説明

非水系電解液及び非水系電解液電池

【課題】高容量で、保存特性及びサイクル特性に優れた電池を提供可能な非水系電解液および、それを用いて作製された非水系電解液電池を提供する。
【解決手段】非水系電解液に、(1)不飽和結合を有する環状カーボネート類(2)総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物(3)ジエチルカーボネート又は(4)環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物、を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する。或いは(5)非水系電解液が、充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される電解液であって、2
以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、及びそれを用いた非水系電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコンなどのいわゆる民生用の電源から自動車用などの駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池などの非水系電解液電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、電池特性の改善が要望されている。
非水系電解液電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。非水溶媒の主成分としては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステルなどが用いられている。
【0003】
また、こうした非水系電解液電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良するために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
特許文献1には、ジエチルカーボネートによるリチウムとの反応に起因する過充電特性の悪化や、高温環境下に放置した場合の劣化を抑制するために、エチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートを用いることが提案されている。
【0004】
特許文献2には、非水溶媒として、非対称鎖状カーボネートと二重結合を有する環状カーボネートの混合物を用いると、二重結合を有する環状カーボネートが負極と優先的に反応して負極表面に良質の被膜を形成し、これにより非対称鎖状カーボネートに起因する負極表面上での不導体被膜の形成が抑制されるので、保存特性とサイクル特性が向上することが提案されている。
【0005】
特許文献3には、電解液中に電池の最大動作電圧以上の電池電圧で重合する添加剤を混合することによって電池の内部抵抗を高くして電池を保護することが提案されており、特許文献4には、電解液中に電池の最大動作電圧以上の電池電圧で重合することによって気体及び圧力を発生させる添加剤を混合することにより、過充電保護のために設けた内部電気切断装置を確実に動作させることが提案され、それらの添加剤としてビフェニル、チオフェン、フラン等の芳香族化合物が開示されている。
【0006】
特許文献5には、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素基を含むアルキレンカーボネートを含有する電解液を用いることにより、高容量でサイクル特性が優れたリチウム二次電池が提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−14607号公報
【特許文献2】特開平11−185806号公報
【特許文献3】特開平9−106835号公報
【特許文献4】特開平9−171840号公報
【特許文献5】特開2004−319317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の電池に対する高性能化への要求は、ますます高くなっており、高容量、高温保存特性、サイクル特性を高い次元で達成することが求められている。
高容量化する方法として、限られた電池体積の中にできるだけ多くの活物質を詰めることが検討されており、電極の活物質層を加圧して高密度化したり、電池内部の活物質以外の占める体積を極力少なくする設計が一般的となっている。しかし、電極の活物質層を加圧して高密度化したり、電解液量を少なくすることにより、活物質を均一に使用することができなくなり、不均一な反応により一部リチウムが析出したり、活物質の劣化が促進されたりして、十分な特性が得られないという問題が発生しやすく、特許文献1〜5に記載されている電解液を用いた非水系電解液二次電池では、サイクル特性と高温保存特性とを両立するという点で、未だ満足しうるものではなかった。
また、エネルギー密度を高める目的から、4.2Vを超える高い電圧まで充電して、電池の動作電圧を高める試みが行われている。しかしながら充電電圧が高くなればなるほど、電池特性の劣化が顕著になる問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、特定の構造を有する化合物を、特定の電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨を以下に示す。
(1) 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
(2) 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
(3) 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水溶媒がジエチルカーボネートを含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
(4) 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
(5) 不飽和結合を有する環状カーボネート類が、ビニレンカーボネート化合物、ビニルエチレンカーボネート化合物、及びメチレンエチレンカーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(1)記載の非水系電解
液。
(6) 不飽和結合を有する環状カーボネート類が、ビニレンカーボネートおよび/またはビニルエチレンカーボネートであることを特徴とする上記(1)または(5)記載の非水系電解液。
(7) 非水系電解液中における不飽和結合を有する環状カーボネートの割合が、0.001重量%以上、8重量%以下であることを特徴とする上記(1)、(5)または(6)記載の非水系電解液。
(8) 芳香族化合物の総炭素数が、10以上18以下であることを特徴とする上記(2)記載の非水系電解液。
(9) 総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物が、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、及びジベンゾフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(2)または(8)記載の非水系電解液。
(10) 非水系電解液中における総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物の割合が、0.001重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする上記(2)、(8)または(9)記載の非水系電解液。
【0012】
(11) 全非水溶媒中に占めるジエチルカーボネートの割合が、10容量%以上、90容量%以下であることを特徴とする上記(3)記載の非水系電解液。
(12) 環状スルホン酸エステル化合物が、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、及び1,4−ブテンスルトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(4)記載の非水系電解液。(13) ジスルホン酸エステル化合物が、エタンジオールジスルホネート類、1,2−プロパンジオールジスルホネート類、1,3−プロパンジオールジスルホネート類、1,2−ブタンジオールジスルホネート類、1,3−ブタンジオールジスルホネート類、及び1,4−ブタンジオールジスルホネート類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(4)記載の非水系電解液。
(14) ニトリル化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、及びフマロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(4)記載の非水系電解液。
(15) 一般式(1)中、R〜Rの炭素数が、2以上、8以下であることを特徴とする上記(4)記載の非水系電解液。
(16) 一般式(1)中、nが0,1または2であることを特徴とする上記(4)または(15)記載の非水系電解液。
(17) 非水系電解液中の、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物の含有割合が、合計で、0.001重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする上記(4)または(12)〜(16)の何れか一項に記載の非水系電解液。
(18) 2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物が、2以上のフッ素原子を有するフッ素化エチレンカーボネートであることを特徴とする上記(1)〜(17)の何れか一項に記載の非水系電解液。
(19) 2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物が、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、及び4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする上記(1)〜(18)の何れか一項に記載の非水系電解液。
(20) 非水系電解液に占める、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートの割合が、0.001〜10重量%であることを特徴とする上記(1)〜(19)の何れか一項に記載の非水系電解液。
【0013】
(21)非水系電解液に占める、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートの割合が、0.01〜4重量%であることを特徴とする(1)〜(20)の何れか一項に記載の非水系電解液。
(22) 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される電解液であって、2以上
のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
(23) 非水系電解液が、不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有することを特徴とする上記(22)記載の非水系電解液。
(24) 非水系電解液が、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有することを特徴とする上記(22)記載の非水系電解液。
(25) 非水系電解液が、ジエチルカーボネートを含有することを特徴とする上記(22)記載の非水系電解液。
(26) 非水系電解液が、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有することを特徴とする上記(22)記載の非水系電解液。
【0014】
【化2】

【0015】
(27) リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が上記(1)〜(26)の何れか一項に記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
(28) 負極が、炭素質材料、及び/またはリチウムを吸蔵および放出可能な金属化合物を含むことを特徴とする上記(27)に記載の非水系電解液二次電池。
(29) 正極が、リチウム遷移金属複合酸化物材料を含むことを特徴とする上記(27)に記載の非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高容量で、保存特性及びサイクル特性に優れた非水系電解液電池を提供することができ、非水系電解液電池の小型化、高性能化を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に特定はされない。
【0018】
<非水系電解液>
本発明の非水系電解液は、常用の非水系電解液と同じく、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含有するものであり、通常、これらを主成分とするものである。
(電解質)
電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、LiPF6及びLiBF4等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO22 、LiN(C25SO22、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23、LiPF4(CF32、Li
PF4(C252、LiPF4(CF3SO22、LiPF4(C25SO22、LiBF2(CF32、LiBF2(C252、LiBF2(CF3SO22、LiBF2(C25
22等の含フッ素有機リチウム塩及びリチウムビス(オキサレート)ボレート等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22
はLiN(C25SO22が電池性能向上の点から好ましく、特にLiPF6又はLiB
4が好ましい。
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPF6とLiBF4との併用であり、サイクル特性を向上させる効果がある。この場合には、両者の合計に占めるLiBF4の割
合は、好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。この下限を下回る場合には所望する効果が得づらい場合があり、上限を上回る場合は高温保存後の電池特性が低下する場合がある。
【0020】
また、他の一例は、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩との併用であり、この場合には、両者の合計に占める無機リチウム塩の割合は、70重量%以上、99重量%以下であることが望ましい。含フッ素有機リチウム塩としては、LiN(CF3SO22 、LiN(C25SO22、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドのいずれかであるのが好ましい。この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。
【0021】
また、非水溶媒がγ−ブチロラクトンを55容量%以上含むものである場合には、リチウム塩としては、LiBF4又はLiBF4と他のものとの併用が好ましい。この場合LiBF4は、リチウム塩の40モル%以上を占めるのが好ましい。特に好ましくは、リチウ
ム塩に占めるLiBF4の割合が40モル%以上、95モル%以下であり、残りがLiP
6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22及びLiN(C25SO22よりなる群から選ばれるものからなる組合せである。
【0022】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.5モル/リットル以上、好ましくは0.6モル/リットル以上、より好ましくは0.7モル/リットル以上である。また、その上限は、通常3モル/リットル以下、好ましくは2モル/リットル以下、より好ましくは1.8モル/リットル以下、更に好ましくは1.5モル/リットル以下である。濃度が低すぎると、電解液の電気伝導度が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、電池性能が低下する場合がある。
【0023】
(非水溶媒)
非水溶媒も、従来から非水系電解液の溶媒として公知のものの中から適宜選択して用い
ることができる。例えば、不飽和結合をもたない環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、含燐有機溶媒等が挙げられる。
【0024】
炭素−炭素不飽和結合をもたない環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の炭素数2〜4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート類が挙げられ、これらの中では、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが電池特性向上の点から好ましく、特に、エチレンカーボネートが好ましい。
【0025】
鎖状カーボネート類としては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状アルキルカーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状アルキルカーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが電池特性向上(特に、高負荷放電特性)の点から好ましい。
【0026】
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
鎖状エーテル類としては、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
環状カルボン酸エステル類としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0027】
鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等が挙げられる。
含燐有機溶媒としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル等が挙げられる。
【0028】
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用するのが好ましい。例えば、アルキレンカーボネート類や環状カルボン酸エステル類等の高誘電率溶媒と、ジアルキルカーボネート類や鎖状カルボン酸エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水溶媒の好ましい組合せの一つは、アルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類を主体とする組合せである。なかでも、非水溶媒に占めるアルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類との合計が、70容量%以上、好ましくは80容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつアルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類との合計に対するアルキレンカーボネートの割合が5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下のものである。これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなるので好ましい。
【0029】
アルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類の好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネ
ートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0030】
これらのエチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの割合は、通常0.1容量%以上、好ましくは1容量%以上、より好ましくは2容量%以上、また上限は、通常20容量%以下、好ましくは8容量%以下、より好ましくは5容量%以下である。この濃度範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れるので好ましい。
【0031】
エチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせの中で、ジアルキルカーボネート類として非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状アルキルカーボネート類と非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状アルキルカーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、アルキルカーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
【0032】
また、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、通常10容量%以上、好ましくは20容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは30容量%以上であり、また上限は、通常90容量%以下、好ましくは80容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは、70容量%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上するので好ましい。
また、全非水溶媒中に占めるエチルメチルカーボネートの割合が、通常10容量%以上、好ましくは20容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは30容量%以上であり、また上限は、通常90容量%以下、好ましくは80容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは、70容量%以下となる範囲で含有させると、電池のサイクル特性と保存特性とのバランスが良好となるので好ましい。
また、上記アルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類を主体とする組合せにおいては、他の溶媒を混合してもよく、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、負荷特性を重視する場合には、環状カルボン酸エステル類を含有させない方が好ましい。
【0033】
好ましい非水溶媒の他の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた1種の有機溶媒、又は該群から選ばれた2以上の有機溶媒からなる混合溶媒を全体の60容量%以上を占めるものである。この混合溶媒を用いた非水系電解液は、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少なくなる。なかでも、非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの合計が、好ましくは80容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの容量比が5:95〜45:55であるもの、又は非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計が、好ましくは80容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比が30:70〜60:40であるものを用いると、一般にサイクル特性と高温保存特性等のバランスがよくなる。
なお、本明細書において、非水溶媒の容量は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
【0034】
(2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート)
本発明に係る非水系電解液は、上述の電解質と非水溶媒を含有するが、これに2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する。
2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートのフッ素原子の数としては、特に制限されないが、フッ素化エチレンカーボネートの場合は、下限としては通常2以上であり、上限としては通常4以下であり、3以下が好ましい。
フッ素化プロピレンカーボネートの場合は、下限としては通常2以上であり、上限としては、通常6以下であり、5以下が好ましい。特に、環構造を形成する炭素に2以上のフッ素原子が結合しているものが、サイクル特性および保存特性向上の点から好ましい。
【0035】
2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートの具体例としては、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素化エチレンカーボネートや、4,5−ジフルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素化プロピレンカーボネートが挙げられる。中でも2以上のフッ素原子を有するフッ素化エチレンカーボネートが、電池特性向上の点から好ましく、中でも、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが特に好ましい。
【0036】
2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。非水系電解液中の2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物の割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上、最も好ましくは0.25重量%である。これより低濃度では本発明の効果が発現しづらい場合がある。逆に濃度が高すぎると高温保存時に電池のフクレが増大する場合があるので、上限は、通常10重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。
【0037】
本発明の一つは、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする。
不飽和結合を有する環状カーボネート類としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、等のビニレンカーボネート化合物;ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物;4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物などが挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネートまたは4,5−ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性向上の点から好ましく、なかでもビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
2種類以上を併用する場合は、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用するのが好ましい。
非水系電解液中における不飽和結合を有する環状カーボネートの割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上である。分子内に不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量が少なすぎると、電池のサイクル特性を向上させるという効果を十分に発揮できえない場合がある。しかし、不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量が多すぎると、高温保存時にガス発生量が増大したり、低温での放電特性が低下する傾向にあるので、その上限は、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0039】
本発明に係る非水系電解液が、高温保存特性、サイクル特性を改善する理由は明らかではなく、また、本発明は下記作用原理に限定されるものではないが、次のように推察される。
まず、ビニレンカーボネート等の不飽和結合を有する環状カーボネート類は、初期の充電時に還元されて、負極表面にポリマー成分を含む安定な被膜を形成して、保存特性、サイクル特性を向上することができる。しかし、不飽和結合を有する環状カーボネートは充電状態の正極材と反応しやすく、特に高温雰囲気下では、正極材との反応が進行し、正極活物質の劣化が促進して、電池特性が低下したり、ガス発生が増大する問題があった。これに対し、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物を含有する場合、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物と不飽和結合を有する環状カーボネート類とが、還元反応により負極表面に複合皮膜を形成するが、その際、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物の還元生成物の一部が正極表面に移動して、正極表面に被膜を形成し、不飽和結合を有する環状カーボネートと正極との接触を防ぎ、不飽和結合を有する環状カーボネートと正極材との副反応を抑制することができると思われる。
【0040】
更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物は、2未満のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物に比べて、還元反応性が高いので、負極における皮膜形成能および、正極保護能力が高く、電池内部で生じる副反応を抑制することができる。
また、不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有しない場合は、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物の還元分解物を主体とする皮膜が負極表面に形成されるが、この皮膜に比べ、不飽和結合を有する環状カーボネートと、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物との複合皮膜がポリマー成分を多く含み、より安定性に優れ、負極材と他の電解液成分との副反応を抑制することができると思われる。
【0041】
このように不飽和結合を有する環状カーボネートと2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物との相互作用により、高温保存特性とサイクル特性の向上を達成することができる。
本発明の一つは、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする。
総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物の炭素数としては、下限としては通常7以上
、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、上限としては通常18以下である。
この下限を上回る場合過充電防止特性が良い。また、この上限を下回る場合電解液への溶解性が良い。
【0042】
総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物としては、ビフェニル、2−メチルビフェニル等のアルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−
シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
【0043】
これらのうち、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。
これらは2種類以上併用して用いてもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼンやt−アミルベンゼンとの組み合わせや、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれるものと、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれるものとを併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0044】
本発明に係る非水系電解液が、過充電時の安全性に優れ、高温保存特性、サイクル特性を改善する理由は明らかではなく、また、本発明は下記作用原理に限定されるものではないが、次のように推察される。
一般に、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物は、過充電時の安全性を向上させる効果を有するが、これらの化合物は、溶媒成分よりも正極および負極上で反応しやすいために、高温保存時においても電極の活性の高い部位で反応してしまい、これらの化合物が反応すると電池の内部抵抗が大きく上昇したり、ガス発生により、高温保存後の放電特性を著しく低下させる原因となっていた。2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する電解液を用いることにより、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート由来の還元反応生成物の被膜が、初期の充電時から負極表面に効率よく生成し、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合と負極との反応を抑制すると考えられる。更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物の還元生成物の一部が正極表面に移動して、正極表面に被膜を形成し、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物と正極との接触を防ぎ、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物と正極材との副反応を抑制することができると思われる。
【0045】
このように総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物と、負極および正極との副反応を抑制することにより、高温保存後の放電特性の著しい低下を抑制すると考えられる。
非水系電解液中における総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物の割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。この下限より低濃度では過充電時の安全性を向上する効果が発現しがたい場合がある。逆に濃度が高すぎると高温保存特性などの電池の特性が低下する場合がある。
【0046】
本発明の一つは、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水溶媒がジエチルカーボネートを含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする。
全非水溶媒中に占めるジエチルカーボネートの割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常10容量%以上、好ましくは20容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは30容量%以上であり、また上限は、通常90容量%以下、好ましくは80容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは、70容量%以下である。この範囲で含有させると、高温保存時の電池のフクレが抑制されるので好ましい。
【0047】
本発明に係る非水系電解液が、高温保存時の電池のフクレを抑制しながら、高温保存特性、サイクル特性を改善する理由は明らかではなく、また、本発明は下記作用原理に限定されるものではないが、次のように推察される。
ジエチルカーボネートは、ジメチルカーボネートや、エチルメチルカーボネートに比べて沸点が高く、また、分解してもメタンガスを発生しないので、高温保存時の電池のフクレ抑制の点では好ましい溶媒である。しかし、ジエチルカーボネートはジメチルカーボネートや、エチルメチルカーボネートに比べてリチウムと反応しやすい傾向があり、特に、高密度化によって、リチウムが析出しやすい電池では、析出したリチウムとの反応により、電池特性が低下する原因となっていた。2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する電解液を用いることにより、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート由来の還元反応生成物の被膜が、初期の充電時から負極表面に効率よく生成すると共に、これらの化合物の還元生成物の一部が正極表面に移動して、正極表面に被膜を形成して、他の電解液成分と負極および正極との副反応を抑制することにより、活物質が均一に使用され、リチウムの析出を抑制することができるためと考えられる。更に、リチウムが析出した場合においても、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートが、リチウム表面に皮膜を形成して、ジエチルカーボネートとの反応を抑制するためと考えられる。
【0048】
本発明の一つは、 電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする。
【0049】
【化3】

【0050】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
[環状スルホン酸エステル化合物]
環状スルホン酸エステル化合物としては、環状構造の一部にスルホン酸エステル構造を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。環状スルホン酸エステル化合物の具体例としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペン
スルトン、1,4−ブテンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン等が挙げられる。
これらのうち、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトンが保存特性向上の点から好ましく、なかでも1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンがさらに好ましい。
【0051】
[ジスルホン酸エステル化合物]
ジスルホン酸エステル化合物としては、分子内に2つのスルホン酸エステル構造を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。ジスルホン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、
エタンジオールジメタンスルホネート、エタンジオールジエタンスルホネート、エタンジオールジプロパンスルホネート、エタンジオールジブタンスルホネート、エタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、エタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、エタンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、エタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、エタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、エタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,1−ジフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,2−ジフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、等のエタンジオールジスルホネート類;
【0052】
1,2−プロパンジオールジメタンスルホネート、1,2−プロパンジオールジエタンスルホネート、1,2−プロパンジオールジプロパンスルホネート、1,2−プロパンジオールジブタンスルホネート、1,2−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,1−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、等の1,2−プロパンジオールジスルホネート類;
【0053】
1,3−プロパンジオールジメタンスルホネート、1,3−プロパンジオールジエタンスルホネート、1,3−プロパンジオールジプロパンスルホネート、1,3−プロパンジオールジブタンスルホネート、1,3−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ジフルオロメタンスルホ
ネート)、1,3−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,1−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、等の1,3−プロパンジオールジスルホネート類;
【0054】
1,2−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,2−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,2−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、等の1,2−ブタンジオールジスルホネート類;
【0055】
1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,3−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、等の1,3−ブタンジオールジスルホネート類;
【0056】
1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,4−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,4−ブタンジオールジプロパンスルホネート、1,4−ブタンジオールジブタンスルホネート、1,4−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ヘプタフルオロプロパンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(パーフルオロブタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,1−ジフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート)、等の1,4−ブタンジオールジスルホネート類;
等が挙げられる。
【0057】
これらのうち、
エタンジオールジメタンスルホネート、エタンジオールジエタンスルホネート、エタン
ジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、エタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、エタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、エタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等のエタンジオールジスルホネート類;
【0058】
1,2−プロパンジオールジメタンスルホネート、1,2−プロパンジオールジエタンスルホネート、1,2−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,2−プロパンジオールジスルホネート類;
【0059】
1,3−プロパンジオールジメタンスルホネート、1,3−プロパンジオールジエタンスルホネート、1,3−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,3−プロパンジオールジスルホネート類;
【0060】
1,2−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,2−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,2−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,2−ブタンジオールジスルホネート類;
【0061】
1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,3−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,3−ブタンジオールジスルホネート類;
【0062】
1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,4−ブタンジオールジエタンスルホネート、1,4−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ジフルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2−ジフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,4−ブタンジオールジ
スルホネート類;
等が保存特性向上の点から好ましい。
【0063】
なかでも、
エタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、エタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、エタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、エタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、エタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等のエタンジオールジスルホネート類;
1,2−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,2−プロパンジオールジスルホネート類;
【0064】
1,3−プロパンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−プロパンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,3−プロパンジオールジスルホネート類;
1,2−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,2−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,2−ブタンジオールジスルホネート類;
【0065】
1,3−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,3−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,3−ブタンジオールジスルホネート類;
1,4−ブタンジオールビス(トリフルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(ペンタフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(フルオロメタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールジ(2−フルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の1,4−ブタンジオールジスルホネート類;
等が特に好ましい。
【0066】
[ニトリル化合物]
ニトリル化合物としては、分子内にニトリル基を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。また、ニトリル基を1分子中に複数個有する化合物であってもよい。
ニトリル化合物の具体例としては、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、2‐メチル‐2‐ブテン二トリル、2‐ペンテンニトリル、2-メチル−2−ペンテン
ニトリル、3-メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセト
ニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3,3-ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3-トリ
フルオロプロピオニトリル、3,3,3-トリフルオロプロピオニトリル、ペンタフルオロ
プロピオニトリル等のモノニトリル化合物;
【0067】
マロノニトリル、スクシノニトリル、2−メチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、グルタロニトリル、2−メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、フマロニトリル、2-メチレングルタロニトリル等のジニトリル化合物;
テトラシアノエチレン等のテトラニトリル化合物等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、フマロニトリルが保存特性向上の点から好ましく、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、フマロニトリル等のジニトリル化合物がより好ましい。
【0069】
[一般式(1)で表される化合物]
上記一般式(1)中、炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基が挙げられる。R〜Rの炭素数は、下限としては、通常1以上、ガス発生抑制のの点から、好ましくは2以上、上限としては、通常12以下、電解液への溶解性および電池特性の点から、好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である。
さらに、上記アルキル基はフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素原子で置換されている基としては、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等の上記アルキル基の部分フッ化アルキル基およびパーフルオロアルキル基が挙げられる。
また、上記一般式中、nは0〜6の整数を示す。
【0070】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、
トリメチルホスホノフォルメート、メチルジエチルホスホノフォルメート、メチルジプロピルホスホノフォルメート、メチルジプチルホスホノフォルメート、トリエチルホスホノフォルメート、エチルジメチルホスホノフォルメート、エチルジプロピルホスホノフォルメート、エチルジプチルホスホノフォルメート、トリプロピルホスホノフォルメート、プロピルジメチルホスホノフォルメート、プロピルジエチルホスホノフォルメート、プロピルジプチルホスホノフォルメート、トリブチルホスホノフォルメート、ブチルジメチルホスホノフォルメート、ブチルジエチルホスホノフォルメート、ブチルジプロピルホスホノフォルメート、メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(2,2,2− トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート等のn=0の化合物;
【0071】
トリメチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテート、メチルジプロピルホスホノアセテート、メチルジプチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、エチルジメチルホスホノアセテート、エチルジプロピルホスホノアセテート、エチルジプチルホスホノアセテート、トリプロピルホスホノアセテート、プロピルジメチルホスホノアセテート、プロピルジエチルホスホノアセテート、プロピルジプチルホスホノアセテート、トリブチルホスホノアセテート、ブチルジメチルホスホノアセテート、ブチルジエチルホスホノアセテート、ブチルジプロピルホスホノアセテート、メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エチルビス(2,2,2−トリフル
オロエチル)ホスホノアセテート、プロピルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート等のn=1の化合物;
【0072】
トリメチル−3−ホスホノプロピオネート、メチルジエチル−3−ホスホノプロピオネート、メチルジプロピル−3−ホスホノプロピオネート、メチルジプチル−3−ホスホノプロピオネート、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート、エチルジメチル−3−ホスホノプロピオネート、エチルジプロピル−3−ホスホノプロピオネート、エチルジプチル−3−ホスホノプロピオネート、トリプロピル−3−ホスホノプロピオネート、プロピルジメチル−3−ホスホノプロピオネート、プロピルジエチル−3−ホスホノプロピオネート、プロピルジプチル−3−ホスホノプロピオネート、トリブチル−3−ホスホノプロピオネート、ブチルジメチル−3−ホスホノプロピオネート、ブチルジエチル−3−ホスホノプロピオネート、ブチルジプロピル−3−ホスホノプロピオネート、メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−ホスホノプロピオネート、エチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−ホスホノプロピオネート、プロピルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−ホスホノプロピオネート、ブチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−ホスホノプロピオネート等のn=2の化合物;
【0073】
トリメチル−4−ホスホノブチレート、メチルジエチル−4−ホスホノブチレート、メチルジプロピル−4−ホスホノブチレート、メチルジプチル−4−ホスホノブチレート、トリエチル−4−ホスホノブチレート、エチルジメチル−4−ホスホノブチレート、エチルジプロピル−4−ホスホノブチレート、エチルジプチル−4−ホスホノブチレート、トリプロピル−4−ホスホノブチレート、プロピルジメチル−4−ホスホノブチレート、プロピルジエチル−4−ホスホノブチレート、プロピルジプチル−4−ホスホノブチレート、トリブチル−4−ホスホノブチレート、ブチルジメチル−4−ホスホノブチレート、ブチルジエチル−4−ホスホノブチレート、ブチルジプロピル−4−ホスホノブチレート等のn=3の化合物等が挙げられる。
【0074】
これらの中で、高温保存後の電池特性向上の点からn=0,1,2の化合物が保存特性向上の点から好ましく、n=1,2の化合物が特に好ましい。
これらの環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物及び一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0075】
非水系電解液中のこれらの化合物の含有割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、非水系電解液全体に対して、合計で、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上である。また、上限は合計で、通常5重量%以下であり、4重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下である。これらの化合物の濃度が低すぎると改善効果が得られ難い場合があり、一方、濃度が高すぎると充放電効率の低下を招く場合がある。
【0076】
本発明に係る非水系電解液が、高温保存特性を改善する理由は明らかではなく、また、本発明は下記作用原理に限定されるものではないが、次のように推察される。
環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物及び一般式(1)で表される化合物は、正極表面への吸着または保護皮膜形成により、高温保存時の正極側の劣化を抑制することができるが、負極側で還元分解されやすい傾向があり、負極側での副反応が多くなったり、負極側の抵抗を増大させて、電池特性が低下する傾向があった。2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物を含有する場合、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物が、これらの化合物が反
応するより早い段階で、負極表面に皮膜を形成し、これらの化合物の過剰な反応を抑制できると考えられる。
本発明の一つは、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される電解液であって
、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする。
【0077】
(充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池)
本発明に係る非水系電解液は、充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される
ことを特徴とする。
充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池の電圧の下限としては、通常4.3V以上、好ましくは4.35V以上である。上限としては、特に制限されないが6V以下、好ましくは5V以下、特に好ましくは4.8V以下である。この下限値を上回る場合、エネルギー密度の向上効果とサイクル特性が良好であるため好ましい。
電池を高電圧とするためには、活物質の種類や正負極のバランスを適宜選択して電池を構成することで達成できる。
【0078】
その構成についての詳細については後述する。
本発明の電池は、充電終止電圧を4.3V以上としていることから、4.3V以上の電圧を少なくとも一度経験していることとなる。通常、4.3V以上の電圧を少なくとも一度経験した電池は、正極と電解液との副反応に起因すると思われる電池特性の劣化が顕著になる問題もあった。
【0079】
一方で、本願発明の電池は、高電圧下において、正極及び負極と電解液の分解が起こりづらいため、電池は高い電池特性を維持したまま充放電を繰り返すことができる。
本発明に係る非水系電解液は、それぞれを組み合わせて用いてもよい。例えば、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、不飽和結合を有する環状カーボネート類をおよび/又は総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物および/又は非水溶媒がジエチルカーボネートを含有し、および/又は環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有する非水系電解液、または、それらの非水系電解液が充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される非水系電解液であ
ってもよい。
【0080】
(他の化合物)
本発明に係る非水系電解液は、本発明の効果を損ねない範囲で、種々の他の化合物を助剤として含有していてもよい。
他の助剤としては、
フルオロエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、メチルメタンスルホネート、エチルメタンスルホネート、メチル−メトキシメタンスルホネート、メチル−2−メトキシエタンスルホネート、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;
【0081】
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンのフッ化ベンゼン等が挙げられる。これらは2種類以上併用して用いてもよい。
【0082】
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上であり、上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。この下限より低濃度では助剤の効果がほとんど発現しない場合がある。また、逆に濃度が高すぎると高負荷放電特性などの電池の特性が低下する場合がある。
【0083】
(電解液の調製)
本発明に係る非水系電解液は、非水溶媒に、電解質、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び必要に応じて他の化合物を溶解することにより調製することができる。非水系電解液の調製に際しては、各原料は、電解液とした場合の水分を低減させるため予め脱水しておくのが好ましい。通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下まで脱水するのがよい。また、電解液調製後に、脱水、脱酸処理等を実施してもよい。
本発明の非水系電解液は、非水電解液電池の中でも二次電池用、即ち非水系電解液二次電池、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の電解液を用いた非水系電解液二次電池について説明する。
【0084】
<非水系電解液二次電池>
本発明の非水系電解液二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が上記した電解液であることを特徴とするものである。
【0085】
(電池構成)
本発明に係る非水系電解液二次電池は、上記本発明の電解液を用いて作製される以外は従来公知の非水系電解液二次電池と同様、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水電解液を含む非水系電解液電池であり、通常、正極と負極とを本発明に係る非水系電解液が含浸されている多孔膜を介してケースに収納することで得られる。従って、本発明に係る二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0086】
(負極)
負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料や金属化合物、リチウム金属及びリチウム合金などを用いることができる。これらの負極活物質は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。なかでも好ましいものは炭素質材料、リチウムを吸蔵および放出可能な金属化合物である。
【0087】
炭素質材料のなかでは、特に、黒鉛や黒鉛の表面を黒鉛に比べて非晶質の炭素で被覆し
たものが好ましい。
黒鉛は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.338nm、特に0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上である。灰分は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
【0088】
黒鉛の表面を非晶質の炭素で被覆したものとして好ましいのは、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.338nmである黒鉛を核材とし、その表面に該核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料が付着しており、かつ核材と核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料との割合が重量比で99/1〜80/20であるものである。これを用いると、高い容量で、かつ電解液と反応しにくい負極を製造することができる。
【0089】
炭素質材料の粒径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径で、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、最も好ましくは7μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、最も好ましくは30μm以下である。
炭素質材料のBET法による比表面積は、通常0.3m2/g以上、好ましくは0.5
2/g以上、より好ましくは0.7m2/g以上、最も好ましくは0.8m2/g以上で
あり、通常25.0m2/g以下、好ましくは20.0m2/g以下、より好ましくは15.0m2/g以下、最も好ましくは10.0m2/g以下である。
【0090】
また、炭素質材料は、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトルで分析し、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークPAのピーク強度をIA、1300〜1400cm-1の範囲にあるピークPBのピーク強度をIBとした場合、IBとIAの比で表されるR値(=IB/IA)が、0.01〜0.7の範囲であるものが好ましい。また、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークの半値幅が、通常26cm-1以下、特に25cm-1以下であるものが好ましい。
【0091】
リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Cu、Ni、Sr、Ba等の金属を含有する化合物が挙げられ、これらの金属は単体、酸化物、リチウムとの合金などとして用いられる。本発明においては、Si、Sn、Ge及びAlから選ばれる元素を含有するものが好ましく、Si、Sn及びAlから選ばれる金属の酸化物又はリチウム合金がより好ましい。 また、これらは粉末のものでも薄膜状のものでもよく、結晶質のものでもアモルファ
スのものでもよい。
【0092】
リチウムを吸蔵・放出可能な金属化合物あるいはこの酸化物やリチウムとの合金は、一般に黒鉛に代表される炭素質材料に比較し、単位重量あたりの容量が大きいので、より高エネルギー密度が求められるリチウム二次電池には好適である。
リチウムを吸蔵・放出可能な金属化合物あるいはこの酸化物やリチウムとの合金の平均粒系は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上である。この上限を上回る場合、電極の膨張が大きくなり、サイクル特性が低下してしまう可能性がある。また、この下限を下回る場合、集電が取りにくくなり、容量が十分に発現しない可能性がある。
【0093】
(正極)
正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマ
ンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料などのリチウムを吸蔵・放出可能な材料が挙げられる。これらの化合物は、LiXCoO2、LiXNiO2、LiXMnO2、LiXCo1-yy2、LiXNi1-yy2、LiXMn1-yy2等であり、ここでMは通常、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Tiから選ばれる少なくとも1種であり、0.4≦x≦1.2、0≦y≦0.6であるものや、LiXMnaNibCoc2(但し、0.4≦x≦1.2、a+b+c=1)が挙げられ
る。
【0094】
特にLiXCo1-yy2、LiXNi1-yy2、LiXMn1-yy2等で表される、コバルト、ニッケル、マンガンの一部を他の金属で置き換えたものや、LiXMnaNib
c2(但し、0.4≦x≦1.2、a+b+c=1、|a-b|<0.1)で表されるものは、その構造を安定化させることができるので好ましい。
正極活物質は、単独で用いても、複数を併用しても良い。
【0095】
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0096】
表面付着物質の量としては、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0097】
(電極)
活物質を結着する結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の不飽和結合を有するポリマー及びその共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等のアクリル酸系ポリマー及びその共重合体などが挙げられる。
【0098】
電極中には、機械的強度や電気伝導度を高めるために増粘剤、導電材、充填剤などを含有させてもよい。
増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン等が挙げられる。
【0099】
導電材としては、銅又はニッケル等の金属材料、グラファイト又はカーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。
電極の製造は、常法によればよい。例えば、負極又は正極活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー化し、これを集電体に塗布、乾燥した後に、プレスすることによって形成することができる。
【0100】
また、活物質に結着剤や導電材などを加えたものをそのままロール成形してシート電極
としたり、圧縮成型によりペレット電極としたり、蒸着・スパッタ・メッキ等の手法で集電体上に電極材料の薄膜を形成することもできる。
負極活物質に黒鉛を用いた場合、負極活物質層の乾燥、プレス後の密度は、通常1.45g/cm3以上であり、好ましくは1.55g/cm3以上、より好ましくは1.60g/cm3以上、特に好ましくは1.65g/cm3以上、である。
【0101】
また、正極活物質層の乾燥、プレス後の密度は、通常2.0g/cm3以上であり、好
ましくは2.5g/cm3以上、より好ましくは3.0g/cm3以上である。
集電体としては各種のものが用いることができるが、通常は金属や合金が用いられる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、好ましいのは銅である。また、正極の集電体としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はその合金が挙げられ、好ましいのはアルミニウム又はその合金である。
【0102】
(セパレータ、外装体)
正極と負極の間には、短絡を防止するために多孔膜(セパレータ)を介在させる。この場合、電解液は多孔膜に含浸させて用いる。多孔膜の材質や形状は、電解液に安定であり、かつ保液性に優れていれば、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等が好ましい。
本発明に係る電池に使用する電池の外装体の材質も任意であり、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン、ラミネートフィルム等が用いられる。
上記した本発明の非水系電解液二次電池の作動電圧は通常2V〜6Vの範囲である。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、下記実施例および比較例で得られた電池の各評価方法を以下に示す。
【0104】
[容量評価]
非水系電解液二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。これを3サイクル行って電池を安定させ、4サイクル目は、0.5Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3Vまで放電して、初期放電容量を求めた。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0105】
[サイクル特性の評価]
容量評価試験の終了した電池を、45℃において、0.5Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電し、1Cの定電流で3Vまで放電をするサイクル試験を実施した。1サイクル目の放電容量を100とした場合の300サイクル後の放電容量(%)を求めた。
【0106】
[高電圧サイクル特性の評価]
容量評価試験の終了した電池を、45℃において、0.5Cの定電流で4.35Vまで充電後、4.35Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電し、1Cの定電流で3Vまで放電をするサイクル試験を実施した。1サイクル目の放電容量を100とした場合の50サイクル後の放電容量(%)を求めた。
【0107】
[放電保存特性の評価]
容量評価試験の終了した電池を、60℃で保存し、電圧の変化を測定した。電圧が3Vから2.5Vまでに変化するのに要する時間を、放電保存時間とした。放電保存時間が長いほど、保存時の劣化(電池内部の副反応、主に負極側での副反応に起因する劣化)が抑制され、電池が安定であることを示す。
【0108】
[連続充電特性の評価]
容量評価試験の終了した電池を、エタノール浴中に浸して体積を測定した後、60℃において、0.5Cの定電流で定電流充電を行い、4.25Vに到達した後、定電圧充電に切り替え、1週間連続充電を行った。
電池を冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、連続充電の前後の体積変化から発生したガス量を求めた。
発生ガス量の測定後、25℃において0.2Cの定電流で3Vまで放電させ、連続充電試験後の残存容量を測定し、初期放電容量に対する連続充電試験後の放電容量の割合を求め、これを連続充電後の残存容量(%)とした。
【0109】
(実施例1)
[負極の製造]
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、結晶子サイズ(Lc)が652nm、灰分が0.07重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が12μm、BET法による比表面積が7.5m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマ
ンスペクトル分析から求めたR値(=IB/IA)が0.12、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークの半値幅が19.9cm-1である天然黒鉛粉末94重量部とポリフッ化ビニリデン6重量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー状にした。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、負極活物質層の密度が1.65g/cm3になるようにプレスして負極とした。
【0110】
[正極の製造]
LiCoO2 90重量部、カーボンブラック4重量部及びポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製、商品名「KF−1000」)6重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリーし、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が3.0g/cm3になるようにプレスして正極とした。
【0111】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部及びシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
【0112】
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、サイクル特性および放電保存特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97.5重量部に、ビニレンカーボネート2重量部及びシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0
モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と
同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性および放電保存特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0114】
(実施例3)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97.5重量部に、ビニレンカーボネート1.5重量部、ビニルエチレンカーボネート0.5重量部及びシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解
して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0115】
(実施例4)
実施例1の電解液において、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンに代えて、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0116】
(実施例5)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(容量比2:4:4)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部及びシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用し
た以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0117】
(比較例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)98重量部に、ビニレンカーボネート2重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1
.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性および放電保存特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
(比較例2)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)98重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン2重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して
調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性および放電保存特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0119】
(比較例3)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)に十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解
液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、サイクル特性および放電保存特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0120】
(比較例4)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部及び4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン1量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合と
なるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチ
ウム二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1から明らかなように、本発明に係る電池は、サイクル特性、保存特性に優れていることがわかる。
(実施例6)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(容量比2:4:4)96.5重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及び、シクロヘキシルベンゼン1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合
となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0123】
(実施例7)
実施例6の電解液において、シクロヘキシルベンゼン代えて、2,4−ジフルオロアニオールを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0124】
(比較例5)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(容量比2:4:4)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部及び、シクロヘキシルベンゼン1重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットル
の割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、連続充電特性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0125】
(比較例6)
比較例5の電解液において、シクロヘキシルベンゼン代えて、2,4−ジフルオロアニオールを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
表2から明らかなように、本発明に係る電池は、電解液中に総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有するにもかかわらず、高温保存後(連続充電試験後)ガス発生の増大及び放電特性の著しい低下を抑制することができる。
【0128】
(実施例8)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99.5重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/
リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0129】
(比較例7)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(容量比3:7)に、十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用
した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0130】
(比較例8)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)に、十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合とな
るように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0131】
(実施例9)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及び1,3−プロパンスルトン0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0132】
(実施例10)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及び1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モ
ル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と
同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0133】
(実施例11)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及びスクシノニトリル0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0134】
(実施例12)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及びトリエチルホスホノアセテート0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0135】
(実施例13)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)98.5重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部、ビニレンカーボネート0.5重量部及びトリエチルホスホノアセテート0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0136】
(実施例14)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合物(容量比3:7)99重量部に、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン0.5重量部及びトリエチルホスホノアセテート0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6
1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実
施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0137】
(比較例9)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(容量比3:1:6)99.5重量部に、スクシノニトリル0.5重量部を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/ リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、高電圧サイクル特性及び連続充電特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
表3から明らかなように、本発明に係る電池は、サイクル特性に優れ、高温保存後(連続充電試験後)ガス発生を抑制し、放電特性を向上することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
【請求項2】
上記非水系電解液が環状スルホン酸エステル化合物を含有し、さらに、環状スルホン酸エステル化合物が、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、及び1,4−ブテンスルトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液。
【請求項3】
上記非水系電解液がジスルホン酸エステル化合物を含有し、さらに、ジスルホン酸エステル化合物が、エタンジオールジスルホネート類、1,2−プロパンジオールジスルホネート類、1,3−プロパンジオールジスルホネート類、1,2−ブタンジオールジスルホネート類、1,3−ブタンジオールジスルホネート類、及び1,4−ブタンジオールジスルホネート類からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液。
【請求項4】
上記非水系電解液がニトリル化合物を含有し、さらに、ニトリル化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、及びフマロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液。
【請求項5】
上記非水系電解液が上記一般式(1)で表される化合物を含有し、さらに、一般式(1)中、R〜Rの炭素数が、2以上、8以下であることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液。
【請求項6】
上記非水系電解液が上記一般式(1)で表される化合物を含有し、さらに、一般式(1)中、nが0,1または2であることを特徴とする請求項1または5記載の非水系電解液。
【請求項7】
非水系電解液中の、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物の含有割合が、合計で、0.001重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項8】
電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、充電終止電圧が4.3V以上の高電圧電池に使用される電解液であって、2以上のフッ素
原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
【請求項9】
非水系電解液が、不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有することを特徴とする請求項8記載の非水系電解液。
【請求項10】
非水系電解液が、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有することを特徴とする請求項8記載の非水系電解液。
【請求項11】
非水系電解液が、ジエチルカーボネートを含有することを特徴とする請求項8記載の非水系電解液。
【請求項12】
非水系電解液が、環状スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物、ニトリル化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項8記載の非水系電解液。
【化2】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
【請求項13】
電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を含有し、更に、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液。
【請求項14】
芳香族化合物の総炭素数が、10以上18以下であることを特徴とする請求項13記載の非水系電解液。
【請求項15】
総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物が、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、及びジベンゾフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項13または14記載の非水系電解液。
【請求項16】
非水系電解液中における総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物の割合が、0.001重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする請求項13〜15の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項17】
電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、更に不飽和結合を有する環状カーボネート類を含有することを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の非水系電解液。
【請求項18】
不飽和結合を有する環状カーボネート類が、ビニレンカーボネート化合物、ビニルエチ
レンカーボネート化合物、及びメチレンエチレンカーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項17記載の非水系電解液。
【請求項19】
不飽和結合を有する環状カーボネート類が、ビニレンカーボネートおよび/またはビニルエチレンカーボネートであることを特徴とする請求項17または18記載の非水系電解液。
【請求項20】
非水系電解液中における不飽和結合を有する環状カーボネートの割合が、0.001重量%以上、8重量%以下であることを特徴とする請求項17〜19の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項21】
電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水溶媒が更にジエチルカーボネートを含有することを特徴とする請求項1〜20の何れか1項に記載の非水系電解液。
【請求項22】
全非水溶媒中に占めるジエチルカーボネートの割合が、10容量%以上、90容量%以下であることを特徴とする請求項21記載の非水系電解液。
【請求項23】
2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物が、2以上のフッ素原子を有するフッ素化エチレンカーボネートであることを特徴とする請求項1〜22の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項24】
2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネート化合物が、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、及び4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1〜23の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項25】
非水系電解液に占める、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートの割合が、0.001〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜24の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項26】
非水系電解液に占める、2以上のフッ素原子を有するフッ素化環状カーボネートの割合が、0.01〜4重量%であることを特徴とする請求項1〜25の何れか一項に記載の非水系電解液。
【請求項27】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が請求項1〜26の何れか一項に記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
【請求項28】
負極が、炭素質材料、及び/またはリチウムを吸蔵および放出可能な金属化合物を含むことを特徴とする請求項27に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項29】
正極が、リチウム遷移金属複合酸化物材料を含むことを特徴とする請求項27に記載の非水系電解液二次電池。

【公開番号】特開2013−80727(P2013−80727A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21675(P2013−21675)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2007−144455(P2007−144455)の分割
【原出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】