説明

非晶形のVEGF−R阻害剤を含む医薬組成物

非晶形の化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりここに組み込む、2005年5月19日出願の米国特許出願第60/682,928号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、非晶形の化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを含む医薬組成物に関する。本発明の組成物は、VEGF−Rによって媒介される疾患または状態、例えば、癌などの異常細胞増殖に関連する疾患状態を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
本発明は、タンパク質キナーゼの増殖因子受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーである、血管内皮増殖因子受容体(VEGF−R)の阻害剤を含む医薬組成物に関する。化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(以下「化合物A」と呼ぶ)は、異常細胞増殖に関連する疾患状態の治療に使用し得るVEGF−Rの阻害剤である。化合物Aは、米国特許第6,534,524号に実施例33(a)として開示されており、この開示は、参照により本明細書に組み込まれている。化合物Aは、いくつかのタンパク質キナーゼの活性を阻害する、インダゾール化合物として知られている化合物のクラスに属している。チロシンキナーゼシグナル伝達を阻害することにより、化合物Aは、望ましくない細胞増殖を阻害する。化合物Aは、癌ならびに望ましくない細胞増殖に関連する他の疾患状態、例えば糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、関節リウマチ、および乾癬を治療するのに使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物Aは、参照により本明細書に組み込む、2004年11月2日出願の米国仮出願第60/624,665号に記載されているように、いくつかの異なる結晶形で存在することができる。多形形態IVと呼ばれる結晶形の化合物Aは、約4.2のpKaおよび溶液のpHに依存する溶解度を有し、その溶解度は、高いpHよりも低いpHで高くなる。化合物Aは、37℃の温度でモデル絶食十二指腸溶液(NaOHを用いてpH6.5に調整した、20mM NaHPO、47mM KHPO、87mM NaCl、および0.2mMKClを含む水溶液であり、その中に7.3mMタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mM 1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンがさらに存在する)中の溶解度が約4μg/mLである。結晶性化合物Aに関して、このpH依存性溶解度は低いin vivo吸収速度と相まって、低い経口生物学的利用能と対象間の著しい薬物動態の変動をもたらす。したがって、その結晶形に比べて化合物Aの生物学的利用能を向上させ、薬物動態の変動を低減させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも一部分が非晶質である化合物Aを含む医薬組成物を提供する。非晶質化合物Aは、結晶性化合物Aに比べて溶解度が向上しており、経口的に投与した場合、結晶性化合物Aに比べて生物学的利用能の向上をもたらす。
【0006】
本発明の一態様は、非晶質化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、非晶質化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明のさらに別の態様では、存在する化合物Aの合計量の少なくとも5wt%が非晶形である、化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。さらに、存在する化合物Aの合計量の少なくとも10wt%、または少なくとも15wt%または少なくとも20wt%、または少なくとも30wt%、または少なくとも40wt%、または少なくとも50wt%、または少なくとも60wt%、または少なくとも70wt%、または少なくとも80wt%、または少なくとも90wt%、または少なくとも95wt%が非晶形である、化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
一態様では、医薬組成物は、(1)非晶質化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、および(2)マトリックスを含む。他の態様では、前記組成物および前記マトリックスは、固体非晶質分散物(solid amorphoUSdispersion)の形態である。他の態様では、前記固体非晶質分散物は、実質的に均質である。
【0010】
本発明の別の態様では、存在する化合物Aの合計量の少なくとも5wt%が非晶形である、化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物を提供する。さらに、存在する化合物Aの合計量の少なくとも10wt%、または少なくとも15wt%または少なくとも20wt%、または少なくとも30wt%、または少なくとも40wt%、または少なくとも50wt%、または少なくとも60wt%、または少なくとも70wt%、または少なくとも80wt%、または少なくとも90wt%、または少なくとも95wt%が非晶形である、化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物を提供し、前記マトリックスは、イオン性セルロース系ポリマー(ionizable cellulosic polymer)、非イオン性セルロース系ポリマー(nonionizable cellulosic polymer)、および非セルロース系ポリマーのうち少なくとも1種を含む。
【0012】
さらに他の態様では、少なくとも1種のイオン性セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレートおよびセルロースアセテートイソフタレート、ならびにその混合物から選択される。
【0013】
さらに、少なくとも1種の非イオン性セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロース、ならびにその混合物から選択される、かかる組成物を提供している。
【0014】
他の態様は、前記少なくとも1種の非セルロース系ポリマーが、カルボン酸官能化ポリメタクリレート、カルボン酸官能化ポリアクリレート、アミン官能化ポリアクリレート、アミン官能化ポリメタクリレート、タンパク質、カルボン酸官能化デンプン、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、および環状アミドからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー、少なくとも1つの親水性ヒドロキシル含有繰返し単位および少なくとも1つの疎水性アルキルまたはアリール含有繰返し単位からなるビニルコポリマー、それらの繰返し単位の少なくとも一部分が非加水分解性形態であるポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールポリビニルアセテートコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーならびにその混合物から選択される、かかる組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、化合物Aおよびマトリックスを含む医薬組成物を提供し、化合物Aの少なくとも一部分は非晶形であり、また組成物は、in vivoまたはin vitroの水性使用環境に投与した場合に、(a)対照組成物によってもたらされる値の少なくとも1.25倍である使用環境における化合物Aの最大溶解濃度(maximum dissolved concentration)と、(b)対照組成物の値の少なくとも1.25倍である、使用環境への導入の時間と使用環境への導入後270分の間の少なくとも90分の任意の期間の使用環境における化合物Aの濃度対時間曲線下面積(AUC)のうち少なくとも一方をもたらす。対照組成物は、当量の多形形態IVの化合物Aのみから本質的になる。特定の実施形態では、使用環境における化合物Aの最大溶解濃度は、対照組成物によってもたらされる値の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍である。他の実施形態では、使用環境への導入の時間と使用環境への導入後270分の間の少なくとも90分の任意の期間の使用環境における化合物Aの濃度対時間曲線下面積(AUC)が、対照組成物の値の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、または少なくとも15倍である。
【0016】
本発明はさらに、化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物に関し、前記化合物の少なくとも一部分は非晶形であり、またin vivoの使用環境に投与した場合に、前記組成物は、a)対照組成物によってもたらされる値の少なくとも5倍である血漿または血清中の前記化合物の投与量で標準化した(dose−normalized)AUC値と、b)前記対照組成物によってもたらされる値の少なくとも5倍である血漿または血清中の前記化合物の投与量で標準化したCmax値のうち少なくとも一方をもたらし、ここで、前記対照組成物は、前記医薬組成物と同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる。他の実施形態では、前記組成物は、前記対照組成物によってもたらされる値の少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍である投与量で標準化したCmax値をもたらす。他の実施形態では、前記組成物は、前記対照組成物によってもたらされる値の少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、または少なくとも12倍である投与量で標準化したAUC値をもたらす。他の実施形態では、前記in vivoの使用環境は、イヌまたはヒトなどの動物の胃腸管である。他の実施形態では、前記医薬組成物および前記対照組成物は、どちらも絶食条件下で投与する。
【0017】
他の実施形態では、化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物であり、前記化合物の少なくとも一部分は非晶形であり、また複数の対象でin vivoの使用環境に投与した場合に、前記組成物は、a)前記対照組成物によってもたらされるAUC変動係数の95%未満であるAUC変動係数と、b)前記対照組成物によってもたらされるCmax変動係数の95%未満であるCmax変動係数のうち少なくとも一方をもたらし、ここで、前記対照組成物は、前記医薬組成物と同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる。他の実施形態では、前記組成物は、前記対照組成物によってもたらされるAUC変動係数の90%未満、80%未満、70%未満、または65%未満であるAUC変動係数をもたらす。他の実施形態では、前記組成物は、前記対照組成物によってもたらされるCmax変動係数の90%未満、80%未満、70%未満、または65%未満であるCmax変動係数をもたらす。他の実施形態では、前記in vivoの使用環境は、イヌまたはヒトなどの動物の胃腸管である。他の実施形態では、対象の数は、少なくとも4である。他の実施形態では、前記医薬組成物および前記対照組成物は、どちらも絶食条件下で投与する。
【0018】
本発明はさらに、化合物AのAUC変動係数を、同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる化合物Aの対照組成物によってもたらされるAUC変動係数の95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、または50%未満に低減させる方法に関するものであり、前記方法は、本明細書に記載されている化合物Aの医薬組成物のいずれかを投与することを含む。本発明はさらに、化合物AのCmax変動係数を、同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる化合物Aの対照組成物によってもたらされるCmax変動係数の95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、または50%未満に低減させる方法に関するものであり、前記方法は、本明細書に記載されている化合物Aの医薬組成物のいずれかを投与することを含む。
【0019】
本発明はさらに、固体非晶質分散物の化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む組成物に関し、前記固体非晶質分散物は、in vivoにおける前記化合物の薬物動態の変動を低減させる。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載の医薬組成物のいずれかを前記哺乳動物に投与するステップを含む、それを必要とする哺乳動物の異常細胞増殖を低減させる方法に関する。一実施形態では、前記異常細胞増殖は、癌性である。
【0021】
本発明はさらに、哺乳動物の異常細胞増殖を治療するための医薬品の製造における本明細書に記載の組成物のいずれかの使用に関する。
【0022】
本発明の他の実施形態では、溶媒を含む噴霧液中に化合物を溶解させること、および前記噴霧液から前記溶媒を急速に蒸発させて非晶形の前記化合物を得ることを含む医薬組成物を調製するための方法であり、前記化合物は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、またはその薬学的に許容できる形態である。上記方法の特定の一実施形態では、前記噴霧液は、マトリックスをさらに含む。他のいくつかの実施形態では、前記マトリックスは、イオン性セルロース系ポリマー、非イオン性セルロース系ポリマー、および非セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーを含む。他の実施形態では、前記マトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレートおよびセルロースアセテートイソフタレートからなる群から選択される。本発明の他の実施形態では、前記溶媒は、メタノール、アセトン、およびメタノールとアセトンの混合物からなる群から選択される。
【0023】
本明細書では、「使用環境」は、動物、特にヒトの胃腸管などのin vivoの環境、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液もしくはモデル絶食十二指腸(MFD)溶液などの試験溶液のin vitroの環境であってよい。
【0024】
本明細書では、「化合物Aの少なくとも一部分が非晶形である」という用語は、組成物中の化合物Aの合計量の少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも10wt%が非晶形であることを表す。
【0025】
本明細書では「当量」という用語は、所与の組成物中に存在する親化合物、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの理論モル数として測定した化合物Aのモル量を意味する。例えば、所与の量の6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの塩または溶媒和物を含む組成物の場合、当量の多形形態IVの化合物Aは、組成物中に存在する6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの理論モル数を決定し、化合物Aの同じ理論モル数が得られる形態IVの化合物Aの量を用いることによって計算することができる。
【0026】
特に指定のない限り、「化合物A」という用語は、化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を意味するものである。「薬学的に許容できる形態」とは、立体異性体、立体異性体混合物、鏡像異性体、溶媒和物、水和物、同形体、多形体、偽形体、中性形態、塩形態、およびプロドラッグを含めた任意の薬学的に許容できる誘導体または変形形態を表す。
【0027】
本明細書では、「結晶性」という用語は、三次元で長距離配列を示す本発明の化合物の特定の固形形態を表す。結晶性の物質は、粉末X線回折(PXRD)結晶学、固体状態NMRなど当技術分野で既知の技術、または示差走査熱分析(DSC)などの熱技術によって特徴付けることができる。
【0028】
本明細書では、「非晶質」という用語は、三次元で本質的に配列していない本発明の化合物の特定の固形形態を表す。「非晶質」という用語は、本質的に配列していない物質だけでなく、若干の度合いの配列を有し得るが、その配列が三次元に満たない、および/または短距離にわたっているに過ぎない物質も含むものとする。非晶質物質は、粉末X線回折(PXRD)結晶学、固体状態NMRなど当技術分野で既知の技術、または示差走査熱分析(DSC)などの熱技術によって特徴付けることができる。
【0029】
本明細書では「投与(administration)」、「投与すること(administering)」、「投与(dosage)」、および「投与すること(dosing)」という用語は、化合物が哺乳動物の血清または血漿中に吸収されるような、哺乳動物への化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、あるいは化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含有している医薬組成物の送達を意味する。
【0030】
「投与量で標準化した」は、投与量が、1)薬物を受けている対象の体重当たりの投与した薬物の量(例えば8mg/kg)、または2)対象に投与した薬物の合計量(例えば20mg)を意味し得る、特定のパラメーターの投与量で調整した値(dose−adjusted value)を意味する。特定のパラメーターの投与量で標準化した値は、パラメーターの値を投与量で割ることによって計算する。例えば、対象に投与した薬物の投与量が8mg/kgであり、AUC値が2.0μg hr/mLである場合、投与量で標準化したAUC値は、(2.0μg hr/mL)/8mg/kg=0.25μg hr/mL/mg/kgである。さらに、例えば、対象に投与した薬物の投与量が10mgであり、Cmax値が1.0μg/mLである場合、投与量で標準化したCmax値は、1.0μg/mL/10mg=0.1μg/mL/mgである。「投与量で標準化した」は、対象の体重当たりの薬物の量、または薬物の合計量による標準化を意味するが、投与量で標準化した値を本発明の組成物と本明細書に記載の対照組成物の間で比較する場合、投与量で標準化した値は、同じ方法で計算すべきであることを理解されたい(すなわち試験と対照両方の投与量で標準化した値に対して体重当たりの薬物の量、または薬物の合計量のどちらかを用いること)。
【0031】
「同様の条件下で投与された」という用語は、in vivoの投与条件を意味する。こうした条件には、食事を与えたまたは絶食させた状態および関与した対象グループが含まれる。例えば、同様の投与条件は、同一の食事を与えたまたは絶食させた状態にある同一の対象グループに投与することを表し、試験組成物と対照組成物の投与の間に適切なウォッシュアウト期間(例えば1週間)が存在する。
【0032】
本明細書では、「絶食」という用語は、投与前に少なくとも2時間対象が食物または液体を全く摂取していないことを表す。
【0033】
「溶媒和物」は、かかる化合物の生物学的有効性を保持する特定の化合物の薬学的に許容できる溶媒和物形態を表すものである。溶媒和物の例には、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはその混合物と組み合わせた本発明の化合物があるが、それだけには限定されない。
【0034】
「薬学的に許容できる塩」は、薬理学的に許容できるアニオンを含有する、特定の誘導体の遊離酸および塩基の生物学的有効性を保持する塩を表すものであり、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない。薬学的に許容できる塩の例には、酢酸塩、アクリル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、およびメトキシ安息香酸塩など)、重炭酸塩、重硫酸塩、重亜硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、ブチン−1,4−ジオエート、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、二塩化水素化物、リン酸二水素、エデト酸塩、エジスリエート(edislyate)、エストレート、エシレート、エチルコハク酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘプタン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオエート、ヘキシルレソルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メタリン酸塩、メタン−スルホン酸塩、メチル硫酸塩、リン酸一水素、ムケート(mucate)、ナプシル酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フタル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオール酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サリチル酸、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、スベリン酸塩、コハク酸、硫酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、トリエチオドード(triethiodode)、および吉草酸塩があるが、それだけには限定されない。
【0035】
本明細書では、「変動係数」または「C.V.」は、分散の標準的な統計的測定値を意味し、平均値で割った標準偏差と定義される。C.V.は、100を掛けることによってパーセント値で表すことができる。
【0036】
対照組成物に関して本明細書では、「多形形態IVの化合物Aから本質的になる」という用語は、多形形態IVの化合物Aに限定されるものであるが製剤学的錠剤製剤に使用される一般的な賦形剤も含んでいてよいが、可溶化剤または化合物Aの溶解度に実質的に影響し得る他の成分を含まない。
【0037】
本明細書では、「異常細胞増殖」は、特に指示がない限り、正常な細胞の異常増殖および異常細胞の増殖を含めた、正常な調節機構から独立(例えば、接触阻害の喪失)している細胞増殖を意味する。これには、突然変異のチロシンキナーゼの発現または受容体チロシンキナーゼの過剰発現によって増殖する腫瘍細胞(腫瘍);異常なチロシンキナーゼ活性化が起こる他の増殖疾患の良性および悪性細胞;受容体チロシンキナーゼによって増殖する任意の腫瘍;異常なセリン/スレオニンキナーゼ活性化によって増殖する任意の腫瘍;異常なセリン/スレオニンキナーゼ活性化が起こる他の増殖疾患の良性および悪性細胞;活性化Ras腫瘍遺伝子を発現している良性と悪性両方の腫瘍;別の遺伝子における腫瘍形成性変異の結果としてRasタンパク質が活性化される良性と悪性両方の腫瘍細胞;異常なRas活性化が起こる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常増殖が含まれるが、それだけには限定されない。かかる良性増殖性疾患の例は、乾癬、良性前立腺肥大、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)、および再狭窄(restinosis)である。「異常細胞増殖」はまた、酵素ファルネシルプロテイントランスフェラーゼの活性の結果として生じる良性と悪性両方の細胞の異常増殖を意味し、含む。「異常細胞増殖」および「過剰増殖性障害」という用語は、本出願中で区別なく用いられる。
【0038】
本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、以下の本発明の詳細な説明を考慮することにより、より容易に理解されるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
化合物Aは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールであり、以下の構造を有する:
【0040】
【化1】

【0041】
化合物Aは、動物、特にヒトに投与したときに有益な予防的および/または治療的特性を有する。「化合物A」という用語は、化合物の任意の薬学的に許容できる形態を含むことを理解されたい。「薬学的に許容できる形態」とは、立体異性体、立体異性体混合物、鏡像異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、同形体、多形体、偽形体、中性形態、塩形態およびプロドラッグを含めた任意の薬学的に許容できる誘導体または変形形態を表す。
【0042】
化合物Aは、その開示が全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,524号(実施例33(a)参照のこと)、2004年11月2日出願の米国仮特許出願60/624,575、および2004年11月2日出願の米国仮特許出願60/624,635に概説されている手順を用いて標準的な有機合成技術によって合成することができる。化合物Aは塩基なので、薬学的に許容できる塩は、当技術分野で利用できる任意の適当な方法、例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、あるいは有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸または酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸または桂皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などのスルホン酸などを使った遊離塩基の処理によって調製することができる。
【0043】
非晶質化合物A
一態様では、組成物は非晶質化合物Aを含有する。「非晶質」とは、化合物が「結晶性」ではないことを表す。「結晶性」とは、化合物が三次元で長距離配列を示すことを表す。したがって、非晶質という用語は、本質的に配列していない物質だけでなく、若干の度合いの配列を有し得るが、その配列が三次元に満たない、および/または短距離にわたっているに過ぎない物質も含むものとする。非晶質物質は、粉末X線回折(PXRD)結晶学、固体状態NMRなど当技術分野で既知の技術、または示差走査熱分析(DSC)などの熱技術によって特徴付けることができる。本発明の組成物中の化合物Aの少なくとも一部分が非晶形であることが好ましい。したがって、組成物中の化合物Aの少なくとも5wt%が非晶形であることが好ましい。一般に、非晶質化合物Aによって得られた濃度増大は、組成物中の化合物Aの量が増大するにつれて増大する。したがって、非晶形である化合物Aの量は、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%、またはさらには少なくとも95wt%であってよい。一実施形態では、本質的に組成物中の全ての化合物Aは非晶形であり、結晶形である化合物Aの量が、物質中の結晶化度を決定するための標準的な定量技術を用いて検出限界より少ないことを表す。
【0044】
発明者らは、非晶質化合物Aが、結晶性化合物Aに対して使用環境中に溶解した化合物Aの濃度を向上させ、in vivoの使用環境に投与した場合に対象間薬物動態の変動を低減させることを発見した。
【0045】
化合物Aおよびマトリックスの固体非晶質分散物
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、化合物Aおよび総称して「マトリックス」と呼ばれる1種または複数の成分を含む固体非晶質分散物を含む。「固体非晶質分散物」とは、化合物Aの少なくとも一部分が非晶形であり、マトリックス中に分散していることを表す。
【0046】
本発明の組成物中の化合物Aの少なくとも一部分が非晶形であることが好ましい。したがって、組成物中の化合物Aの少なくとも5wt%が非晶形であることが好ましい。非晶形である化合物Aの量は、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%、またはさらには少なくとも95wt%であってよい。一実施形態では、本質的に固体非晶質分散物中の全ての化合物Aは非晶形であり、結晶形である化合物Aの量が、物質中の結晶化度を決定するための標準的な定量技術を用いて検出限界より少ないことを表す。
【0047】
非晶質化合物Aは、マトリックスの全体にわたって均質に分散している化合物の固溶体またはこれらの状態の任意の組合せまたはそれらの間の中間に位置する状態として、固体非晶質分散物内で比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域に存在することができる。分散物は、非晶質化合物がマトリックスの全体にわたって可能な限り均質に分散されるように「実質的に均質」であることが好ましい。本明細書では、「実質的に均質」は、固体分散物内で比較的純粋な非晶質ドメイン中に存在する化合物が比較的少なく、化合物Aの合計量の20%未満、好ましくは10%未満程度であることを表す。実質的に均質である本発明の分散物は一般に、非均質分散物に対してより物理的に安定であり、濃度増大特性が向上しており、その結果生物学的利用能が向上している。
【0048】
化合物Aおよびマトリックスのガラス転移点が約20℃より大きく異なる場合、固体非晶質分散物内で比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域中に存在する化合物Aの比率は、分散物のガラス転移点(T)を測定することによって決定することができる。本明細書ではTは、ガラス状物質が、徐々に加熱すると、ガラス状態からゴム状態への比較的急速な(すなわち、10〜100秒で)物理的変化を受ける特性温度である。ポリマーまたは分散物などの非晶質物質のTは、動的機械分析装置(DMA)、膨張計、誘電分析装置、およびDSCを含めた、いくつかの技術によって測定することができる。各技術によって測定した正確な値は、多少異なり得るが、通常互いの10°〜30℃の範囲に入る。固体非晶質分散物が単一Tを示す場合、分散物の純粋な非晶質ドメインまたは領域中の化合物Aの量は、一般に約10wt%未満であり、分散物が実質的に均質であることを裏付ける。これは、一方は化合物Aのものおよびもう一方はマトリックスのものである2つの異なるTを一般に示す、純粋な非晶質化合物Aの粒子と純粋な非晶質マトリックス粒子の単純な物理的混合物とは対照的である。2つの異なるTを示す固体非晶質分散物の場合、比較的純粋な非晶質ドメインに化合物Aの少なくとも一部分が存在すると結論付けることができる。DSCを用いる場合、比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域に存在する化合物Aの量はまず、較正標準として利用すべき既知の量の化合物Aを用いて実質的に均質な分散物のTを測定することによって決定することができる。均質分散物のT、純粋なポリマーのT、および2つのTを示す分散物のポリマーリッチ相のTから、比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域における化合物Aの比率を推定することができる。あるいは、比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域に存在する化合物Aの量は、(1)化合物AのTと相関関係にある熱容量の値と、(2)非晶質化合物Aとマトリックスの物理的な混合物のTと相関関係にある熱容量の値とを比較することによって決定することができる。
【0049】
固体非晶質分散物が、化合物Aおよびマトリックスの少なくとも一部分が固溶体として存在することを示唆する、純粋な化合物AのTと純粋なマトリックス物質のTの中間の少なくとも1つのTを示すことが好ましい。
【0050】
本発明の分散物中に存在する化合物Aの量に対するマトリックスの量は、マトリックスの特徴に依存し、化合物A対マトリックス重量比0.01(化合物A 1部対マトリックス100部)〜100(すなわち、化合物A 1wt%〜化合物A 99wt%)に大きく異なっていてよい。好ましくは、化合物A対マトリックス重量比は、0.01〜9(化合物A 1wt%〜化合物A 90wt%)、より好ましくは0.05〜1(化合物A 5wt%〜化合物A 50wt%)、さらに好ましくは0.05〜0.67(化合物A 5wt%〜化合物A 40wt%)の範囲である。化合物A 10wt%を含有する固体非晶質分散物として調製した場合、発明者らは、結晶性化合物A単独に対して生物学的利用能が増大し、対象間薬物動態の変動が低減することを発見した。
【0051】
一実施形態では、化合物Aおよびマトリックスは、固体非晶質分散物の全質量の少なくとも60wt%を占める。好ましくは、化合物Aおよびマトリックスが、固体非晶質分散物の全質量の少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらに好ましくは少なくとも90wt%を占める。別の実施形態では、固体非晶質分散物は、本質的に化合物Aおよびマトリックスからなる。
【0052】
本発明の組成物に使用するのに適したマトリックス物質は、薬学的に許容できなければならず、生理学的に適切なpH(例えば1〜8)で水溶液に少なくともいくらか溶解しなければならない。マトリックスに使用される成分は、いくつかの成分の混合物を含んでいてよい。好ましい実施形態では、マトリックスはポリマーである。pH1〜8の範囲の少なくとも一部分で少なくとも約0.1mg/mLの水溶性を有する任意の中性またはイオン性ポリマーのほとんどが適しているかもしれない。
【0053】
マトリックスがポリマーの場合、ポリマーは本質的に「両親媒性」であることが好ましく、これはポリマーが疎水性および親水性部分を有することを表す。かかるポリマーは、化合物Aと比較的強い相互作用を有する傾向があり、溶液中で種々のタイプのポリマー/化合物アセンブリの形成を促進し得ると考えられるので、両親媒性ポリマーが好ましい。特に好ましいクラスの両親媒性ポリマーは、イオン化可能なものであり、かかるポリマーのイオン性部分はイオン化されると、ポリマーの親水性部分の少なくとも一部分を構成する。例えば、特定の理論に拘泥するものではないが、かかるポリマー/化合物アセンブリは、ポリマーに囲まれた化合物Aのクラスターを含んでいてよく、ポリマーの疎水性領域は化合物の方へ内側に向いており、ポリマーの親水性領域は水性環境の方へ外側に向いている。イオン性ポリマーの場合、ポリマーの親水性領域には、イオン化された官能基が含まれているはずである。さらに、かかるポリマーのイオン化された基(ポリマーがイオン化可能な場所)の同電荷の斥力は、ポリマー/化合物アセンブリのサイズをナノメートルまたはサブミクロンスケールに制限する働きをすることがある。溶液中のかかるアセンブリは、荷電ポリマーミセル様構造によく似ているかもしれない。どんな場合でも、作用機序にかかわらず、かかる両親媒性ポリマー、特に以下に列挙したものなどのイオン性セルロース系ポリマーは、水性使用環境でより高濃度の化合物Aを維持するために化合物Aと相互作用することが示されていることに発明者らは気付いた。
【0054】
本発明に使用するのに適した一クラスのポリマーには、中性の非セルロース系ポリマーが含まれる。例示的なポリマーには、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、およびシクロアミドを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;少なくとも1つの親水性ヒドロキシル含有繰返し単位および少なくとも1つの疎水性アルキルまたはアリール含有繰返し単位からなるビニルコポリマー;それらの繰返し単位の少なくとも一部分を非加水分解性(酢酸ビニル)形態で有するポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリビニルアセテートコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマーとも呼ばれる)がある。
【0055】
本発明に使用するのに適した別のクラスのポリマーには、イオン性非セルロース系ポリマーが含まれる。例示的なポリマーには、カルボン酸官能化ビニルポリマー、例えばカルボン酸官能化ポリメタクリレートおよびカルボン酸官能化ポリアクリレート、例えばマサチューセッツ州MaldenのRohm Tech Inc.製のEUDRAGITS(登録商標);アミン官能化ポリアクリレートおよびポリメタクリレート;高分子量タンパク質、例えばゼラチンおよびアルブミン;およびカルボン酸官能化デンプン、例えばグリコール酸デンプンがある。
【0056】
両親媒性である非セルロース系ポリマーは、比較的親水性および比較的疎水性のモノマーのコポリマーである。例には、アクリレートおよびメタクリレートコポリマーがある。例示的な商用グレードのかかるコポリマーには、メタクリレートおよびアクリレートのコポリマーであるEUDRAGITS(登録商標)がある。
【0057】
好ましいクラスのポリマーは、イオン性および中性(または非イオン性)のセルロース系ポリマーを含む。「セルロース系」とは、糖繰返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部分とある化合物との反応によってエステルまたはエーテル置換基を形成して修飾したセルロースポリマーを表す。セルロース系ポリマーは、少なくとも1つのエステルおよび/またはエーテル結合置換基を有し、このポリマーは各置換基について少なくとも0.05の置換度を有することが好ましい。本明細書で使用するポリマー命名法では、エーテル結合置換基は、エーテル基に結合した部分として「セルロース」の前に挙げられる。例えば、「エチル安息香酸セルロース」は、エトキシ安息香酸置換基を有することに留意されたい。同様に、エステル結合置換基は、カルボキシレートとして「セルロース」の後に挙げられる。例えば、「セルロースフタレート」は、ポリマーにエステル結合した各フタレート部分の1つのカルボン酸、および未反応の他のカルボン酸を有する。
【0058】
「セルロースアセテートフタレート」(CAP)などのポリマー名は、セルロース系ポリマーのヒドロキシル基のかなりの部分とエステル結合によって結合したアセテートおよびフタレート置換基を有するセルロース系ポリマーのファミリーのいずれかを意味することにも留意されたい。一般に、各置換基の置換度は、ポリマーの他の基準が満たされている限り、0.05〜2.9の範囲であってよい。「置換度」は、置換されたセルロース鎖上の糖繰返し単位当たりの3つのヒドロキシルの平均数を意味する。例えば、セルロース鎖上の全てのヒドロキシルがフタレート置換された場合、フタレート置換度は3である。各ポリマーファミリータイプ内に同様に含まれているのは、ポリマーの性能を実質的に変えない比較的少量で別の置換基を加えたセルロース系ポリマーである。
【0059】
両親媒性セルロース系誘導体は、親セルロースポリマーが、各糖繰返し単位上に存在する3つのヒドロキシル基のいずれかまたは全てにおいて少なくとも1つの比較的疎水性の置換基によって置換されているポリマーを含む。疎水性置換基は、十分高いレベルまたは置換度まで置換された場合に、セルロース系ポリマーを本質的に水不溶性に変え得る、本質的にどんな置換基であってもよい。疎水性置換基の例には、エーテル結合アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;またはエステル結合アルキル基、例えばアセテート、プロピオネート、ブチレートなど;ならびにエーテルおよび/またはエステル結合アリール基、例えばフェニル、ベンゾエート、またはフェニレートがある。ポリマーの親水性領域は、非置換ヒドロキシルはそれ自体が比較的親水性なので、比較的置換されていない部分、あるいは親水性置換基で置換されている領域のいずれかであってよい。親水性置換基には、エーテルまたはエステル結合非イオン性基、例えばヒドロキシアルキル置換基ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびアルキルエーテル基、例えばエトキシエトキシまたはメトキシエトキシがある。特に好ましい親水性置換基は、エーテルまたはエステル結合イオン性基、例えばカルボン酸、チオカルボン酸、置換フェノキシ基、アミン、リン酸塩またはスルホン酸塩のものである。
【0060】
一クラスのセルロース系ポリマーには、中性ポリマーが含まれ、これはポリマーが水溶液中で実質的に非イオン性であることを表す。かかるポリマーは、エーテル結合またはエステル結合のいずれかであってよい非イオン性置換基を含有する。例示的なエーテル結合非イオン性置換基には、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;ヒドロキシアルキル基、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど;およびアリール基、例えばフェニルがある。例示的なエステル結合非イオン性置換基には、アルキル基、例えばアセテート、プロピオネート、ブチレートなど;およびアリール基、例えばフェニレートがある。しかし、アリール基が含まれている場合、1〜8の任意の生理学的に適切なpHでポリマーが少なくともいくらかの水溶性を有するように、ポリマーは、十分な量の親水性置換基を含んでいる必要があるかもしれない。
【0061】
ポリマーとして使用できる例示的な非イオン性セルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロースがある。
【0062】
好ましい一組の非イオン性(中性)セルロース系ポリマーは、両親媒性のものである。例示的なポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートがあり、ここで、非置換ヒドロキシルまたはヒドロキシプロピル置換基に対して比較的高い数のメチルまたはアセテート置換基を有するセルロース系繰返し単位は、ポリマー上の他の繰返し単位に関連する疎水性領域を構成する。
【0063】
好ましいクラスのセルロース系ポリマーは、生理学的に適切なpHで少なくとも部分的にイオン化可能であり、エーテル結合またはエステル結合のいずれかであってよい少なくとも1つのイオン性置換基が含まれるポリマーを含む。例示的なエーテル結合イオン性置換基には、カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、アルコキシ安息香酸、例えばエトキシ安息香酸またはプロポキシ安息香酸、エトキシフタル酸およびエトキシイソフタル酸などのアルコキシフタル酸の種々の異性体、エトキシニコチン酸などのアルコキシニコチン酸の種々の異性体、およびエトキシピコリン酸などのピコリン酸の種々の異性体など;チオカルボン酸、例えばチオ酢酸;置換フェノキシ基、例えばヒドロキシフェノキシなど;アミン、例えばアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、トリメチルアミノエトキシなど;リン酸塩、例えばリン酸エトキシ;ならびにスルホン酸塩、例えばスルホン酸エトキシがある。例示的なエステル結合イオン性置換基には、カルボン酸、例えばサクシネート、シトレート、フタレート、テレフタレート、イソフタレート、トリメリテート、およびピリジンジカルボン酸の種々の異性体など;チオカルボン酸、例えばチオコハク酸;置換フェノキシ基、例えばアミノサリチル酸;アミン、例えば天然または合成アミノ酸、例えばアラニンまたはフェニルアラニン;リン酸塩、例えばリン酸アセチル;ならびにスルホン酸塩、例えばスルホン酸アセチルがある。芳香族置換ポリマーも必要な水溶性を有するためには、少なくともどんなイオン性基もイオン化されるpH値でポリマーを水溶性にするために、ヒドロキシプロピルまたはカルボン酸官能基などの十分な親水性基がポリマーと結合していることも望ましい。場合によっては、フタレートまたはトリメリテート置換基などの芳香族置換基は、それ自体イオン化可能であり得る。
【0064】
生理学的に適切なpHにおいて少なくとも部分的にイオン化している例示的なセルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、エチルカルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルエチルセルロースまたはCMECとも呼ばれる)、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート(CAP)、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、およびエチルピコリン酸セルロースアセテートがある。最も好ましいイオン性セルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、およびセルロースアセテートイソフタレート、ならびにその混合物がある。
【0065】
別の好ましいクラスのポリマーは、中性化した酸性ポリマーからなる。「中性化した酸性ポリマー」とは、かなりの部分の「酸性基」または「酸性置換基」が「中性化」された、すなわち、それらの脱プロトン形態で存在する任意の酸性ポリマーを表す。中性化した酸性ポリマーは、その関連した開示が参照により組み込まれる、2002年6月17日出願の「Pharmaceutical Compositions of Drugs and Neutralized Acidic Polymers」と題する米国公開特許出願US2003−0054038により詳細に記載されている。
【0066】
特定のポリマーが本発明の組成物に使用するのに適しているとして論じてきたが、こうしたポリマーのブレンドも適当であり得る。したがって、「ポリマー」という用語は、ポリマーの単一種に加えてポリマーのブレンドを含むものとする。
【0067】
これらのポリマー全てのうち、最も好ましいものには、HPMCAS、HPMCP、HPMC、CAP、CAT、CMEC、ポロキサマー、およびその混合物がある。
【0068】
好ましい実施形態では、マトリックスは、腸溶性ポリマーである。「腸溶性ポリマー」とは、低いpH(pH?5.0)よりも中性pH(pH?5.5)付近でより高い水溶性を有するポリマーを表す。一般に、腸溶性ポリマーは、低いpH、通常約5.0未満のpHで比較的不溶性であるが、約5.5超のpHで少なくとも一部溶ける。発明者らは、化合物Aおよび腸溶性ポリマーを用いて作製した固体非晶質分散物では、in vivoの使用環境への投与後に薬物動態の変動が低減されることを発見した。どんな理論または作用機序にも拘泥するものではないが、腸溶性ポリマーを用いて作製された固体非晶質分散物では、化合物Aの溶解度が高い胃環境において化合物Aの溶解速度が制限されると考えられている。組成物が低pH胃環境からより中性pHの十二指腸および腸に移動するにつれて、化合物Aと腸溶性ポリマーのどちらも互いに近傍で溶解し、上記のような水性環境で化合物Aの濃度が高まる。これは、化合物Aの生物学的利用能を向上させ、患者間の薬物動態の変動を低減させる。好ましい腸溶性ポリマーには、HPMCAS、HPMCP、CAP、CAT、CMEC、およびその混合物がある。
【0069】
別の実施形態では、固体非晶質分散物は、化合物Aならびに腸溶性ポリマーと低pH溶解性ポリマーのブレンドを含む。胃の使用環境に投与すると、低pH溶解性ポリマーは、化合物Aの一部分と一緒に溶解することになる。組成物が低pHの胃環境からより中性pHの十二指腸および腸に移動するにつれて、低pH溶解性ポリマーは、その溶解度が低減するにつれて化合物Aの沈殿を阻害する。より中性pHの十二指腸および小腸内に入ると、腸溶性ポリマーおよび化合物Aは互いに近傍で溶解することになり、水性環境で化合物Aの濃度が高まる。好ましい腸溶性ポリマーには、HPMCAS、HPMCP、CAP、CAT、CMEC、およびその混合物がある。好ましい低pH溶解性ポリマーには、HPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、およびポロキサマーがある。
【0070】
一実施形態では、低pH溶解性ポリマーは、5.5以下のpHで水溶液中に溶解するように設計された腸溶性ポリマーであるが、腸溶性ポリマーは、6.0以上のpHで水溶液中に溶解するように設計されたポリマーである。5.5以下のpHで水溶液中に溶解するように設計された腸溶性ポリマーの例は、Shin Etsu(東京、日本)製のAQOAT−Lである。6.0以上のpHで水溶液中に溶解するように設計された腸溶性ポリマーの例には、両方ともShin Etsuから入手可能なAQOAT−MおよびAQOAT−Hがある。
【0071】
固体非晶質分散物の調製
化合物Aおよびマトリックスを含む固体非晶質分散物は、化合物Aの少なくとも一部分が非晶質状態になる任意の従来のプロセスによって作製することができる。こうしたプロセスには、機械的、熱的および溶媒プロセスがある。例示的な機械的プロセスには、摩砕および押出しがあり、溶融プロセスには、高温融解、溶媒改質融解および溶融−凝結プロセスがあり、溶媒プロセスには、非溶媒沈殿、スプレーコーティングおよび噴霧乾燥がある。しばしば、プロセスから、2種以上のプロセスタイプの組合せによって分散物を形成することができる。例えば、押出しプロセスを使用する場合、押出機は、機械的(剪断)および熱的(熱)方法の両方を用いて分散物を形成するように高温で操作してよい。例示的な方法の例は、その関連開示が参照により本明細書に組み込まれる、以下の米国特許:押出しプロセスによる分散物の形成について記載している第5,456,923号および第5,939,099号;摩砕プロセスによる分散物の形成について記載している第5,340,591号および第4,673,564号;ならびに溶融凝結プロセスによる分散物の形成について記載している凝結第5,707,646号および第4,894,235号に開示されている。
【0072】
化合物Aおよびマトリックスの固体非晶質分散物を形成するのに好ましい方法は、共通溶媒中の化合物Aの少なくとも一部分および1種または複数のマトリックス成分の少なくとも一部分の溶解からなる「溶媒処理(solvent processing)」である。「溶媒」という用語は、広く使われており、溶媒の混合物を含む。ここでは「共通」は、化合物の混合物であってよい溶媒が、化合物Aの少なくとも一部分およびマトリックス物質(単複)を溶かすことを表す。
【0073】
溶媒処理に適した溶媒は、化合物Aおよびマトリックスが相溶性の任意の化合物であってよい。溶媒はまた、沸点が150℃未満で揮発性であることが好ましい。さらに、溶媒は、毒性が比較的低く、The International Committee on Harmonization(ICH)ガイドラインに基づいて許容できるレベルまで固体非晶質分散物から除去されなければならない。このレベルまで溶媒を除去することは、棚型乾燥など次の処理ステップを必要とするかもしれない。好ましい溶媒には、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、およびブタノール;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンおよびメチルiso−ブチルケトン;エステル、例えば酢酸エチルおよびプロピルアセテート;ならびに種々の他の溶媒、例えばアセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、1,1,1−トリクロロエタン、およびテトラヒドロフランがある。ジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドなどの揮発性のより低い溶媒も、揮発性溶媒との混合物中に少量で使用することができる。ポリマーおよび化合物Aが、噴霧乾燥プロセスを実施可能にするのに十分に可溶である限り、溶媒の混合物、例えば50%メタノールおよび50%アセトンも使用でき、水との混合物も同様である。好ましい溶媒は、メタノール、アセトン、およびその混合物である。
【0074】
化合物Aとマトリックスそれぞれの少なくとも一部分が溶解した後、溶媒を蒸発によってまたは非溶媒と混合することによって除去する。例示的なプロセスは、噴霧乾燥、スプレーコーティング(パンコーティング、流動床コーティングなど)、ならびに化合物Aおよびマトリックス溶液とCO、ヘキサン、ヘプタン、適切なpHの水、または他の非溶媒との急速な混合による沈殿である。溶媒の除去により、実質的に均質な固体分散物が得られることが好ましい。この結果を得るためには、例えば溶液を霧状にするプロセスで溶液から溶媒を急速に除去し、化合物Aおよびマトリックスが急速に凝固することが一般に望ましい。
【0075】
溶媒は、噴霧乾燥によって除去することができる。「噴霧乾燥」という用語は、従来使用されており、液体混合物を小液滴に分解(微粒化)し、液滴から溶媒を蒸発させるための強い推進力がある噴霧乾燥装置中で混合物から溶媒を急速に除去することを含むプロセスを広く意味する。噴霧乾燥プロセスおよび噴霧乾燥設備は、一般にPerry’s Chemical Engineers’ Handbook、20−54〜20−57頁(第6版1984年)に記載されている。噴霧乾燥プロセスおよび設備のより多くの詳細については、Marshall、「Atomization and Spray−Drying」、50 Chem. Eng. Prog. Monogr. Series 2(1954)、およびMasters、Spray Drying Handbook(第4版1985年)にその総説がある。溶媒蒸発のための強い推進力は、一般に噴霧乾燥装置中の溶媒の分圧を、液滴を乾燥させる温度で溶媒の蒸気圧よりはるかに低く維持することによってもたらされる。これは、(1)噴霧乾燥装置中の圧力を部分真空(例えば、0.01〜0.50atm)で維持すること、または(2)液滴を暖かい乾燥ガスと混合すること、または(3)(1)と(2)の両方によって達成される。さらに、溶媒を蒸発させるために必要とされる熱の少なくとも一部分は、噴霧液を加熱することによって供給することができる。
【0076】
噴霧液中の化合物Aおよびマトリックスの量は、噴霧液中でのそれぞれの溶解度ならびに得られた固体非晶質分散物中の化合物Aとマトリックスの所望の比率に依存する。好ましくは、噴霧液は、少なくとも0.01wt%、より好ましくは少なくとも0.02wt%、最も好ましくは少なくとも0.05wt%の溶解した固体を含む。
【0077】
溶媒を含む供給材料は、多種多様な条件下で噴霧乾燥でき、それでもなお許容できる特性をもつ固体非晶質分散物が得られる。例えば、種々のタイプのノズルを使用して噴霧液を霧状にでき、それによって噴霧液が小液滴の集合として噴霧乾燥チャンバー中に導入される。形成された液滴が十分に小さく、十分に乾燥して(溶媒の蒸発によって)、噴霧乾燥チャンバー壁に固着しないまたは塗布されないようなものである限り、本質的にどのタイプのノズルも溶液を噴霧するのに使用することができる。
【0078】
噴霧乾燥機内のサイズ、形状およびフローパターンに応じて最大液滴サイズは大幅に異なるが、一般に液滴は、ノズルを出るときに直径が約500μm未満でなければならない。固体非晶質分散物を形成するのに使用できるノズルのタイプの例には、二流体ノズル、噴水型ノズル、フラットファン型ノズル、圧力ノズルおよび回転噴霧器がある。好ましい実施形態では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2003年1月24日出願の米国公開特許出願US2003−0185893に詳細に開示されているような圧力ノズルを使用している。
【0079】
噴霧液は、広範囲の温度および流量で1つまたは複数のスプレーノズルに供給することができる。一般に、噴霧液温度は、溶媒の凝固点よりほんの少しだけ高い温度からその周囲圧力沸点より約20℃高い温度(溶液を加圧することによって)および場合によってはさらにより高い温度の間のどこでもよい。スプレーノズルまでの噴霧液流量は、ノズルのタイプ、噴霧乾燥機サイズならびに入口温度および乾燥ガスの流量などの噴霧乾燥条件に応じて大幅に異なっていてよい。一般に、噴霧乾燥プロセスにおいて噴霧液から溶媒を蒸発させるためのエネルギーは、主に乾燥ガスからもたらされる。
【0080】
乾燥ガスは、原則として、本質的にどんなガスであってもよいが、安全性の理由のためおよび固体非晶質分散物中の化合物Aまたは他の物質の望ましくない酸化を最小限にするために、窒素、窒素を多く含む空気またはアルゴンなどの不活性ガスを利用する。乾燥ガスは、通常約60°〜約300℃、好ましくは約80°〜約240℃の温度で乾燥チャンバー内に導入される。例えば、噴霧液に化合物A、HPMCAS、およびメタノールが含まれる場合、入口ガス温度は、約150℃以下、より好ましくは約135℃以下であってよい。
【0081】
液滴の比表面積が大きく、かつ溶媒を蒸発させるための推進力が大きいと、液滴に急速な凝固時間がもたらされる。凝固時間は、約20秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは1秒未満でなければならない。この急速な凝固は、化合物Aリッチおよびポリマーリッチ相に分離するのではなく、一様な均質分散物を保持する粒子にとってしばしば決定的に重要である。好ましい実施形態では、参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,763,607号に詳細に記載されているように、噴霧乾燥機の高さおよび容積を調整して、噴霧乾燥機の内壁面に衝突する前に液滴が乾燥するのに十分な時間を供給している。上述したように、濃度および生物学的利用能を大きく増大させるためには、可能な限り均質な分散物を得ることがしばしば必要である。
【0082】
凝固後、固体粉末は、通常噴霧乾燥チャンバー内に約5〜60秒間留まり、さらに固体粉末から溶媒が蒸発する。これによって固体非晶質分散物中の化合物A分子の移動度が低減し、それによりその安定性が向上するので、乾燥機を出るときの固体分散物の最終的な溶媒含有量は低いはずである。一般に、噴霧乾燥チャンバーを去るときの固体非晶質分散物の溶媒含有量は、10wt%未満、好ましくは2wt%未満でなければならない。
【0083】
形成後に、適当な乾燥プロセス、例えば棚型乾燥、真空乾燥、流動床乾燥、高周波乾燥、ベルト乾燥、回転乾燥、および当技術分野で既知の他の乾燥プロセスを用いて、固体非晶質分散物を乾燥させて残った溶媒を除去することができる。好ましい第二の乾燥法には、真空乾燥または棚型乾燥がある。乾燥中の化学分解を最小限にするために、乾燥は、窒素などの不活性ガス下、または真空下で行うことができる。
【0084】
固体非晶質分散物は、通常小さい粒子の形態である。粒子の平均サイズは、直径500μm未満、または直径100μm未満、直径50μm未満または直径25μm未満であってよい。固体非晶質分散物を噴霧乾燥によって形成した場合、得られた分散物は、非常に小さな粒子の形態である。回転蒸発、非溶媒を用いた沈殿、スプレーコーティング、溶融−凝結、または押出しプロセスのような他の方法によって形成した場合、得られた分散物を、篩にかけ、粉砕し、またはその他の方法で処理して複数の小さい粒子を得ることができる。
【0085】
処理を簡単にするために、乾燥した粒子は、特定の密度およびサイズ特徴を有していてよい。一実施形態では、得られた固体非晶質分散物粒子は、噴霧乾燥によって形成され、かさ比容積が約4cc/g以下、より好ましくは約3.5cc/g以下であってよい。粒子のタップした比容積は、約3cc/g以下、より好ましくは約2cc/g以下であってよい。粒子のHausner比は3以下、より好ましくは2以下である。粒子の平均粒径は、150μm以下、より好ましくは1〜100μmであってよい。粒子のスパンは3以下、より好ましくは2.5以下であってよい。本明細書では、「Span」は、以下の様に定義され、
【0086】
【数1】

式中、D10は、直径が同等またはより小さい粒子を含有する全容積の10%を占める粒子の直径に相当する直径であり、D50は、直径が同等またはより小さい粒子を含有する全容積の50%を占める粒子の直径に相当する直径であり、D90は、直径が同等またはより小さい粒子を含有する全容積の90%を占める粒子の直径に相当する直径である。
【0087】
別の実施形態では、溶媒を含む供給溶液を種晶上に噴霧することによって溶媒を除去する。種晶は、任意の既知の方法、例えば溶融−または噴霧−凝結、押出し/球状化(spheronization)、造粒、噴霧乾燥などによって、任意の適当な物質、例えばデンプン、微結晶性セルロース、糖または蝋から作製することができる。供給溶液は、製薬技術分野で既知のコーティング設備、例えばパンコーター(例えば、東京、日本のFreund Corp.から入手可能なHI−Coater、英国LiverpoolのManestyから入手可能なAccela−Cota)、流動床コーター(例えば、Glatt Air Technologies of Ramsey、ニュージャージー州およびNiro Pharma Systems of Bubendorf、スイスから入手可能なWurster coatersまたはtop−sprayers)およびロータリー式造粒器(例えば、Freund Corpから入手可能なCF−Granulator)を用いて、かかる種晶上に噴霧することができる。このプロセス中、種晶を供給溶液でコーティングし、溶媒を蒸発させ、固体非晶質分散物を含むコーティングが得られる。種晶上に固体非晶質分散物を形成すると、分散物の密度は低く、したがって水性使用環境に投与したときに急速な溶解が可能になると同時に、そのようにして形成した粒子の総合密度は種晶のものと類似しており、組成物の処理および取り扱いが改善されるという利点がある。
【0088】
濃度増大
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、使用する水性環境に投与した場合に濃度増大をもたらし、これらは以下の条件の少なくとも一方、好ましくは両方を満たすことを表す。第1の条件は、本発明の組成物が、当量の多形形態IVである結晶性化合物Aからなる対照組成物に対して使用する環境における化合物Aの最大溶解濃度(MDC)を増大させることである。すなわち、組成物を使用する環境に導入した後、ポリマーが対照組成物に対する化合物Aの水中濃度を増大させる。対照組成物は、可溶化剤または化合物Aの溶解度に実質的に影響を与えることになる他の成分を含まないこと、および対照組成物中で化合物Aは、固形形態であることを理解されたい。対照組成物は、下記実施例に記載されているような多形形態IVである結晶性化合物Aである。好ましくは、本発明の組成物は、対照組成物によってもたらされる値の少なくとも1.25倍、より好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも3倍である水溶液中の化合物AのMDCをもたらす。驚くべきことに、本発明の組成物は、水中濃度を極めて大きく増大させることができる。場合によっては、試験組成物によってもたらされる化合物AのMDCは、対照によってもたらされるMDCの少なくとも5倍以上である。
【0089】
第2の条件は、本発明の組成物が、当量の結晶性化合物Aからなるがポリマーを含まない対照組成物に対して使用する環境における化合物Aの濃度対時間曲線下溶解面積(AUC)を増大させることである。(AUCの計算は、製薬技術分野でよく知られている手順であり、例えば、Welling、「Pharmacokinetics Processes and Mathematics」、ACS Monograph 185(1986年)に記載されている。)より具体的には、使用する環境において、本発明の組成物は、上記の対照組成物の値の少なくとも1.25倍である、使用環境への導入後0〜270分間のうちの任意の90分間におけるAUCをもたらす。組成物によってもたらされたAUCは、対照組成物の値の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍であることが好ましい。本発明のいくつかの組成物は、上記のような対照組成物の値の少なくとも5倍である、さらには10倍を超えるAUC値をもたらすことができる。
【0090】
先に述べたように、「使用環境」は、動物、特にヒトの胃腸管などのin vivoの環境、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液もしくはモデル絶食十二指腸(MFD)溶液などの試験溶液のin vitroの環境のいずれかであってよい。発明者らは、in vitro溶解試験がin vivo挙動の優れた予測指標であり、したがってin vitroおよびin vivoの使用環境の一方または両方で濃度増大をもたらす場合、組成物が本発明の範囲内であることを発見した。
【0091】
本発明の組成物は、in vitro溶解試験において溶解した化合物Aの濃度増大をもたらす。MFD溶液またはPBS溶液中でのin vitro溶解試験における化合物A濃度の増大は、in vivo性能および生物学的利用能の優れた指標であることが明らかになっている。適切なPBS溶液は、NaOHを用いてpH6.5に調整した、20mM NaHPO、47mM KHPO、87mM NaCl、および0.2mM KClを含む水溶液である。適切なMFD溶液は、7.3mMタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mMの1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンもその中に存在する同じPBS溶液である。特に、本発明の方法によって形成した組成物は、MFDまたはPBS溶液に加え、撹拌して溶解を促進することによって溶解試験を行うことができる。
【0092】
水溶液中での化合物A濃度の増大を評価するためのin vitro試験は、(1)撹拌しながら十分量の対照組成物、結晶性化合物Aをin vitro試験液、例えばMFDまたはPBS溶液に加えて、化合物Aの平衡濃度を達成すること、(2)別個の試験において、化合物Aが全て溶解した場合に、化合物Aの理論濃度が結晶性化合物Aの平衡濃度を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍上回るように、撹拌しながら十分量の試験組成物(例えば、化合物Aおよびマトリックスを含む組成物)を同じ試験液に加えること、ならびに(3)測定した試験液中の試験組成物のMDCおよび/または水中AUCと平衡濃度、および/または対照組成物の水中AUCとを比較することによって実施することができる。このような溶解試験を実施する際、使用する試験組成物または対照組成物の量は、化合物Aが全て溶解した場合に、化合物A濃度が平衡濃度の値の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも100倍になるような量である。
【0093】
溶解した化合物Aの濃度は通常、MDCを確認できるように、試験液をサンプリングし、試験液中の化合物A濃度対時間をプロットすることによって、時間の関数として測定する。MDCは、試験期間にわたって測定した溶解した化合物Aの最大値であるとみなされている。水中AUCは、水性使用環境への組成物の導入時(時間がゼロに相当する場合)と使用環境への導入後270分(時間が270分に相当する場合)の間の任意の90分の期間にわたって濃度対時間曲線を積分することによって計算する。通常、組成物がそのMDCに急速に、例えば30分未満で達する場合、AUCを計算するのに使用した時間間隔は、ゼロに相当する時間から90分に相当する時間までである。しかし、上記の任意の90分の期間にわたる組成物のAUCが本発明の基準を満たす場合、形成した組成物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0094】
誤った判断を与えることになる化合物Aの大きい微粒子を避けるために、試験溶液をろ過または遠心分離のいずれかを行う。「溶解した化合物A」は一般に、0.45μmシリンジフィルターを通過する物質、あるいは遠心分離後に上清に残る物質のどちらかとして理解されている。ろ過は、商標TITAN(登録商標)のもとでScientific Resourcesによって販売されている、13mm、0.45μmポリフッ化ビニリデンシリンジフィルターを用いて実施することができる。遠心分離は一般に、13,000Gで60秒間遠心分離することによってポリプロピレンマイクロ遠心管中で実施する。他の同様のろ過または遠心分離法を使用してもよく、有用な結果が得られる。例えば、他のタイプのマイクロフィルターを用いると、上記で特定したフィルターで得られた値よりもいくらか高いまたは低い(±10〜40%)値が得られるが、好ましい分散物の同定は依然として可能である。「溶解した化合物A」のこの定義には、低分子量の溶媒和化合物A分子だけでなく、化合物A集合体、マトリックスと化合物Aの混合物の集合体、ミセル、ポリマーミセル、コロイド粒子またはナノ結晶、ポリマー/化合物A複合体、ならびに特定の溶解試験におけるろ液または上清中に存在する他のかかる化合物A含有種などサブミクロン寸法を有するポリマー/化合物Aアセンブリなどの広範囲の種も包含されることが認められよう。
【0095】
あるいは、組成物は、絶食状態のヒトまたは他の動物に経口的に投与した場合に、当量の結晶性化合物Aからなる対照組成物を投与した場合に観察される値の少なくとも1.25倍、好ましくは少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍、さらにより好ましくは少なくとも10倍である血(血清または血漿)中の化合物A濃度におけるAUCをもたらす。かかる組成物は、対照組成物の1.25倍〜10倍の相対的生物学的利用能を有すると言われ得ることにも注意されたい。
【0096】
あるいは、組成物は、ヒトまたは他の動物に経口的に投与した場合に、当量の結晶性化合物Aからなる対照組成物を投与した場合に観察される値の少なくとも1.25倍である血漿または血清中の化合物Aの最大溶解濃度(Cmax)をもたらす。好ましくは、血中Cmaxは、対照組成物の値の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍である。
【0097】
化合物Aの相対的生物学的利用能および組成物によってもたらされるCmaxは、このような決定をするための従来の方法を用いて動物またはヒトにおいてin vivoで試験することができる。交叉試験などのin vivo試験を使用して、上記のような対照組成物と比較して化合物Aおよびマトリックス物質の組成物が相対的生物学的利用能またはCmaxを増大させるかどうか判定することができる。in vivo交叉試験では、非晶質化合物Aまたは非晶質化合物Aおよびマトリックスを含む本発明の試験組成物を試験対象のグループの半分に投与し、適切なウォッシュアウト期間(例えば、1週間)後、試験組成物と当量の結晶性化合物Aからなる対照組成物を同じ対象に投与する。グループの残りの半分には、最初に対照組成物、続いて試験組成物を投与する。相対的生物学的利用能は、対照組成物によってもたらされる血中AUCで分けた試験グループについて決定される血(血清または血漿)中濃度対時間曲線下面積(AUC)として測定する。この試験/対照比を各対象について決定し、次いでこれらの比を試験中の全ての対象に対して平均化することが好ましい。AUCおよびCmaxのin vivo判定は、横軸(x軸)に沿った時間に対して縦軸(y軸)に沿って化合物Aの血清または血漿濃度をプロットすることによって行うことができる。投与を容易にするために、投与ビヒクルを使用して用量を投与してよい。投与ビヒクルは、好ましくは水であるが、試験または対照組成物を懸濁させるための物質を含んでいてもよく、ただしこれらの物質はin vivoの化合物A溶解度を変化させない。
【0098】
in vivo試験から、化合物Aを本発明の組成物として調製すると、対象間薬物動態の変動が低減することを発明者らは発見した。「薬物動態の変動」とは、血中AUCおよび/またはCmaxの対象間の変動を表す。対象間の変動は、変動測定として試験中の全ての対象にわたって変動係数(C.V.)を用いて血中AUCおよびCmaxのin vivo判定から測定することができる。例えば、パーセント値として表したAUC C.V.は、測定したAUC値の標準偏差を全ての測定値の平均AUC値によって割り、次いで100を掛けることによって決定することができる。好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも4対象のグループに投与した場合、対照組成物によってもたらされたC.V.の90%以下である、血中AUCまたは血中CmaxのいずれかにおけるC.V.をもたらす。好ましくは、本発明の組成物によってもたらされたC.V.は、対照組成物によってもたらされたC.V.の80%以下、最も好ましくは70%以下である。
【0099】
剤形
組成物は、それだけには限らないが、経口、経鼻、直腸、膣、皮下、静脈内および肺を含む、多種多様な経路によって送達することができる。一般に、経口経路が好ましい。
【0100】
組成物は、化合物Aを投与するために多種多様な剤形で使用してもよい。例示的な剤形は、乾燥したまたはペースト、スラリー、懸濁液もしくは溶液を生成するために水もしくは他の液体を加えることによって再構成させる、経口的に摂取できる散剤または顆粒剤;錠剤;カプセル剤;多粒子剤(multiparticulate);および丸剤である。本発明の組成物と一緒に種々の添加剤を混合、粉砕、または粒状化して、上記剤形に適した物質を形成することができる。
【0101】
本発明の組成物は、液体ビヒクルに溶かした粒子の懸濁剤として送達されるような種々の形態に調製することができる。このような懸濁剤は、製造時に液体またはペーストとして調製でき、あるいは後に経口投与の前に液体、通常水を加える乾燥粉末として調製することができる。懸濁剤に構成するこのような粉末は、しばしばサッシェまたは構成用経口粉末(OPC)製剤と呼ばれる。こうした剤形は、任意の既知の手順によって調製および再構成することができる。最も簡単な手法は、単純に水を加えて撹拌することによって再構成させる乾燥粉末として剤形を調製することである。あるいは、剤形は、混合および撹拌して経口用懸濁剤を生成させる液体および乾燥粉末として調製することができる。さらに別の実施形態では、剤形は、まず一方の粉末に水を加えることによって再構成させて溶液を生成し、それに第2の粉末を撹拌しながら混合して懸濁液を生成させる2種類の粉末として調製することができる。
【0102】
本発明の組成物は、当技術分野でよく知られている(例えば、Remington’s The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年を参照のこと)適当なカプセル剤、例えば硬ゼラチンカプセル剤または軟ゼラチンカプセル剤中に充填することもできる。
【0103】
好ましい実施形態では、剤形は、組成物の胃内での溶解を制限するために腸溶性ポリマーでコーティングされている。この目的に適した腸溶コーティングの例には、HPMCAS、HPMCP、CAP、CAT、CMEC、カルボン酸官能化ポリメタクリレートおよびカルボン酸官能化ポリアクリレートなどのカルボン酸官能化ビニルポリマー、ならびにその混合物がある。胃内で溶解する化合物Aの量を制限すると、化合物Aの患者間の薬物動態の変動が低減され得る。
【0104】
併用療法
本発明の組成物は、異常細胞増殖に関連する疾患状態を有する哺乳動物、例えばヒトを治療するために別の1種または複数の薬剤と併せて投与することができる。本発明の組成物と併せて使用できる薬剤には、抗増殖剤、キナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、増殖因子阻害剤、cox−I阻害剤、cox−II阻害剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗体、細胞毒、抗ホルモン、スタチン、および抗アンドロゲン物質があるが、それだけには限定されない。
【0105】
本発明はまた、哺乳動物の異常細胞増殖を治療するための方法に関するものであり、治療有効量の本発明の組成物を、抗増殖剤、キナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、増殖因子阻害剤、cox−I阻害剤、cox−II阻害剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗体、細胞毒、抗ホルモン、スタチン、および抗アンドロゲン物質からなる群から選択される抗癌剤と併せて前記哺乳動物に投与することを含む。
【0106】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物と併用する抗癌剤は、抗血管新生剤、キナーゼ阻害剤、全キナーゼ阻害剤または増殖因子阻害剤である。好ましい全キナーゼ阻害剤には、米国特許第6,573,293号(Pfizer Inc、米国ニューヨーク州)に記載されているSU−11248がある。
【0107】
抗血管新生剤には、以下の薬剤、例えばEGF阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、およびMMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害剤があるが、それだけには限定されない。好ましいVEGF阻害剤には、例えば、カリフォルニア州South San FranciscoのGenentech,Inc.の抗VEGFモノクローナル抗体であるアバスチン(ベバシズマブ)がある。
【0108】
別のVEGF阻害剤には、CP−547,632(Pfizer Inc.、米国ニューヨーク州)、AG13736(Pfizer Inc.)、ZD−6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD−2171)、VEGF Trap(Regeneron,/Aventis)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584としても知られている:Novartis & Schering AG)、マクゲン(ペガプタニブ八ナトリウム、NX−1838、EYE−001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862(米国ワシントン州KirklandのCytran Inc.);ならびにRibozyme(コロラド州Boulder)とChiron(カリフォルニア州Emeryville)製の合成リボザイムであるアンギオザイム、ならびにその組合せがある。本発明の実施に有用であるVEGF阻害剤は、その両方がその全体を本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,524号および第6,235,764号に開示されている。特に好ましいVEGF阻害剤には、CP−547,632、AG13736、バタラニブ、マクゲンおよびその組合せがある。
【0109】
別のVEGF阻害剤は、例えばWO99/24440(1999年5月20日公開)、PCT国際出願PCT/IB99/00797(1999年5月3日出願)、WO95/21613(1995年8月17日公開)、WO99/61422(1999年12月2日公開)、米国特許第6,534,524号(AG13736を開示)、米国特許第5,834,504号(1998年11月10日発行)、WO98/50356(1998年11月12日公開)、米国特許第5,883,113号(1999年3月16日発行)、米国特許第5,886,020号(1999年3月23日発行)、米国特許第5,792,783号(1998年8月11日発行)、米国特許US6,653,308号(2003年11月25日発行)、WO99/10349(1999年3月4日公開)、WO97/32856(1997年9月12日公開)、WO97/22596(1997年6月26日公開)、WO98/54093(1998年12月3日公開)、WO98/02438(1998年1月22日公開)、WO99/16755(1999年4月8日公開)、およびWO98/02437(1998年1月22日公開)に記載されており、その全てが本明細書において完全に参照により組み込まれている。
【0110】
本発明の組成物と一緒に使用できる他の抗増殖剤には、以下の米国特許出願:09/221946(1998年12月28日出願);09/454058(1999年12月2日出願);09/501163(2000年2月9日出願);09/539930(2000年3月31日出願);09/202796(1997年5月22日出願);09/384339(1999年8月26日出願);および09/383755(1999年8月26日出願)に開示および特許請求されている化合物ならびに以下の米国仮特許出願:60/168207(1999年11月30日出願);60/170119(1999年12月10日出願);60/177718(2000年1月21日出願);60/168217(1999年11月30日出願)、および60/200834(2000年5月1日出願)に開示および特許請求されている化合物を含めた、酵素ファルネシルプロテイントランスフェラーゼの阻害剤および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤がある。前述のそれぞれの特許出願および仮特許出願は、本明細書においてその全体が参照により組み込まれている。
【0111】
PDGRr阻害剤には、本明細書においてその内容が完全に組み込まれる、2001年7月7日公開の国際特許出願公開番号 WO01/40217および2004年3月11日公開の国際特許出願公開番号WO2004/020431に開示されているものがあるが、それだけには限定されない。好ましいPDGFr阻害剤には、PfizerのCP−673,451およびCP−868,596ならびにそれらの薬学的に許容できる塩がある。
【0112】
好ましいGARF阻害剤には、PfizerのAG−2037(ペリトレキソール(pelitrexol)およびその薬学的に許容できる塩)がある。本発明の実施に有用なGARF阻害剤は、本明細書においてその全体が組み込まれる、米国特許第5,608,082号に開示されている。
【0113】
化合物Aおよび本明細書に記載の医薬組成物と併用できる有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、MK−663(エトリコキシブ)、COX−189(ルミラコキシブ)、BMS 347070、RS 57067、NS−398、ベクストラ(バルデコキシブ)、パラコキシブ、バイオックス(レフェコキシブ)、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3、SC−58125およびアルコキシア(エトリコキシブ)がある。さらに、COX−II阻害剤は、本明細書においてその内容が完全に組み込まれる、米国特許出願第10/801,446号および第10/801,429号に開示されている。
【0114】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容がその全体を参照により組み込まれる、米国特許第5,466,823号に開示されているようなセレコキシブである。セレコキシブの構造を以下に示す:
【0115】
【化2】

【0116】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容がその全体を参照により組み込まれる、米国特許第5,633,272号に開示されているようなバレコキシブである。バルデコキシブの構造を以下に示す:
【0117】
【化3】

【0118】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、米国特許第5,932,598号に開示されているようなパレコキシブである。パレコキシブの構造を以下に示す:
【0119】
【化4】

【0120】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、米国特許第5,521,207号に開示されているようなデラコキシブである。デラコキシブの構造を以下に示す:
【0121】
【化5】

【0122】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、米国特許第6,034,256号に開示されているようなSD−8381である。SD−8381の構造を以下に示す:
【0123】
【化6】

【0124】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、国際公開番号WO2002/24719に開示されているようなABT−963である。ABT−963の構造を以下に示す:
【0125】
【化7】

【0126】
一実施形態では、抗癌剤は、以下に示すようなロフェコキシブである。
【0127】
【化8】

【0128】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、国際公開番号WO1998/03484に開示されているようなMK−663(エトリコキシブ)である。エトリコキシブの構造を以下に示す:
【0129】
【化9】

【0130】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、国際公開番号WO1999/11605に開示されているようなCOX−189(ルミラコキシブ)である。ルミラコキシブの構造を以下に示す:
【0131】
【化10】

【0132】
一実施形態では、抗癌剤は、本明細書においてその内容が完全に参照により組み込まれる、米国特許第6,180,651号に開示されているようなBMS−347070である。BMS−347070の構造を以下に示す:
【0133】
【化11】

【0134】
一実施形態では、抗癌剤は、NS−398(CAS 123653−11−2)である。NS−398(CAS 123653−11−2)の構造を以下に示す:
【0135】
【化12】

【0136】
一実施形態では、抗癌剤は、RS 57067(CAS 17932−91−3)である。RS−57067(CAS 17932−91−3)の構造を以下に示す:
【0137】
【化13】

【0138】
好ましい一実施形態では、抗癌剤は、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロールである。4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロールの構造を以下に示す:
【0139】
【化14】

【0140】
一実施形態では、抗癌剤は、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロールである。2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロールの構造を以下に示す:
【0141】
【化15】

【0142】
一実施形態では、抗癌剤は、メロキシカムである。メロキシカムの構造を以下に示す:
【0143】
【化16】

【0144】
本発明の組成物と併用する抗癌剤として有用な他の阻害剤には、アスピリン、ならびに以下、サルサレート(アミジェシック(Amigesic))、ジフルニサル(ドロビッド)、イブプロフェン(モトリン)、ケトプロフェン(オルヂス)、 ナブメトン(レラフェン)、ピロキシカム(フェルデン)、ナプロキセン(アリーブ、ナプロシン)、ジクロフェナク(ボルタレン)、インドメタシン(インダシン)、スリンダク(クリノリル)、トルメチン(トレクチン)、エトドラク(ロディン(Lodine))、ケトロラック(トラドール)、オキサプロジン(デイプロ(Daypro))およびその組合せを含むがそれだけには限定されない、プロスタグランジン(シクロオキシゲナーゼIおよびII)を作る酵素を阻害してより低レベルのプロスタグランジンをもたらす非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)がある。
【0145】
好ましいCOX−I阻害剤には、イブプロフェン(モトリン)、ニュープリン、ナプロキセン(アリーブ)、インドメタシン(インダシン)、ナブメトン(レラフェン)およびその組合せが含まれる。
【0146】
本発明の組成物と併用する標的薬には、EGFr阻害剤、例えばイレッサ(ゲフィチニブ、AstraZeneca)、タルセバ(エルロチニブまたはOSI−774、OSI Pharmaceuticals Inc.)、エルビタックス(セツキシマブ、Imclone Pharmaceuticals,Inc.)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府)、IgA抗体(エアランゲン−ニュルンベルク大学)、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGF−ワクチン、抗EGFrイムノリポソーム(Hermes Biosciences Inc.)およびその組合せがある。好ましいEGFr阻害剤には、イレッサ、エルビタックス、タルセバおよびその組合せが含まれる。
【0147】
他の抗癌剤には、pan erb受容体阻害剤またはErbB2受容体阻害剤、例えばCP−724,714(Pfizer,Inc.)、CI−1033(カネルチニブ(canertinib)、Pfizer,Inc.)、ハーセプチン(トラスツズマブ、Genentech Inc,)、オミタルグ(Omitarg)(2C4、ペルツズマブ、Genentech Inc.)、TAK−165(Takeda)、GW−572016(イオナファルニブ(Ionafarnib)、GlaxoSmithKline)、GW−282974(GlaxoSmithKline)、EKB−569(Wyeth)、PKI−166(Novartis)、dHER2(HER2ワクチン、CorixaおよびGlaxoSmithKiine)、APC8024(HER2ワクチン、Dendreon)、抗HER2/neu二重特異性抗体(Decof Cancer Center)、B7.her2.IgG3(Agensys)、AS HER2(原爆放射線医科学研究所(Research Institute for Rad Biology & Medicine))、三官能価二重特異性抗体(ミュンヘン大学)およびmAB AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc)およびmAB 2B−1(Chiron)ならびにその組合せから選択されるものがある。好ましいerb選択的抗癌剤には、ハーセプチン、TAK−165、CP−724,714、ABX−EGF、HER3およびその組合せが含まれる。好ましいpan erbb受容体阻害剤には、GW572016、CI−1033、EKB−569、およびオミタルグ(Omitarg)ならびにその組合せが含まれる。
【0148】
別のerbB2阻害剤には、それぞれが本明細書にその全体を参照により組み込まれる、WO98/02434(1998年1月22日公開)、WO99/35146(1999年7月15日公開)、WO99/35132(1999年7月15日公開)、WO98/02437(1998年1月22日公開)、WO97/13760(1997年4月17日公開)、WO95/19970(1995年7月27日公開)、米国特許第5,587,458号(1996年12月24日発行)、および米国特許第5,877,305号(1999年3月2日発行)に記載されているものがある。本発明に有用なErbB2受容体阻害剤は、それぞれが本明細書にその全体を参照により組み込まれる、米国特許第6,465,449号、および第6,284,764号、ならびに国際出願番号WO2001/98277にも記載されている。
【0149】
さらに、他の抗癌剤は、以下の薬剤、BAY−43−9006(Onyx Pharmaceuticals Inc.)、ジェナセンス(オーグメロセン(augmerosen)、Genta)、パニツムマブ(Abgenix/Amgen)、ゼヴァリン(Schering)、ベキサール(Corixa/GlaxoSmithKline)、アバレリックス、アリムタ、EPO 906(Novartis)、ディスコデルモリド(XAA−296)、ABT−510(Abbott)、ネオバスタット(Aeterna)、エンザスタウリン(Eli Lilly)、コンブレスタチン(Combrestatin)A4P(Oxigene)、ZD−6126(AstraZeneca)、フラボピリドール(Aventis)、CYC−202(Cyclacel)、AVE−8062(Aventis)、DMXAA(Roche/Antisoma)、チミタック(Thymitaq)(Eximias)、テモダール(テモゾロマイド、Schering Plough)およびレビリムド(Revilimd)(Celegene)ならびにその組合せから選択してもよい。
【0150】
他の抗癌剤は、以下の薬剤、CyPat(酢酸シプロテロン)、ヒステレリン(Histerelin)(酢酸ヒストレリン)、プレナイキシス(Plenaixis)(アバレリックスデポ剤)、アトラセンタン(ABT−627)、サトラプラチン(JM−216)、サロミド(サリドマイド)、テラトープ(Theratope)、テミリフェン(Temilifene)(DPPE)、ABI−007(パクリタキセル)、エビスタ(ラロキシフェン)、アタメスタン(Biomed−777)、ジオタックス(ポリグルタミン酸パクリタキセル)、タルジェティン(Targetin)(ベキサロチン(bexarotine))およびその組合せから選択してもよい。
【0151】
さらに、他の抗癌剤は、以下の薬剤、トリザオン(Trizaone)(ティラパザミン)、アポシン(Aposyn)(エキシスリンド(exisulind))、ネバスタット(Nevastat)(AE−941)、セプレン(ヒスタミンジヒドロクロライド)、オラセチン(ルビテカン)、ビルリジン、ガストリミューン(Gastrimmune)(G17DT)、DX−8951f(メシル酸エキサテカン)、オンコナーゼ(ランピルナーゼ)、BEC2(ミツモアブ(mitumoab))、エクサイトリン(Xcytrin)(モテキサフィン(motexafin)ガドリニウム)およびその組合せから選択してもよい。もう1つの抗腫瘍剤は、以下の薬剤、CeaVac(CEA)、ニュートレキシン(NeuTrexin)(グロクロン酸トリメトレセート(trimetresate))およびその組合せから選択してもよい。別の抗癌剤は、以下の薬剤、オバレックス(オレゴボマブ)、オシデム(Osidem)(IDM−1)、およびその組合せから選択してもよい。
【0152】
別の抗癌剤は、以下の薬剤、アドベキシン(ING 201)、ティラゾン(ティラパザミン)、およびその組合せから選択してもよい。別の抗癌剤は、以下の薬剤、RSR13(エファプロキシラール)、コタラ(Cotara)(131I chTNT 1/b)、NBI−3001(IL−4)およびその組合せから選択してもよい。別の抗癌剤は、以下の薬剤、キャンバクシン、GMKワクチン、PEGインテロンA(PEG Interon A)、タキソプレクシン(Taxoprexin)(DHA/パシルタキセル(paciltaxel))およびその組合せから選択してもよい。他の抗癌剤には、PfizerのMEK1/2阻害剤PD325901、Array BiopharmのMEK阻害剤ARRY−142886、Bristol MyersのCDK2阻害剤BMS−387,032、PfizerのCDK阻害剤PD0332991およびAstraZenecaのAXD−5438およびその組合せがある。
【0153】
さらに、mTOR阻害剤、例えばCCI−779(Wyeth)およびラパマイシン誘導体RAD001(Novartis)およびAP−23573(Ariad)、HDAC阻害剤SAHA(Merck Inc./Aton Pharmaceuticals)ならびにその組合せを利用してもよい。別の抗癌剤には、オーロラ2阻害剤VX−680(Vertex)、Chk1/2阻害剤XL844(Exilixis)がある。
【0154】
以下の細胞毒、例えば、エピルビシン(エレンス)、ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセル、ザインカード(デクスラゾキサン)、リツキシマブ(リツキサン)メシル酸イマチニブ(グリベック)、およびその組合せからなる群から選択される1個または複数個は、本明細書に記載の本発明組成物と併用することができる。
【0155】
本発明は、それだけには限らないが、エキセメスタン(アロマシン、Pfizer Inc.)、リュープロレリン(ルプロンまたはリュープリン、TAP/Abbott/Takeda)、アナストロゾール(アリミデックス、Astrazeneca)、ゴスレリン(gosrelin)(ゾラデックス、AstraZeneca)、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、クエン酸タモキシフェン(タモキシフェン、ノルバデックス、AstraZeneca)、カソデックス(AstraZeneca)、アバレリックス(Praecis)、トレルスター、およびその組合せを含む、ホルモン療法と一緒の本発明の組成物の使用も企図している。
【0156】
本発明はまた、それだけには限らないが、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール(フェマーラ、Novartis)、抗アンドロゲン物質、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、Casodex(登録商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド、ビカルタミド)およびその組合せを含む抗エストロゲン剤などのホルモン療法剤に関する。
【0157】
さらに、本発明は、本発明の組成物を単独あるいは1種もしくは複数の支持療法製品、例えば、フィルグラスチム(ニューポジェン)、オンダンセトロン(ゾフラン)、フラグミン、プロクリット、アロキシ、エメンド、またはその組合せからなる群から選択される製品と併せて提供する。
【0158】
特に好ましい細胞毒剤には、カンプトサー、エルビタックス、イレッサ、グリベック、タキソテールおよびその組合せがある。以下のトポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシン;イリノテカンHCl(カンプトサー);エドテカリン;オラセチン(Supergen);エキサテカン(Daiichi);BN−80915(Roche);およびその組合せは、抗癌剤として利用することができる。特に好ましいトポシメラーゼ(toposimerase)II阻害剤には、エピルビシン(エレンス)がある。
【0159】
本発明の組成物は、抗癌剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物由来抗癌剤、カンプトテシン誘導体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗体、インターフェロン、および/または生体応答修飾物質と一緒に使用してもよい。
【0160】
アルキル化剤には、それだけには限らないが、ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロマイド、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン(apaziquone)、ブロスタリシン(brostallicin)、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、フォテムスチン、グルフォスファミド、イホスファミド、KW−2170、マフォスファミド、およびミトラクトールが含まれ、白金配位アルキル化化合物には、それだけには限らないが、シスプラチン、パラプラチン(カルボプラチン)、エプタプラチン(eptaplatin)、ロバプラチン、ネダプラチン、エロキサチン(オキサリプラチン、Sanofi)またはサトルプラチン(satrplatin)およびその組合せが含まれる。特に好ましいアルキル化剤には、エロキサチン(オキサリプラチン)がある。
【0161】
代謝拮抗物質には、それだけには限らないが、メトトレキセート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、5−フルオロウラシル(5−FU)単独またはロイコボリンと併せて、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、エノシタビン、S−1、アリムタ(プレメトレキセド二ナトリウム(premetrexed disodium)、LY231514、MTA)、ジェムザール(ゲムシタビン、Eli Lilly)、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロフォラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノサイド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド、オクフォスファート、二ナトリウムプレメトレキセド(disodium premetrexed)、ペントスタチン、ペリトレキソール(pelitrexol)、ラルチトレキセド、トリアピン(triapine)、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、ビノレルビン;あるいは例えば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸など欧州特許出願第239362号に記載されている好ましい代謝拮抗物質の1つおよびその組合せが含まれる。
【0162】
抗生物質には、挿入抗生物質があるが、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アナマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン、エピルビシン、ガラルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチンおよびその組合せに限定されない。
【0163】
植物由来抗腫瘍物質には、例えば有糸分裂阻害剤、例えばビンブラスチン、ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセルおよびその組合せから選択されるものがある。
【0164】
細胞毒性トポイソメラーゼ阻害剤には、アクラルビシン、アモナフィド、ベロテカン(belotecan)、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカンHCl(カンプトサー)、エドテカリン、エピルビシン(エレンス)、エトポシド、エキサテカン、ギマテカン、ルルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン(pixantrone)、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド(tafluposide)、トポテカン、およびその組合せからなる群から選択される1種または複数の薬剤がある。
【0165】
好ましい細胞毒性トポイソメラーゼ阻害剤には、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカンHCl(カンプトサー)、エドテカリン、エピルビシン(エレンス)、エトポシド、SN−38、トポテカン、およびその組合せからなる群から選択される1種または複数の薬剤がある。
【0166】
免疫には、インターフェロンおよび多くの他の免疫強化剤が含まれる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα−2a、インターフェロン、α−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ−1a、インターフェロンγ−1b(アクトイミューン(Actimmune))、またはインターフェロンγ−n1およびその組合せがある。他の薬剤には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン(sizofilan)、TheraCys、ウベニメクス、WF−10、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、黒色腫ワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、OncoVAX−CL、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、ビルリジン、Z−100、エプラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)(Y−muHMFG1)、プロベンジ(Dendreon)およびその組合せがある。
【0167】
生体応答修飾物質は、生物の防御機構または組織細胞の生存、成長、もしくは分化などの生物学的応答を改変して、それらが抗腫瘍活性をもつように誘導する薬剤である。こうした薬剤には、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、ウベニメクスおよびその組合せがある。
【0168】
他の抗癌剤には、アリトレチノイン、アンプリゲン、アトラセンタン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エキシスリンド、フィナステリド、フォテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、1−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン(tazarotne)、テルサイタ(Telcyta)(TLK−286、Telik Inc.)、ベルケイド(ボルテマジブ(bortemazib)、Millenium)、トレチノイン、およびその組合せがある。
【0169】
他の抗血管新生化合物には、アシトレチン、フェンレチニド、サリドマイド、ゾレドロン酸、アンジオスタチン、アプリジン(aplidine)、シレングタイド(cilengtide)、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン、ハロフジノン、レビマスタット(rebimastat)、レモバブ(removab)、レブリミド、スクアラミン、ウクライン、バイタクシンおよびその組合せがある。白金配位化合物には、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびその組合せがあるが、それだけには限定されない。
【0170】
カンプトテシン誘導体には、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカン、SN−38、エドテカリン、トポテカンおよびその組合せがあるが、それだけには限定されない。他の抗癌剤には、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、トレチノインおよびその組合せがある。
【0171】
CTLA4(細胞障害性リンパ球抗原4)抗体など抗腫瘍免疫反応を増大させることができる抗癌剤およびCTLA4を遮断することができる他の薬剤、例えば、米国特許第6,682,736号に開示されているMDX−010(Medarex)およびCTLA4化合物;ならびに他のファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤、例えばファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤などの抗増殖剤も利用することができる。さらに、本発明で使用できる特異的CTLA4抗体には、その両方がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願60/113,647(1998年12月23日出願)、米国特許第6,682,736号に記載されているものがある。
【0172】
本発明で使用できる特異的IGF1R抗体には、その全体を参照により本明細書に組み込む、国際特許出願番号WO2002/053596に記載されているものがある。本発明で使用できる特異的CD40抗体には、その全体を参照により本明細書に組み込む、国際特許出願番号WO2003/040170に記載されているものがある。
【0173】
放射線治療に対してTNFαを発現するTNFerade(GeneVec)などの遺伝子治療剤は、抗癌剤として使用することもできる。
【0174】
本発明の一実施形態では、スタチンは、本発明の組成物と併用することができる。スタチン(HMG−CoA還元酵素阻害薬)は、アトルバスタチン(リピトール、Pfizer Inc.)、プロバスタチン(Provastatin)(プラバコール、Bristol−Myers Squibb)、ロバスタチン(メバコール、Merck Inc.)、シンバスタチン(ゾコール、Merck Inc.)、フルバスタチン(レスコール、Novartis)、セリバスタチン(バイコール、Bayer)、ロスバスタチン(クレストール、AstraZeneca)、ロボスタチン(Lovostatin)およびナイアシン(アドビコール、Kos Pharmaceuticals)、その誘導体および組合せからなる群から選択してもよい。好ましい実施形態では、スタチンは、アトボルスタチン(Atovorstatin)およびロバスタチン、その誘導体および組合せからなる群から選択される。抗癌剤として有用な他の薬剤には、カデュエットがある。
【0175】
本明細書に記載されているような併用は、前述の別の薬剤と同じ製剤中に本発明の組成物が存在するように哺乳動物に投与することができる。あるいは、このような併用は、別の薬剤が含まれている製剤と別の製剤中に本発明の組成物が存在するように、異常細胞増殖に関連する疾患状態を有する哺乳動物に投与することができる。本発明の組成物を別の薬剤と別々に投与する場合、こうした投与は、同時にまたは合間に適切な期間を空けて順次行うことができる。本発明の組成物を別の薬剤または複数の薬剤と同じ製剤中に含めるかどうかの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0176】
本発明の他の特徴および実施形態は、それらの意図する範囲を限定するためではなく、本発明を例示するために示した以下の実施例から明らかになるはずである。
【実施例】
【0177】
結晶性化合物Aの合成
多形形態IVと名付けられた結晶形の化合物Aを、以下の手順を用いて調製した。特に指示がない限り、以下の説明中の全ての温度は、摂氏度(℃)であり、特に指示がない限り、全ての部および百分率は重量による。
【0178】
多形形態IIIと名付けられた異なる多形形態の化合物Aから多形形態IVの化合物Aを調製した。酢酸エチル中で化合物Aのp−トルエンスルホン酸塩誘導体を中和し、続いて真空下に65℃で乾燥させることによって多形形態IIIの化合物Aを調製した。化合物Aのp−トルエンスルホン酸塩(421g)を0.84M NaHCO 1800mLおよび酢酸エチル1800mL中に懸濁させ、65℃で2時間撹拌した。固体をろ過によって捕集し、水1800mLおよび酢酸エチル800mLで洗浄し、実験室真空下に50℃で終夜乾燥させて酢酸エチル溶媒和物である多形形態IIIの化合物Aを得た。収率:92%(HPLC純度は99%超であった)。次いで多形形態IIIの化合物Aの試料(1.015kg)を酢酸中60℃で溶解させた。次いでこの溶液をろ過し、中真空によって濃縮した。キシレン6Lを60℃で加え、次いで十分な真空によって除去した。キシレン4Lを加え、次いで十分な真空下で除去し、続いて追加のキシレン4Lで処理した。次いでキシレンを十分な真空下で除去して多形形態IVの化合物Aを収率92%で得た。HPLC分析は、純度98.5%超を示した。
【0179】
多形形態IVをとる結晶性化合物Aの試料を、Bruker AXS D8 Advance回折計を備えた粉末X線回折(PXRD)を用いて検査した。バックグラウンド信号を示さないようにカップの底としてSi(511)プレートを取り付けたルーサイト試料カップ中に試料(約100mg)を詰めた。結晶方位の影響を最小限にするために30rpmの速度で試料をφ面で回転させた。X線供給源(KCuα、λ=1.54Å)を電圧45kVおよび電流40mAで操作した。連続検出器スキャンモード(continuoUSdetector scan mode)においてスキャンスピード1.8秒/ステップおよびステップサイズ0.04°/ステップで各試料のデータを27分間にわたって捕集した。2θ範囲4°〜30°にわたって回折図形を捕集した。図1は、多形形態IVの化合物AのPXRD回折図形を示す。
【0180】
(実施例1)
以下のように噴霧乾燥プロセスによって結晶性化合物Aから非晶質化合物Aを調製した。まず、多形形態IVをとる結晶性化合物A 100.0mgおよびメタノール100gを溶解させることによって噴霧液を生成した。この溶液を、Cole Parmer 74900シリーズ速度制御シリンジポンプによって1.3mL/minの速度で「小型」噴霧乾燥装置に注入した。化合物/ポリマー溶液を、加熱窒素流を用いて流量1SCFMでSpraying Systems Co.二流体ノズル、型番SU1Aを通して霧状にした。噴霧液を直径11cmのステンレス鋼チャンバー中に噴霧した。加熱窒素を、入口温度70℃でチャンバーに入れ、周囲出口温度で出した。得られた非晶質化合物Aをろ紙上に捕集し、真空下で乾燥させ、デシケーター中に貯蔵した。
【0181】
結晶性化合物Aに対して非晶質化合物Aの溶解性能を調べるためにin vitro溶解試験を行った。この試験では、全ての化合物が溶解すると化合物Aの濃度が200μgA/mLになるように十分な量の材料をマイクロ遠心試験管に加えた。試験を二通りに実施した。まず、0.5wt%メトセルAおよび5mg/mL HPMCAS−Hを含有するPBS 50μLを管中の試料に加え、ボルテックスミキサーを用いて混合して、構成用剤形のための経口用粉末を形作った。管を37℃に温度調節したチャンバーに入れ、7.3mMタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mM 1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含有する、pH6.5および290mOsm/kgのPBS 1.8mLをそれぞれの管に加えた。ボルテックスミキサーを用いて試料をすぐに約60秒間混合した。試料を37℃で1分間、13,000Gで遠心分離した。次いで得られた上清溶液からサンプリングし、1:6(体積による)にメタノールで希釈し、次いで上記のようにHPLCによって分析した。各管の内容物をボルテックスミキサーで混合し、次の試料を採取するまで37℃でそのまま置いておいた。試料を4、10、20、40、90、および1200分の時点で捕集した。
【0182】
結晶性化合物A単独で同様の試験を行い(実施例1)、全ての化合物が溶解すると化合物の濃度が200μgA/mLになるように十分な量の材料を加えた。
【0183】
これらの試料で得られた化合物Aの濃度を使用して、最初の90分間の化合物Aの最大溶解濃度(「MDC90」)および濃度対時間曲線下面積(「AUC90」)を決定した。この結果を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
この結果から、非晶形の化合物Aは、結晶性化合物A単独に対して濃度を増大させることがわかる。非晶形の化合物Aは、結晶性化合物Aによってもたらされた値の16倍であるMDC90と、結晶性化合物Aによってもたらされた値の5.7倍であるAUC90をもたらした。
【0186】
(実施例2)
10wt%化合物Aおよび90wt%の「H」グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(Shin Etsu、東京、日本から入手可能なHPMCAS−H、AQOAT−H)を含有する固体非晶質分散物は以下のように調製した。まず、以下のように結晶性化合物A 6.5g、HPMCAS−H 58.5g、およびメタノール8602gを含有する噴霧液を生成した。結晶性化合物Aを容器中のメタノールに加え、約2時間撹拌した。次に、HPMCAS−Hをこの混合物に直接加え、混合物をさらに2時間撹拌した。全ての材料を加えて溶解させた後、得られた混合物は、僅かに濁っていた。
【0187】
噴霧液をタンクに加え、圧縮窒素を用いて加圧して、溶液を、インラインフィルター(篩サイズ140μm)を通過させ、次いで噴霧乾燥チャンバー中に設置した圧力旋回噴霧装置(Schlick #1.5圧力ノズル)に移した。
【0188】
噴霧乾燥チャンバーは、3つの部分、先端部、長手部、および円錐部から構成されていた。先端部には、乾燥ガス入口および噴霧液入口が備えられていた。先端部には、噴霧乾燥チャンバー内に乾燥ガスを分散させるための上部多孔板および下部多孔板も含まれていた。乾燥ガスを、先端部にある上部チャンバー中に乾燥ガス入口を通って流量約400g/minおよび入口温度約135℃で入れた。噴霧液を、約85psigの圧力で加圧し、噴霧乾燥チャンバー中に噴霧液入口を通って流量約19g/minで供給した。圧力旋回噴霧装置は、下部多孔板の底面と面一に取り付けられていた。次いで噴霧液を、噴霧乾燥チャンバーの長手部内に噴霧した。長手部の直径は、10.5インチ(26.7cm)であり、長さは31.75インチ(80.6cm)であった。壁にくっつかないよう長手部の壁に到達する時までに霧状にした噴霧液が十分に乾燥しているように、乾燥ガスの流量および噴霧液を選択した。噴霧乾燥した粒子、蒸発させた溶媒、および乾燥ガスは、噴霧乾燥チャンバーを57℃の温度で出て、噴霧乾燥した粒子をサイクロンセパレータ中で捕集した。
【0189】
上記手順を用いて生成した固体非晶質分散物を、24時間減圧デシケーター中で後乾燥させた。試料を、上記で概説した手順によってブルカーAXS D8 Advance回折計を備えた粉末X線回折(PXRD)を用いて調べた。図2に示したこの分析の結果から、本質的に試料中の全ての化合物Aが非晶質であったことがわかった。
【0190】
固体非晶質分散物も示差走査熱分析(DSC)を用いて分析した。試料パンを<5%RHで平衡にし、圧着乾燥させ、TA Instruments DSC2920中に導入した。試料を2.5℃/minで−60℃から225℃まで加熱した。試料のガラス転移点をDSCスキャンから明らかにし、以下の表2に示す。非晶質化合物A(実施例1)、HPMCAS−H、および結晶性化合物Aの熱的性質も比較のために表に含まれている。データから、実施例2の固体非晶質分散物のガラス転移点は、純粋な非晶質化合物A(実施例1)と純粋なポリマーのものの中間であることがわかり、実施例2の組成物が均質な固体非晶質分散物であったことが示された。
【0191】
【表2】

【0192】
結晶性化合物Aに対して化合物Aの固体非晶質分散物の溶解性能を調べるためにin vitro溶解試験を行った。この試験では、全ての化合物が溶解すると化合物Aの濃度が200μgA/mLになるように十分な量の材料をマイクロ遠心試験管に加えた。試験を二通りに実施した。管を37℃に温度調節したチャンバーに入れ、7.3mMタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mM 1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含有する、pH6.5および290mOsm/kgのPBS 1.8mLをそれぞれの管に加えた。ボルテックスミキサーを用いて試料をすぐに約60秒間混合した。試料を37℃で1分間、13,000Gで遠心分離した。次いで得られた上清溶液からサンプリングし、1:6(体積による)にメタノールで希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。Waters C16カラムを用いてHPLC分析を行った。移動相は、HPOを用いてpH3に調整した65%20mMリン酸アンモニウム、および35%アセトニトリルから構成されていた。UV吸光度を350nmで測定した。各管の内容物をボルテックスミキサーで混合し、次の試料を採取するまで37℃でそのまま置いておいた。試料を4、10、20、40、90、および1200分の時点で捕集した。
【0193】
結晶性化合物A単独で同様の試験を行い(実施例1)、全ての化合物が溶解すると化合物の濃度が200μgA/mLになるように十分な量の材料を加えた。
【0194】
これらの試料で得られた化合物Aの濃度を使用して、最初の90分間の化合物Aの最大溶解濃度(「MDC90」)および濃度対時間曲線下面積(「AUC90」)を決定した。この結果を表3に示す。
【0195】
【表3】

【0196】
この結果から、化合物AおよびHPMCAS−Hの固体非晶質分散物は、結晶性化合物A単独に対して濃度を増大させることがわかる。固体非晶質分散物は、結晶性化合物Aによってもたらされた値の20倍であるMDC90と、結晶性化合物Aによってもたらされた値の16倍であるAUC90をもたらした。
【0197】
実施例2の固体非晶質分散物の剤形を、50wt%の固体非晶質分散物、15wt%クロスカルメロースナトリウム(AcDiSol、FMC Corp.、米国ペンシルバニア州Philadelphia)、および35wt%微結晶性セルロース(Avicel PH102、FMC Corp.から入手可能)を混合することによって作製した。混合物を形成するために、原料を計量し、ガラス容器に加えた。ステンレス鋼篩(孔径0.3cm)を容器内に配置し、ターブラーミキサーを用いて原料を40分間混合した。化合物A100mgの投与用に、カプセル(#11ブタゼラチン)にブレンドを2g充填した。
【0198】
(実施例3から5)
実施例1について概説した方法によって、表4に示したように異なる量および種類のポリマーを用いて固体非晶質分散物を調製し、その例外を表5に注記した。
【0199】
【表4】

【0200】
【表5】

【0201】
実施例3から5の固体非晶質分散物が化合物Aの濃度を増大させることを実証するために溶解試験を行った。実施例1と同様にしてin vitro溶解試験を行った(構成用の経口用粉末として投与した)。これらの試験では、全ての化合物が溶解すると化合物Aの濃度が200μgA/mLになるように十分な量の材料を加えた。これらの結果を表6に示す。純粋な非晶質化合物A(実施例1)および結晶性化合物A(実施例1)を用いた試験の結果と同様に、実施例2の固体非晶質分散物の結果は表6に含まれている。
【0202】
【表6】

【0203】
これらのデータから、実施例3から5の固体非晶質分散物は、結晶性化合物A単独(実施例1)のものに対して濃度を増大させることがわかる。実施例3から5の固体非晶質分散物は、結晶性対照の値の17倍〜34倍であるMDC90値と、結晶性対照の値の6.7倍〜10倍であるAUC90値をもたらした。
【0204】
(実施例6)
以下のプロトコルを利用して、絶食状態の雄のビーグル犬(n=4)を用いてin vivo試験を行った。化合物Aの錠剤および噴霧乾燥分散組成物(実施例2に記載した通り)を、以下の通りに雄のビーグル犬に投与した。1日目に化合物Aの噴霧乾燥分散組成物(約10mg/kg)を、4匹の絶食させた雄のビーグル犬の1グループに経口投与した。1週間のウォッシュアウト期間後、7日目に化合物Aの噴霧乾燥分散組成物(約0.3mg/kg)を、同じ4匹の絶食させた雄のビーグル犬に経口投与した。最後の3週間目に、化合物Aの自己乳化組成物(本出願の主題ではないが、2005年5月19日出願の、「VEGF−R阻害剤を含む自己乳化組成物」という題名が付けられた米国仮特許出願に記載されている代替製剤である)(約0.4mg/kg)を、同じ4匹の絶食させた雄のビーグル犬に経口投与した。自己乳化組成物および噴霧乾燥分散組成物を投与した研究を繰り返し、平均値を報告した。食事を与えたおよび絶食させた状態のイヌに錠剤組成物を経口投与した(8mg/kg)。絶食状態のイヌは、投与の前に終夜絶食させた(投与前最短12時間)。指定の時点(0、0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、および24時間)で静脈穿刺によってナトリウムヘパリンを含む管中に血液試料(約0.75mL)を採取した。液体クロマトグラフィー−タンデム型質量分析(LC−MS/MS)によって薬物動態データを測定し、全ての試験の平均値を表7に示す。自己乳化組成物について得たデータは、表7に示されていないが、2005年5月19日出願の、「VEGF−R阻害剤を含む自己乳化組成物」という題名が付けられた米国仮出願に見つけることができる。表中、Cmax/Dは、投与量で標準化した化合物Aの最大観察血漿濃度であり、AUCint/Dは、投与量で標準化したAUCであり、それぞれの標準偏差が括弧内に示されており、C.V.は、AUCint/DおよびCmax/Dの変動係数(標準偏差/平均値×100)である。
【0205】
これらの試験に使用した本質的に結晶性化合物Aからなる錠剤は以下のように調製した。ポビドン(4%、w/w)を水(5回、w/w)に溶解して、粗砕するための溶液を生成した。その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2004年11月2日出願の米国仮特許出願60/624,665に記載されているように、多形形態IVの化合物Aを、高シヤー粗砕機中でラクトース(25%、w/w)、コーンスターチ(16%、w/w)、および少しのクロスカルメロースナトリウム(2%、w/w)と混合した。混合物をドライブレンドし、次いでポビドン溶液と一緒に粗砕した。粗砕物をまず2分間湿らせ、5%以下の乾燥減量値まで60℃で乾燥させた。次いで材料を篩サイズ045Rで乾式粉砕した。粉砕した材料を残りのクロスカルメロースナトリウム(3%、w/w)および微結晶性セルロース(12%、w/w)と一緒にブレンドした。ブレンドした混合物をステアリン酸マグネシウム(1%、w/w)と一緒に再度ブレンドした。最後に、混合物を錠剤圧縮装置を用いて圧縮して錠剤を生成した。
【0206】
実施例2に記載されているように、50wt%の分散物、15wt%Ac−Di−Sol、および35wt% Avicel PH102をブレンドし、ゼラチンカプセル中に充填することによって、HPMCAS−H中10wt%化合物Aの固体非晶質分散物を含有するカプセル剤を調製した。
【0207】
【表7】

【0208】
これらの結果から、絶食条件下で投与した対照組成物と比較して固体非晶質分散物の形態で送達したとき、化合物Aの全身曝露が増大したことがわかる。本発明の固体非晶質分散物は、結晶性化合物A対照組成物によってもたらされた値の9〜10倍である投与量で標準化したCmaxと、対象の値の4〜12倍である投与量で標準化したAUC値をもたらした。結果から、固体非晶質分散物が、結晶性薬物に対して薬物動態の変動の著しい低減をもたらしたこともわかる。本発明の組成物10mg/kgによってもたらされたCmaxC.V.値は、対照組成物によってもたらされた値の64%未満であったが、本発明の組成物0.3mg/kgによってもたらされたCmaxC.V.値は、対照組成物によってもたらされた値の76%未満であった。本発明の組成物10mg/kgによってもたらされたAUC C.V.値は、対照組成物によってもたらされた値の64%未満であったが、本発明の組成物0.3mg/kgによってもたらされたAUC C.V.値は、対照組成物によってもたらされた値の92%未満であった。
【0209】
本明細書に引用されている全ての公開、特許、および特許出願は、それぞれ個別の公開または特許出願を参照により組み込むことが具体的および個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。明確な理解のために前述の発明は例示および実施例によって少し詳しく記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなくいくつかの変更および修正形態がそれに対して作製できることが本発明の教示を考慮に入れた当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】多形形態IVの結晶性化合物AのX線回折図である。
【図2】実施例2の固体非晶質分散物のX線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Aまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、前記化合物の少なくとも一部分が非晶質である、組成物。
【請求項2】
前記化合物の少なくとも75wt%が非晶質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がマトリックスをさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物および前記マトリックスが固体非晶質分散物の形態である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックスが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレートおよびセルロースアセテートイソフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロース、ならびにその混合物からなる群から選択される、請求項3または4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記マトリックスが、カルボン酸官能化ポリメタクリレート;カルボン酸官能化ポリアクリレート;アミン官能化ポリアクリレート;アミン官能化ポリメタクリレート;タンパク質;カルボン酸官能化デンプン;ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、および環状アミドからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;少なくとも1つの親水性ヒドロキシル含有繰返し単位および少なくとも1つの疎水性アルキルまたはアリール含有繰返し単位からなるビニルコポリマー;それらの繰返し単位の少なくとも一部分が非加水分解性形態であるポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリビニルアセテートコポリマー;ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー;およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ならびにその混合物からなる群から選択される、請求項3または4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物であって、前記化合物の少なくとも一部分が非晶形であり、また前記組成物が、in vitroの水性使用環境に投与した場合に、
(a)対照組成物によってもたらされる値の少なくとも1.25倍である前記使用環境における前記化合物の最大溶解濃度と、
(b)前記対照組成物の値の少なくとも1.25倍である、前記使用環境への導入の時間と前記使用環境への導入後270分の間の少なくとも90分の任意の期間の前記使用環境における前記化合物の濃度対時間曲線下面積(AUC)
のうち少なくとも一方をもたらし、
前記対照組成物が当量の多形形態IVの前記化合物のみから本質的になる、組成物。
【請求項8】
前記化合物および前記マトリックスが固体非晶質分散物の形態である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物の少なくとも75wt%が非晶質である、請求項7または8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物であって、前記化合物の少なくとも一部分が非晶形であり、またin vivoの使用環境に投与した場合に、前記組成物が、
a)対照組成物によってもたらされる値の少なくとも5倍である血漿または血清中の前記化合物の投与量で標準化したAUC値と、
b)前記対照組成物によってもたらされる値の少なくとも5倍である血漿または血清中の前記化合物の投与量で標準化したCmax
のうち少なくとも一方をもたらし、
前記対照組成物が前記医薬組成物と同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる、組成物。
【請求項11】
化合物A、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、およびマトリックスを含む医薬組成物であって、前記化合物の少なくとも一部分が非晶形であり、また複数の対象でin vivoの使用環境に投与した場合に、前記組成物が、
a)対照組成物によってもたらされるAUC変動係数の90%未満であるAUC変動係数と、
b)前記対照組成物によってもたらされるCmax変動係数の90%未満であるCmax変動係数
のうち少なくとも一方をもたらし、
前記対照組成物が前記医薬組成物と同様の条件下で投与され、多形形態IVの化合物Aから本質的になる、組成物。
【請求項12】
それを必要とする哺乳動物の異常細胞増殖を低減させる方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項13】
医薬組成物を調製する方法であって、
(a)溶媒を含む噴霧液中に化合物を溶解させるステップと、
(b)前記噴霧液から前記溶媒を急速に蒸発させて非晶形の前記化合物を得るステップ
を含み、
前記化合物が6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である、方法。
【請求項14】
前記噴霧液がマトリックスをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックスが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレートおよびセルロースアセテートイソフタレートからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−540629(P2008−540629A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511809(P2008−511809)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001295
【国際公開番号】WO2006/123223
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】