説明

非水系顔料分散剤及びこれを用いた油性インク組成物

【課題】油及び油性有機溶剤の使用量を低減でき、且つ、顔料への湿潤性及び分散性に優れる非水系顔料分散剤の提供。
【解決手段】式(1)で表される非水系顔料分散剤。
R−O−(AO)−(EO)−H (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数、nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、3≦m≦40、1≦n≦15、4≦(m+n)≦55、0.6<{m/(m+n)}≦0.9であり、(AO)部分に占めるオキシブチレン基の割合は70〜100重量%である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系顔料分散剤及びこれを用いた油性インク組成物に関する。さらに詳しくは、油及び油性溶剤中において顔料に対して優れた湿潤性、及び分散性を発揮する非水系顔料分散剤、及びこれを用いた油性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より油性インクは、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷用等の様々な印刷用途で広く使用されている。
しかし、これらの油性インク組成物には油性有機溶剤として、芳香族性のトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等や、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の揮発性溶剤が主に用いられていたり、高沸点炭化水素中に不純物としてこれら揮発性溶剤を含有していたりする。しかし、これらの溶剤は、環境や人体への悪影響が懸念されているため、環境や人体に対して安全性の高い溶剤への代替、溶剤使用量の低減、溶剤が大気中に拡散するのを防止する大規模な設備の導入等を行っている。
【0003】
例えば、大豆油を用いたオフセット印刷用インキへの切替が提案されている。また、芳香族性の油性有機溶剤の代替として流動パラフィンを用いたインクジェット印刷用インキが提案されている(特許文献1)。しかし、これらのように油や油性有機溶剤の代替では、溶剤の使用量は実質的に低減されず、石油資源や植物資源保全の点で問題があった。一方、油や溶剤を代替した際に、インク中に含まれる成分の1つである分散剤との相溶性が悪くなり、それが原因で顔料の湿潤性や分散性が低下することがあるため、使用できる分散剤の種類や配合量に制限があった。
【0004】
さらに、重合平均分子量が1万〜10万のロジン変性フェノール樹脂、植物油及び又は植物油脂肪酸エステル、アルキッド樹脂、HLB値が15以上のポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた印刷インキ組成物が提案されている(特許文献2)。このインキ組成物を用いることにより、使用後にインキを印刷機やローラーから除去する際に有機溶剤を使用する必要はなく弱酸性〜弱アルカリ性の水性洗浄剤で除去できる。しかし、この方法でも、インク組成物中の植物油及び又は植物油脂肪酸エステルの使用量は低減されないため、植物資源保全の点で問題があった。
【0005】
したがって、油や溶剤の種類によらず顔料の湿潤性や分散性に優れることで、実質的に油及び油性有機溶剤の使用量を減少させることのできる非水系顔料分散剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−297624号公報
【特許文献2】特開2009−57461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、炭素数が1〜4の特定の脂肪族アルコールにオキシブチレン基を特定の割合で含有するアルキレンオキシドを付加させた化合物が油及び油性有機溶剤の使用量を低減でき、且つ、顔料への湿潤性及び分散性に優れることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
よって、本発明は、油及び油性有機溶剤の使用量を低減でき、油及び油性有機溶剤中における顔料の湿潤性と分散性に優れた非水系顔料分散剤、及びこれを用いた油性インク組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、式(1)で表される非水系顔料分散剤である。
R−O−(AO)−(EO)−H (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数、nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、3≦m≦40、1≦n≦15、4≦(m+n)≦55、0.6<{m/(m+n)}≦0.9であり、(AO)部分に占めるオキシブチレン基の割合は70〜100重量%である。)
【0010】
また、化合物の分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合が70〜95重量%である式(1)で表される非水系顔料分散剤である。
さらに、式(1)で表される化合物を必須成分とする油性インク組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非水系顔料分散剤によれば、顔料への湿潤性及び分散性が向上することで油及び油性有機溶剤の使用量を低減でき、併せて炭化水素系溶剤のような低極性の有機溶剤でも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非水系顔料湿潤剤は、式(1)で表される構造を有する。
式(1)のRは炭素数1〜4のアルキル基であり、直鎖であっても分岐であっても良く、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基であり、より好ましくはメチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基である。炭素数5以上のアルキル基ではアルキル基由来の性質が強くなることで炭素数3〜4のオキシアルキレン基部位:(AO)由来の性質が阻害されてしまうため、油性有機溶剤中における顔料の湿潤性と分散性に乏しくなり好ましくない。
【0013】
式(1)におけるAOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的にはプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。なお、オキシブチレン基は1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド由来が挙げられるが、好ましくは1,2−ブチレンオキシド由来である。
【0014】
式(1)におけるmはAOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、3≦m≦40が好ましく、8≦m≦30がより好ましく、19≦m≦21がさらに好ましい。m<3の場合は親油性が低下して油及び油性有機溶剤への溶解性が低下し、40<mの場合は親油性が強くなり過ぎることで油及び油性有機溶剤中における顔料の湿潤性と分散性に乏しくなるため好ましくない。
【0015】
式(1)におけるnはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦15が好ましく、2≦n≦12がより好ましく、3≦n≦7がさらに好ましいである。15<nの場合は顔料の橋架け凝集が起こり、分散性が低下するため好ましくない。
【0016】
式(1)における(m+n)は4≦(m+n)≦55であり、好ましくは12≦(m+n)≦35であり、より好ましくは22≦(m+n)≦28である。(m+n)<4の場合は親油性が低下して油及び油性有機溶剤への溶解性が低下し、55<(m+n)の場合は親油性が強くなり過ぎたり顔料の橋架け凝集が起こったりして分散性が低下するため好ましくない。
【0017】
式(1)における{m/(m+n)}は0.6<{m/(m+n)}≦0.9であり、好ましくは0.70≦{m/(m+n)}≦0.85であり、より好ましくは0.75≦{m/(m+n)}≦0.85である。これは、アルキル基:Rと炭素数3〜4のオキシアルキレン基部位:(AO)が親油性を示し、オキシエチレン基部位:(EO)が顔料へ吸着することに起因する。{m/(m+n)}≦0.6の場合は、オキシエチレン基部位:(EO)の性質が強くなることで顔料への吸着力が強くなり過ぎてしまい、その結果として、親油性が低下して油性有機溶剤への溶解性が低下したり、長く伸びたポリオキシエチレン基部位:(EO)により分散された顔料粒子同士にまたがって吸着することで、顔料を凝集させてしまったりするため好ましくない。また、0.9<{m/(m+n)}の場合は、炭素数3〜4のオキシアルキレン基部位:(AO)の性質が強くなることで親油性が強くなり過ぎてしまい、その結果として、ポリオキシエチレン基部位:(EO)が顔料に吸着しにくくなり、顔料の湿潤性と分散性に乏しくなるため好ましくない。
【0018】
式(1)における(AO)部分に占めるオキシブチレン基の割合は70〜100重量%であり、好ましくは85〜100重量%であり、より好ましくは100重量%である。(AO)部分に占めるオキシブチレン基部分の割合が70重量%より小さい場合は、小さい場合は親油性が低下して油性有機溶剤への溶解性が低下するため好ましくない。
【0019】
また、式(1)における、分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合は、化合物融点と油及び油性有機溶剤への溶解のしやすさから70〜95重量%が好ましく、75〜90重量%がより好ましく、80〜90重量%がさらに好ましい。
【0020】
式(1)で示される化合物は、従来公知のアルキレンオキシド付加反応により得ることができる。例えば、アルカリ触媒の存在下においてアルコールに炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合させ、次いでエチレンオキシドを付加重合させることにより得られる。
【0021】
本発明は、上記の非水系顔料分散剤を必須成分とする油性インク組成物にも関係する。本発明の油性インク組成物において、非水系顔料分散剤の添加量は、顔料に対して、0.01〜80重量%であり、好ましくは10〜60重量%である。0.01重量%より小さい場合は分散効果が小さく、80質量%より大きい場合は使用量に見合った効果が得られないため好ましくない。
【0022】
本発明の油性インク組成物で使用する顔料の種類は特に限定されず、有機系顔料であっても無機系顔料であってもよい。有機系顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられる。また、無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末等が挙げられる。
【0023】
本発明の油性インク組成物で使用される油としては、植物油、植物油の加工品、鉱物油が挙げられる。植物油としては、亜麻仁油、しなきり油、オイチシカ油、サンフラワー油、麻実油、大豆油、ヤシ油、トール油、ひまし油、植物油の加工品としては、脱水ひまし油、重合亜麻仁油等が挙げられ、鉱物油としては、マシン油、スピンドル油が挙げられる。その中でも亜麻仁油、大豆油、ひまし油が好ましい。
【0024】
本発明の油性インク組成物で使用される油性有機溶剤としては、芳香族系溶剤、環状炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。芳香族系溶剤としてはトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン等が挙げられ、環状炭化水素系溶剤としてはメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、炭化水素系溶剤としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、流動パラフィン等が挙げられ、エステル系溶剤としては酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。その中でも、トルエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、流動パラフィンが好ましい。
【0025】
本発明の非水系顔料分散剤を用いた油性インク組成物には、必要に応じて一般に油及び油性有機溶剤中で使用される他の非水系顔料分散剤を併用して配合することができる。
【0026】
例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
【0027】
また、本発明の油性インク組成物には必要に応じて樹脂を添加することができる。使用できる樹脂としては、ライムロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン、ロジン重合体、ロジンエステル、水添ロジン等のロジン誘導体や、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等の石油樹脂等が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明の油性インク組成物には必要に応じて可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、乾燥促進剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0029】
本発明の非水系顔料分散剤を用いた油性インク組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。該非水系顔料分散剤は、油または油性有機溶剤に事前に添加しておいても、顔料と混合した後に油または油性有機溶剤を添加してもよい。これと、インク組成物に必要な配合物、例えば、その他の分散剤、樹脂、追加の溶剤、種々の添加剤等とをペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミルのような分散機により混合することにより得られる。
【0030】
本発明のインク組成物の使用形態は特に限定されず、印刷方法としてはインクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷用等が挙げられる。
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、表1中のBOはオキシブチレン基、EOはオキシエチレン基を示す。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
<合成例1>
メタノール56.8g(1.8モル)と水酸化カリウム12.7gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置にてブチレンオキシド3172.8g(44.0モル)を滴下し、4時間撹拌した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095Mpa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、メタノールブチレンオキシド20モル付加物を得た。このメタノールブチレンオキシド20モル付加物の水酸基価は39.1であった。
このメタノールブチレンオキシド20モル付加物1435.0g(1.0モル)と水酸化カリウム2.8gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置にてエチレンオキシド387.6g(8.8モル)を滴下させ、1時間撹拌した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095Mpa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、表1の化合物(2)で示されるメタノールブチレンオキシド20モル−エチレンオキシド8モル付加物を得た。このメタノールブチレンオキシド20モル−エチレンオキシド8モル付加物の水酸基価は30.1であった。
【0033】
<分散性試験>
300mL容量ビーカーに、ルチル型酸化チタン(IV)(関東化学(株)製)25.0g、メタノールブチレンオキシド20モル−エチレンオキシド8モル付加物5.0gを仕込み、シリコーン製攪拌棒にて均一になるまで混合した。これに、流動パラフィン((株)MORESCO社製モレスコホワイトP−70)を少量ずつ添加しながら均一になるように混合し、系全体がひとつにまとまるようになるまでに添加した流動パラフィン添加量を湿潤点とし、ビーカーを傾けた際に流れ出すようになるまでに添加したモレスコホワイトP−70の添加量を流動点として、これらを以下の基準で評価を行った。
○:湿潤点が0.5g以下、且つ、湿潤点と流動点の差が2.0g未満。
×:湿潤点が0.5gより多く、又は、湿潤点と流動点の差が2.0g以上。
なお、湿潤点までの添加量が少ないほど顔料への湿潤性が良好であり、湿潤点と流動点の差が小さいほど顔料の分散性が良好であることを示す。
【0034】
[実施例2〜5]
ブチレンオキシドの滴下量、エチレンオキシドの滴下量、及びメタノールの変わりにn−ブタノール又はイソブタノールを適宜変更した以外は合成例1と同様の方法で、表1に示す化合物(3)〜(6)を合成し、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0035】
[比較例1]
分散剤を添加せずに実施例1と同様の方法で分散試験を行った。
【0036】
[比較例2]
合成例1の途中で得られた表1に示す化合物(7)(メタノールブチレンオキシド20モル付加物)を用いて実施例1と同様の方法で分散試験を行った。
【0037】
[比較例3〜5]
ブチレンオキシドの滴下量、エチレンオキシドの滴下量、及びメタノールの変わりにn−ブタノール又はトリデカノールに適宜変更した以外は合成例1と同様の方法で、表1に示す化合物(8)〜(10)を合成し、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0038】
[比較例6]
式(1)で示される化合物の代わりに、表1に示す化合物(11)(オレイルアルコールの5モルエチレンオキシド付加物)を用い、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0039】
[比較例7]
式(1)で示される化合物の代わりに、表1に示す化合物(12)(トリデカノールの6モルエチレンオキシド付加物)を用い、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0040】
[比較例8]
式(1)で示される化合物の代わりに、表1に示す化合物(13)(ポリカルボン酸型高分子(花王(株)製ホモゲノールL−18))を用い、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0041】
[比較例9]
式(1)で示される化合物の代わりに、表1に示す化合物(14)(アセチレングリコールの10モルエチレンオキシド付加物(日信化学(株)製オルフィンE−1010))を用い、実施例1と同様の方法で分散性試験を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から、実施例1〜5の式(1)で示される化合物では、顔料への湿潤性と分散性に優れていることがわかる。このため、これらの化合物は、油及び油性有機溶剤の使用量を低減できる。
【0044】
比較例1では分散剤を用いないために顔料への湿潤性と分散性に乏しい。
比較例2は、式(1)で示される化合物を用いていないため、顔料への吸着性が弱く、湿潤性と分散性に乏しい。
【0045】
比較例3及び4は、式(1)で示される化合物の炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の付加モル数の合計に占める炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加モル数の割合が本発明の範囲より小さいために、非極性の油性有機溶剤への溶解性が悪く、分散性に乏しい。
【0046】
比較例5は、式(1)で示される化合物のアルキル鎖の炭素数が本発明の範囲より大きいため、顔料への吸着性が弱く、湿潤性と分散性に乏しい。
【0047】
比較例6は、式(1)で示される化合物の炭素数3〜4のオキシアルキレン基を有さず、式(1)で示される化合物の炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の付加モル数の合計に占める炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加モル数の割合が本発明の範囲より小さいため、顔料への吸着性が弱く、分散性に乏しい。
【0048】
比較例7は、式(1)で示される化合物の炭素数3〜4のオキシアルキレン基を有さず、式(1)で示される化合物の炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の付加モル数の合計に占める炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加モル数の割合が本発明の範囲より小さいため、顔料への吸着性が弱く、湿潤性と分散性に乏しい。
【0049】
比較例8は、式(1)で示される化合物を用いていないため非極性の油性有機溶剤への溶解性が悪く、分散性に乏しい。
【0050】
比較例9は、式(1)で示される化合物を用いていないため非極性の油性有機溶剤への溶解性が悪く、分離した。
【0051】
[実施例6]
ライムレジン(荒川化学工業(株)製ライムレジンNo.1):35重量部をメチルシクロヘキサン:65重量部に溶解させ、ビヒクルを調整した。フタロシアニンブルー(東京化成工業(株)製):10重量部に、得られたビヒクル85重量部、実施例1の化合物:2重量部、カルナバワックス:3重量部の混合物をボールミルにて24時間攪拌することにより、グラビアインキを調整した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される非水系顔料分散剤。
R−O−(AO)−(EO)−H (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基であり、mは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数、nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、3≦m≦40、1≦n≦15、4≦(m+n)≦55、0.6<{m/(m+n)}≦0.9であり、(AO)部分に占めるオキシブチレン基の割合は70〜100重量%である。)
【請求項2】
式(1)で表される化合物の分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合が70〜95重量%である請求項1に記載の非水系顔料分散剤。
【請求項3】
式(1)で表される化合物を必須成分とする油性インク組成物。

【公開番号】特開2011−201935(P2011−201935A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67732(P2010−67732)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】