非水二酸化塩素生成組成物およびそれに関連する方法
二酸化塩素生成が乾燥極性物質で活性化される、二酸化塩素を生成するための方法が開示される。二酸化塩素を生成するための系、ならびにこの系および方法において有用な組成物も開示される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二酸化塩素(ClO2)は、+IV酸化状態にある塩素の中性化合物である。これは酸化によって消毒されるが、塩素化はしない。比較的小さい、揮発性の高エネルギー分子であり、かつ、希釈水溶液中であっても遊離基である。二酸化塩素は、亜塩素酸塩(ClO2-)に還元される、その独特な一電子移動機構により、高度に選択的な酸化物として機能する。溶液中の遊離分子の二酸化塩素は、微生物および生物膜の沈着の制御に有効な薬剤である。
【0002】
水中に溶解される二酸化塩素ガスを産生するために、水中の亜塩素酸イオンを反応させることによって二酸化塩素を調製するいくつかの方法が存在する。二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを、塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させることを含む。反応は、
2NaClO2+Cl2(g)→2ClO2(g)+2NaCl [1a]
2NaClO2+HOCl→2ClO2(g)+NaCl+NaOH [1b]
5NaClO2+4HCl→4ClO2(g)+5NaCl+2H2O [1c]である。
反応[1a]および[1b]は、酸性媒体中で非常に速い速度で進行するため、実質的には、全ての従来の二酸化塩素生成化学反応が、3.5未満のpHを有する酸性産物溶液をもたらす。また、二酸化塩素形成の動力学は、亜塩素酸塩アニオン濃度中で高次であるため、二酸化塩素生成は、通常、高濃度(1000ppm超)で行われ、これは、用途の使用濃度に希釈されなければならない。
【0003】
二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調製され得る。そのような反応の例として、
2NaClO3+4HCl→2ClO2+Cl2+2H2O+2NaCl [2a]
2HClO3+H2C2O4→2ClO2+2CO2+2H2O [2b]
2NaClO3+H2SO4+SO2→2ClO2+2NaHSO4 [2c]が挙げられる。
周囲条件において、全ての反応は、通常、7〜9Nの範囲の強酸性条件を必要とする。高温度までの試薬の加熱および産物溶液からの二酸化塩素の連続的除去によって、必要な酸性度を1N未満まで減少させることができる。二酸化塩素は、亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることによっても産生されている。
【0004】
原位置の二酸化塩素を調製する方法は、「安定化二酸化塩素」と称される溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、ほとんどまたは全く二酸化塩素を含有しないが、むしろ、中性またはわずかにアルカリ性のpHの亜塩素酸ナトリウムから実質的に成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は、亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は、溶液の原位置で生成される。得られた二酸化塩素含有溶液は、酸性である。典型的には、二酸化塩素への亜塩素酸ナトリウムの変換の程度は低く、亜塩素酸ナトリウムの実質量は、溶液中に残留する。
【0005】
二酸化塩素溶液は、粉末、顆粒、ならびに錠剤およびブリケット等の固体圧縮物を含む固体混合物から産生されており、液体水と接触した時に二酸化塩素ガス生成する物質から成る。例えば、同一出願人による米国特許第6,432,322号、同第6,699,404号、および同第7,182,883号、ならびに米国特許出願第2006/0169949号、同第2007/0172412号を参照されたい。水蒸気と接触する時に二酸化塩素ガスを生成する物質を含む二酸化塩素生成組成物も知られている。例えば、同一出願人による米国特許第6,077,495号、同第6,294,108号、および同第7,220,367号を参照されたい。米国特許第6,046,243号は、親水性物質中に溶解される亜塩素酸塩および疎水性物質中の酸放出剤の複合体を開示する。複合体は、水分への曝露時に二酸化塩素を生成する。同一出願人による米国特許出願第2006/0024369号は、有機マトリックスに統合される二酸化塩素生成物質を含む二酸化塩素複合体を開示する。二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される時に生成される。
【0006】
中国特許出願第1104610号は、中国ワックス、ステアリン酸(ワックス様固体である飽和脂肪酸)、蜜ワックス、またはパラフィンワックス中の亜塩素酸ナトリウムをカプセルで包むことによって二酸化塩素形成組成物を調製し、かつこの組成物を乾燥酒石酸粒子もしくはシュウ酸粒子と混合する方法を開示する。この混合物を水と接触させることで、二酸化塩素産生がもたらされる。
【0007】
米国特許第7,273,567号は、亜塩素酸塩アニオンの供給源およびエネルギー活性可能な触媒を含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を記載する。適切な電磁エネルギーへの組成物の曝露は、順に二酸化塩素ガスの産生に触媒作用を及ぼす触媒を活性化する。
【0008】
上述の方法の全ては、二酸化塩素の生成において、水(液体もしくは蒸気)または電磁エネルギーに依存する。水または電磁エネルギーに依存しない二酸化塩素を生成する方法が当技術分野を前進させるであろう。
【発明の概要】
【0009】
乾燥環境下で二酸化塩素を調製するための方法が提供される。すなわち、二酸化塩素を形成するために反応し得る乾燥成分を含有する二酸化塩素生成組成物が活性化されて、水、水蒸気、および電磁エネルギー活性可能な触媒の不在下で二酸化塩素を生成する。活性剤は、極性物質である。
【0010】
したがって、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含む、二酸化塩素を産生するための方法が提供される。一態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含み、極性物質は、液体であり、極性物質は、二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0011】
別の態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、極性物質は乾性であり、かつ、極性物質は二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0012】
別の態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、極性物質は、物質量の水を含み、極性物質は、二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0013】
方法のある特定の実施形態では、極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。例示的な実施形態では、極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって、エステル中の炭素原子の総数は、2〜10個である、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である。
【0014】
方法のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、二酸化塩素の粒子前駆体の形態である。乾燥オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、ならびにアルカリ金属亜塩素酸塩およびアルカリ土類金属亜塩素酸塩の組み合わせから成る群から選択され得る。乾燥酸供給源は、無機酸塩、イオン交換樹脂、分子篩、および有機酸から成る群から選択され得る。例示的な実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウムから成る群から選択され得る。ある特定の実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウムである。
【0015】
方法のある特定の実施形態では、第1の成分は、乾燥電子受容体供給源を含み、供給源は、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ブロモクロロジメチルヒダントイン、およびジブロモジメチルヒダントインから成る群から選択される。例示的な実施形態では、乾燥電子受容体供給源は、ジクロロイソシアヌル酸である。
【0016】
組成物が水不浸透性マトリックスを含む方法のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、粒子前駆体の個別粒子は、マトリックスの被膜を含み、第1の成分は、粒子である。いくつかの実施形態では、マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。疎水性固体は、パラフィンワックス、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、フィッシャートロプシュワックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。疎水性流体は、石油、ワセリン、軽鉱油、重鉱油、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。ある特定の実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリン、鉱油、およびパラフィンワックスの少なくとも1つを含み、かつ、極性物質は、グリセリン、プロピレングリコール、イソプロパノール、ブチルアルコール、オクタン酸、ならびにそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0017】
二酸化塩素生成組成物を調製するための二成分系がさらに提供される。一態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含む第1の成分と、極性物質を含む第2の成分とを含み、第1および第2の成分は、乾性であり、第2の成分は、液体であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0018】
別の態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分と、極性物質を含む第2の成分とを含み、第1および第2の成分は乾性であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0019】
別の態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分と、極性物質および物質量の水を含む第2の成分とを含み、第1の成分は、乾性であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0020】
二成分系のある特定の実施形態では、極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。例示的な実施形態では、極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって、エステル中の炭素原子の総数は、2〜10個である、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である。
【0021】
二成分系のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、二酸化塩素の粒子前駆体の形態である。乾燥オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、ならびにアルカリ金属亜塩素酸塩およびアルカリ土類金属亜塩素酸塩の組み合わせから成る群から選択され得る。乾燥酸供給源は、無機酸塩、イオン交換樹脂、分子篩、および有機酸から成る群から選択され得る。例示的な実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウムから成る群から選択され得る。ある特定の実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウムである。
【0022】
系のある特定の実施形態では、第1の成分は、乾燥電子受容体供給源を含み、かつ、供給源は、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ブロモクロロジメチルヒダントイン、およびジブロモジメチルヒダントインから成る群から選択される。例示的な実施形態では、乾燥電子受容体供給源は、ジクロロイソシアヌル酸である。
【0023】
第1の成分が水不浸透性マトリックスを含む二成分系のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、粒子前駆体の個別粒子は、マトリックスの被膜を含み、第1の成分は、粒子である。いくつかの実施形態では、マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。疎水性固体は、パラフィンワックス、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、フィッシャートロプシュワックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。疎水性流体は、石油、ワセリン、軽鉱油、重鉱油、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。ある特定の実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリン、鉱油、およびパラフィンワックスの少なくとも1つを含み、極性物質は、グリセリン、プロピレングリコール、イソプロパノール、ブチルアルコール、オクタン酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0024】
前述の概要および以下の詳細な記述はともに、例示的かつ説明的であり、特許請求される主題のさらなる説明を提供することを意図することを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
水または水媒体中で二酸化塩素を調製する方法が当分野で周知である。水蒸気への曝露時に二酸化塩素を調製する方法も知られている。オキシ−塩素アニオン供給源からの二酸化塩素の生成を活性化するために、電磁エネルギー活性可能な触媒を使用して、水または水蒸気の不在下で二酸化塩素を調製することも知られている。しかしながら、本開示に先立って、プラスチックもしくは流体の疎水性マトリックス等の実質的に乾燥もしくは無水環境下で二酸化塩素を産生する方法、または電磁エネルギーの不在下で固体マトリックス中に二酸化塩素を迅速に産生する方法がなかった。したがって、本開示は、乾燥もしくは無水環境下で二酸化塩素を調製する方法をある程度提供する。ここで水、水蒸気、および電磁エネルギーのうちのいずれも二酸化塩素の生成を活性化するのに必要ではない。二酸化塩素を調製するための系がさらに提供される。方法を実践するのに有用な組成物およびキットも提供される。
【0026】
定義
本明細書で使用される、以下の用語の各々は、本項においてそれと関連する意味を有する。
【0027】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的な目的語の1つまたは1つを超えるまで(すなわち、少なくとも1つまで)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素、または1つ以上の要素を意味する。
【0028】
「約」という用語は、当業者により理解され、使用される内容によりある程度変化する。概して、「約」とは、参照値のプラス/マイナス10%の値の範囲を包含する。例えば、「約25%」は、22.5%〜27.5%の値を包含する。
【0029】
本明細書で説明される任意の範囲の間の任意および全ての全整数または部分整数が、本明細書に含まれることが理解される。所与の特徴に関する任意の数字または数値範囲に対して、1つの範囲からの数字またはパラメータは、同一の特徴に対して、異なる範囲からの別の数字またはパラメータと混合され、数値範囲を生成し得る。
【0030】
「二酸化塩素生成成分」という用語は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および任意で電子受容体供給源を指す。電子受容体供給源は、塩素等のカチオンハロゲン供給源であり得る。方法、組成物、および系の実践において、これらの供給源の全ては、乾性または無水である。
【0031】
本明細書で使用される、「乾燥」という用語は、非常にわずかの遊離水、吸着水、または結晶化の水しか含有しない物質を意味する。「非常にわずか」は、二酸化塩素産生の活性化に関連する。具体的には、本明細書または当分野で説明されるように、普通の条件下で、二酸化塩素生成成分からの二酸化塩素の高速の産生を活性化しない水の量を含有する物質が、乾性と見なされる。より具体的には、所与の量の二酸化塩素生成成分の二酸化塩素生成の可能性を24時間で消耗しない物質が、乾性と見なされる。乾燥物質は、固体、液体、またはガス状であり得る。乾燥物質は、乾燥物質単独が、二酸化塩素生成成分を含む混合物からの二酸化塩素の生成を活性化しないという条件で、結晶化の水を含有し得る。概して、乾燥物質は、約5重量%未満の水、約1重量%未満の水、または約0.5重量%未満の水を有する。
【0032】
本明細書で使用される、「乾燥二酸化塩素生成組成物」は、所与の量の二酸化塩素生成組成物の二酸化塩素生成の可能性を24時間で消耗するであろう水の量に等しいか、もしくはそれ未満の遊離水の量を含む二酸化塩素生成組成物を指す。
【0033】
本明細書で使用される、「無水」という用語は、遊離水、吸着水、または結晶化の水等の水を含有しない物質を意味する。上に定義されるように、無水物質も乾性である。しかしながら、乾燥物質は、本明細書に定義されるように、必ずしも無水ではない。
【0034】
本明細書で使用される、「非水」は、概して、わずかしか、または全く水を有さない状態を指し、概して、本明細書で使用される、「乾燥」と互換可能である。したがって、それは、本明細書で使用される、「無水」を包含する。
【0035】
本明細書で使用される、「物質量」という用語は、吸着水または結晶化の水の測定可能な過剰量における遊離水の量を指す。
【0036】
「粒子」という用語は、全ての固体物質を意味するように定義される。非限定的な例として、粒子は、相互に散在し、何らかの方法で互いに接触し得る。これらの固体物質には、大きい粒子、小さい粒子、または大小の粒子の両方の組み合わせを含む粒子が含まれる。
【0037】
本明細書で使用される、「二酸化塩素の粒子前駆体」は、粒子に形成される二酸化塩素形成成分の密接な混合物を指す。ASEPTROL(BASF,Florham Park,NJ)の顆粒は、二酸化塩素の例示的な粒子前駆体である。
【0038】
「アルカリ金属亜塩素酸塩」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムの亜鉛素酸塩を指す。
【0039】
「アルカリ土類金属亜塩素酸塩」という用語は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムの亜鉛素酸塩を指す。
【0040】
本明細書で使用される、「極性物質」という用語は、その分子構造の結果として、分子規模で電気双極子モーメントを有する物質を指す。通常、極性物質は、異なる電気陰性度を有する化学元素を含む有機物質である。有機物質中で極性を誘導し得る元素には、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、および金属が含まれる。極性は、異なる程度で物質中に存在し得る。物質は、その分子双極子モーメントが大きい場合に高極性であり、その分子双極子モーメントが小さい場合に低極性であると見なされ得る。例えば、短い2個の炭素鎖上でヒドロキシルの電気陰性度を支援するエタノールは、6個の炭素鎖で同一程度の電気陰性度を支援するヘキサノール(C6H13OH)と比較して、比較的高極性であると見なされ得る。物質の誘電率は、物質の極性の便利な尺度である。本明細書に示されるように、約18〜25℃で測定された、方法、系、および組成物において有用な極性物質は、2.5より大きい誘電率を有する。「極性物質」という用語は、水および水性物質を除外する。極性物質は、固体、液体、またはガスであり得る。
【0041】
本明細書で使用される、「マトリックス」は、二酸化塩素生成成分の保護担体として機能する物質である。マトリックスは、典型的には、懸濁またはさもなければ含有される二酸化塩素を形成するために反応に関与し得る物質中の連続する固相または液相である。マトリックスは、物質に物理的形状を提供し得る。十分に疎水性である場合、マトリックスは、内部で水分との接触から物質を保護し得る。十分に剛性である場合、マトリックスは、構造部材に形成され得る。十分に流体である場合、マトリックスは、マトリックス内で物質を輸送する媒体として機能し得る。十分に接着性である場合、マトリックスは、物質を傾斜もしくは垂直、または水平な下方表面に接着する手段を提供し得る。流体マトリックスは、剪断応力の印加時に即時に流動するような液体であり得るか、または流れを引き起こすために降伏応力閾値を超えることを要求し得る。例示的なマトリックスは、(例えば、二酸化塩素を形成するための反応を開始して)他の成分がマトリックスと、およびマトリックス中に混合され得るように、流体であるか、または(例えば、加熱時に)流体になることができるかのいずれかであり得る。
【0042】
「水不浸透性マトリックス」という用語は、実質的に純粋な水がそこを通って浸透するのを阻止する疎水性マトリックスを指す。したがって、水不浸透性マトリックスは非水である。しかしながら、水は、グリセリンまたはアルコール等の極性物質と混ぜ合わされた場合、水不浸透性マトリックスを通って浸透し得る。例示的な水不浸透性マトリックスは、二酸化塩素ガスを透過し得る。
【0043】
本明細書で使用される、「わずかに可溶性」という用語は、第2の物質を伴って溶液を形成する1つの物質の能力を説明し、溶液として第1の物質と混合され得る第2の物質の最大量は、比較的少ない。例えば、物質Bは、A中に溶解され得るBの最大量が、AおよびBを含む最終溶液の50%未満、25%未満、20%未満、または15%未満である場合、物質A中でわずかに可溶性である。より一般には、わずかに可溶性の物質は、最終溶液の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、または2%を含み得、しばしば、溶液に入ることができるわずかに可溶性の物質の最大量は、最終溶液の1%未満であり得る。そのような溶液は、固体または流体であり得る。
【0044】
本明細書で使用される、薬剤の「有効量」は、所望の殺菌効果、所望の美容効果、および/または所望の治療生体効果をもたらす薬剤の任意の量を意味することを意図する。例えば、表面消毒に使用される薬剤の有効量は、表面の1回以上の処置で、所望の殺菌効果をもたらす量である。
【0045】
本明細書で使用される、「細胞毒性」は、哺乳動物細胞の構造または機能に致死的損傷を引き起こす性質を指す。活性薬剤が有効量で存在する時に、組成物が、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験の米国薬局方(USP)生物反応性制限を満たす場合に、組成物は、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性ではない」と見なされる。
【0046】
本明細書で使用される、「刺激性」は、直接の、長期にわたる、もしくは繰り返しの接触によって、発赤、腫脹、かゆみ、灼熱感、または水疱形成等の局所炎症反応を引き起こす性質を指す。例えば、哺乳動物における歯肉組織の炎症は、その組織への刺激の徴候である。組成物が、経皮または粘膜刺激を評価するための任意の標準の方法を使用することにより、わずかに刺激性である、または全く刺激性ではないと判断される場合に、組成物は、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」と見なされる。経皮刺激を評価するために有用な方法の非限定的な例には、ヒト皮膚組織モデル(例えば、Chatterjee et al,2006,Toxicol Letters 167:85−94を参照)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.,Ashland,MA)、またはエクスビボ真皮試料等の組織操作された経皮組織を用いたインビトロ試験における使用が挙げられる。粘膜刺激に有用な方法の非限定的な例には、HET−CAM(脾臓の卵試験−絨毛尿膜)、スラグ粘膜刺激試験、および組織操作された鼻もしくは副鼻腔粘膜または膣−子宮頸膣部組織を使用するインビトロ試験が挙げられる。当業者は、経皮および粘膜刺激を評価する、技術分野で認識されている方法に精通している。
【0047】
「増粘流体組成物」という語句は、剪断応力印加下で流動することができ、流動する時に、同一濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度を超える見かけ粘度を有する組成物を包含する。これは、ニュートン流動を示す流体(剪断応力に対する剪断速度の比率が一定であり、粘度は剪断応力と無関係である)、チキソトロピー流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とし、持続剪断とともに剪断減粘性も示す)、疑似塑性および塑性流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とする)、ダイラタント流体組成物(剪断速度が増加することで、見かけ粘度が増加する)、および印加される降伏応力下で流動することができる他の物質を含む、増粘流体組成物の全スペクトルを包含する。
【0048】
「見かけ粘度」という語句は、流動をもたらす任意の一連の剪断条件における、剪断速度に対する剪断応力の比率として定義される。見かけ粘度は、ニュートン流体の剪断応力とは無関係であり、非ニュートン流体組成物の剪断速度で変化する。
【0049】
「増粘剤成分」とは、その語句が本明細書で使用される時、それが添加される溶液または混合物を増粘する性質を有する成分を指す。「増粘剤成分」は、上に記載されるように、「増粘流体組成物」を作製するために使用される。
【0050】
「疎水性」または「水不溶性」という用語は、有機ポリマーに関して本明細書で採用される時、水が、25℃で、100グラムの疎水性物質当たり、1グラム未満、0.9グラム、0.8グラム、0.7グラム、0.6グラム、0.5グラム、0.4グラム、0.3グラム、または0.2グラムの水の量に対して可溶性である有機ポリマーを指す。例示的な実施形態では、疎水性物質は、溶液中に、100グラムの疎水性物質当たり、0.1グラム未満の水を収容する。
【0051】
本明細書で使用される、「安定した」という用語は、二酸化塩素を形成するために使用される成分、すなわち、二酸化塩素生成成分が、二酸化塩素産生の活性剤との接触まで、二酸化塩素を形成するために十分に相互に反応しないことを意味するよう意図される。
【0052】
本明細書で使用される、「迅速に産生される」は、本明細書で使用されるように、完全な二酸化塩素産生が、約7日間未満、約8時間未満、約2時間未満、または約1時間未満で得られる手段を指し、意味する。
【0053】
別途示されるか、または文脈から明白でない限り、本明細書に示される選好は、二成分系および方法を含む、本開示の全体に適用される。
【0054】
説明
I.方法
別途明記されるか、または文脈から明白でない限り、下で使用される「二酸化塩素生成成分」は、乾燥または無水成分を指す。
【0055】
本開示は、水、水蒸気、または電磁エネルギー活性可能な触媒の不在下で二酸化塩素を調製する方法をある程度提供する。方法は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を、乾燥または無水極性物質と接触させることを含み、極性物質は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の反応を促進して、二酸化塩素を形成することができる。
【0056】
一態様では、方法は、乾燥または無水二酸化塩素生成組成物を乾燥または無水極性液体に曝露することによって実行され得る。具体的には、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含有する二酸化塩素生成組成物は、乾燥極性液体に曝露される。極性液体は、組成物を活性化し、二酸化塩素生成が始まる。得られた液体組成物は、二酸化塩素を生成ひいては含有する非水組成物である。二酸化塩素が生成され得る速度は、使用する極性液体の量および液体の極性によって決まる。二酸化塩素生成成分の量と比較して、極性液体の容積が大きい場合、または極性液体の極性が高い場合、二酸化塩素は、より迅速に生成され得る。より少ない容積の極性液体が使用される場合、または極性液体がほんのわずかに極性である場合、二酸化塩素生成の速度は、より緩やかであり得る。言うまでもなく、生成され得る二酸化塩素の総量は、組成物中に存在するオキシ−塩素アニオン供給源の量によって決まる。一実施形態では、二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素生成組成物は、粒子前駆体の形態である。
【0057】
別の態様では、方法は、乾燥または無水の水不浸透性マトリックスおよび乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素生成マトリックス組成物を調製することによってもたらされ得る。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、マトリックス中に混合、懸濁、分散、またはさもなければ含有されて系を形成し、マトリックスは、連続層であり、二酸化塩素生成成分は、分散層である。得られた組成物は、流体、半固体、または固体であり得る。半固形には、ゲルおよびペーストが含まれ、そのような形は、可塑性であり、概して、低剪断、例えば、重力で形状を保持し、より高い剪断応力の適用時に流動する。別の実施形態では、二酸化塩素生成成分は、粒子前駆体であり、マトリックスによって被覆され、被覆粒子のマトリックス組成物を形成する。
【0058】
二酸化塩素の産生を活性化するために、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、水不浸透性マトリックス中で少なくともわずかに可溶性である極性物質と接触し得る。極性物質は、液体、固体、またはガス状であり得る。いくつかの実施形態では、極性物質は、極性液体であり得る。乾燥または無水二酸化塩素生成成分は、粒子前駆体がマトリックス中に懸濁またはさもなければ含有される、二酸化塩素の粒子前駆体として存在し得る。一態様では、極性物質は、実質的に乾燥または無水であり得る。得られた組成物は、二酸化塩素を生成(ひいては含有)する非水組成物であり得る。別の態様では、極性物質は、物質量の水を含む。この実施形態において、かつ理論に縛られることを望まず、極性物質は、水が二酸化塩素産生をさらに活性化するように、二酸化塩素産生を活性化すること、および他の水不浸透性マトリックスを通して水の輸送を促進することの両方の二重機能を遂行すると考えられる。この態様では、極性物質の所与の量において、産生される二酸化塩素の速度および/または程度は、通常、極性物質中の物質量の水の不在下で産生されるであろう二酸化塩素の速度および/または程度よりも実質的に大きい。そのような活性化は、二酸化塩素生成成分が、他の実質的に水不浸透性のマトリックス物質中に実質的に完全に包まれたままである間に起こり、活性化のこの様態は、マトリックスが、破壊、加熱、またはさもなければ除去され、それによって、水または水蒸気による活性化のために二酸化塩素生成成分を曝露することを必要とする先行技術の方法とは異なる。
【0059】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、本明細書の他の箇所に記載されるように、1つ以上の追加の成分を含む。別の実施形態では、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、任意の電子受容体、ならびに任意で、1つ以上の塩化物、および水不浸透性マトリックスから成る二酸化塩素生成成分から本質的に成る。二酸化塩素生成成分は、二酸化塩素の粒子前駆体であり得る。例示的な実施形態では、二酸化塩素産生は、極性物質と接触することによってのみ活性化され得る。すなわち、水または水蒸気が、二酸化塩素生成成分に直接接触できなければ(例えば、マトリックスが、物理的に破壊されて二酸化塩素生成粒子を曝露する場合、またはマトリックスが、その融解温度を超えて加熱されてデカントされるか、もしくはさもなければ二酸化塩素生成成分から分離される場合)、水、水蒸気、および電磁エネルギーのうちのいずれも、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化することはできない。
【0060】
マトリックス中の二酸化塩素生成成分を含む組成物を調製するために、二酸化塩素生成成分は、任意の順序でマトリックス物質に個別に添加される。あるいは、二酸化塩素生成成分は、二酸化塩素の粒子前駆体を調製するために、ともに混合される。粒子前駆体は、その後、マトリックス物質と混合され得る。
【0061】
方法および系の実践において採用される例示的な粒子前駆体は、ASEPTROL S−Tab2およびASEPTROL S−Tab10等のASEPTROL製品であり得る。ASEPTROL S−Tab2は、以下の重量(%)の化学組成を有する:NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2錠剤の例示的な製造過程を記載する。ASEPTROL S−Tab10は、以下の重量(%)の化学組成を有する:NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)。米国特許第6,432,322号の実施例5は、S−Tab10錠剤の例示的な製造過程を記載する。
【0062】
二酸化塩素生成成分は、任意で粉砕されるが、しかしながら、二酸化塩素を生成するためにそれらを細かく粉砕する必要はない。二酸化塩素生成成分の混合物を粉砕すること、およびそれを篩過して、〜40メッシュの篩過画分を調製することが、多くの例で有用であり得る。しかしながら、粒子の大きさは重要でなく、方法および系において、40メッシュより粗い粉砕および40メッシュより細かい粉砕の両方を使用して、二酸化塩素を生成することができる。ASEPTROL製品の顆粒は、例えば、ASEPTROL錠剤を粉末状にするか、またはASEPTROL成分の非圧縮粉末の乾燥ローラー圧縮、その後の得られた圧縮リボンまたはブリケットの破砕、次いで、任意でスクリーニングして、所望の大きさの顆粒を得ることによって産生され得る。
【0063】
複合系を調製するために二酸化塩素生成成分を水不浸透性マトリックスと混ぜ合わせる方法は、マトリックスの粘度に大きく左右される。薄くて低い粘度のマトリックスにおいては、固体成分は、単純な撹拌によってマトリックス中に混合または懸濁され得る。より粘性のあるマトリックス物質においては、固体成分は、スクリューミキサー等の高剪断ミキサーを用いて混ぜ合わされ得る。あるいは、より粘性のある、または固体のマトリックスは、加熱され、その粘度を低減させるか、またはそれを融解し、二酸化塩素生成成分との混合を促進し得る。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、マトリックス中に均一に分散される。別の実施形態では、二酸化塩素生成成分は、均一に分散されない。
【0064】
マトリックス被覆粒子を調製する方法は、被覆粒子を調製するための当分野で知られている任意の方法を使用し得る。そのような方法には、小球化、噴霧乾燥、流動床コーティング、錠剤コーティング、磁気補助衝突コーティング(MAIC)、Vブレンディング、ホットブレンディング等が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
二酸化塩素生成マトリックス組成物を調製する際に、オキシ−塩素イオン供給源の熱分解を最小限に抑えるために、約150〜160℃未満の温度を維持するように注意を払う。例示的な実施形態では、温度は、約135℃未満もしくは約110℃未満であり得る。湿り空気または水への二酸化塩素生成成分の曝露を最小限に抑えるためにも注意を払ってもよい。一旦二酸化塩素生成マトリックス組成物が調製されると、水不浸透性マトリックスは、水または湿り空気から乾燥もしくは無水成分を有利に遮断し、それによって、二酸化塩素の早期生成を最小限に抑えるか、または防止する。したがって、二酸化塩素生成マトリックス組成物は安定し得、湿り空気、水、または水媒体からの特別な保護を必要としない。
【0066】
II.成分
1.二酸化塩素生成成分
二酸化塩素生成成分は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および任意で電子受容体の供給源である。本明細書の他の箇所に提示されるように、下で使用される、「二酸化塩素生成成分」は、乾燥または無水成分を指す。したがって、方法および系を実践するのに有用である二酸化塩素生成成分は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥または無水酸供給源、ならびに任意で乾燥または無水電子受容体供給源であり得る。
【0067】
オキシ−塩素アニオン供給源には、概して、亜塩素酸塩および塩素酸塩が含まれる。乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、アルカリ金属塩素酸塩、アルカリ土類金属塩素酸塩、およびそのような塩の組み合わせであり得る。乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の例には、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、および塩素酸塩カルシウムが挙げられるが、それらに限定されない。例示的な実施形態におけるオキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩であり得る。亜塩素酸ナトリウムは、例示的なアルカリ金属亜塩素酸塩である。
【0068】
方法および系で有用な酸供給源は、プロトンを二酸化塩素生成反応に供与することができる任意の乾燥または無水の物質を実質的に含む。そのような酸供給源には、重硫酸ナトリウム(重硫酸ナトリウム)、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウム等の無機酸塩、イオン交換樹脂および分子篩等のプロトンイオン交換物質、クエン酸、酢酸、および酒石酸等の有機酸、無水HCl等の鉱酸、ならびに酸の混合物が含まれるが、それらに限定されない。酸供給源は、硫酸水素ナトリウムおよびクエン酸等の固体、無水酢酸等の液体酸、またはHClガス等のガス状であり得る。一実施形態では、酸供給源は、無機酸供給源であり得る。重硫酸ナトリウムは、例示的な無機酸である。
【0069】
電子受容体の供給源である任意の成分は、亜塩素酸イオンから電子を受容し、それによって、中性二酸化塩素を産生し得る電子受容体分子を提供する。臭素および塩素等のハロゲン化物は、亜塩素酸イオンから電子を容易に受容する。したがって、遊離塩素または遊離臭素を提供する分子は、電子受容体供給源として有用である。遊離塩素または遊離臭素の例示的な供給源には、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムならびに/またはその二水和物(本明細書でNaDCCAと総称される)等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン等が含まれる。ある特定の実施形態では、電子受容体は、塩素であり得る。塩素の例示的な供給源は、NaDCCAである。
【0070】
2.極性物質
乾燥または無水環境下で二酸化塩素の産生を活性化するのに有用な極性物質は、電気的に対称ではない構造を有する任意の非水化合物を含む。非水化合物の電気的非対称は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源と乾燥または無水酸供給源との間の反応を促進し、二酸化塩素を産生する。物質の極性の1つの尺度は、その誘電率である。誘電率は、電界の影響下で電気的ポテンシャルエネルギーを保存する物質の能力として定義される。それは、誘電体と同一の真空を有するコンデンサ組立の電気容量に対する、その誘電体としての物質を有するコンデンサの電気容量の比率を表す。誘電率は、当業者に知られているいくつかの方法で測定され得る。1つの一般的な方法は、その誘電体として、物質でコンデンサを共鳴電気回路内に組み立て、ACポテンシャル下で回路の共鳴周波数を判定することである。本明細書に示されるように、18〜25℃で測定された、2.5より大きい誘電率を有する非水性物質は、二酸化塩素生成成分からの二酸化塩素産生を活性化するのに十分に極性である。18〜25℃で測定された有用な極性物質は、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2以上を含む、2.5より大きい誘電率を有する。ある実施形態では、18〜25℃で測定された極性物質は、少なくとも約3.0の誘電率を有する。
【0071】
極性物質は、固体、液体、またはガスであり得る。例示的な極性物質には、アルコール、有機酸、アルデヒド等の乾燥または無水極性有機化合物が含まれるが、それらに限定されない。有機酸に関して、水の不在下では、有機酸は、プロトンおよび共役塩基に解離せず、したがって、プロトン供与体(酸供給源)として機能することができないことが留意される。水(乾燥または無水)の不在下において、18〜25℃で測定されたその誘電率が、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2以上より大きい場合に、有機酸は、極性物質として機能することができる。いくつかの実施形態では、極性物質は、乾燥または無水であり、かつ、有機酸を含む。他の実施形態では、極性物質が二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するために使用される場合、極性物質は、有機酸および物質量の水を含む。
【0072】
極性液体は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分の二酸化塩素産生を活性化するために使用され得る。極性液体は、同様に、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するのに有用である。多種多様の極性液体を使用して、二酸化塩素の形成を開始することができる。極性液体の選択は、二酸化塩素生成成分が分散する乾燥または無水マトリックスに左右される。この実施形態に関して、極性液体は、マトリックス中で少なくともわずかに可溶性であるはずである。例示的な極性液体には、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、エステル中の炭素原子の総数が2〜10個である、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、およびプロピレングリコール等のジオール;グリセリン;ならびにアセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、およびスルホラン等の双極性非プロトン性溶媒が含まれるが、それらに限定されない。アルコール、グリコール、およびグリセリンは特に、二酸化塩素の形成を開始するのに好適な溶媒である。例示的な極性物質には、イソプロパノール、ブチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、およびオクタン酸が含まれる。乾燥極性液体の混合物は、二酸化塩素生成組成物を活性化するためにも使用され得る。
【0073】
極性固体または蒸気は、同様に、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するのに有用である。極性固体または蒸気の選択は、二酸化塩素生成成分が分散する乾燥または無水マトリックスに左右される。この実施形態に関して、極性固体または蒸気は、マトリックス中で少なくともわずかに可溶性であるはずである。
【0074】
3.マトリックス
乾燥または無水の水不浸透性マトリックスは、極性物質活性剤がない時に、たとえあったとしても、少しの二酸化塩素しか生成されないように、水蒸気を含む水との接触から二酸化塩素生成成分を保護する。オキシ−塩素イオンの供給源は、水不浸透性マトリックス中に溶解しない。言い換えると、水不浸透性マトリックス中に分散する時、オキシ−塩素イオンの供給源は、アニオン形態に解離されない。方法および系の実践において好適なマトリックス物質には、疎水性ワックス等の水不浸透性固体成分、疎水性油等の水不浸透性流体、ならびに疎水性固体および疎水性流体の混合物が含まれる。これらの水不浸透性成分は、通常、大量の水を含有せず、したがって、通常乾性である。マトリックスは、単一疎水性固体または単一疎水性流体であり得る。あるいは、マトリックスは、疎水性固体の混合物、疎水性流体の混合物、または疎水性固体および疎水性流体の両方を含む混合物であり得る。ワックスおよび油は、相互と容易に混和する。したがって、疎水性ワックスおよび疎水性油の多様な比率から様々なマトリックスを調製することが可能である。したがって、マトリックスは、1つのワックスおよび1つ以上の油の混合物、1つの油および1つ以上のワックスの混合物、または複数のワックスおよび複数の油の混合物であり得る。ワックスおよび油を混ぜ合わせることで、多種多様の物理的性質を有するマトリックスを調製することが可能である。パラフィンワックス等の硬質な高融点ワックスの高比率を有する組成物は、堅い固体であり得る。より多くの油を組成物に添加し、より軟らかいワックスを使用することで、より大きいグリース様の性質を有するマトリックスが調製され得る。油の高比率を有するマトリックスは、液体である傾向がある。本明細書の他の箇所で議論されるように、約150〜160℃未満の温度で流体であるマトリックス物質は、オキシ−塩素イオン供給源の熱分解を最小限に抑えるのに好適である。
【0075】
組成物中で使用可能な固体には、動物および昆虫ワックス、植物ワックス、ミネラルワックス、パラフィンワックスおよび微結晶ワックス等の石油ワックス、ならびに低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、およびフィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス、ならびにシリコンゲルが含まれる。組成物中で使用可能な流体には、石油およびワセリン、軽鉱油および重鉱油、植物油、ならびにシリコン油が含まれる。例示的な固体には、パラフィンワックスおよび低分子量ポリエチレンが含まれる。例示的な流体には、ワセリンおよび鉱油が含まれる。例示的な固体および例示的な流体の組み合わせも有用である。
【0076】
市販の水不浸透性マトリックスには、VASELINEワセリン(Unilever,Clinton,CT)、パラフィンワックス、ワセリン、および鉱油の混合物であるAVAGELミネラルゼリー(Avatar,University Park,IL)、低分子量ポリエチレン(5%)および鉱油(95%)の混合物であるPLASTIBASE(Squibb,New Brunswick,NJ)医療用軟膏基剤が含まれる。
【0077】
本開示に基づいて、当業者は、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するための、マトリックスおよび極性物質の適切な組み合わせを容易に同定する。マトリックスおよび極性物質の非限定的な例には、ワセリンマトリックスおよび極性物質としてグリセリン、ポリエチレンおよび鉱油を含むか、またはそれらから本質的に成るマトリックスならびに極性物質としてグリセリン、かつパラフィンワックス、ワセリン、および鉱油を含むか、またはそれらから本質的に成るマトリックス、ならびに極性物質として、グリセリン、オクタン酸、ブチルアルコール、イソプロパノール、およびプロピレングリコールの1つ以上が挙げられる。
【0078】
4.追加の成分
組成物は、それらが乾燥または無水である場合に、追加の任意の成分を含み得る。例示的な実施形態では、二酸化塩素による組成成分の酸化は、酸化に利用可能な二酸化塩素を減少させるため、全ての任意の成分は、二酸化塩素(および組成物中に存在する任意の他の酸化剤)による酸化に比較的耐性がある。「比較的耐性」は、適用で二酸化塩素含有組成物を調製および使用する時間的尺度において、任意の成分の機能は、受け入れ難いほど低下せず、組成物は、二酸化塩素(および存在する場合、他の酸化剤)に対して満足なレベルの効力/能力を保持することを意味する。二酸化塩素含有組成物が生物組織および/または物質と接触し得る適用において、例示的な任意の成分は、細胞毒性および/または刺激を実質的に助長せず、したがって、組成物は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激のままである。
【0079】
二酸化塩素生成成分への無機成分の追加は、いくつかの例において、二酸化塩素の形成を増進する。組成物中で有用な無機成分には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、硫酸第二鉄、リン酸第二鉄もしくはリン酸亜鉛、シリカアルミナゲル、シリカマグネシアゲル、シリカジルコニアゲル、またはシリカゲル、および多様な粘土が含まれる。選択される追加の無機成分は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および電子受容体の任意の供給源と混ぜ合わされ、混合物を形成する。混合物は、打錠および/または粉砕されて、二酸化塩素の粒子前駆体を調製し得る。ポア形成は、組成物中に湿度侵入を促進し得る。したがって、いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成成分および組成物は、ポア形成を排除する。ポア形成には、膨潤無機粘土およびシリカゲル等のこれらの無機成分、ならびに珪藻土等の他の物質のいくつかが含まれる。
【0080】
増粘剤成分は、いくつかの適用において有用であり得る。増粘剤には、鉱油マトリックスに添加されるポリエチレンワックス等の比較的高い粘度を有するマトリックス成分が含まれ得る。増粘剤には、LAPONITE(Southern Clay Products,Gonzales,TX)、アタパルジャイト、ベントナイト、VEEGUM(R.T.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、炭酸カルシウム等の粘土および他の細粒サイズの粒子添加剤も含まれる。
【0081】
追加の酸化剤が含まれ得る。例示的な酸化剤には、アルカリ金属過炭酸塩(過炭酸ナトリウム等)、過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過酸化マグネシウム、過酸化水素錯体(PVP過酸化水素錯体等)、過酸化水素、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0082】
経口化粧品および/または治療用途を目的とする組成物は、甘味料、風味料、着色剤、および香料を含むが、これらに限定されない成分を含み得る。甘味料には、糖アルコールが含まれる。風味料には、例えば、天然または合成エッセンシャルオイル、ならびに多様な風味アルデヒド、エステル、アルコール、および他の物質が含まれる。着色剤には、例えば、FD&CまたはD&C色素等の、食品、薬物、または化粧品への混入を認可された着色料、ならびにFDAによって米国での使用を許可された染料が含まれる。
【0083】
経口化粧品および/または治療的使用を目的とする組成物における他の任意の成分には、(二酸化塩素に加えて)抗菌剤、酵素、(二酸化塩素に加えて)悪臭制御剤、リン酸塩等の洗浄剤、抗歯肉炎剤、抗歯垢剤、抗酒石剤、フッ化物イオンの供給源等の抗虫歯剤、抗歯周炎剤、栄養素、抗酸化剤等が含まれる。
【0084】
硬表面の局所消毒剤を目的とする組成物における任意の成分には、香料、染料または色素等の着色剤、界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤等が含まれる。生物組織の局所消毒剤において、任意の成分には、香料、着色剤、メントール、クロロホルム、およびベンゾカイン等の局所麻酔薬、軟化薬または加湿剤、沈痛薬、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤、(二酸化塩素に加えて)抗菌剤、(二酸化塩素に加えて)悪臭抑制剤、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、またはそれらの混合物の生体接着ポリマー等が含まれる。
【0085】
III.組成物の使用
概して、二酸化塩素含有組成物は、殺菌および消毒製剤を含む、抗菌剤、脱臭、および抗ウイルス処理において有利に採用され得る。二酸化塩素生成組成物は、多種多様の微生物を破壊する、無能にする、または無害にするのに有効である。そのような微生物には、細菌、菌類、胞子、酵母、黴、うどん粉菌、原生動物、およびウイルスが含まれる。
【0086】
したがって、方法からもたらされる二酸化塩素含有組成物は、表面または対象、液体およびガス、ヒトおよび動物の皮膚、医療機器等において微生物またはウイルス集団を減少させるのに有用である。二酸化塩素含有組成物は、臭気を減少させるのにも有用である。二酸化塩素含有組成物は、非水性溶媒処理(すなわち、ドライクリーニング)で衣類を衛生化および脱臭するのに有用であり得る。二酸化塩素含有組成物は、食品産業、サービス産業、医療産業等に関連する適用を浄化および衛生化するのに利用され得る。例えば、二酸化塩素含有組成物が使用を見出す工業および商業用途には、食器洗浄機および食器洗い機、冷却塔、プール、温泉、噴水、工業処理水、ボイラー、医学的環境等が含まれる。二酸化塩素含有組成物の特に有利な使用は、例えば、グリース様潤滑特性を有するマトリックス成分を含み、二酸化塩素を含有および放出する食品加工装置とともに使用される抗菌性滑沢剤としてあり得る。一実施形態では、抗菌性滑沢剤は、グリセリンによって活性化され得るワセリンマトリックス内に含有されるASEPTROLの顆粒を含む。
【0087】
二酸化塩素含有組成物は、動物製品において、乳頭浸漬、ローション、またはペーストを含む哺乳動物の皮膚、皮膚消毒剤およびスクラブ、口腔治療製品、毛状疣贅病の治療等の足または蹄治療製品、耳および眼疾患治療製品、手術前もしくは手術後の手術着、消毒剤、動物の囲い、ペン、動物治療領域(検査台、手術室、ペン等)等の衛生化または消毒での使用で採用され得る。二酸化塩素含有組成物を使用して、動物囲い、動物病院、動物手術領域の微生物および臭気を減少、ならびに卵等の動物ならびに動物製品の動物もしくはヒト病原(または日和見)微生物およびウイルスを減少させることもできる。二酸化塩素含有組成物は、そのような種目上の微生物集団を減少させるために、多様な食品および植物種の処置、そのような種を取り扱う製造所または処理所の処置に使用され得る。二酸化塩素含有組成物は、創傷治療、口腔治療、足の爪/手の爪の抗真菌治療を含む足の爪/手の爪の治療、歯周病治療、虫歯予防、歯のホワイトニング、ならびに髪染めを含む美容および/または治療適用において採用され得る。軟化剤として機能し得る水不浸透性マトリックスを含む非水二酸化塩素含有組成物は、有益に、抗菌性皮膚軟化剤であることが企図される。
【0088】
組成物中の二酸化塩素の量は、組成物の使用目的に関連する。当業者は、所与の使用に有効な適切な量または量の範囲の二酸化塩素を容易に決定することができる。概して、方法の実践に有用な組成物は、少なくとも約5百万分率(ppm)の二酸化塩素、少なくとも約20ppm、または少なくとも約30ppmを含む。典型的には、二酸化塩素の量は、最大約2000ppm、最大約700ppm、最大約500ppm、または最大約200ppmであり得る。ある特定の実施形態では、二酸化塩素の濃度は、約5〜約700ppm、約20〜約500ppm、または約30〜約200ppmの二酸化塩素に及ぶ。一実施形態では、組成物は、約30〜約40ppmの二酸化塩素を含む。一実施形態では、組成物は、約30ppmの二酸化塩素を含む。別の実施形態では、組成物は、約40ppmの二酸化塩素を含む。
【0089】
生物組織または物質との接触を伴う二酸化塩素含有組成物の適用において、例示的な組成物は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激であり得る。本明細書で使用される、「生物組織」は、粘膜組織、表皮組織、経皮組織、および皮下組織(下皮組織とも呼ばれる)の1つ以上を含む哺乳動物組織等の動物組織を指す。粘膜組織には、頬粘膜、他の口腔粘膜(例えば、軟口蓋粘膜、口腔粘膜底、および舌下粘膜)、膣粘膜、および肛門粘膜が含まれる。これらの粘膜組織は、本明細書で「軟組織」と総称される。生体組織は、無傷であるか、または1つ以上の切開口、裂傷、または他の組織透過開口部を有し得る。本明細書で使用される、「生体物質」には、哺乳動物等の動物に見られる歯のエナメル質、象牙質、指の爪、足の爪、硬質な角化組織等が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
二酸化塩素から成る酸化剤を含む組成物において、細胞毒性は、主に、オキシ−塩素アニオンの存在に由来する。したがって、組成物1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオン〜組成物1グラム当たり約0.25mg未満のオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含む二酸化塩素を含む組成物は、細胞毒性を助長する他の構成要素がない時に、実質的に非細胞毒性である。等業者は、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験のUSP生物反応性制限を使用して、製剤が細胞毒性であるかを断定することによって、所与の組成物が十分に低いオキシ−塩素の濃度を有するかを経験的に容易に断定することができる。
【0091】
生物組織の刺激は、酸性および塩基性の両方のpHの極度に由来し得る。二酸化塩素含有組成物で生物組織の刺激を最小限に抑えるために、組成物は、少なくとも3.5のpHを有する。例示的な実施形態では、組成物は、少なくとも5、または約6より大きいpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは、約4.5〜約11、約5〜約9、または約6より大きく約8未満に及ぶ。一実施形態では、pHは、約6.5〜約7.5であり得る。オキシ−塩素アニオンの濃度は、軟組織の刺激を助長するとは考えられていない。
【0092】
IV.系、製品、およびキット
二酸化塩素含有組成物を調製するための二成分系も提供される。第1の成分は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含む。第2の成分は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の反応を促進して、二酸化塩素を形成することができる極性物質を含む。第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素を含む組成物を産生する。二酸化塩素生成成分は、任意で、電子受容体の供給源を含む。例示的な実施形態では、オキシ−塩素アニオン供給源は、亜塩素酸ナトリウムであり得、酸供給源は、重硫酸ナトリウムであり得る。この実施形態では、例示的な任意の電子受容体は、NaDCCAである。いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成成分は、ASEPTROL(登録商標)物質である。例示的な極性物質は、本明細書の他の箇所に開示される。
【0093】
ある実施形態では、第1の成分は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含み、第2の成分は、乾燥または無水極性液体を含む。得られた二酸化塩素含有組成物は、非水であり得る。
【0094】
別の実施形態では、第1の成分は、本明細書の他の箇所に記載されるように、水不浸透性マトリックスを含み、二酸化塩素生成成分は、マトリックス内に分散されるか、またはさもなければ含有される。この実施形態では、系の第2の成分は、水不浸透性マトリックス中で少なくともわずかに可溶性である極性物質を含む。一実施形態では、極性物質は、水を含まない。この実施形態では、得られた二酸化塩素を含む組成物は、実質的に乾燥または無水であり得る。別の実施形態では、極性物質は、物質量の水を含む。この実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるように、二酸化塩素生成は、極性物質および水の組み合わせによって活性化され得る。
【0095】
一実施形態では、水不浸透性マトリックスは、疎水性ワックス、疎水性油、またはそれらの混合物から選択され得る。例示的なワックスおよび油は、本明細書の他の箇所に開示される。例示的な実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリンの1つ、ポリエチレンおよび鉱油の混合物、ならびにワセリン、パラフィンワックス、および鉱油の混合物であり得る。例示的な実施形態では、極性物質は、グリセリン、イソプロパノール、ブチルアルコール、プロピレングリコール、およびオクタン酸から成る群から選択され得る。
【0096】
開示される方法を実践するのに有用なデバイスも提供される。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、シリンジ等の第1のディスペンサ内に存在し、極性物質は、第2のディスペンサ内に存在する。第2のディスペンサ内の極性物質を、第1のディスペンサ内の二酸化塩素生成成分に直接添加し、混合物を反応させてClO2を産生し、その後均一になるまで混ぜ合わせることができる。一実施形態では、ディスペンサは、シリンジである。2つのシリンジは、相互に連結され得、内容物は一方のシリンジの内容物を他方に分配することによって混合され、次いで、混合物が均一になるまで、他方のシリンジに混合物を戻して分配する。別の実施形態では、2つのディスペンサは、二重バレルシリンジの2つのバレルである。
【0097】
別の実施形態において、ASEPTROL物質、および極性物質等の二酸化塩素生成成分は、使用前に二酸化塩素生成成分を極性物質から分離させる分配ユニット内に保持され得、分配される時に2つの構成物質を混合させる。分配ユニットは、ハウジングと一体化された隔離板または仕切板を有する単一ハウジングユニットを備えることができるため、二酸化塩素生成成分および極性物質は、分配ユニットから分配された後にのみ交わる。あるいは、分配ユニットは、二酸化塩素生成成分および極性物質を最初は分離するが、続いて、脆弱な隔離板または仕切板が透過される時に、二酸化塩素生成成分および極性物質と混ぜ合わせることを許す脆弱な隔離板または仕切板を有する単一ハウジングユニットを備えることができる。分配ユニットにおけるさらに別の変形は、一方は二酸化塩素生成成分用、他方は極性物質用の、少なくとも2つの個別の脆弱な容器を保持する分配ユニットに関し、個別の脆弱な容器は、圧力の印加時に破壊される。これらおよび他の分配ユニットは、米国特許第4,330,531号に完全に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
上ならびに二酸化塩素含有組成物の調製および使用を記載する説明書に記載されるディスペンサを含むキットがさらに提供される。本明細書で使用される、「説明書」には、キットにおける組成物および/または化合物の有用性を伝達するために使用され得る刊行物、記録、図、またはあらゆる他の表現手段が含まれる。キットの説明書は、例えば、化合物および/もしくは組成物を含有する容器に貼付されるか、または化合物および/もしくは組成物を含有する容器とともに発送され得る。あるいは、受取人が説明書および化合物を協同的に使用するという意図で、説明書は、容器とは別に発送され得る。説明書の送達は、例えば、キットの有用性を伝達する刊行物もしくは他の表現手段により物理的に送達されるか、またはあるいは、例えば、電子メール、もしくはウェブサイトからのダウンロード等のコンピュータ手段による電子送信によって達成され得る。
【0099】
実施例
組成物、系、および方法は、以下の実験例の参照によりさらに詳細に記載される。これらの実施例は、例示的な目的としてのみ提供されるものであり、別途明記されない限り、限定されるものではない。したがって、組成物および方法は、以下の実施例により限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意および全ての変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0100】
以下の実施例ならびに本明細書および特許請求の範囲の他の箇所で別途示されない限り、全ての割合および百分率は重量によるものであり、全ての温度は摂氏度であり、圧力は大気圧であるかまたは大気圧に近い。
【0101】
実施例1
疎水性流体マトリックス中の無水二酸化塩素生成成分が、乾燥または無水極性物質との接触により活性化されて二酸化塩素を産生することができるかを試験するために、以下の実験を遂行した。
【0102】
ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤は、水中における高度の亜塩素酸塩アニオンのClO2への変換を有する(米国特許第6,432,322号の実施例を参照)。ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を使用して、疎水性流体マトリックス中に二酸化塩素生成成分を含む組成物を調製した。錠剤の化学組成を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を、米国特許第6,432,322号の実施例5に記載される方法と同等の方法で調製した。手短にいうと、ASEPTROL(登録商標)S−Tab10製剤の分離成分の各々を乾燥させ、適切な比率で混ぜ合わせた。混合物を、水圧テーブルプレスを用いて錠剤形態に圧縮した。このようにして形成された錠剤を乳鉢および乳棒を用いて顆粒に粉砕した。得られた顆粒を40メッシュの米国標準スクリーンを用いてスクリーニングし、〜40メッシュの大きさの画分を実験に使用した。
【0105】
〜40メッシュの大きさの画分を、パラフィンワックス、ワセリン、および鉱油の混合物であるAVAGELミネラルゼリーと混ぜ合わせた。約0.05〜0.07グラムの〜40メッシュの顆粒を約7〜8グラムのAVAGELミネラルゼリーと混合し、プラスチックの混合棒を用いて手動でそっと混ぜ合わせた。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。
【0106】
ASEPTROL(登録商標)顆粒を含むこのマトリックス組成物の試料を、1〜2グラムの一連の試験無水活性剤と、ヘラを用いて数分間、手動でそっと混ぜ合わせた。二酸化塩素の産生を、二酸化塩素の特徴である黄色の発現について目視検査によって推測した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
これらのデータは、二酸化塩素産生が、水、水蒸気、またはエネルギー活性可能な触媒の不在下で、乾燥極性物質によって活性化され得ることを示す。オレイン酸の二酸化塩素産生の活性化不能は、それが二酸化塩素を活性化するには不十分な極性であるように、オレイン酸の比較的長い炭素鎖(C18)が十分に拡散または減少することを示唆する。したがって、短い炭素鎖が、長い炭素鎖よりも良好な活性剤であることが考えられる。
【0109】
実施例2
実施例1に記載されるように調製したASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の約0.05〜0.07グラムの〜40メッシュの大きさの画分を、約7〜8グラムのVASELINEワセリンと混ぜ合わせた。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。組成物を102グラムのグリセリンと接触させた。混合物中の黄色の産生に基づいて、二酸化塩素が産生された。
【0110】
実施例3
実施例1に記載されるように調製したASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の〜40メッシュの大きさの画分の量を、実施例1および2で用いた比率とほぼ同一の比率でPLASTIBASE医療用軟膏基剤と混ぜ合わせた。このマトリックスは、低分子量ポリエチレン(5%)および鉱油(95%)の混合物である。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。組成物の試料をグリセリンと接触させると、マトリックス/顆粒混合物に対するグリセリンの比率は、実施例2の比率とほぼ同一であった。混合物中の黄色の産生に基づいて、二酸化塩素が産生された。
【0111】
実施例4
実施例1に記載されるように調製したが、−100+200の米国標準スクリーン粒子の大きさにスクリーニングした−100+200メッシュのASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の量を、ワセリン1グラム当たり0.01グラムの顆粒の比率で、Pinnacle商標のワセリンと手動でそっと混ぜ合わせた。1グラムのその混合物を、LUER−LOKチップ(BD,Franklin Lakes,NJ)を有する第1の10mLのプラスチックシリンジ内につめた。3グラムのグリセリンおよび4グラムのPinnacle商標ワセリンを含む第2の混合物を調製し、同一の種類の第2の10mLのプラスチックシリンジに移動させた。
【0112】
2つのシリンジのチップをTEFLON(登録商標)(DuPont,Wilmington,DE)プラスチックのLUER−LOK結合を用いて連結し、第2のシリンジのプランジャを前進させて、第2のシリンジの内容物を第1のシリンジ内に移動させた。シリンジを取り付けたまま放置し、内容物を妨害することなく15分間反応させた。15分後、シリンジのプランジャを交互に前進させて、シリンジ間を4回往復させて内容物を移動させた。ゲルを妨害なしでさらに15分間反応させた。シリンジのプランジャを交互に前進させて移動させ、内容物が均一になるまで混ぜ合わせた(約10〜15回)。得られた黄色は、二酸化塩素の存在を示した。
【0113】
得られたプラスチックの流体を、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験の米国薬局方(USP)生物反応性制限の方法を用いて細胞毒性に関して評価し、細胞毒性ではないことを見出した。
【0114】
本明細書に引用される各々および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
特定の実施形態を参照して、組成物、キット、およびそれらの使用方法を開示したが、他の実施形態および変形が、記載された組成物、キット、および使用方法の真の精神および範囲から逸脱することなく、他の当業者によって考案され得ることは明らかである。付属の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態および同等の変形を含むように解釈されることを意図する。
【背景技術】
【0001】
二酸化塩素(ClO2)は、+IV酸化状態にある塩素の中性化合物である。これは酸化によって消毒されるが、塩素化はしない。比較的小さい、揮発性の高エネルギー分子であり、かつ、希釈水溶液中であっても遊離基である。二酸化塩素は、亜塩素酸塩(ClO2-)に還元される、その独特な一電子移動機構により、高度に選択的な酸化物として機能する。溶液中の遊離分子の二酸化塩素は、微生物および生物膜の沈着の制御に有効な薬剤である。
【0002】
水中に溶解される二酸化塩素ガスを産生するために、水中の亜塩素酸イオンを反応させることによって二酸化塩素を調製するいくつかの方法が存在する。二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを、塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させることを含む。反応は、
2NaClO2+Cl2(g)→2ClO2(g)+2NaCl [1a]
2NaClO2+HOCl→2ClO2(g)+NaCl+NaOH [1b]
5NaClO2+4HCl→4ClO2(g)+5NaCl+2H2O [1c]である。
反応[1a]および[1b]は、酸性媒体中で非常に速い速度で進行するため、実質的には、全ての従来の二酸化塩素生成化学反応が、3.5未満のpHを有する酸性産物溶液をもたらす。また、二酸化塩素形成の動力学は、亜塩素酸塩アニオン濃度中で高次であるため、二酸化塩素生成は、通常、高濃度(1000ppm超)で行われ、これは、用途の使用濃度に希釈されなければならない。
【0003】
二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調製され得る。そのような反応の例として、
2NaClO3+4HCl→2ClO2+Cl2+2H2O+2NaCl [2a]
2HClO3+H2C2O4→2ClO2+2CO2+2H2O [2b]
2NaClO3+H2SO4+SO2→2ClO2+2NaHSO4 [2c]が挙げられる。
周囲条件において、全ての反応は、通常、7〜9Nの範囲の強酸性条件を必要とする。高温度までの試薬の加熱および産物溶液からの二酸化塩素の連続的除去によって、必要な酸性度を1N未満まで減少させることができる。二酸化塩素は、亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることによっても産生されている。
【0004】
原位置の二酸化塩素を調製する方法は、「安定化二酸化塩素」と称される溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、ほとんどまたは全く二酸化塩素を含有しないが、むしろ、中性またはわずかにアルカリ性のpHの亜塩素酸ナトリウムから実質的に成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は、亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は、溶液の原位置で生成される。得られた二酸化塩素含有溶液は、酸性である。典型的には、二酸化塩素への亜塩素酸ナトリウムの変換の程度は低く、亜塩素酸ナトリウムの実質量は、溶液中に残留する。
【0005】
二酸化塩素溶液は、粉末、顆粒、ならびに錠剤およびブリケット等の固体圧縮物を含む固体混合物から産生されており、液体水と接触した時に二酸化塩素ガス生成する物質から成る。例えば、同一出願人による米国特許第6,432,322号、同第6,699,404号、および同第7,182,883号、ならびに米国特許出願第2006/0169949号、同第2007/0172412号を参照されたい。水蒸気と接触する時に二酸化塩素ガスを生成する物質を含む二酸化塩素生成組成物も知られている。例えば、同一出願人による米国特許第6,077,495号、同第6,294,108号、および同第7,220,367号を参照されたい。米国特許第6,046,243号は、親水性物質中に溶解される亜塩素酸塩および疎水性物質中の酸放出剤の複合体を開示する。複合体は、水分への曝露時に二酸化塩素を生成する。同一出願人による米国特許出願第2006/0024369号は、有機マトリックスに統合される二酸化塩素生成物質を含む二酸化塩素複合体を開示する。二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される時に生成される。
【0006】
中国特許出願第1104610号は、中国ワックス、ステアリン酸(ワックス様固体である飽和脂肪酸)、蜜ワックス、またはパラフィンワックス中の亜塩素酸ナトリウムをカプセルで包むことによって二酸化塩素形成組成物を調製し、かつこの組成物を乾燥酒石酸粒子もしくはシュウ酸粒子と混合する方法を開示する。この混合物を水と接触させることで、二酸化塩素産生がもたらされる。
【0007】
米国特許第7,273,567号は、亜塩素酸塩アニオンの供給源およびエネルギー活性可能な触媒を含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を記載する。適切な電磁エネルギーへの組成物の曝露は、順に二酸化塩素ガスの産生に触媒作用を及ぼす触媒を活性化する。
【0008】
上述の方法の全ては、二酸化塩素の生成において、水(液体もしくは蒸気)または電磁エネルギーに依存する。水または電磁エネルギーに依存しない二酸化塩素を生成する方法が当技術分野を前進させるであろう。
【発明の概要】
【0009】
乾燥環境下で二酸化塩素を調製するための方法が提供される。すなわち、二酸化塩素を形成するために反応し得る乾燥成分を含有する二酸化塩素生成組成物が活性化されて、水、水蒸気、および電磁エネルギー活性可能な触媒の不在下で二酸化塩素を生成する。活性剤は、極性物質である。
【0010】
したがって、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含む、二酸化塩素を産生するための方法が提供される。一態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含み、極性物質は、液体であり、極性物質は、二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0011】
別の態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、極性物質は乾性であり、かつ、極性物質は二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0012】
別の態様では、方法は、二酸化塩素生成組成物を極性物質と接触させることを含み、組成物は、乾性であり、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、極性物質は、物質量の水を含み、極性物質は、二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する。
【0013】
方法のある特定の実施形態では、極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。例示的な実施形態では、極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって、エステル中の炭素原子の総数は、2〜10個である、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である。
【0014】
方法のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、二酸化塩素の粒子前駆体の形態である。乾燥オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、ならびにアルカリ金属亜塩素酸塩およびアルカリ土類金属亜塩素酸塩の組み合わせから成る群から選択され得る。乾燥酸供給源は、無機酸塩、イオン交換樹脂、分子篩、および有機酸から成る群から選択され得る。例示的な実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウムから成る群から選択され得る。ある特定の実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウムである。
【0015】
方法のある特定の実施形態では、第1の成分は、乾燥電子受容体供給源を含み、供給源は、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ブロモクロロジメチルヒダントイン、およびジブロモジメチルヒダントインから成る群から選択される。例示的な実施形態では、乾燥電子受容体供給源は、ジクロロイソシアヌル酸である。
【0016】
組成物が水不浸透性マトリックスを含む方法のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、粒子前駆体の個別粒子は、マトリックスの被膜を含み、第1の成分は、粒子である。いくつかの実施形態では、マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。疎水性固体は、パラフィンワックス、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、フィッシャートロプシュワックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。疎水性流体は、石油、ワセリン、軽鉱油、重鉱油、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。ある特定の実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリン、鉱油、およびパラフィンワックスの少なくとも1つを含み、かつ、極性物質は、グリセリン、プロピレングリコール、イソプロパノール、ブチルアルコール、オクタン酸、ならびにそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0017】
二酸化塩素生成組成物を調製するための二成分系がさらに提供される。一態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含む第1の成分と、極性物質を含む第2の成分とを含み、第1および第2の成分は、乾性であり、第2の成分は、液体であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0018】
別の態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分と、極性物質を含む第2の成分とを含み、第1および第2の成分は乾性であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0019】
別の態様では、系は、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分と、極性物質および物質量の水を含む第2の成分とを含み、第1の成分は、乾性であり、第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素生成組成物を産生する。
【0020】
二成分系のある特定の実施形態では、極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。例示的な実施形態では、極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって、エステル中の炭素原子の総数は、2〜10個である、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である。
【0021】
二成分系のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、二酸化塩素の粒子前駆体の形態である。乾燥オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、ならびにアルカリ金属亜塩素酸塩およびアルカリ土類金属亜塩素酸塩の組み合わせから成る群から選択され得る。乾燥酸供給源は、無機酸塩、イオン交換樹脂、分子篩、および有機酸から成る群から選択され得る。例示的な実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウムから成る群から選択され得る。ある特定の実施形態では、乾燥酸供給源は、重硫酸ナトリウムである。
【0022】
系のある特定の実施形態では、第1の成分は、乾燥電子受容体供給源を含み、かつ、供給源は、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ブロモクロロジメチルヒダントイン、およびジブロモジメチルヒダントインから成る群から選択される。例示的な実施形態では、乾燥電子受容体供給源は、ジクロロイソシアヌル酸である。
【0023】
第1の成分が水不浸透性マトリックスを含む二成分系のある特定の実施形態では、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源は、マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、粒子前駆体の個別粒子は、マトリックスの被膜を含み、第1の成分は、粒子である。いくつかの実施形態では、マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。疎水性固体は、パラフィンワックス、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、フィッシャートロプシュワックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。疎水性流体は、石油、ワセリン、軽鉱油、重鉱油、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。ある特定の実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリン、鉱油、およびパラフィンワックスの少なくとも1つを含み、極性物質は、グリセリン、プロピレングリコール、イソプロパノール、ブチルアルコール、オクタン酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0024】
前述の概要および以下の詳細な記述はともに、例示的かつ説明的であり、特許請求される主題のさらなる説明を提供することを意図することを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
水または水媒体中で二酸化塩素を調製する方法が当分野で周知である。水蒸気への曝露時に二酸化塩素を調製する方法も知られている。オキシ−塩素アニオン供給源からの二酸化塩素の生成を活性化するために、電磁エネルギー活性可能な触媒を使用して、水または水蒸気の不在下で二酸化塩素を調製することも知られている。しかしながら、本開示に先立って、プラスチックもしくは流体の疎水性マトリックス等の実質的に乾燥もしくは無水環境下で二酸化塩素を産生する方法、または電磁エネルギーの不在下で固体マトリックス中に二酸化塩素を迅速に産生する方法がなかった。したがって、本開示は、乾燥もしくは無水環境下で二酸化塩素を調製する方法をある程度提供する。ここで水、水蒸気、および電磁エネルギーのうちのいずれも二酸化塩素の生成を活性化するのに必要ではない。二酸化塩素を調製するための系がさらに提供される。方法を実践するのに有用な組成物およびキットも提供される。
【0026】
定義
本明細書で使用される、以下の用語の各々は、本項においてそれと関連する意味を有する。
【0027】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的な目的語の1つまたは1つを超えるまで(すなわち、少なくとも1つまで)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素、または1つ以上の要素を意味する。
【0028】
「約」という用語は、当業者により理解され、使用される内容によりある程度変化する。概して、「約」とは、参照値のプラス/マイナス10%の値の範囲を包含する。例えば、「約25%」は、22.5%〜27.5%の値を包含する。
【0029】
本明細書で説明される任意の範囲の間の任意および全ての全整数または部分整数が、本明細書に含まれることが理解される。所与の特徴に関する任意の数字または数値範囲に対して、1つの範囲からの数字またはパラメータは、同一の特徴に対して、異なる範囲からの別の数字またはパラメータと混合され、数値範囲を生成し得る。
【0030】
「二酸化塩素生成成分」という用語は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および任意で電子受容体供給源を指す。電子受容体供給源は、塩素等のカチオンハロゲン供給源であり得る。方法、組成物、および系の実践において、これらの供給源の全ては、乾性または無水である。
【0031】
本明細書で使用される、「乾燥」という用語は、非常にわずかの遊離水、吸着水、または結晶化の水しか含有しない物質を意味する。「非常にわずか」は、二酸化塩素産生の活性化に関連する。具体的には、本明細書または当分野で説明されるように、普通の条件下で、二酸化塩素生成成分からの二酸化塩素の高速の産生を活性化しない水の量を含有する物質が、乾性と見なされる。より具体的には、所与の量の二酸化塩素生成成分の二酸化塩素生成の可能性を24時間で消耗しない物質が、乾性と見なされる。乾燥物質は、固体、液体、またはガス状であり得る。乾燥物質は、乾燥物質単独が、二酸化塩素生成成分を含む混合物からの二酸化塩素の生成を活性化しないという条件で、結晶化の水を含有し得る。概して、乾燥物質は、約5重量%未満の水、約1重量%未満の水、または約0.5重量%未満の水を有する。
【0032】
本明細書で使用される、「乾燥二酸化塩素生成組成物」は、所与の量の二酸化塩素生成組成物の二酸化塩素生成の可能性を24時間で消耗するであろう水の量に等しいか、もしくはそれ未満の遊離水の量を含む二酸化塩素生成組成物を指す。
【0033】
本明細書で使用される、「無水」という用語は、遊離水、吸着水、または結晶化の水等の水を含有しない物質を意味する。上に定義されるように、無水物質も乾性である。しかしながら、乾燥物質は、本明細書に定義されるように、必ずしも無水ではない。
【0034】
本明細書で使用される、「非水」は、概して、わずかしか、または全く水を有さない状態を指し、概して、本明細書で使用される、「乾燥」と互換可能である。したがって、それは、本明細書で使用される、「無水」を包含する。
【0035】
本明細書で使用される、「物質量」という用語は、吸着水または結晶化の水の測定可能な過剰量における遊離水の量を指す。
【0036】
「粒子」という用語は、全ての固体物質を意味するように定義される。非限定的な例として、粒子は、相互に散在し、何らかの方法で互いに接触し得る。これらの固体物質には、大きい粒子、小さい粒子、または大小の粒子の両方の組み合わせを含む粒子が含まれる。
【0037】
本明細書で使用される、「二酸化塩素の粒子前駆体」は、粒子に形成される二酸化塩素形成成分の密接な混合物を指す。ASEPTROL(BASF,Florham Park,NJ)の顆粒は、二酸化塩素の例示的な粒子前駆体である。
【0038】
「アルカリ金属亜塩素酸塩」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムの亜鉛素酸塩を指す。
【0039】
「アルカリ土類金属亜塩素酸塩」という用語は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムの亜鉛素酸塩を指す。
【0040】
本明細書で使用される、「極性物質」という用語は、その分子構造の結果として、分子規模で電気双極子モーメントを有する物質を指す。通常、極性物質は、異なる電気陰性度を有する化学元素を含む有機物質である。有機物質中で極性を誘導し得る元素には、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、および金属が含まれる。極性は、異なる程度で物質中に存在し得る。物質は、その分子双極子モーメントが大きい場合に高極性であり、その分子双極子モーメントが小さい場合に低極性であると見なされ得る。例えば、短い2個の炭素鎖上でヒドロキシルの電気陰性度を支援するエタノールは、6個の炭素鎖で同一程度の電気陰性度を支援するヘキサノール(C6H13OH)と比較して、比較的高極性であると見なされ得る。物質の誘電率は、物質の極性の便利な尺度である。本明細書に示されるように、約18〜25℃で測定された、方法、系、および組成物において有用な極性物質は、2.5より大きい誘電率を有する。「極性物質」という用語は、水および水性物質を除外する。極性物質は、固体、液体、またはガスであり得る。
【0041】
本明細書で使用される、「マトリックス」は、二酸化塩素生成成分の保護担体として機能する物質である。マトリックスは、典型的には、懸濁またはさもなければ含有される二酸化塩素を形成するために反応に関与し得る物質中の連続する固相または液相である。マトリックスは、物質に物理的形状を提供し得る。十分に疎水性である場合、マトリックスは、内部で水分との接触から物質を保護し得る。十分に剛性である場合、マトリックスは、構造部材に形成され得る。十分に流体である場合、マトリックスは、マトリックス内で物質を輸送する媒体として機能し得る。十分に接着性である場合、マトリックスは、物質を傾斜もしくは垂直、または水平な下方表面に接着する手段を提供し得る。流体マトリックスは、剪断応力の印加時に即時に流動するような液体であり得るか、または流れを引き起こすために降伏応力閾値を超えることを要求し得る。例示的なマトリックスは、(例えば、二酸化塩素を形成するための反応を開始して)他の成分がマトリックスと、およびマトリックス中に混合され得るように、流体であるか、または(例えば、加熱時に)流体になることができるかのいずれかであり得る。
【0042】
「水不浸透性マトリックス」という用語は、実質的に純粋な水がそこを通って浸透するのを阻止する疎水性マトリックスを指す。したがって、水不浸透性マトリックスは非水である。しかしながら、水は、グリセリンまたはアルコール等の極性物質と混ぜ合わされた場合、水不浸透性マトリックスを通って浸透し得る。例示的な水不浸透性マトリックスは、二酸化塩素ガスを透過し得る。
【0043】
本明細書で使用される、「わずかに可溶性」という用語は、第2の物質を伴って溶液を形成する1つの物質の能力を説明し、溶液として第1の物質と混合され得る第2の物質の最大量は、比較的少ない。例えば、物質Bは、A中に溶解され得るBの最大量が、AおよびBを含む最終溶液の50%未満、25%未満、20%未満、または15%未満である場合、物質A中でわずかに可溶性である。より一般には、わずかに可溶性の物質は、最終溶液の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、または2%を含み得、しばしば、溶液に入ることができるわずかに可溶性の物質の最大量は、最終溶液の1%未満であり得る。そのような溶液は、固体または流体であり得る。
【0044】
本明細書で使用される、薬剤の「有効量」は、所望の殺菌効果、所望の美容効果、および/または所望の治療生体効果をもたらす薬剤の任意の量を意味することを意図する。例えば、表面消毒に使用される薬剤の有効量は、表面の1回以上の処置で、所望の殺菌効果をもたらす量である。
【0045】
本明細書で使用される、「細胞毒性」は、哺乳動物細胞の構造または機能に致死的損傷を引き起こす性質を指す。活性薬剤が有効量で存在する時に、組成物が、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験の米国薬局方(USP)生物反応性制限を満たす場合に、組成物は、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性ではない」と見なされる。
【0046】
本明細書で使用される、「刺激性」は、直接の、長期にわたる、もしくは繰り返しの接触によって、発赤、腫脹、かゆみ、灼熱感、または水疱形成等の局所炎症反応を引き起こす性質を指す。例えば、哺乳動物における歯肉組織の炎症は、その組織への刺激の徴候である。組成物が、経皮または粘膜刺激を評価するための任意の標準の方法を使用することにより、わずかに刺激性である、または全く刺激性ではないと判断される場合に、組成物は、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」と見なされる。経皮刺激を評価するために有用な方法の非限定的な例には、ヒト皮膚組織モデル(例えば、Chatterjee et al,2006,Toxicol Letters 167:85−94を参照)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.,Ashland,MA)、またはエクスビボ真皮試料等の組織操作された経皮組織を用いたインビトロ試験における使用が挙げられる。粘膜刺激に有用な方法の非限定的な例には、HET−CAM(脾臓の卵試験−絨毛尿膜)、スラグ粘膜刺激試験、および組織操作された鼻もしくは副鼻腔粘膜または膣−子宮頸膣部組織を使用するインビトロ試験が挙げられる。当業者は、経皮および粘膜刺激を評価する、技術分野で認識されている方法に精通している。
【0047】
「増粘流体組成物」という語句は、剪断応力印加下で流動することができ、流動する時に、同一濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度を超える見かけ粘度を有する組成物を包含する。これは、ニュートン流動を示す流体(剪断応力に対する剪断速度の比率が一定であり、粘度は剪断応力と無関係である)、チキソトロピー流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とし、持続剪断とともに剪断減粘性も示す)、疑似塑性および塑性流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とする)、ダイラタント流体組成物(剪断速度が増加することで、見かけ粘度が増加する)、および印加される降伏応力下で流動することができる他の物質を含む、増粘流体組成物の全スペクトルを包含する。
【0048】
「見かけ粘度」という語句は、流動をもたらす任意の一連の剪断条件における、剪断速度に対する剪断応力の比率として定義される。見かけ粘度は、ニュートン流体の剪断応力とは無関係であり、非ニュートン流体組成物の剪断速度で変化する。
【0049】
「増粘剤成分」とは、その語句が本明細書で使用される時、それが添加される溶液または混合物を増粘する性質を有する成分を指す。「増粘剤成分」は、上に記載されるように、「増粘流体組成物」を作製するために使用される。
【0050】
「疎水性」または「水不溶性」という用語は、有機ポリマーに関して本明細書で採用される時、水が、25℃で、100グラムの疎水性物質当たり、1グラム未満、0.9グラム、0.8グラム、0.7グラム、0.6グラム、0.5グラム、0.4グラム、0.3グラム、または0.2グラムの水の量に対して可溶性である有機ポリマーを指す。例示的な実施形態では、疎水性物質は、溶液中に、100グラムの疎水性物質当たり、0.1グラム未満の水を収容する。
【0051】
本明細書で使用される、「安定した」という用語は、二酸化塩素を形成するために使用される成分、すなわち、二酸化塩素生成成分が、二酸化塩素産生の活性剤との接触まで、二酸化塩素を形成するために十分に相互に反応しないことを意味するよう意図される。
【0052】
本明細書で使用される、「迅速に産生される」は、本明細書で使用されるように、完全な二酸化塩素産生が、約7日間未満、約8時間未満、約2時間未満、または約1時間未満で得られる手段を指し、意味する。
【0053】
別途示されるか、または文脈から明白でない限り、本明細書に示される選好は、二成分系および方法を含む、本開示の全体に適用される。
【0054】
説明
I.方法
別途明記されるか、または文脈から明白でない限り、下で使用される「二酸化塩素生成成分」は、乾燥または無水成分を指す。
【0055】
本開示は、水、水蒸気、または電磁エネルギー活性可能な触媒の不在下で二酸化塩素を調製する方法をある程度提供する。方法は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を、乾燥または無水極性物質と接触させることを含み、極性物質は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の反応を促進して、二酸化塩素を形成することができる。
【0056】
一態様では、方法は、乾燥または無水二酸化塩素生成組成物を乾燥または無水極性液体に曝露することによって実行され得る。具体的には、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含有する二酸化塩素生成組成物は、乾燥極性液体に曝露される。極性液体は、組成物を活性化し、二酸化塩素生成が始まる。得られた液体組成物は、二酸化塩素を生成ひいては含有する非水組成物である。二酸化塩素が生成され得る速度は、使用する極性液体の量および液体の極性によって決まる。二酸化塩素生成成分の量と比較して、極性液体の容積が大きい場合、または極性液体の極性が高い場合、二酸化塩素は、より迅速に生成され得る。より少ない容積の極性液体が使用される場合、または極性液体がほんのわずかに極性である場合、二酸化塩素生成の速度は、より緩やかであり得る。言うまでもなく、生成され得る二酸化塩素の総量は、組成物中に存在するオキシ−塩素アニオン供給源の量によって決まる。一実施形態では、二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素生成組成物は、粒子前駆体の形態である。
【0057】
別の態様では、方法は、乾燥または無水の水不浸透性マトリックスおよび乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素生成マトリックス組成物を調製することによってもたらされ得る。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、マトリックス中に混合、懸濁、分散、またはさもなければ含有されて系を形成し、マトリックスは、連続層であり、二酸化塩素生成成分は、分散層である。得られた組成物は、流体、半固体、または固体であり得る。半固形には、ゲルおよびペーストが含まれ、そのような形は、可塑性であり、概して、低剪断、例えば、重力で形状を保持し、より高い剪断応力の適用時に流動する。別の実施形態では、二酸化塩素生成成分は、粒子前駆体であり、マトリックスによって被覆され、被覆粒子のマトリックス組成物を形成する。
【0058】
二酸化塩素の産生を活性化するために、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、水不浸透性マトリックス中で少なくともわずかに可溶性である極性物質と接触し得る。極性物質は、液体、固体、またはガス状であり得る。いくつかの実施形態では、極性物質は、極性液体であり得る。乾燥または無水二酸化塩素生成成分は、粒子前駆体がマトリックス中に懸濁またはさもなければ含有される、二酸化塩素の粒子前駆体として存在し得る。一態様では、極性物質は、実質的に乾燥または無水であり得る。得られた組成物は、二酸化塩素を生成(ひいては含有)する非水組成物であり得る。別の態様では、極性物質は、物質量の水を含む。この実施形態において、かつ理論に縛られることを望まず、極性物質は、水が二酸化塩素産生をさらに活性化するように、二酸化塩素産生を活性化すること、および他の水不浸透性マトリックスを通して水の輸送を促進することの両方の二重機能を遂行すると考えられる。この態様では、極性物質の所与の量において、産生される二酸化塩素の速度および/または程度は、通常、極性物質中の物質量の水の不在下で産生されるであろう二酸化塩素の速度および/または程度よりも実質的に大きい。そのような活性化は、二酸化塩素生成成分が、他の実質的に水不浸透性のマトリックス物質中に実質的に完全に包まれたままである間に起こり、活性化のこの様態は、マトリックスが、破壊、加熱、またはさもなければ除去され、それによって、水または水蒸気による活性化のために二酸化塩素生成成分を曝露することを必要とする先行技術の方法とは異なる。
【0059】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、本明細書の他の箇所に記載されるように、1つ以上の追加の成分を含む。別の実施形態では、二酸化塩素生成マトリックス組成物は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、任意の電子受容体、ならびに任意で、1つ以上の塩化物、および水不浸透性マトリックスから成る二酸化塩素生成成分から本質的に成る。二酸化塩素生成成分は、二酸化塩素の粒子前駆体であり得る。例示的な実施形態では、二酸化塩素産生は、極性物質と接触することによってのみ活性化され得る。すなわち、水または水蒸気が、二酸化塩素生成成分に直接接触できなければ(例えば、マトリックスが、物理的に破壊されて二酸化塩素生成粒子を曝露する場合、またはマトリックスが、その融解温度を超えて加熱されてデカントされるか、もしくはさもなければ二酸化塩素生成成分から分離される場合)、水、水蒸気、および電磁エネルギーのうちのいずれも、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化することはできない。
【0060】
マトリックス中の二酸化塩素生成成分を含む組成物を調製するために、二酸化塩素生成成分は、任意の順序でマトリックス物質に個別に添加される。あるいは、二酸化塩素生成成分は、二酸化塩素の粒子前駆体を調製するために、ともに混合される。粒子前駆体は、その後、マトリックス物質と混合され得る。
【0061】
方法および系の実践において採用される例示的な粒子前駆体は、ASEPTROL S−Tab2およびASEPTROL S−Tab10等のASEPTROL製品であり得る。ASEPTROL S−Tab2は、以下の重量(%)の化学組成を有する:NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2錠剤の例示的な製造過程を記載する。ASEPTROL S−Tab10は、以下の重量(%)の化学組成を有する:NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)。米国特許第6,432,322号の実施例5は、S−Tab10錠剤の例示的な製造過程を記載する。
【0062】
二酸化塩素生成成分は、任意で粉砕されるが、しかしながら、二酸化塩素を生成するためにそれらを細かく粉砕する必要はない。二酸化塩素生成成分の混合物を粉砕すること、およびそれを篩過して、〜40メッシュの篩過画分を調製することが、多くの例で有用であり得る。しかしながら、粒子の大きさは重要でなく、方法および系において、40メッシュより粗い粉砕および40メッシュより細かい粉砕の両方を使用して、二酸化塩素を生成することができる。ASEPTROL製品の顆粒は、例えば、ASEPTROL錠剤を粉末状にするか、またはASEPTROL成分の非圧縮粉末の乾燥ローラー圧縮、その後の得られた圧縮リボンまたはブリケットの破砕、次いで、任意でスクリーニングして、所望の大きさの顆粒を得ることによって産生され得る。
【0063】
複合系を調製するために二酸化塩素生成成分を水不浸透性マトリックスと混ぜ合わせる方法は、マトリックスの粘度に大きく左右される。薄くて低い粘度のマトリックスにおいては、固体成分は、単純な撹拌によってマトリックス中に混合または懸濁され得る。より粘性のあるマトリックス物質においては、固体成分は、スクリューミキサー等の高剪断ミキサーを用いて混ぜ合わされ得る。あるいは、より粘性のある、または固体のマトリックスは、加熱され、その粘度を低減させるか、またはそれを融解し、二酸化塩素生成成分との混合を促進し得る。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、マトリックス中に均一に分散される。別の実施形態では、二酸化塩素生成成分は、均一に分散されない。
【0064】
マトリックス被覆粒子を調製する方法は、被覆粒子を調製するための当分野で知られている任意の方法を使用し得る。そのような方法には、小球化、噴霧乾燥、流動床コーティング、錠剤コーティング、磁気補助衝突コーティング(MAIC)、Vブレンディング、ホットブレンディング等が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
二酸化塩素生成マトリックス組成物を調製する際に、オキシ−塩素イオン供給源の熱分解を最小限に抑えるために、約150〜160℃未満の温度を維持するように注意を払う。例示的な実施形態では、温度は、約135℃未満もしくは約110℃未満であり得る。湿り空気または水への二酸化塩素生成成分の曝露を最小限に抑えるためにも注意を払ってもよい。一旦二酸化塩素生成マトリックス組成物が調製されると、水不浸透性マトリックスは、水または湿り空気から乾燥もしくは無水成分を有利に遮断し、それによって、二酸化塩素の早期生成を最小限に抑えるか、または防止する。したがって、二酸化塩素生成マトリックス組成物は安定し得、湿り空気、水、または水媒体からの特別な保護を必要としない。
【0066】
II.成分
1.二酸化塩素生成成分
二酸化塩素生成成分は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および任意で電子受容体の供給源である。本明細書の他の箇所に提示されるように、下で使用される、「二酸化塩素生成成分」は、乾燥または無水成分を指す。したがって、方法および系を実践するのに有用である二酸化塩素生成成分は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥または無水酸供給源、ならびに任意で乾燥または無水電子受容体供給源であり得る。
【0067】
オキシ−塩素アニオン供給源には、概して、亜塩素酸塩および塩素酸塩が含まれる。乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、アルカリ金属塩素酸塩、アルカリ土類金属塩素酸塩、およびそのような塩の組み合わせであり得る。乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の例には、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、および塩素酸塩カルシウムが挙げられるが、それらに限定されない。例示的な実施形態におけるオキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩であり得る。亜塩素酸ナトリウムは、例示的なアルカリ金属亜塩素酸塩である。
【0068】
方法および系で有用な酸供給源は、プロトンを二酸化塩素生成反応に供与することができる任意の乾燥または無水の物質を実質的に含む。そのような酸供給源には、重硫酸ナトリウム(重硫酸ナトリウム)、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸二水素カリウム等の無機酸塩、イオン交換樹脂および分子篩等のプロトンイオン交換物質、クエン酸、酢酸、および酒石酸等の有機酸、無水HCl等の鉱酸、ならびに酸の混合物が含まれるが、それらに限定されない。酸供給源は、硫酸水素ナトリウムおよびクエン酸等の固体、無水酢酸等の液体酸、またはHClガス等のガス状であり得る。一実施形態では、酸供給源は、無機酸供給源であり得る。重硫酸ナトリウムは、例示的な無機酸である。
【0069】
電子受容体の供給源である任意の成分は、亜塩素酸イオンから電子を受容し、それによって、中性二酸化塩素を産生し得る電子受容体分子を提供する。臭素および塩素等のハロゲン化物は、亜塩素酸イオンから電子を容易に受容する。したがって、遊離塩素または遊離臭素を提供する分子は、電子受容体供給源として有用である。遊離塩素または遊離臭素の例示的な供給源には、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムならびに/またはその二水和物(本明細書でNaDCCAと総称される)等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン等が含まれる。ある特定の実施形態では、電子受容体は、塩素であり得る。塩素の例示的な供給源は、NaDCCAである。
【0070】
2.極性物質
乾燥または無水環境下で二酸化塩素の産生を活性化するのに有用な極性物質は、電気的に対称ではない構造を有する任意の非水化合物を含む。非水化合物の電気的非対称は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源と乾燥または無水酸供給源との間の反応を促進し、二酸化塩素を産生する。物質の極性の1つの尺度は、その誘電率である。誘電率は、電界の影響下で電気的ポテンシャルエネルギーを保存する物質の能力として定義される。それは、誘電体と同一の真空を有するコンデンサ組立の電気容量に対する、その誘電体としての物質を有するコンデンサの電気容量の比率を表す。誘電率は、当業者に知られているいくつかの方法で測定され得る。1つの一般的な方法は、その誘電体として、物質でコンデンサを共鳴電気回路内に組み立て、ACポテンシャル下で回路の共鳴周波数を判定することである。本明細書に示されるように、18〜25℃で測定された、2.5より大きい誘電率を有する非水性物質は、二酸化塩素生成成分からの二酸化塩素産生を活性化するのに十分に極性である。18〜25℃で測定された有用な極性物質は、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2以上を含む、2.5より大きい誘電率を有する。ある実施形態では、18〜25℃で測定された極性物質は、少なくとも約3.0の誘電率を有する。
【0071】
極性物質は、固体、液体、またはガスであり得る。例示的な極性物質には、アルコール、有機酸、アルデヒド等の乾燥または無水極性有機化合物が含まれるが、それらに限定されない。有機酸に関して、水の不在下では、有機酸は、プロトンおよび共役塩基に解離せず、したがって、プロトン供与体(酸供給源)として機能することができないことが留意される。水(乾燥または無水)の不在下において、18〜25℃で測定されたその誘電率が、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2以上より大きい場合に、有機酸は、極性物質として機能することができる。いくつかの実施形態では、極性物質は、乾燥または無水であり、かつ、有機酸を含む。他の実施形態では、極性物質が二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するために使用される場合、極性物質は、有機酸および物質量の水を含む。
【0072】
極性液体は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分の二酸化塩素産生を活性化するために使用され得る。極性液体は、同様に、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するのに有用である。多種多様の極性液体を使用して、二酸化塩素の形成を開始することができる。極性液体の選択は、二酸化塩素生成成分が分散する乾燥または無水マトリックスに左右される。この実施形態に関して、極性液体は、マトリックス中で少なくともわずかに可溶性であるはずである。例示的な極性液体には、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、エステル中の炭素原子の総数が2〜10個である、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、およびプロピレングリコール等のジオール;グリセリン;ならびにアセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、およびスルホラン等の双極性非プロトン性溶媒が含まれるが、それらに限定されない。アルコール、グリコール、およびグリセリンは特に、二酸化塩素の形成を開始するのに好適な溶媒である。例示的な極性物質には、イソプロパノール、ブチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、およびオクタン酸が含まれる。乾燥極性液体の混合物は、二酸化塩素生成組成物を活性化するためにも使用され得る。
【0073】
極性固体または蒸気は、同様に、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するのに有用である。極性固体または蒸気の選択は、二酸化塩素生成成分が分散する乾燥または無水マトリックスに左右される。この実施形態に関して、極性固体または蒸気は、マトリックス中で少なくともわずかに可溶性であるはずである。
【0074】
3.マトリックス
乾燥または無水の水不浸透性マトリックスは、極性物質活性剤がない時に、たとえあったとしても、少しの二酸化塩素しか生成されないように、水蒸気を含む水との接触から二酸化塩素生成成分を保護する。オキシ−塩素イオンの供給源は、水不浸透性マトリックス中に溶解しない。言い換えると、水不浸透性マトリックス中に分散する時、オキシ−塩素イオンの供給源は、アニオン形態に解離されない。方法および系の実践において好適なマトリックス物質には、疎水性ワックス等の水不浸透性固体成分、疎水性油等の水不浸透性流体、ならびに疎水性固体および疎水性流体の混合物が含まれる。これらの水不浸透性成分は、通常、大量の水を含有せず、したがって、通常乾性である。マトリックスは、単一疎水性固体または単一疎水性流体であり得る。あるいは、マトリックスは、疎水性固体の混合物、疎水性流体の混合物、または疎水性固体および疎水性流体の両方を含む混合物であり得る。ワックスおよび油は、相互と容易に混和する。したがって、疎水性ワックスおよび疎水性油の多様な比率から様々なマトリックスを調製することが可能である。したがって、マトリックスは、1つのワックスおよび1つ以上の油の混合物、1つの油および1つ以上のワックスの混合物、または複数のワックスおよび複数の油の混合物であり得る。ワックスおよび油を混ぜ合わせることで、多種多様の物理的性質を有するマトリックスを調製することが可能である。パラフィンワックス等の硬質な高融点ワックスの高比率を有する組成物は、堅い固体であり得る。より多くの油を組成物に添加し、より軟らかいワックスを使用することで、より大きいグリース様の性質を有するマトリックスが調製され得る。油の高比率を有するマトリックスは、液体である傾向がある。本明細書の他の箇所で議論されるように、約150〜160℃未満の温度で流体であるマトリックス物質は、オキシ−塩素イオン供給源の熱分解を最小限に抑えるのに好適である。
【0075】
組成物中で使用可能な固体には、動物および昆虫ワックス、植物ワックス、ミネラルワックス、パラフィンワックスおよび微結晶ワックス等の石油ワックス、ならびに低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、およびフィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス、ならびにシリコンゲルが含まれる。組成物中で使用可能な流体には、石油およびワセリン、軽鉱油および重鉱油、植物油、ならびにシリコン油が含まれる。例示的な固体には、パラフィンワックスおよび低分子量ポリエチレンが含まれる。例示的な流体には、ワセリンおよび鉱油が含まれる。例示的な固体および例示的な流体の組み合わせも有用である。
【0076】
市販の水不浸透性マトリックスには、VASELINEワセリン(Unilever,Clinton,CT)、パラフィンワックス、ワセリン、および鉱油の混合物であるAVAGELミネラルゼリー(Avatar,University Park,IL)、低分子量ポリエチレン(5%)および鉱油(95%)の混合物であるPLASTIBASE(Squibb,New Brunswick,NJ)医療用軟膏基剤が含まれる。
【0077】
本開示に基づいて、当業者は、二酸化塩素生成マトリックス組成物からの二酸化塩素産生を活性化するための、マトリックスおよび極性物質の適切な組み合わせを容易に同定する。マトリックスおよび極性物質の非限定的な例には、ワセリンマトリックスおよび極性物質としてグリセリン、ポリエチレンおよび鉱油を含むか、またはそれらから本質的に成るマトリックスならびに極性物質としてグリセリン、かつパラフィンワックス、ワセリン、および鉱油を含むか、またはそれらから本質的に成るマトリックス、ならびに極性物質として、グリセリン、オクタン酸、ブチルアルコール、イソプロパノール、およびプロピレングリコールの1つ以上が挙げられる。
【0078】
4.追加の成分
組成物は、それらが乾燥または無水である場合に、追加の任意の成分を含み得る。例示的な実施形態では、二酸化塩素による組成成分の酸化は、酸化に利用可能な二酸化塩素を減少させるため、全ての任意の成分は、二酸化塩素(および組成物中に存在する任意の他の酸化剤)による酸化に比較的耐性がある。「比較的耐性」は、適用で二酸化塩素含有組成物を調製および使用する時間的尺度において、任意の成分の機能は、受け入れ難いほど低下せず、組成物は、二酸化塩素(および存在する場合、他の酸化剤)に対して満足なレベルの効力/能力を保持することを意味する。二酸化塩素含有組成物が生物組織および/または物質と接触し得る適用において、例示的な任意の成分は、細胞毒性および/または刺激を実質的に助長せず、したがって、組成物は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激のままである。
【0079】
二酸化塩素生成成分への無機成分の追加は、いくつかの例において、二酸化塩素の形成を増進する。組成物中で有用な無機成分には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、硫酸第二鉄、リン酸第二鉄もしくはリン酸亜鉛、シリカアルミナゲル、シリカマグネシアゲル、シリカジルコニアゲル、またはシリカゲル、および多様な粘土が含まれる。選択される追加の無機成分は、オキシ−塩素アニオン供給源、酸供給源、および電子受容体の任意の供給源と混ぜ合わされ、混合物を形成する。混合物は、打錠および/または粉砕されて、二酸化塩素の粒子前駆体を調製し得る。ポア形成は、組成物中に湿度侵入を促進し得る。したがって、いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成成分および組成物は、ポア形成を排除する。ポア形成には、膨潤無機粘土およびシリカゲル等のこれらの無機成分、ならびに珪藻土等の他の物質のいくつかが含まれる。
【0080】
増粘剤成分は、いくつかの適用において有用であり得る。増粘剤には、鉱油マトリックスに添加されるポリエチレンワックス等の比較的高い粘度を有するマトリックス成分が含まれ得る。増粘剤には、LAPONITE(Southern Clay Products,Gonzales,TX)、アタパルジャイト、ベントナイト、VEEGUM(R.T.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、炭酸カルシウム等の粘土および他の細粒サイズの粒子添加剤も含まれる。
【0081】
追加の酸化剤が含まれ得る。例示的な酸化剤には、アルカリ金属過炭酸塩(過炭酸ナトリウム等)、過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過酸化マグネシウム、過酸化水素錯体(PVP過酸化水素錯体等)、過酸化水素、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0082】
経口化粧品および/または治療用途を目的とする組成物は、甘味料、風味料、着色剤、および香料を含むが、これらに限定されない成分を含み得る。甘味料には、糖アルコールが含まれる。風味料には、例えば、天然または合成エッセンシャルオイル、ならびに多様な風味アルデヒド、エステル、アルコール、および他の物質が含まれる。着色剤には、例えば、FD&CまたはD&C色素等の、食品、薬物、または化粧品への混入を認可された着色料、ならびにFDAによって米国での使用を許可された染料が含まれる。
【0083】
経口化粧品および/または治療的使用を目的とする組成物における他の任意の成分には、(二酸化塩素に加えて)抗菌剤、酵素、(二酸化塩素に加えて)悪臭制御剤、リン酸塩等の洗浄剤、抗歯肉炎剤、抗歯垢剤、抗酒石剤、フッ化物イオンの供給源等の抗虫歯剤、抗歯周炎剤、栄養素、抗酸化剤等が含まれる。
【0084】
硬表面の局所消毒剤を目的とする組成物における任意の成分には、香料、染料または色素等の着色剤、界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤等が含まれる。生物組織の局所消毒剤において、任意の成分には、香料、着色剤、メントール、クロロホルム、およびベンゾカイン等の局所麻酔薬、軟化薬または加湿剤、沈痛薬、ラウリル硫酸ナトリウム等の洗浄剤、(二酸化塩素に加えて)抗菌剤、(二酸化塩素に加えて)悪臭抑制剤、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、またはそれらの混合物の生体接着ポリマー等が含まれる。
【0085】
III.組成物の使用
概して、二酸化塩素含有組成物は、殺菌および消毒製剤を含む、抗菌剤、脱臭、および抗ウイルス処理において有利に採用され得る。二酸化塩素生成組成物は、多種多様の微生物を破壊する、無能にする、または無害にするのに有効である。そのような微生物には、細菌、菌類、胞子、酵母、黴、うどん粉菌、原生動物、およびウイルスが含まれる。
【0086】
したがって、方法からもたらされる二酸化塩素含有組成物は、表面または対象、液体およびガス、ヒトおよび動物の皮膚、医療機器等において微生物またはウイルス集団を減少させるのに有用である。二酸化塩素含有組成物は、臭気を減少させるのにも有用である。二酸化塩素含有組成物は、非水性溶媒処理(すなわち、ドライクリーニング)で衣類を衛生化および脱臭するのに有用であり得る。二酸化塩素含有組成物は、食品産業、サービス産業、医療産業等に関連する適用を浄化および衛生化するのに利用され得る。例えば、二酸化塩素含有組成物が使用を見出す工業および商業用途には、食器洗浄機および食器洗い機、冷却塔、プール、温泉、噴水、工業処理水、ボイラー、医学的環境等が含まれる。二酸化塩素含有組成物の特に有利な使用は、例えば、グリース様潤滑特性を有するマトリックス成分を含み、二酸化塩素を含有および放出する食品加工装置とともに使用される抗菌性滑沢剤としてあり得る。一実施形態では、抗菌性滑沢剤は、グリセリンによって活性化され得るワセリンマトリックス内に含有されるASEPTROLの顆粒を含む。
【0087】
二酸化塩素含有組成物は、動物製品において、乳頭浸漬、ローション、またはペーストを含む哺乳動物の皮膚、皮膚消毒剤およびスクラブ、口腔治療製品、毛状疣贅病の治療等の足または蹄治療製品、耳および眼疾患治療製品、手術前もしくは手術後の手術着、消毒剤、動物の囲い、ペン、動物治療領域(検査台、手術室、ペン等)等の衛生化または消毒での使用で採用され得る。二酸化塩素含有組成物を使用して、動物囲い、動物病院、動物手術領域の微生物および臭気を減少、ならびに卵等の動物ならびに動物製品の動物もしくはヒト病原(または日和見)微生物およびウイルスを減少させることもできる。二酸化塩素含有組成物は、そのような種目上の微生物集団を減少させるために、多様な食品および植物種の処置、そのような種を取り扱う製造所または処理所の処置に使用され得る。二酸化塩素含有組成物は、創傷治療、口腔治療、足の爪/手の爪の抗真菌治療を含む足の爪/手の爪の治療、歯周病治療、虫歯予防、歯のホワイトニング、ならびに髪染めを含む美容および/または治療適用において採用され得る。軟化剤として機能し得る水不浸透性マトリックスを含む非水二酸化塩素含有組成物は、有益に、抗菌性皮膚軟化剤であることが企図される。
【0088】
組成物中の二酸化塩素の量は、組成物の使用目的に関連する。当業者は、所与の使用に有効な適切な量または量の範囲の二酸化塩素を容易に決定することができる。概して、方法の実践に有用な組成物は、少なくとも約5百万分率(ppm)の二酸化塩素、少なくとも約20ppm、または少なくとも約30ppmを含む。典型的には、二酸化塩素の量は、最大約2000ppm、最大約700ppm、最大約500ppm、または最大約200ppmであり得る。ある特定の実施形態では、二酸化塩素の濃度は、約5〜約700ppm、約20〜約500ppm、または約30〜約200ppmの二酸化塩素に及ぶ。一実施形態では、組成物は、約30〜約40ppmの二酸化塩素を含む。一実施形態では、組成物は、約30ppmの二酸化塩素を含む。別の実施形態では、組成物は、約40ppmの二酸化塩素を含む。
【0089】
生物組織または物質との接触を伴う二酸化塩素含有組成物の適用において、例示的な組成物は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激であり得る。本明細書で使用される、「生物組織」は、粘膜組織、表皮組織、経皮組織、および皮下組織(下皮組織とも呼ばれる)の1つ以上を含む哺乳動物組織等の動物組織を指す。粘膜組織には、頬粘膜、他の口腔粘膜(例えば、軟口蓋粘膜、口腔粘膜底、および舌下粘膜)、膣粘膜、および肛門粘膜が含まれる。これらの粘膜組織は、本明細書で「軟組織」と総称される。生体組織は、無傷であるか、または1つ以上の切開口、裂傷、または他の組織透過開口部を有し得る。本明細書で使用される、「生体物質」には、哺乳動物等の動物に見られる歯のエナメル質、象牙質、指の爪、足の爪、硬質な角化組織等が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
二酸化塩素から成る酸化剤を含む組成物において、細胞毒性は、主に、オキシ−塩素アニオンの存在に由来する。したがって、組成物1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオン〜組成物1グラム当たり約0.25mg未満のオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含む二酸化塩素を含む組成物は、細胞毒性を助長する他の構成要素がない時に、実質的に非細胞毒性である。等業者は、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験のUSP生物反応性制限を使用して、製剤が細胞毒性であるかを断定することによって、所与の組成物が十分に低いオキシ−塩素の濃度を有するかを経験的に容易に断定することができる。
【0091】
生物組織の刺激は、酸性および塩基性の両方のpHの極度に由来し得る。二酸化塩素含有組成物で生物組織の刺激を最小限に抑えるために、組成物は、少なくとも3.5のpHを有する。例示的な実施形態では、組成物は、少なくとも5、または約6より大きいpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは、約4.5〜約11、約5〜約9、または約6より大きく約8未満に及ぶ。一実施形態では、pHは、約6.5〜約7.5であり得る。オキシ−塩素アニオンの濃度は、軟組織の刺激を助長するとは考えられていない。
【0092】
IV.系、製品、およびキット
二酸化塩素含有組成物を調製するための二成分系も提供される。第1の成分は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含む。第2の成分は、乾燥または無水オキシ−塩素アニオン供給源の反応を促進して、二酸化塩素を形成することができる極性物質を含む。第1および第2の成分の組み合わせは、二酸化塩素を含む組成物を産生する。二酸化塩素生成成分は、任意で、電子受容体の供給源を含む。例示的な実施形態では、オキシ−塩素アニオン供給源は、亜塩素酸ナトリウムであり得、酸供給源は、重硫酸ナトリウムであり得る。この実施形態では、例示的な任意の電子受容体は、NaDCCAである。いくつかの実施形態では、二酸化塩素生成成分は、ASEPTROL(登録商標)物質である。例示的な極性物質は、本明細書の他の箇所に開示される。
【0093】
ある実施形態では、第1の成分は、乾燥または無水二酸化塩素生成成分を含み、第2の成分は、乾燥または無水極性液体を含む。得られた二酸化塩素含有組成物は、非水であり得る。
【0094】
別の実施形態では、第1の成分は、本明細書の他の箇所に記載されるように、水不浸透性マトリックスを含み、二酸化塩素生成成分は、マトリックス内に分散されるか、またはさもなければ含有される。この実施形態では、系の第2の成分は、水不浸透性マトリックス中で少なくともわずかに可溶性である極性物質を含む。一実施形態では、極性物質は、水を含まない。この実施形態では、得られた二酸化塩素を含む組成物は、実質的に乾燥または無水であり得る。別の実施形態では、極性物質は、物質量の水を含む。この実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるように、二酸化塩素生成は、極性物質および水の組み合わせによって活性化され得る。
【0095】
一実施形態では、水不浸透性マトリックスは、疎水性ワックス、疎水性油、またはそれらの混合物から選択され得る。例示的なワックスおよび油は、本明細書の他の箇所に開示される。例示的な実施形態では、水不浸透性マトリックスは、ワセリンの1つ、ポリエチレンおよび鉱油の混合物、ならびにワセリン、パラフィンワックス、および鉱油の混合物であり得る。例示的な実施形態では、極性物質は、グリセリン、イソプロパノール、ブチルアルコール、プロピレングリコール、およびオクタン酸から成る群から選択され得る。
【0096】
開示される方法を実践するのに有用なデバイスも提供される。一実施形態では、二酸化塩素生成成分は、シリンジ等の第1のディスペンサ内に存在し、極性物質は、第2のディスペンサ内に存在する。第2のディスペンサ内の極性物質を、第1のディスペンサ内の二酸化塩素生成成分に直接添加し、混合物を反応させてClO2を産生し、その後均一になるまで混ぜ合わせることができる。一実施形態では、ディスペンサは、シリンジである。2つのシリンジは、相互に連結され得、内容物は一方のシリンジの内容物を他方に分配することによって混合され、次いで、混合物が均一になるまで、他方のシリンジに混合物を戻して分配する。別の実施形態では、2つのディスペンサは、二重バレルシリンジの2つのバレルである。
【0097】
別の実施形態において、ASEPTROL物質、および極性物質等の二酸化塩素生成成分は、使用前に二酸化塩素生成成分を極性物質から分離させる分配ユニット内に保持され得、分配される時に2つの構成物質を混合させる。分配ユニットは、ハウジングと一体化された隔離板または仕切板を有する単一ハウジングユニットを備えることができるため、二酸化塩素生成成分および極性物質は、分配ユニットから分配された後にのみ交わる。あるいは、分配ユニットは、二酸化塩素生成成分および極性物質を最初は分離するが、続いて、脆弱な隔離板または仕切板が透過される時に、二酸化塩素生成成分および極性物質と混ぜ合わせることを許す脆弱な隔離板または仕切板を有する単一ハウジングユニットを備えることができる。分配ユニットにおけるさらに別の変形は、一方は二酸化塩素生成成分用、他方は極性物質用の、少なくとも2つの個別の脆弱な容器を保持する分配ユニットに関し、個別の脆弱な容器は、圧力の印加時に破壊される。これらおよび他の分配ユニットは、米国特許第4,330,531号に完全に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
上ならびに二酸化塩素含有組成物の調製および使用を記載する説明書に記載されるディスペンサを含むキットがさらに提供される。本明細書で使用される、「説明書」には、キットにおける組成物および/または化合物の有用性を伝達するために使用され得る刊行物、記録、図、またはあらゆる他の表現手段が含まれる。キットの説明書は、例えば、化合物および/もしくは組成物を含有する容器に貼付されるか、または化合物および/もしくは組成物を含有する容器とともに発送され得る。あるいは、受取人が説明書および化合物を協同的に使用するという意図で、説明書は、容器とは別に発送され得る。説明書の送達は、例えば、キットの有用性を伝達する刊行物もしくは他の表現手段により物理的に送達されるか、またはあるいは、例えば、電子メール、もしくはウェブサイトからのダウンロード等のコンピュータ手段による電子送信によって達成され得る。
【0099】
実施例
組成物、系、および方法は、以下の実験例の参照によりさらに詳細に記載される。これらの実施例は、例示的な目的としてのみ提供されるものであり、別途明記されない限り、限定されるものではない。したがって、組成物および方法は、以下の実施例により限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意および全ての変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0100】
以下の実施例ならびに本明細書および特許請求の範囲の他の箇所で別途示されない限り、全ての割合および百分率は重量によるものであり、全ての温度は摂氏度であり、圧力は大気圧であるかまたは大気圧に近い。
【0101】
実施例1
疎水性流体マトリックス中の無水二酸化塩素生成成分が、乾燥または無水極性物質との接触により活性化されて二酸化塩素を産生することができるかを試験するために、以下の実験を遂行した。
【0102】
ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤は、水中における高度の亜塩素酸塩アニオンのClO2への変換を有する(米国特許第6,432,322号の実施例を参照)。ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を使用して、疎水性流体マトリックス中に二酸化塩素生成成分を含む組成物を調製した。錠剤の化学組成を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を、米国特許第6,432,322号の実施例5に記載される方法と同等の方法で調製した。手短にいうと、ASEPTROL(登録商標)S−Tab10製剤の分離成分の各々を乾燥させ、適切な比率で混ぜ合わせた。混合物を、水圧テーブルプレスを用いて錠剤形態に圧縮した。このようにして形成された錠剤を乳鉢および乳棒を用いて顆粒に粉砕した。得られた顆粒を40メッシュの米国標準スクリーンを用いてスクリーニングし、〜40メッシュの大きさの画分を実験に使用した。
【0105】
〜40メッシュの大きさの画分を、パラフィンワックス、ワセリン、および鉱油の混合物であるAVAGELミネラルゼリーと混ぜ合わせた。約0.05〜0.07グラムの〜40メッシュの顆粒を約7〜8グラムのAVAGELミネラルゼリーと混合し、プラスチックの混合棒を用いて手動でそっと混ぜ合わせた。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。
【0106】
ASEPTROL(登録商標)顆粒を含むこのマトリックス組成物の試料を、1〜2グラムの一連の試験無水活性剤と、ヘラを用いて数分間、手動でそっと混ぜ合わせた。二酸化塩素の産生を、二酸化塩素の特徴である黄色の発現について目視検査によって推測した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
これらのデータは、二酸化塩素産生が、水、水蒸気、またはエネルギー活性可能な触媒の不在下で、乾燥極性物質によって活性化され得ることを示す。オレイン酸の二酸化塩素産生の活性化不能は、それが二酸化塩素を活性化するには不十分な極性であるように、オレイン酸の比較的長い炭素鎖(C18)が十分に拡散または減少することを示唆する。したがって、短い炭素鎖が、長い炭素鎖よりも良好な活性剤であることが考えられる。
【0109】
実施例2
実施例1に記載されるように調製したASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の約0.05〜0.07グラムの〜40メッシュの大きさの画分を、約7〜8グラムのVASELINEワセリンと混ぜ合わせた。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。組成物を102グラムのグリセリンと接触させた。混合物中の黄色の産生に基づいて、二酸化塩素が産生された。
【0110】
実施例3
実施例1に記載されるように調製したASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の〜40メッシュの大きさの画分の量を、実施例1および2で用いた比率とほぼ同一の比率でPLASTIBASE医療用軟膏基剤と混ぜ合わせた。このマトリックスは、低分子量ポリエチレン(5%)および鉱油(95%)の混合物である。得られた組成物は安定しており、二酸化塩素を産生しなかった。組成物の試料をグリセリンと接触させると、マトリックス/顆粒混合物に対するグリセリンの比率は、実施例2の比率とほぼ同一であった。混合物中の黄色の産生に基づいて、二酸化塩素が産生された。
【0111】
実施例4
実施例1に記載されるように調製したが、−100+200の米国標準スクリーン粒子の大きさにスクリーニングした−100+200メッシュのASEPTROL(登録商標)S−Tab10顆粒の量を、ワセリン1グラム当たり0.01グラムの顆粒の比率で、Pinnacle商標のワセリンと手動でそっと混ぜ合わせた。1グラムのその混合物を、LUER−LOKチップ(BD,Franklin Lakes,NJ)を有する第1の10mLのプラスチックシリンジ内につめた。3グラムのグリセリンおよび4グラムのPinnacle商標ワセリンを含む第2の混合物を調製し、同一の種類の第2の10mLのプラスチックシリンジに移動させた。
【0112】
2つのシリンジのチップをTEFLON(登録商標)(DuPont,Wilmington,DE)プラスチックのLUER−LOK結合を用いて連結し、第2のシリンジのプランジャを前進させて、第2のシリンジの内容物を第1のシリンジ内に移動させた。シリンジを取り付けたまま放置し、内容物を妨害することなく15分間反応させた。15分後、シリンジのプランジャを交互に前進させて、シリンジ間を4回往復させて内容物を移動させた。ゲルを妨害なしでさらに15分間反応させた。シリンジのプランジャを交互に前進させて移動させ、内容物が均一になるまで混ぜ合わせた(約10〜15回)。得られた黄色は、二酸化塩素の存在を示した。
【0113】
得られたプラスチックの流体を、USP<87>「インビトロ生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験の米国薬局方(USP)生物反応性制限の方法を用いて細胞毒性に関して評価し、細胞毒性ではないことを見出した。
【0114】
本明細書に引用される各々および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
特定の実施形態を参照して、組成物、キット、およびそれらの使用方法を開示したが、他の実施形態および変形が、記載された組成物、キット、および使用方法の真の精神および範囲から逸脱することなく、他の当業者によって考案され得ることは明らかである。付属の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態および同等の変形を含むように解釈されることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素生成組成物を調製するための二成分系であって、
a)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含む第1の成分、ならびに極性物質を含む第2の成分であって、
前記第1および第2の成分は乾性であり、かつ、前記第2の成分は液体であるもの、
b)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分、ならびに極性物質を含む第2の成分であって、
前記第1及び第2の成分は乾性であるもの、または
c)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分、ならびに極性物質および物質量の水を含む第2の成分であって、
前記第1の成分は乾性であるもの
のうちの1つを含み、
前記第1および第2の成分の組み合わせが二酸化塩素生成組成物を産生する系。
【請求項2】
前記極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって前記エステル中の炭素原子の総数は2〜10個であるエステル、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である請求項2に記載の系。
【請求項4】
前記乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、前記乾燥酸供給源、および前記任意の乾燥電子受容体供給源は、前記水不浸透性マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である請求項1に記載の系。
【請求項5】
前記水不浸透性マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1に記載の系。
【請求項6】
二酸化塩素を産生するための方法であって、
前記方法は、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含み、
a)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含むと共に、前記極性物質は液体であるか、
b)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含むと共に、前記極性物質は乾性であるか、または
c)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、前記極性物質は物質量の水を含み、
前記極性物質は前記二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する方法。
【請求項7】
前記乾燥極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって前記エステル中の炭素原子の総数は2〜10個であるエステル、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、前記乾燥酸供給源、および前記任意の乾燥電子受容体供給源は、前記水不浸透性マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記水不浸透性マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項1】
二酸化塩素生成組成物を調製するための二成分系であって、
a)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含む第1の成分、ならびに極性物質を含む第2の成分であって、
前記第1および第2の成分は乾性であり、かつ、前記第2の成分は液体であるもの、
b)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分、ならびに極性物質を含む第2の成分であって、
前記第1及び第2の成分は乾性であるもの、または
c)乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含む第1の成分、ならびに極性物質および物質量の水を含む第2の成分であって、
前記第1の成分は乾性であるもの
のうちの1つを含み、
前記第1および第2の成分の組み合わせが二酸化塩素生成組成物を産生する系。
【請求項2】
前記極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって前記エステル中の炭素原子の総数は2〜10個であるエステル、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である請求項2に記載の系。
【請求項4】
前記乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、前記乾燥酸供給源、および前記任意の乾燥電子受容体供給源は、前記水不浸透性マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である請求項1に記載の系。
【請求項5】
前記水不浸透性マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1に記載の系。
【請求項6】
二酸化塩素を産生するための方法であって、
前記方法は、二酸化塩素生成組成物を乾燥極性物質と接触させることを含み、
a)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、および任意の乾燥電子受容体供給源を含むと共に、前記極性物質は液体であるか、
b)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含むと共に、前記極性物質は乾性であるか、または
c)前記二酸化塩素生成組成物は乾性であり、かつ、乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、乾燥酸供給源、任意の乾燥電子受容体供給源、および水不浸透性マトリックスを含み、前記極性物質は物質量の水を含み、
前記極性物質は前記二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素の産生を活性化する方法。
【請求項7】
前記乾燥極性物質は、アルコール、有機酸、アルデヒド、グリセリン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性物質は、炭素数1〜10の脂肪族アルコール、炭素数2〜10の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の脂肪族ケトン、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸、1〜9個の炭素酸を有する炭素数1〜9のアルコールのエステルであって前記エステル中の炭素原子の総数は2〜10個であるエステル、ジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、イソブチルメチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ピリジン、スルホラン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される乾燥極性液体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥オキシ−塩素アニオン供給源、前記乾燥酸供給源、および前記任意の乾燥電子受容体供給源は、前記水不浸透性マトリックス内に含有される二酸化塩素の粒子前駆体である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記水不浸透性マトリックスは、疎水性固体、疎水性流体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【公表番号】特表2012−517956(P2012−517956A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551118(P2011−551118)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023575
【国際公開番号】WO2010/096300
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023575
【国際公開番号】WO2010/096300
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】
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