説明

非水系リチウム型蓄電素子

【課題】高エネルギー密度、高出力かつ耐久性に優れた非水系リチウム型蓄電素子を提供すること。
【解決手段】正極活物質層と正極集電体とを有する正極、負極活物質層と負極集電体とを有する負極、及びセパレータから成る電極体、並びに非水系溶媒にリチウム塩電解質が溶解している非水系電解液を有する非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質層は、表面官能基量が0.4mmol/g以下である活性炭を含有し、そして該非水系溶媒は、含フッ素エーテルを5体積%以上30体積%未満で含有することを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー密度、高出力及び耐久性を兼ね備えた非水系リチウム型蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全及び省資源を目指したエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム、深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、及び電気自動車用の蓄電システムなどが注目を集めている。
【0003】
これらの蓄電システムに要求される性能は、電気自動車を例にとると、高エネルギー密度(航続距離)、高出力(大電力に対する瞬発力)、及び高耐久性(寿命)が主に挙げられる。
【0004】
高出力の蓄電素子としては、電極活物質として活性炭を用いた電気二重層キャパシタが開発されており、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)が高く、2〜5kW/L程度の出力密度を有する。しかしながら、そのエネルギー密度は、2〜10Wh/L程度に過ぎない。
【0005】
一方、高エネルギー密度の蓄電素子としては、リチウムイオン二次電池があり、100〜500Wh/L程度のエネルギー密度を有する。しかしながら、その出力密度は1kW/L以下に過ぎず、耐久性も、電気二重層キャパシタに比べて劣る。
【0006】
上記の様に既存の蓄電素子には一長一短があるため、高エネルギー密度、高出力及び高耐久性を兼ね備えた新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補としてリチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
【0007】
キャパシタに蓄積可能なエネルギーは1/2・C・V(ここで、Cは静電容量であり、そしてVは耐電圧である)で表される。リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であり、正極においては電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン二次電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって充放電を行う蓄電素子である。
【0008】
リチウムイオンキャパシタの例としては、電気二重層キャパシタと同様に、正極活物質に活性炭、負極活物質に活性炭を用い、該負極にリチウムイオンを予めドープして負極電位を下げることで、耐電圧を高め、エネルギー密度を向上させた蓄電素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、正極活物質に活性炭、負極活物質として活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔性材料を用いることで、高エネルギー密度と高出力を兼ね備えた非水系型蓄電素子も提案されている(特許文献2参照)。さらに、正極活物質に特定の細孔分布を有する活物質を用いることで、蓄電素子のエネルギー密度を維持したまま、出力特性を大きくできることも提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
一方で、蓄電素子の耐電圧を高める試みとして、電解液自体の耐酸化性を高める検討も種々行われている。その例として、非水系電解液の溶媒として、フッ素化エーテルを用いることで、電解液の酸化分解に対する安定性を高め、蓄電素子の耐久性を高める提案がされている(例えば、特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−124081号公報
【特許文献2】特開2003−346801号公報
【特許文献3】国際公開2009−063966号パンフレット
【特許文献4】特開平8−37024号公報
【特許文献5】特開平11−26015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献3に開示されている蓄電素子は、高エネルギー密度と高出力とを兼ね備えているが、さらにエネルギー密度と出力密度と耐久性を改良することが望ましい。
以上に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高エネルギー密度かつ高出力を発現し、さらに耐久性に優れた非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決すべく、非水系リチウム型蓄電素子の検討を進めた結果、正極活物質として表面官能基が特定の量以下である活性炭を用い、かつ非水系溶媒中に含フッ素エーテルを特定の量含有させることで、非水系リチウム型蓄電素子の耐電圧を高めながら低抵抗を維持することが可能であること、すなわち、高エネルギー密度かつ高出力を維持したまま、更なる高耐久性を兼ね備えた非水系リチウム型蓄電素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1] 正極活物質層と正極集電体とを有する正極、負極活物質層と負極集電体とを有する負極、及びセパレータから成る電極体、並びに非水系溶媒にリチウム塩電解質が溶解している非水系電解液を有する非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質層は、表面官能基量が0.4mmol/g以下である活性炭を含有し、そして該非水系溶媒は、含フッ素エーテルを5体積%以上30体積%未満で含有することを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。
【0014】
[2] 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、かつ0.5≦V2≦1.0を満たす、[1]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0015】
[3] 前記含フッ素エーテルは、式(1):R−O−R{式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2以上6以下のフッ素化アルキル基を表す。}で表される非環状含フッ素エーテルである、[1]又は[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0016】
[4] 前記非水系溶媒は、含フッ素エーテル及び環状炭酸エステルと、鎖状炭酸エステル及び/又はプロピオン酸エステルとの混合溶媒である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0017】
[5] 前記環状炭酸エステルとして炭酸プロピレン及び/又は炭酸エチレンを含有する、[4]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0018】
[6] 前記鎖状炭酸エステルとして、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルから成る群から選択される少なくとも一種を含有する、[4]又は[5]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0019】
[7] 前記プロピオン酸エステルとして、プロピオン酸メチル及び/又はプロピオン酸エチルを含有する、[4]〜[6]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0020】
[8] 前記リチウム塩電解質はLiPFである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、高エネルギー密度かつ高出力を発現し、さらに耐久性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態では、非水系リチウム型蓄電素子は、正極活物質層と正極集電体とを有する正極、負極活物質層と負極集電体とを有する負極、及びセパレータから成る電極体、並びに非水系溶媒にリチウム塩電解質が溶解している非水系電解液を有する。
【0023】
本実施形態では、正極活物質層は、正極活物質として表面官能基量が0.4mmol/g以下である活性炭を含有する層である。したがって、正極に用いられる正極活物質としては、活性炭が挙げられる。
【0024】
上記の正極活物質として用いられる活性炭としては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8かつ0.5≦V2≦1.0を満たす活性炭が好ましい。
【0025】
非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする点で、メソ孔量V1が0.3cc/gより大きい値であることが好ましく、一方、非水系リチウム型蓄電素子の容量の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。より好ましくは、メソ孔量V1は0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
【0026】
また、マイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましく、一方、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加し、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。より好ましくは、マイクロ孔量V2は0.6cc/g以上1.0cc/g以下である。
【0027】
メソ孔量V1とマイクロ孔量V2は、0.3≦V1/V2≦1.2の範囲にあることが好ましい。出力特性の低下を抑えるという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましく、一方、容量の低下を抑えるという点から、V1/V2が1.2以下であることが好ましい。
【0028】
また、上記の正極活物質として用いられる活性炭において平均細孔径は、出力を大きくする点から、20Å以上であることが好ましく、また、容量を大きくする点から、25Å以下であることが好ましい。本発明でいうところの平均細孔径とは、液体窒素温度における各相対圧力下での窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる重量当たりの全細孔容積をBET比表面積で除して求めたものを意味する。
【0029】
さらに、上記の正極活物質として使用される活性炭は、そのBET比表面積が1,500m/g以上、2,500m/g以下であることが好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、エネルギー密度が高く、一方、BET比表面積が2,500m/g以下の場合には、バインダーを多量に入れずとも十分な電極の強度を保つことができ、体積当りの性能が維持できる。
【0030】
上記の正極活物質に活性炭を用いる場合、活性炭の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻などの植物系原料、石炭及び石油ピッチ、コークスなどの化石系原料、フェノール樹脂などの樹脂系原料など、又はそれらの炭化物が挙げられる。
【0031】
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガスなどの不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(450〜600℃がより好ましい)程度で30分〜10時間程度焼成する方法が挙げられる。
【0032】
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素などの賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及び水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を用いる賦活法が挙げられる。例えば、ガス賦活法の場合、賦活ガスを0.5〜3.0kg/hの割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活する方法が挙げられる。
【0033】
また、上記炭化物の賦活処理に先立ち、上記炭化物を予め1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素質材料を水蒸気、二酸化炭素、及び酸素などの賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活すればよい。
【0034】
さらに、上記賦活処理後に、活性炭の表面官能基量の調整を行ってもよい。処理方法としては、不活性雰囲気下などで加熱する気相処理が挙げられる。例えば、窒素ガス雰囲気下で、上記賦活処理後の活性炭を4〜24時間かけて400〜1,200℃で熱処理する方法が挙げられる。
【0035】
本実施形態では、上記活性炭の表面官能基量は、0.4mmol/g以下であり、0.01mmol/g以上、0.4mmol/g以下であることが好ましく、0.3mmol/g以下であることがより好ましく、0.2mmol/g以下であることがさらに好ましい。表面官能基量が0.4mmol/g以下であれば、十分な耐久性を得ることができる。本発明において、表面官能基は、H.P.Boehmらによる方法(H.P.Boehm,Advan.Catalysis,16,174(1966))により求めた値である。すなわち、試料に各種塩基を加えて反応させ、反応後の塩基濃度を酸で逆滴定することで表面官能基量を定量する方法である。また、活性炭が表面官能基を有するならば、イオンが活性炭の細孔内だけでなく、その表面官能基にも吸着するため、蓄電素子の電気容量が増加する。
【0036】
本実施形態では、負極活物質層は負極活物質から成る層である。本発明の非水系リチウム型蓄電素子の負極に用いられる負極活物質としては、炭素質材料、リチウムチタン複合酸化物、導電性高分子など、リチウムイオンを吸蔵放出する材料が挙げられるが、好ましくは、難黒鉛性カーボン、易黒鉛性カーボン、特許文献2に開示されているような複合多孔性材料のような炭素質材料を挙げることができる。
【0037】
また、負極活物質は、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔性材料であることが好ましく、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とする時、0.010≦Vm1≦0.250、0.001≦Vm2≦0.200、かつ1.5≦Vm1/Vm2≦20.0である炭素質材料が好ましく、0.010≦Vm1≦0.200、0.001≦Vm2≦0.100、かつ1.5≦Vm1/Vm2≦10.0である炭素質材料が更に好ましい。複合多孔性材料の細孔分布は、上記のような関係を有することにより、高エネルギー密度、高出力特性及び高耐久性を兼ね備えたセル特性が得られる。
【0038】
上記の複合多孔性材料において、水素原子/炭素原子の原子数比(以下、H/Cともいう。)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。H/Cは、CHN元素分析によって求めることができる。すなわち、燃焼させた時に発生する水と二酸化炭素とのモル比を定量することで計算によって求めることができる。H/Cは、0.05以上である場合には炭素化が適度に進行して、十分な容量(エネルギー密度)が得られる。一方、0.35以下である場合には活性炭表面に被着している炭素質材料の多環芳香族系共役構造が十分に発達しているので、十分なエネルギー密度及び充放電効率が得られる。
【0039】
上記の複合多孔性材料は、例えば、特許文献2に開示されている次の方法で製造することが可能である。即ち、上記複合多孔性材料は、活性炭と炭素質材料前駆体とを共存させた状態で熱処理することにより得ることができる。
【0040】
ここで、上記の複合多孔性材料の原料に用いる活性炭(以下、「原料活性炭」とも言う。)は、得られる複合多孔性材料が所望の特性を発揮する限り、活性炭とする前の原材料などに特に制限はなく、石油系、石炭系、植物系、高分子系などの各種の原材料から得られた市販品を使用することができ、平均粒子径1〜500μm程度(より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜15μm)の活性炭粉末を用いることが好ましい。なお、この製造方法は一般の表面コーティングとは異なり、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた後にも凝集の発生が少なく、被着前後の平均粒子径にはほとんど変化がないことを特徴とする。原料活性炭の細孔分布としては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。より好ましくは、0.050≦V1≦0.350、0.005≦V2≦0.800、0.25≦V1/V2≦15.0である。原料活性炭の細孔分布は、そのような関係を有することにより、上記の複合多孔性材料の所望の細孔構造に制御することができる。
【0041】
また、炭素質材料前駆体としては、熱処理することにより活性炭に炭素質材料を被着させることができ、かつ液体又は溶剤に溶解可能である有機質材料が挙げられ、例えばピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、又はフェノール樹脂などの合成樹脂などを挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価なピッチを用いることが製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油系ピッチとしては、原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイルなど)、サーマルクラッカーからのボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタールなどが例示される。
【0042】
上記ピッチを用いる場合、複合多孔性材料は、活性炭の表面でピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させることにより、活性炭に炭素質材料を被着させることにより得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度は得られる複合多孔性材料の特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気などにより適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、更に好ましくは450℃〜1000℃であり、特に500〜800℃程度のピーク温度であることが好ましい。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は30分間から10時間であればよく、好ましくは1時間から7時間、更に好ましくは2時間から5時間である。500〜800℃程度のピーク温度で2時間から5時間熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
【0043】
上記の複合多孔性材料の製造方法は、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を活性炭に被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体を予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
【0044】
本実施形態では、マイクロ孔量及びメソ孔量は以下のような方法により求めた値である。すなわち、試料を500℃で一昼夜真空乾燥を行い、窒素を吸着質とし吸脱着の等温線の測定を行なう。このときの脱着側の等温線を用いて、マイクロ孔量はMP法により、メソ孔量はBJH法により算出した。MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail,Brunauer,Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968))。また、BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner,Halendaらにより提唱されたものである(E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Amer.Chem.Soc.,73,373(1951))。
【0045】
上記の正極活物質又は負極活物質は、既知のリチウムイオン電池、又は電気二重層キャパシタ等の電極製造技術により、電極(正極又は負極)に成型することが可能である。例えば、正極活物質又は負極活物質、導電性フィラー、及び結着剤を溶媒に分散させ、スラリー状にし、活物質層を集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレスすることにより電極が得られる。また、溶媒を使用せずに、正極活物質又は負極活物質、導電性フィラー、及び結着剤を乾式で混合してプレス成型した後、導電性接着剤等を用いて集電体に貼り付けることも可能である。
【0046】
導電性フィラーとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維が例示される。導電性フィラーの添加量は、例えば、活物質に対して0〜30質量%が好ましい。導電性フィラーの添加量は、0質量%を超えると高出力密度の観点から好ましく、一方で、30質量以下であれば電極層に占める活物質量の割合が下がっても、体積当たりの出力密度は増加するので好ましい。
【0047】
また、結着剤としては、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、スチレン−ブタジエン共重合体などを用いることができる。結着剤の添加量は、活物質の質量に対して3〜20質量%の範囲が好ましい。結着剤の添加量は、20質量%以下であれば、バインダーが活物質の表面を過度に覆うことはなく、イオンの出入りを妨げず、高出力密度が得られるため好ましく、一方で、3質量%以上であれば、電極層を集電体上に十分に固着することができるため好ましい。
【0048】
集電体は、蓄電素子で電気を取り出すための端子である。その材質としては、蓄電素子にした際、溶出又は反応などの劣化が起こらない金属箔であれば特に制限はなく、例えば、銅、鉄、ステンレス、アルミニウムなどが挙げられる。負極集電体としては銅箔、そして正極集電体としてはアルミニウム箔を使用することが好ましい。また、集電体の形状は、貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エキスパンドメタル又はパンチングメタル等の貫通孔を有する金属箔でもよい。その厚みは、1〜100μmが好ましい。厚みは、1μm以上であれば、電極体の形状及び強度を十分に保持できるため好ましく、一方で、100μm以下であれば、蓄電素子として最適な重量及び体積を維持することができるので、蓄電素子の重量及び体積当たりの性能が良好になるため好ましい。
【0049】
非水系リチウム型蓄電素子の負極にはリチウムイオンを予めドープしておくことができる。リチウムイオンをドープしておくことにより、非水系リチウム型蓄電素子の初期充放電効率、容量、出力特性及び耐久性を制御することが可能である。
【0050】
上記の負極にリチウムイオンを予めドープする方法は、既知の方法を用いることができる。例えば、負極活物質を電極に成型した後、該負極電極を作用極、金属リチウムを対極に使用し、非水系電解液を組み合わせた電気化学セルを作製し、電気化学的にリチウムイオンをドープする方法が挙げられる。また、該負極電極に金属リチウム箔を圧着し、非水系電解液に入れることで負極にリチウムイオンをドープすることも可能である。
【0051】
本発明の非水系リチウム型蓄電素子の非水系電解液としては、非水系溶媒にリチウム塩電解質を溶解した非水系電解液を用いる。より詳細には、該非水系溶媒として、含フッ素エーテルを含有する混合溶媒を用いることが重要である。
【0052】
酸化分解電位の高い含フッ素エーテルを上記の非水系電解液に含有させることで、正極/電解液の界面での溶媒の酸化分解反応を抑えることができ、非水系リチウム型蓄電素子が使用可能である電圧の上限(耐電圧V)を高めることが可能となる。
【0053】
上記の含フッ素エーテルは、式(1):R−O−R{式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2以上6以下(より好ましくは4以下)のフッ素化アルキル基を表す。}で表される非環状含フッ素エーテルであることが好ましい。
【0054】
及びRのフッ素化アルキル基は、フッ素原子、炭素原子、水素原子、及び塩素原子などのハロゲン原子などで構成される。式(1)の化合物中の(フッ素原子数)/(フッ素原子数+水素原子数)の比率は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.8以下であることがより好ましく、0.5以上0.7以下であることが更に好ましい。この比率は、0.2以上であれば酸化分解に対する安定性が高くなり、0.9以下であれば、非環状フッ素化エーテル以外に含有される非水系溶媒との相溶性が得られる。
【0055】
及びRは、直鎖又は分岐しているフッ素化アルキル基であるが、非環状含フッ素エーテル以外に含有される非水系溶媒との相溶性の観点から、末端の少なくとも一方に水素原子を含んでいることが好ましい。式(1)の化合物の具体例としては、HCFCFOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFH、HCFCFCHOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFHCFなどが挙げられ、中でも、HCFCFOCHCFCFHが好ましい。
【0056】
上記の非水系電解液に含有される含フッ素エーテルは、一種だけでなく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
本発明において、上記の非水系溶媒の配合量、特に、含フッ素エーテルの含有量が重要である。すなわち、含フッ素エーテルの含有量は、非水系溶媒全体に対して、5体積%以上30体積%未満であり、10体積%上25体積%以下であることが好ましい。含フッ素エーテルの含有量が5体積%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、耐電圧が向上し、耐久性の高い蓄電素子が得られる。一方、含フッ素エーテルの含有量が30体積%未満であれば、リチウム塩の溶解度は十分に保たれ、かつ非水系電解液の電気伝導度は十分に高く、高エネルギー密度かつ高出力を維持しながら、耐久性の高い蓄電素子が得られる。
【0058】
上記の非水系電解液には、含フッ素エーテルを含有する非水系溶媒が使用されるが、含フッ素エーテル以外に含有される非水系溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、プロピオン酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)などのラクトン類、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、環状炭酸エステルを含有し、鎖状炭酸エステルとプロピオン酸エステルの少なくとも一種を含有する混合溶媒が好ましい。したがって、前記非水系溶媒は、含フッ素エーテルと環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び/又はプロピオン酸エステルとの混合溶媒であることが好ましく、含フッ素エーテル及び環状炭酸エステルと、鎖状炭酸エステル及び/又はプロピオン酸エステルとの混合溶媒であることがさらに好ましい。
【0059】
環状炭酸エステルの含有量は、非水系溶媒全体に対して、5体積%以上40体積%以下であることが好ましく、10体積%以上35体積%以下であることがより好ましい。環状炭酸エステルの含有量は、5体積%以上であれば、負極のSEI被膜が形成され、高温での溶媒分解を抑制できるため好ましく、一方、40体積%以下であれば、十分な出力特性を得られるため好ましい。
【0060】
環状炭酸エステルとしては、炭酸エチレン及び/又は炭酸プロピレンが好ましい。鎖状炭酸エステルとしては、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、及び炭酸エチルメチルから選ばれた少なくとも一種が好ましい。プロピオン酸エステルとしては、プロピオン酸エチル及び/又はプロピオン酸メチルが好ましい。本実施形態では、非水系溶媒がこれらの化合物を含有することで、低温での出力特性に優れた非水系リチウム型蓄電素子を得られるため好ましい。また、必要に応じて、ビニルカーボネートなどの微量成分を非水系溶媒に添加してもよい。
【0061】
上記の非水系電解液に用いられるリチウム塩電解質としては、LiBF、LiPF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SOH)又はこれらの混合塩を挙げることができる。中でも、電解液の電気伝導度向上の観点から、LiPFを用いることが好ましい。非水系電解液中の電解質濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。非水系電解液中の電解質濃度は、0.5mol/L以上であれば、陰イオンの供給が不足せず、蓄電素子の容量が高くなるため好ましく、一方、2.0mol/L以下であれば、未溶解の塩が該電解液中に析出したり、該電解液の粘度が高くなり過ぎたりすることによって、逆に伝導度が低下して出力特性が低下する恐れが少ないため好ましい。
【0062】
上記の非水系電解液において、出力特性の高い非水系リチウム型蓄電素子を得るためには、電解液の25℃における電気伝導度は、7mS/cm以上であることが好ましく、7.5mS/cm以上であることがより好ましい。
【0063】
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、正極と負極とをセパレータを介して積層又は捲廻積層された電極体を、金属缶又はラミネートフィルムから形成された外装体に挿入した後、非水系電解液を注入、密閉することで得ることができる。ラミネートフィルムから形成された外装体を使用する場合は、正極に接続した正極端子と負極に接続した負極端子とを外装体の外に引き出した状態で、例えばヒートシールにより密閉することができる。
【0064】
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜又は電気二重層コンデンサで用いられるセルロース製の不織紙などを用いることができる。
【0065】
セパレータの厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。厚みが10μm以上であれば、内部のマイクロショートによる自己放電を抑制することができ、一方、厚みが50μm以下であれば、蓄電素子のエネルギー密度及び出力特性に優れる。
【0066】
上記の外装体に使用される金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。また、外装体に使用されるラミネートフィルムは、金属箔と樹脂フィルムを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン及びポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン又は酸変成ポリオレフィンが好適に使用できる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例、比較例を示し、本発明の特徴とするところを更に明確にするが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
破砕されたヤシ殻炭化品を小型炭化炉において窒素雰囲気中、500℃で炭化した。その後、窒素の代わりに1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で炉内へ投入し、900℃まで8時間をかけて昇温した後に取り出し、窒素雰囲気下で冷却して賦活化された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行い、正極材料となる活性炭を得た。
【0069】
本活性炭をユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59、平均細孔径が22.9Åであった。また、表面官能基量は0.2mmol/gであった。この活性炭を正極活物質に用い、活性炭83.4質量部、アセチレンブラック8.3質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)8.3質量部とNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、厚さ60μmの正極を得た。
【0070】
市販のヤシ殻活性炭(BET比表面積1,780m/g)150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持し、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出した。
【0071】
得られた複合多孔性材料はBET比表面積が262m/g、メソ孔量(Vm1)が0.18cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.08cc/g、Vm1/Vm2=2.25であった。
【0072】
本複合多孔性材料を83.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.3質量部とNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ14μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、厚さ60μmの負極を得た。
【0073】
上記で得られた正極及び負極を各々2cmになるように切り取り、活物質面を厚み30μmの不織布製セパレータを挟んで対向させ、ポリプロピレンとアルミを使用したラミネートシートから成る外装体に封入し、非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。この時、負極として材料重量当たり750mAh/gに相当するリチウムイオンを、リチウム金属を用いて電気化学的にプリドーピングしたものを使用し、電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比28:57:15で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用した。本電解液の電気伝導度は25℃で8.8mS/cmであった。
【0074】
作製した蓄電素子をアスカ電子製の充放電装置(ACD−01)を用いて、1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.42mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.29mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は69%であった。
【0075】
更に、耐久性試験として、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。試験開始時(0hとする)と、100h経過後における抵抗倍率を測定した。ここでいう抵抗倍率とは、(100h経過後における0.1Hzでの交流抵抗値)/(0hでの0.1Hzでの交流抵抗値)で表される数値とする。100h経過後、抵抗倍率は2.5倍であった。
【0076】
<実施例2>
電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比27:53:20で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で8.2mS/cmであった。
【0077】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.43mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.28mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は65%であった。
【0078】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は2.2倍であった。
【0079】
<実施例3>
電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比25:50:25で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で7.8mS/cmであった。
【0080】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.43mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.27mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は63%であった。
【0081】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は2.0倍であった。
【0082】
<実施例4>
電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとCFCFHCFOCHCFCFHとを体積比27:53:20で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で8.1mS/cmであった。
【0083】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.42mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.26mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は62%であった。
【0084】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は2.4倍であった。
【0085】
<実施例5>
市販の石炭ピッチ系活性炭をユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2294m/g、メソ孔量(V1)が0.74cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.67cc/g、V1/V2=1.11、平均細孔径が26.5Åであった。また、表面官能基量は0.1mmol/gであった。
【0086】
本活性炭を正極活物質として用い、電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比30:60:10で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で9.4mS/cmであった。
【0087】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.49mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.33mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は67%であった。
【0088】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は2.4倍であった。
【0089】
<比較例1>
電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとを体積比33:67で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で10.4mS/cmであった。
【0090】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.41mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.30mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は73%であった。
【0091】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は3.1倍であった。
【0092】
<比較例2>
電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比20:40:40で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で6.3mS/cmであった。
【0093】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.44mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.23mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は52%であった。
【0094】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は1.7倍であった。
【0095】
<比較例3>
市販の石炭ピッチ系活性炭をユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が1817m/g、メソ孔量(V1)が0.26cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.71cc/g、V1/V2=0.37、平均細孔径が20.2Åであった。また、表面官能基量は0.6mmol/gであった。
【0096】
本活性炭を正極活物質として用い、電解液として炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとHCFCFOCHCFCFHとを体積比27:53:20で混合した溶媒に1mol/Lの濃度にLiPFを溶解した溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で非水系リチウム型蓄電素子を作製した。本電解液の電気伝導度は25℃で8.2mS/cmであった。
【0097】
作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1mAの定電流で2.0Vまで放電した。放電容量は、0.53mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.0Vまで放電したところ、0.29mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比は55%であった。
【0098】
更に、作製した蓄電素子を、60℃、4.2V印加においてフロート充電試験を行った。100h経過後、抵抗倍率は2.9倍であった。
【0099】
以上の結果を以下の表1にまとめて示す。なお、表1におけるECは炭酸エチレン、MECは炭酸エチルメチル、FE1はHCFCFOCHCFCFH、FE2はCFCFHCFOCHCFCFHを示す。
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、自動車において、内燃機関又は燃料電池、モーター、及び蓄電素子を組み合わせたハイブリット駆動システムの分野、さらには瞬間電力ピークのアシスト用途などで好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層と正極集電体とを有する正極、負極活物質層と負極集電体とを有する負極、及びセパレータから成る電極体、並びに非水系溶媒にリチウム塩電解質が溶解している非水系電解液を有する非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質層は、表面官能基量が0.4mmol/g以下である活性炭を含有し、そして該非水系溶媒は、含フッ素エーテルを5体積%以上30体積%未満で含有することを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項2】
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、かつ0.5≦V2≦1.0を満たす、請求項1に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項3】
前記含フッ素エーテルは、式(1):R−O−R{式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2以上6以下のフッ素化アルキル基を表す。}で表される非環状含フッ素エーテルである、請求項1又は2に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項4】
前記非水系溶媒は、含フッ素エーテル及び環状炭酸エステルと、鎖状炭酸エステル及び/又はプロピオン酸エステルとの混合溶媒である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項5】
前記環状炭酸エステルとして炭酸プロピレン及び/又は炭酸エチレンを含有する、請求項4に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項6】
前記鎖状炭酸エステルとして、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルから成る群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項4又は5に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項7】
前記プロピオン酸エステルとして、プロピオン酸メチル及び/又はプロピオン酸エチルを含有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項8】
前記リチウム塩電解質はLiPFである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。

【公開番号】特開2013−65765(P2013−65765A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204452(P2011−204452)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】