説明

非揮発性の対イオンを含有する被覆された微小突起のための製剤

本発明は、pHが安定化された製剤を達成するための、被覆からの対イオンの喪失を低下するか若しくは最小限にする、1個若しくはそれ以上の微小突起を被覆するための製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を横断して剤を投与することおよびその経皮送達を高めることに関する。より具体的には、本発明は生物学的有効成分の水分を含まない被覆を有する皮膚を貫通する微小突起を使用して角質層を通って生物学的有効成分を投与するための経皮薬物送達系に関する。該剤の送達は、微小突起が患者の皮膚を貫通しかつ患者の間質液が有効成分と接触しかつそれを溶解する場合に達成される。より具体的には、それは、微小突起が皮膚を貫通した後の被覆のpHの変化に抗しかつ被覆の可溶化を促進する被覆製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物は、最も便宜的には経口で若しくは注入によるかのいずれかで投与される。不幸なことに、多くの医薬品は吸収されないか若しくは血流に入る前に悪影響を及ぼされるかのいずれかでありかつ従って所望の活性を有しないために、それらは経口で投与される場合に完全に無効であるか若しくは有効性が激しく低下する。他方、血流中への医薬品の直接注入は、投与の間の該医薬品の改変のないこと保証する一方で、困難、不便、痛みを伴いかつ不快な処置であり、ときに乏しい患者コンプライアンスをもたらす。
【0003】
これゆえに、原則として、経皮送達は、そうでなければ皮下注入若しくは静脈内注入を介して送達される必要があるとみられる薬物の投与方法を提供する。経皮的薬物送達はこれらの領域の双方で改良を提供する。経皮送達は、経口送達と比較した場合に、消化管の過酷な環境を回避し、胃腸の薬物代謝を迂回し、初回通過効果を低下させ、そして消化酵素および肝酵素による可能な非活性化を回避する。逆に、消化管は経皮投与の間薬物にさらされない。事実、アスピリンのような多数の薬物は消化管に対する有害な影響を有する。しかしながら、多くの場合、受動的経皮経路を介する多数の剤の送達すなわち流動の速度は、治療上有効であるには制限されすぎている。
【0004】
「経皮」という語は皮膚層を横断する剤の通過を指す包括的用語として本明細書で使用される。該「経皮」という語は、手術用メスで切断すること若しくは皮下針で皮膚を貫通することのような皮膚の実質的な切断若しくは貫通を伴わない局所組織若しくは全身循環系への皮膚を通る剤(例えば、薬物のような治療薬)の送達を指す。経皮的剤送達は、受動拡散を介する、ならびに電気(例えばイオントフォレーシス)および超音波(例えばフォノフォレーシス)を包含する外的エネルギー源による送達を包含する。薬物は角質層および表皮の双方を横断して拡散するのであるが、角質層を通る拡散の速度はしばしば制限段階となる。多くの化合物は、治療的用量を達成するために、単純な受動的経皮拡散により達成し得るよりも高い送達速度を必要とする。注入に比較した場合、経皮的剤送達は関連する疼痛を排除しかつ感染の可能性を低下させる。
【0005】
理論上、剤の経皮投与経路は多くの治療的タンパク質の送達に有利であり得る。タンパク質は胃腸の分解の影響を受けやすくかつ乏しい胃腸の取り込みを表し、また、経皮機器は注入よりも患者により受容されるからである。しかしながら、薬効上有用なペプチドおよびタンパク質の経皮流動は、しばしば、これらの分子の大きな大きさ/分子量のために治療上有効であるには不十分である。しばしば、該送達速度すなわち流動が所望の効果を生じさせるのに不十分であるか、または、剤は標的部位に達する前、例えば患者の血流中の間に分解される。
【0006】
経皮薬物送達系は、一般に、薬物を投与するために受動拡散に頼る一方、能動的経皮薬物送達系は薬物を送達するために外的エネルギー源(例えば電気)に頼る。受動的経皮薬
物送達系がより一般的である。受動的経皮系は、皮膚(ここで薬物が皮膚を通りかつ患者の身体組織若しくは血流中に拡散する)を接触するよう適合されている、高濃度の薬物を含有する薬物リザーバを有する。経皮薬物流動は、皮膚の状態、薬物分子の大きさおよび物理/化学特性、ならびに皮膚を横断する濃度勾配に依存する。多くの薬物に対する皮膚の低浸透性のため、経皮送達は制限された応用を有していた。この低浸透性は、主として角質層(脂質二重層により囲まれたケラチン線維で満たされた平坦な死んだ細胞(ケラチノサイト)よりなる最外皮膚層)に帰される。脂質二重層のこの高度に秩序正しい構造が、角質層に比較的不浸透性の特徴を付与する。
【0007】
能動的輸送系は、角質層を通る薬物の流動を補助するために外的エネルギー源を使用する。経皮的剤送達のための1つのこうした増強は「電気輸送」と称される。この機構は、皮膚のような身体表面を通る剤の輸送で補助するための電流の適用をもたらす電位を使用する。他の能動的輸送系は外的エネルギー源として超音波(フォノフォレーシス)および熱を使用する。
【0008】
経皮送達されている剤の量を高めるために、最外皮膚層に機械的に浸透すなわちそれらを破壊してそれにより皮膚中への経路を創製するための多くの試みもまた存在した。表面剥離機として知られる初期のワクチン接種機器は、一般に、皮膚に適用されかつ適用の領域で引っ掻くすなわち小切創を作成する複数の尖叉若しくは針を有した。ワクチンは、特許文献1のように皮膚上に、または特許文献2若しくは特許文献3若しくは特許文献4のように表面剥離機の尖叉に塗布された水分を含む液体としてのいずれかで局所適用された。表面剥離機は、部分的に、患者の免疫において有効であるためには非常に少量のワクチンのみが皮膚中に送達される必要があるために、皮内ワクチン送達に示唆された。さらに、過剰の量ならびに最小量が満足すべき免疫化を達成するため、送達されるワクチンの量はとりわけ重要ではない。しかしながら、薬物を送達するための表面剥離機の使用における重大な一欠点は、経皮薬物流動および生じる送達される投薬量の決定における困難である。また、穿刺を反らせかつそれに抗する皮膚の弾性、変形性かつ弾力的な性質により、小型の貫通要素はしばしば皮膚に均一に浸透せずかつ/若しくは皮膚浸透に際して拭われて剤の液体被覆がなくなる。加えて、皮膚の自己治癒過程により、皮膚中に作成された穿刺若しくは細隙が、角質層からの貫通要素の除去後に閉鎖する傾向があった。かように皮膚の弾性の性質は、小型の貫通要素に塗布された有効成分の被覆を、皮膚中へのこれらの要素の浸透に際して除去するように作用する。さらに、貫通要素により形成される小型細隙は機器の除去後に迅速に治癒し、従って、貫通要素により創製された経路を通る剤の通過を制限しそして順にこうした機器の経皮流動を制限する。
【0009】
経皮薬物送達を高めるために小型の皮膚貫通要素を使用する他の機器は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、ならびに特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24および特許文献25(全部はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる)に開示されている。これらの機器は、皮膚の最外層(すなわち角質層)を貫通するのに多様な形状および大きさの貫通要素を使用する。これらの参考文献に開示される貫通要素は、一般にパッド若しくはシートのような薄い平坦な部材から垂直に伸長する。貫通要素は、これらの機器のいくつかにおいては極めて小型であり、いくつかはわずか約25〜400μmの寸法(すなわち微小刃の長さおよび幅)ならびにわずか約5〜50μmの微小刃厚さを有する。これらの小型の貫通/切断要素は、それを通る高められた経皮的剤送達のため、角質層中に相応して小さい微小細隙/微小切創を作成する。
【0010】
一般に、これらの系は、薬物を保持するためのリザーバ、およびまた機器それ自身の中空の尖叉によるようなリザーバから角質層を通って薬物を移動させるための送達系も包含
する。別の代替は微小突起それら自身上に有効成分を含有する被覆を提供することである。こうしたアプローチは、特許文献26、特許文献27、特許文献28および特許文献29(全部は引用することにより本明細書に組込まれる)に開示されている。
【0011】
微小突起上に被覆された剤を経皮送達するために微小突起機器を使用することは多数の利点を付与する。しかしながら、微小突起を被覆するために使用される製剤のいくつかは、皮膚の貫通に際して容易に可溶化される被覆を達成しない。
【0012】
従って、改良された溶解性を有する被覆を提供することが、本発明の一目的である。
【0013】
被覆のpHを安定化しかつ生理学的液体中でより少なく溶解性である荷電していない生物学的有効成分の量を増大し得る被覆を提供することが、本発明の別の目的である。
【特許文献1】Rabenauに交付された米国特許第5,487,726号明細書
【特許文献2】Galyに交付された米国特許第4,453,926号明細書
【特許文献3】Chacornacに交付された米国特許第4,109,655号明細書
【特許文献4】Kravitzに交付された米国特許第3,136,314号明細書
【特許文献5】欧州特許第EP 0407063A1号明細書
【特許文献6】Godshallらに交付された米国特許第5,879,326号明細書
【特許文献7】Gandertonらに交付された米国特許第3,814,097号明細書
【特許文献8】Grossらに交付された米国特許第5,279,544号明細書
【特許文献9】Leeらに交付された米国特許第5,250,023号明細書
【特許文献10】Gerstelらに交付された米国特許第3,964,482号明細書
【特許文献11】Kravitzらに交付された再交付第25,637号明細書
【特許文献12】PCT公開第WO 96/37155号明細書
【特許文献13】PCT公開第WO 96/37256号明細書
【特許文献14】PCT公開第WO 96/17648号明細書
【特許文献15】PCT公開第WO 97/03718号明細書
【特許文献16】PCT公開第WO 98/11937号明細書
【特許文献17】PCT公開第WO 98/00193号明細書
【特許文献18】PCT公開第WO 97/48440号明細書
【特許文献19】PCT公開第WO 97/48441号明細書
【特許文献20】PCT公開第WO 97/48442号明細書
【特許文献21】PCT公開第WO 98/00193号明細書
【特許文献22】PCT公開第WO 99/64580号明細書
【特許文献23】PCT公開第WO 98/28037号明細書
【特許文献24】PCT公開第WO 98/29298号明細書
【特許文献25】PCT公開第WO 98/29365号明細書
【特許文献26】米国特許出願第2002/0132054号明細書
【特許文献27】米国特許出願第2002/0193729号明細書
【特許文献28】米国特許出願第2002/0177839号明細書
【特許文献29】米国特許出願第2002/0128599号明細書
【発明の開示】
【0014】
[発明の要約]
上の目的および下に挙げられかつ明らかになるであろうものによれば、本発明の生物学的有効成分を経皮送達するための機器および方法は、一般に、角質層を通って下にある表皮層若しくは表皮および真皮層中に貫通するよう適合されている最低1個の微小突起(若しくはそのアレイ)を包含する微小突起部材(若しくは系)を有する送達系を含んでなる。一態様において、該微小突起は、その中に最低1種の生物学的有効成分が配置されている生物適合性の被覆を包含する。
【0015】
であるから、本発明の一態様は、生物学的有効成分および非揮発性の対イオンの製剤を含んでなる、角質層を貫通する微小突起を有する経皮送達機器を被覆するための組成物であり、前記製剤は乾燥された場合に増大したpH安定性および溶解性を有する。
【0016】
適する生物学的有効成分は、限定されるものでないが:抗菌薬および抗ウイルス薬のような抗感染症薬;フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィンを包含する鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;麻酔薬;食欲抑制薬;抗関節炎薬;テルブタリンのような抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;止瀉薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗偏頭痛製剤;スコポラミンおよびオンダンセトロンのような乗り物酔い製剤;抗悪心薬;抗悪性腫瘍薬;抗パーキンソン病薬;止痒薬;抗精神病薬;解熱薬;胃腸および尿路を包含する鎮痙薬;抗コリン作動薬;交感神経興奮薬(sympathomimetrics);キサンチン誘導体;ニフェジピンのようなカルシウム拮抗薬を包含する心血管系製剤;β−遮断薬;ドブタミンおよびリトドリンのようなβ−アゴニスト;抗不整脈薬;アテノロールのような降圧薬;ラニチジンのようなACE阻害薬;利尿薬;全身、冠動脈、末梢および脳を包含する血管拡張薬;中枢神経系興奮薬;咳および風邪の製剤;うっ血除去薬;診断薬;副甲状腺ホルモンのようなホルモン;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;副交感神経興奮薬;プロスタグランジン;タンパク質;ペプチド;覚醒剤;鎮静剤;ならびに精神安定剤を挙げることができる全部の主要な治療領域の治療薬を包含する。他の適する剤は、血管収縮薬、抗治癒薬および経路開存性調節剤を包含する。
【0017】
剤のさらなる特定の例は、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えばHGH、HMG、酢酸デスモプレシンなど)、卵胞ルテオイド、aANF、成長因子放出因子(GFRF)のような成長因子、bMSH、GH、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来増殖因子放出因子、アスパラギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、エポプロステノール(血小板凝集阻害剤)、グルカゴン、HCG、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、インターロイキン−10(IL−10)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルカゴン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ(ゴセレリン、リュープロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリンならびにナファレリン(napfarelin)、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)およびLH)のような)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、バソプレシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレシン、デスモプレシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH(1−24)のようなACTHアナログ、ANP、ANP消失阻害剤、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、セレデース、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチド抑制物質、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモンおよびアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1−34)のようなPTHアナログ、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害薬、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、バソプレシンアンタゴニストアナログ、α−1アンチトリプシン(組換え)ならびにTGF−βを制限なしに包含する。
【0018】
生物学的有効成分は、ウイルスおよび細菌を包含するワクチン、タンパク質に基づくワクチン、多糖に基づくワクチン、核酸に基づくワクチンおよび他の抗原性剤もまた含み得る。適する抗原性剤は、タンパク質、多糖複合物、オリゴ糖およびリポタンパク質の形態の抗原を制限なしに包含する。これらのサブユニットワクチンは、百日咳菌(Bordetella pertussis)(組換えPTアクシン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、組換え)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)(精製、組換え)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドを含む複合糖質A群多糖、トキシング(toxing)サブユニット担体に結合されたMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価型特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組換えプレS1、プレ−S2、S、組換えコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組換え−発現された表面タンパク質およびエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(キャプシドタンパク質、TA−GN組換えタンパク質L2およびE7[HPV−6から]、HPV−11からのMEDI−501組換えVLPL1、四価の組換えBLP L1[HPV−6から]、HPV−11、HPV−16およびHPV−18、LAMP−E7[HPV−16から])、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風トキソイドを含む複合糖質)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)(髄膜炎菌のB OMPに複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9N、14、18C、19V、23F]、CRM197に複合させた複合糖質[4、6B、9V、14、18C、19F、23F]、CRM1970に複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、帯状疱疹(Varicella zoster)ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)ならびにコレラ菌(Vibrio cholerae)(複合物リポ多糖)を包含する。
【0019】
全ウイルス若しくは細菌は、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルスおよび帯状疱疹のような弱毒化若しくは不活化ウイルス、百日咳菌(bordetella pertussis)、破傷風菌(clostridium tetani)、ジフテリア菌(corynebacterium diptheriae)、A群連鎖球菌、レジオネラ ニューモフィラ(legionella pneumophila)、髄膜炎菌(neisseria meningitdis)、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)、肺炎双球菌(streptococcus pneumoniae)、梅毒トレポネーマ(treponema pallidum)およびコレラ菌(vibrio cholerae)のような弱毒化若しくは不活化細菌、ならびにそれらの混合物を制限なしに包含する。
【0020】
抗原性剤を含有する付加的な商業的に入手可能なワクチンは、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水疱瘡ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチンおよびジフテリアワクチンを制限なしに包含する。
【0021】
核酸を含んでなるワクチンは、例えばスーパーコイルのプラスミドDNA;直鎖状プラスミドDNA;コスミド;バクテリア人工染色体(BAC);酵母人工染色体(YAC);哺乳動物人工染色体;および例えばmRNAのようなRNA分子のような一本鎖および二本鎖核酸を制限なしに包含する。核酸の大きさは数千キロベースまでであり得る。加えて、本発明のある態様において、核酸はタンパク質性の剤と結合され得るか、または例えばホスホロチオエート部分のような1種若しくはそれ以上の化学修飾を包含し得る。核酸のコーディング配列は、それに対する免疫応答が望ましい抗原の配列を含んでなる。加えて、DNAの場合、プロモーターおよびポリアデニル化配列もまたワクチン構築物中に組込まれる。コードされ得る抗原は、感染性疾患の全部の抗原性成分、病原体ならびに癌抗原を包含する。核酸は、従って例えば感染性疾患、癌、アレルギー、自己免疫および炎症性疾患の分野で応用を見出す。
【0022】
ワクチン抗原と一緒になってワクチンを含み得る適する免疫応答増強アジュバントは、リン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウム;藻類のグルカン:b−グルカン;コレラトキシンBサブユニット;CRL1005:x=8およびy=205の平均値を伴うABAブロックポリマー:γイヌリン:直鎖状(非分枝状)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−a−D−グルコース;ゲルブアジュバント:N−アセチルグルコサミン−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、亜鉛L−プロリン塩錯体(Zn−Pro−8);イミキモド(Imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTherヤ:N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート;MTP−PEリポソーム:C59H108N6O19PNa−3H20(MTP);ムラメチド(Murametide):Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3;プリューラン(Pleuran):b−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;スクラボペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1b 163−171ペプチド);およびトレオニル−MDP(Termurtideヤ):N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン、ならびにインターロイキン18、IL−2 IL−12、IL−15を包含する、アジュバントはまた、例えばCpGを含有するオリゴヌクレオチドのようなDNAオリゴヌクレオチドも包含する。加えて、IL−18、IL−2 IL−12、IL−15、IL−4、IL10、γインターフェロンのような免疫調節リンホカイン、およびNFκB調節シグナル伝達タンパク質をコードする核酸配列を使用し得る。
【0023】
一般に、本発明の示される態様において、対イオンの量は生物学的有効成分の電荷を中和すべきである。こうした態様において、対イオン若しくは対イオンの混合物は該製剤のpHで剤上に存在する電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)をペプチドに添加し得る。
【0024】
別の好ましい態様において、対イオンは強酸である。強酸は約2より低い最低1個のpKaを提示すると定義し得る。こうした酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸およびメタンスルホン酸を包含する。
【0025】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強酸でありかつ対イオンの最低1種が低揮発性の弱酸である対イオンの混合物に向けられる。
【0026】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強酸でありかつ対イオンの最低1種が高揮発性を伴う弱酸である対イオンの混合物に向けられる。揮発性の弱酸の対イオンは、約2
より高い最低1個のpKaおよびPatmで約50℃より低い融点若しくは約170℃より低い沸点を提示する。こうした酸の例は酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸などを包含する。
【0027】
酸性の対イオンは製剤のpHで薬物上に存在する正の電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)を薬物に添加し得る。
【0028】
本発明の一態様において、被覆製剤は、こうしたクエン酸ナトリウム、クエン酸、EDTA(エチレンジニトリロ四酢酸)のようなイオン封鎖剤、若しくはアスコルビン酸、メチオニン、アスコルビン酸ナトリウムなどのようなフリーラジカル捕捉剤であり得る最低1種の抗酸化剤を包含する。
【0029】
本発明の一態様において、被覆製剤は、ラウロアムホ酢酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、ベンザルコニウム、塩化、Tween 20およびTween 80のようなポリソルベート、ソルビタンラウレートのような他のソルビタン誘導体、ならびにラウレス−4のようなアルコキシル化アルコールを制限なしに包含する、両性イオン性、両親媒性、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性であり得る最低1種の界面活性剤を包含する。
【0030】
本発明のさらなる一態様において、被覆製剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、若しくはエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)のようなセルロース誘導体、ならびにプルロニックを制限なしに含み得る、両親媒性の特性を有する最低1種のポリマー物質若しくはポリマーを包含する。
【0031】
別の態様において、被覆製剤は、以下の群、すなわちヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択される親水性ポリマー、ならびに類似のポリマーを包含する。
【0032】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、ヒトアルブミン、生物工学ヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリ硫酸、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレジトース、ラフィノースおよびスタキオースを制限なしに含み得る生物適合性の担体を包含する。
【0033】
別の態様において、被覆製剤は、非還元糖、多糖若しくは還元糖を制限なしに含み得る安定剤を包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する非還元糖は、例えばショ糖、トレハロース、スタキオース若しくはラフィノースを包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する多糖は、例えばデキストラン、可溶性デンプン、デキストリンおよびインスリンを包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する還元糖は、例えば、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなどのような単糖;ならびに例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソフォロースおよびツラノースなどのような二糖を包含する。
【0034】
別の態様において、被覆製剤は、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、キシロメタゾリンおよびそれらの混合物を制限なしに含み得る血管収縮薬を包含する。最も好ましい血管収縮薬は、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリンおよびキシロメタゾリンを包含する。
【0035】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、浸透剤(例えば塩化ナトリウム)、両性イオン化合物(例えばアミノ酸)、ならびに、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−二ナトリウムリン酸塩、塩酸ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン−21コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾン二ナトリウムリン酸塩およびプレドニソロン21−コハク酸ナトリウム塩のような抗炎症薬、ならびにクエン酸、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、デキストリン硫酸ナトリウム、アスピリンおよびEDTAのような抗凝固薬を制限なしに含み得る、最低1種の「経路開存性調節剤」を包含する。
【0036】
本発明のなお別の態様において、被覆製剤は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリンを含み得る可溶化剤/複合体形成剤を包含する。最も好ましい可溶化剤/複合体形成剤は、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル7β−シクロデキストリンである。
【0037】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびポリエチレングリコール400のような最低1種の非水性溶媒を包含する。
【0038】
好ましくは、被覆製剤は、およそ500センチポアズ未満かつ3センチポアズ以上の粘度を有する。
【0039】
本発明の一態様において、生物適合性の被覆の厚さは25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。
【0040】
本発明はまた、示される製剤で被覆された、角質層を貫通するよう構成されている最低1個の微小突起を有する経皮送達機器も含んでなる。
【0041】
本発明の一態様において、該機器は1cmあたり最低およそ10個の微小突起、より好ましくは1cmあたり最低およそ200〜2000個の微小突起の範囲の微小突起密
度を有する。
【0042】
一態様において、微小突起は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル−チタン合金、若しくは類似の生物適合性素材から構築される。
【0043】
別の態様において、微小突起はポリマーのような非導電性素材から構築される。あるいは、微小突起は、パリレン[Parylene](R)のような非導電性素材、若しくはテフロン[Teflon](R)、シリコンのような疎水性素材、または他の低エネルギー素材で被覆し得る。
【0044】
一般に、本発明の方法は、生物学的有効成分の製剤を提供する段階、非揮発性の対イオンを添加することにより製剤を安定化する段階、および前記製剤を微小突起に塗布する段階を含んでなる、複数の角質層を貫通する微小突起を含んでなる経皮送達機器に生物学的有効成分の被覆を塗布することを含んでなる。好ましくは、対イオンは生物学的有効成分の電荷を中和する量で添加する。該剤の電荷は本発明のアルゴリズムを使用して決定し得る。
[発明の詳細な記述]
定義
別の方法で述べられない限り、本明細書で使用される以下の用語は以下の意味を有する。
【0045】
「経皮」という用語は、局所若しくは全身治療のための皮膚中へのかつ/若しくはそれを通しての剤の送達を意味している。
【0046】
「経皮流動」という用語は経皮送達の速度を意味している。
【0047】
本明細書で使用されるところの「共送達すること」という用語は、補完する剤(1種若しくは複数)が、該剤が送達される前、該剤の経皮流動の前および間、該剤の経皮流動の間、該剤の経皮流動の間および後、ならびに/若しくは該剤の経皮流動の後のいずれかに経皮投与されることを意味している。加えて、2種若しくはそれ以上の剤を微小突起上に被覆して剤の共送達をもたらしてもよい。
【0048】
本明細書で使用されるところの「生物学的有効成分」若しくは「有効成分」という用語は、治療上有効な量で投与される場合に薬理学的に有効である薬物を含有する組成物若しくは混合物を指す。
【0049】
こうした剤は、限定されるものでないが:抗菌薬および抗ウイルス薬のような抗感染症薬;フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィンを包含する鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;麻酔薬;食欲抑制薬;抗関節炎薬;テルブタリンのような抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;止瀉薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗偏頭痛製剤;スコポラミンおよびオンダンセトロンのような乗り物酔い製剤;抗悪心薬;抗悪性腫瘍薬;抗パーキンソン病薬;止痒薬;抗精神病薬;解熱薬;胃腸および尿路を包含する鎮痙薬;抗コリン作動薬;交感神経興奮薬;キサンチン誘導体;ニフェジピンのようなカルシウム拮抗薬を包含する心血管系製剤;β−遮断薬;ドブタミンおよびリトドリンのようなβ−アゴニスト;抗不整脈薬;アテノロールのような降圧薬;ラニチジンのようなACE阻害薬;利尿薬;全身、冠動脈、末梢および脳を包含する血管拡張薬;中枢神経系興奮薬;咳および風邪の製剤;うっ血除去薬;診断薬;副甲状腺ホルモンのようなホルモン;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;副交感神経興奮薬;プロスタグランジン;タンパク質;ペプチド;覚醒剤;鎮静剤;ならびに精神安定剤を挙げることができる全部の主要な治療領域の治療薬を包含する。他の適する剤は、血管収縮薬、抗治癒
薬および経路開存性調節剤を包含する。
【0050】
剤のさらなる特定の例は、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えばHGH、HMG、酢酸デスモプレシンなど)、卵胞ルテオイド、aANF、成長因子放出因子(GFRF)のような成長因子、bMSH、GH、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来増殖因子放出因子、アスパラギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、エポプロステノール(血小板凝集阻害剤)、グルカゴン、HCG、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、インターロイキン−10(IL−10)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルカゴン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ(ゴセレリン、リュープロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリンならびにナファレリン、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)およびLH)のような)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、バソプレシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレシン、デスモプレシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH(1−24)のようなACTHアナログ、ANP、ANP消失阻害剤、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、セレデース、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチド抑制物質、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモンおよびアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1−34)のようなPTHアナログ、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害薬、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、バソプレシンアンタゴニストアナログ、α−1アンチトリプシン(組換え)ならびにTGF−βを制限なしに包含する。
【0051】
本明細書で使用されるところの「生物学的有効成分」若しくは「有効成分」という用語はまた、ワクチン若しくは他の免疫学的有効成分、または免疫学的有効量で投与される場合に免疫学的有効成分の産生を誘発することが可能でありかつ直接若しくは間接的に免疫学的に有効である剤を含有する組成物若しくは混合物も指す。
【0052】
適するワクチンは、ウイルスおよび細菌、タンパク質に基づくワクチン、多糖に基づくワクチン、核酸に基づくワクチンおよび他の抗原性剤を包含する。適する抗原性剤は、タンパク質、多糖複合物、オリゴ糖およびリポタンパク質の形態の抗原を制限なしに包含する。これらのサブユニットワクチンは、百日咳菌(Bordetella pertussis)(組換えPTアクシン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、組換え)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)(精製、組換え)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドを含む複合糖質A群多糖、トキシングサブユニット担体に結合されたMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価型特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組換えプレS1、プレ−S2、S、組換えコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組換え−発現された表面タンパク質およびエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(キャプシドタンパク質、TA−GN組換えタンパク質L2およびE7[HPV−6から]、HPV−11からのMEDI−501組換えVLPL1、四価の組換えBLP L1[HPV−6から]、HPV−11、HPV−16およびHPV−18、LAMP−E7[HPV−16から])、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風トキソイドを含む複合糖質)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)(髄膜炎菌のB OMPに複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9N、14、18C、19V、23F]、CRM197に複合させた複合糖質[4、6B、9V、14、18C、19F、23F]、CRM1970に複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、帯状疱疹(Varicella zoster)ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)およびコレラ菌(Vibrio cholerae)(複合物リポ多糖)を包含する。
【0053】
全ウイルス若しくは細菌は、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルスおよび帯状疱疹のような弱毒化若しくは不活化ウイルス、百日咳菌(bordetella pertussis)、破傷風菌(clostridium tetani)、ジフテリア菌(corynebacterium diptheriae)、A群連鎖球菌、レジオネラ ニューモフィラ(legionella pneumophila)、髄膜炎菌(neisseria meningitdis)、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)、肺炎双球菌(streptococcus pneumoniae)、梅毒トレポネーマ(treponema pallidum)およびコレラ菌(vibrio cholerae)のような弱毒化若しくは不活化細菌、ならびにそれらの混合物を制限なしに包含する。
【0054】
抗原性剤を含有する付加的な商業的に入手可能なワクチンは、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水疱瘡ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチンおよびジフテリアワクチンを制限なしに包含する。
【0055】
核酸を含んでなるワクチンは、例えばスーパーコイルのプラスミドDNA;直鎖状プラスミドDNA;コスミド;バクテリア人工染色体(BAC);酵母人工染色体(YAC);哺乳動物人工染色体;および例えばmRNAのようなRNA分子のような一本鎖および二本鎖核酸を制限なしに包含する。核酸の大きさは数千キロベースまでであり得る。加えて、本発明のある態様において、核酸はタンパク質性の剤と結合され得るか、または例えばホスホロチオエート部分のような1種若しくはそれ以上の化学修飾を包含し得る。核酸のコーディング配列は、それに対する免疫応答が望ましい抗原の配列を含んでなる。加えて、DNAの場合、プロモーターおよびポリアデニル化配列もまたワクチン構築物中に組込まれる。コードされ得る抗原は、感染性疾患の全部の抗原性成分、病原体ならびに癌抗原を包含する。核酸は、従って例えば感染性疾患、癌、アレルギー、自己免疫および炎症性疾患の分野で応用を見出す。
【0056】
ワクチン抗原と一緒になってワクチンを含み得る適する免疫応答増強アジュバントは、リン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウム;藻類のグルカン:b−グルカン;コレラトキシンBサブユニット;CRL1005:x=8およびy=205の平均値を伴うABAブロックポリマー:γイヌリン:直鎖状(非分枝状)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−a−D−グルコース;ゲルブアジュバント:N−アセチルグルコサミン−(b 1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、亜鉛L−プロリン塩錯体(Zn−Pro−8);イミキモド(Imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTherヤ:N−アセチルグル
コサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート;MTP−PEリポソーム:C59H108N6O19PNa−3H20(MTP);ムラメチド(Murametide):Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3;プリューラン(Pleuran):b−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;スクラボペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1b 163−171ペプチド);およびトレオニル−MDP(Termurtideヤ):N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン、ならびにインターロイキン18、IL−2 IL−12、IL−15を包含する、アジュバントはまた、例えばCpGを含有するオリゴヌクレオチドのようなDNAオリゴヌクレオチドも包含する。加えて、IL−18、IL−2 IL−12、IL−15、IL−4、IL10、γインターフェロンのような免疫調節リンホカイン、およびNFκB調節シグナル伝達タンパク質をコードする核酸配列を使用し得る。
【0057】
本発明の方法で剤の製剤中に1種以上の剤を組込みうること、および「有効成分」という用語の使用は2種若しくはそれ以上のこうした剤若しくは薬物の使用をいかなる方法でも除外しないことが理解されるべきである。該剤は、遊離塩基、酸、荷電した若しくは荷電していない分子、分子複合体の成分、または非刺激性の薬理学的に許容できる塩のような多様な形態であり得る。また、身体のpH、酵素などで容易に加水分解される剤の単純な誘導体(エーテル、エステル、アミドなどのような)を使用し得る。
【0058】
「生物学的有効量」若しくは「生物学的に有効な率」という用語は、生物学的有効成分が製薬学的有効成分である場合に使用し、そして、所望の治療(しばしば有益な)結果を遂げるのに必要とされる薬理学的有効成分の量若しくは率を指す。被覆中で使用される剤の量は、所望の治療結果を達成するために治療上有効な量の該剤を送達するのに必要な量であることができる。実務において、これは、送達されている特定の薬理学的有効成分、送達の部位、治療されている状態の重症度、所望の治療効果、ならびに被覆から皮膚組織中への該剤の溶解および送達の放出のキネティクスに依存して広範に変動するであろう。本明細書に記述される方法により微小突起中に組込まれかつ経皮送達される薬理学的有効成分の治療上有効な量の正確な範囲を定義することは実務的でない。
【0059】
「生物学的有効量」若しくは「生物学的に有効な率」という用語はまた、該生物学的有効成分が免疫学的有効成分である場合にも使用することができ、そして、所望の免疫学的(しばしば有益な)結果を刺激若しくは開始するのに必要とされる免疫学的有効成分の量若しくは率を指す。被覆中で使用される免疫学的有効成分の量は、所望の免疫学的結果を達成するために必要とされる該剤の量を送達するのに必要な量であることができる。実務において、これは、送達されている特定の免疫学的有効成分、送達の部位、ならびに被覆から皮膚組織中への該剤の溶解および送達の放出のキネティクスに依存して広範に変動するであろう。
【0060】
「微小突起」という用語は、生存している動物、とりわけヒトの皮膚の角質層を通って下にある表皮層若しくは表皮および真皮層中に貫通若しくは切断するよう適合されている貫通要素を指す。該貫通要素は出血を引き起こす深さまで皮膚を貫通すべきでない。典型的には、貫通要素は500μm未満、および好ましくは250μm未満の刃長を有する。微小突起は、典型的には約10ないし200□mの幅および約5ないし50μmの厚さを有する。微小突起は、針、中空針、刃、ピン、パンチのような多様な形状およびそれらの組合せに成形しうる。
【0061】
本明細書で使用されるところの「微小突起アレイ」という用語は、角質層を貫通するための一列に配置された複数の微小突起を指す。微小突起アレイは、薄いシートから複数の
微小突起を蝕刻若しくは押抜きすること、および該シートの面から微小突起を折り畳むか若しくは曲げて図11に示されるもののような形状を形成することにより成形しうる。微小突起アレイはまた、Zuckら、米国特許第6,050,988号明細書に開示されるところの細片(1個若しくは複数)のそれぞれの縁に沿って微小突起を有する1個若しくはそれ以上の細片を成形することによるような他の既知の様式で成形してもよい。微小突起アレイは、水分を含まない薬理学的有効成分を保持する中空針を包含しうる。
【0062】
本明細書で使用されるところの「高分子電解質」という用語は、イオン性の種を有する生物学的有効成分の製剤を意味している。高分子電解質は、水若しくは別のイオン化溶媒への溶解に際して解離して複数に荷電した陰イオン若しくは陽イオンを生じる巨大分子物質である。例えば、ポリペプチドを含んでなる剤は、頻繁に、酸性および塩基性の官能性を有する複数のアミノ酸残基に由来する複雑なイオン性の特徴を有する。
【0063】
揮発性の対イオンは、約2より高い最低1個のpKaおよびPatmで約50℃より低い融点若しくは約170℃より低い沸点を提示する弱酸と定義する。こうした酸の例は酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸などを包含する。揮発性の対イオンはまた、約12より低い最低1個のpKaおよびPatmで約50℃より低い融点若しくは約170℃より低い沸点を提示する弱塩基とも定義する。こうした塩基の例はアンモニアおよびモルホリンを包含する。
【0064】
非揮発性の対イオンは、最低1個の酸性のpKaおよびPatmで約50℃より高い融点若しくは約170℃より高い沸点を提示する弱酸と定義する。こうした酸の例はクエン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、リンゴ酸、ピルビン酸、酒石酸、タルトロン酸およびフマル酸を包含する。非揮発性の対イオンはまた、最低2個の酸性のpKaおよび最低1個の塩基性のpKaを提示し、その結果塩基性基の数に比較して最低1個余分の酸性基が存在する酸性の両性イオンとも定義する。こうした化合物の例はグルタミン酸およびアスパラギン酸を包含する。
【0065】
非揮発性の対イオンはまた、最低1個の塩基性のpKaおよびPatmで約50℃より高い融点若しくは約170℃より高い沸点を提示する弱塩基とも定義する。こうした塩基の例は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メチルグルカミン、グルコサミンを包含する。非揮発性の対イオンはまた、最低1個の酸性のpKaおよび最低2個の塩基性のpKaを提示する塩基性の両性イオンとも定義し、ここで塩基性のpKaの数は酸性のpkaの数より大きい。こうした化合物の例はヒスチジン、リシンおよびアルギニンを包含する。
【0066】
非揮発性の対イオンはまた、約2より低い最低1個のpKaを提示する強酸とも定義する。こうした酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸およびメタンスルホン酸を包含する。非揮発性の対イオンは、さらに、約12より高い最低1個のpKaを提示する強塩基と定義する。こうした塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを包含する。
【0067】
対イオンの揮発性に言及する場合、イオン化されていない形態の対イオン(例えば酢酸対アセテート)の揮発性に常に言及がなされることができる。
【0068】
若干の薬物は、強塩基若しくは強酸のように挙動し(例えば、臭化若しくはグリコピロール酸クリジニウムのような四級アンモニウム塩、ペントサンポリ硫酸のような硫酸誘導体、核酸のような若干のリン酸誘導体)、そして、製薬学的製剤を製造するのに一般に使用される広範なpH(すなわち4〜10)で完全にイオン化されている。中性多糖(すなわちインスリンおよびデキストラン)のような他の化合物は酸性若しくは塩基性の官能基を提示しない。これらの分類の化合物について、水中での溶解性はpHにより有意に影響されず、そして本発明は当てはまらない。
【0069】
逆に、多くの薬物は弱酸若しくは弱塩基のように挙動する。それらの中性の形態は通常、低い水溶解性を提示する。例えば、中性の形態のフェンタニルのような多くの小分子化合物、若しくはhPTH(1−34)のようなペプチドは、周知のとおり水に不溶性である。これらの化合物は、それらが電気的に荷電した状態である場合に水中で最大の溶解性を表す。それらの弱く酸性若しくは塩基性の性質のため、中性のおよびイオン化した形態のそれぞれの濃度、ならびにこれゆえに水中の溶解性はpH依存性である。本発明はこの分類の薬物に当てはまる。下で論考される例から明らかであろうとおり、中性の形態の薬物の存在を最小限にするのに十分な比での非揮発性の対イオンとのこの型の薬物の組合せは、製剤中の薬物の水溶解性、固体状態での貯蔵の間の安定性、および投与の時点での生物学的液体中での溶解を確実にする。
【0070】
シート若しくは部材の領域への言及、およびシート若しくは部材の領域による何らかの特性への言及は、シートの外周すなわち境界により領域を定められた領域を指す。
【0071】
「模様塗」という用語は微小突起の選択された領域上に剤を被覆することを指す。1種以上の剤を単一の微小突起アレイ上に模様塗しうる。模様塗は、マイクロピペット操作(micropipetting)およびインクジェット被覆のような既知のマイクロ流体分配技術を使用して微小突起に塗布し得る。
【0072】
本発明から利益を得ることができる薬物は、最低1個の弱酸性および/若しくは1個の弱塩基性の官能基を含有しかつpH4ないしpH10のpH範囲で中性の種として存在する。荷電していない種と荷電した種との間のモル比は、このpH範囲で最低1対100であるべきである。
【0073】
非揮発性の対イオンは、薬物の荷電していない種と荷電した種との間のモル比を約1対100未満に低下させるのに十分な量で存在する。
【0074】
本発明は、揮発性の対イオンを組込む製剤から作成した被覆が、該被覆の外表面から揮発性の対イオンを喪失することができるという発見に基づく。これは該被覆のpHの移動をもたらし、そして、生理学的液体中でより少なく可溶性である荷電していない生物学的有効成分の量を増大させ得る。
【0075】
本発明は、1個若しくはそれ以上の微小突起上に被覆しかつ乾燥した場合に被覆からの対イオンの喪失を低下させ、該被覆のpHを安定化しかつ皮膚中への挿入に際して該被覆の溶解性を高める被覆を形成する、生物学的有効成分を含有する被覆製剤を提供する。本発明はさらに、それから伸長する複数の角質層を貫通する微小突起を有する機器を包含する。該微小突起は、角質層を通って下にある表皮層若しくは表皮および真皮層中に貫通するよう適合されているが、しかし、毛細血管床に達しそして重大な出血を引き起こすほど深くまで浸透しない。該微小突起は、生物学的有効成分を含有する水分を含まない被覆をその上に有する。該被覆は、皮膚の貫通に際して被覆の溶解性を高める、被覆からの揮発性の対イオンの喪失を低下し、最小限にしかつ/若しくは排除するよう処方されている。皮膚の角質層の貫通に際して、該剤を含有する被覆が体液(細胞内液、および間質液のような細胞外液)により溶解され、そして局所若しくは全身治療のため皮膚中に放出される。
【0076】
固体被覆は、米国特許出願公開第2002/0128599号明細書に記述されるとお
り微小突起上の製剤を乾燥することにより得られる。製剤は通常水性製剤である。乾燥工程の間に、水を包含する全部の揮発性物質がほとんど除去される(最終の固体被覆はなお約10%までの水を含有する)。そのイオン化した形態とイオン化していない形態の間の平衡にある揮発性化合物が溶液中に存在する場合は、イオン化していない形態のみが、乾燥工程が起こる時点で製剤から消失し、そしてイオン化した形態は溶液中にとどまりかつ被覆に取り込まれる。
【0077】
微小突起アレイ上の固体被覆中で、薬物は、典型的には単位用量あたり約1mg未満の量で存在する。賦形剤および対イオンの添加を伴い、固体被覆の総量は単位用量あたり3mg未満である。該アレイは通常、使い捨てのポリマー製保持環に取付けられている付着性の裏地上に存在する。このアセンブリが個別にパウチ若しくはポリマー製ハウジング中に包装される。
【0078】
該アセンブリに加え、この包装は最低3mLの容積を表す雰囲気(通常は不活性)を含有する。この大容積(被覆のものに比較して)はいかなる揮発性成分に対しても受け(sink)として作用する。例えば、20℃で、その蒸気圧の結果として3mLの雰囲気中に存在する酢酸の量は約0.15mgであるとみられる。この量は、典型的には、酢酸を対イオンとして使用した場合に固体被覆中に存在するとみられるものである。加えて、接着剤のような該アセンブリの構成部品が揮発性成分の付加的な受けとして作用することがありそうである。結果として、長期の貯蔵の間に、被覆中に存在するいかなる揮発性成分の濃度も劇的に変化するとみられることがありそうである。
【0079】
上の条件は、大量の賦形剤が通常存在する製薬学的化合物の伝統的な包装の代表例ではない。注入可能物としての使用のため凍結乾燥されている非常に強力な生物工学化合物ででさえ、非常に大過剰の緩衝剤および賦形剤がドライケーキ中に存在する。従って、揮発性の対イオン(volatile counterion−ions)の喪失の効果は、これらの伝統的投薬形態物の可溶化を遂げない。
【0080】
所望のpHで正の電荷をもつ目的の薬物の場合、対イオンは酸である。好ましい一態様において、酸性の対イオンは非揮発性の弱酸である。別の好ましい態様において、対イオンは非揮発性の強酸である。
【0081】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強酸でありかつ対イオンの最低1種が非揮発性の弱酸である対イオンの混合物に向けられる。
【0082】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が非揮発性の酸でありかつ対イオンの最低1種が高揮発性をもつ弱酸である対イオンの混合物に向けられる。
【0083】
酸性の対イオンは製剤のpHで薬物上に存在する正の電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)を薬物に添加し得る。
【0084】
所望のpHで負の電荷をもつ目的の薬物の場合、対イオンは塩基である。
【0085】
好ましい一態様において、塩基性の対イオンは低揮発性をもつ弱塩基である。
【0086】
別の好ましい態様において、対イオンは強塩基である。
【0087】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強塩基でありかつ対イオンの最低1種が低揮発性をもつ弱塩基である対イオンの混合物に向けられる。
【0088】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が非揮発性の塩基でありかつ対イオンの最低1種が高揮発性をもつ弱塩基である対イオンの混合物に向けられる。
【0089】
塩基性の対イオンは製剤のpHで目的の薬物上に存在する負の電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離塩基若しくは塩として)を薬物に添加し得る。
【0090】
本発明は、微小突起アレイ上の1個若しくはそれ以上の微小突起に塗布された固体被覆である製薬学的投薬形態物に関する。該被覆は、最低1個の弱および/若しくは1個の塩基性官能基を有するイオン化した薬物を含有する。
【0091】
剤を含有する被覆の溶解および放出のキネティクスは、薬物の性質、被覆工程、被覆厚さおよび被覆の組成(例えば被覆製剤の添加物の存在)を包含する多数の因子に依存することができる。放出のキネティクスプロファイルに依存して、被覆した微小突起を長時間(例えば約8時間まで)、皮膚との貫通の関係に維持することが必要でありうる。これは、接着剤を使用して皮膚に送達機器を固定することにより、若しくは第WO 97/48440号明細書(そっくりそのまま引用することにより組込まれる)に記述されるような固定された微小突起を使用することにより、達成し得る。
【0092】
図11は本発明での使用のための角質層を貫通する微小突起経皮送達機器の一態様を具体的に説明する。図11は複数の微小突起10を有する機器の一部分を示す。微小突起10は開口部14を有するシート12から実質的に90°の角度で伸長する。シート12は、シート12のための裏地を包含する送達貼付剤に組み込まれてよく、また、該貼付剤を皮膚に付着させるための接着剤を付加的に包含しうる。本態様において、該微小突起は、薄い金属シート12から複数の微小突起10を蝕刻若しくは押抜きすること、およびシートの面から微小突起10を曲げることにより成形する。ステンレス鋼およびチタンのような金属が好ましい。金属の微小突起は、Trautmanら、米国特許第6,083,196号明細書;Zuck 米国特許第6,050,988号明細書;およびDaddonaら、米国特許第6,091,975号明細書(それらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。本発明とともに使用し得る他の微小突起は、シリコンチップ蝕刻技術を使用してシリコンを蝕刻することにより、若しくは蝕刻された微小金型を使用してプラスチックを成形することにより成形する。シリコンおよびプラスチックの微小突起はGodshallら、米国特許第5,879,326号明細書(その開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0093】
図12は、生物学的有効成分を含有する被覆16を有する微小突起10を有する微小突起経皮送達機器を具体的に説明する。被覆16は微小突起10を部分的にも完全にも被覆しうる。例えば、該被覆は微小突起上の水分を含まない模様塗中にあり得る。被覆は微小突起が成形される前若しくは後に塗布し得る。
【0094】
微小突起上の被覆は多様な既知の方法により形成し得る。こうした一方法が浸積被覆である。浸積被覆は、薬物を含有する塗布溶液中に微小突起を部分的に若しくは完全に浸積することにより微小突起を被覆する手段として記述し得る。あるいは機器全体を塗布溶液中に浸積し得る。皮膚を貫通する部分微小突起のみを被覆することが好ましい。
【0095】
上述された部分的浸積技術の使用により、被覆を微小突起の先端のみに制限することが可能である。被覆を微小突起の先端に制限するローラー塗機構もまた存在する。この技術は2002年3月15日出願の米国特許出願第10/099,604号明細書(引用することにより完全に本明細書に組み込まれる)に記述されている。
【0096】
他の被覆方法は塗布溶液を微小突起に噴霧することを包含する。噴霧は被覆組成物のエアゾル懸濁液の形成を包含し得る。好ましい一態様において、約10ないし200ピコリットルの液滴径を形成するエアゾル懸濁液を微小突起に噴霧し、そしてその後乾燥させる。別の態様において、非常に少量の塗布溶液を、模様塗18として微小突起上に堆積させ得る。模様塗18は、微小突起表面上の堆積される液体の位置決めのための分配機器を使用して塗布し得る。堆積される液体の量は、好ましくは微小突起あたり0.5ないし20nlの範囲にある。適する精密計量液体分配器の例は、米国特許第5,916,524号;同第5,743,960号;同第5,741,554号;および同第5,738,728号明細書(それらの開示は引用することにより完全に本明細書に組み込まれる)に開示されている。微小突起塗布溶液はまた、既知のソレノイドバルブ分配器、任意の液体推進手段、および電場の使用により一般に制御される位置決め手段を使用するインクジェット技術を使用しても塗布し得る。印刷工業からの他の液体分配技術若しくは当該技術分野で既知の類似の液体分配技術を、本発明の模様塗を塗布するのに使用し得る。
【0097】
全部の場合において、被覆が塗布された後に、塗布溶液を微小突起上で多様な手段により乾燥する。好ましい一態様において、被覆された機器を周囲室条件で乾燥させる。しかしながら、多様な温度および湿度レベルを使用して微小突起上の塗布溶液を乾燥し得る。加えて、該機器を加熱、凍結乾燥(lyophilized)、凍結乾燥(freeze
dried)し得るか、若しくは類似の技術を使用して被覆から水を除去し得る。
【0098】
多数の因子が化合物の揮発性に影響を及ぼす。これらは温度、大気圧および化合物の蒸気圧を包含する。揮発過程は時間依存性である。加えて、イオン化した化合物はそれらのイオン化していない形態に比較してはるかにより低い揮発性を提示する。例えば、酢酸は118℃の沸点を有する一方、酢酸ナトリウムは本質的に非揮発性である。そのイオン化した形態とイオン化していない形態の間の平衡にある揮発性化合物が溶液中に存在する場合、イオン化していない形態のみが溶液から消失しかつイオン化した形態は溶液中にとどまる。
【0099】
揮発性化合物が弱酸AHである場合、以下の平衡が溶液中で起こる:
AH⇔A+H
Ka1がAHの平衡定数であれば、該平衡は:
Ka1=(A)×(H)/(AH)
として書くことができ、(A)、(H)および(AH)は溶液中に存在する種の濃度を表す。
【0100】
AHが揮発性である場合、該平衡は、平衡の法則を満足するためにA+H⇒AHに向かって移動することができる。最終的には、揮発性の弱酸の質量全体が溶液から消失することができる。
【0101】
揮発性化合物が弱塩基(B)である場合、以下の平衡が起こる:
B+H⇔BH
Ka2が平衡定数であれば、該平衡は:
Ka2=(B)×(H)/(BH
として書くことができ、(B)、(H)および(BH)は溶液中に存在する種の濃度を表す。
【0102】
Bが揮発性である場合、該平衡は、平衡の法則を満足するためにBH⇒B+Hに向かって移動することができる。最終的には、揮発性の弱塩基の質量全体が溶液から消失することができる。
【0103】
弱酸および弱塩基が溶液中で混合される場合、それらは、以下の平衡:
AH+B⇔A+BH
に従って塩を形成する。
【0104】
Ka1およびKa2がそれぞれAHおよびBの平衡定数を表せば、該平衡は:
Ka1/Ka2=(A)×(BH)/(AH)×(B)
として書くことができる。
【0105】
AHが揮発性である場合、該平衡は、平衡の法則を満足するためにA+BH⇒AH+Bに向かって移動することができる。正味の結果は、遊離塩基の濃度の増大およびpHの結果として生じる増大であることができる。
【0106】
逆に、Bが揮発性である場合、該平衡は、遊離酸の濃度の増大およびpHの減少という正味の結果を伴い同一に移動することができる。強酸は、それらの多くが高度に揮発性であるために特定の場合を提示する。事実、塩酸は周囲条件で気体である。塩基と組合せられる場合、数種の酸についての極端なpHを除きそれらが広範なpH範囲で完全にイオン化されているため、それらは非揮発性の塩を形成する。溶液中で、若しくは固体状態で、対イオンの揮発が溶液と雰囲気若しくは固体と雰囲気との間の界面で起こる。溶液中では、溶質の高い拡散性が界面と溶液の大部分との間の濃度の差違を最小限にする。
【0107】
逆に、固体状態では、拡散性は非常に遅いか若しくは非存在であり、そして揮発性の対イオンのより大きな濃度勾配が界面と溶液の大部分との間で達成される。最終的に、被覆の外層は対イオンが枯渇する一方、固体被覆の大部分は初期の乾燥状態に比較して比較的不変である(図10を参照されたい)。この状況は、その中性の正味の電荷状態で実質的に不溶性である薬物と対イオンが会合される場合に高度に不溶性の外側被覆をもたらしうる。事実、実施例1に詳細に説明されるであろうとおり、対イオンの揮発が水不溶性の中性種の形成をもたらす。これは順に、生物学的液体への曝露に際して固体被覆からの薬物の溶解を危うくする。
【0108】
他の既知の製剤補助物質を、それらが被覆溶液の必要な溶解性および粘度の特徴ならびに乾燥された被覆の物理的完全性に有害な影響を与えない限り、被覆溶液に添加し得る。
【0109】
一般に、本発明の示される態様において、対イオンの量は生物学的有効成分の電荷を中和すべきである。こうした態様において、対イオン若しくは対イオンの混合物は該製剤のpHで剤上に存在する電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)をペプチドに添加し得る。
【0110】
別の好ましい態様において、対イオンは強酸である。強酸は約2より低い最低1個のpKaを提示すると定義し得る。こうした酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸およびメタンスルホン酸を包含する。
【0111】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強酸でありかつ対イオンの最低1種が低揮発性の弱酸である対イオンの混合物に向けられる。
【0112】
別の好ましい態様は、対イオンの最低1種が強酸でありかつ対イオンの最低1種が高揮発性をもつ弱酸である対イオンの混合物に向けられる。揮発性の弱酸の対イオンは、約2より高い最低1個のpKaおよびPatmで約50℃より低い融点若しくは約170℃より低い沸点を提示する。こうした酸の例は酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸などを包含す
る。
【0113】
酸性の対イオンは製剤のpHで薬物上に存在する正の電荷を中和するのに必要な量で存在する。pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)を薬物に添加し得る。
【0114】
本発明の一態様において、被覆製剤は、こうしたクエン酸ナトリウム、クエン酸、EDTA(エチレンジニトリロ四酢酸)のようなイオン封鎖剤、若しくはアスコルビン酸、メチオニン、アスコルビン酸ナトリウムなどのようなフリーラジカル捕捉剤であり得る最低1種の抗酸化剤を包含する。現在好ましい抗酸化剤はEDTAおよびメチオニンを包含する。
【0115】
本発明の一態様において、被覆製剤は、ラウロアムホ酢酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、ベンザルコニウム、塩化、Tween 20およびTween 80のようなポリソルベート、ソルビタンラウレートのような他のソルビタン誘導体、ならびにラウレス−4のようなアルコキシル化アルコールを制限なしに包含する、両性イオン性、両親媒性、陽イオン性、陰イオン性若しくは非イオン性であり得る最低1種の界面活性剤を包含する。
【0116】
本発明のさらなる一態様において、被覆製剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、若しくはエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)のようなセルロース誘導体、ならびにプルロニックを制限なしに含み得る、両親媒性の特性を有する最低1種のポリマー物質若しくはポリマーを包含する。
【0117】
別の態様において、被覆製剤は、以下の群、すなわちヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択される親水性ポリマー、ならびに類似のポリマーを包含する。
【0118】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、ヒトアルブミン、生物工学ヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリ硫酸、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレジトース、ラフィノースおよびスタキオースを制限なしに含み得る生物適合性の担体を包含する。
【0119】
別の態様において、被覆製剤は、非還元糖、多糖若しくは還元糖を制限なしに含み得る安定剤を包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する非還元糖は、例えばショ糖、トレハロース、スタキオース若しくはラフィノースを包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する多糖は、例えばデキストラン、可溶性デンプン、デキストリンおよびインスリンを包含する。本発明の方法および組成物での使用に適する還元糖は、例えば、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなどのような単糖;ならびに例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソフォロースおよびツラノースなどのような二糖を包含する。
【0120】
別の態様において、被覆製剤は、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、キシロメタゾリンおよびそれらの混合物を制限なしに含み得る血管収縮薬を包含する。最も好ましい血管収縮薬は、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリンおよびキシロメタゾリンを包含する。
【0121】
当業者により認識されるであろうとおり、被覆製剤への血管収縮剤の添加、およびこれゆえに本発明の固体の生物適合性の被覆は、微小突起機器若しくはアレイの適用後に発生し得る出血を予防するため、ならびに、適用部位の血流の減少および皮膚部位から全身循環中への吸収速度の低下により有効成分の薬物動態を延長するのにとりわけ有用である。
【0122】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、浸透剤(例えば塩化ナトリウム)、両性イオン化合物(例えばアミノ酸)、ならびに、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−二ナトリウムリン酸塩、塩酸ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン−21コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾン二ナトリウムリン酸塩およびプレドニソロン21−コハク酸ナトリウム塩のような抗炎症薬、ならびにクエン酸、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、デキストリン硫酸ナトリウム、アスピリンおよびEDTAのような抗凝固薬を制限なしに含み得る、最低1種の「経路開存性調節剤」を包含する。
【0123】
本発明のなお別の態様において、被覆製剤は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリンを含み得る可溶化剤/複合体形成剤を包含する。最も好ましい可溶化剤/複合体形成剤は、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル7β−シクロデキストリンである。
【0124】
本発明の別の態様において、被覆製剤は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびポリエチレングリコール400のような最低1種の非水性溶媒を包含する。
【0125】
好ましくは、被覆製剤は、およそ500センチポアズ未満かつおよそ3センチポアズ以上の粘度を有する。
【0126】
本発明の一態様において、生物適合性の被覆の厚さは、微小突起表面から測定されるところの25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。
【0127】
以下の実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解しかつ実施することを可能にするた
めに示される。それらは本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでなく、しかし単にそれらの代表として具体的に説明されると解釈されるべきである。ポリペプチドおよび他の電解質中でのイオン性種の分布の一計算方法が考案された。平衡の計算のための等式は長年利用可能であった。それらは古典的な平衡の法則に基づく。それらを使用してポリペプチドのような高分子電解質の正味の電荷ならびにタンパク質のpIを成功裏に計算し得る。正味の電荷およびpIの計算はポリペプチドを特徴付けおよび精製するための強力なツールである。にもかかわらず、これらの計算は、特定の一pHの溶液中に存在する種についての直接の情報を生じない。例えば、疑われる低溶解性を伴う種が存在しているpH範囲はこれらの方法から予測されない。高分子電解質中の異なるイオン形態の間の平衡を推定するために多様な試みがなされた。これらの試みは、Edsall J.T.(Proteins as acids and bases,in proteins,amino acids and peptides as ions and dipolar ions、Cohn E.J.とEdsall J.T.編;Hafner Pub;ニューヨークおよびロンドン、1943、444−505)により要約されている。
【0128】
最も成功裏のアプローチは、独立にイオン化する基の系の確率分布関数を記述する。この処理では、多様な基が、それぞれが1個のpKa値に対応する分類により分類される。該手順はいくぶんやっかいでありかつ自動計算に容易に従わない。加えて、計算は正味の荷電した種に制限されかつ分子内の電荷の分布の記述を包含しない。驚くべきことに、高分子電解質では、溶液中に存在する実際の種の濃度にほとんど注意が払われてこなかった。これは、重なり合うpK値、すなわち約3pH単位未満だけ分離されている2個若しくはそれ以上のpK値の存在下での種の分布を記述する等式の欠如の結果であると思われる。この場合、種の分布を計算するのに近似値が使用されている。10個以上の重なり合うpK値が一般的であるポリペプチド分子中では、これらの近似値に基づく計算は実際的でなく、そして確かに誤った結果を生じるとみられる。結果として、ポリペプチド中での種の分布は明らかには記述されていない。いかなる高分子電解質についても種の分布を記述する等式の一提供方法が考案されたが、但し、それらのpK値は既知である。これらの計算を実施するための計算アルゴリズムもまた提供される。
実施例
方法
ポリペプチドについて、関与する酸−塩基基およびそれらのpK値は、それぞれ:末端カルボキシル、pK=3.05;アスパラギン酸のβ−カルボキシル、pK=3.93;グルタミン酸のγ−カルボキシル、pK=4.43;システインのチオール、pK=8.38;チロシンのフェノール、pK=10.36;ヒスチジンのイミダゾリウム、pK=5.96;末端アンモニウム、pK=8.1;リシンのε−アンモニウム、pK=10.59;アルギニンのグアニジウム、pK=12.48である。上のpK値は文献から集められかつ実施例で使用された平均値である。pI値は、それらのpK値から計算した分子の正味の電荷プロファイルから外挿した。
高分子電解質中の種の濃度の決定:
弱酸AHについて、平衡を書くことができる
【0129】
【数1】

【0130】
その解離定数は:
=(A)×(H)/(AH)
であり、(A)、(H)および(AH)は種のそれぞれの濃度である。
【0131】
上から、古典的なHenderson−Hasselbalchの等式を得ることがで
きる:
pH=pK+log((A)/(AH))
(A)+(H)=1と想定して、この等式は:
中性のモル分画=1/(1+10pH−pKa)=P
を生じ、これはまた、酸の中性となる確率としても定義し得る。同様に:
イオン化した負に荷電したモル分画=1−1/(1+10pH−pKa)=1−P
正味の電荷=1/(1+10pH−pKa)−1
弱塩基Bについて、平衡を書くことができる:
【0132】
【数2】

【0133】
その解離定数は:
=(B)×(H)/(BH
である。
【0134】
同様に:
pH=pK−log(BH/B)、
中性のモル分画=1/(1+10pKa−pH)=Q
イオン化した正に荷電したモル分画=1−1/(1+10pKa−pH)=1−Q
正味の電荷=1−1/(1+10pKa−pH
該種は、溶液中の化合物の酸性官能基および塩基性官能基の電荷の全部の可能な組合せと定義する。例えば、化合物が酸性官能基のみを提示する場合、該種は0、1、2などのような値をとる。同様に、化合物が塩基性官能基のみを提示する場合、該種は0、1、2などのような値をとる。化合物が酸性および塩基性双方の官能基を有する場合には、該種は0、0、1、1などの値をとる。正味の荷電した種は、同一の正味の電荷を提示する全部の種の総和と定義する。それらは:...−2、−1、0、+1、+2...という値をとる。
【0135】
1個の酸性の(負に荷電した)pKをもつ化合物について、いずれかのpHで溶液中に存在する種は:0および1(一方の種は中性、すなわち正の電荷がなくかつ負の電荷がなく;他方の種は1個の負の電荷を有しかつ負の電荷を有しない)である。Pを酸性基の中性である確率とすると、特定のpHでのこれらの種のモル分画は:
:P
:1−P
である。
【0136】
1個の酸性のpKおよび1個の塩基性(正に荷電した)のpKをもつ化合物について、特定のpHで溶液中に存在する種は:0、0、1、1である。
【0137】
およびQが、それぞれ酸性および塩基性基の中性である確率であれば、特定のpHでのこれらの種のモル分画は:
:P×Q
:P×(1−Q
:(1−P)×Q
:(1−P)×(1−P
である。
【0138】
1個の酸性のpKおよび2個の塩基性のpKをもつ化合物について、いずれかのpHで溶液中に存在する種は:0、0、0、1、1、1である。
【0139】
が中性である酸性基の確率であり、かつ、QおよびQが中性である塩基性基の確率であれば、特定のpHでのこれらの種のモル分画は:
:P×Q×Q
:(P×Q×(1−Q))+(P×(1−Q)×Q
:P×(1−Q)×(1−Q
:(1−P)×Q×Q
:((1−P)×Q×(1−Q))+((1−P)×(1−Q)×Q
:(1−P)××(1−Q)×(1−Q
など
である。
【0140】
理解され得るように、(N+1)(M+1)種が存在し、NおよびMはそれぞれ酸性および塩基性のpKの数である。前の例では6種の可能な種が存在した。−1、0、+1、+2である可能な正味の荷電した種。可能な正味の荷電した種の数は(N+M+1)である。特定のpHでのこれらの正味の荷電した種のモル分画は容易に推測し得る。先行する例を使用して:
−1:(1−P)×Q×Q
0:(P×Q×Q)+((1−P)×Q×(1−Q))+((1−P)×(1−Q)×Q
+1:(P×Q×(1−Q))+(P×(1−Q)×Q)+(1−P)××(1−Q)×(1−Q
+2:P×(1−Q)×(1−Q
高分子電解質の種および価数の計算アルゴリズム:
上の等式に基づき、高分子電解質中に存在する電荷、正味の電荷、種および価数を計算するのに使用されるアルゴリズムが得られた。以下で、ベクトル若しくはマトリックスを示す太字および上付き文字、ならびに下付き文字はベクトル若しくはマトリックスの要素を表す。
【0141】
化合物中にN個の酸性官能基およびM個の塩基性官能基が存在することをわれわれが知っており、それらのpK値が与えられ、また、溶液のpH値もまた与えられていると想定されたい。PKAが酸性のpK値の1ベクトルを単位とするNであり、かつ、pKAが塩基性のpK値の1ベクトルを単位とするMであるとしよう:
PKA=(pKaa1、pKaa2、...、pKaaN
PKA=(pKab1、pKab2、...、pKabM
P=(p、p、...、p
Q=(q、q、...、q
=1/(1+10pH−pKaai) (1)
=1/(1+10pKabj−pH) (2)
式中、PおよびQはそれぞれ酸性成分および塩基性官能基について中性のモル分画である。それらはまた、酸若しくは塩基いずれかについての中性である確率としても理解し得
る。CHARGEが酸の電荷の1ベクトルを単位とするNを示す一方、CHARGEが塩基の1ベクトルを単位とするMであるとしよう:
CHARGE=(chargea1、chargea2、...、chargeaN
CHARGE=(chargeb1、chargeb2、...、chargebM
chargeai=1/(1+10pH−pKai)−1 (3)
chargebj=1/(1+10pKabj−pH) (4)
【0142】
【数3】

【0143】
式中、正味の電荷は溶液中の複合体分子の電荷である。
【0144】
次に、該分子化合物の種を考慮しよう。単純さのために、われわれは種を表すのにαを使用することにする。種の計算アルゴリズムを理解するために、単純な場合から始めよう。該化合物のみがN個の酸を有し、われわれは溶液中のαの確率を欲していると想定されたい。上の誘導に基づけば、Pは酸が中性であるための確率ベクトルである。統計学的実験を考虜するとしよう。溶液中の化合物が、1種の酸により1種の酸を添加することにより作成されると想定されたい。初めに、1種の酸のみが溶液中にある場合、われわれは:Prob(α=0、1種の酸)=p
(6)
Prob(α=1、1種の酸)=1−p
(7)
Prob(α=2、1種の酸)=...=
=Prob(α=N、1種の酸)=0
(8)
を有する。
【0145】
その後、溶液中に既にi種の酸を有し、そしてその後さらに1種を添加すると考える。確率の関係は:
Prob(α=0、i+1種の酸)
=Prob(α=0、i種の酸|(i+1番目の酸=0)Prob(i+1番目の酸=0)
Prob(α=j、i+1種の酸)
=Prob(α=j、i種の酸|(i+1)番目の酸=0)Prob(i+1番目の酸=0)
+Prob(α=(j−1)−、i種の酸|(i+1)番目の酸=1)Prob(i+1番目の酸=1)
である。
【0146】
ここで、われわれは全部の酸が独立であるという仮定をなしており、これゆえに、われわれは上の等式を書き直すことができる:
Prob(α=0、i+1種の酸)
=Prob(α=0、i種の酸)Prob(i+1番目の酸=0)
(9)
Prob(α=j、i+1種の酸)
=Prob(α=j、i種の酸)Prob(i+1番目の酸=0)
+Prob(α=(j−1)−、i種の酸)Prob(i+1番目の酸=1)
(10)
等式(9)および(10)は確率を計算するための容易な方法をわれわれに与える。それらを実行するため、RがN種のマトリックスを単位とするN+1であるとしよう:
r[j,i]=Prob(α=(j−1)、i種の酸)
われわれは、(6)、(7)、(8)、(9)および(10)を:
r[1,1]=P (11)
r[2,1]=1−P (12)
r[3,1]=...=r[N+1,1]=0 (13)
r[1,i+1]=r[1,i]pi+1 (14)
r[j+1,i+1]=r[j+1,i]pi+1+r[j,i](1−pi+1
(15)
i=1...(N−1)、j=1、...、N
として書き直すことができる。
【0147】
上の帰納アルゴリズムをループにより符号化することが非常にわかりやすく、そして、Rの最後の列は、単純に、N個の酸をもつ化合物が溶液中にある場合の種の確率を表す。一般性の喪失を伴わずに、AがRの最後の列であるとしよう。同様に、Bが、M個の塩基の化合物が溶液中にありかつ次元が1を単位としてM+1である場合に種の確率ベクトルであるとしよう。Bの計算はAと同一の規則に従う。化合物がN個の酸およびM個の塩基を有する場合、種の確率は:
C=A×B (16)
c[i,j]=Prob(α=(i−1)(j−1)) (17)
i=1、2、...、N+1
j=1、2、...、M+1
であり、式中、CはM+1個のマトリックスを単位とするN+1である。最後に、正味の荷電した種(β)を、Cに基づき構築し得る:
【0148】
【数4】

【0149】
式中、i=−N、...、−1、0、1、...、M
上に基づき、選択した化合物の荷電した若しくは中性の種の分布を計算し得、それを以下の実施例に具体的に説明する。
【実施例1】
【0150】
図1は、酢酸(pKa 4.75)の電荷プロファイルをpHの関数として示す。約2.5より下のpHで、酢酸のカルボキシル基は完全にプロトン化され、そして従って分子上に電荷が存在しない。pHが約2.5から約7まで増大する際に、ますます多くのカルボキシル部分がイオン化されたようになり、そして従って負に荷電した酢酸イオンを形成する。約pH 7で、カルボキシル基の全部がイオン化される。
【0151】
図2は酢酸およびアセテートのモル比を示す。酢酸のカルボキシル基が完全にプロトン化されているpH 0で、本質的に酢酸のみが存在し、従ってモル分画は1である。約ph 2.5で、カルボキシル基のイオン化が開始し、そしてグラフ中の酢酸を表す実線が
下方に移動し始める。同時に、イオン化したアセテートを表す破線が0.00の腺から上方に移動し始める。約pH 4.7で、等しい数の荷電したおよび荷電していない部分が存在する。約7以上のpHで、もはやいかなる荷電していない酢酸も存在せず、そして、本質的に全部の種が荷電した酢酸イオンである。
【0152】
多くの薬物は、それらが電気的に荷電した状態にある場合に水中で最大の溶解性を表す。図3は、1個の塩基性のpKa、8.5を提示する低分子量の弱塩基性の薬物、フェンタニルの電荷プロファイルを示す。6より下のpHで、本質的に全部のフェンタニルが正に荷電している一方、11より上のpHでは本質的に全部フェンタニルが中性である。
【0153】
図4は、多様なpHでの中性(フェンタニル塩基−実線)および荷電したフェンタニル(フェンタニル+1−破線)のモル比を示す。pH 0から約pH 6まで、本質的にフェンタニル塩基は存在せず、そして、100%が荷電したフェンタニル+1である。約6のpHから約pH 11までは移行が存在する。フェンタニル+1はフェンタニル塩基が増大する同一速度で減少する。pH11でもしくはより上で、本質的に全部のフェンタニルが荷電していない中性のフェンタニル塩基で存在する。
【0154】
ペプチドおよびタンパク質のような複雑な分子もまた、pHに依存する電荷の特徴を表す。図5は、11の塩基性pKaおよび6種の酸性のpKaを提示するペプチドhPTH(1−34)の電荷プロファイルを示す。pH9では、該ペプチドはゼロの正味の電荷を提示する。この点はまた等電点すなわちpIとも呼ばれる。
【0155】
図6はPTHの正味の荷電した種のモル比を示す。該種は+11の電荷から−6の電荷までの範囲にわたる。中性の種のみが、約6ないし約11.5のpH範囲で有意の量で存在する。このpH範囲で、PTHは溶液から沈殿する。
【0156】
図7は、酢酸フェンタニル(破線)、酢酸(実線)および中性の形態のフェンタニル(フェンタニル塩基−点線)のモル比を示す。これらは、多様な比のフェンタニル塩基および酢酸を溶液中で混合する場合に多様なpHで溶液中に存在する種である。溶液中の酢酸フェンタニル(モル比1対1)のpHは約6.6であると予測される。そのpHで、約1%のフェンタニルがフェンタニル塩基として存在し、これは10mg/mLの溶液の総フェンタニルについて該塩基の溶解性の限界若しくはそれより上であるとみられ、従って該塩基は沈殿するとみられる。可溶化は、過剰の酢酸を該製剤に補充することにより達成され得、酢酸は製剤の酸性化をもたらすことができ、そして従ってフェンタニル塩基の量の減少をもたらすことができる。にもかかわらず、乾燥およびその後の貯蔵の間に、遊離の酢酸は蒸発することができ、不可避的に水不溶性の塩基の形成をもたらすことができる。水中でのその後の再構成はフェンタニルの完全な可溶化を可能にしないとみられる。非揮発性の対イオンの使用は、pHがフェンタニルのpKaの最低2pH単位、好ましくは3pH単位下に維持される限り、フェンタニルの固体の可溶性の製剤を提供するとみられる。これは、該製剤に、少なくともわずかに過剰の非揮発性の対イオン(すなわち1:1よりわずかにより大きい非揮発性の対イオン対フェンタニルのモル比)を提供することにより達成し得る。加えて、揮発性の対イオンは、水分を含まない被覆の溶解性に影響を及ぼすことなくその製剤に添加し得る。
【0157】
図8は酢酸(実線)および中性の形態のhPTH(1−34)(点線)のモル比を示す。溶液中のhPTH(1−34)六酢酸塩(モル比1対6)のpHは約5であると予測される(図5を参照されたい)。そのpHでは、無視できる量のhPTH(1−34)が、ゼロの正味の電荷のhPTH(1−34)(PTH 0−図6中の「0」電荷種の電荷曲線を参照されたい)として存在し、そして、hPTH(1−34)は20%過剰の濃度で水に高度に溶解性である。フェンタニルの場合でのように、乾燥およびその後の貯蔵の間に、揮発性の遊離の酢酸は蒸発することができ、それがより高いpHへの移動をもたらすことができ、水不溶性のPTH 0の形成をもたらす。水中でのその後の再構築はhPTH(1−34)の完全な可溶化を可能にしないとみられる。非揮発性の対イオンの使用は、pHが、hPTH(1−34)のpIの最低2.5pH単位、好ましくは3pH単位下に維持される限り、hPTH(1−34)の固体の可溶性の製剤を提供するとみられる。これは、hPTH(1−34)の各分子に対し最低約2の非揮発性の対イオンを提供することにより達成し得る。フェンタニルの場合でのように、揮発性の対イオンを、水分を含まない被覆の溶解性に影響を及ぼすことなくその製剤に添加し得る。
【実施例2】
【0158】
hPTH(1−34)を含有する数種の水性製剤を調製した。これらの製剤は揮発性の対イオン、酢酸を含有した。数種の製剤は、付加的な非揮発性の対イオン、塩酸、グリコール酸若しくは酒石酸を含有した(表1を参照されたい)。微小突起アレイ(微小突起長さ200μm、アレイあたり595個の微小突起)は皮膚接触面積2cmを有した。微小突起の先端を、2002年3月15日出願の米国特許出願第10/099,604号明細書(これによりそっくりそのまま引用することにより組込まれる)に開示される方法および機器を使用して、該アレイにhPTH(1−34)の製剤を運搬する回転ドラム上を通過させることによりこれらの製剤で被覆した。4回の連続した被覆を2〜8℃で各微小突起アレイで実施した。アレイ上に被覆されたペプチドの量を275nmの波長での紫外分光法により評価した。走査電子顕微鏡検査は、該固体被覆が亀裂の証拠を伴わない非常に滑らかな表面を有したことを示した。さらに、微小突起ごとの被覆の良好な均一性が観察され、被覆は微小突起先端の最初の100μmに制限されていた。先端を被覆したアレイのいくつかを、その後、無毛モルモット(HGP)での薬物送達試験に使用した。
【0159】
HGPをキシラジン(8mg/kg)および塩酸ケタミン(44mg/kg)の筋肉内注入により麻酔した。麻酔したHGPに、頸動脈を通してカテーテル挿入した。カテーテルをヘパリン添加生理的食塩水(20IU/mL)で洗い流して凝血を予防した。動物は、カテーテル中への直接のペントバルビタールナトリウム(32mg/mL)の注入(0.1mL/注入)を介して、実験を通じて麻酔下に維持した。被覆した微小突起アレイの適用前に、血液サンプルをヘパリン化バイアル(15IU/mLのヘパリンの最終濃度)に採取し、それが0すなわち基礎サンプルとしてはたらいた。
【0160】
被覆した微小突起アレイの適用は、2001年10月12日出願の米国特許出願第09/976,798号明細書(これによりそっくりそのまま引用することにより組込まれる)に開示された型のばね駆動の衝撃アプリケーター(総エネルギー=0.4ジュール、10ミリ秒未満に送達される)を用いて、麻酔した動物の脇腹で実施した。適用された機器は、LDPE製裏地の中央に接着剤で接着された被覆した微小突起アレイ機器を含んだ(7cm2円板)。貼付剤は1時間皮膚上にとどめた(n=4〜5)。一群の動物(n=5)は微小突起アレイの代わりに22μgのhPTH(1−34)の静脈内注入を受領した。血液サンプルを、貼付剤適用若しくはIV注入後、時間間隔で頸動脈カテーテルを通して収集した。全部の血液サンプルは血漿収集のため即座に遠心分離し、その後分析まで−80℃で保存した。血漿hPTH(1−34)はEIAすなわちPeninshla Lab(カリフォルニア州サンカルロス)からのhPTH(1−34)のための商業的エンザイムイムノアッセイキットにより測定した。微小突起アレイにより送達されたhPTH(1−34)の用量を、hPTH(1−34)のIV投与に比較した曲線下面積(AUC)の計算に基づき外挿した。
【0161】
結果を表1に示し、それは多様な量のhPTH(1−34)が各固体の製剤から送達されたことを示す。hPTH(1−34)酢酸塩のみを含有する固体製剤(番号1および2)は平均して2μg未満を送達した。hPTH(1−34)酢酸塩への非揮発性の対イオンの添加は、非揮発性の対イオン、グリコール酸の添加後に送達を11.2μgまで有意に増大させた(番号5)。試験した2種の他の非揮発性の対イオンすなわち酒石酸(番号6)ならびに塩酸(番号3および4)もまたhPTH(1−34)送達を増大させた。
【0162】
【表1】

【実施例3】
【0163】
揮発性の対イオンを含有する被覆の枯渇を示すために、われわれは、1cmのチタン製円板を、20重量%の酢酸塩の形態のペプチド、hGRFアナログを可溶化することにより作成したpH5の水性製剤で被覆した。被覆した後に、各円板を、20mLの窒素雰囲気下室温で3か月間保存した。
【0164】
表2の結果は、初期および3か月の時点でのアセテート/ペプチドのモル比を比較する。初期時点で、1モルのペプチドに対し6.5モルの酢酸が存在する。pH5で、ペプチドは約4.5個の正の電荷を提示し(図9を参照されたい)、ペプチド1モルあたり2モルの遊離酢酸を残す。周囲条件で3か月の貯蔵後に、ペプチド1モルあたりのアセテートのモル数は3.8に低下し、被覆からの揮発性の対イオンの枯渇を示す。図9の電荷プロファイルからの外挿は、水での被覆の再構成がpH9.5の溶液を生じるとみられることを示し、これは初期溶液のpHからのpHの劇的な増大を表す。
【0165】
【表2】

【0166】
本発明の技術思想および範囲から離れることなく、当業者は、本発明を多様な使用および条件に適合させるためにそれに対し多様な変更および改変をなし得る。であるから、これらの変更および改変は、以下の請求の範囲の同等物の完全な範囲内に適正に、公平にありかつそれ内にあることを意図している。
【0167】
本発明は今や、付随する図面および図で具体的に説明される好ましい態様に言及してより詳細に記述することができ、ここで、
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】酢酸(pKa 4.75)の電荷プロファイルをpHの関数として示すグラフである。
【図2】荷電していない酢酸および荷電した酢酸イオンのモル比をpHの関数として示すグラフである。
【図3】フェンタニルの電荷プロファイルをpHの関数として示すグラフである。
【図4】中性(フェンタニル塩基)および荷電した(フェンタニル+1)のフェンタニル種のモル比をpHの関数として示すグラフである。
【図5】hPTH(1−34)の電荷プロファイルをpHの関数として示すグラフである。
【図6】hPTH(1−34)の正味の荷電した種のモル比をpHの関数として示すグラフである。
【図7】酢酸フェンタニル、酢酸および中性の形態のフェンタニル(フェンタニル塩基)のモル比をpHの関数として示すグラフである。
【図8】酢酸正味の中性の形態のhPTH(1−34)のモル比をpHの関数として示すグラフである。
【図9】hGFRアナログを含んでなるペプチドの電荷プロファイルを示すグラフである。
【図10】被覆の外層からの揮発性の対イオンの喪失の描写を示す図である。
【図11】本発明とともに使用しうる微小突起アレイの透視図である。
【図12】被覆されたいくつかの微小突起を示す微小突起アレイの透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥された場合に増大したpH安定性および溶解性を有する、生物学的有効成分および非揮発性の対イオンの製剤を含んでなる、角質層を貫通する微小突起を有する経皮送達機器を被覆するための組成物。
【請求項2】
前記生物学的有効成分が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えばHGH、HMG、酢酸デスモプレシンなど)、卵胞ルテオイド、aANF、成長因子放出因子(GFRF)のような成長因子、bMSH、GH、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来増殖因子放出因子、アスパラギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、エポプロステノール(血小板凝集阻害剤)、グルカゴン、HCG、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、インターロイキン−10(IL−10)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルカゴン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ(ゴセレリン、リュープロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリンならびにナファレリン、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)およびLH)のような)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、バソプレシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレシン、デスモプレシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH(1−24)のようなACTHアナログ、ANP、ANP消失阻害剤、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、セレデース、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチド抑制物質、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモンおよびアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1−34)のようなPTHアナログ、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害薬、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、バソプレシンアンタゴニストアナログ、α−1アンチトリプシン(組換え)ならびにTGF−βよりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生物学的有効成分が、タンパク質、多糖複合物、オリゴ糖およびリポタンパク質の形態の抗原よりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。これらのサブユニットワクチンは、百日咳菌(Bordetella pertussis)(組換えPTアクシン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、組換え)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)(精製、組換え)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドを含む複合糖質A群多糖、トキシングサブユニット担体に結合されたMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価型特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組換えプレS1、プレ−S2、S、組換えコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組換え−発現された表面タンパク質およびエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(キャプシドタンパク質、TA−GN組換えタンパク質L2およびE7[HPV−6から]、HPV−11からのMEDI−501組換えVLPL1、四価の組換えBLP L1[HPV−6から]、HPV−11、HPV−16およびHPV−18、LAMP−E7[HPV−16から])、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風トキソイドを含む複合糖質)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)(髄膜炎菌のB OMPに複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9N、14、18C、19V、23F]、CRM197に複合させた複合糖質[4、6B、9V、14、18C、19F、23F]、CRM1970に複合させた複合糖質[1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、帯状疱疹(Varicella zoster)ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)ならびにコレラ菌(Vibrio cholerae)(複合物リポ多糖)を包含する。
【請求項4】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが弱酸を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記弱酸が、最低1個の酸性のpKaを有し、ならびに、大気圧で約50℃より高い融点および約170℃より高い沸点よりなる群から選択される特性を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記弱酸が、クエン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、リンゴ酸、ピルビン酸、酒石酸、タルトロン酸およびフマル酸よりなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが強酸を含んでなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記強酸が約2より低い最低1個のpKaを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記強酸が、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸およびメタンスルホン酸よりなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが酸性の両性イオンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸性の両性イオンが、最低2個の酸性のpKaおよび最低1個の塩基性のpKaを有し、その結果、塩基性基の数に比較して最低1個余分の酸性基が存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸性の両性イオンがグルタミン酸およびアスパラギン酸よりなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが弱塩基を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記弱塩基が、最低1個の塩基性のpKaを有し、ならびに、大気圧で約50℃より高い融点および約170℃より高い沸点よりなる群から選択される特性を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記弱塩基が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メチルグルカミン、グルコサミンよりなる群から選択される、請求項14
に記載の組成物。
【請求項16】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが強塩基を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記強塩基が約12より高い最低1個のpKaを有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムよりなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが塩基性の両性イオンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記塩基性の両性イオンが最低2個の塩基性のpKaおよび最低1個の酸性のpKaを有し、その結果、酸性基の数に比較して最低1個余分の塩基性基が存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記塩基性の両性イオンがヒスチジン、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、最低1種の非揮発性の強酸および最低1種の非揮発性の弱酸を含んでなる対イオンの混合物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、最低1種の非揮発性の酸および最低1種の揮発性の弱酸を含んでなる対イオンの混合物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで正の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、前記生物学的有効成分の前記正の電荷を中和する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)が生物学的有効成分にさらに添加される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、最低1種の非揮発性の強塩基および最低1種の非揮発性の弱塩基を含んでなる対イオンの混合物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、最低1種の非揮発性の塩基および最低1種の揮発性の弱塩基を含んでなる対イオンの混合物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記製剤があるpHを有し、前記生物学的有効成分が前記製剤のpHで負の電荷を有し、かつ、前記非揮発性の対イオンが、前記生物学的製剤の前記負の電荷を中和する、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離塩基若しくは塩として)が生物学的有効成分にさらに添加される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記生物学的有効成分が、4と10との間のpHで、最低1対100の、荷電していない種と荷電した種との間のモル比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記非揮発性の対イオンが、前記生物学的有効成分の、荷電していない種と荷電した種との間の前記モル比を、約1対100未満に低下させる、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
角質層を貫通するよう構成されている最低1個の微小突起を有する経皮送達機器をさらに含んでなり、前記製剤が前記微小突起上に被覆されかつ乾燥されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
生物学的有効成分および非揮発性の対イオンを含んでなりかつ乾燥された場合に増大したpH安定性および溶解性を有する製剤で被覆された最低1個の角質層を貫通する微小突起を含んでなる、生物学的有効成分を経皮送達するための機器。
【請求項34】
前記微小突起が、約500マイクロメートル未満の深さまで角質層を貫通するよう適合されている、請求項33に記載の機器。
【請求項35】
被覆の厚さが前記微小突起の厚さに等しいか若しくはそれ未満である、請求項33に記載の機器。
【請求項36】
乾燥された場合に増大したpH安定性および溶解性を有する、生物学的有効成分、非揮発性の対イオンおよび製剤補助物質の製剤を含んでなる、角質層を貫通する微小突起を有する経皮送達機器を被覆するための組成物。
【請求項37】
前記製剤補助物質が抗酸化剤を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記製剤補助物質が界面活性剤を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記製剤補助物質が両親媒性ポリマーを含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記製剤補助物質が親水性ポリマーを含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
前記製剤補助物質が生物適合性の担体を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項42】
前記製剤補助物質が安定剤を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項43】
前記製剤補助物質が血管収縮薬を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項44】
前記製剤補助物質が経路開存性調節剤を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項45】
前記製剤補助物質が可溶化剤/複合体形成剤を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項46】
前記製剤補助物質が非水性溶媒を含んでなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項47】
前記製剤が、約500センチポアズ未満かつ約3センチポアズ以上の粘度を有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項48】
複数の角質層を貫通する微小突起を含んでなり、
生物学的有効成分の製剤を提供する段階;
非揮発性の対イオンを添加することにより前記製剤のpHを安定化する段階;および
前記製剤を前記微小突起に塗布する段階
を含んでなる、経皮送達機器への生物学的有効成分の被覆の塗布方法。
【請求項49】
前記製剤のpHを安定化する段階が、前記経皮送達機器上に被覆されかつ乾燥された場合に前記製剤の溶解性を高める、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記製剤のpHを安定化する段階が、前記生物学的有効成分上の電荷を中和するのに十分な非揮発性の対イオンを添加することを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)が生物学的有効成分に添加される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記非揮発性の対イオンを添加する前に前記製剤の正味の電荷を決定する段階をさらに含んでなり、かつ、前記製剤を安定化する段階が、前記決定された電荷を中和するのに十分な非揮発性の対イオンを添加することを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
pHを制御しかつ十分な緩衝能力を提供するために、過剰の対イオン(遊離酸若しくは塩として)を生物学的有効成分に添加する段階をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
正味の電荷を決定する段階が、前記生物学的有効成分のpKaに基づくイオン種の分布を評価することを含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
正味の電荷を決定する段階が、再帰アルゴリズムを使用することを包含する、請求項54に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−527392(P2007−527392A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518731(P2006−518731)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/021004
【国際公開番号】WO2005/004842
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】