説明

非水電解液二次電池用電極板の製造方法

【課題】集電体と電極活物質層との密着性、長期保存性が高く、かつ出入力特性に優れる、非水電解液二次電池用電極板の製造方法を提供すること。
【解決手段】X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように、アルミニウムからなる集電体の表面処理を行う、表面処理工程と、前記表面処理工程後、前記集電体上に少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含む前駆体を形成する工程と、前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時にいわゆるメモリ効果と呼ばれる完全に放電させる前に電池の充電を行うと次第に電池容量が減少していく現象が無いことから、携帯機器、ノート型パソコン、ポータブル機器など様々な分野で用いられている。
【0003】
現在、地球温暖化防止の対策として、世界規模でCO2排出抑制の取り組みが行われているなかで、石油依存度を低減し、低環境負荷で走行可能とすることで、CO2削減に大いに寄与することができるプラグインハイブリッド自動車、電気自動車に代表される次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及が急務とされている。これらの次世代クリーンエネルギー自動車の駆動力として非水電解液二次電池を利用することができれば、ガソリンに依存する必要がなく、CO2削減に大いに寄与することができ、地球温暖化防止に大いに貢献することができる。一方で、次世代クリーンエネルギー自動車の駆動力として非水電解液二次電池が利用されるためには、当該電池を構成する各パーツ、例えば電極板などの性能を上げるとともに、これらのパーツを高精度かつ歩留まりよく生産することが必要とされている。
【0004】
現在、各種の提案がされている非水電解液二次電池は、正極板、負極板、セパレータ、及び非水電解液から構成される。正極板としては、集電体表面に、正極活物質粒子が固着されてなる電極活物質層を備えるものが一般的である。また負極板としては、集電体表面に、負極活物質粒子が固着されてなる電極活物質層を備えるものが一般的である。集電体としてはアルミニウム箔が広く用いられている。このアルミニウム箔は、アルミニウムのブロックを圧延処理して形成されるものが一般的であり、形成されたアルミニウム箔の表面には、通常、圧延処理における滑り性を向上させるために用いられた油分等の有機成分が残留している。
【0005】
上記正極板または負極板である電極板を製造するには、まず、正極活物質粒子または負極活物質粒子である電極活物質粒子、樹脂製バインダー、あるいはさらに、必要に応じて導電材やその他の材料を用い、溶媒中で混練及び/又は分散させて、スラリー状の電極活物質層形成液を調製する。そして電極活物質層形成液を集電体表面に塗布し、次いで乾燥させて集電体上に塗膜を形成し、プレスすることにより電極活物質層を備える電極板が形成される(たとえば、特許文献1、または特許文献2)。
【0006】
このとき、電極活物質層形成液に含有される電極活物質粒子は、該液に分散する粒子状の金属化合物であって、それ自体だけでは、集電体表面に塗布され、乾燥させ、プレスされても該集電体表面に固着され難く、集電体からすぐに剥離してしまう。そこで、電極活物質層を形成する場合には、樹脂製バインダーを電極活物質層形成液に添加し、この樹脂製バインダーにより、電極活物質粒子を集電体上に固着させるとともに、電極活物質粒子同士を固着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−310010号公報
【特許文献2】特開2006−107750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2に提案されている方法により形成された電極板は、電極活物質粒子と集電体および電極活物質粒子同士が樹脂製バインダーで固着されていることから、電極活物質層のインピーダンスが大きくなってしまい、出力特性を向上することができないといった問題がある。
【0009】
このような問題を解決するために、樹脂製バインダーの全部または一部を金属酸化物に代える、つまり電極活物質粒子と集電体および電極活物質粒子同士をそれぞれ金属酸化物によって固着する試みがなされている。樹脂製バインダーに代えて金属酸化物を用いることにより、金属酸化物を用いた分だけ電極活物質層のインピーダンスを小さくすることができ、これにより出力特性を向上することができる。
【0010】
金属酸化物によって固着された電極板の製造方法としては、例えば、(1)アルミニウム箔からなる集電体に、少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含む前駆体を塗布などにより形成する工程と、(2)前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程と、を有する方法を挙げることができる。当該方法によれば、前駆体中に含まれる金属元素含有化合物を熱分解などすることにより金属酸化物に変化させる過程において、前駆体中に含まれている電極活物質粒子同士、および前駆体の下にある集電体と電極活物質粒子とを、それぞれ金属酸化物によって固着することができるので便利である。
【0011】
ただし、集電体としてアルミニウム箔を用いる場合には、上記のように表面に有機成分が残存していることから、この電極板を非水電解液二次電池に使用した場合には、集電体上に残存している有機成分が非水電解液と反応し、長期保存特性を低下させることとなる。また、上記の方法で、電極板を形成する場合には、金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する必要があり、従来の樹脂バインダーのみを用いる場合と比較し、より強固な密着性が要求される。しかしながら、集電体上に有機成分が残留している場合には、集電体と前駆体との密着性が悪くなり、得られた電極板における、集電体と電極活物質層との密着性も低下することとなる。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、集電体と電極活物質層との密着性、長期保存性が高く、かつ出入力特性に優れる、非水電解液二次電池用電極板の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の製造方法は、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように、アルミニウムからなる集電体の表面処理を行う、表面処理工程と、前記表面処理工程後、前記集電体上に少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含む前駆体を形成する工程と、前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記表面処理工程が、前記アルミニウムからなる集電体の脱脂を行う処理であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法によれば、第一に、金属元素含有化合物を含む前駆体を用い、これを加熱することで金属酸化物とする工程を有しているので、電極活物質粒子同士および電極活物質粒子と集電体のそれぞれを金属元素含有化合物由来の金属酸化物により固着することができる。したがって、樹脂製バインダーのみを用いてこれらを固着している従来の電極板と比べてインピーダンスが低く、出力特性に優れた電極板を提供することができる。
【0016】
第二に、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法によれば、集電体としてのアルミニウムを、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように表面処理していることから、長期保存性、及び集電体と電極活物質層との密着性が高い電極板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(非水電解液二次電池用電極板の製造方法)
以下、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
本発明の方法は、(1)アルミニウムからなる集電体を、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように表面処理する工程(以下、「表面処理工程」とする場合がある。)と、(2)表面処理工程後の集電体上に、少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含む前駆体を形成する工程(以下、「前駆体形成工程」とする場合がある。)と、(3)前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程(以下、「加熱工程」とする場合がある。)と、を有している。以下、これらの工程について詳細に説明する。
【0019】
(1)表面処理工程
本発明の方法において、表面処理工程とは、アルミニウムからなる集電体を、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように、表面処理する工程をいう。
【0020】
本発明の方法において、アルミニウムからなる集電体とは、集電体の表面の少なくとも一部がアルミニウムであることを意味する。アルミニウムからなる集電体としては、例えば、アルミニウム箔や、アルミニウム以外の金属や樹脂などの基材をアルミニウムで蒸着法やメッキ法などにより被覆したものを用いることができる。本発明は、集電体として広く用いられているアルミニウム箔上に残留している有機成分によって、集電体と前駆体との密着性が悪くなることや、非水電解液二次電池の長期保存特性を低下させることに当初鑑みてなされたものであるが、集電体の表面がアルミニウムであれば、アルミニウム箔に限られるものではないことは明らかである。なお、本発明の方法において、アルミニウムからなる集電体とは、不純物や少量のアルミニウム以外の金属成分がアルミニウムに含有されることを禁止するものではない。
【0021】
本発明における表面処理工程にあっては、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下とすることができるあらゆる方法を適宜選択して用いることができる。たとえば、炭素を除去する方法として従来公知の、紫外線照射処理、プラズマ処理、還元処理、コロナ放電処理、超音波洗浄処理、等を挙げることができる。
【0022】
本発明の方法において、表面処理工程後の集電体は、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となっていることから、後述する前駆体形成工程における前駆体との密着性を向上させることができる。
【0023】
上記の表面処理工程後に、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となっているか否かは、表面処理後のアルミニウムからなる集電体をX線電子分光装置(KARATOS社製 ESCA−3400)により確認することができる。具体的には、以下の手順で測定をおこなう。アルミニウムからなる集電体を3mm角に裁断して試料を準備し、その試料をアルコールで洗浄した測定用ホルダーに導電性両面テープで貼り付ける。次に、試料が取り付けられた測定用ホルダーを真空度5.0×10-6Pa以下の測定室内に設置し、加速電圧10kV、電流290mAの条件下にて0〜1100eVの範囲で1eV刻みでX線を照射してtake−off angle 90度で測定する。得られたスペクトルからバックグラウンドを差し引き、各元素由来のピーク面積から元素分析をおこなう。
【0024】
集電体の厚さについても特に限定はないが、正極板を製造に用いられる集電体である場合には、3〜150μm程度であることが好ましく、負極板の製造に用いられる集電体である場合には、3〜100μm程度であることが好ましい。
【0025】
(2)前駆体形成工程
本発明の方法において、前駆体形成工程とは、上記表面処理工程でX線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように表面処理された集電体上に、少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含み、この工程の後に行われる加熱工程を経て電極活物質層となるべき前駆体を形成する工程をいう。
【0026】
本発明における前駆体形成工程にあっては、集電体上に所望の前駆体を形成することが可能であればよく、その形成方法については特に限定されず、種々の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等を挙げることができる。また、集電体の表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、上記の方法以外に手動で塗布することも可能である。以下、正極板、および負極板を製造するための前駆体について具体的に説明する。
【0027】
(正極板を製造するための前駆体)
本発明の方法で非水電解液二次電池の正極板を製造する場合における、前駆体に含有される電極活物質粒子としては、従来公知の、充放電が可能な種々の正極活物質粒子を適宜選択して用いることができ、特に限定されることはない。このような正極活物質粒子としては、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiFeO2、Li4Ti512、LiFePO4、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiNi0.80Co0.15Al0.052、などのリチウム遷移金属複合酸化物などの正極活物質粒子を挙げることができる。
【0028】
これらの正極活物質粒子の中でも、LiMn24を特に好適に使用することができる。LiMn24は種々の正極活物質の中でも特に高いレート特性を有することから、レート特性の向上が図られ、充放電の高速化を発揮することができる。
【0029】
また、これらの正極活物質粒子は、1次粒子であってもよく、2次粒子であってもよい。また、その粒子径についても、特に限定されることはなく、任意の大きさのものを適宜選択して使用することができる。
【0030】
また、本発明の方法で正極板を製造する場合における、前駆体に含有される金属元素含有化合物としては、リチウム元素含有化合物と、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄またはチタンから選択されるいずれかの金属元素を含む金属元素含有化合物の1種あるいは2種以上とを好ましく用いることができる。金属元素含有化合物は、当該化合物内に炭素が含まれていない無機金属元素含有化合物であってもよいし、あるいは当該化合物内に炭素が含まれて構成される有機金属元素含有化合物であってもよい。本発明および本明細書においては、無機金属元素含有化合物及び有機金属含有化合物をあわせて、単に金属元素含有化合物という場合がある。
【0031】
また、金属元素含有化合物としては、リチウム元素あるいはコバルト等の他の金属元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることもできる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩は汎用品として入手が容易なので使用することが好ましい。とりわけ、硝酸塩は広範囲の種類の正極集電体に対して製膜性がよいので好ましく使用される。
【0032】
例えば、金属酸化物としてLiCoO2を生成するための金属元素含有化合物としては、Li元素含有化合物、及びCo元素含有化合物を主原料として組み合わせて用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を組み合わせて用いることもできる。Li元素含有化合物としては、例えば、クエン酸リチウム四水和物、過塩素酸リチウム三水和物、酢酸リチウム二水和物、硝酸リチウム、及びリン酸リチウム等が挙げられ、また、Co元素含有化合物としては、例えば、塩化コバルト(II)六水和物、蟻酸コバルト(II)二水和物、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート二水和物、酢酸コバルト(II)四水和物、しゅう酸コバルト(II)二水和物、硝酸コバルト(II)六水和物、塩化コバルト(II)アンモニウム六水和物、亜硝酸コバルト(III)ナトリウム、及び硫酸コバルト(II)七水和物等が挙げられる。主原料として用いるLi元素含有化合物、及びCo元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Co=X:1)は、特に限定されないが、1≦X<2であることが好ましく、1≦X≦1.2であることがより好ましい。
【0033】
また、金属酸化物としてLiNiO2を生成するための金属元素含有化合物としては、Li元素含有化合物、及びNi元素含有化合物を主原料として組み合わせて用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を組み合わせて用いることもできる。Li元素含有化合物の例は、上述するLiCoO2を生成する場合と同様であり、また、Ni元素含有化合物としては、例えば、塩化ニッケル(II)六水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)三水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、次亜リン酸ニッケル(II)六水和物、及び硫酸ニッケル(II)六水和物等が挙げられる。主原料として用いるLi元素含有化合物、及びNi元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Ni=X:1)は、特に限定されないが、1≦X<2であることが好ましく、1≦X≦1.2であることがより好ましい。
【0034】
また、金属酸化物としてLiMn24を生成するための金属元素含有化合物としては、Li元素含有化合物、及びMn元素含有化合物を主原料として組み合わせて用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を組み合わせて用いることもできる。Li元素含有化合物の例は、上述するLiCoO2を生成する場合と同様であり、また、Mn元素含有化合物としては、例えば、酢酸マンガン(III)二水和物、硝酸マンガン(II)六水和物、硫酸マンガン(II)五水和物、しゅう酸マンガン(II)二水和物、及びマンガン(III)アセチルアセトナート等が挙げられる。主原料として用いるLi元素含有化合物、及びMn元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Mn=X:1)は、特に限定されないが、0.5≦X<1であることが好ましく、0.5≦X≦0.6であることがより好ましい。
【0035】
また、金属酸化物としてLiFeO2を生成するための金属元素含有化合物としては、Li元素含有化合物、及びFe元素含有化合物を主原料として組み合わせて用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を組み合わせて用いることもできる。Li元素含有化合物の例は、上述するLiCoO2を生成する場合と同様であり、また、Fe元素含有化合物としては、例えば、塩化鉄(II)四水和物、クエン酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、しゅう酸鉄(II)二水和物、硝酸鉄(III)九水和物、乳酸鉄(II)三水和物、及び硫酸鉄(II)七水和物等が挙げられる。主原料として用いるLi元素含有化合物、及びFe元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Fe=X:1)は、特に限定されないが、1≦X<2であることが好ましく、1≦X≦1.2であることがより好ましい。
【0036】
また、金属酸化物としてLi4Ti512を生成するための金属元素含有化合物としては、Li元素含有化合物、及びTi元素含有化合物を主原料として組み合わせて用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を組み合わせて用いることもできる。Li元素含有化合物の例は、上述するLiCoO2を生成する場合と同様であり、また、Ti元素含有化合物としては、例えば、四塩化チタン、及びチタンアセチルアセトナート等が挙げられる。主原料として用いるLi元素含有化合物、及びTi元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Ti=X:1)は、特に限定されないが、1≦X<2であることが好ましく、1≦X≦1.2であることがより好ましい。
【0037】
正極板を製造するための前駆体に含まれる電極(正極)活物質粒子と金属元素含有化合物との配合比率については特に限定されることはないが、金属元素含有化合物は、加熱工程を経て金属酸化物となり、この金属酸化物によって電極(正極)活物質粒子同士および電極(正極)活物質粒子と集電体とが固着されることから、金属酸化物の含有量が少なすぎる場合には、当該固着力を所望の程度まで上げることができなくなるおそれや、インピーダンスを所望の程度まで下げることができなくなるおそれがある。したがって、当該前駆体が最終的に正極活物質層となった状態において、電極(正極)活物質粒子の質量比率を100質量部としたときの、金属酸化物の質量比率が、1質量部以上100質量部以下となるように含まれる電極(正極)活物質粒子と金属元素含有化合物との配合比率を調整することが好ましい。
【0038】
ここで、正極板を製造するための前駆体を形成するにあたり、上記で説明した電極活物質粒子と金属元素含有化合物とを溶媒中に混合せしめ、正極活物質層形成液を調製し、これを正極集電体上に塗布することにより前駆体を形成する場合においては、これに用いる溶媒としては、金属元素含有化合物を溶解することができるものであればよく、従来公知の溶媒を適宜選択して用いることができる。例えば、水、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0039】
また、前記のように溶媒中に金属元素含有化合物を溶解する場合においては、溶媒中に添加される1種または2種以上の金属元素含有化合物の添加量の合計の比率は、0.01〜5mol/L、特に0.1〜2mol/Lが好ましい。上記濃度を0.01mol/L以上とすることにより、正極集電体と該集電体表面において前駆体から生成される正極活物質層とを良好に密着性させることができ、電極(正極)活物質粒子の固着を図ることができる。また、上記濃度を、5mol/L以下とすることにより、上記正極活物質層形成液を正極集電体の表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜を形成することができる。
【0040】
さらに、上記のような正極活物質層形成液を用いる場合、当該形成液には、導電材、あるいは、形成液の粘度調整剤である有機物、その他の添加剤を配合してもよい。
【0041】
前駆体の厚さについても特に限定されることはないが、15〜300μm程度が一般的である。
【0042】
(負極板を製造するための前駆体)
一方、本発明の方法で非水電解液二次電池の負極板を製造する場合における、前駆体に含有される電極活物質粒子としては、例えば、チタンコバルトの酸化物、マンガン、鉄、コバルトの窒化物、リチウム元素とチタン元素とを含有する複合酸化物(例えば、Li4Ti512、Li2Ti37)など、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を挙げることができる。中でも、本発明においては、レート特性の高いリチウムチタン複合酸化物を好適に使用することができる。
【0043】
また、本発明の方法で負極板を製造する場合における、前駆体に含有される金属元素含有化合物としては、金属元素の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等の金属塩や、これらの金属塩の水和物等を挙げることができる。中でも、塩化物、硝酸塩、酢酸塩は汎用品としての入手が容易であるほか、後述する加熱工程によって加熱することにより、塩素イオン、硝酸イオン、酢酸イオンを容易に前駆体中から消失させることができることから特に好適に用いることができる。
【0044】
より具体的には、例えば、金属元素が銅である場合には、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、酢酸銅(II)一水和物等を挙げることができ、金属元素がニッケルである場合には、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル(II)六水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物等を挙げることができ、金属元素がリチウムである場合には、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム三水和物等を挙げることができる。
【0045】
負極板を製造するための前駆体に含まれる電極(負極)活物質粒子と金属元素含有化合物との配合比率については、特に限定されることはないが、正極板を製造する場合と同様の理由により、当該前駆体が最終的に負極活物質層となった状態において、電極(負極)活物質粒子の質量比率を100質量部としたときの、金属酸化物の質量比率が、1質量部以上100質量部以下となるように含まれる電極(負極)活物質粒子と金属元素含有化合物との配合比率を調整することが好ましい。
【0046】
また、負極板を製造するための前駆体は、上述した正極板の場合と同様、負極活物質層形成液を調製し、これを負極集電体上に塗布することにより前駆体を形成することができ、これに用いる溶媒としては前記正極板と同様の溶媒を用いることができる。その際、溶媒に対し、添加される1種または2種以上の金属元素含有化合物の添加量の合計の比率は、0.01〜20mol/L、特に0.1〜10mol/Lが好ましい。上記濃度を0.01mol/L以上とすることにより、負極集電体と該集電体表面において前駆体から生成される負極活物質層とを良好に密着させることができ、負極活物質粒子の集電体への固着が充分に図ることができる。また、上記濃度を、20mol/L以下とすることにより、上記負極活物質層形成液を負極集電体表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜を形成することができる。
【0047】
前駆体の厚さについても特に限定されることはないが、15〜300μm程度が一般的である。
【0048】
(3)加熱工程
本発明の方法において、加熱工程とは、前記(2)前駆体形成工程後の前駆体が形成された集電体を、前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程をいう。
【0049】
加熱温度について特に限定されることはなく、前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上であればよく、例えば、正極板の製造において、前駆体中に含まれる金属元素含有化合物が、Li(CH3COO)・2H2Oと、Mn(CH3COO)2・4H2Oである場合には、加熱温度は、400℃程度であり、当該温度で加熱することによって、金属元素含有化合物は、熱分解し、金属酸化物であるLiMn24となり、このLiMn24によって、正極活物質粒子と集電体、および正極活物質粒子同士の固着が図られる。
【0050】
また、例えば、負極板の製造において、前駆体中に含まれる金属元素含有化合物が、硝酸銅である場合には、加熱温度は、270℃程度であり、当該温度で加熱することによって、金属元素含有化合物である硝酸銅は、酸化銅となり、この酸化銅によって、負極活物質粒子と集電体、および負極活物質粒子同士の固着が図られる。
【0051】
また、金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上の温度で、加熱することができる加熱方法あるいは加熱装置であれば、加熱方法について特に限定されることはない。例えば、ホットプレート、オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等のいずれかを使用するか、あるいは2以上を組み合わせて使用する方法を挙げることができる。
【0052】
また、上記加熱工程における加熱雰囲気についても、特に限定されず、正極板や負極板を製造するために用いられる材料や加熱温度、金属元素含有化合物の酸素ポテンシャルなどを勘案して適宜決定することができる。例えば、空気雰囲気である場合には、特別な雰囲気の調整が必要なく、簡易に加熱工程を実施することができる点で好ましい。特に、本発明では、集電体としてアルミニウムが用いられることから、空気雰囲気下において加熱工程を実施しても、アルミニウムが酸化するおそれがないので、好ましく加熱工程を実施することができる。
【0053】
上記本発明の方法は、最良の実施形態として樹脂製のバインダーが含有されない製造方法を中心に説明を行ったが、これは、樹脂製のバインダーが含有されることを禁止するものではない。例えば、前駆体中に樹脂製のバインダーを含有させることや、樹脂製のバインダーを、NMP溶媒等に混合させて調製した樹脂混合液の満たされた浸漬槽に加熱工程後の電極板を浸漬させることで、本発明の方法で形成される電極板に、樹脂製のバインダーを含有させることができる。なお、樹脂製のバインダーが含有される場合であっても、金属酸化物が含有されている分だけ出入力特性は向上し電池容量が増大することはいうまでもない。
【実施例】
【0054】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0055】
(実施例1)
Li(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]:2gとMn(CH3COO)2・4H2O[分子量:245.09]:10gを、メタノール:12gに加えたものを混合し、金属酸化物を形成するための原料液とした。次いで、上記原料液:10gに、平均粒径4μmの正極活物質粒子:LiMn24:10gと、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック):1.2g、炭素繊維(昭和電工株式会社製、VGCF)0.25g、樹脂ヒドロキシエチルセルロース0.2gを純水9.8gに溶解した増粘剤水溶液15gと、溶媒メタノールを混合させ、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で8000rpmの回転数で15分間混練して正極活物質層形成液を調製した。
【0056】
次いで、厚さ15μmのアルミ箔の表面に、中心波長172nmのエキシマランプからの真空紫外光を15分間、集電体表面での積算照射量1800mJ/cm2で照射する表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が126%の集電体1を準備し、上記で調製した電極活物質層形成液を、最終的に得られる電極活物質層の電極質量が82g/m2となる量で、当該集電体の一面側にアプリケーターで塗布し、電極活物質層形成用塗膜を形成した。次いで、ロールプレス機(株式会社サンクメタル社製:メカ式1ton)を用いて、加圧力:0.1ton/cm、プレス速度10mm/秒の条件で、上記塗膜をプレスした。その後、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、常温の電気炉(マッフル炉、デンケン社製、P90)内に設置し、室温から20分かけて450℃まで加熱して、集電体上に正極活物質層が積層された非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を電気炉から取り出して室温になるまで放置し、正極集電体上に正極活物質層が積層された実施例1の正極板1を得た。
【0057】
なお、表面処理後の集電体の、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数は、X線電子分光装置(KRATOS社製 ESCA−3400)にて表面の元素分析を行った。以下の、集電体2〜16についても同様である。
【0058】
(実施例2〜5)
実施例1の照射時間を5分、積算照射量を600mJ/cm2に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が130%に調整された集電体2、同照射時間を2分、積算照射量を240mJ/cm2に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が139%に調整された集電体3、同照射時間を1分、積算照射量を120mJ/cm2に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が143%に調整された集電体4、同照射時間を30秒、積算照射量を60mJ/cm2に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%に調整された集電体5を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、実施例2〜5の正極板を得た。
【0059】
(実施例6)
アルミ箔の表面に中心波長254nmの低圧水銀ランプからのUV光を20分間、集電体表面での積算照射量1600mJ/cm2で照射する表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が130%の集電体6を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、実施例6の正極板を得た。
【0060】
(実施例7、8)
実施例6における照射時間を4分、積算照射量を320mJ/cm2に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が139%に調整された集電体7、同照射時間を2分、積算照射量を160mJ/cm2に変更する表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%に調整された集電体8を用いた以外は、全て実施例6と同様にして、実施例7、8の正極板を得た。
【0061】
(実施例9)
水素と窒素の混合ガス中で7分間プラズマ処理を施す表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が127%の集電体9を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、実施例9の正極板を得た。
【0062】
(実施例10、11)
実施例9におけるプラズマ処理時間を1分に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が135%に調整された集電体10、同プラズマ処理時間を6秒に変更する表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%に調整された集電体11を用いた以外は、全て実施例9と同様にして、実施例10、11の正極板を得た。
【0063】
(実施例12)
クリアランスを12mmに設定し、集電体表面に30秒間コロナ処理を施す表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が130%の集電体12を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、実施例12の正極板を得た。
【0064】
(実施例13、14)
実施例12における照射時間を5秒に変更する表面処理を行い、炭素元素数/アルミニウム元素数が137%に調整された集電体13、同照射時間を5秒、クリアランスを25mmに変更する表面処理を行い、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%に調整された集電体14を用いた以外は、全て実施例12と同様にして、実施例13、14の正極板を得た。
【0065】
(比較例1)
集電体の表面処理を行わず、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が169%の集電体15を用いた以外は、全て実施例1と同様にして、比較例1の正極板を得た。
【0066】
(比較例2)
実施例6における照射時間、照射量を下表1に示す照射時間、照射量に変更し、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が152%に調整された集電体16を用いた以外は、全て実施例6と同様にして、比較例2の正極板を得た。
【0067】
(ピール強度試験1)
実施例1〜14、比較例1の正極板を温度25℃、湿度40%で6時間保管し、ピール強度試験を実施した。結果を表1にまとめる。ピール強度試験は、以下の手法により実施した。正極板を幅2.5cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、正極活物質層面を上にして固定する。試験片の正極活物質層表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で90°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とした。
【0068】
(ピール強度試験2)
上記ピール強度試験1にかえて、実施例1、9、比較例1の正極板を温度45℃、湿度90%で6時間保管し、ピール強度試験2を実施した。結果を表1に併せて示す。ピール強度試験2は、上記ピール強度試験1と同様の方法で行った。
【0069】
<三極式コインセルの作製>
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を調製した。正極板として上述のとおり作製した実施例および比較例を作用極として用い、対極板及び参照極板として金属リチウム板、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、三極式コインセルを組み立て、下記充放電試験に供した。
【0070】
(充電試験)
各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が4.3Vに達するまで定電流(充電レート:0.2C)で定電流充電した。当該電圧が4.3Vに達した後は、電圧が4.3Vを上回らないように、当該電流(充電レート:0.2C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行い、満充電させた後、10分間休止させた。ここで、上記「0.2C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、5時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。
【0071】
(放電試験)
その後、満充電された各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が4.3V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(放電レート:0.2C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
【0072】
(サイクル試験)
容量確認後、充放電レート1CにてCC+CV充電、CC放電を繰り返すサイクル試験を実施し、初期の放電容量に対し、その放電容量が80%を下回るサイクル数を本試験におけるサイクル寿命とした。結果を表1に併せて示す。
【0073】
(直流抵抗値の測定)
実施例、及び比較例の試験セルを用い、放電レート1Cの条件で放電試験を実施した場合において、放電開始後10秒後の電圧値(V1)(mV)を測定した。さらに、放電レート10Cの条件で放電試験を実施した場合についても、放電開始後10秒後の電圧値(V10)(mV)を測定した。そして、これらの測定値(V1,V10)と、放電レート1C、10Cそれぞれに対応する定電流値(I1,I10)(mA)に基づき、次に示す式1により、直流抵抗値(Ω)を測定した。直流抵抗値(Ω)の測定結果を表1に併せて示す。
【0074】
【数1】

【0075】
【表1】

【0076】
上記の表からも分かるように、X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように表面処理がされたアルミニウム集電体を用いた実施例は、密着性、およびサイクル特性に優れる。一方、148%よりも大きい比較例1、2は、実施例と比較して、全ての評価項目において劣る結果となった。
【0077】
また、実施例の正極板は、金属酸化物からなる結着物質で、集電体と電極活物質粒子、および電極活物質粒子同士を固着していることから、直流抵抗は低く、出入力特性に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線電子分光による炭素:1s、アルミニウム:2pのピークより得られる元素存在比率において、炭素元素数/アルミニウム元素数が148%以下となるように、アルミニウムからなる集電体の表面処理を行う、表面処理工程と、
前記表面処理工程後、前記集電体上に少なくとも電極活物質粒子および金属元素含有化合物を含む前駆体を形成する工程と、
前記前駆体中の金属元素含有化合物が金属酸化物となる温度以上で加熱する工程と、
を有する非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理工程が、前記アルミニウムからなる集電体の脱脂を行う処理であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。

【公開番号】特開2012−94343(P2012−94343A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240083(P2010−240083)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】