説明

非接触ICカード

【課題】ICカード内に埋設されるICチップに対する静電気破壊を防止した非接触ICカードを提供する。
【解決手段】カード基材上に、少なくとも、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が順次積層され、カード基材の中に、アンテナと、該アンテナと接続されたICチップと、が埋設されてなる非接触ICカードであって、アンテナと金属反射層との重複領域が39.5mm2以下となるように、アンテナをカード基材の中に埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードに関し、特に、カード基体の少なくとも一方の面に磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が設けられ、尚且つ、カード基体の内部に、ICチップと通信用アンテナとが内蔵され、非接触でのデータの送受信が可能な非接触ICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年におけるカード技術の発達により、様々な通信システムに用いられている情報記録媒体として、広範囲な用途に適用可能なICカードがある。このICカードには、専用の装置に接触させることで情報の書き込み処理、及び、読み出し処理が可能な接触型のICカードと、専用の装置に近接させるだけで情報の書き込み処理、及び、読み出し処理が可能な非接触型のICカードがある。
【0003】
これらのICカードは、磁気記録層を有する磁気カードと比較し、セキュリティ性が高く、尚且つ、カード自体に書き込むことができる情報量が多く、一枚のカードだけで多面的に使用できることから産業上における普及度は増加の一途を辿っている。
【0004】
その中でも特に、非接触型のICカードは、情報の書き込み処理、あるいは、読み出し処理を行う際に、ICカード自体を専用の装置に挿入する必要がなく、カード自体の取り扱いが便利なこともあり、産業上で急速に普及している。
【0005】
また、磁気ストライプ等の磁気記録層を有するICカードもあり、従来の磁気記録層を利用した通信システムと、ICチップを利用した通信システムと、を一枚のカードのみで利用することが可能な構造を構成している。
【0006】
なお、本発明より先に出願された技術文献として、磁気記録層に対し、ホログラム加工を施し、ホログラムによる視覚効果を奏しつつ、尚かつ、磁気記録層を利用した機能的情報処理を可能とした磁気ストライプ付きプラスチックカードが開示された文献がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この上記特許文献1に開示された磁気ストライプ付きプラスチックカードのように、ホログラムによる視覚効果を奏しつつ、尚かつ、機能的情報処理を可能とするために、ホログラム加工を施した磁気記録層を、非接触ICカードに適用しようという試みが現在行われている。
【0008】
しかしながら、ホログラム加工を施した磁気記録層を適用した非接触ICカードに対し、『JIS X 6305−6』または『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験を行い、ホログラム加工を施した磁気記録層に対し、静電気を放電した場合には、ホログラム加工を施した磁気記録層から非接触ICカード内に埋設されているアンテナに対し、放電電流が流れ込み、その放電電流が最終的にアンテナと接続されたICチップに流れ込み、ICチップの静電気破壊が発生することになる。
【0009】
なお、本発明より先に出願された技術文献として、プラスチック基板と、同プラスチック基板の表面に形成された磁気記録部と、前記プラスチック基板に埋設された集積回路チップおよび前記プラスチック基板に埋設されたアンテナとからなり、同アンテナが前記磁気記録部と交差しないこととし、磁気記録部と集積回路チップとが違いに影響をうけないようにしたICカードが開示された文献がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、カード基材の少なくとも一方の面に情報記録部が設けられたカードにおいて、カード基材内にICと通信用コイルとが設けられ、前記IC及び/又は前記通信用コイルが前記情報記録部と重ならない位置に配置し、カード基材に内蔵されたICや通信用コイルにより、カード基材の少なくとも一方の面に設けられた情報記録部への悪影響を及ぼしたり、また前記情報記録部を設けることにより、カード基材に内蔵されたICや通信用コイルへの悪影響を及ぼすことを防止するカードが開示された文献がある(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
また、カード表面に磁気記録部やエンボス加工記録部などの情報記録部が設けられ、また、カード基材の内部にICチップと通信用アンテナコイルが内蔵された非接触ICカードにおいて、R/Wとの間のより長い通信距離を確保することを可能とする非接触ICカードが開示された文献がある(例えば、特許文献4参照)。
【0012】
また、アンテナ回路を含む回路を形成したカード基板と、カード基板に接続したICチップ等の電子部品と、表皮層と、表皮層に設けた磁気ストライプからなり、アンテナ回路が磁気ストライプと交差することで、アンテナ回路の感度の低下が少なく、かつ、カード機能の追加が可能なICカードがある(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特許第3198183号公報
【特許文献2】特開平10−291391号公報
【特許文献3】特開2000−231620号公報
【特許文献4】特開2001−229356号公報
【特許文献5】特開2001−5929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
なお、上記特許文献2、3に開示されている文献には、ICチップや通信コイルへの悪影響を及ぼすことを防止するカードについて開示されているが、ホログラム加工を施した磁気記録層を非接触ICカードに適用した場合に生ずるICチップの静電気破壊については何ら考慮されたものではない。
【0014】
また、上記特許文献4に開示されている文献には、R/Wとの間のより長い通信距離を確保することを可能とする非接触ICカードについて開示されているが、ホログラム加工を施した磁気記録層を非接触ICカードに適用した場合に生ずるICチップの静電気破壊については何ら考慮されたものではない。
【0015】
また、上記特許文献5に開示されているICカードは、アンテナ回路が磁気ストライプと交差することで、アンテナ回路の感度の低下を抑え、尚且つ、カード機能の追加を可能としているが、ホログラム加工を施した磁気記録層を非接触ICカードに適用した場合に生ずるICチップの静電気破壊については何ら考慮されたものではない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カード基材上に、少なくとも、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が順次積層され、カード基材の中に、アンテナと、該アンテナと接続されたICチップと、が埋設されてなる非接触ICカードにおいて、その非接触ICカード内に埋設されるICチップに対する静電気破壊を防止した非接触ICカードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0018】
本発明にかかる非接触ICカードは、カード基材上に、少なくとも、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が順次積層され、カード基材の中に、アンテナと、該アンテナと接続されたICチップと、が埋設されてなる非接触ICカードであって、アンテナは、アンテナと金属反射層との重複領域が39.5mm2以下となるように、カード基材の中に埋設されてなることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明にかかる非接触ICカードにおいて、アンテナは、アンテナと金属反射層との重複領域が0mm2となるように、カード基材の中に埋設されてなることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明にかかる非接触ICカードにおいて、重複領域を構成するアンテナは、金属反射層の長手方向と直交するように、カード基材の中に埋設されてなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明にかかる非接触ICカードにおいて、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、は一体化されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる非接触ICカードは、カード基材上に、少なくとも、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が順次積層され、カード基材の中に、アンテナと、該アンテナと接続されたICチップと、が埋設されてなる非接触ICカードであって、アンテナは、アンテナと金属反射層との重複領域が39.5mm2以下となるように、カード基材の中に埋設されてなることを特徴とするものである。これにより、『JIS X 6305−6』または『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験を行い、金属反射層に対し、静電気を放電した場合でも、金属反射層からアンテナに対する放電電流の流れ込みを制限または回避することが可能となるため、非接触ICカード内に埋設されるICチップに対する静電気破壊を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、図3、図8を参照しながら、本実施形態における非接触ICカードの特徴について説明する。
【0024】
本実施形態における非接触ICカードは、図3に示すように、カード基材(1)上に、ホログラム・磁気記録層(2)を有し、カード基材(1)の中に、アンテナ(12)と、該アンテナ(12)と接続されたICチップ(13)と、が埋設されてなる非接触ICカードであり、アンテナ(12)は、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域が39.5mm2以下となるように、カード基材(1)の中に埋設されてなることを特徴とするものである。これにより、『JIS X 6305−6』または『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験を行い、ホログラム・磁気記録層(2)に対し、静電気を放電した場合でも、ホログラム・磁気記録層(2)からアンテナ(12)に対する放電電流の流れ込みを制限または回避することが可能となるため、ICカード内に埋設されるICチップ(13)に対する静電気破壊を防止することが可能となる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態における非接触ICカードについて説明する。
【0025】
まず、図1を参照しながら、本実施形態における非接触ICカードの構成について説明する。
【0026】
本実施形態における非接触ICカードは、図1に示すように、カード基材(1)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、を有して構成される。なお、本実施形態におけるカード基材(1)の中には、図1に示すように、アンテナ(12)と、ICチップ(13)と、が埋没された構造となる。なお、ICチップ(13)は、アンテナ(12)と接続されてカード基材(1)の中に埋没されることになる。
【0027】
まず、図1を参照しながら、本実施形態における非接触ICカードを構成するカード基材(1)の構造について説明する。
【0028】
本実施形態における非接触ICカードを構成するカード基材(1)は、図1に示すように、アンテナ基材(11)上に螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン(12)を形成し、該形成したアンテナパターン(12)と、ICチップ(13)と、が接着剤(14)を介して電気的に接続するように、ICチップ(13)をアンテナ基板(11)に実装し、ICモジュール(15)を構成し、そのICモジュール(15)を覆うように、ICモジュール(15)の上下面からラミネート基材となるコアシート(16)と、オーバーシート(17)と、にて挟持して積層することで構成される。以下、カード基材(1)を構成する各部について説明する。
【0029】
<コアシート16>
コアシート(16)は、カード基材(1)の中心部分となる基材であり、カード本体に強度を付与させる基材である。コアシート(16)に適用可能な材質としては、一般用ポリスチレン樹脂、耐衝撃用ポリスチレン樹脂、アクリルニトリルスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、塩化ビニル樹脂、変性PPO樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファルド樹脂等の熱可塑性樹脂、アロイ系樹脂、ガラス繊維の添加による強化樹脂等の従来からICカード本体の中心部分となるカード基材(1)に適用可能な公知の樹脂が挙げられる。なお、塩化ビニル、PET−G等は、自己融着を行う特性を有することから、ラミネートの際に、接着剤や接着剤シートが不要となるため、塩化ビニル、PET−G等をコアシート(16)に適用することが好ましい。
【0030】
<オーバーシート17>
オーバーシート(17)は、カード基材(1)の外側部分を構成する基材である。オーバーシート(17)に適用可能な材質としては、上述したコアシート(16)に適用可能な樹脂が挙げられる。
【0031】
<アンテナ基板11>
アンテナ基板(11)は、アンテナパターン(12)を形成する絶縁性を有する基材である。アンテナ基板(11)に適用可能な材質としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、PET、PEN、PET−G等の樹脂が挙げられる。
【0032】
<アンテナパターン12の材質>
アンテナパターン(12)を形成する材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、鉄、錫、ニッケル、亜鉛、チタン、タングステン、ハンダ、合金等が適用可能である。なお、アンテナ基板(11)上にアンテナパターン(12)を形成する手法としては、エッチング法や、印刷法(スクリーン印刷法、オフセット印刷法)が適用可能である。また、巻き線法でアンテナ基板(11)上にアンテナパターン(12)を形成することも可能である。
【0033】
<接着剤14>
接着剤(14)は、アンテナ基板(11)に形成されたアンテナパターン(12)と、ICチップ(13)等の電子部品と、を接続するためのものであり、紫外線硬化樹脂、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが適用可能である。なお、アンテナパターン(12)と、ICチップ(13)等の電子部品と、を接続するには、熱硬化性のエポキシ樹脂やエポキシ樹脂に対し、数μm程度の微小な導電性粒子を分散させた異方性導電性接着剤(ACP)、ACPをフィルム状にした異方性導電性フィルム(ACF)等の接着剤を介してフリップチップ方法で行うことが好ましい。なお、ACFは、ニッケル、金属コートされたプラスチック等の導電粒子、あるいは、金属粒子そのものをエポキシ樹脂等の接着剤中に分散した接着剤である。
【0034】
次に、図2を参照しながら、本実施形態の非接触ICカードを構成するホログラム・磁気記録層(2)の構造について説明する。
【0035】
ホログラム・磁気記録層(2)は、接着層(21)と、磁気記録層(22)と、金属反射層(23)と、ホログラム層(24)と、保護層(25)と、を有して構成され、このホログラム・磁気記録層(2)を、離形層(26)を介して支持層(27)に積層することで『転写シート』を構成することになる。
【0036】
<接着層21>
接着層(21)は、ホログラム・磁気記録層(2)をカード基材(1)上に接着させるための層である。なお、接着層(21)に適用可能な材質としては、ヒートシール性の良好な塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂が挙げられる。接着層(21)の層厚としては、5μm程度が好ましい。
【0037】
<磁気記録層22>
磁気記録層(22)は、情報を記録することが可能な層であり、公知の磁気塗料を用いて印刷もしくは塗布して形成される。なお、磁気塗料としては、例えば、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂等の合成樹脂をバインダー樹脂とし、必要に応じ、ニトリルゴム等のゴム系樹脂、ウレタンエラストマーを添加し、磁性体としては、γ−Fe23、Co含有Fe23、Fe34、バリウムフエライト、ストロンチウムフエライト、Co・Ni・Fe・Crの単独もしくは合金、希土類Co磁性体の他、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボンその他の顔料を必要に応じて添加し、3本ロール、サンドミル、ボールミル等により混練して作成したものを適用することが可能である。なお、磁気記録層(22)の層厚としては、10〜15μm程度が好ましい。
【0038】
<金属反射層23>
金属反射層(23)は、光を反射させるための層である。なお、金属反射層(23)に適用可能な材質としては、Al,Zn,Co,Ni,In,Fe,Cr,Ti,Sn,または、それらを各種混合させた合金が挙げられる。また、金属反射層(23)を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、電気メッキ法等が適用可能である。なお、金属反射層(23)の膜厚としては、30〜100nm程度が好ましく、40〜70nm程度がより好ましい。また、金属反射層(23)は、光の反射性を考慮し、連続膜から構成されていることが好ましい。
【0039】
<ホログラム層24>
ホログラム層(24)は、ホログラム形成部(30)を形成するための層である。なお、ホログラム層(24)に適用可能な材質としては、ポリ塩化ビニル、アクリル(例、MMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、あるいは、上記の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が適用可能である。ホログラム層(24)の層厚としては、2.5μm程度が好ましい。
【0040】
<保護層25>
保護層(25)は、上述したホログラム層(24)を保護するための層である。なお、保護層(25)に適用可能な材質としては、ポリメチルメタクリレート樹脂と他の熱可塑性樹脂、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体もしくはニトロセルロース樹脂との混合物、または、ポリメチルメタクリレート樹脂とポリエチレンワックスとの混合物等が挙げられ、また、酢酸セルロース樹脂と熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、もしくは、メラミン樹脂との混合物が挙げられる。保護層(25)の層厚としては、1〜2μm程度が好ましい。
【0041】
<離形層26>
離形層(26)は、上述したホログラム・磁気記録層(2)と、支持層(27)と、を剥離するための層である。なお、離形層(26)に適用可能な材質としては、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂あるいはこれらにオイルシリコン、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛を添加したものが適用可能である。離形層(26)の層厚としては、0.5μm程度が好ましい。
【0042】
<支持層27>
支持層(27)は、ホログラム・磁気記録層(2)を支持する層である。なお、支持層(27)に適用可能な材質としては、透明なポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂、天然樹脂、紙、合成紙などから単独で選択されたもの、または、上記より選択されて組み合わされた複合体が適用可能である。なお、支持層(27)としては、抗張力、耐熱性を兼ね備えたポリエステルフィルムを適用することが好ましい。支持層(27)の層厚としては、25μm程度が好ましい。
【0043】
なお、上述した図2に示すホログラム・磁気記録層(2)の転写シートの形成方法としては、例えば、支持層(27)に対し、離形層(26)、保護層(25)を順次塗布し、ホログラム層(24)を形成する樹脂組成物を塗布し、ホログラム形成部(30)を形成する。そして、金属反射層(23)を蒸着法により形成し、磁気記録層(22)、接着層(21)を順次塗布する方法が挙げられる。これにより、図2に示すホログラム・磁気記録層(2)の転写シートを形成することが可能となる。なお、上述した形成方法は、一例であり、この形成方法に限定するものではなく、図2に示すホログラム・磁気記録層(2)の転写シートを形成できればあらゆる形成方法を適用することは可能である。なお、本実施形態におけるホログラム・磁気記録層(2)は、保護層(25)と、ホログラム層(24)と、金属反射層(25)と、磁気記録層(22)と、の合計層厚が、磁気記録に支障がない20μm以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態における非接触ICカードは、この上述した図2に示す、少なくとも、磁気記録層(22)と、金属反射層(23)と、ホログラム層(24)と、が一体化されたホログラム・磁気記録層(2)を、カード基材(1)に貼着することで、ホログラム・磁気記録層(2)がカード基材(1)に形成された図1に示す非接触ICカードを構成することになる。これにより、美麗なホログラムを形成しつつ、機械的な情報処理を行うことが可能なホログラム・磁気記録層(2)を、非接触ICカードのカード表面に形成することが可能となる。
【0045】
なお、一般的に、非接触ICカードのアンテナ(12)が、リーダ・ライタのアンテナと比べて小さい場合には、非接触ICカードのアンテナ(12)の面積が大きい程、リーダ・ライタのアンテナから多くのエネルギーを得ることが可能となる。このため、非接触ICカードの通信距離を長くしたり、あるいは、非接触カードのICチップ(13)の消費電力を大きくしたりする場合には、非接触ICカードのアンテナ(12)の開口面積を大きく設計する必要がある。
【0046】
このため、本実施形態の非接触ICカードのアンテナ(12)は、そのICカードの外形に沿って配置されることが設計上、好ましいこととなり、図3に示すように、ホログラム・磁気記録層(2)と、カード基材(1)に埋設されているアンテナ(12)と、が重複するような位置関係にて設計されることが好ましい。
【0047】
しかしながら、図3に示すように、ホログラム・磁気記録層(2)と、カード基材(1)に埋設されているアンテナ(12)と、が重複するような位置関係にて設計した場合には、JIS規格の『JIS X 6305−6』で規定されている試験方法にて静電気試験を行うと、『JIS X 6322−1』の4.3.7で規定されている規定値±6kVの静電気に耐えることができず、また、JIS規格の『JIS X 6305−7』で規定されている試験方法にて静電気試験を行うと、『JIS X 6323−1』の4.3.7で規定されている規定値±6kVの静電気に耐えることができないという問題を抱えることになる。
【0048】
なお、『JIS X 6305−6』または『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験は、図4に示す静電気放電試験の回路を用いて行うことになる。
【0049】
まず、木製の台に敷いた『導電板』上に、厚さ0.5mmの『絶縁板』を設置し、その『絶縁板』上に、『非接触ICカード』を設置する。そして、『ESD試験器』に接続された直径8mmの『球型プローブ』を『非接触ICカード』に接触させ、『ESD試験器』から『非接触ICカード』に対し、静電気を放電し、放電後の『非接触ICカード』内のICチップ(13)の性能について試験することになる。
【0050】
まず、図5に示すように、非接触ICカードの表裏面をそれぞれ縦横4列×5列に20分割し、非接触ICカードの表面側から順に、+6kVの静電気を20箇所に印加し、次に、−6kVの静電気を20箇所にて印加し、続けて、非接触ICカードの裏面側にも同様な処理を実施する。
【0051】
この図4に示す静電気放電試験の回路を用いて静電気試験を行うと、カード基材(1)に埋設されているICチップ(13)の静電気破壊が発生することになる。これは、ホログラム・磁気記録層(2)と、カード基材(1)に埋設されているアンテナ(12)と、が重複しているため、ホログラム・磁気記録層(2)に対し、静電気を放電すると、ホログラム・磁気記録層(2)と重複しているアンテナ(12)に対し、放電電流が流れ込み、その流れ込んだ放電電流が最終的にはICチップ(13)に流れ込むことになり、ICチップ(13)に対して過度な負荷を生じさせることになるためである。
【0052】
このため、本発明者らは、ホログラム・磁気記録層(2)を有する非接触ICカードにおいて、上述した静電気試験を満足させるために、様々な改良を試み、鋭意研究を重ねた結果、図8に示すように、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が39.5mm2以下となるように、アンテナ(12)を、カード基材(1)の中に埋設することで、上述した静電気試験を満足することを実験結果から見出した。以下、図6から図8を参照しながら、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域と、その重複領域を形成した非接触ICカードの静電気試験におけるICチップ(13)に対する静電気破壊の有無と、の関係について説明する。なお、図6は、カード基材(1)に埋設されるアンテナ(12)の形状を示す図であり、図7は、(a)から(f)の様々な位置でアンテナ(12)をカード基材(1)に埋設した場合の非接触ICカードの構成を示し、図8は、図7に示す(a)から(f)の様々な埋設位置で構成した非接触ICカードの静電気試験におけるICチップ(13)に対する静電気破壊の有無の結果を示す。
【0053】
まず、図8に示す測定結果に適用した非接触ICカードの形成方法について説明する。
【0054】
まず、アンテナ基材(11)の表面に対し、厚さ5μmのウレタン系接着剤を介して厚さ30μmのアルミ箔をラミネートし、また、アンテナ基材(11)の裏面に対し、厚さ5μmのウレタン系接着剤を介して厚さ20μmのアルミ箔をラミネートし、アンテナ基材(11)の表裏面に対してアルミ箔のアンテナパターン(12)を形成する。なお、アンテナパターン(12)は、図6に示すように、アンテナ(12)の太さが0.5mmで、アンテナ(12)の間隔が1.5mmとなるように形成する。
【0055】
次に、アルミ箔のアンテナパターン(12)を形成したアンテナ基材(11)に対し、ICチップ(13)を接着剤(14)を介して加熱・加圧して実装し、ICモジュール(15)を形成し、該形成したICモジュール(15)を用いて、カード基材(1)を形成し、該形成したカード基材(1)に対し、『JIS X 6302−2』または『JIS X 6302−6』の規格で規定された位置に、8.4mm幅のホログラム・磁気記録層(2)を配置し、ホログラム・磁気記録層(2)を有する非接触ICカードを形成することになる。なお、『JIS X 6302−2』または『JIS X 6302−6』の規定では、非接触ICカードの上端からホログラム・磁気記録層(2)の手前側までの距離を、最大で5.54mmとして定め、また、非接触ICカードの上端からホログラム・磁気記録層(2)の奥側までの距離を、2トラックの場合は、最小で11.89mm、3トラックの場合は、最小で15.95mmとして定めて設けることが規定されている。
【0056】
なお、図8に示す測定結果は、上述した方法により形成した非接触ICカードに対し、『JIS X 6305−6』で規定されている試験方法で静電気試験を実施し、『JIS X 6322−1』の規定を満足できるか否かについて試験した測定結果である。なお、図8に示す測定結果は、アンテナ基材(11)として、厚さ25μmのPETフィルムを使用し、アンテナパターン(12)を形成する材質として、アルミニウムを使用し、ICチップ(13)として、ソニー(株)製RC−S915を使用し、接着剤(14)として、ACF(異方性導電性フィルム)を使用した。また、図8に示す(a)から(f)の測定結果は、図7に示す(a)から(f)のアンテナ(12)の埋設状態での測定結果を示す。
【0057】
図7(a)は、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と重ならないようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を0mm2とした場合の状態を示す。
【0058】
図7(b)は、図7(a)の状態から、アンテナ(12)をカード上端側に少しだけ移動させてカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と1本だけ重なるようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を39.0mm2とした場合の状態を示す。
【0059】
図7(c)は、図7(b)の状態から、アンテナ(12)をカード上端側に少しだけ移動させてカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と1本だけ重なるようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を39.5mm2とした場合の状態を示す。
【0060】
図7(d)は、図7(c)の状態から、アンテナ(12)をカード上端側に少しだけ移動させてカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と2本だけ重なるようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を79.0mm2とした場合の状態を示す。
【0061】
図7(e)は、図7(d)の状態から、アンテナ(12)をカード上端側に少しだけ移動させてカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と3本だけ重なるようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を118.5mm2とした場合の状態を示す。
【0062】
図7(f)は、図7(e)の状態から、アンテナ(12)をカード上端側に少しだけ移動させてカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)をホログラム・磁気記録層(2)と3本だけ重なるようにカード基材(1)に埋設し、アンテナ(12)とホログラム・磁気記録層(2)との重複領域を158.0mm2とした場合の状態を示す。
【0063】
この図7(a)〜(f)に示す様々なアンテナ(12)の埋設位置で構成した非接触ICカードを用いて、静電気試験を行った場合のICチップ(13)破壊の有無は、図8に示すような測定結果となり、図7(a)〜(c)に示すアンテナ(12)の埋設位置で構成した非接触ICカードには、ICチップ(13)の静電気破壊が発生しないことが判明した。
【0064】
このため、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が39.5mm2以下となるように、アンテナ(12)を、カード基材(1)の中に埋設して非接触ICカードを構成することで、『JIS X 6305−6』で規定されている静電気試験を行い、ホログラム・磁気記録層(2)に対し、静電気を放電した場合でも、ホログラム・磁気記録層(2)からアンテナ(12)に対する放電電流の流れ込みを制限または回避し、ICカード内に埋設されるICチップ(13)の静電気破壊の発生を防止することが可能となる。
【0065】
このように、本実施形態における非接触ICカードは、カード基材(1)上に、ホログラム・磁気記録層(2)を有し、カード基材(1)の中に、アンテナ(12)と、該アンテナ(12)と接続されたICチップ(13)と、が埋設された非接触ICカードにおいて、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が39.5mm2以下となるように、アンテナ(12)を、カード基材(1)の中に埋設することで、『JIS X 6305−6』で規定されている静電気試験を行った場合でも、『JIS X 6322−1』の規定を満足することが可能となる。なお、図8に示す測定結果は、『JIS X 6305−6』で規定されている試験方法で静電気試験を実施し、『JIS X 6322−1』の規定を満足できるか否かについて試験した測定結果であるが、『JIS X 6305−7』で規定されている試験方法で静電気試験を実施し、『JIS X 6323−1』の規定を満足できるか否かについても、図8に示す測定結果と同様な結果を得ることになる。
【0066】
なお、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が39.5mm2以下となるように、アンテナ(12)を、カード基材(1)の中に埋設することで、『JIS X 6305−6』で規定されている静電気試験を行った場合でも、『JIS X 6322−1』の規定を満足し、また、『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験を行った場合でも、『JIS X 6323−1』の規定を満足することになるが、図7(a)に示すように、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が0mm2となるように埋設することが好ましい。これは、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が0mm2の場合には、ホログラム・磁気記録層(2)に対し、静電気を放電した場合でも、ホログラム・磁気記録層(2)からアンテナ(12)に対する放電電流の流れ込みを完全に回避することが可能となるためである。このため、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域ができるだけ0mm2となるようにアンテナ(12)をカード基材(1)の中に埋設することが好ましいことになり、図9に示すように、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の『重複領域』を構成するアンテナ(12)を、ホログラム・磁気記録層(2)の『長手方向』と直交するように、カード基材(1)の中に埋設することで、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の『重複領域』を最小限にすることが可能となる。
【0067】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、本実施形態の非接触ICカードを構成するホログラム・磁気記録層(2)は、少なくとも、磁気記録層(22)と、金属反射層(23)と、ホログラム層(24)と、を有する層構成であれば、特に限定するものではなく、あらゆる層構成にてホログラム・磁気記録層(2)を構成することは可能である。
【0068】
また、カード基材(1)の中に埋設するアンテナ(12)の形状は、図7に示す形状に限定するものではなく、アンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の重複領域が39.5mm2以下となるような形状であれば、あらゆる形状のアンテナ(12)を、カード基材(1)の中に埋設することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明にかかる非接触ICカードは、各種交通機関での定期券、回数券、電話カード、特定領域への入退出用のカード、IDカード、免許証、パチンコ,遊園地,映画館などに使用されるカード、クレジットカード等の非接触にて通信処理を行う情報記録媒体に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態における非接触ICカードの構成を示す図である。
【図2】本実施形態における非接触ICカード内に搭載されるホログラム・磁気記録層(2)の層構成を示す図である。
【図3】本実施形態における非接触ICカードを構成するアンテナ(12)と、ホログラム・磁気記録層(2)と、の配置位置の関係を示す図である。
【図4】『JIS X 6305−6』または『JIS X 6305−7』で規定されている静電気試験の回路構成を示す図である。
【図5】静電気放電試験におけるカード上の区分域を示す図であり、非接触ICカードの表裏面をそれぞれ縦横4列×5列に20分割した状態を示す図である。
【図6】本実施形態における非接触ICカードを構成するカード基材(1)に埋設されるアンテナ(12)の形状を示す図である。
【図7】アンテナ(12)を様々な位置でカード基材(1)に埋設した状態の非接触ICカードの構成を示す図である。
【図8】図7(a)〜(f)に示すアンテナ(12)で構成した非接触ICカードの静電気試験におけるICチップ(13)に対する静電気破壊の有無の結果を示す図である。
【図9】本実施形態における非接触ICカードを構成するカード基材(1)に埋設されるアンテナ(12)の好適な形状を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 カード基板
2 ホログラム・磁気記録層
11 アンテナ基材
12 アンテナパターン
13 ICチップ
14 接着剤
15 ICモジュール
16 コアシート
17 オーバーシート
21 接着層
22 磁気記録層
23 金属反射層
24 ホログラム層
25 保護層
26 離形層
27 支持層
30 ホログラム形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材上に、少なくとも、磁気記録層と、金属反射層と、ホログラム層と、が順次積層され、前記カード基材の中に、アンテナと、該アンテナと接続されたICチップと、が埋設されてなる非接触ICカードであって、
前記アンテナは、前記アンテナと前記金属反射層との重複領域が39.5mm2以下となるように、前記カード基材の中に埋設されてなることを特徴とする非接触ICカード。
【請求項2】
前記アンテナは、前記アンテナと前記金属反射層との重複領域が0mm2となるように、前記カード基材の中に埋設されてなることを特徴とする請求項1記載の非接触ICカード。
【請求項3】
前記重複領域を構成するアンテナは、前記金属反射層の長手方向と直交するように、前記カード基材の中に埋設されてなることを特徴とする請求項1記載の非接触ICカード。
【請求項4】
前記磁気記録層と、前記金属反射層と、前記ホログラム層と、は一体化されてなることを特徴とする請求項1記載の非接触ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−157087(P2007−157087A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355447(P2005−355447)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】