説明

非晶質アトルバスタチンのアニーリングプロセス

非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセスを記載する。また、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンを含む医薬組成物および配合物も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質アトルバスタチンのアニーリングプロセス、ならびにアニーリング済み非晶質アトルバスタチンを含む組成物および医薬配合物に関する。アニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、アニーリングされていない非晶質アトルバスタチンより安定である。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA(HMG−CoA)のメバロン酸塩への転換は、コレステロール生合成経路中の初期および律速の段階である。このステップは、酵素HMG−CoAレダクターゼによって触媒される。スタチンは、HMG−CoAレダクターゼがこの転換を触媒することを阻害する。したがって、スタチンは、全体として有力な脂質低下剤である。
【0003】
アトルバスタチンおよび薬剤学的に許容できるその塩は、HMG−CoAレダクターゼの選択的な競合阻害剤である。アトルバスタチンカルシウムは、現在、化学名[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)三水和物を有し、次式で表される、LIPITOR(登録商標)として販売されている。
【0004】
【化1】

したがって、アトルバスタチンカルシウムは、有力な脂質低下化合物であり、すなわち、抗高脂血症剤および/または低コレステロール血症剤として有用である。また、アトルバスタチンカルシウムは、骨粗しょう症、前立腺肥大症(BPH)、およびアルツハイマー病の治療に有用である。
【0005】
多数の特許および公表済み国際特許出願公開が、アトルバスタチン、アトルバスタチンの配合物、ならびにアトルバスタチンを調製する方法および主要な中間体を記載している。これらには、米国特許第4,681,893号、同第5,273,995号、同第5,003,080号、同第5,097,045号、同第5,103,024号、同第5,124,482号、同第5,149,837号、同第5,155,251号、同第5,216,174号、同第5,245,047号、同第5,248,793号、同第5,280,126号、同第5,397,792号、同第5,342,952号、同第5,298,627号、同第5,446,054号、同第5,470,981号、同第5,489,690号、同第5,489,691号、同第5,510,488号、同第5,686,104号、同第5,969,156号、同第5,998,633号、同第6,087,511号、同第6,121,461号、同第6,126,971号、同第6,433,213号、同第6,476,235号、同第6,605,759号、国際公開WO01/36384号、国際公開WO02/41834号、国際公開WO02/43667号、国際公開WO02/43732号、国際公開WO02/051804号、国際公開WO02/057228号、国際公開WO02/057229号、国際公開WO02/057274号、国際公開WO02/059087号、国際公開WO02/083637号、国際公開WO02/083638号、国際公開WO03/011826号、国際公開WO03/050085号、国際公開WO03/07072号、および国際公開WO04/022053が挙げられる。
【0006】
いくつかの薬物の非晶形は、結晶形に比べて、様々な溶解特性を示し、ある場合には様々な生物学的利用能パターンを示すことが記載されている(T.Konno、Chem.Pharm.Bull.、1990年、38巻、2003〜2007頁)。いくつかの治療上の適用では、ある生物学的利用能パターンが、別のものより好まれる可能性がある。
【0007】
溶解速度における変化は、結晶形または非晶形のアトルバスタチン配合物の生成を有利にすることができる。例えば、アトルバスタチンのいくつかの潜在的な用途(例えば、M.Takemoto、K.Node、H.Nakagami、Y.Liao、M.Grimm、Y.Takemoto、M.Kitakaze、J.K.Liao、Journal of Clinical Investigation、2001年、108(10):1429〜1437頁に記載される脳卒中の患者の急性期治療)では、迅速な活性の発現が、アトルバスタチンの効果の向上において非常に有益である可能性がある。
【0008】
非晶質アトルバスタチンの調製は、すでに記載されている。例えば、Linら、米国特許第6,087,511号は、結晶質アトルバスタチンからの非晶質アトルバスタチンの形成について記載している。Linらは、非晶質アトルバスタチンを形成するために、結晶質アトルバスタチンをテトラヒドロフランなど水酸基を含まない溶媒に溶解することを記載している。水酸基を含まない溶媒を除去して、機械的撹拌によって細分化される脆性な泡を生成すると、非晶質アトルバスタチンが得られる。
【0009】
国際公開WO00/71116号はまた、水酸基を含まない溶媒を使用する非晶質アトルバスタチンの形成についても記載している。
【0010】
国際公開WO01/28999号は、粗製非晶質アトルバスタチンカルシウムを、炭素原子を2から4個含む低級アルカノールまたはこうしたアルカノールの混合物中に加熱下で溶解させ、冷却後に沈殿した非晶質アトルバスタチンカルシウムを単離することを含む、有機溶媒から粗製アトルバスタチンを再結晶して非晶質アトルバスタチンカルシウムを形成する方法を記載している。
【0011】
国際公開WO01/42209号は、アトルバスタチンが大量に溶解する溶媒を備えたアトルバスタチンの溶液から、アトルバスタチンが溶解しないまたは非常にわずかしか溶解しない溶媒を使用して、アトルバスタチンを沈殿させて非晶質アトルバスタチンを調製すること記載している。アトルバスタチンが大量に溶解する好ましい溶媒としては、低分子量アルコール、例えば、メタノールおよびエタノールが挙げられる。
【0012】
国際公開WO03/078379号は、水酸基を含む溶媒中にアトルバスタチンを溶解させ、凍結乾燥法または噴霧乾燥法によって溶媒を除去して、非晶質アトルバスタチンを形成することを記載している。
【0013】
米国特許出願第2004/0024046A1号は、アトルバスタチンが溶解しないまたは非常にわずかしか溶解しない溶媒を含む溶液からアトルバスタチンを沈殿させて、非晶質アトルバスタチンを形成する方法を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非晶質アトルバスタチンカルシウムなどの非晶質薬剤物質の使用は、有益である可能性がある。というのは、こうした不規則(disordered)材料は、通常、より高い溶解性および生物学的利用能を有するからである。しかし、非晶質薬剤物質によって分与される不十分な特性は、それらが、通常、より低い物理的および化学的安定性を有し、したがってそれらの貯蔵寿命が結晶質薬剤物質より低下することである。したがって、非晶質アトルバスタチンは、貯蔵時の分解に影響されやすい。薬物材料は、分解すると、いくつかの医療用途には許容されない恐れがある。その結果、非晶質アトルバスタチンを安定化させる方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記その他の必要性は、本明細書に各々記載するように、非晶質アトルバスタチンを、単独でまたは医薬組成物/配合物の一部としてアニーリングする方法を対象とする本発明によって満たされる。本発明者らが開発し、本明細書に記載する手順に従って非晶質アトルバスタチンをアニーリングすることによって、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンサンプルと比べて驚くほど安定性が高レベルに向上される、すなわち、アニーリング済みアトルバスタチンサンプルは、アニーリングしていないサンプルと比べて、化学的分解速度がより遅くなった。したがって、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンより長期間貯蔵され得、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンを含む剤形に比べて安定性プロフィルが強化された医薬剤形を製造するのに使用され得る。
【0016】
したがって、本発明は、本質的に溶媒を含まない系において非晶質アトルバスタチンを周囲圧で約50℃から約140℃の間の温度に加熱すること、温度を約1分から約30日間維持して、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンを提供すること、および得られたアニーリング済み非晶質アトルバスタチンを冷却することを含む、非晶質アトルバスタチンを高温でアニーリングするプロセスを対象とする。一実施形態では、時間は、先に提供する通りであり、温度は、約80℃から約110℃である。別の実施形態では、時間は、先に提供する通りであり、温度は、約90℃から約105℃である。別の実施形態では、温度は、先に提供する通りであり、時間は、約10分から約72時間である。別の実施形態では、温度は、先に提供する通りであり、時間は、約30分から約12時間である。好ましい一実施形態では、温度は、先に提供する通りであり、時間は、約1から6時間である。
【0017】
本発明はまた、非晶質アトルバスタチンを高い圧力または高圧でアニーリングするプロセスも対象とする。本発明によれば、こうしたプロセスは、非晶質アトルバスタチンを、約0.1kBarから約250kBarの圧力にて周囲温度(約20℃)から約150℃の温度で約1分から約30日間処理することを含む。一実施形態では、温度および時間は、先に提供する通りであり、圧力は、約0.5kBarから約200kBarである。一実施形態では、温度および時間は、先に提供する通りであり、圧力は、約0.5kBarから約10kBarである。別の実施形態では、圧力および時間は、先に提供する通りであり、温度は、約25℃から約80℃である。別の実施形態では、圧力および温度は、先に提供する通りであり、時間は、約30分から約12時間である。別の実施形態では、温度および時間は、先に提供する通りであり、圧力は、およそ周囲圧から約200kBarsを2回以上循環させる。当業者によって理解されるように、高圧は、当技術分野で周知の技術を使用して実現され得る。
【0018】
本発明はまた、非晶質アトルバスタチンに、期間範囲が約1秒から約10時間の連続またはパルスモードにおいて、周波数範囲が約1GHzから約100GHz、パワーが約1ワット(W)から約3000ワット(W)のマイクロ波を照射することを含む、非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセスも対象とする。一実施形態では、非晶質アトルバスタチンに、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約10Wから約500Wのマイクロ波を照射する。別の実施形態では、非晶質アトルバスタチンに、パルス期間が約10から約600秒のパルスモード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約1Wから約3000Wのマイクロ波を約1分から約10時間照射する。
【0019】
本発明はまた、非晶質アトルバスタチンに、期間範囲が約1秒から約10時間の連続またはパルスにおいて、周波数範囲が約15kHzから約40kHz、パワーが約100ワット(W)から4000ワット(W)の超音波を照射することを含む、非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセスも対象とする。一実施形態では、非晶質アトルバスタチンに、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約15kHzから約40kHz、パワーが約100Wから3000Wの超音波を照射する。別の実施形態では、非晶質アトルバスタチンに、パルス期間が約10から約600秒のパルスモード範囲において、周波数が約20から35kHz、パワーが約100Wから3000Wの超音波を約1分から約10時間照射する。
【0020】
本発明はまた、本明細書に各々記載するように、非晶質アトルバスタチンがアニーリングプロセスが施される前の医薬組成物または配合物の一部である上記のアニーリングプロセスも対象とする。例えば、非晶質アトルバスタチンを、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合して、例えば錠剤を形成することができる。次いで、この錠剤は、本明細書に記載のアニーリングプロセスを受けることができる。
【0021】
上述のように、非晶質アトルバスタチンは単独でまたは医薬組成物/配合物の一部として、本明細書に各々記載するように、温度、圧力、マイクロ波、または超音波によってアニーリングされる。本明細書に記載の温度アニーリングは、当業者に利用可能な任意の方法、例えばオーブンを使用して実現され得る。例えば、本明細書に各々記載するように、サンプルをある温度に設定期間加熱し、次いでオーブンから下ろし、室温に放冷する。照射は、例えば電子レンジを使用して実施され得、一方、圧力および超音波処理は、例えば超音波プローブを使用して加えられ得る。
【0022】
本発明によれば、本明細書に記載のアニーリングプロセスを、2回以上繰り返すことができる。
【0023】
また本発明によれば、アニーリング中の分解を最小にするために、本明細書に記載のアニーリングプロセスは、窒素などの不活性雰囲気下(すなわち酸素分圧の低減)または真空下で実施され得る。
【0024】
本発明によれば、非晶質アトルバスタチンは、本明細書に各々記載するように、アニーリングプロセスの前またはその最中に気相または液相によって可塑剤に暴露され得る。可塑剤での処理によって、アニーリングプロセスは、本明細書に各々記載するように、より穏やかな条件(例えば、熱的/温度アニーリングに関する温度の低下、またはマイクロ波アニーリングに関するパワーの低下)の下で行われ、したがって、適切な範囲または程度のアニーリングが依然として提供される間の分解を最小にすることができる。
【0025】
また本発明によれば、非晶質アトルバスタチンは単独でまたは医薬組成物/配合物の一部として、本明細書に各々記載するように、2以上のアニーリングプロセスによって同時にまたは連続的にアニーリングされ得る。
【0026】
さらに、得られたアニーリング済み非晶質アトルバスタチンの安定性を評価することができる。例えば、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンをねじ口式バイアルに入れ、50℃/20%相対湿度(「RH」)チャンバ中でインキュベートし、次いで、実施例1に記載するように当業者に利用可能な技術に従って分析することができる。
【0027】
本発明はさらに、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンである物質の組成物も対象とする。
【0028】
本発明はさらに、本明細書に記載のプロセスによって調製された単独の、または医薬組成物/配合物の一部としてのアニーリング済み非晶質アトルバスタチンも対象とする。
【0029】
本発明はさらに、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合したアニーリング済み非晶質アトルバスタチンを含む医薬組成物または配合物も対象とする。
【0030】
本発明はさらに、アニーリング済み非晶質アトルバスタチン、少なくとも1種の薬剤学的に許容できるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、または水酸化マグネシウムアルミニウム)、および薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤を含む医薬組成物または配合物も対象とする。好ましくは、本発明の医薬組成物または配合物は、経口医薬配合物である。
【0031】
当業者によって理解されるように、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンの送達に適する医薬組成物または配合物の調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995年)に見ることができ、または経口投与用配合物に関して以下に提供する通りである。例えば、非晶質アトルバスタチンを含む医薬組成物または配合物は、本明細書に各々記載するように、非晶質アトルバスタチンを、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤、および場合により少なくとも1種の薬剤学的に許容できるアルカリ土類金属塩と混合させることを含むがそれだけに限らない当技術分野で周知の任意の手段によって製造され得る。
【0032】
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、単独で、または1種もしくは複数の他の薬物との組合せで(またはそれの任意の組合せとして)投与され得る。一般に、単独または組合せとしてのアニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、1種または複数の薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と関連させた配合物として投与される。「希釈剤」、「キャリア」、および「賦形剤」という用語は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985年)に記載されるものを含めた当技術分野で周知のいずれの希釈剤、キャリア、または賦形剤でもよい。当業者によって理解されるように、希釈剤、キャリア、または賦形剤の選択は、大抵の場合、特定の投与方法、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、剤形の性質などの要因に依存する。
【0033】
あるいは、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンを含む配合物または組成物は、本出願の譲受人に両方とも譲渡される米国特許第5,686,104号および同第6,126,971号に提供されるものなどを含むがそれらだけに限らない少なくとも1種の薬剤学的に許容できるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩をさらに含むことによって安定化され得る。このアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩は、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、または水酸化マグネシウムアルミニウムである。
【0034】
さらに、本発明によれば、本明細書に各々記載するように、非晶質アトルバスタチンを含む本発明の医薬配合物を、高温で、高圧で、マイクロ波照射下で、または超音波照射下でアニーリングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
定義
本明細書で使用する「アトルバスタチン」という用語は、[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸(遊離酸形状)、
【0036】
【化2】

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、および多形体を指す。薬剤学的に許容できるアトルバスタチンの塩基付加塩は、金属(例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩)またはアミン(例えば、有機アミン)を用いて形成され得る。適切なアミンの例としては、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインが挙げられるが、それらだけに限らない(例えば、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.of Pharm.Sci.、1977年、66:1を参照)。
【0037】
アトルバスタチンの好ましい形状は、アトルバスタチンカルシウム、より具体的にはアトルバスタチンヘミカルシウム塩三水和物であり、商品名LIPITOR(登録商標)で市販されている。
【0038】
本明細書で使用する「非晶質アトルバスタチン」という用語は、上述のように、完全に非晶質な材料、部分的に非晶質な材料(例えば、結晶質と非晶質の混合物)、および結晶質中間相(例えば、液晶タイプ構造)を含めた、アトルバスタチンの様々なタイプの不規則形状を指す。非晶質アトルバスタチン、および非晶質アトルバスタチンの存在量を、粉末X線回折法、固体状態核磁気共鳴(SSNMR)分光法、熱的技術、例えば示差走査熱量測定法(DSC)など、当技術分野で周知の技術によって特徴付けることができる。
【0039】
本発明の実施に使用する非晶質アトルバスタチンは、Linら、米国特許第6,087,511号、国際公開WO00/71116号、国際公開WO01/28999号、国際公開WO01/42209号、国際公開WO03/078379号、または米国特許出願第2004/0024046A1号に提供される手段などを含むがそれらだけに限らない当技術分野で周知の任意の手段によって調製され得る。非晶質アトルバスタチンは、代理人件名番号PC25825、公表済みの米国特許出願第2005−0032880号、および所有者が同一の代理人件名番号PC32140、2004年10月28日出願の米国仮特許出願第60/623,086号に記載のプロセスによる噴霧乾燥法または凍結乾燥法によって、または本出願と同じ譲受人に譲渡される2004年4月16日出願の米国仮特許出願第60/562,948号、代理人件名番号PC32139に記載される溶液からの沈殿によって調製され得る。「凍結乾燥法」という用語は、冷凍した生成物から減圧下で溶媒を除去するプロセスを指す。「噴霧乾燥法」という用語は、液体混合物を小滴に細分化し、その混合物から溶媒を急速に除去することを意味する。
【0040】
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンはまた、非溶媒和形態でも溶媒和形態でもよい。本明細書では、「溶媒和物」という用語は、本明細書に記載のアニーリング済み非晶質アトルバスタチン、および1種または複数の薬剤学的に許容できる溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体の説明に使用される。「水和物」という用語は、前記溶媒が水であるときに使用される。
【0041】
提案される指示の処置に最も適切な剤形および投与経路を選択するために、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンを、その生物薬剤特性、例えば、溶解性、固体状態および溶液の安定性(pH全域)、透過性などに関して評価することができる。
【0042】
「アニーリング」は、(a)非晶質アトルバスタチンを所定温度で加熱し、その温度を設定期間保持し、次いで得られたアニーリング済み非晶質アトルバスタチンを冷却すること、(b)非晶質アトルバスタチンを周囲圧より高圧にさらすこと、(c)非晶質アトルバスタチンにマイクロ波もしくは超音波周波数を照射すること、または(d)それらの組合せを指す。本発明によれば、アニーリング(a)、(b)、(c)、および(d)は、連続またはパルスモードで実施され得る。
【0043】
本明細書で使用する「本質的に溶媒を含まない系」という用語は、添加溶媒を添加しない系を指す。非晶質アトルバスタチンは、その合成または医薬品加工操作、例えば湿式造粒法から生じる残存溶媒を含む可能性がある。例えば、水または別の溶媒を約2重量%含む非晶質アトルバスタチンは、「本質的に溶媒を含まない」と考えられる。
【0044】
「可塑剤」という用語は、分子の可動性を増加させる(例えば、ガラス転移温度、またはβ緩和などの局所的運動の温度を低下させる)分子を指す。適切な可塑剤の例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、グリセロール)、エステル(例えば、酢酸エチル)、ケトン(例えば、アセトン)、ならびに他の有機および無機溶媒(例えば、水)が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0045】
経口投与
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、経口で投与され得る。経口投与は、この化合物が胃腸管に入るように飲み込むこと、および/またはこの化合物が口腔から直接血流に入る頬、舌、もしくは舌下の投与を含むことができる。
【0046】
経口投与に適した配合物としては、錠剤などの固体、半固体、および液体系;マルチもしくはナノ微粒子、液体、または粉末を含有する軟または硬カプセル剤;ロゼンジ(液体充填を含む);咀嚼剤(chews);ゲル剤;即時分散剤形;フィルム;卵形剤;スプレー剤;ならびに頬/粘膜付着性パッチが挙げられる。
【0047】
あるいは、本発明の組成物または配合物は、マルチ微粒子のビーズの形でもよい。
【0048】
本発明の化合物はまた、LiangおよびChenによってExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)巻、981〜986頁(2001年)に記載されるものなどの即時溶解、即時崩壊剤形で使用され得る。
【0049】
錠剤剤形に関しては、用量に応じて、薬物は、剤形の約1重量%から約60重量%、より一般に、剤形の約5重量%から約40重量%で作製することができる。この薬物に加えて、錠剤は、一般に崩壊剤を含む。崩壊剤の例としては、グリコール酸ナトリウムデンプン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、事前ゼラチン化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の約1重量%から約25重量%、好ましくは約3重量%から約20重量%を占める。
【0050】
結合剤は、一般に、錠剤配合物に凝集品質を与えるのに使用される。一般に、こうした錠剤配合物は、結合剤を約0から10重量%含む。適切な結合剤としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、事前ゼラチン化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤はまた、希釈剤、例えば、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥した一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物なども含むことができる。錠剤はまた、安定化用アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を場合により含んでもよい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩は、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、または水酸化マグネシウムアルミニウムである。一般に、こうした錠剤配合物は、安定化用アルカリ土類金属塩を約10から30重量%含む。
【0051】
錠剤はまた、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤(glidant)を場合により含んでもよい。存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の約0.2重量%から約5重量%を占めることができ、滑剤は、錠剤の約0.2重量%から約1重量%を占めることができる。
【0052】
錠剤はまた、一般に、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物なども含む。潤滑剤は、一般に、錠剤の約0.25重量%から約10重量%、好ましくは約0.5重量%から約3重量%を占める。
【0053】
他の可能な成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤、保存剤、および風味マスキング剤が挙げられる。
【0054】
錠剤ブレンドを直接またはローラーによって圧縮して、錠剤を成形することができる。あるいは、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、湿式、乾式、もしくは融解式粒状化、融解凍結化、または押出成形化をした後、錠剤化することができる。最終配合物は、1層または複数層を含むことができ、コーティングされていてもコーティングされていないくてもよく、それはさらにカプセル化されていてもよい。
【0055】
錠剤の配合物は、H.LiebermanおよびL.LachmanによるPharmaceutical Dosage Forms:Tablets、第1巻(Marcel Dekker、ニューヨーク、1980年)に記載されている。
【0056】
ヒト使用用の消費可能な経口フィルムは、一般に、即時溶解しても粘膜付着性でもよい柔軟な水溶性または水膨潤可能な薄膜剤形であり、一般に、アニーリング済み非晶質アトルバスタチン、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定化剤または乳化剤、粘度改質剤、および溶媒を含む。配合物のいくつかの成分は、複数の機能を果たすことができる。
【0057】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖、タンパク質、または合成親水コロイドから選択され得、一般に約0.01から約99重量%の範囲、より一般に約30から約80重量%の範囲にある。
【0058】
他の可能な成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤および矯味剤、保存剤、唾液腺刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を含む)、皮膚軟化剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、ならびに風味マスキング剤が挙げられる。
【0059】
本発明によるフィルムは、一般に、剥離可能な裏打ち支持体または紙の上にコーティングされた薄い水性フィルムの蒸発乾燥によって製造され得る。これは、乾燥オーブンもしくはトンネル、一般に複合コーター乾燥器内で、または凍結乾燥法もしくは真空化法によって行われ得る。
【0060】
経口投与用固体配合物を、即時および/または調節放出となるように配合することができる。調節放出配合物には、遅延、持続、パルス、制御、標的、および計画放出物がある。
【0061】
本発明の目的に適する調節放出配合物は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散物や浸透性かつコーティングされた粒子など他の適切な放出技術の詳細は、VermaらによるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14頁(2001年)に見られる。制御放出を実現するチューインガムの使用は、国際公開WO00/35298号に記載されている。
【0062】
次の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
高温でアニーリングして非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(連続モード)
非晶質アトルバスタチンカルシウムを、米国特許出願、所有者が同一の代理人件名番号PC25825、公表済みの米国特許出願第2005−0032880号、およびPC32140、米国仮特許出願第60/623,086号に記載の手順による噴霧乾燥で調製した。実施例で使用するバイアルは、Wheaton、ミルビル、ニュージャージー州から市販されているものであった。
【0064】
非晶質アトルバスタチンカルシウムを、20ml容のガラス製バイアル(バイアル1個当たり約1g)に装入し、オーブン中において100±5℃で1、6、および18時間加熱した。加熱後、粉末をバイアルから15ml容の黄褐色ねじ蓋式ボトルに移し、50℃/20%RHの定常状態に設定した。さらに、15ml容の黄褐色ねじ蓋式ボトルに挿入したアニーリングしていない非晶質アトルバスタチンカルシウムを対照として定常状態に置いた。
【0065】
分析
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムを、HPLCを使用して不純物およびアトルバスタチン分解物に関して、積分ピーク面積の合計と比較したピーク積分の比を評価することによって分析した。したがって、対照またはアニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウム27mgを、テトラヒドロフラン5mLで湿らせ、続いて、1:1のテトラヒドロフラン:アセトニトリル(体積:体積)の溶液を総量が50mLになるように添加した。材料をHPLCで分析した(Zorbax SB C8カラム、25.0cm×4.6mm、HPLC:Hewlett Packard 1100シリーズ、注入量20μl、流量1.5mL/分)。溶出は、0.05Mの酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0):アセトニトリル:テトラヒドロフランを67:21:12(体積:体積:体積)から開始し、40分後に54:34:12(体積:体積:体積)に切り替える直線勾配を使用した(55分後には後者の混合物が100%)。
【0066】
固体状態核磁気共鳴(SSNMR)分光法
分析する各サンプルに関して、サンプル約80mgを4mmのZrOスピナに密に充填した。すべてのスペクトルを、大口径Bruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm BL HFX CPMASプローブで293Kおよび周囲圧にて収集した。サンプルをマジック角に配向させ、4mmスピナの最大指定スピニング速度に相当する15.0kHzで回転させた。高速スピニング速度は、スピニング側波帯の強度を最小化した。19F固体状態スペクトルを、プロトンデカップリングしたマジック角スピニング法(MAS)実験を使用して収集した。約65kHzのプロトンデカップリングフィールドを適用した。プローブバックグランドは、19Fのプリサチュレーションパルスを適用する間のインターリーブスキャンからシグナルを引くことで減じた。一般に、各19F MASのスペクトルに関して32スキャンを収集した。リサイクル遅延を15秒に設定して、定量的スペクトルの取得を確実にした。外部サンプルにトリフルオロ酢酸(HOで50体積%に希釈)を使用し、その共鳴を−76.54ppmに設定して、スペクトルを参照した。
【0067】
粉末X線回折(PXRD)
非晶質アトルバスタチンカルシウムおよびアニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムのX線粉末回折パターンを、銅放射線(Cu Kα)を装備したBruker D5000回折計(マディソン、ウィスコンシン州)を使用して決定した。ステップサイズ0.04度およびステップ時間1.0秒を使用して、3.0から40.0度の2θにおいてデータを収集した。発散および散乱スリットを1mmに設定し、受光スリットを0.6mmに設定した。回折された放射線を、Kevex PSI検出器で検出した。アルミナ標準を分析して、器機アライメントをチェックした。Bruker AXSソフトウェアバージョン7.0を使用して、データを収集し、分析した。石英ホルダにサンプルを入れて、サンプルの分析準備を行った。一般に、孔を有する石英ホルダにサンプルを入れる。
【0068】
結果
3個のアニーリング済みサンプルおよび対照サンプルに関して得られた安定性データを、図1〜4にグラフとして例示する。t=0(図1〜4の最初の時間ポイント)でのより高レベルの2種の別個の分解物(図3、4)、全酸化物(図2)、および全分解物(図1)に表されるように、アニーリングによっていくつかの分解が生じることが分かる。しかし、50℃/20%RHでの6週間貯蔵後、分解物のレベルは、1および6時間アニーリングしたサンプルでは対照サンプルに比べて低くなった。より定量的にアニーリングによる安定性を表すために、相対分解速度定数、krelを、図1〜4に示されるデータから決定した。krelを、式1を使用して計算した。
rel=(k/k0)100% 式1
(式中、kは、アニーリング済みサンプルに関するゼロ次速度定数であり、k0は、対照サンプルに関するゼロ次速度定数であり、kおよびk0は、図1〜4に示されるデータから決定された。)
【0069】
相対速度定数(krel)を表1に示す。100%未満の相対速度は、分解速度がアニーリング済みサンプルに関してより遅く、アニーリングによる安定化の定量的表現として使用され得ることを意味し、一方、100%超の数値は、不安定化を示す。例えば、18時間アニーリングしたサンプルに関する全分解物の相対分解速度は、66%(表1では太字およびイタリック体で表記)であり、すなわち、対照より34%小さかった。
【0070】
【表1】

【0071】
全体として、1および6時間アニーリングしたサンプルに関する6週の時間ポイントにおける分解物のより低いレベル(図1から4)、ならびにアニーリング済み材料におけるより遅い分解速度(表1)は、アニーリングがアトルバスタチンカルシウムの熱安定性を向上させたことを実証している。
【0072】
図5および6aから6dは、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンサンプルのSSNMRおよびPXRDスペクトルが対照サンプルのアニーリングしていない非晶質アトルバスタチンカルシウムと同様であったことを示している。
【0073】
実施例1の要約
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンは、驚くべきことに、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンより安定している。これは、高温でアニーリング(すなわち温度アニーリング)して安定化させる非晶質アトルバスタチンカルシウムの例である。実施例1に挙げた安定性データに示す通り、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムは、t=0(図1から4の最初の時間ポイント)でのより高レベルの2種の別個の分解物(図3、4)ならびに全酸化物(図2)および全分解物(図1)に表されるように、アニーリング中にある程度分解されている。2種の分解物の構造を、スキーム1および2に示す。しかし、50℃/20%RHで6週間貯蔵した後、分解物のレベルは、1および6時間アニーリングしたサンプルでは、対照サンプルに比べて低かった。
【0074】
【化3】

【0075】
【化4】

【0076】
アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンカルシウムと比較したアニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムの安定性を、実施例1の表1に要約するように、相対分解速度定数によって表すことができる。100%未満の相対速度は、分解速度がアニーリング済みサンプルに関してより遅く、アニーリングによる安定化の定量的表現として使用され得ることを意味し、一方、100%以上の数値は、不安定化を示す。例えば、18時間アニーリングしたサンプルに関する全分解物の相対分解速度は、66%(実施例1の下方の表1では太字およびイタリック体で表記)であり、すなわち、対照より34%小さかった。
【0077】
表1に要約した結果は、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムを、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンカルシウムより長期間貯蔵することができることを実証している。さらに、アニーリング済み非晶質アトルバスタチンカルシウムは、アニーリングしていない非晶質アトルバスタチンカルシウムを含む剤形に比べて安定性プロファイルを高めた医薬剤形の製造に使用され得る。
【0078】
(実施例2)
周囲圧より高圧でアニーリングして非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(連続モード)
噴霧乾燥または凍結乾燥した非晶質アトルバスタチンカルシウムを、約50℃で、約30分間、約1時間、および約6時間、約1kBarに加圧する。
【0079】
(実施例3)
マイクロ波照射で非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(連続モード)
噴霧乾燥または凍結乾燥した非晶質アトルバスタチンカルシウムに、Microwave Power Generator Model 520A(Resonance Instrument Inc.、9054 Terminal Ave.、スコーキ、イリノイ州60077)を使用して、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約20Wから120Wのマイクロ波を照射する。医薬サンプルを試験する要件を満たすように、循環反応孔(circular reaction cavity)を作製する。
【0080】
(実施例4)
マイクロ波照射で非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(パルスモード)
噴霧乾燥または凍結乾燥した非晶質アトルバスタチンカルシウムに、Microwave Power Generator Model 520A(Resonance Instrument Inc.、9054 Terminal Ave.、スコーキ、イリノイ州60077)を使用して、パルス期間が約10から約600秒のパルスモード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約20Wから120Wのマイクロ波を約1分から約10時間照射する。医薬サンプルを試験する要件を満たすように、循環反応孔を作製する。
【0081】
(実施例5)
超音波照射で非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(連続モード)
噴霧乾燥または凍結乾燥した非晶質アトルバスタチンカルシウムに、The Ultrasonic Generator(Active Ultrasonics Sarl、Puits−Godet 6A、CH−2000、ヌーシャテル、スイス)を使用して、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約20から35kHz、パワーが約100Wから3000Wの超音波を照射する。この器機は、次の超音波周波数:20kHz、30kHz、および35kHzを生成する3個のプローブを有する。医薬サンプルを試験する要件を満たすように、特別に設計したカップホーンを作製する。
【0082】
(実施例6)
超音波照射で非晶質アトルバスタチンを安定化する一般法(パルスモード)
噴霧乾燥または凍結乾燥した非晶質アトルバスタチンカルシウムに、The Ultrasonic Generator(Active Ultrasonics Sarl、Puits−Godet 6A、CH−2000、ヌーシャテル、スイス)を使用して、パルス期間が10から600秒のパルスモード範囲において、周波数が20から35kHz、パワーが100から3000Wの超音波を1分から10時間照射する。この器機は、次の超音波周波数:20kHz、30kHz、および35kHzを生成する3個のプローブを有する。医薬サンプルを試験する要件を満たすように、特別に設計したカップホーンを作製する。
【0083】
(実施例7)
超音波照射で非晶質アトルバスタチンCaを含む医薬配合物を安定化する一般法(パルスモード)
非晶質アトルバスタチンカルシウムを含む医薬配合物に、The Ultrasonic Generator(Active Ultrasonics Sarl、Puits−Godet 6A、CH−2000、ヌーシャテル、スイス)を使用して、パルス期間が10から600秒のパルスモード範囲において、周波数が20から35kHz、パワーが100から3000Wの超音波を1分から10時間照射する。この器機は、次の超音波周波数:20kHz、30kHz、および35kHzを生成する3個のプローブを有する。医薬サンプルを試験する要件を満たすように、特別に設計したカップホーンを作製する。
【0084】
本出願で引用した発行済み特許、特許出願、および学術論文を含むがそれらだけに限らないすべての刊行物は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0085】
開示した実施形態に関して本発明を上で説明したが、詳述した特定の実施例が本発明の単なる例示であることを当業者なら容易に理解するであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】非晶質アトルバスタチンカルシウムを50℃/20%RHで貯蔵している間の全分解物のレベルの増加を示す図である(「RH」は相対湿度を示す)。4本の曲線は、対照、ならびに100℃で1、6、および18時間アニーリングしたサンプルに関する。
【図2】非晶質アトルバスタチンカルシウムを50℃/20%相対湿度で貯蔵している間の全酸化分解物のレベルを時間の関数として示す図である。4本の曲線は、対照、ならびに100℃で1、6、および18時間アニーリングしたサンプルに関する。
【図3】非晶質アトルバスタチンカルシウムを50℃/20%相対湿度で貯蔵している間の分解物1(スキーム1)のレベルを時間の関数として示す図である。4本の曲線は、対照、ならびに100℃で1、6、および18時間アニーリングしたサンプルに関する。
【図4】非晶質アトルバスタチンカルシウムを50℃/20%相対湿度で貯蔵している間の分解物2(スキーム2)のレベルを時間の関数として示す図である。4本の曲線は、対照、ならびに100℃で1、6、および18時間アニーリングしたサンプルに関する。
【図5】実施例1からのアトルバスタチンカルシウムサンプルの固体状態19F核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す図である。比較のために標準スペクトルも示す。
【図6a】噴霧乾燥されたアニーリングしていない(対照サンプル)非晶質アトルバスタチンカルシウムのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図6b】100℃で1時間アニーリングした噴霧乾燥済み非晶質アトルバスタチンカルシウムのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図6c】100℃で6時間アニーリングした噴霧乾燥済み非晶質アトルバスタチンカルシウムのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図6d】100℃で18時間アニーリングした噴霧乾燥済み非晶質アトルバスタチンカルシウムのX線粉末回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質アトルバスタチンを本質的に溶媒を含まない系において周囲圧で約50℃から約140℃の間の温度に加熱すること、前記温度を約1分から約30日間維持すること、および得られたアニーリング済み非晶質アトルバスタチンを冷却することを含む、非晶質アトルバスタチンを高温でアニーリングするプロセス。
【請求項2】
前記温度が、約80℃から約110℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記温度が、約90℃から約105℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記時間が、約10分から約72時間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記時間が、約30分から約12時間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記時間が、約1から6時間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記加熱−維持−冷却サイクルが、2回以上繰り返される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記非晶質アトルバスタチンが、非晶質アトルバスタチンカルシウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非晶質アトルバスタチンが、前記加熱ステップの前に、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合される、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
非晶質アトルバスタチンを、約0.1kBarから約250kBarの圧力にて周囲温度から約150℃の温度で約1分から約30日間処理することを含む、高い圧力または高圧で非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセス。
【請求項11】
前記圧力が、約0.5kBarから約200kBarである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記圧力が、約0.5kBarから約10kBarである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記温度が、約25℃から約80℃である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記時間が、約30分から約12時間である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記圧力が、およそ周囲圧から約200kBarで2回以上循環される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記非晶質アトルバスタチンが、非晶質アトルバスタチンカルシウムである、請求項10から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記非晶質アトルバスタチンが、前記処理ステップの前に、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合される、請求項10から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
非晶質アトルバスタチンが、期間範囲が約1秒から約10時間の連続またはパルスモードにおいて、周波数範囲が約1GHzから約100GHz、パワーが約1ワットから約3000ワットのマイクロ波を照射されることを含む、非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセス。
【請求項19】
前記非晶質アトルバスタチンが、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約10Wから約500Wのマイクロ波を照射される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記非晶質アトルバスタチンが、パルス期間が約10から約600秒のパルスモード範囲において、周波数が約2.45GHz、パワーが約1Wから約3000Wのマイクロ波を約1分から約10時間照射される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記非晶質アトルバスタチンが、非晶質アトルバスタチンカルシウムである、請求項18から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記非晶質アトルバスタチンが、前記照射ステップの前に、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合される、請求項18から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
非晶質アトルバスタチンが、期間範囲が約1秒から約10時間の連続またはパルスにおいて、周波数範囲が約15KHzから約40KHz、パワーが約100ワットから4000ワットの超音波を照射されることを含む、非晶質アトルバスタチンをアニーリングするプロセス。
【請求項24】
前記非晶質アトルバスタチンが、期間が約10秒から約10時間の連続モード範囲において、周波数が約15KHzから約40kHz、パワーが約100Wから3000Wの超音波を照射される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記非晶質アトルバスタチンが、パルス期間が約10から約600秒のパルスモード範囲において、周波数が約20から35KHz、パワーが約100Wから3000Wの超音波を約1分から約10時間照射される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記非晶質アトルバスタチンが、非晶質アトルバスタチンカルシウムである、請求項23から25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記非晶質アトルバスタチンが、前記照射ステップの前に、薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤と混合される、請求項23から25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
アニーリング済み非晶質アトルバスタチン、および薬剤学的に許容できる希釈剤、キャリア、または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項29】
少なくとも1種の薬剤学的に許容できるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属の塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、または水酸化マグネシウムアルミニウムである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
アニーリング済み非晶質アトルバスタチンを含む組成物。
【請求項32】
前記非晶質アトルバスタチンが、アニーリングプロセスの前またはその最中に可塑剤で処理される、請求項1、10、18、または23に記載のプロセス。
【請求項33】
前記非晶質アトルバスタチンが、請求項1、10、18、または23に記載の2種以上のプロセスで、同時にまたは連続的に処理される、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記非晶質アトルバスタチンが、アニーリングプロセスの前またはその最中に可塑剤でさらに処理される、請求項33に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【公表番号】特表2009−508932(P2009−508932A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531813(P2008−531813)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002648
【国際公開番号】WO2007/034316
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】