には、2枚の磁性シート短辺23,24のうち短い方の磁性シート短辺23の辺縁23aだけが至っているが、辺縁23aの長さは、シールドシート10の短辺部10bの長さの1/2よりも短くなっており、辺縁23a以外の周縁部ではシールドシート10が露出している。このため、外部読取装置40が辺縁23a以外の周縁部から非接触ICカード通信調整板1の裏側に配置された非接触ICカード30を読み込んでしまう読込みエラーが防止される。これにより、シールドシート短辺部10b,10b側からの読取エラーの可能性が低くなっている。
【0067】
本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1は、磁性シート20,20の位置をシールドシート10の短辺部10bの延びる方向に移動させることができる。磁性シート20,20は、それぞれ互いに同方向に移動させることもできるし、相反する方向に移動させることもできる。磁性シート20は、その突起部25がシールドシート10のガイド溝11に移動可能に嵌合しているので、ガイド溝11に沿って移動させればよい。
【0068】
したがって、図1の実線で示したように2枚の磁性シート20,20をそれぞれの傾斜辺22,22が接するように配置して、磁性シート20,20が全体で1枚の磁性シートとなるようにすることもできるし、傾斜辺22,22との間にシールドシート10が露出するように配置することもできる。
【0069】
このように磁性シート20,20の位置を変更できるので、すなわち、シールドシート10上での磁性シート20,20の占める領域の位置や形状を変更することができるので、複合型の非接触ICカードの使用に際して、外部読取装置40や複合型の非接触ICカードの仕様の如何にかかわらず、読取エラーの発生が極めて少ない非接触ICカード通信調整板1とすることができる。
【0070】
例えば、応答性能が低い非接触ICカード30の場合には、2枚の磁性シート20,20それぞれをシールドシート10の長辺部10a側に向けて移動させることにより、非接触ICカード30のアンテナのより多くの部分を磁性シートが覆うので、より多くの電磁波がアンテナに供給されて非接触ICカード30と外部読取装置40との間の通信を良好にすることができる。
【0071】
一方、応答性が高い非接触ICカード30の場合には、2枚の磁性シート10,10をシールドシート10の中央寄りに移動させてシールドシート10の外周部の割合を大きくすることにより、外部読取装置40に面した非接触ICカード通信調整板1の面の反対側の面に重ねた非接触ICカード30が過剰に反応しないように調整することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、本実施の形態においては、磁性シート20は、図示したような四辺形としたが、四辺形に限られない。
また、傾斜辺22は直線状に示したが屈折した線であっても良いし、曲線であっても良い。
【0073】
また、ガイド溝11の幅、長さ、本数等は、前記し、図示したものに限られない。さらに、ガイド溝11の延びる方向すなわち磁性シートを移動させる方向は、シールドシート10の短辺部10bの延びる方向に限定されず、移動によって磁性シート20がシールドシート10からはみ出ないようにすればどのような方向であってもよいし、円や曲線を描くような移動方向にしてもよい。
【0074】
なお、ガイド溝11に代えて複数の固定穴をシールドシート10の表面に設け、大片の磁性シート20には、複数の固定穴に嵌脱可能な突起部を設けてもよい。この場合、突起部を固定穴から外してから適宜に選択した固定穴に嵌め込み直せばよい。このようにして、大片の磁性シート20のシールドシート10上の位置を変更することができ、外部読取装置40の読取エラーの発生を防止することができる。
【0075】
また、シールドシート10上にガイド溝11や固定穴を設けず、大片の磁性シート20には突起を設けずに、大片の磁性シート20の片面にシールドシート10との貼着剥離が自在な粘着剤層を設けても良い。
【0076】
また、磁性シート20に設けた突起部25は、磁性シート20に直接に設けるのではなく、例えば磁性シート20と同一形状のベースシートの上面に磁性シート20を貼着し、下面に突起部25を設けてもよい。ベースシートの素材は、例えばシールドシート10と同じものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る非接触ICカード通信調整板の思想は、非接触ICカードの情報を外部読取装置で読み取るような使用態様のものであれば、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…非接触ICカード通信調整板
10…シールドシート
10a…シールドシート長辺部
10b…シールドシート短辺部
11…ガイド溝
11a…開口部
11b…内部
12…目印
20…磁性シート
21…磁性シート長辺
22…傾斜辺
23…磁性シート短辺
23a…辺縁
24…磁性シート短辺
25…突起部
25a…頭部
30…非接触ICカード
31…本体
31a…非接触ICカードの長辺
31b…非接触ICカードの短辺
32…ICチップ
33…アンテナコイル
40…外部読取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部読取装置が発信する電磁波を利用して前記外部読取装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板において、
前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を遮断ないし減衰させるシールドシートと、該シールドシートの片面または両面に積層され、前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を透過させる磁性シートと、を備え、
前記シールドシートは、該シールドシートを前記非接触ICカードに重ね合わせた使用状態において前記非接触ICカードの両側長辺に沿うシールドシート長辺部と前記非接触ICカードの両側短辺に沿うシールドシート短辺部とを有するものであり、
前記磁性シートは、前記シールドシート上の位置を変更可能な少なくとも2枚一組の大片の磁性シートである
ことを特徴とする非接触ICカード通信調整板。
【請求項2】
外部読取装置が発信する電磁波を利用して前記外部読取装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板において、
前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を遮断ないし減衰させるシールドシートと、該シールドシートの片面または両面に積層され、前記外部読取装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を透過させる磁性シートと、を備え、
前記シールドシートは、該シールドシートを前記非接触ICカードに重ね合わせた使用状態において前記非接触ICカードの両側長辺に沿うシールドシート長辺部と前記非接触ICカードの両側短辺に沿うシールドシート短辺部とを有するものであり、
前記磁性シートは、前記シールドシート上の位置を変更可能な少なくとも2枚一組の大片の磁性シートであり、該一組の大片の磁性シートのうち、一方は、前記シールドシートの両短辺部のうち一方にのみと接し、他方は、前記シールドシートの両短辺部のうち他方にのみと接し、それぞれシールドシートの短辺部に接する辺縁の長さはシールドシートの短辺部の長さの1/2よりも短い
ことを特徴とする非接触ICカード通信調整板。
【請求項3】
前記シールドシートは、表面に開口部が内部よりも狭く形成されたガイド溝を有し、
前記の大片の磁性シートは、前記ガイド溝に移動可能に嵌合した突起部を有し、前記ガイド溝に沿って位置の変更を可能とした
ことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項4】
前記シールドシートは、表面に開口部が内部よりも狭く形成された複数の固定穴を有し、
前記大片の磁性シートは、前記複数の固定穴に嵌脱可能な突起部を有し、該突起部を前記固定穴に選択的に嵌脱させて位置の変更を可能とした
ことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項5】
前記大片の磁性シートそれぞれは、片面に前記シールドシートとの貼着剥離が自在な粘着剤層を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項6】
前記シールドシートは、前記大片の磁性シートの移動位置を示す目印を有する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の非接触ICカード通信調整板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243290(P2012−243290A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116363(P2011−116363)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【特許番号】特許第4897931号(P4897931)
【特許公報発行日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(303025870)
【Fターム(参考)】