説明

非晶質および改善された溶解性を有する、固体支持体上の医薬品有効成分

本発明は、固体支持体が、水不溶性の粒子形態にあり、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される材料を含み、医薬品有効成分(API)が、水中または水溶液中においてAPIが低い溶解性を有する原因となる少なくとも1つの疎水性の構造的部分、および前記固体支持体に対して複数の分子間相互作用(極性もしくはイオン性または水素結合が関与する。)を形成するように配置される複数の親水性基の両方を含む化合物であり、APIの親水性基が、独立して同じでありまたは異なり、OH基およびハロゲン基から成る群の内少なくとも1つを含み;前記APIが吸着によって前記固体支持体に結合しており、前記APIの大部分の割合が非晶質状態にある、APIおよび薬学的に許容される固体支持体を含む組合せ調製物を開示する。本発明はまた、そのような組合せ調製物を含む医薬製剤およびそのような組合せ調製物を製造する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性の医薬品有効成分(API)と薬学的に許容される固体支持体の組合せに関する。本発明はさらに、そのような組合せ調製物を含む医薬製剤、およびこのような組合せ調製物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品有効成分(API)、すなわち、治療活性化合物(成分)として医薬品に使用すること意図した物質または化合物は、水中または水溶液中または使用環境における低溶解性の問題が往々にして伴う。過去において、APIの溶解性を向上させる様々な試みがなされてきた。
【0003】
例えば、EP129893Aは、難溶性の結晶性薬物と吸着剤との粉砕混合物を調製することにより、溶解性を向上させることを提案している。吸着剤としては、活性炭、活性白土、シリカ、合成吸着樹脂、活性アルミナおよび他の生理学的に許容される吸着剤などの固体支持体が挙げられている。
【0004】
WO03/000238Aは、冒頭部において、吸着物の形成により溶解性を向上させる従来の試みについて言及し、次に、対応する低溶解性薬物および固体基材を含有する懸濁液から、噴霧乾燥などの有機溶媒の急速蒸発によって、固体支持体上に主に非晶質形態で活性薬物を吸着させる場合に、低溶解性のAPIの向上した溶解性について教示している。APIは、好ましくはCCR1阻害剤またはCETP阻害剤であり、広範囲の無機支持体およびポリマー支持体が想定されている。該文献はさらに、薬物と基材との間の相互作用に影響を及ぼすために、基材に結合している置換基の末端基を変えることなどで、基材の表面が様々な置換基で修飾され得ることを教示している。薬物が疎水性の場合、薬物の基材への結合を向上させるために、疎水性の置換基を有する基材を選択することが望ましくなり得ることを、該文献は示している。濃度を高めるポリマーは、好ましくは、基材に対して薬物と共吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第129893号明細書
【特許文献2】国際公開第03/000238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、APIと薬学的に許容される固体支持体との組合せの性能を向上させることであった。特に、水中または水溶液中における、同じAPIの遊離形態の溶解性と比較して向上した溶解性が達成され、構造的に異なる構成にもかかわらず、システムの経済性を向上させながら、様々な可能性のあるAPIに適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1に記載の組合せ調製物の提供によって解決される。好ましい実施形態は、これに対する従属請求項に示される。本発明はさらに、それぞれ請求項15および16による、本発明の組合せ調製物を含む医薬製剤およびこのような組合せ調製物を製造する方法を提供する。好ましい製造方法は従属請求項17に示される。
【0008】
本発明によると、吸着されたAPIが主として非晶質状態にあることを確実にするためばかりでなく、APIと固体支持体との間に、適切な結合(有機溶媒中)、しかし、比較的速く効果的な分離(水中、水性溶媒中または使用環境において)を達成するために相乗的に作用すると思われるAPIと固体支持体との間の特異的で協奏的相互作用を特に提供するために、固体支持体のタイプおよび性質だけではなく、APIの構造中に存在している疎水性の構造的部分と親水性基の適切な比と固体支持体とを組み合わせることも特に重要であることが驚くべきことに分かった。APIの親水性基は、OH基およびハロゲン(Hal)基の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、特に、OHおよびHal(特にFおよび/またはCl)の各々の少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上の基で決まるので、吸着プロセス中に、複数の強力な水素結合および極性基またはイオン基相互作用が形成され(この理由で、緩慢な蒸発吸着プロセスのほうが急速な蒸発より好ましい。)、この形成のため、続いて水性環境におかれた時、水分子を可溶化するための多部位の相互作用点が可能になり、それにより、比較的遊離形態のAPI自体が水中または水溶液中において低い溶解性を有する原因となる疎水性の構造的部分の存在にも関わらず、著しく増加した溶解性が可能になる。
【0009】
その上、明らかに、APIの適切な親水性基と、表面にOH基を有する特定の固体支持体との間の極性もしくはイオン性の分子間相互作用または水素結合の複数部位の存在によって、API間の規則的な相互作用が妨害される可能性があり、したがってAPIの結晶化が阻害され、それにより、吸着されたAPIの非晶質割合の増加を確実にし、このことが、次に所与のAPIのより高い溶解性にさらに貢献する。さらに驚くべきことに、この高い溶解性は、吸着プロセス中に通常に蒸発する有機溶媒を用いても達成することができ、これによって、噴霧乾燥、スプレーコーティング、急速混合沈殿または熱溶融押出法による急速な溶媒蒸発などの特別なプロセス要件が不要になる。これは、特にシステムの経済性に貢献する。
【0010】
本発明の組合せ調製物の好ましい実施形態によれば、APIと固体支持体との間の相互作用を達成することが可能であり、この相互作用は、所与のAPI単独の対応遊離形態のいずれの遷移特性も示さないような、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより特徴付けることができる。非晶質の高い割合が確保され、吸着されたAPIの少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のレベルに達し、100%の非晶質状態にさえ達する。そうでなければ疎水性が高く、したがって水中または水溶液中において低い溶解性を示すが、複数のOH基およびハロゲン基が存在する場合、特にOH基およびHal(FまたはCl)置換基の各々の1、2、3つまたはそれより多くが組み合わされる時は、特定の固体支持体上で吸着されたAPIの全量または完全量でさえ本質的に非晶質になり、その結果著しく向上した溶解性を示すことが分かった。この点において、選択されたAPIと特定の固体支持体の親水性基との間の二重型および多重型の相互作用は、有利であると考えられる。
【0011】
本発明による組合せ調製物は、選択されたAPIの水中または水溶液中における溶解性が、結合しておらず非晶質か結晶のどちらかである同じAPIの基準遊離形態に対して、同じ水溶液中で少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、および少なくとも3.0倍にさえ上昇していることを示すことで、有益な特徴を提供する。前述の著しい溶解性の上昇は、より好ましくは、同じAPIと同じ固体支持体との物理的混合物の形態に対して(すなわち、吸着処理を行わない比較)もまた、相対的に有効である。
【0012】
したがって、本発明は、請求項1に記載の、より好ましくは、その従属請求項に記載の特定の固体支持体および選択されたAPI両方の構造的要件を遵守する場合、固体支持体上に吸着された非晶質APIの高い割合、水中および水溶液中ならびに使用環境における向上した溶解性を実現することにより改善した性能を、システムの経済性および合理的な限度内で適切なAPIを選択する自由度と組み合わせて示す、有益で信頼できるプラットフォーム技術を提供する。
【0013】
以下において、本発明、その概念および原理、ならびに好ましい実施形態および例示的例をより詳細に説明するが、これらの特定の実施形態および例は例示的な目的のみのためにあり、本発明を制限することを意図しないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ケイ酸支持体上に吸着されたAPI(15%の質量分率のエゼチミブ)を、同量、同種のAPIと同じケイ酸支持体との物理的混合物(すなわち、吸着されていない形態)の比較試料、ならびに非晶質の遊離APIおよび結晶質の遊離APIと、それぞれ水中において比較した溶解プロファイルを示すグラフである。
【図2】2重量%のコロイド状ヒュームドシリカ、および98重量%の微結晶セルロースを含有するケイ化微結晶セルロース上に吸着されたAPI(5%の質量分率のエゼチミブ)を、同じAPIの結晶質遊離形態と、それぞれ水中において比較した溶解プロファイルを示すグラフである。
【図3】ケイ酸固体支持体に吸着されたAPI(5%の質量分率のアトバコン)を、同じAPIの結晶質遊離形態と、それぞれ10mMトリエチルアミン/HCl(pH=10)バッファーにおいて比較した溶解プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本プラットフォームは、少なくとも1つの疎水性の構造部分を有するように選択され、そのため、APIそれ自体は、水中または水溶液中において溶解性が低く、したがって、溶解性増大が重要になるAPIに適用できる。例えば、APIが低い溶解性を有する原因となる疎水性の構造的部分は、通常、それぞれ直鎖か分枝鎖のアルキル、アルキレン、アルキン、これらの環式形態および/または芳香族形態(フェニル、ナフチルを含む。)を有し、これらの部分は、場合によって置換されているまたはO、N、Sなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含有する。
【0016】
少なくとも1つの疎水性の構造的部分の存在により、本発明の概念を、水中または水溶液中において低溶解性のAPIに、有益に適用できる。例えば、本発明に有用に適用される低溶解性APIは、水中(20℃、pH=約7−8)における溶解性が、約10mg/ml以下、好ましくは約1mg/ml以下、より好ましくは約100μg/ml以下、特に約10μg/ml以下である。本発明に有用なAPIの疎水性に関する別の指標として、これらのlogP値(オクタノール−水)は、典型的には、約3以上、好ましくは約4以上の範囲にあり、さらに約6以上の範囲にもある。
【0017】
加えて、選択されたAPIは、複数、すなわち、少なくとも2つ、好ましくは3、4、5、6、7、8つまたはそれより多くの親水性基を含有する。選択されたAPIに結合するこれらの親水性基の中で、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、特に4つ以上の親水性基が、OH基およびハロゲン基から選択される。より好ましくは、APIは、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のOH基を有し、FおよびClの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を有する。前述の親水性基は、好ましくはAPIの構造全体にわたり分布しており、すなわち、化合物全体の異なる位置およびセクションで結合している。APIは、好ましくは、特定の固体支持体の親水性OH基に対して、極性、イオン性、双極子−双極子または水素結合の相互作用を形成しやすいさらなる親水性基(これらの基は、前述のOHおよびハロゲン基とは異なっている。)を有している。これらの他の基としては、好ましくはアミノ基、アミド基、カルボン酸基、エステル基、キノリン、β−ジケトン基、カルボニル基、スルフォニル基、スルフォンアミノ基、スルフォンアミド基およびスルホネート基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の基自体は、好ましくはAPIの異なる位置に配置されている。
【0018】
選択されたAPIと特定の固体支持体との間の相互作用点の分布は、別の関連要因である。低溶解性APIの支持体への結合および解離は、API内の構造的な構成が少なくとも3つの同じまたは異なる疎水性の構造的部分を有し、これらの各々に対し、上記に定義した親水性基の少なくとも1つ、および好ましくはOH基またはハロゲン基の少なくとも1つがそれぞれ結合する場合に、適切に平衡を保つ。
【0019】
本発明によれば、向上した溶解性を依然として提供しながら、選択されたAPIの相当量を、特定の固体支持体に接着させることができる。適切な吸着率は、最大50重量%、好ましくは最大20重量%、さらに好ましくは最大15重量%、特に最大10重量%である。低い吸着率の限度としては、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%が適切である。
【0020】
代表的なAPIとして、以下の式:
【0021】
【化1】

に示したエゼチミブ(1−(4−フルオロフェニル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシ−プロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)−アゼチジン−2−オン)、およびアトバコン(3−[4−(4−クロロフェニル)シクロヘキシル]−4−ヒドロキシ−ナフタレン−1,2−ジオン)を使用した時の組合せで、本発明による特定の効果が達成されることが分かった。
【0022】
試験を行ったAPIの、本質的に異なる実際の構造にもかかわらず、疎水性および親水性両方の性質を示す共通の特徴により、本発明の概念、および上記に説明した本発明の好ましい実施形態が確認される。正反対の構造的特徴(すなわち、特定の固体支持体と多様な相互作用部位を形成する適切な親水性基を有する、疎水性の構造単位)の特定の構成および分布のため、本発明の概念による他の対応するAPIにより、同様な効果が達成可能である。
【0023】
したがって、本発明のプラットフォーム技術は、例えば、チロキシン、ベンズヨーダロン、アミオダロン、エノキサシン、3−ヒドロキシ−2−(1,3−インダンジオン−2−イル)キノリン、エスケタミン、エタクリン酸、クロロフェノタン、フェノテロール、1,8,9−アントラトリオール、シプロテロン、フルタミド、クレンブテロール、ブロモクリプチン、ベンペリドール、フルバスタチン、プラバスタチンおよびロバスタチンなどのスタチン、カルベジロール、メフロキン、ラミプリル、フロセミド、ピレタニド、ペンタゾシン、ミコナゾール、トリシクロヘキシルスズヒドロキシド、モネンシン、プレドニムスチン、ミソプロストール、クロピモジド、ブロジファクム、イトラコナゾール、メチプラノロール、ヒドロキシクロロキン、フルチカゾンなどの他のAPIに適用可能であるが、これらに限定されない。
【0024】
水素結合が関与する多数の相互作用部位を形成するためのさらなる関連要件として、固体支持体は、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される材料を含む。固体支持体のこの材料成分は、構造式、Si(OH)、SiO×nHO、Al(OH)、Al×nHO、Ti(OH)またはTiO×nHO(nは、それぞれ整数である。)、ならびに親水性基を引き続き有しているこれらの無水形態により定義される。親水性基は、好ましくは、支持体粒子の外側または内側の細孔表面に存在する。特に好ましいものは、ケイ酸およびとりわけこの軽質無水形態であり、好ましくはヒュームドシリカ、シリカシェル(中空形態のケイ酸粒子)、ポリケイ酸(SiO×nHO)、シリカゲルであり、さらにオルトケイ酸、メタケイ酸、メソジケイ酸、メソトリケイ酸、メソテトラケイ酸などが挙げられる。さらに想定されるものは、成分としてケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される前述の材料の少なくとも1つを含む混合物またはコア/シェル構造もしくはコア/コーティング構造である。
【0025】
ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される上記の材料は、好ましくは微粒子形態であり、適切には、少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nmの平均(一次)粒子径を有し、適切には、500μmまで、好ましくは200μmまで、より好ましくは100μmまでの範囲である。好ましい平均(一次)粒子径は、7nmから1μm、より好ましくは10nmから100nmの範囲である。一次粒子は、凝集体を形成してもよくまたは他の水不溶性の支持体材料と混合されてもよい。ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される微粒子形態の材料は、少なくとも10m/g、好ましくは少なくとも50m/g、およびより好ましくは少なくとも150m/gの比BET表面積を有するのが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態によれば、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される微粒子形態の材料は、さらなる固形、親水性および粒状の支持体マトリックスと混合され、および好ましくはこれらに接着される。この追加の支持体マトリックスは、医薬添加剤として、追加の機能、特に流動性および場合によって他の添加剤機能の向上に役立つ。特に好ましい追加の固体支持体マトリックスは、微結晶のセルロースである。本発明のための固体支持体として、有益に使用可能な固体支持体全体を提供する一例は、コロイド状ヒュームドシリカおよび微結晶セルロースを含むケイ化微結晶セルロースである。
【0027】
本発明の効果を効果的に示すためには、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される材料は、親水性であり、したがって、疎水化処理により修飾されるべきではなく、より好ましくは、API以外の物質は、本発明による組合せ調製物に使用される特定の固体支持体上に共吸着されない。このこともまた、システムの経済性を向上させる。
【0028】
本発明による上記の組合せ調製物を製造する好ましく有益な方法として、特定の固体支持体、選択されたAPIおよび該APIを溶解する有機溶媒を含む懸濁した溶液を提供するステップ、次に蒸発により有機溶媒を除去するステップおよび続いて吸着によって固体支持体に結合したAPIを有する組合せ調製物(ここで、APIの大部分の割合が非晶質形態にある。)を得るステップがある。懸濁した溶液を提供するために、APIは、好ましくは最初に有機溶媒中に溶解され、続いて固体支持体がそこに加えられる。適切な溶媒の例としては、t−ブチル−メチル−ケトンなどのジアルキルケトン、ヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソオクチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチルアセテート、アセトニトリル、エタノール、テトラクロロエチレン、クロロホルムおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁液は、好ましくは吸着ステップ中に振盪される。次に、有機溶媒は通常大気または不完全真空で蒸発により除去される。蒸発は、適切には有機溶媒が少なくとも30分、より好ましくは少なくとも2時間の間に、ゆっくりと適切に蒸発されるように行われるのが好ましい。緩慢な蒸発は、特定の固体支持体と特定のAPIとの間の良好に指向された相互作用に寄与し、吸着プロセスをより効果的および十分なものとなることを可能にすることが推定される。その上、構造的要件および緩慢な蒸発プロセスの両方は、単層形成を促進し、これにより、水中、水溶液または使用環境における後続の可溶化ステップに好ましい状況を確立することが推定される。加えて、本発明による組合せ調製物を製造する方法は、非経済的、複雑および面倒なプロセスステップならびに装置(これらは、別の方法では、急速蒸発、粉砕混合または熱押出プロセスに必要になる。)を有益に回避する。
【0029】
本発明による組合せ調製物は、医薬製剤として有益に使用される。特定の選択されたAPIにより通常治療される疾患は効果的に治療され、本発明による固体支持体上に特異的に吸着された形態が、著しく向上した溶解性を提供するという関連利点を伴う。結果として、選択されたAPIの生物学的利用能も向上させることができる。
【0030】
本発明に従ってそのように得られる組合せ調製物を使用することに加えて別法では、代わりに活性APIを固体支持体から解離させ、続いて、水溶液中に溶解した遊離形態で治療に使用してもよい。著しく増大した溶解性のため、特定の固体支持体との組合せは、医学的応用のための有益なビヒクルとして役立つ。
【0031】
上記に記載した組合せ調製物を含む医薬製剤は、薬学的に許容される添加剤をさらに含有してもよい。
【0032】
医薬製剤は、上記に記載した組合せ調製物の他に、固体支持体上に吸着されたAPIとは異なるさらなる活性薬物を含んでもよい。
【0033】
薬学的に許容される添加剤は、使用する場合、個々に選択されるAPIに関連して一般に使用されるものから選択してもよい。この選択はまた、特に経口投与または他の任意の適切な投与形態を含むがこれに限定されない個々に適切な投与によって決めてもよい。これに対応して適切な製剤(formulation)および剤形も選択することができ、錠剤、丸剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、オイル、別種固形状、半固形状、ゲル状もしくはヒドロゲル様または液状の形態、散剤、軟膏剤、クリーム剤、オイル、放出調節剤形などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明による組合せ調製物を含有する医薬製剤は、好ましくは経口投与形態として製剤化される。好ましい実施形態によれば、選択されたAPIの吸着に使用される支持体材料は、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される結合支持体を含有するだけではなく、その上、流動性などのさらなる添加剤機能を発揮する。この実施形態の場合、使用可能な固体支持体を形成するために、ケイ酸、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化チタンを、微結晶セルロースと混合させるのが最も好ましく、所望する場合、医薬製剤全体のためのさらなる添加剤を省略することができる。
【0034】
本発明の組合せ調製物はさらに、それぞれのAPIのための適切な貯蔵形態を提供する。その上、本発明の方法に従って適用することができる、吸着プロセス中の比較的緩やかな条件は、所与のAPIの安定性に有利である。
(実施例)
【実施例1】
【0035】
エゼチミブ(logP/疎水性値は4.584)0.15gを、t−ブチルメチルエーテル中20%ヘキサン混合物50ml中に溶解し、0.85gのヒュームドシリカ(Aerosil(商標)200)を加えた。エゼチミブの質量分率は15%であった。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【実施例2】
【0036】
エゼチミブ0.05gを、t−ブチルメチルエーテル中20%ヘキサン混合物20ml中に溶解し、微結晶セルロース(MCC;98%)(Prosolv(商標))上のコロイド状2酸化ケイ素(CSD;2重量%)0.95gを加えた。エゼチミブの質量分率は5%であった。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【実施例3】
【0037】
アトバコン(logP/疎水性値は5.251)0.05gを、t−ブチルメチルエーテル中10%ヘキサン混合物20ml中に溶解し、ヒュームドシリカ(Aerosil(商標)200)0.95gを加えた(アトバコンの質量分率は5%であった。)。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【実施例4】
【0038】
試料は、示差走査熱量測定(DSC)、動的蒸気収着測定(DVS)および粉末X線回折(XRPD)を用いて分析した。
【0039】
DSCおよびDVSから得られた結果は、APIと固体支持体との間に相互作用が存在することを示した。DSCサーモグラムは、APIの遷移特性を示さなかった。加えて、吸湿性は、APIおよび固体支持体の物理的混合物に比べて低い。さらに、APIの存在による固体支持体の比表面積の減少が観察された。これらの結果により、固体支持体上でAPIの吸着が行われることが確認される。
【0040】
XRPDを用いて、AerosilおよびProsolv上のエゼチミブ(実施例1および2)の場合、APIは非晶質であり、他方、aerosil上のアトバコン(実施例3)の場合、少量の結晶質APIが検出されることが確認された。
【0041】
3つ全ての試料において、固体支持体上のAPIは、著しく向上した溶解性を示した。これらの結果は、表1−3、および図1−3に示されている。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品有効成分(API)および薬学的に許容される固体支持体を含む組合せ調製物であって、
前記固体支持体は、水不溶性の粒子形態にあり、ならびにケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される材料を含み、
前記APIは、水中または水溶液中でAPIが低い溶解性を有する原因となる少なくとも1つの疎水性の構造的部分、および前記固体支持体に対して複数の分子間相互作用(極性もしくはイオン性または水素結合が関与する。)を形成するように配置された複数の親水性基の両方を含み、APIの親水性基は、独立して同じでありまたは異なり、ならびにOH基およびハロゲン基から成る群の内少なくとも1つを含み、
前記APIが吸着により前記固体支持体に結合しており、ならびに前記APIの大部分の割合が非晶質状態にある、
組合せ調製物。
【請求項2】
前記固体支持体およびこの上に吸着している前記APIの組合せが、同じ水溶液中の同じAPIの基準遊離形態に対して、少なくとも1.5倍増大した水中または水溶液中における溶解性を示す、請求項1に記載の組合せ調製物。
【請求項3】
組合せ調製物の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムが、前記API単独の対応する遊離形態のいかなる遷移特性も示さないような、前記APIと前記固体支持体との間の相互作用によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の組合せ調製物。
【請求項4】
前記APIが、OH基およびハロゲン基から選択される、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは4つ以上の親水性基を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項5】
前記APIが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのOH基、および少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのハロゲン基の両方を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項6】
前記APIが、OH基およびハロゲン基以外の他のさらなる親水性基を有し、前記他の基はキノリン、β−ジケトン基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基およびエステル基から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項7】
前記APIが、以下の構造的構成:
・独立して同じでありまたは異なる、少なくとも3つの疎水性部分の存在;
・疎水性部分の少なくとも2つの各々が、それぞれ前記親水性基の少なくとも1つに結合していること
によって特徴付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項8】
前記APIがエゼチミブである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項9】
前記APIが、アトバコンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項10】
前記固体支持体材料がケイ酸を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項11】
前記固体支持体材料が、ヒュームドシリカまたはコロイドシリカを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項12】
前記固体支持体が、ケイ化微結晶セルロースである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項13】
前記API以外の物質が、前記固体支持体上に共吸着していない、請求項1から12のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項14】
請求項16または17に記載の方法によって得ることができる、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せ調製物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に定義される組合せ調製物を含む医薬製剤。
【請求項16】
医薬品有効成分(API)および薬学的に許容される固体支持体を含む組合せ調製物を製造する方法であって、
a)・親水性の粒子形態にあり、ならびにケイ酸、水酸化アルミニウムおよび水酸化チタンから選択される材料を含む固体支持体、
・水中または水溶液中においてAPIが低い溶解性を有する原因となる、少なくとも1つの疎水性の構造的部分、および固体支持体に対して複数の分子間相互作用(極性もしくはイオン性または水素結合が関与する。)を形成するように配置される複数の親水性基の両方を含み、APIの親水性基は独立して同じでありまたは異なり、OH基およびハロゲン基から成る群の内少なくとも1つを含むAPI、および
・前記APIを溶解する有機溶媒
を含む懸濁した溶液を提供するステップ、
b)前記有機溶媒を蒸発によって除去するステップ、および
c)前記APIの大部分の割合が非晶質状態にある、吸着によって前記固体支持体に結合した前記APIを有する組合せ調製物を得るステップ
を含む、方法。
【請求項17】
前記ステップ(b)が、約30分超の間の前記有機溶媒の緩慢な蒸発によって行われる、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−506561(P2011−506561A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538727(P2010−538727)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067875
【国際公開番号】WO2009/080698
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】