説明

非接触IC装置及び制御方法

【課題】 複数のICチップを備えていながら、確実に通信を行うことができ、また簡易な構成の非接触IC装置を提供する。
【解決手段】 非接触IC装置1は、複数のICチップ30,50と、非接触IC装置用の電波を受信するアンテナ11と、アンテナ11により受信された電波から信号を取得する変復調部12と、変復調部12により取得された信号に基づいて、複数のICチップ30,50から当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触IC装置、及び当該非接触IC装置における制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波によりリーダライタと通信を行う非接触IC(IntegratedCircuit)カード(日本国外ではスマートカード(SmartCard)とも言われる)が存在している(例えば、下記特許文献1参照)。非接触ICカードは、例えば、電子マネー等のバリューや認証用の情報等が格納され、様々な場所で用いられている。
【特許文献1】特開2005−11009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非接触ICカードは、搭載されたICチップにより情報の格納及び処理の機能が実現される。利便性の観点から、複数の機能が一つのICカード(媒体)で実現されることが期待されている。ここで、1つのICチップに複数の機能(例えば、キャッシュカードの機能とクレジットカードの機能)を含ませることは、通常これらの機能を提供するものが異なり、また、ICカード発行者も異なる場合もあるため(銀行とクレジット会社)、セキュリティ上問題があるとされることもある。また、そもそも機能を提供するものが採用するICチップの方式が異なるため、1つのICチップに複数の機能を含ませることが不可能な場合がある。
【0004】
そこで、複数の機能を1つのICカードで実現するために、1つのICカードに複数のICチップとICチップそれぞれに対応したアンテナを搭載させることが考えられる。しかしながら、ICチップそれぞれに対応した複数のアンテナを搭載させると、アンテナ間で電波の干渉が発生し通信が困難になるという問題がある。また、複数のアンテナを搭載させると、ICカードの構成が複雑になるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、複数のICチップを備えていながら、確実に通信を行うことができ、また簡易な構成の非接触IC装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非接触IC装置は、複数のICチップと、非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、アンテナにより受信された電波から信号を取得する信号取得手段と、信号取得手段により取得された信号に基づいて、複数のICチップから当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る非接触IC装置では、何れのICチップに対する通信である場合も1つのアンテナを用いて、非接触IC装置用の電波を受信する。非接触IC装置では、受信した電波から信号を取得して、その信号に基づいて信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する。従って、本発明に係る非接触IC装置によれば、複数の非接触IC装置用のアンテナを備えることによる電波の干渉を防止することができ、確実に通信を行うことができる。また、非接触IC装置において非接触IC装置用のアンテナは一つで済むので、簡易な構成の非接触IC装置を実現することができる。
【0008】
本発明に係る非接触IC装置は、複数のICチップを装着させることができる装着部と、非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、アンテナにより受信された電波から信号を取得する信号取得手段と、信号取得手段により取得された信号に基づいて、装着部に装着された複数のICチップのうち当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御手段と、を備えることを特徴とする。この構成によれば、複数のICチップが着脱可能な構成の非接触IC装置においても、確実に通信を行うことができ、また簡易な構成を実現することができる。
【0009】
また、信号取得手段により取得される信号は、アナログ信号であり、分配制御手段は、アナログ信号の波形に基づいて選択を行う、ことが好ましい。この構成によれば、ICチップ毎にアナログ信号の方式が異なる場合等に、容易に本発明を実施することができる。
【0010】
また、信号取得手段により取得される信号は、デジタル信号であり、分配制御手段は、デジタル信号に基づいて選択を行う、ことが好ましい。この構成によれば、ICチップ毎にデジタル信号として得られるヘッダ情報の文字列等が異なる場合等に、容易に本発明を実施することができる。
【0011】
ところで、本発明は、上記のように非接触IC装置の発明として記述できる他に、以下のように非接触IC装置における制御方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0012】
本発明に係る制御方法は、複数のICチップと、非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、を備える非接触IC装置における制御方法であって、アンテナにより非接触IC装置用の電波を受信する受信ステップと、受信ステップにおいて受信された電波から信号を取得する信号取得ステップと、信号取得ステップにおいて取得された信号に基づいて、複数のICチップから当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の非接触IC装置用のアンテナを備えることによる電波の干渉を防止することができ、確実に通信を行うことができる。また、非接触IC装置において非接触IC装置用のアンテナは一つで済むので、簡易な構成の非接触IC装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明に係る非接触IC装置及び当該非接触IC装置における制御方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1に、本実施形態に係る非接触IC装置1である携帯電話機(移動機)の外観を示す。非接触IC装置1は、携帯電話機としての機能を有している。そのため、非接触IC装置1は、図1(a)に示すように、携帯電話機の機能用の表示部2及び操作部3等を備えている。また、非接触IC装置1は、図1(a)に示す面の裏面である図1(b)に示すように、移動通信用のアンテナ4を備えている。また、非接触IC装置1には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ及び通信モジュール等のハードウェアが内蔵されており(図示せず)、上記の構成要素と合わせて携帯電話機としての機能を実現する。
【0016】
また、非接触IC装置1は、非接触IC装置としての機能を有している。そのため、非接触IC装置1は、図1(b)に示すように、非接触IC装置としての機能を実現するものとして、非接触IC装置用の電波を送受信するアンテナ11と2つのICチップ30,50とを備えている。また、非接触IC装置としての機能を実現するハードウェアとして、上記の表示部2、操作部3、CPU及びメモリ等が携帯電話機の機能用のものと共用されることがある。
【0017】
非接触IC装置用の電波とは、非接触ICカード等の非接触IC装置と非接触IC装置用リーダライタ等との間の通信に用いられる電波であり、具体的には数mm〜数十cm程度の通信距離で、周波数が数MHz〜数GHzのものである。国際標準規格では、ISO14443等で規定されている。また、非接触IC装置用の非接触ICインタフェースは、ICチップの種類毎に、変調方式やプロトコル等が異なる(例えば、ISO14443に規定されるTypeAとTypeB)。
【0018】
非接触IC装置用のアンテナ11は、例えば図1(b)に示すように、コイル状の導線が非接触IC装置1に埋め込まれることにより実現される。アンテナ11の設計においては、その動作態様(非接触IC装置用リーダライタ等の装置に完全に密着させなくてはならないのか、又はある程度距離が離れていても構わないのか)毎に適切な無線交信を可能とするために必要となるアンテナ配置、及び十分なアンテナ面の面積の確保を行う必要がある。このとき、ICチップ30,50が、非接触IC装置用のアンテナ11から得られる電磁誘導による起電力を使用する(パッシブ型IC装置)のか、非接触IC装置1自体(のバッテリー等)から供給される電力を使用する(アクティブ型IC装置)のかをも考慮する必要がある。
【0019】
ICチップ30,50は、図1(b)に示すように、非接触IC装置1に内蔵される。また、ICチップ30,50は、非接触IC装置1に着脱可能となっていてもよい。その場合、非接触IC装置1には、ICチップ30,50を装着することができる装着部であるインタフェースが用意される。インタフェースとしては、例えばUIM(User Identity Module)インタフェース、USB(Universal Serial Bus)インタフェース、及びその他の外部機器用のインタフェース等が相当する。ICチップ30,50側の具体的なインタフェースとしては、例えばISO7816Part2で規定されている電気接点(例えば、RFU(Reserve for Future Use)であるC4端子及びC8端子)を用いることとしてもよいし、あるいは別の位置に専用の電気接点を設けてそれを利用することとしてもよい。
【0020】
ICチップ30,50としては、具体的には例えばICチップ30,50が含まれるUIM、SDカード(Secure Digital memory card)、MMC(MultiMedia Card)及びメモリスティック等が相当する。ICチップ30,50には、それぞれ非接触IC装置としての機能が実装されている。その機能としては、例えば、入館証・社員証等の個人識別・認証の機能、交通乗車券・定期券の機能、クレジットカードの機能、及び電子マネーの機能等である。
【0021】
アンテナ11及びICチップ30,50は、本実施形態のように携帯電話機に実装する場合は、携帯電話機が送受信する移動通信用基地局との無線通信への影響が極力少ない位置に配置されるのが好ましい。具体的には、アンテナ11及びICチップ30,50を、図1(b)に示すように移動通信用のアンテナ4からできるだけ遠ざけるように配置するのがよい。また、移動通信のみでなく、Bluetooth等の無線通信装置を実装している場合は、これらの通信と相互に干渉しあうことのない位置に、アンテナ11及びICチップ30,50を配置するのがよい。
【0022】
本実施形態に係る非接触IC装置1において、ICチップ30,50は、上述したようにICチップ30,50毎に異なる機能を有している。非接触IC装置1は、それらの機能が適切に作用するように制御するものであるが、以下の各実施形態に示すように複数の実現方法をとることができる。以下、それらの各実施形態を説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図2に、第1実施形態における、非接触IC装置1の非接触IC装置としての機能構成を示す。なお、非接触IC装置1の携帯電話機としての機能構成については省略する。図2に示すように、非接触IC装置1は、上述したようにアンテナ11と2つのICチップ30,50を備えており、それらに加えて、変復調部12と、分配制御部13と、2つのICチップ30,50それぞれに対応した符号化部21,41と、プロトコル制御部22,42とを備える。また、ICチップ30,50は、それぞれ、中央処理部31,51と、不揮発情報記憶部32,52とを備える。これらの機能的な構成要素は、例えば、上述した非接触IC装置1が備えるCPUや各構成要素の機能を実現する電気回路等により実現される。
【0024】
変復調部12は、アンテナ11により受信した電波をアナログ信号に復調するものである。即ち、変復調部12は、アンテナにより受信された電波からアナログ信号を取得する信号取得手段である。変復調部12により取得されたアナログ信号は、分配制御部13に送信される。変復調部12は、具体的には電子回路等により構成される。また、変復調部12は、アナログ信号の電波への変調も行う。
【0025】
分配制御部13は、変復調部12により取得されたアナログ信号に基づいて、複数のICチップ30,50のうち当該アナログ信号を受信すべきICチップを選択して、当該アナログ信号を送信する分配制御手段である。分配制御部13は上記の選択のため、ICチップ30,50毎の電波方式の違いによるアナログ波形のパターンに関する情報を予め保持している。分配制御部13は、保持したアナログ波形のパターンと変復調部12により取得されたアナログ信号の波形とを比較することにより、ICチップの選択を行う。より具体的には、非接触IC装置1における処理の説明において述べる。変復調部12により取得されたアナログ信号は、選択されたICチップ30,50に対応する符号化部21,41に送信される。
【0026】
符号化部21,41は、分配制御部13から送信されたアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)し、プロトコル制御部22,42に送信する。
【0027】
プロトコル制御部22,42は、ICチップ30,50との情報転送プロトコルの終端部分であり、符号化部21,41から受信したデジタル信号を対応するICチップ30,50に送信する。
【0028】
ICチップ30,50の中央処理部31,51は、プロトコル制御部22,42からICチップ30,50に送信されたデジタル信号を受信して、ICチップ30,50に応じた機能の処理、例えば演算等を行う。また、中央処理部31,51には、演算のための一次記憶場所(メモリ)も含まれる。なお、上述したようにICチップ30,50が着脱可能な構成になっている場合は、ICチップ30,50部分への入力はこのようにデジタル信号であることが好ましい。アナログ信号を入力することとすると、例えば、ICチップ30,50を入れ替えて使用する場合等にアナログ特性による信号のばらつきをICチップ30,50で吸収することが難しいからである。
【0029】
不揮発情報記憶部32,52は、ICチップ30,50における不揮発メモリにおけるファイルシステムである。不揮発情報記憶部32,52には、ICチップ30,50の機能に応じた情報が格納され、中央処理部31,51による演算の際等に適時、参照及び書込等がなされる。不揮発情報記憶部32,52に格納される情報としては、具体的には例えば、入館証・社員証等の個人識別・認証情報、交通乗車券・定期券の情報、クレジットカードの情報、及び電子マネーの情報等が含まれる。
【0030】
引き続いて、以下、図3のフローチャートを用いて、本実施形態における非接触IC装置1により実行される処理(制御方法)を説明する。本処理は、非接触IC装置用リーダライタ等の装置からの電波を受信する際の処理である。
【0031】
まず、非接触IC装置1では、アンテナ11が非接触IC装置用の電波を受信する(S01、受信ステップ)。電波の取得は、例えば、ユーザが非接触IC装置1を非接触IC装置用リーダライタ等の装置に近づけて、非接触IC装置1が当該装置の圏内に入りポーリングにより電波を検知した際に行われる。
【0032】
続いて、変復調部12が、アンテナ11により受信した電波を変換することによりアナログ信号を取得する(S02、信号取得ステップ)。取得されたアナログ信号は、分配制御部13に送信される。
【0033】
続いて、分配制御部13が当該取得されたアナログ信号に基づいて、複数のICチップ30,50から、当該アナログ信号を受信すべきICチップを選択する(S03、分配制御ステップ)。上記の選択は、例えば次のように行われる。具体例として、ICチップ30がISO14443に規定されるタイプAに準拠するもの、ICチップ50がISO14443に規定されるタイプBに準拠するものである場合を示す。
【0034】
タイプAとタイプBでは、信号の変調方式が異なる。タイプAは、ASK(AmplitudeShift Keying)100%であり、タイプBは、ASK10%である。ASK100%、ASK10%というのは、そのデジタル信号としての理論値の“1”と“0”との差に対応したアナログ信号における電界強度の差が、“1”を示すときの電界強度の100%、10%にそれぞれなっていることを示す。即ち、図4に示すように、理論値の“0”に対して、タイプAでは“1”のときの電界強度の0%の電界強度の正弦波が対応しており、タイプBでは“1”のときの電界強度の82%の電界強度の正弦波が対応している。なお、図4はキャリア周波数13.56MHzの電波の搬送波のイメージである。
【0035】
分配制御部13では、上記の例で言えばICチップ30,50毎のASKの情報を予め保持しておき、当該保持した情報を参照して取得されたアナログ信号が、何れのICチップ30,50に対応するもの(変調方式)であるかを判断する。当該判断から、上記のICチップの選択を行う。
【0036】
続いて、分配制御部13は、選択したICチップ30,50に対応する符号化部21,41にアナログ信号を送信する(S04,分配制御ステップ)。アナログ信号を受信した符号化部21,41は、当該アナログ信号に対してA/D変換を行い、デジタル信号を得る(S05)。符号化部21,41は、そのデジタル信号を、対応するプロトコル制御部22,42に送信する。
【0037】
プロトコル制御部22,42は、当該デジタル信号に対して、ICチップ30,50に送信する際に必要な、プロトコルに関する処理を行い、当該デジタル信号を対応するICチップ30,50に送信する。デジタル信号を送信されたICチップ30,50は、当該デジタル信号を受信する(S06)。ICチップ30,50は、自身の機能に応じて当該デジタル信号に対して演算処理等を行う。その際、ICチップ30,50は、必要に応じて不揮発情報記憶部32,52に格納された情報を参照する。以上が、第1実施形態における、非接触IC装置1の構成及び非接触IC装置1における処理(制御方法)である。
【0038】
[第2実施形態]
図5に、第2実施形態における、非接触IC装置101の非接触IC装置としての機能構成を示す。非接触IC装置101は、特に説明する箇所以外は、第1実施形態における非接触IC装置1と同様の構成である。図5に示すように、非接触IC装置101は、アンテナ11と2つのICチップ30,50を備えており、それらに加えて、変復調部12と、符号化部61、分配制御部63と、2つのICチップ30,50それぞれに対応したプロトコル制御部22,42とを備える。これらの機能的な構成要素は、例えば、上述した非接触IC装置101が備えるCPUや各構成要素の機能を実現する電気回路等により実現される。
【0039】
変復調部12は、第1実施形態における変復調部12と同様の機能を有する。変復調部12により取得されたアナログ信号は、符号化部61に送信される。
【0040】
符号化部61は、変復調部12から送信されたアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)し、分配制御部63に送信する。即ち、符号化部61は、アンテナにより受信された電波からデジタル信号を取得する信号取得手段である。なお、本実施形態における符号化部61は、ICチップ30,50毎に設けられるものではなく、少なくとも分配制御部63の前に設けられるものが含まれていればよい。
【0041】
分配制御部63は、符号化部61により取得されたデジタル信号に基づいて、複数のICチップ30,50のうち当該デジタル信号を受信すべきICチップを選択して、当該デジタル信号を送信する分配制御手段である。分配制御部63では上記の選択のため、ICチップ30,50毎のデータ方式の違いによるデジタル信号のパターンに関する情報を予め保持している。分配制御部63は、保持したデジタル信号のパターンと符号化部61により取得されたデジタル信号とを比較することにより、ICチップの選択を行う。より具体的には、非接触IC装置101における処理の説明において述べる。符号化部61により取得されたアナログ信号は、選択されたICチップ30,50に対応するプロトコル制御部22,42に送信される。
【0042】
プロトコル制御部22,42は、分配制御部63から受信したデジタル信号を対応するICチップ30,50に送信する。
【0043】
引き続いて、以下、図6のフローチャートを用いて、本実施形態における非接触IC装置101により実行される処理(制御方法)を説明する。本処理は、非接触IC装置用リーダライタ等の装置からの電波を受信する際の処理である。
【0044】
まず、非接触IC装置101では、第1実施形態と同様に、アンテナ11が非接触IC装置用の電波を受信する(S11、受信ステップ)。続いて、変復調部12が、アンテナ11により受信した電波を変換することにより、アナログ信号を取得する(S12、信号取得ステップ)。取得されたアナログ信号は、符号化部61に送信される。
【0045】
続いて、アナログ信号を受信した符号化部61が、当該アナログ信号に対してA/D変換を行い、デジタル信号を得る(S13、信号取得ステップ)。符号化部61は、そのデジタル信号を、分配制御部63に送信する。
【0046】
続いて、分配制御部63が当該取得されたデジタル信号に基づいて、複数のICチップ30,50から、当該デジタル信号を受信すべきICチップを選択する(S14、分配制御ステップ)。上記の選択は、例えばデジタル信号からヘッダ情報を取得し、ヘッダ情報に含まれる文字列を参照して判断することにより行うことができる。その場合、分配制御部63には、予めICチップ30,50の種類と文字列との対応関係を記憶させておく。また、ICチップ30,50毎に異なる、ヘッダ情報の文字列以外の情報が用いられてもよい。
【0047】
続いて、分配制御部63は、選択したICチップ30,50に対応するプロトコル制御部22,42にアナログ信号を送信する(S15,分配制御ステップ)。プロトコル制御部22,42は、当該デジタル信号に対して、ICチップ30,50に送信する際に必要な、プロトコルに関する処理を行い、当該デジタル信号を対応するICチップ30,50に送信する。デジタル信号を送信されたICチップ30,50は、当該デジタル信号を受信する(S06)。以上が、第2実施形態における、非接触IC装置101の構成及び非接触IC装置101における処理(制御方法)である。
【0048】
上述したように、本実施形態に係る非接触IC装置1,101によれば、一つの(非接触IC装置用の)アンテナ11を備えていればよく、複数の非接触IC装置用のアンテナを備えることによる電波の干渉を防止することができ、確実に通信を行うことができる。また、アンテナ11が一つで済むので、簡易な構成の非接触IC装置を実現することができる。
【0049】
また、本実施形態のように非接触IC装置1,101を携帯電話機として構成することとすれば、携帯電話機の機能を向上させ、ユーザにとっての携帯電話機の利便性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る非接触IC装置1,101では、複数のICチップ30,50を利用可能とするためにユーザが何らかの操作を行うことが不要である。従って、ユーザによる操作誤りにより、非接触IC装置1,101が誤動作を起こすおそれがなく、確実に動作する。また、ユーザがそもそも操作不可能(身体的な事情も含み操作することが難しいなど)な場合等においても、複数のICチップ30,50を含んだ非接触IC装置1,101を動作させることができる。
【0051】
また、第1実施形態に係る非接触IC装置1のようにアナログ信号により信号を送信するICチップを選択することとすれば、第1実施形態のようにICチップ30,50毎にアナログ信号の方式が異なる場合等に、容易かつ確実に本発明を実施することができる。
【0052】
また、第2実施形態に係る非接触IC装置101のようにデジタル信号により信号を送信するICチップを選択することとすれば、第2実施形態のようにICチップ30,50毎にデジタル信号として得られるヘッダ情報の文字列等が異なる場合等に、容易に本発明を実施することができる。
【0053】
本実施形態では、非接触IC装置1,101を携帯電話機としたが、それ以外の態様、例えばカードにアンテナとICチップとが埋め込まれた非接触ICカードのようなものでもよい。その場合は、携帯性等を考慮して、非接触ICカードは通常のものと同様に、アンテナからの起電力を利用するパッシブ型にするのがよい。
【0054】
また、本実施形態では、非接触IC装置1,101に含まれるICチップ30,50は2つとしたが、3つ以上のICチップが含まれていてもよい。また、本実施形態では、2つのICチップ30,50は物理的に別構成であるものとしたが、1つのデバイスに複数の回路を搭載して複数のICチップ30,50の機能を実現するような場合でも、本発明を適用することができる。
【0055】
また、本実施形態では、非接触IC装置1,101による電波の受信についてしか述べていないが、通常のICカード等の非接触IC装置と同様に電波の送信も備えていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触IC装置である携帯電話機の外観を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る非接触IC装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る非接触IC装置における制御方法のフローチャートである。
【図4】ICチップの方式毎のアナログ信号を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る非接触IC装置の機能ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る非接触IC装置における制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1,101…非接触IC装置、2…表示部、3…操作部、4…(移動通信用)アンテナ、11…(非接触IC装置用)アンテナ、12…変復調部、13,63…分配制御部、21,41,61…符号化部、22,42…プロトコル制御部、30,50…ICチップ、31,51…中央処理部、32,52…不揮発情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のICチップと、
非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、
前記アンテナにより受信された電波から信号を取得する信号取得手段と、
前記信号取得手段により取得された信号に基づいて、前記複数のICチップから当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御手段と、
を備える非接触IC装置。
【請求項2】
複数のICチップを装着させることができる装着部と、
非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、
前記アンテナにより受信された電波から信号を取得する信号取得手段と、
前記信号取得手段により取得された信号に基づいて、前記装着部に装着された複数のICチップのうち当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御手段と、
を備える非接触IC装置。
【請求項3】
前記信号取得手段により取得される信号は、アナログ信号であり、
前記分配制御手段は、前記アナログ信号の波形に基づいて前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触IC装置。
【請求項4】
前記信号取得手段により取得される信号は、デジタル信号であり、
前記分配制御手段は、前記デジタル信号に基づいて前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触IC装置。
【請求項5】
複数のICチップと、非接触IC装置用の電波を受信するアンテナと、を備える非接触IC装置における制御方法であって、
前記アンテナにより非接触IC装置用の電波を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信された電波から信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップにおいて取得された信号に基づいて、前記複数のICチップから当該信号を受信すべきICチップを選択して当該信号を送信する分配制御ステップと、
を有する制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−344043(P2006−344043A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169730(P2005−169730)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】