非水二次電池用電解液及び二次電池
【課題】サイクル特性及び低温放電率において高い性能を示し、しかも正極特性に関わる高温保存性(必要によりさらに高速での放充電性)にも優れる非水二次電池用電解液および二次電池の提供をする。
【解決手段】電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(前記式中、R11〜R15、R21〜R24、R31〜R34は水素原子または特定の置換基を示す。L11、L21、L31、L32は特定の連結基を示す。Xは電子求引性基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【解決手段】電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(前記式中、R11〜R15、R21〜R24、R31〜R34は水素原子または特定の置換基を示す。L11、L21、L31、L32は特定の連結基を示す。Xは電子求引性基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒を含む非水二次電池用電解液、およびそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、注目を集めているリチウムイオン電池と呼ばれる二次電池は、充放電反応にリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)と、リチウムの析出および溶解を利用する二次電池(いわゆるリチウム金属二次電池)とに大別される。これらは、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られる。この特性を利用して、近年、カメラ一体型VTR(video tape recorder)、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器用の電源として広く普及している。これに伴い、特に軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池の開発が進められている。さらには、その小型化、軽量化および長寿命化、高安全化が強く求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池やリチウム金属二次電池(以下、これらを総称して単にリチウムイオン二次電池ということがある。)の電解液としては、導電率が高く電位的にも安定であるため、炭酸プロピレンあるいは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系の溶媒と、六フッ化リン酸リチウムなどの電解質塩との組み合わせが広く用いられている。
【0004】
電解液の成分に関して改良を行った例として、高温(80℃)時の内部抵抗増加を抑えるために特定の環状化合物を適用したものがある(特許文献1参照)。また、電極にポリフッ化ビニリデンの膜を形成した特殊なセルにおいて、酸無水物を電解液に添加することで、放電時のガス発生を抑制することができるとしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−265858号公報
【特許文献2】特開2001−155772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの確認によると、昨今益々高まる二次電池の性能の向上を考慮するとき、前記特許文献の技術では未だ十分とは言えず(後記比較例参照)、複数の評価項目における総合的な高性能化が望まれた。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性及び低温放電率において高い性能を示し、しかも正極特性に関わる高温保存性(必要によりさらに高速での放充電性)にも優れる非水二次電池用電解液および二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
〔2〕式(I−1)の置換基Xが、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を示す〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔3〕式(I−1)中、R11〜R14が水素原子である〔1〕または〔2〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔4〕式(I−1)のXがシアノ基である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔5〕式(I−1)の−L11−R15が、−COOR16で表される〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
(R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
〔6〕式(II−1)におけるL21が形成する環が−CONR25−(ここでR25はアルキル基またはアリール基を示す)または−COO−を含む〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔7〕式(II−1)で表される化合物が、下記式(II−2)で表される化合物である〔1〕または〔6〕に記載の非水二次電池用電解液。
【化2】
(式中、R21〜R24は式(II−1)と同義である。L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
〔8〕式(II−1)におけるL21がなす環または式(II−2)におけるL22がなす環が、5員環または6員環である〔1〕、〔6〕、および〔7〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔9〕式(III−1)における(L31)nがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、または−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)である〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔10〕式(III−1)におけるL32が、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、または−NR35−である〔1〕または〔9〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔11〕式(III−1)で表される化合物が下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物である〔1〕、〔9〕、および〔10〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【化3】
(式中、R31〜R34及びL32は、式(III−1)と同義である。)
〔12〕式(III−1)におけるL32が、炭素数1〜3のアルキレン基である〔1〕および〔9〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔13〕式(III−1)におけるL32が、メチレン基である〔1〕および〔9〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔14〕電解質がリチウム塩である〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔15〕シクロプロパン化合物を電解液の総量に対して0.005〜20質量%の範囲で適用する〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔16〕有機溶媒として、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルを採用した〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔17〕〔1〕〜〔16〕に記載の非水二次電池用電解液と、正極と、負極とを備えるリチウム二次電池。
〔18〕負極の活物質としてチタン酸リチウムを適用した〔17〕に記載の二次電池。
〔19〕第1剤と第2剤とを混合して用いる非水二次電池用電解液のキットであって、
第1剤が電解質を含有し、第2剤が下記式(I−1)、式(II−1)、または式(III−1)で表されるシクロプロパン化合物を含有する非水二次電池用電解液キット。
【化4】
(式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の非水二次電池用電解液及びこれを用いた二次電池は、サイクル特性及び低温放電率において高い性能を示し、しかも正極特性に関わる高温保存性(必要により放充電性を含む)にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の機構をモデル化して示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係るリチウムイオン二次電池の具体的な構成を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例の試験No.II−301とII−c32の放電曲線を示すグラフである。
【図4】実施例の試験No.III−301とIII−c32の放電曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態I〜IIIについてそれぞれ説明する。なお、本実施形態I〜IIIは同一または対応する特別な技術的特徴を共有し、単一の一般的発明概念を構成している。
<実施形態I>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。本実施形態で用いるシクロプロパン化合物は特定の置換基Xを有する。この基は電子を求引する性質を有し、その作用によりシクロプロパン環を適度に開環させやすくし、電極表面もしくはその近傍において良好な作用をもたらす重合体の生成を促したと考えられる。さらに、これらの基と同じ炭素原子に置換している特定の置換基(−L11−R15)も好適に機能し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとってより望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0011】
[式(I−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0012】
【化5】
【0013】
・R11〜R14
式中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R11〜R14は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R11〜R14はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
なかでも、R11〜R14が水素原子であることが特に好ましい。
【0014】
・R15
R15は炭素数1〜7の置換基を表し、好ましくは炭素数1〜5の置換基である。R15は炭素原子及び水素原子のみからなる炭化水素置換基でもよいが、O、N、又はSを含む置換基であってもよい。R15は直鎖であっても分岐を有していてもよく、環状であっても鎖状であってもよい。また、R15は、飽和結合のみで構成されていても、不飽和結合を有していてもよい。環状である場合には、芳香族環であっても、脂肪族環であっても、芳香族複素環であっても、脂肪族複素環であってもよい。R15がO、N、又はSを含む場合、Oを含む原子群は、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)などが挙げられる。Nを含む原子群は、イミノ基(−NR17−:R17は水素原子もしくはアルキル基であり、好ましい範囲は後述する。)、アミド基(−CONR17−)などが挙げられる。Sを含む原子群は、チオエーテル基(−S−)、チオカルボニル基(−CS−)、−CSO−、−CSS−などが挙げられる。
【0015】
・L11
L11は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)またはカルボニル基を表す。アルキレン基は置換基を有していてもよく、好ましくは後記の置換基Tが挙げられる。
【0016】
・X
Xは電子求引性基を示す。電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性、電子供与性の尺度であるHammett則の置換基定数σpを用いれば、σp値が0以上の置換基である。Hammett則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。Hammett則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編,「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Corwin Hansch, A. LEO and R. W. TAFT“A Survey of Hammett Substituent Cosntants and Resonance and Field Parameters”Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しい。なお、本実施の形態において、各置換基をHammettの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもHammett則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。
【0017】
置換基定数σp値として好ましくは0.1〜1.0、より好ましくは0.2〜1.0、最も好ましくは0.3〜1.0である。
【0018】
Xの具体的な置換基の例としては、シアノ基(−CN)、アルコキシカルボニル基(−COOR16)、カルバモイル基(−CON(R18)2)を示す。
R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R16は、なかでもヘテロ原子のないアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基がより好ましい。R16は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、後記置換基Tが挙げられる。
R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。R17がアルキル基であるとき、炭素数1〜4が好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基がより好ましい。R17は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、後記置換基Tが挙げられる。
R18はR17と同義の基を表す。
Xは、シアノ基(−CN)またはアルコキシカルボニル基(−COOR16)であることが好ましく、シアノ基(−CN)がより好ましい。
【0019】
以下に、上記例示置換基の一部についてσp値を示しておく。
【0020】
【表A】
【0021】
なお上記各置換基ないし連結基の機能は断定的ではないが、下記のように推定される。連結基L11を、アルキレン基、カルボニル基にすることにより、電位調整作用がはたらき、二次電池における動作電位の範囲で効果的に被膜形成ができるようになると考えられる。なかでも、L11がカルボニル基であれば、更にその電子求引性が作用し、被膜形成性が向上すると考えられる。また、R15の末端置換基は、形成された被膜中でのリチウムイオンの安定化に寄与していると推定される。
【0022】
以下に、式(I−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0023】
【化6】
Me:メチル基
tBu:t−ブチル基
【0024】
上記式(I−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0025】
前記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<実施形態II>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。本実施形態で用いるスピロ環構造をもつシクロプロパン化合物はシクロプロピル基の隣(α位)にカルボニル基を有する。カルボニル基は電子を求引する性質を有し、その作用によりシクロプロパン環を適度に開環させやすくし、電極表面もしくはその近傍において理想的な重合体の生成を促したと考えられる。さらに、上記カルボニル基を含む環状構造部も好適に作用し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、スピロ環構造を有する特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとってより望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0027】
[式(II−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0028】
【化7】
【0029】
・R21〜R24
式中、R21〜R24は水素原子もしくは置換基を表し、なかでも好ましくは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R21〜R24は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R21〜R24はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
R21〜R24はなかでも、水素原子、アルキル基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基が好ましく、水素原子またはアルキル基が特に好ましい。
アルキル基としては、後記置換基Tの例が挙げられるが、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜7のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、またはベンジル基が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6〜26のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が更に好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはターシャリーブトキシ基が特に好ましい。
カルボニル基含有基としては、アルキルカルボニル基、アミド基、またはアルコキシカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、またはターシャリーブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0030】
・L21
L21は、シクロプロピル基の炭素原子及びカルボニル基とともに環構造を形成する原子群を表す。L21がなす環は、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、芳香族複素環、及び脂肪族複素環のいずれでもよいが、複素環(芳香族複素環及び脂肪族複素環)が好ましく、脂肪族複素環がより好ましい。複素環を構成するヘテロ原子は特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。L21がなす環は置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環は、不飽和結合を含んでいてもよい。
【0031】
L21においては、シクロプロピル基の炭素原子及び式中のカルボニル基(C=O)とともに形成する環が、−CONR25−または−COO−を含んでいることが好ましい。ここでR25はアルキル基(好ましくは炭素数1〜5)またはアリール基(好ましくは炭素数6〜24)を示す。ここでのアルキル基またはアリール基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。前記R25はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
【0032】
前記式(II−1)で表される化合物は、下記式(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化8】
【0034】
・R21〜R24
R21〜R24は式(II−1)と同義である。
【0035】
・L22
式中、L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。L22がなす環の好ましい範囲はL21と同義であり、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、芳香族複素環、及び脂肪族複素環のいずれでもよいが、複素環(芳香族複素環及び脂肪族複素環)が好ましく、脂肪族複素環がより好ましい。複素環を構成するヘテロ原子は特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。L21がなす環は置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環は、不飽和結合を含んでいてもよい。
【0036】
L21またはL22がなす環は、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることが特に好ましい。L21またはL22がなす環は下記式(IIa)または(IIb)であることが好ましい。
【化9】
*はシクロプロピル茎との炭素原子の位置を表す。X1及びX3はそれぞれ酸素原子、CR252もしくはNR25を表す。R25は前記と同義である。X2はCR252、CSもしくはCOである。Y1及びY2は酸素原子、NR25、またはCR252である。
【0037】
以下に、式(II−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0038】
【化10】
【0039】
上記式(II−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0040】
前記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
<実施形態III>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。前記特許文献1のビニル基を有する化合物は、負極に被膜を形成し、それにより高温時の安定性を高めている。しかし、かえって負極の被膜による抵抗が大きくなり、負荷特性やサイクル性を低下させる原因となりうる。これに対し、本実施形態においては、上記のようなビニル基を持たない、特定シクロプロパン化合物が好適に作用し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとって望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0042】
[式(III−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0043】
【化11】
【0044】
・R31〜R34
式中、R31〜R34は各々独立に水素原子もしくは置換基を表し、なかでも好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R31〜R34は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R31〜R34はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
R31〜R34は各々独立に水素原子、アルキル基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、カルボニル基含有基、またはシアノ基が特に好ましい。
アルキル基としては、後記置換基Tの例が挙げられるが、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜7のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、またはベンジル基が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6〜26のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が更に好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはターシャリーブトキシ基が特に好ましい。
カルボニル基含有基としては、アルキルカルボニル基、アミド基、またはアルコキシカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、またはターシャリーブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0045】
・L31
L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。好ましくは、酸素原子またはカルボニル基である。R35は後記L32で定義するのと同義である。式中の(L31)nとして言うと、これがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)であることが好ましい。R36はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
【0046】
・L32
L32は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜4)、O、S、SO2、または−NR35−を表し、R35はアルキル基(好ましくは炭素数1〜5)またはアリール基(好ましくは炭素数6〜24)を示す。ここでのアルキル基またはアリール基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。前記R35はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、L31ないしL32が持つ置換基は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。L31及びL32が複数あるとき、それらは互いに異なっていてもよい。
【0047】
・n、m
n、mは各々独立に1または2を示す。n+mは3または4であることが好ましく、3であることがより好ましい。なお、式中−(L31)n−(L32)m−がなす構造が、−CO−O−CO−であることはない。n、mが2のとき、そこで規定される複数の構造部はそれぞれ異なっていてもよい。
【0048】
[式(III−2)で表される化合物]
前記式(III−1)で表される化合物は下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化12】
【0050】
前記式中、R31〜R34、L32は、式(III−1)と同義である。
【0051】
以下に、式(III−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0052】
【化13】
Me:メチル基
Et:エチル基
【0053】
上記式(III−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0054】
前記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0055】
なお、本明細書において化合物の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の一部を変化させた誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。複数の置換基や配位子が近接するときには、特に断らなくても、それらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい。
【0056】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0057】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0058】
[有機溶媒]
本発明に用いられる有機溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルが好ましく、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。これらは、一種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0059】
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン系化合物、炭酸ビニルエチレン系化合物および炭酸メチレンエチレン系化合物からなる群のうちの少なくとも1種などが挙げられる。
【0060】
炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。
【0061】
炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0062】
炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0063】
これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0064】
[電解質]
電解質は周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンもしくはその塩であることが好ましく、電解液の使用目的により適宜選択される。例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、二次電池などに使用される場合には、出力の観点からリチウム塩が好ましい。電解液をリチウム二次電池用非水系電解液の電解質として用いる場合には、金属イオンの塩としてリチウム塩を選択すればよい。リチウム塩としては、リチウム二次電池用非水系電解液の電解質に通常用いられるリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0065】
(L−1)無機リチウム塩:LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機フッ化物塩;LiClO4、LiBRO4、LiIO4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl4等の無機塩化物塩等。
【0066】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCF3SO3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF5(CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF3)3]、Li[PF5(CF2CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF2CF3)3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0067】
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
【0068】
これらのなかで、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、Li(Rf1SO3)、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)2リチウムビス(オキサラト)ボレート塩が好ましく、LiPF6、LiBF4、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)2などのリチウムイミド塩、リチウムビス(オキサラト)ボレート塩がさらに好ましい。ここで、Rf1、Rf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、電解液に用いるリチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
電解質の含有量は、以下に電解液の調製法で述べる好ましい塩濃度となるよう量で添加される。その濃度は電解液の使用目的により適宜選択されるが、一般的には電解液全質量中10質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜30質量%である。なお、イオンの濃度として評価するときには、その好適に適用される金属との塩換算で算定されればよい。
【0069】
[電解液の調製方法]
次に、本発明の電解液の代表的な調整方法を、金属イオンの塩としてリチウム塩を用いた場合を例に挙げて説明する。本実施形態の電解液は、前記非水電解液溶媒に、リチウム塩、及び、所望により添加される種々の添加剤を溶解して、調製される。
【0070】
本発明において、「非水」とは水を実質的に含まないことをいい、発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。良好な特性を得ることを考慮して言うと、水の含有量が200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、不可避的な混入を考慮すると、10ppm以上であることが実際的である。
【0071】
(電解液の組成)
調製された電解液中の金属塩濃度は、濃度が高くなるにつれて電解液の粘度が高くなるため、高いイオン伝導度を示すための適正な濃度範囲が存在する。好ましい濃度範囲は、電解液全質量中10質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜30質量%である。電解液の粘度は特に限定されないが、5〜0.5mPa・sであることが好ましく、5〜0.1mPa・sであることがより好ましい。
【0072】
(キット)
本発明の電解液は複数の液体ないし粉末等から構成されたキットとされていてもよい。例えば、第1剤(第1液)を電解質と有機溶媒とで構成し、第2剤(第2液)を前記特定シクロプロパン化合物と有機溶媒とで構成し、使用前に2液を混合して調液する形態などであってもよい。このときの、各成分の含有量は、混合後に前記の範囲となることが好ましい。
【0073】
[二次電池]
本発明の二次電池の実施形態についてその断面図を大幅に模式化して示した図1を参照して説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、非水二次電池用電解液5と、リチウムイオンの挿入放出が可能な正極C(正極集電体1,正極活物質層2)と、リチウムイオンの挿入放出又は溶解析出が可能な負極A(負極集電体3,負極活物質層4)とを備える。これら必須の部材に加え、電池が使用される目的、電位の形状などを考慮し、正極と負極の間に配設されるセパレータ9、集電端子(図示せず)、及び外装ケース等(図示せず)を含んで構成されてもよい。必要に応じて、電池の内部及び電池の外部の少なくともいずれかに保護素子を装着してもよい。このような構造とすることにより、電解液5内でリチウムイオンの授受a,bが生じ、充電・放電α・βを行うことができ、回路配線7を介して動作手段6を介して運転あるいは蓄電を行うことができる。以下、本発明の好ましい実施形態であるリチウム二次電池の構成について詳細に説明する。
【0074】
(電池形状)
本実施形態のリチウム二次電池が適用される電池形状には、特に制限はなく、例えば、有底筒型形状、有底角型形状、薄型形状、シート形状、及び、ペーパー形状などが挙げられ、これらのいずれであってもよい。また、組み込まれるシステムや機器の形を考慮した馬蹄形や櫛型形状等の異型のものであってもよい。なかもで、電池内部の熱を効率よく外部に放出する観点から、比較的平らで大面積の面を少なくとも一つを有する有底角型形状や薄型形状などの角型形状が好ましい。
【0075】
有底筒型形状の電池では、充填される発電素子に対する外表面積が小さくなるので、充電や放電時に内部抵抗による発生するジュール発熱を効率よく外部に逃げる設計にすることが好ましい。また、熱伝導性の高い物質の充填比率を高め、内部での温度分布が小さくなるように設計することが好ましい。図2は、有底筒型形状リチウム二次電池100を例である。この電池は、セパレータ12を介して重ね合わせた正極シート14、負極シート16を捲回して外装缶18内に収納した有底筒型リチウム二次電池100となっている。その他、図中の20が絶縁板、22が封口板、24が正極集電、26がガスケット、28が圧力感応弁体、30が電流遮断素子である。なお、拡大した円内の図示は視認性を考慮しハッチングを変えているが、各部材は符号により全体図と対応している。
【0076】
(電池を構成する部材)
次に、本実施形態のリチウム二次電池の各部材について述べる。本発明のリチウム二次電池は、電解液として、少なくとも前記本発明の非水電池用電解液を含む。
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池に用いられる電解液は、有機溶媒と、前述した特定シクロプロパン化合物と、電解質塩とを含有することが好ましい(電解液5(図1))。非水二次電池用電解液に用いられる電解質塩としては、前述の周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンの塩であり、前記非水二次電池用電解液の実施の態様で詳細に記載したものを用いることができる。また、リチウム二次電池に用いられる有機溶媒(非水電解液溶媒)も同様に、前記非水二次電池用電解液の実施の態様で詳細に記載したものを用いることができる。さらには他の添加剤を加えて、より一層性能を向上させることができる。
【0077】
電解液には、電池の性能を向上させるため、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて各種の添加剤を用いることができる。このような添加剤として、過充電防止剤、負極被膜形成剤、正極保護剤等のこのような機能性添加剤を用いてもよい。
【0078】
また、負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用や、過充電防止剤と負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用が特に好ましい。
【0079】
非水系電解液中におけるこれら機能性添加剤の含有割合は特に限定はないが、非水系電解液全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、特に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、特に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、過充電による異常時に電池の破裂・発火を抑制したり、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させたりすることができる。
【0080】
(電極合材)
電極合材は、集電体(電極基材)上に活物質と導電剤、結着剤、フィラーなどの分散物を塗布した複合体であり、リチウム電池においては、活物質が正極活物質である正極合剤と活物質が負極活物質である負極合剤が使用されることが好ましい。次に、電極合材を構成する、正極活物質、負極活物質、導電剤、結着剤、フィラー及び集電体について説明する。
【0081】
(正極活物質)
正極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる遷移金属酸化物を用いることができるが、リチウム含有遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。正極活物質として好ましく用いられるリチウム含有遷移金属酸化物としては、リチウム含有Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Wを含む酸化物等が好適に挙げられる。またリチウム以外のアルカリ金属(周期律表の第1(Ia)族、第2(IIa)族の元素)、及び/又はAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量としては、遷移金属に対して0〜30mol%が好ましい。
【0082】
前記正極活物質として好ましく用いられるリチウム含有遷移金属酸化物の中でも、リチウム化合物/遷移金属化合物(ここで遷移金属とは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種のことをいう。)の合計のモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
【0083】
さらに、前記リチウム化合物/遷移金属化合物の中でも、LigM3O2(M3はCo、Ni、Fe、及びMnから選択される1種以上の元素を表す。gは、0〜1.2を表す。)を含む材料、又はLihM42O(M4はMnを表す。hは、0〜2を表す。)で表されるスピネル構造を有する材料が特に好ましい。前記M3、M4としては、遷移金属以外にAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量は遷移金属に対して0〜30mol%が好ましい。
【0084】
前記LigM3O2を含む材料、LihM42Oで表されるスピネル構造を有する材料の中でも、LigCoO2、LigNiO2、LigMnO2、LigCojNi1−jO2、LihMn2O4、 LiNijMn1−jO2、LiCojNihAl1−j−hO2、LiCojNihMn1−j−hO2、LiMnhAl2−hO4、LiMnhNi2−hO4(ここでgは0.02〜1.2を表す。jは0.1〜0.9を表す。hは0〜2を表す。)が特に好ましく、もっと好ましくはLigCoO2、LiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2である。高容量、高出力の観点で上記のうちNiを含む電極が更に好ましい。ここで、前記g値及びh値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する値である。具体的には、
LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、
LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn1.8Al0.2O4、
LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
【0085】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
更に、5V近い高電位と250mAh/gを超える非常に高い比容量を示す固溶体系正極材料(例えばLi2MnO3‐LiMO2(M:Ni,Co,Mnなどの金属)が,次世代のリチウムイオン電池の正極材料として大きな注目を集めている。本発明の電解液はこれら固溶体系正極材料と組合せることも好ましい。
【0086】
非水電解質二次電池において、用いられる前記正極活物質の平均粒子サイズは特に限定されないが、0.1μm〜50μmが好ましい。比表面積としては特に限定されないが、BET法で0.01m2/g〜50m2/gであるのが好ましい。また、正極活物質5gを蒸留水100mlに溶かした時の上澄み液のpHとしては、7以上12以下が好ましい。
【0087】
前記正極活性物質を所定の粒子サイズにするには、良く知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、振動ミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが用いられる。前記焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0088】
(負極活物質)
負極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であれば特には制限されないが、構成成分としてケイ素、チタン及び/又はリチウム(例えばチタン酸リチウム)を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0089】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、及びPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0090】
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素材料と黒鉛系炭素材料に分けることもできる。また炭素質材料としては、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
【0091】
リチウム二次電池において用いられる負極活物質である金属酸化物及び金属複合酸化物は、これらの少なくとも1種を含んでいればよい。金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0092】
前記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、金属化合物としては、例えば、Ga2O3、SiO、GeO、SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb2O4、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、Bi2O3、Bi2O4、SnSiO3、GeS、SnS、SnS2、PbS、PbS2、Sb2S3、Sb2S5、SnSiS3などが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li2SnO2であってもよい。
【0093】
非水電解質二次電池において、用いられる前記負極活物質の平均粒子サイズは、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子サイズにするには、よく知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
【0094】
前記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0095】
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵・放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
【0096】
本発明においては、チタン酸リチウム、より具体的にはリチウム・チタン酸化物(Li[Li1/3Ti5/3]O4)を負極の活物質として用いることが好ましい。これを負極活物質として用いることにより、前記特定シクロプロパン化合物によるSEIの形成効果が一段と高まり、一層優れた電池性能を発揮させることができる。
本発明の電解液は好ましい様態として高電位負極(好ましくはリチウム・チタン酸化物、電位1.55V)との組合せ、及び低電位負極(好ましくは炭素材料、電位0.1V)との組合せのいずれにおいても優れた特性を発現する。更に高容量化に向けて開発が進んでいるリチウムと合金形成可能な金属または金属酸化物負極(好ましくはSi、酸化Si、Si/酸化シリコン、Sn、酸化Sn、SnBxPyOz、Cu/Snおよびこれらのうち複数の複合体)、及びこれらの金属または金属酸化物と炭素材料の複合体を負極とする電池においても好ましく用いることができる。
【0097】
(導電材)
導電材は、構成された二次電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何を用いてもよく、公知の導電材を任意に用いることができる。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀(特開昭63−10148,554号に記載)等)、金属繊維あるいはポリフェニレン誘導体(特開昭59−20,971号に記載)などの導電性材料を1種又はこれらの混合物として含ませることができる。その中でも、黒鉛とアセチレンブラックの併用がとくに好ましい。前記導電剤の添加量としては、1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。カーボンや黒鉛の場合は、2〜15質量%が特に好ましい。
【0098】
(結着剤)
結着剤としては、多糖類、熱可塑性樹脂及びゴム弾性を有するポリマーなどが挙げられ、その中でも、例えば、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ジアセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、スチレン−マレイン酸共重合体等の水溶性ポリマー、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ポリビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート等のビニルエステルを含有するポリビニルエステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のエマルジョン(ラテックス)あるいはサスペンジョンが好ましく、ポリアクリル酸エステル系のラテックス、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが、より好ましい。
【0099】
結着剤は、一種単独又は二種以上を混合して用いることができる。結着剤の添加量が少ないと、電極合剤の保持力・凝集力が弱くなる。多すぎると電極体積が増加し電極単位体積あるいは単位質量あたりの容量が減少する。このような理由で結着剤の添加量は1〜30質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0100】
(フィラー)
フィラーを形成する材料は、二次電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの材料からなる繊維状のフィラーが用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、0〜30質量%が好ましい。
【0101】
(集電体)
正・負極の集電体としては、非水電解質二次電池において化学変化を起こさない電子伝導体が用いられる。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。
【0102】
負極の集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、銅あるいは銅合金がより好ましい。
【0103】
前記集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。前記集電体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
これらの材料から適宜選択した部材によりリチウム二次電池の電極合材が形成される。
【0104】
(セパレータ)
リチウム二次電池に用いられるセパレータは、正極と負極を電子的に絶縁する機械的強度、イオン透過性、及び正極と負極の接触面で酸化・還元耐性のある材料であれば特に限定されることはない。このような材料として多孔質のポリマー材料や無機材料、有機無機ハイブリッド材料、あるいはガラス繊維などが用いられる。これらセパレータは安全性確保のためのシャットダウン機能、すなわち、80℃以上で隙間を閉塞して抵抗を上げ、電流を遮断する機能、を持つことが好ましく、閉塞温度は90℃以上、180℃以下であることが好ましい。セパレータの強度の観点から、無機材料、ガラス繊維で補強されたセパレータを用いることが特に好ましい。
【0105】
前記セパレータの孔の形状は、通常は円形や楕円形で、大きさは0.05μm〜30μmであり、0.1μm〜20μmが好ましい。さらに延伸法、相分離法で作った場合のように、棒状や不定形の孔であってもよい。これらの隙間の占める比率すなわち気孔率は、20%〜90%であり、35%〜80%が好ましい。
【0106】
前記ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単一の材料を用いたものでも、2種以上の複合化材料を用いたものであってもよい。孔径、気孔率や孔の閉塞温度などを変えた2種以上の微多孔フィルムを積層したものが、好ましい。
【0107】
前記無機材料としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を樹脂製の結着剤を用いて正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子をフッ素樹脂の結着剤を用いて多孔層として形成させることが挙げられる。
【0108】
[リチウム二次電池の用途]
リチウム二次電池は、サイクル性良好な二次電池を作製することができるため、種々の用途に適用される。
適用態様には特に限定なはいが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0109】
二次電池において電荷の輸送に用いられる金属イオンは特に限定されないが、周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンを利用したものであることが好ましい。中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン等を用いることが好ましい。リチウムイオンを用いた二次電池についての一般的な技術事項は冒頭に挙げた特許文献等、多くの文献や書籍があり参考になる。その他、ナトリウムイオンを用いた二次電池については、Journal of Electrochemical Society;Electrochemical Science and Technology、米国、1980年、第127巻、第2097〜2099頁等を参照することができる。マグネシウムイオンについては、Nature 407, p.724−727(2000)等を参照することができる。カルシウムイオンについては、J.Electrochem. Soc., Vol.138, 3536 (1991)等を参照することができる。本発明においてはその普及の程度からリチウムイオン二次電池に適用することが好ましいが、それ以外のものにおいても所望の効果を奏するものであり、これに限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって、何ら限定されるものではない。
<実施例I>
1.シクロプロパン化合物の合成
【0111】
(合成例I−1:シクロプロパン(SI−1)の合成)
1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸2.22g、塩化メチレン84ml、メタノール12mlの溶液に、2Mのトリメチルシリルジアゾメタンのジエチルエーテル溶液12mlと滴下した。発泡終了後、酢酸1mlを加えた。塩化メチレンで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮をした。得られた有機物を蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−1)を1.9g得た。
【0112】
(合成例I−2:シクロプロパン(SI−2)の合成)
グリセロールカーボネート5.31g、ジシクロヘキシルカルボジイミド9.28g、4−ジメチルアミノピリジン55mgを塩化メチレン60mlに溶解させた。0℃にて1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸5gを塩化メチレン50mlにて溶かした溶液を滴下し、室温で3時間反応させた。セライトろ過により、固体を取り除いた後、塩化メチレンにて抽出、飽和食塩水にて洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮をした。得られた有機物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、シクロプロパン化合物(SI−2)を6.5g得た。
【0113】
(合成例I−3:シクロプロパン(SI−5)の合成)
原料にメトキシエトキシエタノールを用い、合成例I−2と同様の方法でシクロプロパン(SI−5)を得た。
【0114】
(合成例I−4:シクロプロパン(SI−8)の合成)
7.6gのNaBH4をエタノール50mlに加え、4−ブロモ−2−シアノ−4−メチル−2−ペンテン酸メチル23.1gのエタノール10ml溶液を室温にて滴下した。4時間反応させた後、蒸留水100mlを加え、塩化メチレンで抽出、濃縮した後、減圧蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−8)を7.2g得た。
【0115】
(合成例I−5:シクロプロパン(SI−11)の合成)
2MのLDAのTHF溶液6mlに脱水THF20mlを加え、−78℃に冷却した。シクロプロパンカルボン酸ターシャリーブチルエステル1.5mlを滴下し、−78℃のまま3時間攪拌した。1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン2.9mlを加え、−78℃で2時間反応させた後、室温にして1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、乾燥、濃縮した。得られた有機物を蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−11)を0.82g得た。
【0116】
(合成例I−6:シクロプロパン(SI−12)の合成)
シクロプロパン化合物(SI−11)を塩化メチレン25mlで溶かし、0℃にてトリフルオロ酢酸25ml、トリエチルヒドロシラン0.5mlを加え、室温にて4時間反応させた。1M水酸化ナトリウム水溶液を加えアルカリ性にし、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、水溶液に1M塩酸水溶液を加え酸性にし、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、有機層を乾燥、濃縮した。得られたシクロプロパンカルボン酸誘導体を合成例I−1と同様の方法で、エステル化を行い、シクロプロパン化合物(SI−12)を得た。
【0117】
(合成例I−7:シクロプロパン(SI−13)の合成)
原料に1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸を用い、合成例I−5と同様の方法でシクロプロパン(SI−13)を得た。
【0118】
(合成例I−8:シクロプロパン(SI−14)の合成)
原料にベンジルブロミドを用いて、合成例I−5と同様の方法でシクロプロパン(SI−14)を得た。
【0119】
(合成例I−9:シクロプロパン(SI−15)の合成)
原料にシクロプロパン(SI−14)を用いて、合成例I−6と同様の方法でシクロプロパン(SI−15)を得た。
【0120】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例I−1で得たシクロプロパン化合物(SI−1)を0.05質量%加え、試験No.I−101の電解液を調製した。用いるシクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.I−102〜I−113)。
【0121】
<比較例>
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。
また、同様に炭酸ビニレン(VC)、下記(RI−1)、下記(RI−2)、下記(RI−3)を表のとおりの添加量で添加したものを比較例とした。
【0122】
【化14】
【0123】
[リチウム二次電池]
【0124】
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表1−1に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0125】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0126】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0127】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0128】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0129】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0130】
【表1−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0131】
表1−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−101〜I−114)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c11〜I−c16)よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したシクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0132】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0133】
【表1−2】
(注2)低温放電率(%)=(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0134】
表1−2に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−201〜I−208)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c21〜I−c24)よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、リチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0135】
3.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0136】
【表1−3】
(注3)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0137】
表1−3に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−301〜I−308)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c31〜I−c34)よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0138】
4.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0139】
【表1−4】
(注4)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0140】
表1−4に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−401、I−402)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c41)よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0141】
<実施例II>
1.特定シクロプロパン化合物の合成
(合成例II−1:スピロシクロプロパン(SII−1)の合成)
1,1−シクロプロパンジカルボン酸2.6g、無水酢酸2.4ml、硫酸0.08mlの溶液へ、0℃にてアセトン2mlを滴下した。0℃にて5時間反応させた後、水を30ml加えた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をpH5になるまで加えた後、析出した固体をろ過により単離し、スピロシクロプロパン(SII−1)を2.1g得た。
【0142】
(合成例II−2:スピロシクロプロパン(SII−2)の合成)
原料にシクロヘキサノンを用い、合成例II−1と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−2)を得た。
【0143】
(合成例II−3:スピロシクロプロパン(SII−7)の合成)
N,N−ジメチルバルビツール酸7.81g、1,2−ジブロモエタン11.27g、炭酸カリウム13.82g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩0.17g、ジメチルホルムアミド70mlを加え、加熱還流した。4時間反応させた後、室温に冷やした反応液をろ過し、ろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、スピロシクロプロパン(SII−7)を6.5g得た。
【0144】
(合成例II−4:スピロシクロプロパン(SII−11)の合成)
原料にN,N−ジエチルチオバルビツール酸を用い、合成例II−3と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−11)を得た。
【0145】
(合成例II−5:スピロシクロプロパン(SII−14)の合成)
原料に1,2−ジメチルピラゾリジン−3,5−ジオンを用い、合成例II−3と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−14)を得た。
【0146】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例II−1で得たスピロシクロプロパン化合物(SII−1)を0.05重量%加え、電解液を調製した(試験No.II−101)。
用いるシクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.II−102〜II−111)。
【0147】
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。このとき、実施例と同様の条件で炭酸ビニレン(VC)、下記(RII−1)、下記(RII−2)、下記環状酸無水物(RII−3)を添加したものを比較例とした。
【0148】
【化15】
【0149】
[リチウム二次電池]
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表2−1に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0150】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0151】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0152】
<正極負荷特性(負荷容量維持率)>
前記サイクル性試験にて10サイクル充放電を行った正極を取り出し、負極をリチウム、電解液に1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの体積比1対2を用いて2032形電池を作製した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで2C定電流放電を行い、放電容量、放電曲線を比較した。
【0153】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0154】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0155】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0156】
【表2−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0157】
表2−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−101〜II−113)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c11〜II−c16)よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したスピロシクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0158】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0159】
【表2−2】
(注2)低温放電率(%)=(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0160】
表2−2に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−201〜II−209)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c21〜II−c24)よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、リチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0161】
3.負荷容量維持率
(LCCMR:Load−Carrying Capacity Maintaining Ratio)・・・正極負荷特性
【0162】
【表2−3】
(注3)負荷容量維持率(%)=(2C放電容量/初期放電容量)×100
【0163】
表2−3に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−301〜II−303)では、比較例(試験No.II−c31〜II−c36)の2032形非水電解液二次電池よりも、負荷特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、添加したスピロシクロプロパン化合物による被膜が形成され、形成された被膜により正極が安定化し、正極界面の抵抗を抑制したことに起因すると推定している。
また、図3に示したように、実施例(No.II−301)の二次電池における放電曲線は、比較例(No.II−c32)に比べ、高電流領域まで高電圧を維持する、より理想に近いものであった。
【0164】
4.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0165】
【表2−4】
(注4)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0166】
表2−4に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−401〜II−409)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c41〜II−c44)よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0167】
5.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0168】
【表2−5】
(注5)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0169】
表2−5に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−501、II−502)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c51)よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0170】
<実施例III>
(合成例III−1:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−1)の合成)
NaBH41.89gのテトラヒドロフラン(THF)70ml溶液を0℃に冷やし、3−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン−2,4−ジオン5.6gのTHF80ml溶液を滴下し、3時間反応させた。反応終了後、6N HClをpH2になるまで加え、t−ブチルメチルエーテルにて抽出、濃縮した。得られた有機物にトルエン100ml、p−トルエンスルホン酸0.2gを加え、1時間加熱還流した。水で洗浄、t−ブチルメチルエーテルで抽出、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−1)を3.1g得た。
【0171】
(合成例III−2:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−3)の合成)
原料に1−メチル−3−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン−2,4−ジオンを用い、合成例III−1と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−3)を得た。
【0172】
(合成例III−3:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−5)の合成)
シクロプロパン5gにトルエン100ml、p−トルエンスルホン酸0.2gを加え、1時間加熱還流した。水で洗浄、t−ブチルメチルエーテルで抽出、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−5)を3.8g得た。
【0173】
(合成例III−4:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−6)の合成)
アリルアセトアセテート6.63gに酢酸マンガン(III)25g、酢酸銅(II)8.47g、酢酸カリウム9.15g、酢酸115ml加え、75℃にて1時間反応させた。反応終了後、重曹水にて中和し、酢酸エチルにて抽出、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−6)を2.8g得た。
【0174】
(合成例III−5:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−7)の合成)
原料にアリルメチルマロン酸エステルを用い、合成例III−4と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−7)を得た。
【0175】
(合成例III−6:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−8)の合成)
原料にシアノ酢酸アリルを用い、合成例III−5と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−8)を得た。
【0176】
(合成例III−7:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−10)の合成)
THF50mlに水素化ナトリウム1.25gを加え、氷浴で冷却した。反応容器に
マロン酸ジエチル8.8gにTHF10ml加えた溶液を滴下し、15分攪拌した。その後、α―ブロモブテノライド8.15gを加え室温に戻した後、5時間攪拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルにて抽出、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−10)6.5gを得た。
【0177】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例III−1で得たラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−1)を0.05質量%加え、電解液を調製した(試験No.III−101)。試験No.III−102以下についても、用いる特定シクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.III−102〜III−114)。
【0178】
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。このとき、試験No.III−101と同様の条件で炭酸ビニレン(VC)、下記(RIII−1)、下記(RIII−2)、下記環状酸無水物(RIII−3)を添加したものを比較例とした。
【0179】
【化16】
【0180】
[リチウム二次電池]
【0181】
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0182】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0183】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0184】
<正極負荷特性(負荷容量維持率)>
前記サイクル性試験にて10サイクル充放電を行った正極を取り出し、負極をリチウム金属、電解液に1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの体積比1対2を用いて2032形電池を作製した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで2C定電流放電を行い、放電容量、放電曲線を比較した。
【0185】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0186】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0187】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0188】
【表3−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0189】
表3−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.III−101〜III−119)では、比較例(試験No.III−c11〜III−c16)の2032形非水電解液二次電池よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したラクトン縮環シクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0190】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0191】
【表3−2】
(注2)低温放電率(%)=
(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0192】
表3−2に示すように、実施例(試験No.III−201〜III−210)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c21〜III−c24)の2032形非水電解液二次電池よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、ラクトン環によりリチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0193】
3.負荷容量維持率
(LCCMR:Load−Carrying Capacity Maintaining Ratio)・・・正極負荷特性
【0194】
【表3−3】
(注3)負荷容量維持率(%)=
(2C放電容量/初期放電容量)×100
【0195】
表3−3に示すように、実施例(試験No.III−301〜III−303)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c31〜III−c36)の2032形非水電解液二次電池よりも、負荷特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、ラクトン縮環シクロプロパンによる被膜が形成され、形成された被膜により正極が安定化し、正極界面の抵抗を抑制したことに起因すると推定している。
また、図4に示したように、実施例(No.III−301)の二次電池における放電曲線は、比較例(No.III−c32)に比べ、高電流領域まで高電圧を維持する、より理想に近いものであった。
【0196】
4.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0197】
【表3−4】
(注4)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0198】
表3−4に示すように、実施例(試験No.III−401〜III−410)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c41〜III−c44)の2032形非水電解液二次電池よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0199】
5.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0200】
【表3−5】
(注5)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0201】
表3−5に示すように、実施例(試験No.III−501〜III−504)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c51)の2032形非水電解液二次電池よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0202】
上記実施例において本発明の電解液を負極としてリチウム・チタン酸化物負極あるいは炭素材料負極、正極としてニッケルマンガンコバルト酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムと組み合わせて用いた電池において優れた特性を発現することを示したが、本発明の電解液は高容量化に向けて開発が進んでいるリチウムと合金形成可能な金属または金属酸化物負極(好ましくはSi、酸化Si、Si/酸化Si、Sn、酸化Sn、SnBxPyOz、Cu/Snおよびこれらのうち複数の複合体)、及びこれらの金属または金属酸化物と炭素材料の複合体を負極とする電池、及び/又は4.5V〜5V級正極を用いた電池においても同様の優れた効果を発現するものと推測できる。
【符号の説明】
【0203】
1 正極集電体
2 正極活物質層
3 負極集電体
4 負極活物質層
5 電解液
6 動作手段
7 配線
9 セパレータ
10 リチウムイオン二次電池
12 セパレータ
14 正極シート
16 負極シート
18 負極を兼ねる外装缶
20 絶縁板
22 封口板
24 正極集電
26 ガスケット
28 圧力感応弁体
30 電流遮断素子
100 有底筒型形状リチウム二次電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒を含む非水二次電池用電解液、およびそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、注目を集めているリチウムイオン電池と呼ばれる二次電池は、充放電反応にリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)と、リチウムの析出および溶解を利用する二次電池(いわゆるリチウム金属二次電池)とに大別される。これらは、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られる。この特性を利用して、近年、カメラ一体型VTR(video tape recorder)、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器用の電源として広く普及している。これに伴い、特に軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池の開発が進められている。さらには、その小型化、軽量化および長寿命化、高安全化が強く求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池やリチウム金属二次電池(以下、これらを総称して単にリチウムイオン二次電池ということがある。)の電解液としては、導電率が高く電位的にも安定であるため、炭酸プロピレンあるいは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系の溶媒と、六フッ化リン酸リチウムなどの電解質塩との組み合わせが広く用いられている。
【0004】
電解液の成分に関して改良を行った例として、高温(80℃)時の内部抵抗増加を抑えるために特定の環状化合物を適用したものがある(特許文献1参照)。また、電極にポリフッ化ビニリデンの膜を形成した特殊なセルにおいて、酸無水物を電解液に添加することで、放電時のガス発生を抑制することができるとしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−265858号公報
【特許文献2】特開2001−155772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの確認によると、昨今益々高まる二次電池の性能の向上を考慮するとき、前記特許文献の技術では未だ十分とは言えず(後記比較例参照)、複数の評価項目における総合的な高性能化が望まれた。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性及び低温放電率において高い性能を示し、しかも正極特性に関わる高温保存性(必要によりさらに高速での放充電性)にも優れる非水二次電池用電解液および二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
〔2〕式(I−1)の置換基Xが、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を示す〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔3〕式(I−1)中、R11〜R14が水素原子である〔1〕または〔2〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔4〕式(I−1)のXがシアノ基である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔5〕式(I−1)の−L11−R15が、−COOR16で表される〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
(R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
〔6〕式(II−1)におけるL21が形成する環が−CONR25−(ここでR25はアルキル基またはアリール基を示す)または−COO−を含む〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔7〕式(II−1)で表される化合物が、下記式(II−2)で表される化合物である〔1〕または〔6〕に記載の非水二次電池用電解液。
【化2】
(式中、R21〜R24は式(II−1)と同義である。L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
〔8〕式(II−1)におけるL21がなす環または式(II−2)におけるL22がなす環が、5員環または6員環である〔1〕、〔6〕、および〔7〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔9〕式(III−1)における(L31)nがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、または−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)である〔1〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔10〕式(III−1)におけるL32が、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、または−NR35−である〔1〕または〔9〕に記載の非水二次電池用電解液。
〔11〕式(III−1)で表される化合物が下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物である〔1〕、〔9〕、および〔10〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【化3】
(式中、R31〜R34及びL32は、式(III−1)と同義である。)
〔12〕式(III−1)におけるL32が、炭素数1〜3のアルキレン基である〔1〕および〔9〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔13〕式(III−1)におけるL32が、メチレン基である〔1〕および〔9〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔14〕電解質がリチウム塩である〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔15〕シクロプロパン化合物を電解液の総量に対して0.005〜20質量%の範囲で適用する〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔16〕有機溶媒として、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルを採用した〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
〔17〕〔1〕〜〔16〕に記載の非水二次電池用電解液と、正極と、負極とを備えるリチウム二次電池。
〔18〕負極の活物質としてチタン酸リチウムを適用した〔17〕に記載の二次電池。
〔19〕第1剤と第2剤とを混合して用いる非水二次電池用電解液のキットであって、
第1剤が電解質を含有し、第2剤が下記式(I−1)、式(II−1)、または式(III−1)で表されるシクロプロパン化合物を含有する非水二次電池用電解液キット。
【化4】
(式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の非水二次電池用電解液及びこれを用いた二次電池は、サイクル特性及び低温放電率において高い性能を示し、しかも正極特性に関わる高温保存性(必要により放充電性を含む)にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の機構をモデル化して示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係るリチウムイオン二次電池の具体的な構成を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例の試験No.II−301とII−c32の放電曲線を示すグラフである。
【図4】実施例の試験No.III−301とIII−c32の放電曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態I〜IIIについてそれぞれ説明する。なお、本実施形態I〜IIIは同一または対応する特別な技術的特徴を共有し、単一の一般的発明概念を構成している。
<実施形態I>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。本実施形態で用いるシクロプロパン化合物は特定の置換基Xを有する。この基は電子を求引する性質を有し、その作用によりシクロプロパン環を適度に開環させやすくし、電極表面もしくはその近傍において良好な作用をもたらす重合体の生成を促したと考えられる。さらに、これらの基と同じ炭素原子に置換している特定の置換基(−L11−R15)も好適に機能し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとってより望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0011】
[式(I−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0012】
【化5】
【0013】
・R11〜R14
式中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R11〜R14は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R11〜R14はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
なかでも、R11〜R14が水素原子であることが特に好ましい。
【0014】
・R15
R15は炭素数1〜7の置換基を表し、好ましくは炭素数1〜5の置換基である。R15は炭素原子及び水素原子のみからなる炭化水素置換基でもよいが、O、N、又はSを含む置換基であってもよい。R15は直鎖であっても分岐を有していてもよく、環状であっても鎖状であってもよい。また、R15は、飽和結合のみで構成されていても、不飽和結合を有していてもよい。環状である場合には、芳香族環であっても、脂肪族環であっても、芳香族複素環であっても、脂肪族複素環であってもよい。R15がO、N、又はSを含む場合、Oを含む原子群は、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)などが挙げられる。Nを含む原子群は、イミノ基(−NR17−:R17は水素原子もしくはアルキル基であり、好ましい範囲は後述する。)、アミド基(−CONR17−)などが挙げられる。Sを含む原子群は、チオエーテル基(−S−)、チオカルボニル基(−CS−)、−CSO−、−CSS−などが挙げられる。
【0015】
・L11
L11は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)またはカルボニル基を表す。アルキレン基は置換基を有していてもよく、好ましくは後記の置換基Tが挙げられる。
【0016】
・X
Xは電子求引性基を示す。電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性、電子供与性の尺度であるHammett則の置換基定数σpを用いれば、σp値が0以上の置換基である。Hammett則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。Hammett則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編,「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Corwin Hansch, A. LEO and R. W. TAFT“A Survey of Hammett Substituent Cosntants and Resonance and Field Parameters”Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しい。なお、本実施の形態において、各置換基をHammettの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもHammett則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。
【0017】
置換基定数σp値として好ましくは0.1〜1.0、より好ましくは0.2〜1.0、最も好ましくは0.3〜1.0である。
【0018】
Xの具体的な置換基の例としては、シアノ基(−CN)、アルコキシカルボニル基(−COOR16)、カルバモイル基(−CON(R18)2)を示す。
R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R16は、なかでもヘテロ原子のないアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基がより好ましい。R16は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、後記置換基Tが挙げられる。
R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。R17がアルキル基であるとき、炭素数1〜4が好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基がより好ましい。R17は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、後記置換基Tが挙げられる。
R18はR17と同義の基を表す。
Xは、シアノ基(−CN)またはアルコキシカルボニル基(−COOR16)であることが好ましく、シアノ基(−CN)がより好ましい。
【0019】
以下に、上記例示置換基の一部についてσp値を示しておく。
【0020】
【表A】
【0021】
なお上記各置換基ないし連結基の機能は断定的ではないが、下記のように推定される。連結基L11を、アルキレン基、カルボニル基にすることにより、電位調整作用がはたらき、二次電池における動作電位の範囲で効果的に被膜形成ができるようになると考えられる。なかでも、L11がカルボニル基であれば、更にその電子求引性が作用し、被膜形成性が向上すると考えられる。また、R15の末端置換基は、形成された被膜中でのリチウムイオンの安定化に寄与していると推定される。
【0022】
以下に、式(I−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0023】
【化6】
Me:メチル基
tBu:t−ブチル基
【0024】
上記式(I−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0025】
前記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(I−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<実施形態II>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。本実施形態で用いるスピロ環構造をもつシクロプロパン化合物はシクロプロピル基の隣(α位)にカルボニル基を有する。カルボニル基は電子を求引する性質を有し、その作用によりシクロプロパン環を適度に開環させやすくし、電極表面もしくはその近傍において理想的な重合体の生成を促したと考えられる。さらに、上記カルボニル基を含む環状構造部も好適に作用し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、スピロ環構造を有する特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとってより望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0027】
[式(II−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0028】
【化7】
【0029】
・R21〜R24
式中、R21〜R24は水素原子もしくは置換基を表し、なかでも好ましくは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R21〜R24は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R21〜R24はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
R21〜R24はなかでも、水素原子、アルキル基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基が好ましく、水素原子またはアルキル基が特に好ましい。
アルキル基としては、後記置換基Tの例が挙げられるが、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜7のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、またはベンジル基が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6〜26のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が更に好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはターシャリーブトキシ基が特に好ましい。
カルボニル基含有基としては、アルキルカルボニル基、アミド基、またはアルコキシカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、またはターシャリーブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0030】
・L21
L21は、シクロプロピル基の炭素原子及びカルボニル基とともに環構造を形成する原子群を表す。L21がなす環は、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、芳香族複素環、及び脂肪族複素環のいずれでもよいが、複素環(芳香族複素環及び脂肪族複素環)が好ましく、脂肪族複素環がより好ましい。複素環を構成するヘテロ原子は特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。L21がなす環は置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環は、不飽和結合を含んでいてもよい。
【0031】
L21においては、シクロプロピル基の炭素原子及び式中のカルボニル基(C=O)とともに形成する環が、−CONR25−または−COO−を含んでいることが好ましい。ここでR25はアルキル基(好ましくは炭素数1〜5)またはアリール基(好ましくは炭素数6〜24)を示す。ここでのアルキル基またはアリール基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。前記R25はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
【0032】
前記式(II−1)で表される化合物は、下記式(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化8】
【0034】
・R21〜R24
R21〜R24は式(II−1)と同義である。
【0035】
・L22
式中、L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。L22がなす環の好ましい範囲はL21と同義であり、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、芳香族複素環、及び脂肪族複素環のいずれでもよいが、複素環(芳香族複素環及び脂肪族複素環)が好ましく、脂肪族複素環がより好ましい。複素環を構成するヘテロ原子は特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。L21がなす環は置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環は、不飽和結合を含んでいてもよい。
【0036】
L21またはL22がなす環は、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることが特に好ましい。L21またはL22がなす環は下記式(IIa)または(IIb)であることが好ましい。
【化9】
*はシクロプロピル茎との炭素原子の位置を表す。X1及びX3はそれぞれ酸素原子、CR252もしくはNR25を表す。R25は前記と同義である。X2はCR252、CSもしくはCOである。Y1及びY2は酸素原子、NR25、またはCR252である。
【0037】
以下に、式(II−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0038】
【化10】
【0039】
上記式(II−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0040】
前記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(II−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
<実施形態III>
本実施形態の非水電解液においては、特定のシクロプロパン化合物を電解液中に含有させる。これにより、二次電池に適用したときに、諸性能を向上させ、しかも正極における負荷特性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、以下のように推定される。前記特許文献1のビニル基を有する化合物は、負極に被膜を形成し、それにより高温時の安定性を高めている。しかし、かえって負極の被膜による抵抗が大きくなり、負荷特性やサイクル性を低下させる原因となりうる。これに対し、本実施形態においては、上記のようなビニル基を持たない、特定シクロプロパン化合物が好適に作用し、負極のみならず正極の電極特性をも良化させたものと推定される。すなわち、特定シクロプロパン化合物のシクロプロパン環が開環し、正極・負極にとって望ましい形態の重合体が生成されSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成し、二次電池における上記諸性能の向上につながったと考えられる。
【0042】
[式(III−1)で表される化合物]
本実施形態の非水二次電池用電解液は、下記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物を含有する。
【0043】
【化11】
【0044】
・R31〜R34
式中、R31〜R34は各々独立に水素原子もしくは置換基を表し、なかでも好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。アルキル基、アリール基、アルコキシ基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。なお、R31〜R34は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。また、R31〜R34はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
R31〜R34は各々独立に水素原子、アルキル基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、カルボニル基含有基、またはシアノ基が特に好ましい。
アルキル基としては、後記置換基Tの例が挙げられるが、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜7のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、またはベンジル基が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6〜26のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が更に好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはターシャリーブトキシ基が特に好ましい。
カルボニル基含有基としては、アルキルカルボニル基、アミド基、またはアルコキシカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、またはターシャリーブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0045】
・L31
L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。好ましくは、酸素原子またはカルボニル基である。R35は後記L32で定義するのと同義である。式中の(L31)nとして言うと、これがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)であることが好ましい。R36はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。
【0046】
・L32
L32は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜4)、O、S、SO2、または−NR35−を表し、R35はアルキル基(好ましくは炭素数1〜5)またはアリール基(好ましくは炭素数6〜24)を示す。ここでのアルキル基またはアリール基の具体例としては、後記置換基Tの例が挙げられる。前記R35はさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては後記置換基Tの例が挙げられる。なお、L31ないしL32が持つ置換基は互いに結合して、あるいは縮環して、環構造を形成していてもよい。L31及びL32が複数あるとき、それらは互いに異なっていてもよい。
【0047】
・n、m
n、mは各々独立に1または2を示す。n+mは3または4であることが好ましく、3であることがより好ましい。なお、式中−(L31)n−(L32)m−がなす構造が、−CO−O−CO−であることはない。n、mが2のとき、そこで規定される複数の構造部はそれぞれ異なっていてもよい。
【0048】
[式(III−2)で表される化合物]
前記式(III−1)で表される化合物は下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化12】
【0050】
前記式中、R31〜R34、L32は、式(III−1)と同義である。
【0051】
以下に、式(III−1)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本実施形態が限定して解釈されるものではない。
【0052】
【化13】
Me:メチル基
Et:エチル基
【0053】
上記式(III−1)で表される化合物は定法によって合成できるが、具体的には、後記合成例の手順等を参照することができる。
【0054】
前記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物の含有量は特に限定されないが、電解液の総質量に対して0.005〜20質量%であり、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましい。上記の下限値以上とすることで、本実施形態の効果が十分に発現し、電解液の分解を抑制することができ好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値以下とすることで、過剰な添加を避け、電池性能に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ好ましい。
前記式(III−1)で表される特定シクロプロパン化合物は、1種のみで用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0055】
なお、本明細書において化合物の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の一部を変化させた誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。複数の置換基や配位子が近接するときには、特に断らなくても、それらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい。
【0056】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0057】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0058】
[有機溶媒]
本発明に用いられる有機溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルが好ましく、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。これらは、一種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0059】
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン系化合物、炭酸ビニルエチレン系化合物および炭酸メチレンエチレン系化合物からなる群のうちの少なくとも1種などが挙げられる。
【0060】
炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。
【0061】
炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0062】
炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0063】
これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0064】
[電解質]
電解質は周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンもしくはその塩であることが好ましく、電解液の使用目的により適宜選択される。例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、二次電池などに使用される場合には、出力の観点からリチウム塩が好ましい。電解液をリチウム二次電池用非水系電解液の電解質として用いる場合には、金属イオンの塩としてリチウム塩を選択すればよい。リチウム塩としては、リチウム二次電池用非水系電解液の電解質に通常用いられるリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0065】
(L−1)無機リチウム塩:LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機フッ化物塩;LiClO4、LiBRO4、LiIO4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl4等の無機塩化物塩等。
【0066】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCF3SO3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF5(CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF3)3]、Li[PF5(CF2CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF2CF3)3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0067】
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
【0068】
これらのなかで、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、Li(Rf1SO3)、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)2リチウムビス(オキサラト)ボレート塩が好ましく、LiPF6、LiBF4、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)2などのリチウムイミド塩、リチウムビス(オキサラト)ボレート塩がさらに好ましい。ここで、Rf1、Rf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、電解液に用いるリチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
電解質の含有量は、以下に電解液の調製法で述べる好ましい塩濃度となるよう量で添加される。その濃度は電解液の使用目的により適宜選択されるが、一般的には電解液全質量中10質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜30質量%である。なお、イオンの濃度として評価するときには、その好適に適用される金属との塩換算で算定されればよい。
【0069】
[電解液の調製方法]
次に、本発明の電解液の代表的な調整方法を、金属イオンの塩としてリチウム塩を用いた場合を例に挙げて説明する。本実施形態の電解液は、前記非水電解液溶媒に、リチウム塩、及び、所望により添加される種々の添加剤を溶解して、調製される。
【0070】
本発明において、「非水」とは水を実質的に含まないことをいい、発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。良好な特性を得ることを考慮して言うと、水の含有量が200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、不可避的な混入を考慮すると、10ppm以上であることが実際的である。
【0071】
(電解液の組成)
調製された電解液中の金属塩濃度は、濃度が高くなるにつれて電解液の粘度が高くなるため、高いイオン伝導度を示すための適正な濃度範囲が存在する。好ましい濃度範囲は、電解液全質量中10質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜30質量%である。電解液の粘度は特に限定されないが、5〜0.5mPa・sであることが好ましく、5〜0.1mPa・sであることがより好ましい。
【0072】
(キット)
本発明の電解液は複数の液体ないし粉末等から構成されたキットとされていてもよい。例えば、第1剤(第1液)を電解質と有機溶媒とで構成し、第2剤(第2液)を前記特定シクロプロパン化合物と有機溶媒とで構成し、使用前に2液を混合して調液する形態などであってもよい。このときの、各成分の含有量は、混合後に前記の範囲となることが好ましい。
【0073】
[二次電池]
本発明の二次電池の実施形態についてその断面図を大幅に模式化して示した図1を参照して説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、非水二次電池用電解液5と、リチウムイオンの挿入放出が可能な正極C(正極集電体1,正極活物質層2)と、リチウムイオンの挿入放出又は溶解析出が可能な負極A(負極集電体3,負極活物質層4)とを備える。これら必須の部材に加え、電池が使用される目的、電位の形状などを考慮し、正極と負極の間に配設されるセパレータ9、集電端子(図示せず)、及び外装ケース等(図示せず)を含んで構成されてもよい。必要に応じて、電池の内部及び電池の外部の少なくともいずれかに保護素子を装着してもよい。このような構造とすることにより、電解液5内でリチウムイオンの授受a,bが生じ、充電・放電α・βを行うことができ、回路配線7を介して動作手段6を介して運転あるいは蓄電を行うことができる。以下、本発明の好ましい実施形態であるリチウム二次電池の構成について詳細に説明する。
【0074】
(電池形状)
本実施形態のリチウム二次電池が適用される電池形状には、特に制限はなく、例えば、有底筒型形状、有底角型形状、薄型形状、シート形状、及び、ペーパー形状などが挙げられ、これらのいずれであってもよい。また、組み込まれるシステムや機器の形を考慮した馬蹄形や櫛型形状等の異型のものであってもよい。なかもで、電池内部の熱を効率よく外部に放出する観点から、比較的平らで大面積の面を少なくとも一つを有する有底角型形状や薄型形状などの角型形状が好ましい。
【0075】
有底筒型形状の電池では、充填される発電素子に対する外表面積が小さくなるので、充電や放電時に内部抵抗による発生するジュール発熱を効率よく外部に逃げる設計にすることが好ましい。また、熱伝導性の高い物質の充填比率を高め、内部での温度分布が小さくなるように設計することが好ましい。図2は、有底筒型形状リチウム二次電池100を例である。この電池は、セパレータ12を介して重ね合わせた正極シート14、負極シート16を捲回して外装缶18内に収納した有底筒型リチウム二次電池100となっている。その他、図中の20が絶縁板、22が封口板、24が正極集電、26がガスケット、28が圧力感応弁体、30が電流遮断素子である。なお、拡大した円内の図示は視認性を考慮しハッチングを変えているが、各部材は符号により全体図と対応している。
【0076】
(電池を構成する部材)
次に、本実施形態のリチウム二次電池の各部材について述べる。本発明のリチウム二次電池は、電解液として、少なくとも前記本発明の非水電池用電解液を含む。
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池に用いられる電解液は、有機溶媒と、前述した特定シクロプロパン化合物と、電解質塩とを含有することが好ましい(電解液5(図1))。非水二次電池用電解液に用いられる電解質塩としては、前述の周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンの塩であり、前記非水二次電池用電解液の実施の態様で詳細に記載したものを用いることができる。また、リチウム二次電池に用いられる有機溶媒(非水電解液溶媒)も同様に、前記非水二次電池用電解液の実施の態様で詳細に記載したものを用いることができる。さらには他の添加剤を加えて、より一層性能を向上させることができる。
【0077】
電解液には、電池の性能を向上させるため、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて各種の添加剤を用いることができる。このような添加剤として、過充電防止剤、負極被膜形成剤、正極保護剤等のこのような機能性添加剤を用いてもよい。
【0078】
また、負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用や、過充電防止剤と負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用が特に好ましい。
【0079】
非水系電解液中におけるこれら機能性添加剤の含有割合は特に限定はないが、非水系電解液全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、特に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、特に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、過充電による異常時に電池の破裂・発火を抑制したり、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させたりすることができる。
【0080】
(電極合材)
電極合材は、集電体(電極基材)上に活物質と導電剤、結着剤、フィラーなどの分散物を塗布した複合体であり、リチウム電池においては、活物質が正極活物質である正極合剤と活物質が負極活物質である負極合剤が使用されることが好ましい。次に、電極合材を構成する、正極活物質、負極活物質、導電剤、結着剤、フィラー及び集電体について説明する。
【0081】
(正極活物質)
正極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる遷移金属酸化物を用いることができるが、リチウム含有遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。正極活物質として好ましく用いられるリチウム含有遷移金属酸化物としては、リチウム含有Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Wを含む酸化物等が好適に挙げられる。またリチウム以外のアルカリ金属(周期律表の第1(Ia)族、第2(IIa)族の元素)、及び/又はAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量としては、遷移金属に対して0〜30mol%が好ましい。
【0082】
前記正極活物質として好ましく用いられるリチウム含有遷移金属酸化物の中でも、リチウム化合物/遷移金属化合物(ここで遷移金属とは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種のことをいう。)の合計のモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
【0083】
さらに、前記リチウム化合物/遷移金属化合物の中でも、LigM3O2(M3はCo、Ni、Fe、及びMnから選択される1種以上の元素を表す。gは、0〜1.2を表す。)を含む材料、又はLihM42O(M4はMnを表す。hは、0〜2を表す。)で表されるスピネル構造を有する材料が特に好ましい。前記M3、M4としては、遷移金属以外にAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量は遷移金属に対して0〜30mol%が好ましい。
【0084】
前記LigM3O2を含む材料、LihM42Oで表されるスピネル構造を有する材料の中でも、LigCoO2、LigNiO2、LigMnO2、LigCojNi1−jO2、LihMn2O4、 LiNijMn1−jO2、LiCojNihAl1−j−hO2、LiCojNihMn1−j−hO2、LiMnhAl2−hO4、LiMnhNi2−hO4(ここでgは0.02〜1.2を表す。jは0.1〜0.9を表す。hは0〜2を表す。)が特に好ましく、もっと好ましくはLigCoO2、LiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2である。高容量、高出力の観点で上記のうちNiを含む電極が更に好ましい。ここで、前記g値及びh値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する値である。具体的には、
LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、
LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn1.8Al0.2O4、
LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
【0085】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
更に、5V近い高電位と250mAh/gを超える非常に高い比容量を示す固溶体系正極材料(例えばLi2MnO3‐LiMO2(M:Ni,Co,Mnなどの金属)が,次世代のリチウムイオン電池の正極材料として大きな注目を集めている。本発明の電解液はこれら固溶体系正極材料と組合せることも好ましい。
【0086】
非水電解質二次電池において、用いられる前記正極活物質の平均粒子サイズは特に限定されないが、0.1μm〜50μmが好ましい。比表面積としては特に限定されないが、BET法で0.01m2/g〜50m2/gであるのが好ましい。また、正極活物質5gを蒸留水100mlに溶かした時の上澄み液のpHとしては、7以上12以下が好ましい。
【0087】
前記正極活性物質を所定の粒子サイズにするには、良く知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、振動ミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが用いられる。前記焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0088】
(負極活物質)
負極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であれば特には制限されないが、構成成分としてケイ素、チタン及び/又はリチウム(例えばチタン酸リチウム)を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0089】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、及びPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0090】
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素材料と黒鉛系炭素材料に分けることもできる。また炭素質材料としては、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
【0091】
リチウム二次電池において用いられる負極活物質である金属酸化物及び金属複合酸化物は、これらの少なくとも1種を含んでいればよい。金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0092】
前記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、金属化合物としては、例えば、Ga2O3、SiO、GeO、SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb2O4、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、Bi2O3、Bi2O4、SnSiO3、GeS、SnS、SnS2、PbS、PbS2、Sb2S3、Sb2S5、SnSiS3などが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li2SnO2であってもよい。
【0093】
非水電解質二次電池において、用いられる前記負極活物質の平均粒子サイズは、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子サイズにするには、よく知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
【0094】
前記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0095】
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵・放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
【0096】
本発明においては、チタン酸リチウム、より具体的にはリチウム・チタン酸化物(Li[Li1/3Ti5/3]O4)を負極の活物質として用いることが好ましい。これを負極活物質として用いることにより、前記特定シクロプロパン化合物によるSEIの形成効果が一段と高まり、一層優れた電池性能を発揮させることができる。
本発明の電解液は好ましい様態として高電位負極(好ましくはリチウム・チタン酸化物、電位1.55V)との組合せ、及び低電位負極(好ましくは炭素材料、電位0.1V)との組合せのいずれにおいても優れた特性を発現する。更に高容量化に向けて開発が進んでいるリチウムと合金形成可能な金属または金属酸化物負極(好ましくはSi、酸化Si、Si/酸化シリコン、Sn、酸化Sn、SnBxPyOz、Cu/Snおよびこれらのうち複数の複合体)、及びこれらの金属または金属酸化物と炭素材料の複合体を負極とする電池においても好ましく用いることができる。
【0097】
(導電材)
導電材は、構成された二次電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何を用いてもよく、公知の導電材を任意に用いることができる。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀(特開昭63−10148,554号に記載)等)、金属繊維あるいはポリフェニレン誘導体(特開昭59−20,971号に記載)などの導電性材料を1種又はこれらの混合物として含ませることができる。その中でも、黒鉛とアセチレンブラックの併用がとくに好ましい。前記導電剤の添加量としては、1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。カーボンや黒鉛の場合は、2〜15質量%が特に好ましい。
【0098】
(結着剤)
結着剤としては、多糖類、熱可塑性樹脂及びゴム弾性を有するポリマーなどが挙げられ、その中でも、例えば、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ジアセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、スチレン−マレイン酸共重合体等の水溶性ポリマー、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ポリビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート等のビニルエステルを含有するポリビニルエステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のエマルジョン(ラテックス)あるいはサスペンジョンが好ましく、ポリアクリル酸エステル系のラテックス、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが、より好ましい。
【0099】
結着剤は、一種単独又は二種以上を混合して用いることができる。結着剤の添加量が少ないと、電極合剤の保持力・凝集力が弱くなる。多すぎると電極体積が増加し電極単位体積あるいは単位質量あたりの容量が減少する。このような理由で結着剤の添加量は1〜30質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0100】
(フィラー)
フィラーを形成する材料は、二次電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの材料からなる繊維状のフィラーが用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、0〜30質量%が好ましい。
【0101】
(集電体)
正・負極の集電体としては、非水電解質二次電池において化学変化を起こさない電子伝導体が用いられる。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。
【0102】
負極の集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、銅あるいは銅合金がより好ましい。
【0103】
前記集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。前記集電体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
これらの材料から適宜選択した部材によりリチウム二次電池の電極合材が形成される。
【0104】
(セパレータ)
リチウム二次電池に用いられるセパレータは、正極と負極を電子的に絶縁する機械的強度、イオン透過性、及び正極と負極の接触面で酸化・還元耐性のある材料であれば特に限定されることはない。このような材料として多孔質のポリマー材料や無機材料、有機無機ハイブリッド材料、あるいはガラス繊維などが用いられる。これらセパレータは安全性確保のためのシャットダウン機能、すなわち、80℃以上で隙間を閉塞して抵抗を上げ、電流を遮断する機能、を持つことが好ましく、閉塞温度は90℃以上、180℃以下であることが好ましい。セパレータの強度の観点から、無機材料、ガラス繊維で補強されたセパレータを用いることが特に好ましい。
【0105】
前記セパレータの孔の形状は、通常は円形や楕円形で、大きさは0.05μm〜30μmであり、0.1μm〜20μmが好ましい。さらに延伸法、相分離法で作った場合のように、棒状や不定形の孔であってもよい。これらの隙間の占める比率すなわち気孔率は、20%〜90%であり、35%〜80%が好ましい。
【0106】
前記ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単一の材料を用いたものでも、2種以上の複合化材料を用いたものであってもよい。孔径、気孔率や孔の閉塞温度などを変えた2種以上の微多孔フィルムを積層したものが、好ましい。
【0107】
前記無機材料としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を樹脂製の結着剤を用いて正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子をフッ素樹脂の結着剤を用いて多孔層として形成させることが挙げられる。
【0108】
[リチウム二次電池の用途]
リチウム二次電池は、サイクル性良好な二次電池を作製することができるため、種々の用途に適用される。
適用態様には特に限定なはいが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0109】
二次電池において電荷の輸送に用いられる金属イオンは特に限定されないが、周期律表第一族又は第二族に属する金属イオンを利用したものであることが好ましい。中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン等を用いることが好ましい。リチウムイオンを用いた二次電池についての一般的な技術事項は冒頭に挙げた特許文献等、多くの文献や書籍があり参考になる。その他、ナトリウムイオンを用いた二次電池については、Journal of Electrochemical Society;Electrochemical Science and Technology、米国、1980年、第127巻、第2097〜2099頁等を参照することができる。マグネシウムイオンについては、Nature 407, p.724−727(2000)等を参照することができる。カルシウムイオンについては、J.Electrochem. Soc., Vol.138, 3536 (1991)等を参照することができる。本発明においてはその普及の程度からリチウムイオン二次電池に適用することが好ましいが、それ以外のものにおいても所望の効果を奏するものであり、これに限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって、何ら限定されるものではない。
<実施例I>
1.シクロプロパン化合物の合成
【0111】
(合成例I−1:シクロプロパン(SI−1)の合成)
1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸2.22g、塩化メチレン84ml、メタノール12mlの溶液に、2Mのトリメチルシリルジアゾメタンのジエチルエーテル溶液12mlと滴下した。発泡終了後、酢酸1mlを加えた。塩化メチレンで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮をした。得られた有機物を蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−1)を1.9g得た。
【0112】
(合成例I−2:シクロプロパン(SI−2)の合成)
グリセロールカーボネート5.31g、ジシクロヘキシルカルボジイミド9.28g、4−ジメチルアミノピリジン55mgを塩化メチレン60mlに溶解させた。0℃にて1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸5gを塩化メチレン50mlにて溶かした溶液を滴下し、室温で3時間反応させた。セライトろ過により、固体を取り除いた後、塩化メチレンにて抽出、飽和食塩水にて洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮をした。得られた有機物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、シクロプロパン化合物(SI−2)を6.5g得た。
【0113】
(合成例I−3:シクロプロパン(SI−5)の合成)
原料にメトキシエトキシエタノールを用い、合成例I−2と同様の方法でシクロプロパン(SI−5)を得た。
【0114】
(合成例I−4:シクロプロパン(SI−8)の合成)
7.6gのNaBH4をエタノール50mlに加え、4−ブロモ−2−シアノ−4−メチル−2−ペンテン酸メチル23.1gのエタノール10ml溶液を室温にて滴下した。4時間反応させた後、蒸留水100mlを加え、塩化メチレンで抽出、濃縮した後、減圧蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−8)を7.2g得た。
【0115】
(合成例I−5:シクロプロパン(SI−11)の合成)
2MのLDAのTHF溶液6mlに脱水THF20mlを加え、−78℃に冷却した。シクロプロパンカルボン酸ターシャリーブチルエステル1.5mlを滴下し、−78℃のまま3時間攪拌した。1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン2.9mlを加え、−78℃で2時間反応させた後、室温にして1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、乾燥、濃縮した。得られた有機物を蒸留にて精製し、シクロプロパン化合物(SI−11)を0.82g得た。
【0116】
(合成例I−6:シクロプロパン(SI−12)の合成)
シクロプロパン化合物(SI−11)を塩化メチレン25mlで溶かし、0℃にてトリフルオロ酢酸25ml、トリエチルヒドロシラン0.5mlを加え、室温にて4時間反応させた。1M水酸化ナトリウム水溶液を加えアルカリ性にし、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、水溶液に1M塩酸水溶液を加え酸性にし、酢酸エチルにて抽出、飽和食塩水にて洗浄後、有機層を乾燥、濃縮した。得られたシクロプロパンカルボン酸誘導体を合成例I−1と同様の方法で、エステル化を行い、シクロプロパン化合物(SI−12)を得た。
【0117】
(合成例I−7:シクロプロパン(SI−13)の合成)
原料に1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸を用い、合成例I−5と同様の方法でシクロプロパン(SI−13)を得た。
【0118】
(合成例I−8:シクロプロパン(SI−14)の合成)
原料にベンジルブロミドを用いて、合成例I−5と同様の方法でシクロプロパン(SI−14)を得た。
【0119】
(合成例I−9:シクロプロパン(SI−15)の合成)
原料にシクロプロパン(SI−14)を用いて、合成例I−6と同様の方法でシクロプロパン(SI−15)を得た。
【0120】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例I−1で得たシクロプロパン化合物(SI−1)を0.05質量%加え、試験No.I−101の電解液を調製した。用いるシクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.I−102〜I−113)。
【0121】
<比較例>
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。
また、同様に炭酸ビニレン(VC)、下記(RI−1)、下記(RI−2)、下記(RI−3)を表のとおりの添加量で添加したものを比較例とした。
【0122】
【化14】
【0123】
[リチウム二次電池]
【0124】
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表1−1に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0125】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0126】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0127】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0128】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0129】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0130】
【表1−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0131】
表1−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−101〜I−114)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c11〜I−c16)よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したシクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0132】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0133】
【表1−2】
(注2)低温放電率(%)=(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0134】
表1−2に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−201〜I−208)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c21〜I−c24)よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、リチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0135】
3.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0136】
【表1−3】
(注3)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0137】
表1−3に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−301〜I−308)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c31〜I−c34)よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0138】
4.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0139】
【表1−4】
(注4)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0140】
表1−4に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−401、I−402)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.I−c41)よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0141】
<実施例II>
1.特定シクロプロパン化合物の合成
(合成例II−1:スピロシクロプロパン(SII−1)の合成)
1,1−シクロプロパンジカルボン酸2.6g、無水酢酸2.4ml、硫酸0.08mlの溶液へ、0℃にてアセトン2mlを滴下した。0℃にて5時間反応させた後、水を30ml加えた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をpH5になるまで加えた後、析出した固体をろ過により単離し、スピロシクロプロパン(SII−1)を2.1g得た。
【0142】
(合成例II−2:スピロシクロプロパン(SII−2)の合成)
原料にシクロヘキサノンを用い、合成例II−1と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−2)を得た。
【0143】
(合成例II−3:スピロシクロプロパン(SII−7)の合成)
N,N−ジメチルバルビツール酸7.81g、1,2−ジブロモエタン11.27g、炭酸カリウム13.82g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩0.17g、ジメチルホルムアミド70mlを加え、加熱還流した。4時間反応させた後、室温に冷やした反応液をろ過し、ろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、スピロシクロプロパン(SII−7)を6.5g得た。
【0144】
(合成例II−4:スピロシクロプロパン(SII−11)の合成)
原料にN,N−ジエチルチオバルビツール酸を用い、合成例II−3と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−11)を得た。
【0145】
(合成例II−5:スピロシクロプロパン(SII−14)の合成)
原料に1,2−ジメチルピラゾリジン−3,5−ジオンを用い、合成例II−3と同様の方法でスピロシクロプロパン(SII−14)を得た。
【0146】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例II−1で得たスピロシクロプロパン化合物(SII−1)を0.05重量%加え、電解液を調製した(試験No.II−101)。
用いるシクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.II−102〜II−111)。
【0147】
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。このとき、実施例と同様の条件で炭酸ビニレン(VC)、下記(RII−1)、下記(RII−2)、下記環状酸無水物(RII−3)を添加したものを比較例とした。
【0148】
【化15】
【0149】
[リチウム二次電池]
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表2−1に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0150】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0151】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0152】
<正極負荷特性(負荷容量維持率)>
前記サイクル性試験にて10サイクル充放電を行った正極を取り出し、負極をリチウム、電解液に1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの体積比1対2を用いて2032形電池を作製した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで2C定電流放電を行い、放電容量、放電曲線を比較した。
【0153】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0154】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0155】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0156】
【表2−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0157】
表2−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−101〜II−113)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c11〜II−c16)よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したスピロシクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0158】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0159】
【表2−2】
(注2)低温放電率(%)=(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0160】
表2−2に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−201〜II−209)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c21〜II−c24)よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、リチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0161】
3.負荷容量維持率
(LCCMR:Load−Carrying Capacity Maintaining Ratio)・・・正極負荷特性
【0162】
【表2−3】
(注3)負荷容量維持率(%)=(2C放電容量/初期放電容量)×100
【0163】
表2−3に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−301〜II−303)では、比較例(試験No.II−c31〜II−c36)の2032形非水電解液二次電池よりも、負荷特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、添加したスピロシクロプロパン化合物による被膜が形成され、形成された被膜により正極が安定化し、正極界面の抵抗を抑制したことに起因すると推定している。
また、図3に示したように、実施例(No.II−301)の二次電池における放電曲線は、比較例(No.II−c32)に比べ、高電流領域まで高電圧を維持する、より理想に近いものであった。
【0164】
4.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0165】
【表2−4】
(注4)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0166】
表2−4に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−401〜II−409)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c41〜II−c44)よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0167】
5.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0168】
【表2−5】
(注5)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0169】
表2−5に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−501、II−502)では、比較例の2032形非水電解液二次電池(試験No.II−c51)よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0170】
<実施例III>
(合成例III−1:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−1)の合成)
NaBH41.89gのテトラヒドロフラン(THF)70ml溶液を0℃に冷やし、3−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン−2,4−ジオン5.6gのTHF80ml溶液を滴下し、3時間反応させた。反応終了後、6N HClをpH2になるまで加え、t−ブチルメチルエーテルにて抽出、濃縮した。得られた有機物にトルエン100ml、p−トルエンスルホン酸0.2gを加え、1時間加熱還流した。水で洗浄、t−ブチルメチルエーテルで抽出、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−1)を3.1g得た。
【0171】
(合成例III−2:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−3)の合成)
原料に1−メチル−3−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン−2,4−ジオンを用い、合成例III−1と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−3)を得た。
【0172】
(合成例III−3:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−5)の合成)
シクロプロパン5gにトルエン100ml、p−トルエンスルホン酸0.2gを加え、1時間加熱還流した。水で洗浄、t−ブチルメチルエーテルで抽出、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−5)を3.8g得た。
【0173】
(合成例III−4:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−6)の合成)
アリルアセトアセテート6.63gに酢酸マンガン(III)25g、酢酸銅(II)8.47g、酢酸カリウム9.15g、酢酸115ml加え、75℃にて1時間反応させた。反応終了後、重曹水にて中和し、酢酸エチルにて抽出、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−6)を2.8g得た。
【0174】
(合成例III−5:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−7)の合成)
原料にアリルメチルマロン酸エステルを用い、合成例III−4と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−7)を得た。
【0175】
(合成例III−6:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−8)の合成)
原料にシアノ酢酸アリルを用い、合成例III−5と同様の方法でラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−8)を得た。
【0176】
(合成例III−7:ラクトン縮環シクロプロパン(SIII−10)の合成)
THF50mlに水素化ナトリウム1.25gを加え、氷浴で冷却した。反応容器に
マロン酸ジエチル8.8gにTHF10ml加えた溶液を滴下し、15分攪拌した。その後、α―ブロモブテノライド8.15gを加え室温に戻した後、5時間攪拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルにて抽出、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−10)6.5gを得た。
【0177】
<実施例>
2.電解液の調製
1M LiPF6の炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)の体積比1対2の電解液、及び体積比1対3電解液に、合成例III−1で得たラクトン縮環シクロプロパン化合物(SIII−1)を0.05質量%加え、電解液を調製した(試験No.III−101)。試験No.III−102以下についても、用いる特定シクロプロパン化合物の種類と添加量を表のとおりに変えて、同様に電解液を調製した(試験No.III−102〜III−114)。
【0178】
1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの電解液を比較例とした。このとき、試験No.III−101と同様の条件で炭酸ビニレン(VC)、下記(RIII−1)、下記(RIII−2)、下記環状酸無水物(RIII−3)を添加したものを比較例とした。
【0179】
【化16】
【0180】
[リチウム二次電池]
【0181】
正極にコバルト酸リチウム合剤シート(電極容量1.5mAh/cm2:アルミ箔ベース、13mmφ)、負極に天然球状グラファイト電極シート(電極容量1.6mAh/cm2:Cu箔ベース、14.5mmφ)、セパレータにPP製多孔質フィルム(厚さ25μm、16mmφ)を用い、下記表に示す電解液を用いた評価用のリチウム二次電池を作製した。
【0182】
<サイクル性評価(放電容量維持率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを300サイクルに達するまで繰り返した。
【0183】
<低温放電率評価(低温放電率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて30℃に対する−20℃での放電容量率を測定した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に−20℃の恒温槽中、0電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、放電容量を測定した。
【0184】
<正極負荷特性(負荷容量維持率)>
前記サイクル性試験にて10サイクル充放電を行った正極を取り出し、負極をリチウム金属、電解液に1M LiPF6の炭酸エチレン/炭酸エチルメチルの体積比1対2を用いて2032形電池を作製した。30℃の恒温槽中、電池電圧が4.2Vになるまで0.7C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が2.75Vになるまで2C定電流放電を行い、放電容量、放電曲線を比較した。
【0185】
<自己放電特性評価(容量残存率)>
上記の方法で作製した2032形電池を用いて、30℃の環境下、0.4mAで電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、電池電圧が2.75Vになるまで0.1C定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。さらに、電池電圧が4.2Vになるまで0.1C定電流充電した後、4.2V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行った後、電池を45℃の環境下で14日間放置した。その後、30℃の環境に取り出した後、同様の放電条件にて放電を行ったときの放電容量を測定した。
【0186】
<Li4Ti5O12負極でのサイクル性評価(放電容量維持率)>
負極をチタン酸リチウム合剤シート(電極容量1.6mAh/cm2:アルミ箔ベース、14.5mmφ)に変えて、作製した2032形電池を用いて30℃の恒温槽中、電池電圧が2.8Vになるまで0.7C定電流充電した後、2.8V定電圧において電流値が0.06mAになる、または2時間充電を行い、次に電池電圧が1.8Vになるまで0.5C定電流放電を行い、1サイクルとした。これを500サイクルに達するまで繰り返した。
【0187】
<試験結果>
1.300サイクル目における放電容量維持率
(DCMR300:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0188】
【表3−1】
(注1)放電容量維持率(%)=
(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0189】
表3−1に示すように、実施例の2032形非水電解液二次電池(試験No.III−101〜III−119)では、比較例(試験No.III−c11〜III−c16)の2032形非水電解液二次電池よりも、300サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極において、電解液に添加したラクトン縮環シクロプロパン化合物が、負極で電子を受け取り開環重合し、負極表面に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0190】
2.低温放電率(LTDR:Low Temperature Discharging Rate)
【0191】
【表3−2】
(注2)低温放電率(%)=
(−20℃での放電容量/30℃での放電容量)×100
【0192】
表3−2に示すように、実施例(試験No.III−201〜III−210)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c21〜III−c24)の2032形非水電解液二次電池よりも、低温放電率が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池に係る負極表面において形成されたSEI被膜中で、ラクトン環によりリチウムイオンが安定化され、被膜(SEI)中のリチウムイオン伝導性が向上し、界面移動抵抗が減少したことに起因すると推定される。
【0193】
3.負荷容量維持率
(LCCMR:Load−Carrying Capacity Maintaining Ratio)・・・正極負荷特性
【0194】
【表3−3】
(注3)負荷容量維持率(%)=
(2C放電容量/初期放電容量)×100
【0195】
表3−3に示すように、実施例(試験No.III−301〜III−303)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c31〜III−c36)の2032形非水電解液二次電池よりも、負荷特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、ラクトン縮環シクロプロパンによる被膜が形成され、形成された被膜により正極が安定化し、正極界面の抵抗を抑制したことに起因すると推定している。
また、図4に示したように、実施例(No.III−301)の二次電池における放電曲線は、比較例(No.III−c32)に比べ、高電流領域まで高電圧を維持する、より理想に近いものであった。
【0196】
4.容量残存率(RCR:Remaining Capacity Ratio)
【0197】
【表3−4】
(注4)容量残存率(%)=(14日放置後放電容量/初期放電容量)×100
【0198】
表3−4に示すように、実施例(試験No.III−401〜III−410)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c41〜III−c44)の2032形非水電解液二次電池よりも、自己放電特性が優れていることが確認された。この結果は、実施例の電池にかかる正極表面において、形成された被膜により正極が安定化し、正極の自己分解を抑制したことに起因すると推定している。
【0199】
5.500サイクル目における放電容量維持率
(DCMR500:Discharge Capacity Maintaining Ratio)
【0200】
【表3−5】
(注5)放電容量維持率(%)=
(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0201】
表3−5に示すように、実施例(試験No.III−501〜III−504)の2032形非水電解液二次電池では、比較例(試験No.III−c51)の2032形非水電解液二次電池よりも、500サイクル目の容量維持率が優れていることが確認された。この結果は、グラファイト負極のとき同様リチウムイオンの挿入電位よりも高い電位で還元が進行し、チタン酸リチウム負極上に良好なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成して、電解液の分解、および電極の劣化が抑制されたことに起因しているものと考えられる。
また、正極活物質にLiMn2O4、LiNi0.85Co0.01Al0.05O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いても、同様に良好な放電容量維持率を示した。
【0202】
上記実施例において本発明の電解液を負極としてリチウム・チタン酸化物負極あるいは炭素材料負極、正極としてニッケルマンガンコバルト酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムと組み合わせて用いた電池において優れた特性を発現することを示したが、本発明の電解液は高容量化に向けて開発が進んでいるリチウムと合金形成可能な金属または金属酸化物負極(好ましくはSi、酸化Si、Si/酸化Si、Sn、酸化Sn、SnBxPyOz、Cu/Snおよびこれらのうち複数の複合体)、及びこれらの金属または金属酸化物と炭素材料の複合体を負極とする電池、及び/又は4.5V〜5V級正極を用いた電池においても同様の優れた効果を発現するものと推測できる。
【符号の説明】
【0203】
1 正極集電体
2 正極活物質層
3 負極集電体
4 負極活物質層
5 電解液
6 動作手段
7 配線
9 セパレータ
10 リチウムイオン二次電池
12 セパレータ
14 正極シート
16 負極シート
18 負極を兼ねる外装缶
20 絶縁板
22 封口板
24 正極集電
26 ガスケット
28 圧力感応弁体
30 電流遮断素子
100 有底筒型形状リチウム二次電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(前記式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(前記式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(前記式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【請求項2】
前記式(I−1)の置換基Xが、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を示す請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項3】
前記式(I−1)中、R11〜R14が水素原子である請求項1または2に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項4】
前記式(I−1)のXがシアノ基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項5】
前記式(I−1)の−L11−R15が、−COOR16で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
(R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記式(II−1)におけるL21が形成する環が−CONR25−(ここでR25はアルキル基またはアリール基を示す)または−COO−を含む請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項7】
前記式(II−1)で表される化合物が、下記式(II−2)で表される化合物である請求項1または6に記載の非水二次電池用電解液。
【化2】
(式中、R21〜R24は式(II−1)と同義である。L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
【請求項8】
前記式(II−1)におけるL21がなす環または前記式(II−2)におけるL22がなす環が、5員環または6員環である請求項1、6、および7のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項9】
前記式(III−1)における(L31)nがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、または−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)である請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項10】
前記式(III−1)におけるL32が、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、または−NR35−である請求項1または9に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項11】
前記式(III−1)で表される化合物が下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物である請求項1、9、および10のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【化3】
(前記式中、R31〜R34及びL32は、式(III−1)と同義である。)
【請求項12】
前記式(III−1)におけるL32が、炭素数1〜3のアルキレン基である請求項1および9〜11のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項13】
前記式(III−1)におけるL32が、メチレン基である請求項1および9〜12のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項14】
前記電解質がリチウム塩である請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項15】
前記シクロプロパン化合物を電解液の総量に対して0.005〜20質量%の範囲で適用する請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項16】
前記有機溶媒として、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルを採用した請求項1〜15のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項17】
請求項1〜16に記載の非水二次電池用電解液と、正極と、負極とを備えるリチウム二次電池。
【請求項18】
前記負極の活物質としてチタン酸リチウムを適用した請求項17に記載の二次電池。
【請求項19】
第1剤と第2剤とを混合して用いる非水二次電池用電解液のキットであって、
前記第1剤が電解質を含有し、前記第2剤が下記式(I−1)、式(II−1)、または式(III−1)で表されるシクロプロパン化合物を含有する非水二次電池用電解液キット。
【化4】
(前記式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(前記式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(前記式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【請求項1】
電解質と、下記式(I−1)で表される化合物、下記式(II−1)で表される化合物、および下記式(III−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上のシクロプロパン化合物とを、有機溶媒中に含有する非水二次電池用電解液。
【化1】
(前記式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(前記式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(前記式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【請求項2】
前記式(I−1)の置換基Xが、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を示す請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項3】
前記式(I−1)中、R11〜R14が水素原子である請求項1または2に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項4】
前記式(I−1)のXがシアノ基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項5】
前記式(I−1)の−L11−R15が、−COOR16で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
(R16は、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、又はイミノ基(−NR17−)を介在してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R17は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記式(II−1)におけるL21が形成する環が−CONR25−(ここでR25はアルキル基またはアリール基を示す)または−COO−を含む請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項7】
前記式(II−1)で表される化合物が、下記式(II−2)で表される化合物である請求項1または6に記載の非水二次電池用電解液。
【化2】
(式中、R21〜R24は式(II−1)と同義である。L22は、式中の2つのカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
【請求項8】
前記式(II−1)におけるL21がなす環または前記式(II−2)におけるL22がなす環が、5員環または6員環である請求項1、6、および7のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項9】
前記式(III−1)における(L31)nがなす連結基がカルボニルオキシ基、アミド基、または−COR36−(R36は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)である請求項1に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項10】
前記式(III−1)におけるL32が、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、または−NR35−である請求項1または9に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項11】
前記式(III−1)で表される化合物が下記式(III−2)または(III−3)で表される化合物である請求項1、9、および10のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【化3】
(前記式中、R31〜R34及びL32は、式(III−1)と同義である。)
【請求項12】
前記式(III−1)におけるL32が、炭素数1〜3のアルキレン基である請求項1および9〜11のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項13】
前記式(III−1)におけるL32が、メチレン基である請求項1および9〜12のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項14】
前記電解質がリチウム塩である請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項15】
前記シクロプロパン化合物を電解液の総量に対して0.005〜20質量%の範囲で適用する請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項16】
前記有機溶媒として、環状カーボネート、鎖状カーボネート、または環状エステルを採用した請求項1〜15のいずれか1項に記載の非水二次電池用電解液。
【請求項17】
請求項1〜16に記載の非水二次電池用電解液と、正極と、負極とを備えるリチウム二次電池。
【請求項18】
前記負極の活物質としてチタン酸リチウムを適用した請求項17に記載の二次電池。
【請求項19】
第1剤と第2剤とを混合して用いる非水二次電池用電解液のキットであって、
前記第1剤が電解質を含有し、前記第2剤が下記式(I−1)、式(II−1)、または式(III−1)で表されるシクロプロパン化合物を含有する非水二次電池用電解液キット。
【化4】
(前記式(I−1)中、R11〜R14は各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素原子、カルボニル基含有基、またはシアノ基を示す。R15は炭素数1〜7の酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含むことがある置換基を示す。L11はアルキレン基またはカルボニル基を示す。Xは、ハメット則のσp値において0以上の値を示す電子求引性基を示す。)
(前記式(II−1)中、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を示す。L21は、式中のカルボニル基及びシクロプロピル基の炭素原子とともに環構造を形成する原子群を表す。)
(前記式(III−1)中、R31〜R34は各々独立に水素原子または置換基を示す。L31は、酸素原子、−NR35−、またはカルボニル基を表す。L32は、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO2−、または−NR35−を表す。R35はアルキル基またはアリール基を示す。n、mは各々独立に1または2を示す。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−110102(P2013−110102A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214026(P2012−214026)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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