説明

非晶質塩酸レルカニジピン

本発明は、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも約97%、さらに好ましくは、少なくとも約99%、さらになお好ましくは少なくとも約99.5%の純度を有する、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンを提供する。本発明は、さらに、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピン、および実質的に純粋な非晶質のレルカニジピンを含有する医薬組成物の調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンおよびその調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
レルカニジピン(メチル1,1,N−トリメチル−N−(3,3−ジフェニルプロピル)−2−アミノエチル1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(3−ニトロフェニル)−ピリジン−3,5−ジカルボキシレート)は、長時間作用性で血管選択性の高い、高脂肪親和性のジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬である。レルカニジピンの生物活性は、L型カルシウムチャネルのジヒドロピリジン・サブユニットを競合的に拮抗する、その能力に由来している。
【0003】
レルカニジピンは、降圧剤として有用である。レルカニジピンは、動脈平滑筋のカルシウムチャネルをブロックすることによって血圧を降下させ、それによって、末梢の血管抵抗性を降下させる。レルカニジピンには、心臓に対する筋収縮性のマイナス作用がなく、ごく稀に、軽い反射性頻拍症を起こすが、一般には短時間である。レルカニジピンは、高血圧症の治療が認可されており、ザニディップ(Zanidip)(登録商標)の名称で、欧州諸国で1996年から販売されている。
【0004】
レルカニジピンの塩酸塩は、レコルダッチ社(Recordati S.p.A.)(イタリア、ミラノ)から市販されている。塩酸レルカニジピンの調製方法、ならびに、レルカニジピンを個々の鏡像異性体に分割する方法は、特許文献1〜7に記載されている。
【0005】
特許文献1には、レルカニジピンの調製方法、および、1,1,N−トリメチル−N−(3,3−ジフェニルプロピル)−2−アミノエチルα−アセチル−3−ニトロシンナメートおよび3−アミノクロトン酸メチルを環化する最終工程について記載されている。レルカニジピンは、HClおよびNaClを含む水から結晶化することによってその塩酸塩として単離されている。しかしながら、この工程は、費用が嵩み、時間がかかり、また、得られる塩酸レルカニジピンの収率が比較的低い。その生成物は、粗く、はっきりとしない混合物であり、主成分は、非晶質の塩酸レルカニジピンだが、1%〜2%の結晶質の塩酸レルカニジピンも含まれていた。この生成物は、0.3:1〜0.5:1の水分比を有し、95%未満の塩酸レルカニジピン(結晶質の形態を含む)を含んでいた。
【特許文献1】米国特許第4,705,797号明細書
【特許文献2】米国特許第5,767,136号明細書
【特許文献3】米国特許第4,968,832号明細書
【特許文献4】米国特許第5,912,351号明細書
【特許文献5】米国特許第5,696,139号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0069285号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0083355号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような生成物は、医薬組成物に利用するには不純物が多すぎ、こういった利用に適するようにするには、例えば、様々な相でのクロマトグラフィによる、さらに徹底的な精製が必要とされるであろう。しかしながら、これらの方法による精製は、市販用には費用と時間がかかりすぎる。
【0007】
昨今の発明者および彼らの共同研究者によって、非晶質の組成物、特に非晶質レルカニジピンの遊離塩基がロウ状の物質を含む放出調節カプセルへの利用に非常に適しているということが、ごく最近になって発見された。したがって、レルカニジピン医薬組成物の発展を促進するためには、医薬品の製剤に適した非晶質の塩酸レルカニジピンについての技術が、必要とされている。さらに、非晶質の塩酸レルカニジピンの作製において、実質的に純粋で、扱い易く、医薬組成物および経口投薬形態に容易に利用することができ、また、工業規模で実施することが可能な、従来法よりも効率のよい医薬品グレードの非晶質の塩酸レルカニジピンの製造方法も当該技術分野において必要とされている。さらには、得られる非晶質の塩酸レルカニジピンについては、従来技術の塩酸レルカニジピンと比較して、例えば、溶解性およびバイオアベイラビリティなどの特性が、同様、もしくは向上していることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
新しい医薬組成物および固体の投薬形態の進歩を促進するために、本発明者は、短時間でシンプルな、工業規模での製造に適した、実質的に純粋な生成物を生じる、非晶質の塩酸レルカニジピンの改良された調製方法を見出した。本発明にかかる方法により調製可能な、精製された非晶質の塩酸レルカニジピンは、医薬組成物および固体の投薬形態、特に、放出調節する薬剤としてのロウ状基質を含む、放出調節された医薬品の投薬形態への利用に非常に適している。
【0009】
発明者は、また、本発明にかかる非晶質のレルカニジピンが、薬物動態学的特性を向上させ、その結果として、患者に投与した場合に高血圧の短時間での降下を提供する、即時放出性の医薬組成物に、有利に利用されるであろうことも見出している。非晶質の塩酸レルカニジピンは、結晶質の塩酸レルカニジピンの投与後、薬効をもたらすのに必要とされる時間に比べて、投与後に血圧を降下させる能力を発揮し始めるまでの時間が明らかに短い。
【0010】
本発明は、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンを提供する。本明細書中の開示にしたがって調製した非晶質のレルカニジピンは、実質的に純粋で、水に対する溶解性が非常に大きく、結晶質の塩酸レルカニジピンに比べて、患者に投与した場合に、降圧剤の薬効が現れるのが速い。
【0011】
別の態様では、本発明は、結晶質の塩酸レルカニジピンと比べて、改良された溶解性および異なる動的特性を有する、非晶質の塩酸レルカニジピン、および、その医薬組成物の調製方法について提供する。特定の実施態様では、本発明は、(a)約30℃〜約50℃の範囲の第1温度で、有機溶媒に結晶質の塩酸レルカニジピンを溶解して第1溶液を生成し、その第1溶液に約1℃〜約20℃の範囲の温度の水を加えて沈殿を生成し、約1℃〜約20℃の範囲の温度で約4〜約24時間、沈殿を保持し、非晶質の塩酸レルカニジピンを回収する各工程を有してなる、非晶質の塩酸レルカニジピンの調製方法を提供する。
【0012】
別の特定の実施態様では、本発明は、有機溶媒に結晶質の塩酸レルカニジピンを溶解し、有機溶媒を急速に蒸発させ、非晶質の塩酸レルカニジピンを回収する、各工程を有してなる、非晶質の塩酸レルカニジピンの調製方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施の態様では、本発明は、即効作用性の医薬組成物および固体の投薬形態、特に、実質的に精製された非晶質の塩酸レルカニジピンを含む、即時放出性の医薬組成物を提供する。
【0014】
本明細書では、次の用語を下記のように定義する:
「塩酸レルカニジピン」という用語は、メチル1,1,N−トリメチル−N−(3,3−ジフェニルプロピル)−2−アミノエチル1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(3−ニトロフェニル)−ピリジン−3,5−ジカルボキシレートの塩酸塩のことをいう。レルカニジピン塩は、鏡像異性体の一方もしくは両方の形態で存在して差し支えない。
【0015】
「非晶質」という用語は、実質的な結晶格子構造を持たない固体化合物のことをいう。非晶質の化合物は、典型的には、ガラス転移と定義される、幅の広い吸熱性の変化を伴うDSCプロットを生じる。これに比べて、結晶質の化合物は、典型的には、鋭い発熱ピークを示す。
【0016】
本明細書では、「実質的に純粋」とは、組成物の調製により持ち込まれた溶媒を含む、混入物質に対する重量/重量を基準として、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも約97%、さらに好ましくは、少なくとも約99%、および、さらになお好ましくは少なくとも約99.5%の純度である組成物のことをいう。
【0017】
「患者」という用語は、例えば、本態性高血圧症、二次性高血圧症、収縮期高血圧症、冠状動脈性心臓病(例えば、慢性安定狭心症、心筋梗塞症)、鬱血性心不全などの、治療すべき特定の状態を患っているか、あるいは、発現の危険性のある哺乳動物(例えば、ヒト)のことをいう。本発明は、特に、高血圧性クリーゼまたは狭心症を患っている、もしくは、早急な血管拡張が望ましい他の状態にある患者に適用可能である。血圧は、手動の血圧計、自動/電子装置または携帯型24時間血圧モニターを用いて測定してよい。
【0018】
「医薬的に認容可能な」という用語は、生体内での利用に適合可能な組成物を意味する。好ましい医薬的に認容可能な組成物としては、米国の監督官庁、または州政府、あるいは米国薬局方、もしくは他の一般的に認識されている薬局方によって、動物、特にヒトへの使用が認可されている組成物が挙げられる。
【0019】
「治療に効果的な量」とは、高血圧症の患者の血圧を降下させるのに十分な活性薬剤の量をいう。活性薬剤の治療に効果的な量は、収縮期および拡張期の血圧値が、それぞれ140および90mmHg以下になるように、血圧を降下させることが好ましい。活性薬剤の治療に効果的な量は、高血圧症ではない人の血圧を降下させてもさせなくても差し支えなく、あるいは、高血圧症の人すべての血圧を下げなくても構わない。心不全またはアテローム性動脈硬化症などの他の病状の治療における治療有効性もまた、例えば特許文献5および特許文献2にあるとおり、明確に意図されている。治療に効果的な量の活性薬剤により、例えば、約2〜6時間、血圧を降下させることが好ましい。血圧の短時間での降下が望まれる場合、治療に効果的な量の薬剤により、活性薬剤の投与後、約30分〜約60分以内で、収縮期血圧を約20〜30mmHg、および、拡張期血圧を約10〜20mmHg、降下させることが好ましい。
【0020】
本明細書では、「高血圧症」という用語は、以前の血圧測定値と比較して異常に高い動脈圧であって、その異常に高い値が、規定の時間を越えて維持されていることをいう。通常、期間は約3〜約6ヶ月である。上昇は、収縮期血圧、拡張期血圧、もしくは両方で観察されて構わない。通常、高血圧は140/90mmHgに等しいかそれより高い血圧と定義される。血圧は、当技術分野で既知のいずれかの方法で測定して構わない。これらの方法としては、限定はしないが、直接動脈穿刺、振動測定法、ドップラー超音波検査法、および血圧計が挙げられる。好ましい実施の態様では、血圧は、血圧計で測定される。
【0021】
血圧に用いられる「収縮期」という用語は、心収縮を引き起こす圧力のことをいう。「拡張期」という用語は、心拡張を引き起こす圧力のことをいう。典型的には、血圧は、斜線で区切った2つの数字で表され、第1の数字は収縮期圧であり、第2の数字は拡張期圧である。血圧は、伝統的に、水銀柱ミリメートル(mmHg)で表される。
【0022】
正常および高血圧症の成人の血圧は、典型的には、次のように分類される:

最近の世界保健機関の指針では、若年患者および糖尿病患者については、85mmHg未満の拡張期血圧、および、130mmHg未満の収縮期血圧が推奨されている。
【0023】
「降圧作用」という用語は、高血圧症の患者の血圧を降下させる活性薬剤の能力のことをいう。
【0024】
「所定の変化量(increment)」という用語は、血圧を所定の限界値未満、好ましくは140/90未満に降下させるために、患者が必要とする最小限の血圧の降下のことをいう。
【0025】
「即時放出性」という語句は、例えば、生体内において短時間で治療に効果的な血漿中濃度を提供するのに十分な短い所定の時間で放出される本発明にかかる組成物から、非晶質の塩酸レルカニジピンなどの活性成分が放出されることを意味する。ヒト患者に投与する場合、20または40mgの非晶質の塩酸レルカニジピンの投与で、レルカニジピンの放出によって、少なくとも約10ng/mlのレルカニジピン最大濃度(Cmax)、および、約45〜約75分の最大血漿中濃度までの経過時間(Tmax)を提供することが好ましい。
【0026】
「治療」および「治療する」という用語は、高血圧症、例えば、患者の収縮期または拡張期血圧のいずれかを、少なくとも約5mmHg、好ましくは、少なくとも約10mmHg、およびさらに好ましくは少なくとも約15mmHg低下させるなど、血圧を低減または軽減させることをいう。
【0027】

非晶質の塩酸レルカニジピンの調製
本発明は、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピン、具体的には、少なくとも約95%、および好ましくは、少なくとも約97%、さらに好ましくは、少なくとも約99%、さらになお好ましくは少なくとも約99.5%の純度を有する、非晶質の塩酸レルカニジピンを提供する。本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンの純度は、限定はしないが、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を含む、当技術分野で既知のいずれかの方法で測定して差し支えない。非晶質の塩酸レルカニジピンは、結晶質の塩酸レルカニジピンを0.5%未満で含むことが好ましく、結晶質の塩酸レルカニジピンが存在しないか、実質的に存在しないことがさらに好ましい。非晶質の塩酸レルカニジピンは、粒径がD(90%)<15μmに適するように、微粉化されることが望ましい。
【0028】
本発明は、非晶質の塩酸レルカニジピンの調製方法を提供する。本明細書で開示される方法では、塩酸レルカニジピンの他の既知の形態に比べて、および、非晶質の塩酸レルカニジピンの従前から知られている形態に比べて、改善された溶解性および異なる薬物動態学的特性を有する、実質的にさらに純粋な状態にある非晶質の塩酸レルカニジピンを生成する。本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンは、医薬組成物および固体の投薬形態に容易に組み入れられる。
【0029】
1つの実施の態様では、精製された結晶質の塩酸レルカニジピンから、非晶質の塩酸レルカニジピンを沈殿させることにより調製する。沈殿反応は、まず、結晶質の塩酸レルカニジピンを有機溶媒に約30℃〜約50℃の範囲の第1温度で溶解して第1溶液を生成し、次に、第1溶液に約1℃〜約20℃の範囲の温度の水を加えて沈殿を生成することにより行うことが好ましい。沈殿を、約1℃〜約20℃の範囲の温度で約4〜約24時間、保持し、続いて、非晶質の塩酸レルカニジピンを回収する。
【0030】
好ましい有機溶媒としては、限定はしないが、極性のプロトン性もしくは非プロトン性溶媒、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な水に混和性の溶媒としては、アルコール、好ましくは、メタノールおよびエタノールなどの(C〜C)−アルカノール;ケトン、好ましくは、アセトンなどのジ−(C〜C)−アルキルケトン;ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;および、ジメチルホルムアミドなどのアミドが挙げられる。特に好ましい溶媒としては、メタノールおよびジクロロメタンが挙げられる。メタノールとエタノールの混合液もまた、好ましい。
【0031】
別の実施の態様では、非晶質の塩酸レルカニジピンは、蒸発することによって調製される。結晶質の塩酸レルカニジピンの溶液は、有機溶媒に塩酸塩を溶解して調製することが好ましい。有機溶媒としては、限定はしないが、アルコール、好ましくは低級アルキルアルコールなどの極性のプロトン性および非プロトン性溶媒、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒、およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい溶媒のひとつは、メタノールである。次に、当技術分野で周知の技術を用いて、蒸発させることにより、溶媒を溶液から除去した。例えば、限定はしないが、真空下での蒸発が挙げられる。蒸発は、真空下、約20℃〜約40℃の範囲の温度で行われることが好ましく、約30℃の温度が最も好ましい。
【0032】

医薬組成物
本明細書に開示される方法によって調製された非晶質の塩酸レルカニジピンを、医薬組成物に製剤しても良い。1つの実施の態様では、本発明は、治療に効果的な量の実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピン、および、医薬的に認容可能な担体または希釈剤、香味料、甘味料、保存料、染料、結合剤、懸濁剤、分散剤、着色剤、錠剤分解物質、賦形剤、被膜剤、滑剤、可塑剤、食用油、および結合剤からなる群より選択される少なくとも1つの成分から実質的になる医薬組成物を提供する。好ましい実施の態様では、医薬組成物または薬剤形態は、本明細書に開示されるすべての用途で、約0.1〜400mgの非晶質の塩酸レルカニジピンを包含する。組成物または薬剤形態は、約1〜200mgの非晶質の塩酸レルカニジピンを包含することが好ましく、約5〜40mgを包含することがさらになお好ましい。
【0033】
適切な、医薬的に認容可能な担体または希釈剤としては、限定はしないが、エタノール、水、グリセロール、プロピレングリコール、アロエ・ジェル、アラントイン、乳糖、微結晶性セルロース、マンニトール、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、砂糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、グリセリン、ビタミンA油、ビタミンE油、ミネラルオイル、プロピオン酸PPG2ミリスチル、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、植物油、動物油、およびソルケタールが挙げられる。
【0034】
適切な錠剤分解物質としては、限定はしないが、例えばコーンスターチなどのデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、クロスポビドンなどが挙げられる。
【0035】
適切な滑剤としては、限定はしないが、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0036】
適切な被膜剤としては、限定はしないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、エチルセルロース、セラック、サッカロース、アクリル酸誘導体(例えば、メタクリル酸共重合体、アンモニオメタクリラート共重合体)、またはこれら物質の2種類以上の混合物が挙げられる。
【0037】
適切な分散剤および懸濁剤としては、限定はしないが、植物ガムなどの合成および天然ガム、トラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、寒天、およびゼラチンが挙げられる。
【0038】
抗付着剤および流動促進剤としては、限定はしないが、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。
【0039】
適切な可塑剤としては、限定はしないが、様々な分子量のポリエチレングリコール(例えば200〜8000ダルトン(Da))、クエン酸トリエチルおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0040】
適切な着色料としては、限定はしないが、酸化鉄、二酸化チタン、天然および合成レーキが挙げられる。
【0041】
適切な食用油としては、限定はしないが、綿実油、ゴマ油、ココナツ油およびピーナツ油が挙げられる。
【0042】
適切な結合剤としては、限定はしないが、サッカロース;ゼラチン;ブドウ糖;デンプン;限定はしないがメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などのセルロース材料;アルギン酸およびアルギン酸塩;ケイ酸アルミニウム・マグネシウム;ポリエチレングリコール;グアーガム;多糖類;ベントナイト;ポリビニルピロリドン(ポビドン);ポリメタクリル酸(オイドラギット(Eudragit)(登録商標)など);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(登録商標));エチルセルロース(エトセル(Ethocel)(登録商標));アルファ化デンプン(例えば、ナショナル(登録商標)1511およびスターチ1500)などを個別に、または組合せて、のいずれかが挙げられる。
【0043】
さらなる添加物の例としては、限定はしないが、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、第二リン酸カルシウムおよびポリデキストロースが挙げられる。
【0044】
本発明にかかる医薬組成物には、随意的に、被膜層を含めてもよい。被膜層は、被膜剤、可塑剤、抗付着剤および着色剤から構成されてよい。しかしながら、当技術分野で既知のいずれかのコーティングを用いて構わない。
【0045】
本発明にかかる医薬組成物は、非晶質の塩酸レルカニジピンを、組成物の総量に対して約0.001〜約0.2mg/mgの量で含むことが好ましく、組成物の総量に対して約0.005〜約0.15mg/mgがさらに好ましく、組成物の総量に対して約0.01〜約0.1mg/mgが最も好ましい。本発明にかかる医薬組成物は、約50〜約400mgの範囲の重量であることが好ましく、約5〜約40mgの非晶質の塩酸レルカニジピンを包含するが、活性薬剤の総量が最大でも約80mgまでであることが予定される。
【0046】
好ましい実施の態様では、医薬組成物は、担体、錠剤分解物質、結合剤、および滑剤などの可溶性および不溶性の成分を混合した本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンを包含する即時放出性の組成物である。本発明にかかる即時放出性の組成物の患者への投与により、レルカニジピンの結晶中濃度が急速に上昇することが好ましい。即時放出性の組成物の投与により、約45〜約75分の経過時間(Tmax)で、少なくとも約10ng/ml(Cmax)のレルカニジピンの最大血漿中濃度をもたらすことが好ましい。
【0047】
好ましい実施の態様では、即時放出性の組成物は、担体、錠剤分解物質、滑剤、および結合剤を包含する。担体成分は、1種類またはそれ以上の、前述の水に溶解性および/または不溶性の担体であって構わない。水溶性の担体としては、例えば、サッカロース、乳糖、果糖またはマンニトールなどの糖類が好ましい。水に不溶性の担体としては、例えば、微結晶性セルロースなどが好ましい。錠剤分解物質には、前述の錠剤分解物質のいずれか1つであって差し支えなく、デンプングリコール酸ナトリウムが好ましい。結合剤は、前述の結合剤のいずれか1つであって差し支えなく、ポリビニルピロリドン(ポビドン)が好ましい。滑剤は、前述の滑剤のいずれか1つであってよく、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0048】
即時放出性の組成物は、中核に活性薬剤ならびに可溶性および不溶性の成分の混合物を堆積させることにより生成して構わない。混合物は、湿潤塊(wet massing)および押出成形、造粒、噴霧乾燥もしくは当技術分野で既知の他の方法を用いて堆積させてもよい。さらには、混合物を、懸濁液の調製に利用し、カプセルに充填し、錠剤に圧入し、または小袋に充填しても差し支えない。
【0049】
即時放出性の組成物を、随意的に、フィルム・コーティングして、組成物の耐久性、外観、および/または取扱い性を向上させても良い。フィルム・コーティングは、即時放出性組成物の溶解性および/または薬物動態特性を妨げないことが好ましい。本発明が意図するフィルム・コーティングの例としては、限定はしないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリメタクリル酸が挙げられる。しかしながら、当技術分野で既知のいずれかのコーティングであっても構わない。
【0050】
即時放出性の医薬組成物もまた、随意的にさらなる賦形剤を含めて外観、取扱い性、および加工特性および/または活性成分の溶解特性を向上させて構わない。本発明が意図するさらなる賦形剤としては、限定はしないが、担体、希釈剤、錠剤分解物質、滑剤、流動促進剤および/または抗付着剤が挙げられる。
【0051】
別の実施の形態では、本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンは、非晶質の塩酸レルカニジピンおよびロウ状物質を含む放出調節された組成物に混ぜて構わない。放出調節されたレルカニジピンの医薬組成物は、市販の塩酸レルカニジピンの即時放出性の錠剤と比較して、1回の投薬による非晶質の塩酸レルカニジピンの平均血漿中濃度の増加を、時間を拡張して提供する、レルカニジピンの放出調節を提供する。具体的には、患者に投与する場合、本発明の組成物は、投薬後少なくとも24時間にわたり、約5ng/mlを超えるレルカニジピンの平均血漿中濃度をもたらす。
【0052】
「ロウ状の物質」という用語は、低融点の可塑性の固体物質のことをいう。「ロウ状の物質」は、状況に応じて、1種類の化合物または様々な化合物の混合物のことを指して構わない。ロウ状の物質は、脂肪親和性または親水性であって構わない。ロウ状の物質は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールエステル、および、脂肪酸グリセリドおよびそれらの組み合わせなどの、多価アルコールの脂肪酸アシルエステルが好ましい。ロウ状の物質は、ポリグリコール化グリセリド(polyglycolized glycerides)がさらに好ましい。
【0053】
本明細書では、「固体」という用語は、室温で固体または半固体の物質のことをいう。したがって、本明細書では、「固体」の物質は、例えば体温では液体に変化しても良い。
【0054】
放出調節された製剤への利用に適した脂肪酸グリセリドには、中鎖および長鎖脂肪酸グリセリドの両方が含まれる。1つの態様では、本発明にかかる医薬組成物には、1種類またはそれ以上の長鎖(C12〜C22)脂肪酸グリセリド(グリセロールのモノエステル、ジエステル、および/またはトリエステルを含む)が含まれる。本発明の範囲に含まれる長鎖脂肪酸グリセリドの例としては、Compritol 888 ATO(登録商標)およびPrecirol ATO 5(登録商標)(Gattefosse社(アメリカ合衆国ニュージャージー州パラマス)から市販されている)が挙げられる。
【0055】
ここでの利用に適している、さらに好ましい脂肪酸グリセリドとしては、C〜C11脂肪酸の1種類またはそれ以上のトリグリセリドなどの1種類またはそれ以上の中鎖(C〜C11)脂肪酸グリセリドが挙げられる。本発明の範囲に含まれる、中鎖脂肪酸トリグリセリドの一例は、Miglyol(登録商標)812(Condea Chemie社(アメリカ合衆国ニュージャージー州クランフォード)から市販されている)である。
【0056】
放出調節された製剤への利用に適したポリエチレングリコールエステルおよびポリプロピレングリコールエステルには、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのモノおよびジエステルが含まれる。ポリエチレングリコールエステルおよびポリプロピレングリコールエステルに包含されるのに適切で好ましい脂肪酸は、先に定義したC12〜C22脂肪酸である。ポリエチレングリコールエステルおよびポリプロピレングリコールエステルにそれぞれ用いられる適切なポリエチレングリコール鎖およびポリプロピレングリコール鎖は、例えば、米国薬局方に記載されている。
【0057】
本発明の放出調節された組成物に用いるのに好ましい脂肪酸グリセリドは、約40℃〜約80℃の融点および約1〜約14のHLB値を有することが好ましい。
【0058】
「ポリグリコール化グリセリド」は、モノ、ジ、およびトリグリセリドおよびポリエチレングリコールのモノおよびジエステルの混合物を意味する。ポリグリコール化グリセリドは、本発明への利用には、特にロウ状の物質が適している。ポリグリコール化グリセリドはGelucire(登録商標)(Gattefosse社(アメリカ合衆国ニュージャージー州パラマス))という名称で市販されている。
【0059】
別の実施の態様では、本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンは、非晶質の塩酸レルカニジピンおよび親水性のポリマーを包含する放出調節する基質を、放出調節された組成物に混ぜて構わない。放出調節されたレルカニジピン医薬組成物は、市販されているレルカニジピンの即時放出性の錠剤と比較して、1回の投薬によるレルカニジピンの平均血漿中濃度の増加を提供する時間を拡張した、レルカニジピンの放出調節を提供する。具体的には、患者に投与する場合、本発明の組成物は、投薬後少なくとも24時間にわたり、約5ng/mlを超えるレルカニジピンの平均血漿中濃度をもたらす。
【0060】
別の実施の態様では、放出調節された組成物は、中核、非晶質の塩酸レルカニジピンおよび親水性のポリマーからなる。「親水性のポリマー」という用語は、低融点の固体ポリマー物質のことをいう。親水性のポリマーは、望ましい放出調節特性に応じて、1種類のポリマーのみまたは2種類以上のポリマーの混合物のいずれかであって構わない。典型的な親水性ポリマーは、錠剤結合剤、懸濁または増粘剤、および被膜剤の中から見出されるであろう。親水性のポリマーは、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウムおよびそれらの組合せが好ましい。親水性のポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体がさらに好ましい。
【0061】
放出調節された組成物に、随意的にフィルム・コーティングを含めて、組成物の耐久性、外観および/または取扱い性を向上させても良い。フィルム・コーティングは、放出調節された組成物の溶解性および/または薬物動態特性を妨げないことが好ましい。本発明が意図するフィルム・コーティングの例としては、限定はしないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリメタクリル酸が挙げられる。しかしながら、当技術分野で既知のコーティングのいずれかを用いて構わない。
【0062】

単位投薬形態
医薬組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、カプレット、ボーラス(大丸薬)、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液、滅菌非経口懸濁液、滅菌非経口乳濁液、エリキシル剤、チンキ剤、定量制の噴霧器または液体スプレー、点滴薬、アンプル、自動注入装置または座剤などの単位投薬形態として製剤して構わない。単位投薬形態は、経口、非経口、経鼻、舌下、または直腸投与、もしくは吸入あるいは吹送、経皮貼付、凍結乾燥組成物での投与に利用してよい。一般には、全身のアベイラビリティをもたらす、活性成分の輸送のいずれも利用可能である。単位投薬形態は、経口投薬の形態が好ましく、固体の経口投薬形態が最も好ましい。したがって、好ましい投薬形態は、錠剤、丸薬、カプレットおよびカプセルである。非経口の製剤もまた好ましい。
【0063】
固体の経口投薬形態は、本発明にかかる活性薬剤を、医薬的に認容可能な担体、および、上述の他の望ましい添加剤と混合することにより調製して差し支えない。混合物は、典型的には、本発明にかかる活性薬剤および担体および他の望ましい添加剤を均一混合物になるまで、すなわち、活性薬剤が組成物中に均一に行渡るように分散するまで混合する。この場合、組成物は乾燥した、または、湿った顆粒として形成される。
【0064】
錠剤または丸薬は、表面をコーティング、もしくは、調合して、徐放および持続放出の単位投薬形態などの遅延性および/または持続性の作用を有する単位投薬形態を形成することが可能である。例えば、錠剤または丸薬は、内側の投薬成分と外側の投薬成分から構成することが可能であり、後者は層状または前者を包み込む形態で存在する。胃での分解に耐える働きをし、また、内側の成分が原形を保ったままで十二指腸を通過させ、あるいは、放出を遅延させる、腸溶性の層によって2つの成分を隔てることが可能である。
【0065】
活性薬剤の放出を制御する生分解性ポリマーとしては、限定はしないが、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびハイドロゲルの架橋体または両親媒性のブロック共重合体が挙げられる。
【0066】
液体投薬形態として用いるには、活性物質またはそれらの生理的に認容可能な塩を、随意的に、可溶化剤、乳化剤または他の助剤などの通常用いられる物質と共に、溶液、懸濁液または乳濁液にする。活性の組合せおよび対応する生理的に認容可能な塩に用いる溶媒としては、水、生理的食塩水、または、エタノール、プロパンジオール、またはグリセロールなどのアルコールが挙げられる。さらには、ブドウ糖溶液またはマンニトール溶液などの糖溶液も用いてよい。言及した様々な溶媒の混合物もまた、本発明に利用してよい。
【0067】
経皮的な投薬形態もまた、本発明の意図するところである。経皮の形態は、液タンク(fluid reservoir)または粘着薬用の基材のシステムのどちらかを用いた拡散促進経皮システム(経皮パッチ)であって差し支えない。他の経皮投薬形態としては、限定はしないが、局所用のゲル、水薬、軟膏、経粘膜的方法および用具、およびイオン化導入(iontohoretic)(電気拡散)デリバリーシステムが挙げられる。経皮的な投薬形態は、本発明にかかる活性薬剤の徐放および持続放出に利用してよい。
【0068】
非経口投与、特に注入による投与のための本発明にかかる医薬組成物および単位投薬形態には、典型的には、前述のように、医薬品として認容可能な担体が含まれる。液体の担体は植物油が好ましい。注入は、例えば、静脈注射、髄膜注射、筋肉注射、胃内注入、気管内注入または皮下注射であって構わない。
【0069】
活性薬剤は、さらに、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクルおよび多層膜ベシクルなどのリポソームデリバリーシステムによる投与が可能である。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはフォスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から生成可能である。
【0070】
非晶質の塩酸レルカニジピンは、目標設定可能な薬物担体としての水溶性ポリマーと組み合わせても差し支えない。これらポリマーとしては、限定はしないが、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリル‐アミドフェノール、ポリヒドロキシ‐エチルアスパルトアミドフェノール、およびパルミトイル残基で置換されたポリエチル‐エネオキシドポリリシンが挙げられる。
【0071】
投薬
本発明にかかる医薬組成物または単位投薬形態は、静脈、気管内、皮下、経口、粘膜非経口(mucosal parenteral)、口腔、舌下、眼内、肺内、経粘膜、経皮、および筋肉内などの様々なルートで投与して構わない。単位投薬形態は、当業者に知られている経皮貼布を用いて、適切な鼻腔内用の賦形剤の局所的利用、また、経鼻投与の形態での投薬もまた可能である。経口投与が好ましい。
【0072】
本発明にかかる医薬組成物または単位投薬形態は、降圧剤治療を必要としている動物、好ましくはヒトに投与してよい。本発明にかかる医薬組成物または単位投薬形態は、最適な降圧剤作用および血圧の降下をもたらすと同時に個々の患者に対する毒性または副作用を最小限にするため、上述の指標を踏まえて、規定の試験によって決定される用量および投薬計画に従って、投薬してよい。しかしながら、こういった治療計画の微調整は、本明細書で示す指標を踏まえて、規定のように行われる。
【0073】
本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンを含む組成物の投薬量は、基礎疾患の状態、個々の状態、体重、性別および年齢、および投薬の形態などのさまざまな要因に従って、様々に変化させて構わない。経口投薬用には、医薬組成物を、分割線入りまたは分割線のない固体の単位投薬形態の形で提供可能である。
【0074】
本発明にかかる医薬組成物または単位投薬形態は、毎日1回の投薬で差し支えなく、または、1日の総服用量を、分割して投薬しても良い。さらには、他の活性薬剤の同時投与または逐次的な投与も望ましいであろう。本発明のそれらの非晶質の形態は、既知の薬物治療のいずれか、好ましくは高血圧の治療と組み合わせて構わない。例えば、本発明にかかる即時放出性の組成物は、米国特許出願公開第2003/00180355号明細書に開示されるエナラプリルなどのACE阻害剤、または、米国特許出願公開第2004/0147566号明細書に開示されるリシノプリルと組み合わせてもよい。レルカニジピンは、例えば、米国特許出願公開第2004/0198789号明細書に開示されるアンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)と組み合わせてもよい。本発明は、さらに、レルカニジピンの製剤に利尿薬または受容体遮断薬を加えることも意図している。典型的な利尿薬としては、それぞれヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、およびエタクリン酸などのチアジド系利尿薬、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬が挙げられる。
【0075】
併用療法のためには、化合物は、最適な投薬の組合せおよび投薬計画が達成されるまで、最初のうちは分割投薬形態で提供されるであろう。したがって、患者の個々の高血圧の状態に適した投薬量になるまで、徐々に増量して構わない。マイナスの副作用なしに血圧を降下させるための各化合物の適切な投薬量が決定された後、次に、患者への投与を、各活性薬剤の適切な量を含む1回投薬の形態に切り替えてもよいし、2回投薬の形態を継続してもよい。
【0076】
本発明にかかる併用療法を用いた正確な投薬量および投薬計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、および病状;治療すべき高血圧の重症度および病因;投薬経路;患者の腎および肝機能;患者の治療歴;および患者の対応を含む様々な要因にしたがって選択される。毒性なしに薬効を生じる範囲内にある化合物の濃度を達成するのに最適な精度のためには、目標とする部位への薬物の有効性の反応速度に基づいた計画が必要である。これには、薬の吸収、分散、代謝、排泄についての考慮、および用法・用量に対する患者の対応が含まれる。しかしながら、治療計画のこういった微調整は、本明細書の指標を踏まえて、規定のように行われる。
【0077】
一般に、非経口の投与のための投薬形態では、投薬形態の総重量を基礎とした非晶質のレルカニジピンの重量で、0.1%以上含まれ、約0.5%〜約30%であることが好ましい。経皮的な投薬形態では、投薬量の総重量100%を基礎とした活性薬剤の重量で約0.01%〜約100%を含む。
【0078】
本発明の好ましい実施の形態では、組成物を患者に毎日投与している。さらに好ましい実施の形態では、医薬組成物または投薬形態は、非晶質の塩酸レルカニジピンを約0.1〜400mg、さらに好ましくは約1〜200mg、さらになお好ましくは約5〜40mgの量で毎日投薬される。
【0079】
本発明にかかる実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンの投与では、患者の血圧は、所定の変化量で急速に降下することが好ましい。20mgの非晶質の塩酸レルカニジピンの投与後の収縮期血圧の降下は、約20〜約30mmHgの範囲であることが好ましく、約25mmHgであることが最も好ましい。20mgの非晶質の塩酸レルカニジピンの投与後の拡張期血圧の降下は、約10〜約20mmHgの範囲であることが好ましく、約15mmHgであることが最も好ましい。
【0080】
他の態様では、実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンの投与は、投与後の患者の高血圧の急速な降下を提供する。本発明にかかる実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンの治療に効果的な量の投与により、活性薬剤の投与後、約45〜約75分の時間経過(Tmax)で、レルカニジピンの最大血漿中濃度(Cmax)が、約10〜約20ng/mlになるように、レルカニジピンの血漿中濃度で急速な上昇をもたらすことが好ましい。本発明にかかる非晶質の塩酸レルカニジピンの治療に効果的な量の投与により、Cmaxが少なくとも約10ng/ml、およびTmaxが約1時間となることが、さらになお好ましい。
【実施例】
【0081】
次の実施例は、本発明の様々な態様の性質を説明するものであり、いかなる方法によっても限定されることを意図するものではない。
【0082】
実施例1:沈殿による非晶質の塩酸レルカニジピンの調製
結晶質の塩酸レルカニジピン(500g;レコルダッチ社(Recordati S.p.A.)(イタリア、ミラノ)製)を、約35〜約40℃に加熱しながら、1Lのメタノールに溶解した。攪拌装置、グーチ濾過器および滴下漏斗を備えた、温度調節された円筒型の反応装置を0〜5℃に冷却した。結晶質の塩酸レルカニジピン/メタノール温溶液を、漏斗を用いて、6時間以上かけて反応装置に滴下して加え、その間、反応装置を約5℃に保った。得られた懸濁液を約2〜5℃の温度で約16時間攪拌した。得られた懸濁液を、グーチ濾過器を用いて真空下で濾過した。得られた固体を、室温で48時間、空気を流して乾燥し、つづいて70℃で30時間、真空乾燥し、非晶質の塩酸レルカニジピンを得た(収率72.8%)、HPLC分析:99.6%。
【0083】
得られた実質的に純粋な非晶質の塩酸レルカニジピンを、マイクロネットM300(Nuova Guseo社(イタリア、ピアツェンツァ州、ヴィッラノーヴァ・スッラルダ)製)を用いたジェット・ミル処理によって微粉末化した。微粉末化のパラメーターを次に示す:射出圧力 約490kPa(5kg/cmq)、微粉末化圧力 約882kPa(9kg/cmq)、およびサイクロン圧力 約245kPa(2.5kg/cmq)。微粉末化の受容能力は16kg/時である。粒径は、ガライCIS 1レーザー機器(ガライ社(Galai)(イスラエル、ハイファ)製)を用いたレーザー光散乱法により検出する。微粉末化は、平均粒径が、50%径で2〜8μmおよび90%径<15μmになるように行った。
【0084】
得られた非晶質の塩酸レルカニジピンを、開かれた毛管法(pen capillary method)を用いて融点分析を行った。得られた融点を表1に示す。
【0085】
実施例2:蒸発による非晶質の塩酸レルカニジピンの調製
結晶質の塩酸レルカニジピン(40g;レコルダッチ社(Recordati S.p.A.)(イタリア、ミラノ)製)を、約35℃〜約40℃の温度で、2.8Lのメタノールまたはジクロロメタンのいずれかに溶解した。溶媒を、真空下(1mmHg)、30℃でロータリーエバポレーターを用いて一晩乾燥し、除去した。得られた固体を、真空下(1mmHg)、50℃でさらに乾燥し、非晶質の塩酸レルカニジピンを得た。
【表1】

【0086】
得られた非晶質の塩酸レルカニジピンを、開かれた毛管法を用いて融点分析を行った。得られた融点を上記表1に報告する。
【0087】
非晶質の塩酸レルカニジピンの水溶解性を、結晶質の塩酸レルカニジピンの溶解性と比較した。各試料の溶解性は、20〜30mgの試料を10mlの水に懸濁し、27〜28℃で24時間攪拌して決定した。試料を次にPVDFフィルター(0.2μm)を通して濾過し、その溶液をアセトニトリルで希釈してHPLCで分析した。結果を上記表1に示す。
【0088】
実施例3:結晶質の塩酸レルカニジピンと比較した非晶質塩酸レルカニジピンの薬物動態特性
非晶質塩酸レルカニジピンのバイオアベイラビリティを、イヌを用いて市販の結晶質の塩酸レルカニジピン(「Zanidip」、レコルダッチ社(イタリア、ミラノ)製))と比較した。4体のビーグル犬に、実施例1で調製した非晶質の微粉末化した塩酸レルカニジピンを5mg/kgまたは無作為に発注した結晶質の塩酸レルカニジピン(「Zanidip」)を5mg/kg、投与した。非晶質および結晶質の塩酸レルカニジピンを下記表2および表3のとおりに即時放出性の錠剤に製剤した。各期間の間には、1週間のウォッシュアウト期間を設けた。
【表2】

【表3】

【0089】
血液試料を一定の時間で採取し、レルカニジピンの血漿中濃度を立体選択的分析に有効な方法であるLC−MS/MSで測定した。レルカニジピンを、n−ヘキサンおよびジエチルエーテルの混合物で液−液抽出を用いてイヌの血漿から抽出し、続いて窒素下で溶媒を蒸発させた。得られた乾燥残渣を、メタノールと水の混合物に混ぜた。レルカニジピンの2つの鏡像異性体をキロバイオティック(Chirobiotic)Vカラム(バンコマイシン)(粒径5μm、カラムサイズ150×4.6mm(ASTEC社製(アメリカ合衆国ニュージャージー州ホイッパニー)))で分割し、電気スプレー技術を用いて質量分析計(MS/MS)で検出した。分析方法は、両方の鏡像異性体において、0.2〜20ng/mlの血漿中濃度で有効であった。本方法では、15%の誤差が特定されている。
【0090】
両方の形態における、S−およびR−レルカニジピンの平均血漿中レベルを図2および図3に示す。薬物動態データは下記表4および表5にまとめる。
【表4】

【表5】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】結晶質の塩酸レルカニジピン(I型およびII型)、および、非晶質の塩酸レルカニジピンの粉末X線回折スペクトルの比較。
【図2】5mg/kgの非晶質の塩酸レルカニジピン(−□−)および5mg/kgの結晶質の塩酸レルカニジピン(−○−)をイヌに投与後の生体内のS−レルカニジピンの血漿中濃度。
【図3】5mg/kgの非晶質の塩酸レルカニジピン(−□−)および5mg/kgの結晶質の塩酸レルカニジピン(−○−)をイヌに投与後の生体内のR−レルカニジピンの血漿中濃度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも95%の純度を有する非晶質の塩酸レルカニジピン。
【請求項2】
少なくとも99%の純度を有することを特徴とする請求項1記載の非晶質の塩酸レルカニジピン。
【請求項3】
少なくとも99.5%の純度を有することを特徴とする請求項1記載の非晶質の塩酸レルカニジピン。
【請求項4】
結晶質の塩酸レルカニジピンを実質的に含んでいないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の非晶質塩酸レルカニジピン。
【請求項5】
粒径がD(90%)<15μmの大きさに微粉末化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の非晶質塩酸レルカニジピン。
【請求項6】
(a) 結晶質の塩酸レルカニジピンを有機溶媒に溶解し、
(b) 非晶質の塩酸レルカニジピンを、
(i) 前記溶液に水を加えて沈殿を生成し、該沈殿を回収する工程、または
(ii) 前記有機溶媒を蒸発させて除去する工程、
のいずれかによって単離する、
各工程を有してなる、非晶質の塩酸レルカニジピンの調製方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、極性のプロトン性または非プロトン性溶媒もしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、塩素系溶剤またはアミドであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、メタノールまたはジクロロメタンであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記有機溶媒がアセトン、ジメチルホルムアミドまたはメタノールとエタノールの混合液であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記工程(a)を30℃〜50℃の温度で行うことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記工程(i)における前記水が1℃〜20℃の温度であり、前記溶液をその温度で4〜24時間置き、完全に沈殿させることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒の蒸発を、真空下、20〜40℃の温度で行うことを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の非晶質の塩酸レルカニジピン、または、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法により調製された非晶質の塩酸レルカニジピン、および医薬的に認容可能な希釈剤、担体および/または賦形剤を有してなる医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、医薬的に認容可能な希釈剤、香味料、甘味料、保存料、染料、結合剤、懸濁剤、増粘剤、分散剤、着色料、錠剤分解物質、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、および食用油から選択される少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、放出調節に適応可能であり、少なくとも1つのロウ状物質を含むことを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ロウ状物質が、1種類のポリアルコール脂肪酸アシルエステル、または、複数種類のポリアルコール脂肪酸アシルエステルの混合物であることを特徴とする請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記または各ポリアルコール脂肪酸アシルエステルが、ポリエチレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、または脂肪酸グリセリドであることを特徴とする請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記ロウ状の物質が、脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールエステルを含むポリグリコール化グリセリドであり、該ポリグリコール化グリセリドが33℃〜64℃の融点および1〜14のHLB値を有することを特徴とする請求項16記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が、放出調節に適合し、単位投薬形態であり、また、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはプルランカプセルに充填されることを特徴とする請求項14〜20のいずれか1項記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−531515(P2008−531515A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556565(P2007−556565)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001782
【国際公開番号】WO2006/089787
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507061708)レコルダーティ アイルランド リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】RECORDATI IRELAND LIMITED
【Fターム(参考)】