説明

非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム及びその製造方法

【課題】分散性が良好な非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】xNa2O・ySiO2・Al2O3・zH2O(xは0.3〜1.0、yは10〜60、zは4〜10)で表される組成を有し、水銀ポロシメーターにより測定した細孔径分布がバイモーダルなピークを持ち、レーザー光散乱法により測定した平均粒径が15μm以下であることを特徴とする非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム。BET比表面積は、80〜300m2/gであることが好ましい。前記細孔径分布は、10〜100nmの領域でのピークと、100〜5000nmの領域でのピークとを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙、ゴム、樹脂等様々な分野においてフィラー等として用いることができる非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沈降性シリカはホワイトカーボンとも呼ばれ、紙、ゴム、樹脂等、様々な分野においてフィラー等として用いられている。沈降性シリカは、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応で製造される。ケイ酸ナトリウムと硫酸とを混合するとき、反応温度を高く設定しておかないと、部分ゲルの生成による撹拌不良や、ろ過性の悪化などが起こる。そのため、沈降性シリカは、70℃以上の温度で合成しなければならず、製造に多大なエネルギーを要する。
【0003】
硫酸の代わりに硫酸アルミニウムを用いると、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムが合成される。非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムも、フィラー等として用いることができる(特許文献1参照)。
【0004】
非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、ケイ酸ナトリウムと硫酸アルミニウムとの反応生成物であり、シリカの他にアルミニウム、及びナトリウムを含有している。ナトリウムは、アルミニウムがシリカ骨格に入ることにより生じる負電荷を補うために含有される。ナトリウムの含有率は、反応終了時の酸添加の程度によってもコントロールできる。
【0005】
非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの合成においては、液中のケイ酸イオンが早く固体状となるため、部分ゲルを起こしにくい。そのため、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、40℃以下の温度で合成できる。また、製造された非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムのろ過性は、沈降性シリカのろ過性よりも優れる。また、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの合成においては、凝集性が強いために、反応初期数分以内に凝集体が生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−178606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、フィラーとして、ゴムや樹脂に分散させる際に、製造時の凝集性に起因して、分散性が悪くなってしまう。
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、分散性が良好な非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、
xNa2O・ySiO2・Al2O3・zH2O(xは0.3〜1.0、yは10〜60、zは4〜10)で表される組成を有し、水銀ポロシメーターにより測定した細孔径分布がバイモーダルなピークを持ち、レーザー光散乱法により測定した平均粒径が15μm以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、細孔径分布及び平均粒径が前記のものであることにより、例えばゴムや樹脂等に分散させる際の分散性が良い。
本発明の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、BET比表面積が80〜300m2/gであることが好ましい。BET比表面積が前記の範囲内であることにより、分散性が一層良い。
【0010】
前記細孔径分布は、10〜100nmの領域でのピークと、100〜5000nmの領域でのピークとを有することが好ましい。細孔径分布が前記のものであることにより、分散性が一層良い。
【0011】
本発明の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムは、例えば、ケイ酸ナトリウムと硫酸アルミニウムの同時滴下で合成されたスラリーをろ過・水洗後、平均粒径が1μm以下となるように湿式粉砕する工程を含む製造方法により、製造することができる。この製造方法によれば、本発明の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを容易に製造できる。
【0012】
また、前記の製造方法は、前記湿式粉砕後の前記スラリーを噴霧乾燥する工程を有することが好ましい。この工程を有することにより、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを容易に得ることができる。
【0013】
前記平均粒径は、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粉体を溶媒に分散させて超音波照射し、凝集体をある程度ほぐした状態で測定することが好ましい。この場合、比較的弱い力で凝集しているアグロメレート凝集体の粒度を測定していると考えられる。
【0014】
前記細孔径分布の測定結果には、粒子の粒径と凝集性とが反映される。一般的に小粒径の粒子は、細孔径が小さい凝集体を生成し、大粒径の粒子は、細孔径が大きい凝集体となる。また、細孔径分布には粒径の均一性等が影響を与える。水銀ポロシメーターにより測定される細孔径は、アグロメレート凝集体の粒子径の他に、比較的強く凝集しているアグリゲート凝集体の粒径を反映していると考えられる。分散性を改善するためには、細孔径分布はシャープな方がよいと考えられる。
【0015】
本発明におけるケイ酸アルミニウムナトリウムとは、ナトリウムを含む、ケイ酸アルミニウムである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒度分布を表すグラフである。
【図2】実施例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を表すグラフである。
【図3】実施例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムのSEM像である。
【図4】実施例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を表すグラフである。
【図5】比較例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒度分布を表すグラフである。
【図6】比較例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を表すグラフである。
【図7】比較例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムのSEM像である。
【図8】比較例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を表すグラフである。
【図9】比較例で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
(1)スラリーの調製
シリカ濃度0.7wt%に希釈した3号ケイ酸ナトリウム(富士化学製)744gを10Lステンレス反応槽に入れ、60℃に加熱した。液温を維持しながら、シリカ濃度7.0wt%に希釈した3号ケイ酸ナトリウム4200gと、酸化アルミニウム濃度1.4wt%に希釈した硫酸アルミニウム(北陸化成工業所製)2495gとを、同時に、100分間かけてステンレス反応槽に滴下した。
【0019】
同時滴下終了後、60℃で15分間攪拌してから、20%硫酸190gを添加して、pHを4程度まで下げ、スラリーを得た。このスラリーの平均粒径を、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所LA910)を用いて、超音波照射1分後に測定したところ、19.4μmであった。
(2)水洗
得られたスラリーを吸引ろ過し、ろ液の電気伝導率が100μS/cm以下になるまで水洗し、ケーキを得た。
(3)ビーズミル処理
水洗後のケーキを3Lのイオン交換水に再分散させた。この再分散スラリーを、0.3mmのジルコニアビーズを入れたビーズミル(DYNO-MILL KDL A)により2回処理したところ、スラリーの平均粒径は0.34μmとなった。
(4)噴霧乾燥
ビーズミル処理したスラリーを噴霧乾燥機(藤崎電機 MDL050B)により噴霧乾燥し、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
【0020】
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.5Na2O・17.1SiO2・Al2O3・6.6H2Oであった。
【0021】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、4.9μmであった。この平均粒径は、ビーズミル処理をしない場合に比べて小さい値であった。なお、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒度分布を図1に示す。
【0022】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、図2に示すように、20〜80nmの領域でのピークと、200〜700nmの領域でのピークを有する(シャープなバイモーダルの)細孔径分布であった。なお、20〜80nmの領域でのピークは、アグリゲート凝集体の粒径に対応し、200〜700nmの領域でのピークは、アグロメレート凝集体の粒径に対応する。
【0023】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、210m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをSEM(電子顕微鏡)で観察した。図3に、SEM像を示す。非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒子形状は、球形であった。
【0024】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性は良好であった。
【実施例2】
【0025】
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
基本的には前記実施例1の「(1)スラリーの調製」と同様にして、スラリーを調製した。ただし、反応温度(液温)は、60℃ではなく、70℃とした。
【0026】
得られたスラリーに対し、前記実施例1の「(2)水洗」と同様に、吸引ろ過し、ろ液の電気伝導率が100μS/cm以下になるまで水洗した。水洗後のケーキを3Lのイオン交換水に再分散させ、再分散スラリーを調製した。この再分散スラリーの平均粒径を、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所LA910)を用いて、超音波照射1分後に測定したところ、30.3μmであった。
【0027】
再分散スラリーを、0.3mmのジルコニアビーズを入れたビーズミル(DYNO-MILL KDL A)により2回処理したところ,スラリーの平均粒径は0.32μmとなった。
ビーズミル処理したスラリーを噴霧乾燥機(藤崎電機 MDL050B)により噴霧乾燥し、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
【0028】
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.6Na2O・18.0SiO2・Al2O3・5.8H2Oであった。
【0029】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、7.9μmであった。この平均粒径は、ビーズミル処理をしない場合に比べて小さい値であった。
【0030】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、20〜100nmnmの領域でのピークと、200〜1000nmの領域でのピークを有する(シャープなバイモーダルの)細孔径分布であった。なお、20〜100nmの領域でのピークは、アグリゲート凝集体の粒径に対応し、200〜1000nmの領域でのピークは、アグロメレート凝集体の粒径に対応する。
【0031】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、101m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性は良好であった。
【実施例3】
【0032】
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
前記実施例1と同様に、「(1)スラリーの調製」、「(2)水洗」、及び「ビーズミル処理」の工程を行った。
【0033】
ビーズミル処理したスラリーを、噴霧乾燥機(東京理化器械 SD-1)により噴霧乾燥し、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.6Na2O・17.5SiO2・Al2O3・5.4H2Oであった。
【0034】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、14.7μmであった。この平均粒径は、ビーズミル処理をしない場合に比べて小さい値であった。
【0035】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、図4に示すように、20〜100nmnmの領域でのピークと、700〜4000nmの領域でのピークを有する(シャープなバイモーダルの)細孔径分布であった。なお、20〜100nmの領域でのピークは、アグリゲート凝集体の粒径に対応し、700〜4000nmの領域でのピークは、アグロメレート凝集体の粒径に対応する。
【0036】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、134m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性は良好であった。
(比較例1)
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
前記実施例1と同様に、「(1)スラリーの調製」、及び「(2)水洗」の工程を行い、ケーキを得た。そのケーキを再分散せずに、110℃で十分乾燥した。乾燥後、ミルで粉砕し、1mmの篩を通して、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
【0037】
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.5Na2O・16.4SiO2・Al2O3・6.5H2Oであった。
【0038】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、21.7μmであった。なお、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒度分布を図5に示す。
【0039】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、図6に示すように、20〜700μmに幅広い分布(1のみのピーク)があるものであり、アグリゲート凝集体とアグロメレート凝集体の明確な領域の区分がなかった。
【0040】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、173m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをSEMで観察した。図7に、SEM像を示す。非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの粒子形状は、不規則な形状であった。
【0041】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性が不良であった。
(比較例2)
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
前記実施例1と同様に、「(1)スラリーの調製」、及び「(2)水洗」の工程を行い、ケーキを得た。そのケーキを、3Lのイオン交換水に再分散させ、再分散スラリーを調製した。この再分散スラリーを、ホモジナイザー(IKA T25-S1)により、9500rpmで12時間処理したところ、スラリーの平均粒径は8.9μmとなった。
【0042】
ホモジナイザー処理したスラリーを噴霧乾燥機(東京理化器械 SD-1)により噴霧乾燥し、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.7Na2O・17.2SiO2・Al2O3・5.3H2Oであった。
【0043】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、17.6μmであった。また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、図8に示すように、30〜300nmと1000〜6000nmに分布のあるバイモーダルなものであったが、アグリゲート凝集体とアグロメレート凝集体の粒径が大きく、分散性の悪さを表している。
【0044】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、152m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性が不良であった。
(比較例3)
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
前記実施例1と同様に、「(1)スラリーの調製」、「(2)水洗」、及び「ビーズミル処理」の工程を行った。
【0045】
ビーズミル処理したスラリーを、ロータリーエバポレーターにより、固形分18wt%まで真空濃縮し、110℃で乾燥した。その後、ミルで粉砕し、1mmの篩を通して、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
【0046】
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.7Na2O・17.7SiO2・Al2O3・5.4H2Oであった。
【0047】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、165μmであった。また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、図9に示すように、20〜50nmのシャープなものであり、アグリゲート凝集体とアグロメレート凝集体の明確な領域の区分がなく、しかも、アグリゲート凝集体の凝集力の強い分布であった。
【0048】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、174m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性が不良であった。
(比較例4)
1.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法
水洗までは、前記実施例2と同様の工程を行った。水洗後、得られたケーキを再分散せずに、110℃で十分乾燥した。乾燥後、ミルで粉砕し、1mmの篩を通して、粉末状の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを得た。
【0049】
2.非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの評価
得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成(化学式)は、分析の結果、0.6Na2O・17.5SiO2・Al2O3・5.4H2Oであった。
【0050】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムに超音波を1分間照射してから、平均粒径を測定したところ、18.3mであった。また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの細孔径分布を、水銀ポロシメーターを用いて測定したところ、30〜1000nmに幅広い分布のあるものであり、アグリゲート凝集体とアグロメレート凝集体の明確な領域の区分がないものであった。
【0051】
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの、窒素吸着によるBET比表面積を測定したところ、118m2/gであった。
また、得られた非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムをゴムや樹脂のフィラーとして用いたところ、分散性が不良であった。
【0052】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1〜3における非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの組成は、原料の配合比を変えることにより、xNa2O・ySiO2・Al2O3・zH2O(xは0.3〜1.0、yは10〜60、zは4〜10)の範囲内で、任意に設定できる。例えば、前記実施例1〜3で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを基本としながら、前記組成式におけるxの値を0.3〜1.0の範囲内における任意の値(例えば、0.3、1.0)に変更しても、前記実施例1〜3の場合と略同様の効果が得られる。
【0053】
また、前記実施例1〜3で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを基本としながら、前記組成式におけるyの値を10〜60の範囲内における任意の値(例えば、10、60)に変更しても、前記実施例1〜3の場合と略同様の効果が得られる。
【0054】
また、前記実施例1〜3で製造した非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムを基本としながら、前記組成式におけるzの値を4〜10の範囲内における任意の値(例えば、4、10)に変更しても、前記実施例1〜3の場合と略同様の効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
xNa2O・ySiO2・Al2O3・zH2O(xは0.3〜1.0、yは10〜60、zは4〜10)で表される組成を有し、
水銀ポロシメーターにより測定した細孔径分布がバイモーダルなピークを持ち、
レーザー光散乱法により測定した平均粒径が15μm以下であることを特徴とする非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム。
【請求項2】
BET比表面積が80〜300m2/gであることを特徴とする請求項1記載の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム。
【請求項3】
前記細孔径分布は、10〜100nmの領域でのピークと、100〜5000nmの領域でのピークとを有することを特徴とする請求項1又は2記載の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウム。
【請求項4】
ケイ酸ナトリウムと硫酸アルミニウムの同時滴下で合成されたスラリーをろ過・水洗後、平均粒径が1μm以下となるように湿式粉砕する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法。
【請求項5】
前記湿式粉砕後の前記スラリーを噴霧乾燥する工程を有することを特徴とする請求項4記載の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56791(P2013−56791A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195269(P2011−195269)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(391003598)富士化学株式会社 (40)
【Fターム(参考)】