説明

非接触IDカード及びその製造方法

生産性及び電気的特性において一段と優れた非接触IDカード及びそのような非接触IDカードを製造可能な方法を提供する。本発明の非接触IDカードは、基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とで構成され、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを接合するように両基板を積層してなる非接触IDカードにおいて、前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方の接合面に散在する微細凹部に充填された絶縁性接着材で両電極が接着接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ID(識別情報)カード類及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ回路基板にICチップを実装した、所謂、非接触IDカードや非接触タグ等(以下、このようなものを総称して非接触IDカードという。)は、各種型式のものが知られている。
【0003】
その一例として、基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とで構成され、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを導通させるように両基板を積層してなる非接触IDカードが挙げられる(例えば、下記特許文献1参照)。かかる非接触IDカードにおいては、アンテナの電極と拡大電極とを導電性接着材又は導電性粘着材で接合(以下、接着接合という。)して導通させたり、或いは、アンテナの電極と拡大電極とを接着しないで密着(以下、非接着接合という。)させて導通させたりしている。
【0004】
しかし、上述の接着接合は、ペースト状又はフィルムテープ状の導電性接着材又は導電性粘着材をどちらか一方の微小な電極上に塗布又は貼着する関係上、それが煩わしくて短時間に行うことが困難であると共に、接合位置ずれが発生し易い。従って、生産性や電気的特性などについて更なる改善が必要である。また、上述の非接着接合は、導電性接着材又は導電性粘着材を使用ないで両基材を接着し、これによって両電極の密着状態を保つようにしているから、上述の接着接合との比較においては、生産性に優れているが、その一方において、両電極の導通状態が不安定である為に電気的特性が劣っている。
【0005】
そこで、アンテナの電極と拡大電極とを接着接合すると共に両基材同士を接着したり、或いは、両電極を一般的な金属電極としないで、少なくともどちらか一方を導電性接着材で形成された樹脂電極とすることなどが試みられているが、上述の欠点を未だ十分に解消し得ていない。
【特許文献1】国際公開第01/62517号パンフレット(図1参照)
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上述に鑑みて発明されたものであって、その目的は、生産性及び電気的特性において一段と優れた非接触IDカード及びそのような非接触IDカードを製造可能な方法を提供することである。
【0007】
上述の目的を達成する為に、本発明に係る非接触IDカードにおいては、基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とで構成され、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを接合するように両基板を積層してなる非接触IDカードに関し、前記アンテナの電極及び/又は前記拡大電極の接合面に散在する微細凹部に充填された絶縁性接着材で両電極が導通するように接着接合されている。
【0008】
また、本発明に係る非接触IDカードの製造方法においては、基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とを、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを位置合わせした姿に積層するに先立って前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方に絶縁性接着材を塗布し、電極接合面に散在する微細凹部に前記絶縁性接着材を充填し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧することによって、前記微細凹部に充填された前記絶縁性接着材で両電極同士を導通するように接着接合している。
【0009】
或いは、本発明に係る非接触IDカードの製造方法においては、基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とを、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを位置合わせした姿に積層するに先立って前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方に絶縁性接着材を塗布し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧加熱することによって、両電極の少なくとも一方の接合面に散在する微細凹部に前記絶縁性接着材を充填すると共に前記絶縁性接着材の残部を前記密着部から電極側周部へ押し出し、前記微細凹部に充填された前記絶縁性接着材で両電極同士を導通するように接着接合している。
【0010】
このように、アンテナの電極及び/又は拡大電極の接合面に散在する微細凹部に充填された絶縁性接着材で両電極を接着接合するようにしているから、両電極同士を導通状態に強固に接合することができる。
【0011】
本発明によると、アンテナの電極及び/又は拡大電極の接合面に散在する微細凹部に絶縁性接着材を充填し、かつ、かかる充填された絶縁性接着材で両電極同士を接着接合するようにしているから、絶縁性接着材を使用していても、両電極の接合面の微細凹部が形成されていない部分同士を密着させて両電極同士を導通させることができる一方において、両電極の接合面の微細凹部が形成されている部分を上述の如くに絶縁性接着材で強固に接着接合することができる。従って、生産性及び電気的特性において一段と優れた非接触IDカード及びそのような非接触IDカードを製造することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[図1]非接触IDカードの平面図である。
[図2]図1のX−X矢視断面図である
[図3]アンテナ回路基板の平面図である。
[図4]図3の正面図である。
[図5]インターポーザー基板の平面図である。
[図6]図5の縦断面図である。
[図7]図2の電極接合部を拡大した図である。
[図8]接合開始時におけるアンテナ回路基板と図6のインターポーザー基板との位置的関係を示す縦断面図である。
[図9]アンテナ回路基板の電極(アンテナ電極)上に塗布された絶縁性接着材に図6のインターポーザー基板の拡大電極を接触させた姿を示す縦断面図である。
[図10]アンテナ回路基板の電極(アンテナ電極)と図6のインターポーザー基板の拡大電極とを接合した姿を示す縦断面図である。
[図11]インターポーザー基板の他の例を示す縦断面図である。
[図12]インターポーザー基板の他の例を示す縦断面図である。
[図13]インターポーザー基板の他の例を示す縦断面図である。
[図14]アンテナ回路基板の電極(アンテナ電極)と図12のインターポーザー基板の拡大電極とを接合した姿を示す縦断面図である。
[図15]図14の電極接合部を拡大した図である。
[図16]接合開始時におけるアンテナ回路基板と図12のインターポーザー基板との位置的関係を示す縦断面図である。
[図17]アンテナ回路基板の電極(アンテナ電極)上に塗布された絶縁性接着材に図12のインターポーザー基板の拡大電極を接触させた姿を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る非接触IDカードは、アンテナ回路基板とインターポーザー基板とを積層して構成されているが、それの一例が平面図である図1及び図1のX−X矢視断面図である図2に示されている。
【0014】
両図において、下側のアンテナ回路基板2上にインターポーザー基板7が積層されている。かかるアンテナ回路基板2は、平面図である図3及び図3の正面図である図4に示す如く、絶縁材である樹脂フィルムで構成されている矩形の基材9上に、アンテナ6及びそれに接続された電極3a,3b(以下、アンテナ電極という。)を形成した構成になっている。
【0015】
このアンテナ6及びアンテナ電極3a、3bは、導電性粒子と樹脂バインダーとを混合してなる導電性接着材を樹脂フイルムに印刷し乾燥或いは硬化することで形成されている。つまり、アンテナ電極3a,3bは、図示の如く、単層の樹脂電極である。
【0016】
また、上述のアンテナ6及びアンテナ電極3a、3bは、樹脂フイルムに貼ったアルミ箔や銅箔をエッチング加工することで形成されていてもよい。このとき電極は金属電極である。
【0017】
一方、インターポーザー基板7は、平面図である図5及び図5の縦断面図である図6に示す如く、絶縁材である樹脂フィルムで構成されている矩形の基材10にICチップ4を埋設し、すなわち、ICチップ4の回路面と基材10の上面とが同一平面を形成するように基材10にICチップ4を埋設し、かつICチップ4の電極12a、12bに接続された拡大電極11a,11bを形成した構成になっている。
【0018】
なお、拡大電極11a,11bは、基材10上に形成されている絶縁樹脂層8上に形成され、それの接続端子21a,21b(例えば、絶縁樹脂層を貫通するビアホールに導電性粒子と樹脂バインダーとを混合してなる導電性接着材を充填し硬化して形成されたもの)を経由してICチップ4の電極12a、12bに接続されている。
【0019】
この拡大電極11a,11b及び接続端子21a,21bは、絶縁樹脂層にビアホールを形成後、ビアホールに導電性粒子と樹脂バインダーとを混合してなる導電性接着材を印刷充填し乾燥或いは硬化することで形成されている。
【0020】
この拡大電極11a,11bも、上述のアンテナ電極3a,3bと同様に導電性粒子と樹脂バインダーとを混合してなる導電性接着材で形成された樹脂単層電極である。
【0021】
アンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bは、図1及び図2に示されるように、共に平面状に形成されている。平面状の電極であれば両電極の接着接合に際して、ウエッブ状物をラミネートするように接合することができるので接合の高速化が容易になる。また、上述のアンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bとは、それぞれの接合面を互いに密着させた姿となるように部分的に接着接合されている。図7に、一方のアンテナ電極3aと拡大電極11aとの接合姿が拡大されて示されている。図示されていない他方のアンテナ電極3bと拡大電極11bとの接合も、それと同様である。
【0022】
なお、アンテナ回路基板2とインターポーザー基板7は、共にフイルム状或いはシート状の実質的に平面状の基板である。従って、アンテナ回路基板2とインターポーザー基板7の接着接合はフイルム状物やシート状物等のウエッブ状物を積層し張り合わせるように行うことができるので接着接合を効率良く行うことができる。
【0023】
図示の如く、アンテナ電極3aと拡大電極11aとは、それぞれの接合面に形成されている微細な凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で接着接合されている。かかる凹部31,32は、アンテナ電極3a及び拡大電極11aの接合面を、人為的に粗面化処理等をして形成したものではなくて、電極の形成に伴って原始的に形成されるものであって、それらは接合面に散在している。図7において、理解を容易にするために、凹部31,32は実際よりも大きく描かれている。
【0024】
半導体チップのフリップチップ接合において、半導体チップの電極に形成した電極突起(バンプ)を回路基板の電極に接合する際に、絶縁性樹脂を基板の電極上に塗布し、次いで半導体チップのバンプを基板電極に当接させて加圧加熱し、絶縁性樹脂が硬化した際の収縮応力を利用して接合する、所謂、NCP接合工法が良く知られている。しかし、NCP接合工法においてはフォトリソグラフィーやリフトオフ法などの複雑なバンプ形成工程を経て規則正しく配置されたバンプを利用するのに対し、本発明の電極は導電性粒子と樹脂バインダーとを混合してなる導電性接着材を印刷し乾燥或いは硬化することで原始的に形成される。これにより、接合用の電極突起(本発明においては微細凸部)を簡便かつ安価に形成することができる。
【0025】
上述のアンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bとの接合に絶縁性接着材33を用いた場合、凹部31,32が形成されていない部分(接合面の一部分)同士を密着させて両電極同士を導通させることができ、かつ凹部31,32に充填された微量の絶縁性接着材33で両電極を強固に接着接合することができる。凹部31,32の大きさは、0.1μm〜100μm、好ましくは、0.5μm〜50μmである。さらに好ましくは5〜50μmである。
【0026】
なお、上述の微細な凹部31,32は、樹脂電極に限らず金属電極においても形成される。従って、アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bは、金属電極、樹脂電極又は金属電極と樹脂電極とを積層した電極のいずれであってもよい。
【0027】
しかし、少なくともどちらか一方を樹脂電極にするのが好ましい。上述の樹脂電極は、金属電極の場合よりも、大きい凹部31,32が形成され易いからである。金属電極においては、原材料の銅箔を粗面化処理した銅箔を用いると大きい凹部を形成することができる。
【0028】
上述の導電性粒子の例として、銀粒子、銅粒子に銀メッキした粒子、カーボンと銀粒子を混合した混合物等が挙げられ、樹脂バインダーにあっては、熱可塑性又は熱硬化性のいずれであってもよい。かかるバインダーの選択により導電性接着材の熱可塑性又は熱硬化性が決定される。
【0029】
なお、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合した樹脂バインダーであってもよい。熱可塑性樹脂の例として、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が、また、熱硬化性樹脂の例として、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等がそれぞれ挙げられる。
【0030】
上述の組成の導電性接着材は、ペースト体であって、それを塗布(例えば、滴下又は印刷等)して樹脂電極のアンテナ電極3a,3b又は拡大電極11a,11b又は両電極を形成する。熱硬化性導電性接着材よりも、熱可塑性導電性接着材の方が、塗布後の後処理時間を短くすることができるので好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂バインダー、熱可塑性樹脂と熱硬化性とを混合した樹脂バインダー、又は、熱可塑性樹脂バインダーと同様に加熱時に密着性或いは粘着性を示す他の樹脂バインダーに導電性粒子を混入した導電性接着材も好ましい。
【0032】
熱可塑性導電性接着材を溶剤に希釈し、それを印刷、例えば、スクリーン印刷して拡大電極11a,11b又はアンテナ電極3a,3b又は両電極を形成する場合においては、印刷後、その電極を乾燥させてから接合する。熱硬化性導電性接着材を用いる場合においても同様である。熱硬化性導電性接着材は、密着強度が大きいが、印刷後の後処理時間(熱硬化時間)が比較的長い(一般に数秒以上である)。従って、非接触IDカードに要求される電気的特性等の信頼性に応じて両者を使い分ければよい。
【0033】
両電極の接着接合は、アンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bとを位置合わせした姿にアンテナ回路基板2とインターポーザー基板7とを積層するようにして行うが、それに先立って、アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bのどちらか一方に、或いは双方に絶縁性接着材33を塗布し、電極接合面に散在する微細凹部に前記絶縁性接着材を充填し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧することによって、微細凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で両電極同士を接合する。
【0034】
また、両電極の他の接着接合は、アンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bとを位置合わせした姿にアンテナ回路基板2とインターポーザー基板7とを積層するようにして行うが、それに先立って、アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bのどちらか一方に、或いは双方に絶縁性接着材33を塗布し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧加熱することによって、両電極それぞれの接合面に散在の微細凹部31,32に絶縁性接着材33を充填すると共に絶縁性接着材33の残部を前記密着部から電極側周部へ押し出し、微細凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で両電極同士を接合する。
【0035】
加圧加熱することにより絶縁性接着材33を微細凹部の細部にまで充填することができるが、積層接合に先立って絶縁性接着材33を電極に塗布し微細凹部に充填してあれば、前述の加圧のみで両電極同士を接合することができるので加熱装置が不要になり、装置が簡易化され、しかも積層接合を高速化できるので生産性を向上することができる。
【0036】
また、電極部を保護しつつ接合の信頼性を高めるために封止機能(例えば防水性等)を有する絶縁性接着材33を用いることができる。この場合、両電極同士の接合にあたって、加圧加熱により電極側周部へ絶縁性接着材33を押し出して電極周囲に配置すれば、電極部を封止でき、接合部の電気的接合の信頼性を高めることができる。
【0037】
絶縁性接着材33は、絶縁性に加えて接着性を有するもののみに限定されず、絶縁性に加えて粘着性を有する、所謂、絶縁性粘着材も包含し、冷却しても粘着性を有するものが好適である。代表例として、EVA系、ポリオレフィン系、合成ゴム系、接着性ポリマー系、ウレタン系反応系等のホットメルト接着材が挙げられるが、このホットメルト接着材は、加熱加圧によって薄い層を形成するように容易に広がる特性を有している。
【0038】
それらのうち、合成ゴム系ホットメルト接着材は、低加圧力であっても、より薄い層を形成するように容易に広がる特性を有しているので最も好ましい。アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bのいずれか一方に対する絶縁性接着材33の塗布は、ノズルを用いての滴下、又はピン或いはローラーを用いての転写等、従来知られた方法であってもよい。
【0039】
絶縁性接着材33を予め電極に塗布する際には加熱して流動し易くして滴下或いは転写等の方法により塗布すれば微細凹部の細部にまで十分に充填することができる。そのため、予め絶縁性接着材33を加熱して微細凹部に塗布してあれば上記例のように両電極を加圧するだけで接合することが可能である。
【0040】
上述の接着接合について、図8乃至図10に基づいてより具体的に述べると、図8は、下側のアンテナ回路基板2と上側のインターポーザー基板7とを積層しようとする姿を示し、下側のアンテナ電極3a,3b上に絶縁性接着材33が塗布されている。一方、上側の拡大電極11a、11bは、アンテナ電極3a,3bに対して接合に適した状態に位置合わせが行われている。
【0041】
そして、図9は、インターポーザー基板7が降下されて拡大電極11a、11bが、アンテナ電極3a,3b上の絶縁性接着材33に接触した状態の積層姿を示している。更に、図10は、アンテナ回路基板2に対してインターポーザー基板7を加熱加圧して両電極同士を密着させ、すなわち、拡大電極11a、11bと拡大電極11a、11bとを密着させた姿を示している。
【0042】
かかる加熱加圧は、図示されていないが、ヒートツールを用いて行う。これで両電極同士を密着させるように加圧加熱することによって、上述の如く、両電極それぞれの接合面に散在する微細凹部31,32(図7参照)に絶縁性接着材33を充填することができると共に絶縁性接着材33の残部を前記密着部から電極側周部へ押し出し、微細凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で両電極同士を接着接合することができる。なお、絶縁性接着材33として上述のホットメルト接着材を選択した場合、0.05秒〜0.2秒程度の極めて短い時間で両基板の積層接合を行うことができる。
【0043】
本発明において、インターポーザー基板7は、上述の図6のものに代えて図11のものであってもよい。これらは、基材10にICチップ4を埋設しているが、埋設していない姿に搭載してもよい。但し、基板の薄型化を考慮して基材10にICチップ4を埋設するのが好ましい。
【0044】
樹脂フイルムにICチップ4を埋設したウエッブ状のインターポーザー基板と、同じく樹脂フイルムなどで構成されるウエッブ状のアンテナ回路基板とを用いれば、ウエッブ状物を通常取り扱うようにロールツーロール方法で両電極を積層接合し非接触IDカードを製造することができる。
【0045】
また、上述の如くに、アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bの少なくともどちらか一方を、単層電極であって、かつ樹脂電極にすることに代えて、積層電極であって、かつ組成の異なる複数種類の導電性接着材で形成された樹脂電極にしてもよい。例えば、熱硬化性の導電性接着材で形成した下層電極上に熱可塑性の導電性接着材で形成した上層電極を形成してなる積層電極としてもよい。
【0046】
更に、図12及び図13に示す如くに、拡大電極11a,11bを、積層電極であって、かつ基材10上に形成された金属電極35と、この金属電極35上に導電性接着材で形成された樹脂電極36とで構成してもよい。図12のインターポーザー基板7は、絶縁樹脂層8を備えているが、図13のインターポーザー基板7は、それを備えていない。
【0047】
図14に示す如くに、図12のインターポーザー基板7とアンテナ回路基板2とを接合することができる。これにおいても、アンテナ電極3a,3bと拡大電極11a,11bとは、それぞれの接合面を互いに密着させた姿に接着接合されている。図15に、一方のアンテナ電極3aと拡大電極11aとの接合姿が拡大されて示されている。図示されていない他方のアンテナ電極3bと拡大電極11bとの接合も、それと同様である。
【0048】
図示の如く、アンテナ電極3aと拡大電極11aとは、それぞれの接合面に形成されている微細な凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で接着接合されている。なお、拡大電極11aの接合面は、上述の樹脂電極36で形成されているが、これに散在する微細な凹部32に絶縁性接着材33が充填されている。図15において、理解を容易にするために、凹部31,32は実際よりも大きく描かれている。
【0049】
よって、絶縁性接着材33を用いていても、凹部31,32が形成されていない部分(接合面の一部分)同士を密着させて両電極同士を導通させることができ、かつ凹部31,32に充填された絶縁性接着材33で両電極を強固に接着接合することができる。
【0050】
かかる接合に際し、図16に示す如く、下側のアンテナ電極3a,3b上に絶縁性接着材33が塗布される。一方、上側の拡大電極11a、11bは、アンテナ電極3a,3bに対して接合に適した状態に位置合わせが行われる。次いで、図17に示す如く、インターポーザー基板7が降下されて拡大電極11a、11bが、アンテナ電極3a,3b上の絶縁性接着材33に接触した状態に積層され、そして、アンテナ回路基板2に対してインターポーザー基板7を加熱加圧して両電極同士を密着する。その為、上述の如く、両電極を強固に接着接合することができる。
【0051】
図16はアンテナ電極3a,3b上に絶縁性接着材33が塗布される例を示したが、接合に先立って、予め拡大電極11a、11bに絶縁性接着材33を塗布し、微細凹部に充填してあれば、拡大電極をアンテナ電極に対して位置合わせし、加圧により電気的に導通した接合を行うことができる。
【0052】
なお、拡大電極11a,11bを、積層電極であって、かつ基材10上に形成された金属電極35と、この金属電極35上に導電性接着材で形成された樹脂電極36とで構成することに代えて、アンテナ電極3a,3bのみ、又は、拡大電極11a,11b及びアンテナ電極3a,3bを、金属電極35と樹脂電極36とで構成された積層電極にしてもよい。要するに、アンテナ電極3a,3b及び拡大電極11a,11bの少なくともどちらか一方を、そのような積層電極にしてもよい。
【0053】
拡大電極11a,11bを、金属電極35と熱可塑性の導電性接着材で形成された樹脂電極36とで構成し、金属電極のアンテナ電極3a,3bと接合したところ、0.05秒〜0.2秒で接合することができたが、そのときの接合部の電気抵抗値は0.1Ω〜1Ω、密着強度は10N/cm〜50N/cmであった。
【0054】
熱可塑性樹脂と熱硬化性とを混合した樹脂バインダー、又は、熱可塑性樹脂バインダーと同様に加熱時に密着性或るいは粘着性を示す他の樹脂バインダーに導電性粒子を混入した導電性接着材を用いた場合においても、接合時間や電気抵抗値等がほぼ同等であった。接合に際しての加熱加圧手段としてのヒートツールは、熱源を備えた圧延ローラからなるロータリー型のものが好ましい。特に、複数のロータリー型ヒートツールを直列に配置し、これらヒートツールによってアンテナ回路基板とインターポーザー基板の積層体を加熱加圧すると良い。これは接合時間を短縮し高速に接合することができるからである。
【0055】
接着接合に用いる絶縁性接着材は低い温度で、少ない加圧力で、しかも短時間に薄く延ばされ、広がる性質を持つものが好ましい。そのため絶縁性接着材の引張強度と伸びの関係が重要である。引張強度は3MPa以下、好ましくは1MPa以下であり、伸びは300%以上、好ましくは500%以上である。
【実施例】
【0056】
株式会社フジクラ製の熱可塑性銀ペーストFA−333を用いて印刷法でポリエステルフイルム上にアンテナ樹脂電極を作成した。アンテナ樹脂電極は大きさが2.0mm×2.0mm、厚さが12μmである。一方、ポリカーボネートフイルム上に東亜合成株式会社製の熱可塑性銀ペーストPES−E91を用いて同じく印刷法で拡大樹脂電極を形成した。拡大樹脂電極は大きさが2.5mm×2.5mm、厚さが30μmである。
【0057】
樹脂拡大電極とアンテナ樹脂電極の接着接合に当たり、アンテナ電極上に東亜合成株式製の合成ゴム系のホットメルト材PPETを電極1ケ当たり0.5mgを転写ピンを用いて塗布した。次いでインターポーザー基板を加圧ツールの真空吸着口で吸着し、アンテナ樹脂電極と拡大電極を位置合わせした後、加圧ツールを下降させて両電極部を加圧加熱して接合接着した。
【0058】
その時の加熱温度は180℃、加圧圧力は0.8MPa、接着接合時間は0.2秒であった。このときの接合抵抗は0.3〜0.4Ωであった。抵抗値は60℃、93%RHの高温高湿試験及び−40℃〜80℃の冷熱サイクル試験を経ても、その上昇が許容範囲内であった。
【0059】
接着接合に用いたPPETは引張強度が0.3MPa、伸びが1400%と非常に伸びやすい特性を持つ絶縁性接着材であった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とで構成され、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを接合するように両基板を積層してなる非接触IDカードにおいて、前記アンテナの電極及び/又は前記拡大電極の接合面に散在する微細凹部に充填された絶縁性接着材で両電極が接着接合されていることを特徴とする非接触IDカード。
【請求項2】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、単層電極であって、かつ導電性接着材で形成された樹脂電極であることを特徴とする請求項1に記載の非接触IDカード。
【請求項3】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、積層電極であって、かつ組成の異なる複数種類の導電性接着材で形成された樹脂電極であることを特徴とする請求項1に記載の非接触IDカード。
【請求項4】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、積層電極であって、かつ前記基材上に形成された金属電極と前記金属電極上に導電性接着材で形成された樹脂電極とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触IDカード。
【請求項5】
前記導電性接着材が熱可塑性を有していることを特徴とする請求項2,3又は4に記載の非接触IDカード。
【請求項6】
前記導電性接着材が熱硬化性を有していることを特徴とする請求項2,3又は4に記載の非接触IDカード。
【請求項7】
前記ICチップが前記基材に埋設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の非接触IDカード。
【請求項8】
基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とを、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを位置合わせした姿に積層するに先立って前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方に絶縁性接着材を塗布し、電極接合面に散在する微細凹部に前記絶縁性接着材を充填し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧することによって、前記微細凹部に充填された前記絶縁性接着材で両電極同士を接着接合することを特徴とする非接触IDカードの製造方法。
【請求項9】
基材にアンテナを形成したアンテナ回路基板と、ICチップが搭載された基材に前記ICチップの電極に接続された拡大電極を形成したインターポーザー基板とを、前記アンテナの電極と前記拡大電極とを位置合わせした姿に積層するに先立って前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方に絶縁性接着材を塗布し、次いで、前記積層後、両電極同士を密着させるように加圧加熱することによって、両電極の少なくとも一方の接合面に散在する微細凹部に前記絶縁性接着材を充填すると共に前記絶縁性接着材の残部を前記密着部から電極側周部へ押し出し、前記微細凹部に充填された前記絶縁性接着材で両電極同士を接着接合することを特徴とする非接触IDカードの製造方法。
【請求項10】
前記加圧加熱をヒートツールで行うことを特徴とする請求項9に記載の非接触IDカードの製造方法。
【請求項11】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、単層電極であって、かつ導電性接着材で形成された樹脂電極であることを特徴とする請求項8、9又は10に記載の非接触IDカードの製造方法。
【請求項12】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、積層電極であって、かつ組成の異なる複数種類の導電性接着材で形成された樹脂電極であることを特徴とする請求項8、9又は10に記載の非接触IDカードの製造方法。
【請求項13】
前記アンテナの電極及び前記拡大電極の少なくとも一方が、積層電極であって、かつ前記基材上に形成された金属電極と前記金属電極上に導電性接着材で形成された樹脂電極とで構成されていることを特徴とする請求項8、9又は10に記載の非接触IDカードの製造方法。
【請求項14】
前記ICチップが前記基材に埋設されていることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一つに記載の非接触IDカードの製造方法。

【国際公開番号】WO2005/045919
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515344(P2005−515344)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016564
【国際出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】