説明

非水系電池

【課題】カルシウムイオンをキャリアとする電池において、電圧をより高める。
【解決手段】本発明の非水系電池10は、炭素材を含む正極13と、金属カルシウム又はカルシウム合金などからなる負極12と、正極13と負極12との間に介在しカルシウムイオンを伝導し、ハロゲン間化合物を含む非水系のイオン伝導媒体18と、を備えている。この非水系電池10は、ハロゲン間化合物が、ヨウ化トリクロリド、ヨウ化モノクロリド、ヨウ化トリブロミド、ヨウ化モノブロミドなどのうち1以上であるものとしてもよい。イオン伝導媒体18は、カルシウムパークロレート及び/又はカルシウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドを支持塩として溶解したプロピレンカーボネート及びリン酸トリメチルのうちいずれかを含むものとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電池に関し、より詳しくは、カルシウムイオンをキャリアとする非水系電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯末端などの携帯型情報機器の市場が急速に拡大しつつある。また、環境問題やエネルギー危機の観点からハイブリッド車や電気自動車への期待が高まっている。こうした背景を踏まえ、高エネルギーの蓄電デバイスが求められている。高エネルギーを実現するための一つの方法として、1価の金属イオンをキャリアとする電池ではなく、2価または3価の金属イオンをキャリアとする電池が注目されている。2価または3価の金属イオンをキャリアとする電池では、金属原子1個に対して2個または3個の電子が動くことになるから、エネルギー容量の高い電池が期待される。
【0003】
例えば、キャリアに二価のカルシウムイオンを用いる電池として、正極にカルシウムイオンの挿入,脱離の可能な活物質Fe2(MO43(M=S,W,Mo)が提案されている(例えば特許文献1参照)。この電池では、2.3V程度の放電が可能であることが示されている。また、負極にカルシウムを用いる非水電解液空気電池が提案されている(例えば特許文献2参照)。この電池では、非水電解液溶媒にアセトニトリルを用いることで、2.6V程度の放電ができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−270244号公報
【特許文献2】特開2009−129736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1,2のカルシウムイオンをキャリアとする電池では、金属原子1個に対して2個の電子が動くことになるから、エネルギー容量の高い電池が期待される。しかしながら、作動電圧が理論値よりも低く、高い作動電圧を有するに至っていなかった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、カルシウムイオンをキャリアとする電池において、電圧をより高めることができる非水系電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、非水系カルシウム電池において、2種のハロゲンを含む化合物をイオン伝導媒体に添加すると、電圧をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の非水系電池は、正極と、カルシウムイオンを放出する負極と、前記正極と前記負極との間に介在してカルシウムイオンを伝導しハロゲン間化合物を含むイオン伝導媒体と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非水系電池は、電圧をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、イオン伝導媒体に溶存するハロゲン間化合物とカルシウムイオンとが何らかの相互作用をすることにより、正極反応が生じる電位が高まるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の非水系電池10の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】ビーカーセル20の構成の概略を示す説明図である。
【図3】実施例1の放電曲線である。
【図4】実施例2,3の放電曲線である。
【図5】比較例1,2の放電曲線である。
【図6】実施例4,5の放電曲線である。
【図7】比較例3,4の放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非水系電池は、正極と、カルシウムイオンを放出する負極と、正極と負極との間に介在してカルシウムイオンを伝導しハロゲン間化合物を含むイオン伝導媒体と、を備えている。この非水系電池は、カルシウムイオンをキャリアとする。
【0012】
本発明の非水系電池において、正極は、ハロゲン間化合物を正極活物質とするものとしてもよい。この正極活物質は、イオン伝導媒体に溶解したハロゲン間化合物によって供給される。この正極は、例えば、導電材と結着材とを混合して、正極合材としたものを、集電体の表面に形成し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮してもよい。正極合材の混合方法としては、適当な溶剤を加えて導電材及び結着材とともに湿式混合してもよい。また、乳鉢などを使って乾式混合してもよい。溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドンなど、周知の溶剤を用いることができる。導電材は、電池の性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、活性炭、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。導電材は、例えば、正極合材全体に対して60質量%以上90質量%以下としてもよい。結着材は、正極合材を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。結着材は、例えば、正極合材全体に対して10質量%以上30質量%以下としてもよい。集電体としては、白金、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0013】
本発明の非水系電池の負極は、例えば、カルシウムイオンを放出する材料を負極活物質としてもよい。負極活物質は、例えば金属カルシウムやカルシウム合金のほか、カルシウムイオンを吸蔵放出する物質などが挙げられる。カルシウム合金としては、例えば、アルミニウムやシリコン、スズ、マグネシウム、インジウム、ニッケル、リチウムとの合金が挙げられる。負極の集電体には、白金、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状などについては、正極と同様としてもよい。
【0014】
本発明の非水系電池において、イオン伝導媒体は、正極と負極との間に介在しカルシウムイオン及びハロゲン間化合物を含むものとすればよい。このイオン伝導媒体は、例えば、ハロゲン間化合物と支持塩とを溶解した非水系電解液としてもよい。ハロゲン間化合物は、例えば、ヨウ化トリクロリド(ICl3)、ヨウ化モノクロリド(ICl)、ヨウ化トリブロミド(IBr3)、ヨウ化モノブロミド(IBr)、などのうち1以上としてもよい。このうち、ヨウ化トリクロリド及びヨウ化モノクロリドが、高い電圧を維持できるため好ましく、なかでも、ヨウ化トリクロリドが好ましい。このハロゲン間化合物は、イオン伝導媒体により多く含まれることが好ましく、溶媒(非水系電解液)の飽和濃度まで溶解させることがより好ましい。
【0015】
溶媒(非水系電解液)としては、カルシウムイオンの支持塩とハロゲン間化合物とが溶解できるものであればよく、例えば、エチレンカーボネート(EC),プロピレンカーボネート(PC),ブチレンカーボネート,ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC),ジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、ガンマブチロラクトン,ガンマバレロラクトンなどの環状エステルカーボネート、テトラヒドロフラン,2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメトキシエタン,エチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテルなどのほか、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリルなどの公知の有機溶媒を用いることができる。また、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル及びリン酸トリフェニルなどの有機リン酸化合物、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。このうち、環状カーボネートであるプロピレンカーボネート(PC)、有機リン酸化合物であるリン酸トリメチルがより好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいが、2以上を混合して用いてもよい。また、イオン伝導媒体は、非水系電解液を公知のゲル化剤でゲル化したものとしてもよい。例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子、アミノ酸誘導体、ソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。
【0016】
支持塩は、特に限定されるものではないが、例えば、パークロレート塩(Ca(ClO42),ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(Ca[N(CF3SO222),ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド塩(Ca[N(C25SO222),トリフルオロメタンスルホン酸塩(Ca(CF3SO32),ノナフルオロブタンスルホン酸塩(Ca(C49SO32)、などのうち1以上とすることができる。このうち、Ca(ClO42などの無機塩、及びCa[N(CF3SO222などの有機塩などが好ましい。このような支持塩を含むイオン伝導媒体は、カルシウムイオンを含むこととなる。支持塩の濃度としては、0.1mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましく、0.8mol/L以上1.2mol/L以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明の非水系電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、非水系電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
【0018】
本発明の非水系電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明の非水系電池10の一例を模式的に示す説明図である。この非水系電池10は、金属カルシウムからなる負極12と炭素材からなる正極13とを、ハロゲン間化合物19を含むイオン伝導媒体18を介して対向して配置したものである。このうち、正極13は、導電材15,バインダ16を混合したあと白金メッシュなどの集電体17にプレス成形して作製されている。また、イオン伝導媒体18は、ハロゲン間化合物19として、ヨウ化トリクロリド、ヨウ化モノクロリド、ヨウ化トリブロミド、ヨウ化モノブロミドなどのうち1以上を含んでいる。
【0019】
以上詳述した本発明の非水系電池は、カルシウムイオンを伝導し、ハロゲン間化合物を含むイオン伝導媒体を備えており、開放電圧や作動電圧をより高めることができる。また、本発明の非水系電池は、ハロゲン間化合物が電気的な相互作用を発現するなどして、初期の作動電圧を高めるだけでなく、放電時に高電位を維持することができると考えられる。
【0020】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0021】
以下には、本発明の非水系電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。
【0022】
[実施例1]
正極は次のようにして作製した。導電材としてのケッチェンブラック(三菱化学製ECP−6000)を100mg、結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業製)を20mgとり、乾式で乳鉢を用いて練り合わせてシート状の正極合材とした。その正極合材(重さ3mg、厚さ150μm、面積0.36cm2)をPtメッシュ(ニラコ製)に圧着して正極を得た。負極には塊状の金属カルシウム(本城金属製)を用いた。イオン伝導媒体としては、0.5mol/Lの過塩素酸カルシウムのプロピレンカーボネート(PC)溶液(キシダ化学)12mLに、添加化合物としてハロゲン間化合物であるヨウ化トリクロリド(ICl3,アルドリッチ製)を640mg溶解させたものを用いた。この正極、負極、イオン伝導媒体を用いて、次のように評価セルを作製した。図2は、ビーカーセル20の構成の概略を示す説明図である。図2に示すように、正極22及び負極24をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でガラス製のビーカー21にセットし、イオン伝導媒体26を注入した。次に、ビーカー21の開放部にプラスチック製の蓋28を取り付け、評価セルとしてのビーカーセル20(F型セル)とした。なお、ビーカーセル20内の空間にはアルゴンが充填されている。また、ビーカーセル20の容量は約30mlである。このようにして得られた評価セルを実施例1とした。
【0023】
(電池性能評価)
得られた実施例1のセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で0.02mAの電流を流して放電させた。図3は、実施例1の放電曲線である。実施例1では、開放電圧が3.53Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が3.38Vであった。なお、後述する実施例及び比較例も実施例1と同様に放電特性を測定した。
【0024】
[実施例2]
イオン伝導媒体として、過塩素酸カルシウム(キシダ化学、電池グレード)のリン酸トリメチル(TMP)溶液(東京化成)を用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを実施例2とした。図4は、実施例2,3の放電曲線である。実施例2では、開放電圧が3.69Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が3.22Vであった。
【0025】
[実施例3]
イオン伝導媒体として、カルシウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(キシダ化学)のリン酸トリメチル溶液(東京化成)を用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを実施例3とした。実施例3では、開放電圧が3.90Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が3.20Vであった。実施例1〜3では、開放電圧が3.5Vを超え、カルシウムを伝導する電池において、イオン伝導媒体にハロゲン間化合物を含むものとすれば、3.0V以上で放電できることがわかった。
【0026】
[比較例1]
カーボン正極合材と金属カルシウムを備えた非水電解液空気電池を北斗電工の3極式セルを使って作製した。カーボン正極合材は、触媒としてのラジカルポリマー(化合物式1)を50質量%、導電材としてのケッチェンブラックを35質量%、結着材としてのポリテトラフルオロエチレンを15質量%とり、乳鉢で乾式混合して得た。イオン伝導媒体には、0.5mol/Lの過塩素酸カルシウムのアセトニトリル溶液を用いた。この比較例1の評価セルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極に酸素を供給し、正極と負極の間で0.01mAの電流を流して放電させた。図5は、比較例1,2の放電曲線である。比較例1では、開放電圧は2.25Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が2.10Vであった。ここで、化合物式1のラジカルポリマーは以下のように合成した。Chem. Phys. Lett. Vol.359, p351(2002)に従い、2、2‘−アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、2,2、6,6―テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーの重合を行い、続いて、3−クロロパーベンゾイックアシッドで酸化することにより合成した。このラジカルポリマーは数平均分子量9.2万、重量平均分子量22.9万であった。
【0027】
【化1】

【0028】
[比較例2]
実施例1のカーボン正極を用い、イオン伝導媒体としてプロピレンカーボネート/アセトニトリル溶液(1:1)を用いた以外は比較例1と同様の工程で得られたセルを比較例2とした。比較例2では、開放電圧が2.03Vであり、放電量0.7mAh時点での作動電圧が1.54Vであった。
【0029】
[実施例4]
ヨウ化トリクロリドの代わりにヨウ化モノクロリド(ICl)345mgを用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを実施例4とした。図6は、実施例4,5の放電曲線である。実施例4では、開放電圧が3.09Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が2.77Vであった。
った。
【0030】
[実施例5]
ヨウ化トリクロリドの代わりにヨウ化モノブロミド(IBr)506mgを用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを実施例5とした。実施例5では、開放電圧が3.08Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が3.00Vであった。
【0031】
[比較例3]
ヨウ化トリクロリドの代わりにヨウ素(I2)を用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを比較例3とした。図7は、比較例3,4の放電曲線である。比較例3では、開放電圧が2.32Vであり、放電量2.0mAh時点での作動電圧が2.09Vであった。
【0032】
[比較例4]
実施例1においてヨウ化トリクロリドの代わりに、リン酸トリメチルの臭素(Br2)溶液(1mol/L,アルドリッチ製)2mLを用いた以外は実施例1と同様の工程で得られたセルを比較例4とした。比較例4では、開放電圧が2.82Vであり、放電量1.0mAh時点での作動電圧が2.34Vであった。
【0033】
(結果と考察)
実施例及び比較例の溶媒、支持塩、化合物(正極活物質,ハロゲン間化合物など)、開放電圧(V)、所定放電量時の作動電圧(V)などの測定結果をまとめて表1に示す。表1に示すように、負極が金属カルシウムであり、イオン伝導媒体にハロゲン間化合物を含む実施例1〜5では、開放電圧及び作動電圧が向上することがわかった。現状ではこの効果がどのように発現するか明らかではないが、溶存するハロゲン間化合物が、電気的な相互作用を発現するなどして、初期の作動電圧を高めるだけでなく、放電時に高電位を維持することができるものと推察された。
【0034】
【表1】

【符号の説明】
【0035】
10 非水系電池、12 負極、13 正極、15 導電材、16 バインダ、17 集電体、18 イオン伝導媒体、19 ハロゲン間化合物、20 ビーカーセル、21 ビーカー、22 正極、24 負極、26 イオン伝導媒体、28 蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
カルシウムイオンを放出する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在してカルシウムイオンを伝導しハロゲン間化合物を含むイオン伝導媒体と、
を備えた非水系電池。
【請求項2】
前記イオン伝導媒体は、前記ハロゲン間化合物として、ヨウ化トリクロリド、ヨウ化モノクロリド、ヨウ化トリブロミド及びヨウ化モノブロミドのうちいずれか1以上を含む、請求項1に記載の非水系電池。
【請求項3】
前記イオン伝導媒体は、プロピレンカーボネート及びリン酸トリメチルのうちいずれかを含む、請求項1又は2に記載の非水系電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109832(P2013−109832A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251370(P2011−251370)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】