説明

非水和石こうの組成物と方法

装飾壁を仕上げる方法は、石膏、セメントまたはその組合せから成っている建築パネルの下地を準備するステップを含み、前記下地に塗装された表面を有す。前記塗料は5〜20重量%のラテックスエマルジョン結合材、40〜80重量%の硫酸カルシウム半水化物、0.05〜2重量%の硬化遅延剤と20〜60重量%の水から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硫酸カルシウム半水化物を含む、たとえば塗装建築パネルのような、品目に係り、より詳細には、塗装に用いられる石こう様の材料及び塗装時に石こうの感触を持ちながら水和していない品目に関する。
【背景技術】
【0002】
二水石こう(ジプサム)は建築産業において多くの用途に広く用いられている共通の材料である。この材料の実用性は、少なくともその一部は、妥当な費用と実質上いかなる形にも成形可能であることである。硫酸カルシウム半水化物もまたスタッコ(化粧しっくい)あるいは焼石こうとして知られておりペースト或いはスラリーにするため水と混合される。そのスラリーは何らかの知られている方法、例えば、これに限られてはいないが、型に入れたり、スプレーしたり、表面に注いだり、或いはこてを用いて塗ることにより成形される。硫酸カルシウム半水化物は水と反応し、水和作用により硬化硫酸カルシウム二水化物(ジプサム)結晶の組合せ配列を形成する。多少の収縮はしばしば起きるが、石こうは大体において硬化反応が完了する前に形成された形状を保持する。
【0003】
内装壁は一般的にシートロック(商標登録)商標のジプサムパネルのような二水石こうで作られる。パネルを使うことにより広い面積の壁が迅速に覆われるが、パネル間の継ぎ目は塗装や別の装飾的仕上げによってモノリス(一枚岩)な表面に仕上げられなければならない。
【0004】
パネルの仕上げは通常時間を要する作業である。ボードが取り付けられた後、結合化合物(joint compound)の塗装で継ぎ目や釘の頭が覆われる。結合化合物は乾燥するに従って収縮し、最後の乾燥部である継ぎ目の位置にへこみが残る。結合化合物は一晩乾燥され、完全に乾燥すると研磨される。研磨によるダストはタッククロス(粘着性の布)や湿ったスポンジで除去される。2回目の結合化合物の被膜が塗られ、一晩乾燥され、続いて表面の研磨、ダスト除去が行われる。より高い質の仕事にするため、結合化合物の3回目の塗装過程が繰り返される。表面の仕上げにはボードが組み立てられた後、少なくとも3日間を要する。この処理過程は損傷を受けた壁の補修にも用いることができる。
【0005】
この処理過程は時間を要するが、スムースでモノリスな表面を比較的安い費用で作ることができる。処理過程は簡単なので、自宅所有者はプロの援助を受けることなくしばしば行っている。しかし、その仕事を終えるのに必要な時間の量に難点がある。新しい建造では、飾り戸棚、カーペット、据え付け備品および他の仕上げ項目の据え付けは塗装の仕上げが完了するまで延期される。職人は1つの建設現場に続けて数日間通わなければならない。補修や再装飾を行う自宅所有者にとっては、家の建設中断は引き延ばされることになる。表面の研磨を繰り返すことにより微粒のダストがクロゼットや飾り戸棚に侵入し家全体のダスト除去が必要になる。壁のより迅速でより清浄な仕上げ方法が請負業者と自宅所有者双方から要望されている。
【0006】
壁や天井の仕上げの別の方法として、二水石こうパネル面全体を覆う化粧板(veneer)や石こうのスキムコート(表面塗装)を用いる方法がある。この技術は結合化合物を用いるよりは欠け、へこみ、かすり傷或いはくぎの突出などが少ない、より強い表面もたらす。その表面は追加の調合を要しない。カラープラスター(色付き石こう)を使えば表面の塗装や石こう塗りさえも行う必要がない。壁面全体の石こうの1回塗りは、乾燥時間を考慮すると結合化合物の複数の塗布よりも短時間である。
【0007】
調合済み石こう配合物が利用できることは多くの適用に望ましいことである。そのような配合は、たとえば壁の仕上げ、歯科応用、鋳造、鋳型、機械部品品目、石こうの噴霧、および当該技術の熟練者に知られている他の応用に用いることが可能である。
【0008】
特許文献1において、調合済み配合物、硬化型結合化合物が処方され、硫酸カルシウム半水化物が結合剤として使われた。半水化物から二水化物への水和作用を阻止するために硬化遅延剤が湿ったペーストに添加された。結合化合物の使用直前に硬化促進剤を添加することにより、水和作用が開始するように意図されていた。しかし、時間の経過により硬化遅延剤が分解し、製品の保管期間中に水和が始まってしまうことが分かった。
【0009】
特許文献2には、調合済み配合物、硬化型結合化合物が公開されている。この組成物は、ピロリン酸四ナトリウムのようなリン酸塩が硬化遅延剤の長持と長期保管をもたらすために使用される。しかしながら、このような結合化合物は比較的低い耐久性であるため、多くの用途にとって満足できないものであることが判明した。
【0010】
特許文献3においては、アクリル酸とアクリルアミドの反復単位を使っている調合済み配合物、硬化型結合化合物を公開している。これらの製剤は、他の結合化合物に比べ滲み(にじみ)や堆積(沈殿)は少ないが、これらもまた耐久性が低く限られた用途にのみ役立つ。
【0011】
上記の組成物は、結合化合物として使われることを意図されその用途に処方されている。しかしながら、典型的な結合化合物は塗布されるときに石こう組成物と同じような感触を持つことはない。熟練した石こう職人は壁にスキムコーティングやベニアコーティングをする時に、正しい厚みを得るために塗りこてにどれくらいの圧力をかけるべきかを正確に知っている。従来の調合済み配合物、結合化合物を使用するためには、石こう職人は正しく適用するために結合化合物の感触を習得する必要がある。さらに重要なことは、結合化合物の表面塗装は労働及び時間集約であり、化合物の塗布、乾燥時間、表面全体の研磨(大量のダストを生じる)が必要である。一方、化粧板石こう塗装は、上質の滑らかでモノリスな表面にするために、石こうの塗装と緻密化(高密度化)が必要なだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,661,161号
【特許文献2】米国特許第5,746,822号
【特許文献3】米国特許第5,779,786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、壁への塗装を容易にするために石こうと同じ作業特性を有し、石こう感触を有し、研磨不要で、そして、作業工程のより少ない組成物の技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
内装壁を仕上げる方法は、建築パネルの下地の準備段階と下地に塗装調合物を塗布する段階があり、塗装混合物は5〜30重量%のラテックスエマルジョン結合剤、40〜80重量%の硫酸カルシウム半水化物、最大8重量%までの硬化遅延剤、及び20〜60重量%の水を含んでいる。建築パネルは二水石こうセメント或いはその混合物でできている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗装混合物は建築パネル用の調合済み配合物である。調合済み配合物は、従来の石こうに対して、石こうを混合する容器や水を塗装現場に運搬する必要がない点で有利である。組成物を混ぜるために使用される水は、望ましくない副反応が起きにくいよう、塗装組成物に導入されている調和した品質である。さらに現場の石こう職人が1回の使用分量を準備するために時間をかける必要がない。
【0016】
また、調合済み配合物は、改造や補修作業の間もすでに生活している空間や作業場所を汚染するダストを発生させる袋詰めの石こうの移しかえや混合が必要ないことからも好都合である。
【0017】
その混合物は硫酸カルシウム半水化物で作られているため、従来の石こうと同じ塗布感触を持っている。そのため、石こう職人は新しい組成物の感触を習得する必要がなく、従来の石こうと実質上同じ正確さで混合物のスキムコート(表面塗布)を行うことができるはずである。特定の厚みの混合物にするために必要な圧力の大きさをもう1度習得し直す必要はないであろう。
【0018】
その壁の仕上げ方法は、粘着テープ作業、結合化合物の塗布および研磨作業よりも早い。従来の方法は、次の塗布を行うために結合化合物が十分に乾燥するように塗布作業間に最大24時間の待ち時間を必要とした。本方法を用いれば、混合物のスキムコート(表面塗布)を塗装することができ、2回目の塗布は同日に可能である。この方法によると、少なくとも1日、しばしば2日の短縮が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このような要求は、塗装建築パネルと、焼石こう含有品物を関係づける本発明によってかなえられる。塗装パネルは建築パネルと塗装混合物を含んでいる。硫酸カルシウム半水化物は混合物の主成分としてラテックスポリマー母材の中に分散している。ポリマー母材は実質的には無水であり、さらに母材全体に分散した硬化遅延剤を含んでいる。類似の硫酸カルシウム半水化物とラテックスポリマーの混合は、また、1つの品物に形成することも可能である。硬化遅延剤は、また、本発明の双方の実施例の中に存在する。殺菌剤、保水材、沈殿防止剤、ひび割れ防止剤、及び変形調節剤は、ポリマー母材への選択的添加物である。
【0020】
石こう、セメント、および、それらの混合物を含む、しかしそれに限定されない、どんな建築パネルも本発明の実施例で使用可能である。ある実施例では、パネルは二水石こう、例えば、ユナイテッド ステイツ ジプサム会社(シカゴ、イリノイ)のシートロック(商標登録)商標ジプサムパネルのようなもので作られている。パネルはコンベヤーに紙面が敷かれた連続の高速プロセスで製造される。硫酸カルシウム半水化物或いは、焼石こうのスラリー、水及び添加物を紙面の上に注ぎ、サンドウィッチを作るために第2の紙面を上に乗せる。ジプサム石こうスラリーはサンドウィッチの幅に広がり一定の厚さに成形される、そしてそのまま固く硬化する。スラリーが約50%水和した時、板(ボード)は適正な長さに切断され、仕上げ乾燥のためにキルン(炉)に移動される。本発明の少なくともいくつかの実施例においてはユナイテッド ステイツ ジプサム会社(シカゴ、イリノイ)のインペリアル(商標登録)ジプサムパネルが使用される。
【0021】
硫酸カルシウム半水化物はどのような(結晶)型でもパネルを作るために用いることができる。アルファ型は圧力下で石こうを焼成することにより作ることができ、ベータ型よりも高価になる。大気圧で焼成される石こうはベータ型である。ベータ型の焼石こうはアルファ型よりも針状或いは板状の結晶形態をしている。アルファ型は針状形態が小さいためスラリー状態で分散する時に流れやすく、同じ流動性を得るためにベータ型よりも少ない水の量でよい。
【0022】
デュロック(登録商標)商標セメントパネルのようなセメントパネルはセメントのスラリー、水及び添加剤をスクリム(紗布)或いはメッシュ(網目)仕上げ材に注ぐことによって製造される。完全に硬化する前にパネルはサイズに切断され乾燥過程を加速するために炉に移される。セメントパネルは地下室、浴室或いはどこか水が存在しやすい所に便利に使われる。セメントと焼石こうの混合物で作られたパネルの使用もまた検討される。
【0023】
下地面は、壁や天井用の支持を形成する植込みボルト(スタッド)のフレームワーク(骨組み)に建築パネルを取り付けることにより作られる。パネルとパネルの間の結合部を実際上できるだけ小さくするように隣接するパネルは互いに境を接するようにする。パネルは実際の壁や天井の大きさや形状に合わせて切断され、何らかの周知の方法により取り付けられる。一般的に、パネルは釘やねじにより取り付けられる。パネルを取り付ける時には、釘やねじはその頭が下地の表面から見えないように充分に深くパネルにねじ込まれなければならない。各々の釘やねじは表面にへこみが残るが、混合物により埋められる。
【0024】
下地に塗られる混合物はラテックスエマルジョンポリマーを結合剤として含有している。ラテックスエマルジョンポリマーは混合物の連続層を形成し、湿った状態でもまた塗料被膜が乾燥した後でも、その連続層を保持している。添加されるラテックスエマルジョンポリマーの正確な型と量はそれが塗布される対象面によって決まる。濃度の高いラテックスエマルジョンポリマーは孔の少ない(多孔質でない)下地に適している。
【0025】
ラテックスエマルジョンポリマーを使用する混合物のいくつかの実施例では、アクリル酸ビニル類、酢酸ビニル類、塩化ビニル類、エチレン類及び置換基を有するエチレン類を含むモノマーから作られている。ポリウレタンとポリエステルエマルジョンもまた役に立つ。ポリ酢酸ビニルは、石こうパネルに塗布される混合物に適しているが、他の下地に対しても好ましく適用することができるであろう。好ましくは、ラテックスエマルジョンポリマーは分子量が10,000ダルトン以上である。ラテックスエマルジョンの量は、混合組成物の重量の約5%から約20%の範囲にある。好適なラテックスエマルジョン類の例は、ハルテック社(オンタリオ、カナダ)から入手可能なAC 1265ポリ酢酸ビニルホモポリマーエマルジョン、HP 19−176ポリ酢酸ビニル共重合体エマルジョン及びHP 41−830酢酸ビニルエマルジョン、並びに、マレンゴ(イリノイ)のエンジニヤード ポリマー ソリューションズから入手可能なVF−812メタクリル酸ラテックスポリマーを含む。ラテックスエマルジョンの計算量は、エマルジョンに対して固体成分が40〜60%である。もし異なる固体成分を持っているラテックスが選ばれた時には、ラテックスエマルジョンの合計量はラテックス固体成分と等価な重量を得るように変更されなければならない。
【0026】
混合物のもう一つの成分は硫酸カルシウム半水化物である。建築パネルに関して先に述べたように、この混合物においてはどのような型の硫酸カルシウム半水化物でも有用である。混合物が石こうベースの建築パネルに使われる時には、硫酸カルシウム半水化物は建築パネルに使用されるのと同じ型が任意に使用されるか、或いは異なる型が使用される。混合物の多くの実施例ではベータ型の焼成された焼硫酸カルシウム半水化物を使用する。硫酸カルシウム半水化物は、混合物の重量の約40%から約80%の量が存在することが望ましい。
【0027】
硬化遅延剤が混合物に添加され、硫酸カルシウム半水化物の水和作用と硬化を抑制する。半水化物形状のものを利用することは、従来の石こうの感触を保持することになる。硬化遅延剤を添加することにより、石こうは作業現場で水を加えたり、或いは追加の化学薬品を添加する必要のない調合済み配合物として用意される。調合済みの硬化型結合化合物で用いられているような、製品の在庫寿命のために、硫酸カルシウム半水化物の硬化を遅らせることが分かっている硬化遅延剤であれば、どんな硬化遅延剤でも使用することができる。
【0028】
混合物の在庫寿命を延ばすことに加えて硬化遅延剤は、硫酸カルシウム半水化物が二水化物の構造に水和する前に、塗膜を乾燥させる。一度混合物が建築パネルに塗布されると、水は乾燥が進むに従って蒸発し始める。長期保存作用の硬化遅延剤がなければ、半水化物は水和し水を吸収し、二水和化物結晶を形成する。しかし、塗膜が存在すると二水和物の成形が阻止される。塗膜が建築パネル上で乾燥すると硫酸カルシウム半水化物の結晶は連続しているポリマー母材全体に分散する。塗膜の乾燥後、硫酸カルシウムは半水化物の形で塗膜の中に留まる。
【0029】
本発明の少なくとも幾つかの実施例では低分子量ポリマーとポリポスホン酸化合物の二つの構成要素の組み合わせを二重成分硬化遅延剤として使用している。二重成分硬化遅延剤の両方の成分はカルシウムイオンと硫酸カルシウム結晶格子に親和力を持っている。この二つの添加物は共同して硫酸カルシウムスラリーの硬化メカニズムを無期限に非活性化するように作用する。このことにより包装された石こう製品の在庫寿命は長くなり、しかも現場で水や硬化促進剤のような追加の成分を添加することなく直ぐに使用できる。
【0030】
低分子量ポリマーは、好ましくは、分子量が約2,000から約6,000ダルトンの分子量を持つ。低分子量ポリマーは、いくつかの実施例で、アクリル酸ビニル類、酢酸ビニル類、塩化ビニル類、エチレン、スチレン類、置換されたれたスチレン類、置換されたエチレン類とそれらの混合物を含むモノマーから作られている。ポリアミドを主軸とするポリマー或いはカルボン酸エステル官能基を持つポリマーもまた有用である。低分子量ポリマーの量は組成物の重さを基準に約8%まで、或いは組成重量の約0.05%から約2%の重量である。アルコクエスト408とアルコクエスト747(アルコケミカル、チャタヌガ、テネシー)はそれぞれ分子量約3,000のポリアクリル酸エステルと変性ポリカルボン酸エステルポリマーの液体溶液である。これらのポリマーはこの混合物での使用に特に適している。
【0031】
小さい分子は望ましい硬化遅延剤の一部を成しており、いくつかの小さい分子から硬化遅延剤はできている。役に立つ低分子は、これに限定されないが、有用なポリホスホン酸化合物を含むものであり、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、アミノトリ(メチレン・ホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)三ナトリウム、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ピロリン酸四カリウム及びそれらの混合物を含む。ホスホン酸のエステル化合物もまた有用である。他のポリホスホン化合物の例は米国特許第6,409,824号及び第5,788,857号に公開されている(参考用に本資料に添付)。混合物の中で使われている小さい分子の量は約8%まで、或いは全組成物重量の約0.1%から約2%の重量である。好適な低分子の例の1つは、ピロリン酸四カリウム(アスタリス、カテレット、ニュージャージー)である。
【0032】
混合物が作業現場ですぐに使えるように、水が製造過程で加えられる。加える水の正確な量は要求する混合物の粘性に拠り、通常は90〜180ブラベンダー単位である。混合物を従来の石こう、塗料或いは結合化合物の粘度を持つように用意することも可能である。水は全組成物重量の少なくとも20%の量になるように加えられることが望ましい。(濃度の)薄い処方では、製剤中の成分との望まない化学反応や相互作用或いは、腐敗につながる微生物汚染の機会を小さくするために、重量比で60%まで加えることができる。
【0033】
建築パネルは室内用、或いは室外用に塗装される。1つ或いはさらに多くの添加剤が混合物に特別な物理的特性を与えるために、建築パネルに塗布する前に加えられる。好ましい添加物の例は、これらに限られず、特別な粘性、曲げ強度、酷使抵抗性、耐水性、難燃性、湿潤剤、流動性改良、ひび割れ防止、分散剤、防黴性、乾燥時間、表面硬度、といったもの、及びそれらの組み合わせを含む。石こうに使われるどんな添加剤も本発明の混合物に用いることは、ラテックスポリマーエマルジョンや本発明の硬化遅延剤と悪い反応を起こさない限り適切である。
【0034】
任意に、在庫期間中の組成物のカビやバクテリア成長を抑えるために殺菌剤を添加することもできる。もし、組成物が混合された後すぐに使用されるのであれば、殺菌剤は不要である。しかしながら、殺菌剤の添加は適切な在庫寿命を維持するためには必要である。殺菌剤の量は、ある程度、選ばれた殺菌剤自体に拠る。仮に存在するならば、ある殺菌剤は混合物の構成成分の重量を基準に0.08%からおよそ約0.5重量%の量で存在する。ある実施例においては、殺菌剤は約0.08%から約0.3%の量で存在する。この技術分野でよく知られた殺黴剤および防黴剤の例と殺菌剤の例は、これに限らないが、トロイサン(商標登録)174殺菌剤(トロイ ケミカル カンパニー、フロラムパーク、ニュージャージー)と、ファンジトール(トレードマーク)158防黴剤(フリッツ ケミカル カンパニー、ヒューストン、テキサス)等がある。
【0035】
保湿剤や保水剤が水分保持のために、任意に添加される。望ましい保湿剤はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び、メトキシポリプロピレングリコールを含んでいる。2つ或いは3つ全てのグリコールの組み合わせも有効であることが知られている。保湿剤は調合済み配合物の重量比で約1〜10%の量で使用される。保湿剤は製品の在庫寿命期間中の水の分離と緩やかな減少を少なくする。製品が塗布されている間、ポリアルキレングリコールも水分を保持し、開放時間を長くする。石こうやセメントスラリー或いは建築パネルと一緒に用いられるどんな水分保持剤も、この混合物に使うことができる。混合物のある実施例は、水分保持剤として澱粉やポリアクリアミドを含んでいる。
【0036】
エチレングリコールも任意に、凍結融解安定性のために添加される。この目的で使用される場合は、エチレングリコールは水分保持剤の存在とは無関係に、組成物の重量比で約1%から約5%の量が使用される。
ひび割れ防止剤は混合組成物の重量比で約0.1から約7%の量が添加される。混合物に、仕上げ塗装において表面の亀裂の数を減らす働きをする、例えばスターポル(商標登録)スターチス(エイ イー スラリー マニファクチャリング社、デカター、イリノイ)のような澱粉を添加する。
【0037】
もう1つの任意の塗装要素は沈殿防止剤である。混合組成物の全重量に基づいて、約0.05%から約1%の重量の添加物が使用される。沈殿防止剤は固体の堆積作用と同じように液体の緩やかな減少を少なくする。沈殿防止添加物の例として、澱粉、加工澱粉、変性スメクタイト粘土のような変性粘土、変性含水ナトリウムリチウムマグネシウムケイ酸塩のようなケイ酸塩、及びそれらの混合物を含む。
【0038】
増粘剤は任意に調合済み石こう配合物に添加され、調合済み配合物の重量比で約0.05%から約10%の量を占める。増粘剤は混合物組成の流動性を改良し作業性を良くし、材料により大きな沈降抵抗性を与える。増粘剤の例は、ベルモコル(商標登録)製品(アクゾノヴェル、ステナングサンド、スウェーデン)のような変性セルロース誘導体、マイクロスパージョン(トレードマーク:マイクロパウダ社、タリータウン、ニューヨーク)のような微小粒子ポリマー懸濁液、及びビナパス(商標登録)製品(ワッカーケミカル、ミュンヘン、ドイツ)のようなポリマー微細小粉末等を含んでいる。
【0039】
幾つかの実施例を用意して成分を組み合わせる方法を説明する。個々の化合物は特定の順序で組み込まれる必要はない。
本発明の少なくとも1つの実施例は、最初に二重成分硬化遅延剤を水に溶かすことから始まる。ポリマー(0.05%〜2.0%)を含む低分子量ポリアクリル酸エステル、ポリホスホン酸化合物(0.1〜2.0%)及び、殺菌剤/防黴剤パッケージ(0.08〜0.5%)が水(20〜60%)に加えられ、およそ60rpm(1分間60回転)でかき回され十分に溶解する。硫酸カルシウム半水化物(40〜80%)は前もってゼラチン状にされた加工澱粉(0.1〜7.0%)と乾燥混合物を生成するために5分間乾式混合される。任意に、乾燥ワックス/PTFE微細小粉末(0.5〜10%)、変性スメクタイト粘土或いはフィロ層をなしたケイ酸塩粘土(0.05〜1%)もまた、乾燥混合物に含めることができる。その乾燥混合物はゆっくりと水を含む要素成分に60rpm或いはもう少しゆっくりと混合される。最後に、ポリプロピレングリコール(1〜10%)とラテックスエマルジョン(5〜20%)が60rpmでかき混ぜながら加えられる。任意に、ワックス/PTFE分散剤(0.5〜10%)がこの段階で同様に加えられる。混合は、通常15〜20分で、かたまりが視覚的に認識できなくなると完了する。
【0040】
他の実施例は在庫寿命を長くするために殺菌剤を含んでいる。ポリマー(0.05〜2.0%)を含んでいる低分子量ポリアクリル酸エステル、ポリホスホン酸様化合物(0.1〜2.0%)及び、殺菌剤/防黴剤パッケージ(0.08〜0.5%)が水(20〜60%)に加えられ、およそ60rpmでかき回され十分に溶解する。ポリプロピレングリコール(1〜10%)とラテックスエマルジョン(5〜20%)が60rpmで1〜2分間かき混ぜながら加えられる。任意に、ワックス/PTFE分散剤(0.5〜10%)をこの段階で同様に加えることができる。最後に、硫酸カルシウム半水化物(40〜80%)は前もってゼラチン状にされた加工澱粉(0.1〜7.0%)と乾式混合され、そして任意に、乾燥ワックス/PTFE微細小粉末(0.5〜10%)或いは、変性スメクタイト粘土或いはフィロ層をなしたケイ酸塩粘土(0.05〜1%)のどの組み合わせとも、5分間乾式混合される。その乾燥混合物はゆっくりと水を含む要素成分に60rpm或いはもう少しゆっくりと混合される。混合は、通常15〜20分で、かたまりが視覚的に認識できなくなると完了する。
【0041】
さらに、本発明の別の実施例は、ポリホスホン酸様化合物(0.1〜2.0%)と殺菌剤/防黴剤パッケージ(0.08〜0.5%)とが一緒に水(20〜60%)に加えられおよそ60rpmでかき回され十分に溶解される。硫酸カルシウム半水化物(40〜80%)は前もってゼラチン状にされた加工澱粉(0.1〜7.0%)、ポリマー(0.05%〜2.0%)を含む低分子量ポリアクリル酸エステルそして任意に、乾燥ワックス/PTFE微細小粉末(0.5〜10%)或いは、変性スメクタイト粘土或いはフィロ層をなしたケイ酸塩粘土(0.05〜1%)のどの組み合わせとも、5分間乾式混合される。その乾燥混合物はゆっくりと水を含む要素成分に60rpm或いはもう少しゆっくりと混合される。最後に、ポリプロピレングリコール(1〜10%)とラテックス乳剤エマルジョン(5〜20%)が60rpmでかき混ぜながら加えられる。任意に、ワックス/PTFE分散剤(0.5〜10%)をこの段階で同様に加えることもできる。混合は、通常15〜20分で、かたまりが視覚的に認識できなくなると完了する。ここで、要求される粘度を得るために混合物に追加の水を加えることができる。
【実施例1】
【0042】
塗装混合物は表1の成分を使って用意された。アルコクエスト(商標登録)408(ナショナルスターチ アンド ケミカル社、ブリッジウォーター、ニュージャージー)、ポリマー溶液、ピロリン酸四カリウム及び、殺菌剤/防黴剤パッケージが水に加えられ60rpmでかき回しながら十分に溶解された。プロピレングリコールとラテックスエマルジョンが追加混合され、60rpmで1〜2分間かき回された。最後に硫酸カルシウム半水化物が5分間スターポル(商標登録)136澱粉と乾式混合された。乾燥混合した分量は60rpm或いはそれよりも低速で混合されながら、ゆっくりと水を含む成分に加えられた。混合作業は80rpmで続けられ、かたまりが視覚的に認識できなくなった時に完了した。
【0043】
【表1】

【0044】
材料は熟練の職人によって、こて板とこて及び従来の2回塗り石こう化粧板の塗装技術を用いて、垂直に取り付けられたシートロック(商標登録)商標の石こうパネルの下地に塗られた。この実施例は厚くてより粘着性の高い塗装感触を持っており、水塗りが必要であった。いったん材料が硬化すると表面は固く、滑らかで高い耐摩耗性を持っていた。
【実施例2】
【0045】
塗装混合物は表2の成分を使って用意された。アルコクエスト747の45%溶液、ピロリン酸四カリウム、殺菌剤/防黴剤パッケージ、及びおよびフォームブラスト(商標登録)301s消泡剤(ルブリザル社、ウィックリフ、オハイオ)が水に加えられ約60rpmでかき回され完全に溶かされた。プロピレングリコールと、HP41−830が次に加えられ60rpmで1〜2分間撹拌された。最後に、硫酸カルシウム半水化物がスターポル136(2.0%)とラポナイト合成スメクタイト粘土(ロックウッド アディティブ社、イギリス)と5分間乾式混合された。その乾燥混合された分量はゆっくりと水を含む要素成分に60rpm或いはもうすこしゆっくりと混合された。その混合は80rpmでかたまりが視覚的に認識できなくなるまで続けられた。
【0046】
【表2】

【0047】
材料は熟練した職人によりこて板とこて及び従来の2回塗り石こう化粧板の塗装技術を用いて、垂直に取り付けられたシートロック(商標登録)商標の石こうパネルの下地に塗られた。この材料は保管の間に水が滲み出ることに抵抗したが、材料の感触が変化した。いったん材料が硬化すると、表面は滑らかで、石こうと同じ摩耗特性を持っていた。
【実施例3】
【0048】
調合済み石こう混合組成物配合物は表1の成分からできていた。アルコクエスト(商標登録)408ポリアクリル酸エステルポリマー及び、ピロリン酸四カリウム(TKPP)化合物が水に加えられ60rpmでかき回しながら十分に溶解された。硫酸カルシウム半水化物が予めゼラチン化されたスターポル(商標登録)136澱粉と乾燥混合物を形成するために、5分間乾式混合された。乾燥混合物は60rpm或いはそれよりも低速で混合しながら、ゆっくりと水を含む成分に加えられた。プロピレングリコールと、HP41−803ビニルアセテートラテックス乳剤エマルジョンが組成に加えられ60rpmで撹拌された。その混合は80rpmでかたまりが視覚認識できなくなるまで続けられた。
【0049】
【表3】

【0050】
材料は熟練した職人によりこて板とこて及び従来の2回塗り石こう化粧板の塗装技術を用いて、垂直に取り付けられたシートロック(商標登録)商標の石こうパネルの下地に塗られた。材料は結合化合物に比べてずっと粘りが少なく、より扱いやすく、塗り継ぎむらが残らず、こてで滑らかに仕上がり、研磨作業は不要であった。これらの特徴によって、表面塗膜塗装に使われる結合化合物よりもさらに優れた材料になっている。材料はこてで混合される粉末石こうと全く同じ感触ではないが、塗装特性と扱いやすさの丁度良い妥協になっていた。材料はいったん硬化すると、表面は滑らかで亀裂がなく石こうと同じ程度の摩耗特性を持っていた。
【実施例4】
【0051】
アルコクエスト747(1.6%)の45%溶液、ピロリン酸四カリウム(0.4%)、殺菌剤/防かび剤パッケージ(0.1%)、及びフォームブラスト(商標登録)301s消泡剤(0.6%)が水(20.2%)に加えられ約60rpmでかき回され完全に溶かされた。プロピレングリコール(3.1%)及び、HP19−176(12.8%)が次に、マイクロスパージョン(商標登録)250−50微粒ワックス(ティーエイチヒルソン社、ウィートン、イリノイ)(3.6%)と共に加えられ60rpmで1〜2分間撹拌された。最後に硫酸カルシウム半水化物(56.6%)が5分間スターポル(商標登録)136澱粉(1.0%)と乾式混合された。乾燥混合された分量が60rpm或いはそれよりも低速で混合しながら、ゆっくりと水を含む成分に加えられた。混合作業は80rpmで続けられ、かたまりが視覚的に認識できなくなった時に完了した。
【0052】
非水和石こう組成物及びその方法の特定の実施例を示し記載したが、当該技術を熟知する人により、以下の請求項に説明したようにより広範の見地から本発明から逸脱せずに変更と改良がなされるであろうと察する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築パネルと、
ラテックスポリマー母材中に硫酸カルシウム半水化物を含む塗料とからなり、
前記母材は、実質的に水を含まず、
前記母材に配合された硬化遅延剤を更に含むことを特徴とする塗装されたパネル。
【請求項2】
前記硬化遅延剤が、
分子量が6,000ダルトン以下の低分子量のポリマー、
ポリホスホン酸化合物またはそのエステル化合物およびそれらの混合物の、
グループの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の塗装されたパネル。
【請求項3】
沈殿防止剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の塗装されたパネル。
【請求項4】
前記沈殿防止剤が変性粘土、ケイ酸塩とおよびそれらの混合物のうちの1つであることを特徴とする請求項3に記載の塗装されたパネル。
【請求項5】
前記ラテックスポリマーがアクリル酸ビニル類、酢酸ビニル類、塩化ビニル類、エチレンおよび置換されたエチレン類を含むモノマーから作られることを特徴とする請求項1に記載の塗装されたパネル。
【請求項6】
組成物の総重量に対し約0.1%から約7%の重量の非エマルジョンポリマーのひび割れ防止剤を更に含んでいることを特徴とする請求項1に記載の塗装されたパネル。
【請求項7】
前記ポリホスホン酸化合物が組成物の総重量の約0.1%から約2.0%の重量で存在することを特徴とする請求項2に記載の塗装されたパネル。
【請求項8】
前記低分子量のポリマーが組成物の総重量の約0.05%から約2.0%の重量で存在することを特徴とする請求項1に記載の塗装されたパネル。
【請求項9】
ラテックスポリマー、
硫酸カルシウム半水化物、及び
二つの構成要素の硬化遅延剤とから成り、
前記ポリマー母材は実質的に水を含まず、
前記硬化遅延剤は分子量が6,000ダルトン以下の低分子量のポリマー、ポリホスホン酸化合物とそれらの混合物のグループの少なくとも1つのであることを特徴とする硫酸カルシウム半水化物を含む塗料混合物。
【請求項10】
有機体の水保持剤を更に含んでいることを特徴とする請求項9に記載の物。

【公表番号】特表2011−518040(P2011−518040A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506327(P2011−506327)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/038406
【国際公開番号】WO2009/131790
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】